乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置
【課題】踏段鎖の伸び量が異常な量となる前に、踏段鎖の張力の再調整時期が到来したことを報知することのできる乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置を得る。
【解決手段】常閉式のb接点、及び常開式のa接点を有するリミットスイッチ10と、ガイド切り欠き31が形成されたカム取付部30aと、ガイド切り欠き31の延在方向に水平移動可能にカム取付部30aに配設されたカム本体部42と、引っ張り軸2の鉛直方向の移動力を伝達することなく、引っ張り軸2のガイド切り欠き31の延在方向の移動力をカム本体部42に伝達する動力伝達手段と、a接点の閉成信号が入力されると踏段鎖の張力の調整時期が到来したことを報知する監視制御盤60と、を備え、カム本体部42は引っ張り軸2の自身の移動量が第1移動量以上及び第2移動量以上のそれぞれになったときにb接点の開成動作及びa接点の開成動作を行わせるカム面43を有する。
【解決手段】常閉式のb接点、及び常開式のa接点を有するリミットスイッチ10と、ガイド切り欠き31が形成されたカム取付部30aと、ガイド切り欠き31の延在方向に水平移動可能にカム取付部30aに配設されたカム本体部42と、引っ張り軸2の鉛直方向の移動力を伝達することなく、引っ張り軸2のガイド切り欠き31の延在方向の移動力をカム本体部42に伝達する動力伝達手段と、a接点の閉成信号が入力されると踏段鎖の張力の調整時期が到来したことを報知する監視制御盤60と、を備え、カム本体部42は引っ張り軸2の自身の移動量が第1移動量以上及び第2移動量以上のそれぞれになったときにb接点の開成動作及びa接点の開成動作を行わせるカム面43を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は踏段鎖が異常に伸びた、又は破断したことを検出する乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、従来の乗客コンベアの踏段鎖破断検出装置について、図面を参照しつつ説明する。
図10は例えば、特許文献1に記載された従来の踏段鎖破断検出装置を備えるエスカレータの模式図、図11は例えば、特許文献1に記載された従来の踏段鎖破断検出装置の拡大図である。
【0003】
図10及び図11において、乗客コンベアとしてのエスカレータ1は、乗り口から降り口に至るように架設されたトラス78と、トラス78内部の上階側端部78a(上部トラスエンド78a)付近に配設された上鎖車73と、トラス78内部の下階側端部78b(下部トラスエンド78b)付近に配設された下鎖車74と、駆動機75の出力を上鎖車73に伝達する駆動鎖76と、無端状をなし、上鎖車73と下鎖車74とに巻き掛けられて、駆動機75の出力が駆動鎖76を介して伝達されて回転駆動する上鎖車73により循環移動する踏段鎖72と、踏段鎖72に連結された多数の踏段71と、駆動機75の制御など、エスカレータ1の運転全般を制御するエスカレータ制御盤70と、従来の踏段鎖破断検出装置80と、を備えている。
【0004】
そして、従来の踏段鎖破断検出装置80は、引っ張り軸2、ブラケット3、コイルばね5、ダブルナット7、バネ座8、検出器81及び作動片87a,87bを有している。引っ張り軸2は、その一端が下鎖車74に連結されて、他端が下部トラスエンド78bに向かって上鎖車73から離反する方向に延設されている。
【0005】
また、ブラケット3は、断面L字状に形成され、L字の一辺3aがトラス78の床部78cにボルト・ナットにより固定されている。そして、ブラケット3の断面L字の他辺を構成するバネ取付辺3bが、床部78cから引っ張り軸2の軸方向に垂直に突出している。このとき、引っ張り軸2がバネ取付辺3bを遊嵌状態に貫通している。また、引っ張り軸2の他端側には、ねじ山が形成されている。
【0006】
さらに、バネ座8が、バネ取付辺3bの下部トラスエンド78b側に所定の距離をあけて配置され、引っ張り軸2が遊嵌状態にバネ座8を貫通している。
そして、ダブルナット7の一端面がバネ座8の下部トラスエンド78b側の壁面に接触するように、引っ張り軸2に螺着されている。
【0007】
さらに、コイルばね5が、引っ張り軸2に外嵌状態に装着されて、バネ取付辺3bとバネ座8との間に縮設されている。このとき、コイルばね5の弾性力は、バネ座8を介してダブルナット7を下部トラスエンド78b側に押圧するように働いている。即ち、コイルばね5は、下鎖車74が引っ張り軸2を介して上鎖車73から離反する方向に付勢している。これにより、踏段鎖72のたるみが除かれている。
【0008】
また、一対のナット86a,86bがバネ座8の下部トラスエンド78b側に螺着されている。そして、作動片87aが、一対のナット86a,86bによって挟持されて引っ張り軸2に固定されている。
さらに、一対のナット86c,86dが一対のナット86a,86bの下部トラスエンド78b側に螺着されている。そして、作動片87bが、一対のナット86c,86dによって挟持されて引っ張り軸2に固定されている。このとき、作動片87a,87bは引っ張り軸2の軸方向に所定の間隔を有し、また、作動片87a,87bの上端は引っ張り軸2の上方で所定の高さ位置に配置されている。
【0009】
そして、検出器81は、踏段鎖72が初期状態から規定量を超えて伸びたことに起因して作動片87aが引っ張り軸2の軸方向に所定量を超えて引っ張り軸2とともに移動したときに、作動片87aに作用されて作動するように配設されている。そして、検出器81が作動すると同時に、踏段鎖72の走行が停止されるようになっていた。以下、踏段鎖72の伸びに起因した引っ張り軸2の軸方向への作動片87aの移動量を単に作動片87aの移動量とする。
【0010】
【特許文献1】特開2004−10325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の踏段鎖破断検出装置80は、作動片87aの移動量が所定量に近づいているか否かを確認する手段を有していない。従って、管理者は、踏段鎖72の走行停止により踏段鎖72の張力の再調整時期が到来していたことを知り、踏段鎖72の張力の再調整を行い、踏段鎖72の伸びを初期状態に戻すことになる。そこで、運行中のエスカレータ1における踏段鎖72の突然の走行停止が避けられず、利用者に多大な負担をかけてしまう問題があった。
【0012】
この発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、常開式のa接点と常閉式のb接点とを有するリミットスイッチを用い、踏段鎖の伸び量がその走行を停止させるべき異常な量となる前に、踏段鎖の張力の再調整時期が到来したことを報知することのできる乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、複数の踏段がトラスの乗り口側と降り口側とに設置された一対の鎖車に掛け渡された無端状の踏段鎖に連結され、引っ張り軸がその一端を一対の鎖車の一方の鎖車に連結されて他方の鎖車から離反する方向に延設され、コイルばねが引っ張り軸を介して一方の鎖車を他方の鎖車から離反する方向に付勢するように配設され、駆動機が他方の鎖車を回転駆動することにより踏段鎖を循環移動させるように構成され、踏段鎖の伸びに伴って軸方向に移動する引っ張り軸の移動量が第1移動量以上となったときに踏段鎖の異常伸びを検出する乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置であって、ケースに出没自在に配設されたプランジャ、プランジャの初期位置からの変位量が第1距離以上で開成して駆動機への通電経路を遮断するように構成されたb接点、及びプランジャの初期位置からの変位量が第1距離より小さな第2距離以上で閉成するa接点を有するリミットスイッチと、引っ張り軸と相対して配設され、引っ張り軸の軸方向を含む鉛直面内の水平方向に延在するガイド切り欠きが形成されたカム取付部と、ガイド切り欠きに案内されてガイド切り欠きの延在方向に水平移動可能にカム取付部に配設されたカム本体部と、引っ張り軸の移動に連動して移動し、引っ張り軸の鉛直方向の移動力を伝達することなくガイド切り欠きの延在方向の移動力をカム本体部に伝達する動力伝達手段と、a接点の閉成信号が入力されると踏段鎖の張力の調整時期が到来したことを報知する監視制御盤と、を備え、カム本体部は引っ張り軸の自身の軸方向への初期位置からの移動量が第1移動量以上となったときに、プランジャの変位量が第1距離以上となるようにプランジャを押圧し、引っ張り軸の自身の軸方向への初期位置からの移動量が第1移動量より小さい第2移動量以上となったときにプランジャの変位量が第2距離以上となるようにプランジャを押圧する面形状のカム面を有している。
【発明の効果】
【0014】
この発明では、引っ張り軸の鉛直方向の移動力を伝達することなくガイド切り欠きの延在方向の移動力をカム本体部に伝達するので、カム本体部は、引っ張り軸の移動に連動してガイド切り欠きの延在方向に水平移動するが、鉛直方向へは移動しない。このため、a接点が閉成するプランジャの変位量である第2距離と、b接点が開成するプランジャの変位量である第1距離との差の小さいリミットスイッチのa接点及びb接点の動作のそれぞれを利用できる。即ち、踏段鎖の伸び量が異常な伸びとなったことを検出するb接点が動作する前に動作するa接点の動作を、踏段鎖の張力の再調整時期の到来の検出用に用いることができる。これにより、経年的な踏段鎖の伸びに対しては、踏段鎖の伸び量がその走行を停止させるべき異常な量となる前に、タイムリーに踏段鎖の張力の再調整を行うことが可能となり、乗客コンベアの利用者に負担をかけることを未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
図1はこの発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置の正面図、図2はこの発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置の側面図、図3は図1のIII−III矢視要部断面図、図4はこの発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置の要部分解正面図、図5はこの発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置のリミットスイッチにおけるa接点及びb接点の動作を説明するための断面図であり、図5の(a)はa接点が閉成し、b接点が開成した状態を示し、図5の(b)はa接点及びb接点が共に閉成した状態を示し、図5の(c)はa接点が開成し、b接点が閉成した状態を示している。図6はこの発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置のスライドカムの構成を説明する拡大図であり、図6の(a)はスライドカムの正面図、図6の(b)はスライドカムの上面図、図6の(c)はスライドカムの側面図をそれぞれ示している。図7はこの発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置のリミットスイッチにおけるa接点及びb接点の状態を示す図、図8はこの発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置のシステム構成図、図9はこの発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置の動作を説明する図である。
なお、上記従来技術と同一部分または相当部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0016】
図1〜図4において、乗客コンベアとしてのエスカレータ1の踏段鎖異常検出装置9は、引っ張り軸2の移動に連動して移動するように配設された作動腕27と、引っ張り軸2が自身の軸方向に所定量移動したことを検出するリミットスイッチ10と、引っ張り軸2の自身の軸方向への移動に連動して移動し、リミットスイッチ10を作動させるスライドカム41と、スライドカム41を引っ張り軸2の軸方向にガイドする取付金具30と、作動腕27の移動力をスライドカム41に伝達する動力伝達手段と、リミットスイッチ10から入力された信号に応じて所定の制御動作を行う監視制御盤60と、を有している。
【0017】
まず、リミットスイッチ10の詳細構成について説明する。
図5において、リミットスイッチ10は、ケース11、補強部材13、プランジャ14、摺接片15、常開式のa接点19、常閉式のb接点20、付勢ばね21、a接点接続端子22、b接点接続端子23、及び共通接点接続端子24を有している。
【0018】
ケース11は、中空の直方体状に形成されている。
また、プランジャ14は、断面円の軸部14a及びプランジャローラ14bで構成され、プランジャローラ14bが軸部14aの一端に連結されている。そして、軸部14aは、ケース11の壁に遊嵌状態に挿通されており、その他端側がケース11内部に配置されている。
また、補強部材13が、ケース11の外方に延在する軸部14aの部位を外嵌状態に覆うようにケース11に固定され、軸部14aは、その長さ方向にスライド移動可能に補強部材13に支持されている。これにより、プランジャ14はケース11に出没自在となっている。
【0019】
摺接片15は、導電性部材により直方体状に形成され、長手方向を軸部14aの長さ方向に一致させて軸部14aの他端に連結されている。このとき、摺接片15の長手方向に垂直な一端面の中央部が軸部14aの他端に連結されている。
【0020】
a接点19は第1導電片16と共通導電片18とで構成され、b接点20は第2導電片17と共通導電片18とで構成されている。
第1導電片16及び第2導電片17は軸部14aの長さ方向に所定の距離をあけてケース11内に配置されている。このとき、第2導電片17が、プランジャ14のケース11への挿通部位側に配置されている。さらに、共通導電片18は軸部14aの軸心を含む直線を挟んで第1導電片16及び第2導電片17と対向するように配置されている。なお、図示しないが、第1導電片16、第2導電片17及び共通導電片18はケース11の内壁に支持固定されている。
【0021】
また、第1ストッパ18a及び第2ストッパ18bのそれぞれが、共通導電片18の軸部14aの長さ方向の両端のそれぞれから、第1導電片16及び第2導電片17側に向かって突出するように形成されている。そして、摺接片15は、第1ストッパ18aと第2ストッパ18bとの間を、第1導電片16及び第2導電片17の少なくとも一方と共通導電片18とに摺接しながら往復移動することが可能になっている。
【0022】
さらに、付勢ばね21が、その弾性力が摺接片15を軸部14aのケース11への挿通部側に押圧する方向に働くように、摺接片15の長手方向に垂直な他端面とケース11の内壁との間に縮設されている。
これにより、初期状態では、摺接片15は図5の(c)に示されるように、付勢ばね21の弾性力によりプランジャ14のケース11への挿通部側にプランジャ14とともに移動して、第2ストッパ18bに当接した状態で安定保持されている。
【0023】
そして、a接点19における摺接片15を介した第1導電片16と共通導電片18との間の導通状態、及びb接点20における摺接片15を介した第2導電片17と共通導電片18との間の導通状態は、初期位置からのプランジャ14の変位量(押し込み量)に応じて変化するようになっている。
【0024】
初期位置からのプランジャ14の押し込み量が第1距離以上であるときは、図5の(a)に示されるように、摺接片15は第2導電片17から離反した状態で、第1導電片16及び共通導電片18に接するようになっている。即ち、b接点20は開成され、a接点19は閉成された状態となる。
【0025】
そして、初期位置からのプランジャ14の押し込み量が、第1距離より小さな第2距離以上第1距離未満であるときは、図5の(b)に示されるように、摺接片15は第1導電片16、第2導電片17及び共通導電片18のそれぞれに接するようになっている。即ち、a接点19及びb接点20が共に閉成された状態となる。
【0026】
また、初期位置からのプランジャ14の押し込み量が、0以上第2距離未満である場合、図5の(c)に示されるように、摺接片15は、第1導電片16から離反した状態で、第2導電片17及び共通導電片18に接するようになっている。即ち、b接点20は閉成され、a接点19は開成された状態となる。
【0027】
ここでは、リミットスイッチ10は、第1距離及び第2距離をそれぞれd1及びd2としたとき、d1=2.5mm、及びd2=1mmとなるものが用いられている。
そして、プランジャ14のa接点19及びb接点20の状態と、第1距離d1及び第2距離d2との間の関係をまとめると、図7に示されるように、初期位置からのプランジャ14の押し込み量が0mm以上1mm未満のときは、a接点19及びb接点20はそれぞれ開成及び閉成状態となり、初期位置からのプランジャ14の押し込み量が1mm以上2.5mm未満のときは、a接点19及びb接点20は共に閉成状態となり、初期位置からのプランジャ14の押し込み量が2.5mm以上のときは、a接点19及びb接点20はそれぞれ閉成及び開成状態となる。
【0028】
また、a接点接続端子22、b接点接続端子23、及び共通接点接続端子24のそれぞれが、ケース11の外部に露出するように配設されている。
そして、a接点接続端子22、b接点接続端子23、及び共通接点接続端子24のそれぞれと第1導電片16、第2導電片17及び共通導電片18のそれぞれとの間は、電気配線などを用いて電気的に接続されている。
【0029】
次いで、作動腕27の詳細について説明する。
図1〜図4において、作動腕27は、軸固定辺27a及び軸固定辺27aの一端から垂直に延出するピン取付辺27bを有するL字状に形成されている。軸固定辺27aは、その他端側がブラケット3から下鎖車74側に所定距離だけ離間した引っ張り軸2の部位に一対のナット29a,29bにより固定されて、一端側が引っ張り軸2の上方に突出している。
また、ピン取付辺27bは、軸固定辺27aの上端から下部トラスエンド78bに向かうように引っ張り軸2の軸方向に延在している。これにより、作動腕27は、引っ張り軸2の移動に連動して引っ張り軸2の軸方向に移動可能となっている。
【0030】
なお、引っ張り軸2の踏段鎖72の伸びに起因した自身の軸方向への移動量は、踏段鎖72の移動量に対して一義的に決まる。つまり、引っ張り軸2は、コイルばね5により下部トラスエンド78b側に引っ張られているので、踏段鎖72が伸びたときには、その伸び量の略1/2だけコイルばね5の引っ張り方向に、即ち自身の軸方向にスライド移動する。なお、ここでは、引っ張り軸2の軸方向は、下鎖車74の回転軸(図示せず)に垂直、かつ、水平な方向に一致している。また、一対の貫通孔28が、図4に示されるように、ピン取付辺27bに、ピン取付辺27bの長手方向に所定の距離だけ離間して形成されている。
【0031】
次いで、取付金具30について説明する。
図1〜図4において、取付金具30は、矩形平板形状のカム取付部30a、及びカム取付部30aの長辺の一辺縁部から垂直に延出するスイッチ固定部30bを有するL字状に形成されている。そして、図3に示されるように、カム取付部30aの一方の短辺に開口するガイド切り欠き31が、他方の短辺近傍まで所定の幅でカム取付部30aの長手方向に延在するようにカム取付部30aに形成されている。
【0032】
そして、取付金具30は、カム取付部30aが引っ張り軸2と相対するように水平に、、かつ、ガイド切り欠き31の延在方向が引っ張り軸2の軸方向に一致し、スイッチ固定部30bがカム取付部30aから鉛直上方に延出するように配置されている。このとき、カム取付部30aはピン取付辺27bの上方に所定の距離だけ離反し、かつ、ガイド切り欠き31がピン取付辺27bの貫通孔28の上方に位置している。また、詳細に図示しないが、スイッチ固定部30bは、トラス78などの固定部に固定されている。
【0033】
また、長孔32が、その延在方向が鉛直方向に一致するようにスイッチ固定部30bに形成されている。そして、リミットスイッチ10は、長孔32に挿通されたビス33などを用いてスイッチ固定部30bに締着固定されている。また、リミットスイッチ10は、ビス33を緩めることにより、長孔32の延在方向にビス33とともに移動することができ、リミットスイッチ10の鉛直方向の位置は容易に調整することができるようになっている。
【0034】
次いで、スライドカム41の詳細な構成について説明する。
スライドカム41は、カム本体部42と、カム本体部42の下部外壁面42aに突設されたガイド部51と、を備えている。そして、ガイド部51がガイド切り欠き31に係合されて、カム本体部42がカム取付部30aの上面に配置され、スライドカム41はガイド切り欠き31に案内されてガイド切り欠き31の延在方向に水平移動可能になっている。
ここで、スライドカム41の移動方向をカム本体部42の長さ方向とし、カム本体部42の長さ方向の一端側及び他端側は引っ張り軸2の一端側及び他端側に一致する。以下、カム本体部42の長さ方向の一端及び他端を単にカム本体部42の一端及び他端とする。
【0035】
次いで、カム本体部42の詳細について説明する。
カム本体部42の上面には図6の(a)及び(b)に示されるように、第1カム面44〜第5カム面48を有するカム面43が形成されている。また、第1カム面44〜第5カム面48の一端側及び他端側は、カム本体部42の一端側及び他端側に一致する。
【0036】
そして、第1カム面44は、引っ張り軸2の軸方向に平行(水平)な底面で構成され、第2カム面45は第1カム面44の一端に連結されて第1カム面44からの高さがカム本体部42の一端側に向かって漸次高くなる傾斜面により構成されている。また、第3カム面46が、第2カム面45の一端に連結されてカム本体部42の一端側に延在する水平面により構成されている。このとき、第1カム面44と第3カム面46との間の高さ方向の距離は、前述の第2距離d2と同じになっている。
【0037】
さらに、第4カム面47が、第3カム面46の一端に連結されて第3カム面46からの高さがカム本体部42の一端側に向かって漸次高くなる傾斜面により構成され、第5カム面48が、第4カム面47の一端とカム本体部42の一端との間に、第1カム面44からの高さ方向の距離が前述の第1距離d1となるように形成された水平面で構成されている。また、三角形の位置調整マーカ49が、頂点の一つで第1カム面44の所定の部位を指し示すようにカム本体部42の側壁面に印刷されている。そして、カム本体部42の長さ方向に関し、位置調整マーカ49に指し示された第1カム面44の部位と第3カム面46の他端との間の距離はL2であり、位置調整マーカ49で指し示された第1カム面44の部位と第5カム面48の他端との間の距離はL1となっている。
ここでは、距離L1は12.5mmとされ、距離L2は7.5mmとされている。
【0038】
また、ガイド部51は、それぞれ偏平円柱状に形成された切り欠き挿通部52、及び抜け防止部53が同軸に連結されて構成されている。
切り欠き挿通部52は、その軸方向が鉛直方向に一致し、カム本体部42の下部外壁面42aから下方に突設されてガイド切り欠き31に挿通されている。このとき、切り欠き挿通部52の下端面は、ガイド切り欠き31から僅かに下方に突出している。また、切り欠き挿通部52の外周面とガイド切り欠き31の内側壁面との間の略隙間も僅かである。
【0039】
そして、抜け防止部53は、ガイド切り欠き31の幅より大きな直径を有し、切り欠き挿通部52の下端面に同軸に連結されている。これにより、抜け防止部53の上端面の一部とカム取付部30aの下面とは、僅かに隙間をあけて相対している。
【0040】
次いで、動力伝達手段について説明する。
動力伝達手段は、カム本体部42に形成された一対のガイド孔50、及び引っ張り軸2の移動に連動して移動し、上端側がガイド孔50に挿入されたガイドピン55とで構成される。
一対のガイド孔50は、その孔形状が孔方向を鉛直方向とする円形であり、開口がガイド切り欠き31に臨むようにカム本体部42の両端近傍に形成されている。このとき、ガイド孔50の互いの孔中心の間隔は、ピン取付辺27bに形成された一対の貫通孔28の孔中心の間隔に一致している。
【0041】
ガイドピン55は、図4に示されるように、外周にネジ溝を有する円柱状のネジ部56、及びネジ部56より大径の円柱形状に形成されてネジ部56の一端面に同軸に連結されたカム挿入部57を有している。
【0042】
そして、一対のガイドピン55のそれぞれのネジ部56が図1〜図3に示されるように、ピン取付辺27bに形成された貫通孔28のそれぞれに上方から挿通され、ナット58によりピン取付辺27bに締着固定されている。これにより、ガイドピン55は、引っ張り軸2の移動に連動して引っ張り軸2と同じ方向に同じ量だけ移動する。また、ガイドピン55の軸方向は鉛直方向に一致している。
【0043】
さらに、カム挿入部57の上端側は、ガイド切り欠き31に挿通され、さらにガイド孔50に挿入されている。このとき、ガイド孔50の内壁面とカム挿入部57の外周面との間の隙間は僅かである。即ち、引っ張り軸2の移動に連動して移動するガイドピン55は、ガイド孔50内での移動が、鉛直方向に対しては自在となるが、ガイド切り欠き31の延在方向に対してはガイド孔50の内周面により規制される。
【0044】
ここで、引っ張り軸2は、踏段鎖72の伸びに起因して自身の軸方向へ移動する他、踏段鎖72の走行に伴う自身の揺動によっても移動する。そして、引っ張り軸2の揺動による移動方向は、主に引っ張り軸2の軸方向を含む鉛直面内のいずれかの方向となる。即ち、引っ張り軸2の移動力のベクトルは、鉛直方向成分とガイド切り欠き31の延在方向成分とに分けられ、また、引っ張り軸2の移動に連動して移動するガイドピン55の移動力のベクトルも同様である。
【0045】
ここで、上述したように、ガイドピン55とスライドカム41とは、カム挿入部57が、孔方向が鉛直方向に一致するガイド孔50に遊嵌状態に挿入されて連結されている。このため、ガイドピン55が鉛直方向へ移動する場合、ガイドピン55はガイド孔50の孔内を孔方向に移動するだけとなり、ガイドピン55(引っ張り軸2)の移動力のベクトルの鉛直方向成分は、スライドカム41に伝達されることがない。従って、引っ張り軸2が鉛直方向に移動してもスライドカム41が鉛直方向に移動することはない。
【0046】
一方、ガイドピン55の移動力のベクトルのガイド切り欠き31の延在方向成分は、カム挿入部57が当接するカム本体部42のガイド孔50の部位に伝達される。このとき、引っ張り軸2の軸方向とガイド切り欠き31の延在方向は一致しているので、スライドカム41は、引っ張り軸2の自身の軸方向への移動量だけ、引っ張り軸2の移動に連動して引っ張り軸2の軸方向にスライド移動する。
【0047】
そして、上述したリミットスイッチ10は、プランジャ14の出没方向(変位方向)が鉛直方向に一致するように、かつ、スライドカム41が初期位置にあるときに、プランジャローラ14bの先端(プランジャ14の先端)が、位置調整マーカ49が指し示す第1カム面44の部位に接するように配置されている。なお、踏段鎖72が伸び、作動腕27が引っ張り軸2とともに引っ張り軸2の軸方向に移動する前のスライドカム41の位置をスライドカム41の初期位置とする。
【0048】
次いで、監視制御盤60の詳細構成について図8を参照しつつ説明する。
監視制御盤60は、演算制御手段としてのCPU61、外部から入力された各種信号に基づいて、CPU61に所定の演算制御を行わせるためのプログラムが書き込まれたROM62、及びCPU61が行う各種演算のワーキングエリアに用いられるRAM63などを有している。
【0049】
次いで、踏段鎖異常検出装置9を備えるエスカレータ1のシステム構成について図8を参照しつつ説明する。
リミットスイッチ10のb接点接続端子23及び共通接点接続端子24が、駆動機75への通電経路にシリーズに組み込まれている。このとき、共通接点接続端子24が図示しない電源の高圧側端子67aに接続されている。さらに、駆動機75の電源入出力端子(図示せず)のそれぞれが、b接点接続端子23と電源の低圧側端子67bとに接続されている。即ち、b接点20は、開成したときに駆動機75への通電経路を遮断するように構成されている。
【0050】
前述したように、a接点接続端子22、b接点接続端子23、及び共通接点接続端子24は第1導電片16、第2導電片17、及び共通導電片18のそれぞれに電気的に接続されている。そして、摺接片15が、共通導電片18と第1導電片16及び第2導電片17の少なくとも一方との間を電気的に接続するようになっている。
【0051】
さらに、a接点接続端子22及びb接点接続端子23は、監視制御盤60に電気配線65a,65bを用いて接続されている。このとき、電気配線65a,65bのそれぞれは、高抵抗66a,66bのそれぞれを介して接地されている。そして、監視制御盤60のCPU61はa接点接続端子22及びb接点接続端子23の電圧を読み取り可能になっている。また、監視制御盤60は、エスカレータ1の管理者が駐在する情報センタ68に通信ケーブルなどで接続されている。
【0052】
そして、a接点接続端子22及びb接点接続端子23の出力電圧は、a接点19及びb接点20の状態が切り替るときに接地電圧から所定の値の電圧に、又は所定の値の電圧から接地電圧に切り替る。これをもとに、監視制御盤60のCPU61はそれぞれの接点が閉成状態にあるか開成状態にあるかを判断し、a接点19及びb接点20の状態に応じた報知を情報センタ68に行うようになっている。
なお、b接点20が開成されたときに監視制御盤60に入力される接地電圧をb接点20の開成信号、a接点19が閉成されたときに監視制御盤60に入力される所定の値の電圧をa接点19の閉成信号とする。
【0053】
次いで、上記のように構成された踏段鎖異常検出装置9の配設手順について説明する。
予め、作動腕27の軸固定辺27aを引っ張り軸2にナット29a,29bで固定したのち、ブラケット3、コイルばね5、バネ座8、及びダブルナット7を従来の踏段鎖破断検出装置80と同様に配設する。
そして、初期状態では、引っ張り軸2が所定の張力で下部トラスエンド78b側に引っ張られるように、コイルばね5を収縮させてダブルナット7を螺着する。これにより、引っ張り軸2が所定の張力で下部トラスエンド78b側に引っ張られるので、下鎖車74も下部トラスエンド78b側に所定の張力で引っ張られて、踏段鎖72のたるみが除かれる。ここで、作動腕27の引っ張り軸2の軸方向位置は一対のナット29a,29bの螺着位置を移動させることにより調整可能になっている。
【0054】
そして、カム取付部30aが水平となるように、かつ、ガイド切り欠き31の延在方向が引っ張り軸2の軸方向に一致するように取付金具30の向きを調整する。さらに、取付金具30の位置を、ガイド切り欠き31の幅中心が、ピン取付辺27bの貫通孔28の孔中心の上方に配置されるように調整した後、スイッチ固定部30bをトラス78に固定する。
【0055】
そして、スライドカム41のガイド孔50のそれぞれの孔中心が、ピン取付辺27bの貫通孔28のそれぞれの孔中心の鉛直上方に位置するようにスライドカム41をスライド移動する。さらに、ガイドピン55をガイド孔50から挿入して、そのネジ部56をピン取付辺27bに締着固定する。
【0056】
次いで、リミットスイッチ10を、プランジャ14の出没方向を鉛直方向(長孔32の延在方向)に一致させ、スライドカム41の上方の任意の位置でビス33を用いてスイッチ固定部30bに仮止めする。なお、リミットスイッチ10は、取付金具30をトラス78に固定する前に、プランジャローラ14bの先端をガイド切り欠き31側に向け、かつ、プランジャ14の出没方向が長孔32の延在方向に一致するように配設しておいてもよい。
【0057】
さらに、ナット29a,29bの螺着位置を調整することにより、作動腕27とともにスライドカム41を移動させ、位置調整マーカ49の頂点が指し示す第1カム面44の部位とプランジャローラ14bの先端とが相対する初期位置にスライドカム41を配置する。
【0058】
そして、ビス33を緩めてリミットスイッチ10を、そのプランジャローラ14bの先端が第1カム面44に接触(ジャストタッチ)するところまで鉛直方向下方に移動したところで、ビス33を再び締めて、リミットスイッチ10をスイッチ固定部30bに固定する。そして、リミットスイッチ10と監視制御盤60との間を電気配線65a,65bにて接続する。これにより、踏段鎖異常検出装置9の配設が終了する。
【0059】
次いで、踏段鎖異常検出装置9を備えるエスカレータ1の全体動作について図9を参照しつつ説明する。
上述したように、図9の(a)に示されるリミットスイッチ10の初期位置は、スライドカム41が初期位置にあるときに、位置調整マーカ49が指し示す第1カム面44の部位にプランジャローラ14bの先端が接するように調整されている。
【0060】
そして、エスカレータ1の運行により、踏段鎖72に経年的な伸びが発生すると、引っ張り軸2が図1中、自身の軸方向の他端側(下部トラスエンド78b側)に移動する。これにより、下鎖車74が他端側に移動され、踏段鎖72に付与される所定の張力が確保される。また、引っ張り軸2の移動に連動して作動腕27が移動すると、引っ張り軸2の移動力がガイドピン55を介してスライドカム41に伝達される。これにより、スライドカム41は、引っ張り軸2の自身の軸方向への移動量と同じ量だけガイド切り欠き31の延在方向に水平移動する。
以下、スライドカム41のガイド切り欠き31の延在方向への移動量を単にスライドカム41の移動量とする。
【0061】
そして、踏段鎖72が経年的に伸び続けると、スライドカム41は、第1カム面44がプランジャローラ14bの先端に接した状態でガイド切り欠き31の延在方向の他端側に移動し、図9の(b)に示されるように第2カム面45に当接する。さらに、スライドカム41が移動するにつれ、プランジャローラ14bは第2カム面45に徐々に押し込まれる。そして、スライドカム41の移動量が、図9の(c)に示されるように前述の距離L2と同じ値の第2移動量M2となったところで、プランジャローラ14bは、第3カム面46の他端側の部位により押しこまれ、プランジャ14の押し込み量が第2距離d2に達してa接点19が閉成する。
【0062】
このとき、a接点19の閉成信号が監視制御盤60に入力され、監視制御盤60のCPU61は、踏段鎖72の伸び量が、踏段鎖72の張力の再調整を行う必要がある伸び量に達したと判断し、踏段鎖72の再調整を促すための警告信号を情報センタ38に発信する。これにより、エスカレータ1の管理者は、踏段鎖72の張力の再調整時期が到来したと判断する。そして、エスカレータ1の管理者は、保守作業員を派遣し、踏段鎖72に適切な張力を与えるようにコイルばね5の収縮量を再調整するとともに、作動腕27、及びリミットスイッチ10の位置を再調整するなどの対応を作業員にとらせる。
【0063】
また、何等かの原因で急激に踏段鎖72が伸長したり、踏段鎖72が破断したりして、初期位置からの引っ張り軸2の移動量が急激に増大したときには、スライドカム41は、第3カム面46がプランジャ14に接した状態で移動して第4カム面47に当接し、スライドカム41は図9の(d)に示されるように第4カム面47によりプランジャローラ14bを押し込みながら急激に移動する。そして、スライドカム41の移動量が図9の(e)に示されるように、前述の距離L1と同じ値の第1移動量M1となったところで、プランジャローラ14bは、第5カム面48の他端側の部位により押しこまれ、プランジャ14の押し込み量が第1距離d1に達してb接点20が開成する。これにより、踏段鎖72の異常伸びがリミットスイッチ10で検出される。
【0064】
このとき、b接点20が開成するとともに、駆動機75への通電が遮断されて踏段鎖72の走行が強制的に停止される。そして、b接点20の開成信号が監視制御盤60に入力され、CPU61はb接点20が開成したと判断し、引っ張り軸2を第1移動量M1以上移動させる踏段鎖72の異常伸びが発生したことを報知する緊急対処警告信号を情報センタ68に送信する。
【0065】
この実施の形態の踏段鎖異常検出装置9によれば、引っ張り軸2の鉛直方向の移動力を伝達することなく、ガイド切り欠き31の延在方向の移動力をカム本体部42に伝達する構成としている。これにより、引っ張り軸2の移動方向にかかわらず、スライドカム41は、引っ張り軸2の自身の軸方向への移動量と同じ量だけガイド切り欠き31の延在方向に水平移動し、鉛直方向へは移動しない。また、カム本体部42は、スライドカム41の移動量が第1移動量M1以上となったときに、プランジャ14の押し込み量が第1距離d1以上となるようにプランジャ14を押圧し、引っ張り軸2の自身の軸方向への初期位置からの移動量が第2移動量以上となったときにプランジャ14の押し込み量が第2距離d2以上となるようにプランジャ14を押圧する面形状に構成されたカム面43を有している。
【0066】
ここで、上述したように、リミットスイッチ10においては、a接点19が閉成するプランジャ14の押し込み量である第2距離d2が1mm、b接点20が開成するプランジャ14の押し込み量である第1距離d1が2.5mmであるものが用いられている。このように、第1距離d1と第2距離d2の差は大変狭いものとなっている。なお、上述のリミットスイッチ10に限らず、一般的に広く普及されている常開式のa接点及び常閉式のb接点を有するリミットスイッチにおいても、a接点が閉成するプランジャの押し込み量である第2距離、b接点が開成するプランジャの押し込み量である第1距離との差は僅か数mmのものが多い。
【0067】
上述したように、スライドカム41の鉛直方向の位置は、引っ張り軸2が移動して、引っ張り軸2の鉛直方向の位置が変化しても一定のままとなる。これにより、例えば、プランジャローラ14bが第1カム面44に接した状態にあるときに、引っ張り軸2の揺動などに起因して引っ張り軸2の鉛直方向の位置が変化しても、a接点19又はb接点20が開成されることが抑制される。また、プランジャローラ14bが第3カム面46の他端と第5カム面48の他端との間の所定の部位に所定量押し込まれた状態にあるときに、引っ張り軸2の鉛直方向の位置が変化してもb接点20が開成されることが抑制される。
【0068】
即ち、引っ張り軸2が、自身の軸方向だけでなく、鉛直方向に移動したとしても、a接点19は、引っ張り軸2の自身の軸方向への移動量が第2移動量M2となったときに初めて閉成し、b接点20は、引っ張り軸2の自身の軸方向への移動量が第1移動量M1となったときに初めて開成する。
【0069】
つまり、仮にスライドカム41が、引っ張り軸2の鉛直方向への移動に連動して鉛直方向に移動する場合、引っ張り軸2の自身の軸方向への移動量が第1移動量M1に達する前にb接点20が開成したり、引っ張り軸2の自身の軸方向への移動量が第2移動量M2に達する前にa接点19が閉成したりする。
これに対し、踏段鎖異常検出装置9では、スライドカム41の鉛直方向への移動が抑制されたので、引っ張り軸2の自身の軸方向への移動量が第2移動量M2及び第1移動量M1に達する前にa接点19が閉成したり、b接点20が開成したりする誤動作をなくすことができる。
【0070】
これにより、a接点19の開成信号及びb接点20の開成信号のそれぞれを、踏段鎖72の張力の再調整時期の到来及び踏段鎖72の異常な伸び発生のそれぞれに関連付けさせてエスカレータ1の動作を規定することができる。ここで、引っ張り軸2の鉛直方向への揺動は、踏段鎖72の伸びに起因するものではない。
そこで、第2移動量M2を張力の再調整の必要性が発生する踏段鎖72の伸び量に対応する初期位置からの引っ張り軸2の自身の軸方向への移動量として設定する。また、第1移動量M1を踏段鎖72の所定の張力が保てなくなる前の踏段鎖72の伸び量に対応する初期位置からの引っ張り軸2の自身の軸方向への移動量として設定する。また、この実施の形態では、第1移動量M1は12.5mmとし、第2移動量M2は7.5mmとしているが、エスカレータ1の仕様に応じて第1移動量M1及び第2移動量M2の値は適宜設定すればよい。
【0071】
上述したように、a接点19が閉成したときには、監視制御盤60は、警告信号を情報センタ68に送信し、b接点20が開成したときには、駆動機75への通電が強制的に遮断して、踏段鎖72の走行が強制的に停止されるとともに、監視制御盤60が緊急対処警告信号を情報センタ68に送信している。これにより、エスカレータ1の管理者は、引っ張り軸2の移動量が第2移動量M2に達した時点で、踏段鎖72の張力の再調整時期が到来したことを認識可能となるので、踏段鎖72の張力をタイムリーに再調整することができる。つまり、管理者は、踏段鎖72の伸び量が、その走行を停止させるべき異常な量となる前に、踏段鎖72の張力の再調整時期が到来したことを認識可能であり、引っ張り軸2の移動量が第1移動量M1に達してエスカレータ1が突然に停止することが最大限に防止できる。これにより、利用者に負担をかけることが未然に防止できる。
【0072】
また、従来の踏段鎖破断検出装置80の配設においては、作動片87aと作動片87aが作用する検出器81の所定部位との間の距離を距離計測器などを用いて厳密に管理しつつ作動片87aと検出器81の初期位置の調整を行う必要がある。
【0073】
一方、踏段鎖異常検出装置9のリミットスイッチ10と作動腕27の初期位置の調整は、まず、位置調整マーカ49が指し示すスライドカム41の第1カム面43の部位とプランジャローラ14bの先端とが相対するように作動腕27を移動し、プランジャローラ14bの先端が第1カム面43に接触するようにリミットスイッチ10を移動するだけである。従って、リミットスイッチ10と作動腕27の初期位置の調整は距離計測器などを用いずに容易に行うことができるので、踏段鎖異常検出装置9の配設にかかる時間を短縮することができる。
【0074】
なお、上記実施の形態では、乗客コンベアとしてのエスカレータ1に適用するものとして説明しているが、本発明は、動く歩道などの乗客コンベアに対しても適用できる。
【0075】
また、引っ張り軸2が、その一端を上下一対の鎖車のうちの下鎖車74に連結されて上鎖車73から離反する方向に延設され、コイルばね5が引っ張り軸2を介して下鎖車74を上鎖車73から離反する方向に付勢するように配設されるものとして説明したが、引っ張り軸2は上鎖車73に連結されて下鎖車74から離反する方向に延設され、コイルばね5が引っ張り軸2を介して上鎖車73を下鎖車74から離反する方向に付勢するように配設されているものでもよい。
【0076】
また、ガイド孔50の孔形状は、カム挿入部57の外形より僅かに大きな直径を有する円形であるものとして説明したが、ガイド孔の形状は、長軸方向を引っ張り軸2に垂直かつ水平な方向とする長孔であってもよい。このとき、短軸方向は、ガイド切り欠き31の延在方向に一致し、かつ、短軸方向の長さがガイド挿通部の直径より僅かに長い形状とする。そして、上記説明では、引っ張り軸2の揺動による移動方向は、引っ張り軸2の軸方向を含む鉛直面内のいずれかの方向となるものとして説明したが、引っ張り軸2が当該鉛直面に垂直な方向、即ち、長軸方向にも揺動する場合、ガイド孔の形状を楕円形とすることで以下の効果が得られる。
【0077】
ここで、ガイド孔の長軸方向の長さは、ガイド孔の内壁面とガイド挿通部の外周面との間の隙間が、ガイド孔の長軸方向に関し、引っ張り軸2の揺動に起因する引っ張り軸2の長軸方向への最大の移動幅より大きくなるように形成する。
これにより、引っ張り軸2の長軸方向への移動に起因してガイドピン55が移動しても、ガイド孔の内壁面には当接しないので、ガイドピン55に大きな圧力がかかってガイドピン55が破損することが防止される。
【0078】
また、引っ張り軸2の軸方向は水平な方向に一致するものとして説明したが、引っ張り軸2の軸方向は水平であるものに限定されない。そして、取付金具30のカム取付部30aは、引っ張り軸2の軸方向が水平方向から所定角度傾斜していても、引っ張り軸2の軸方向が水平な方向に一致する場合と同様に、ガイド切り欠き31の延在方向が引っ張り軸2の軸方向を含む鉛直面内の水平方向に延在するように配設すればよい。このとき、引っ張り軸2の自身の軸方向への移動量と、引っ張り軸2の移動に連動してガイド切り欠き31の延在方向に水平移動するスライドカム41の移動量は異なる。この場合は、引っ張り軸2の第1移動量M1に対応するスライドカム41の移動量を上述の距離L1に設定し、引っ張り軸2の第2移動量M2に対応するスライドカム41の移動量を上述の距離L2に設定して、カム本体部42のカム面43を形成すればよい。
【0079】
また、カム面43は、第1カム面44〜第5カム面48により構成されるものとして説明したが、カム面43は第1カム面44〜第5カム面48により構成されるものに限定されない。カム面43は、引っ張り軸2の自身の軸方向への移動量が第1移動量M1以上となったときに、プランジャ14の押し込み量が第1距離d1以上となるようにプランジャ14を押圧し、引っ張り軸2の自身の軸方向への初期位置からの移動量が第2移動量以上となったときにプランジャ14の変位量が第2距離d2以上となるようにプランジャ14を押圧するものであればその面形状は問わない。例えば、カム面43は、第1カム面44の一端と第5カム面48の他端との間が一つの傾斜面で構成されているものなどでもよい。
【0080】
さらに、カム面43が、スライドカム41が第2移動量M2移動したときに、初期位置からのプランジャ14の押し込み量が距離d2だけ減少するようにプランジャ14を変位させてa接点20を閉成させ、スライドカム41が第1移動量M1以上移動したときに初期位置からのプランジャ14の押し込み量が距離d1だけ減少するようにプランジャ14を変位させてa接点20を開成させる面形状に構成されているものでもよい。
【0081】
また、リミットスイッチは、図2に示されるリミットスイッチ10の構成に限定されるものではなく、初期位置からのプランジャ14の変位量が第2距離d2以上になるとa接点19が閉成し、初期位置からのプランジャ14の変異量が第1距離d1以上になるとb接点20が開成するように構成されていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】この発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置の正面図である。
【図2】この発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置の側面図である。
【図3】図1のIII−III矢視要部断面図である。
【図4】この発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置の要部分解正面図である。
【図5】この発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置のリミットスイッチにおけるa接点及びb接点の動作を説明するための断面図である。
【図6】この発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置のスライドカムの構成を説明する拡大図である。
【図7】この発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置のリミットスイッチにおけるa接点及びb接点の状態を示す図である。
【図8】この発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置のシステム構成図である。
【図9】この発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置の動作を説明する図である。
【図10】従来の踏段鎖破断検出装置を備えるエスカレータの模式図である。
【図11】従来の踏段鎖破断検出装置の拡大図である。
【符号の説明】
【0083】
1 エスカレータ(乗客コンベア)、2 引っ張り軸、5 コイルばね、9 踏段鎖異常検出装置、10 リミットスイッチ、11 ケース、14 プランジャ、19 a接点、20 b接点、30a カム取付部、31 ガイド切り欠き、50 ガイド孔(動力伝達手段)、55 ガイドピン(動力伝達手段)、60 監視制御盤、71 踏段、72 踏段鎖、73 上鎖車(鎖車)、74 下鎖車(鎖車)、75 駆動機、78 トラス。
【技術分野】
【0001】
この発明は踏段鎖が異常に伸びた、又は破断したことを検出する乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
以下、従来の乗客コンベアの踏段鎖破断検出装置について、図面を参照しつつ説明する。
図10は例えば、特許文献1に記載された従来の踏段鎖破断検出装置を備えるエスカレータの模式図、図11は例えば、特許文献1に記載された従来の踏段鎖破断検出装置の拡大図である。
【0003】
図10及び図11において、乗客コンベアとしてのエスカレータ1は、乗り口から降り口に至るように架設されたトラス78と、トラス78内部の上階側端部78a(上部トラスエンド78a)付近に配設された上鎖車73と、トラス78内部の下階側端部78b(下部トラスエンド78b)付近に配設された下鎖車74と、駆動機75の出力を上鎖車73に伝達する駆動鎖76と、無端状をなし、上鎖車73と下鎖車74とに巻き掛けられて、駆動機75の出力が駆動鎖76を介して伝達されて回転駆動する上鎖車73により循環移動する踏段鎖72と、踏段鎖72に連結された多数の踏段71と、駆動機75の制御など、エスカレータ1の運転全般を制御するエスカレータ制御盤70と、従来の踏段鎖破断検出装置80と、を備えている。
【0004】
そして、従来の踏段鎖破断検出装置80は、引っ張り軸2、ブラケット3、コイルばね5、ダブルナット7、バネ座8、検出器81及び作動片87a,87bを有している。引っ張り軸2は、その一端が下鎖車74に連結されて、他端が下部トラスエンド78bに向かって上鎖車73から離反する方向に延設されている。
【0005】
また、ブラケット3は、断面L字状に形成され、L字の一辺3aがトラス78の床部78cにボルト・ナットにより固定されている。そして、ブラケット3の断面L字の他辺を構成するバネ取付辺3bが、床部78cから引っ張り軸2の軸方向に垂直に突出している。このとき、引っ張り軸2がバネ取付辺3bを遊嵌状態に貫通している。また、引っ張り軸2の他端側には、ねじ山が形成されている。
【0006】
さらに、バネ座8が、バネ取付辺3bの下部トラスエンド78b側に所定の距離をあけて配置され、引っ張り軸2が遊嵌状態にバネ座8を貫通している。
そして、ダブルナット7の一端面がバネ座8の下部トラスエンド78b側の壁面に接触するように、引っ張り軸2に螺着されている。
【0007】
さらに、コイルばね5が、引っ張り軸2に外嵌状態に装着されて、バネ取付辺3bとバネ座8との間に縮設されている。このとき、コイルばね5の弾性力は、バネ座8を介してダブルナット7を下部トラスエンド78b側に押圧するように働いている。即ち、コイルばね5は、下鎖車74が引っ張り軸2を介して上鎖車73から離反する方向に付勢している。これにより、踏段鎖72のたるみが除かれている。
【0008】
また、一対のナット86a,86bがバネ座8の下部トラスエンド78b側に螺着されている。そして、作動片87aが、一対のナット86a,86bによって挟持されて引っ張り軸2に固定されている。
さらに、一対のナット86c,86dが一対のナット86a,86bの下部トラスエンド78b側に螺着されている。そして、作動片87bが、一対のナット86c,86dによって挟持されて引っ張り軸2に固定されている。このとき、作動片87a,87bは引っ張り軸2の軸方向に所定の間隔を有し、また、作動片87a,87bの上端は引っ張り軸2の上方で所定の高さ位置に配置されている。
【0009】
そして、検出器81は、踏段鎖72が初期状態から規定量を超えて伸びたことに起因して作動片87aが引っ張り軸2の軸方向に所定量を超えて引っ張り軸2とともに移動したときに、作動片87aに作用されて作動するように配設されている。そして、検出器81が作動すると同時に、踏段鎖72の走行が停止されるようになっていた。以下、踏段鎖72の伸びに起因した引っ張り軸2の軸方向への作動片87aの移動量を単に作動片87aの移動量とする。
【0010】
【特許文献1】特開2004−10325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の踏段鎖破断検出装置80は、作動片87aの移動量が所定量に近づいているか否かを確認する手段を有していない。従って、管理者は、踏段鎖72の走行停止により踏段鎖72の張力の再調整時期が到来していたことを知り、踏段鎖72の張力の再調整を行い、踏段鎖72の伸びを初期状態に戻すことになる。そこで、運行中のエスカレータ1における踏段鎖72の突然の走行停止が避けられず、利用者に多大な負担をかけてしまう問題があった。
【0012】
この発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、常開式のa接点と常閉式のb接点とを有するリミットスイッチを用い、踏段鎖の伸び量がその走行を停止させるべき異常な量となる前に、踏段鎖の張力の再調整時期が到来したことを報知することのできる乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、複数の踏段がトラスの乗り口側と降り口側とに設置された一対の鎖車に掛け渡された無端状の踏段鎖に連結され、引っ張り軸がその一端を一対の鎖車の一方の鎖車に連結されて他方の鎖車から離反する方向に延設され、コイルばねが引っ張り軸を介して一方の鎖車を他方の鎖車から離反する方向に付勢するように配設され、駆動機が他方の鎖車を回転駆動することにより踏段鎖を循環移動させるように構成され、踏段鎖の伸びに伴って軸方向に移動する引っ張り軸の移動量が第1移動量以上となったときに踏段鎖の異常伸びを検出する乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置であって、ケースに出没自在に配設されたプランジャ、プランジャの初期位置からの変位量が第1距離以上で開成して駆動機への通電経路を遮断するように構成されたb接点、及びプランジャの初期位置からの変位量が第1距離より小さな第2距離以上で閉成するa接点を有するリミットスイッチと、引っ張り軸と相対して配設され、引っ張り軸の軸方向を含む鉛直面内の水平方向に延在するガイド切り欠きが形成されたカム取付部と、ガイド切り欠きに案内されてガイド切り欠きの延在方向に水平移動可能にカム取付部に配設されたカム本体部と、引っ張り軸の移動に連動して移動し、引っ張り軸の鉛直方向の移動力を伝達することなくガイド切り欠きの延在方向の移動力をカム本体部に伝達する動力伝達手段と、a接点の閉成信号が入力されると踏段鎖の張力の調整時期が到来したことを報知する監視制御盤と、を備え、カム本体部は引っ張り軸の自身の軸方向への初期位置からの移動量が第1移動量以上となったときに、プランジャの変位量が第1距離以上となるようにプランジャを押圧し、引っ張り軸の自身の軸方向への初期位置からの移動量が第1移動量より小さい第2移動量以上となったときにプランジャの変位量が第2距離以上となるようにプランジャを押圧する面形状のカム面を有している。
【発明の効果】
【0014】
この発明では、引っ張り軸の鉛直方向の移動力を伝達することなくガイド切り欠きの延在方向の移動力をカム本体部に伝達するので、カム本体部は、引っ張り軸の移動に連動してガイド切り欠きの延在方向に水平移動するが、鉛直方向へは移動しない。このため、a接点が閉成するプランジャの変位量である第2距離と、b接点が開成するプランジャの変位量である第1距離との差の小さいリミットスイッチのa接点及びb接点の動作のそれぞれを利用できる。即ち、踏段鎖の伸び量が異常な伸びとなったことを検出するb接点が動作する前に動作するa接点の動作を、踏段鎖の張力の再調整時期の到来の検出用に用いることができる。これにより、経年的な踏段鎖の伸びに対しては、踏段鎖の伸び量がその走行を停止させるべき異常な量となる前に、タイムリーに踏段鎖の張力の再調整を行うことが可能となり、乗客コンベアの利用者に負担をかけることを未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
図1はこの発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置の正面図、図2はこの発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置の側面図、図3は図1のIII−III矢視要部断面図、図4はこの発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置の要部分解正面図、図5はこの発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置のリミットスイッチにおけるa接点及びb接点の動作を説明するための断面図であり、図5の(a)はa接点が閉成し、b接点が開成した状態を示し、図5の(b)はa接点及びb接点が共に閉成した状態を示し、図5の(c)はa接点が開成し、b接点が閉成した状態を示している。図6はこの発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置のスライドカムの構成を説明する拡大図であり、図6の(a)はスライドカムの正面図、図6の(b)はスライドカムの上面図、図6の(c)はスライドカムの側面図をそれぞれ示している。図7はこの発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置のリミットスイッチにおけるa接点及びb接点の状態を示す図、図8はこの発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置のシステム構成図、図9はこの発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置の動作を説明する図である。
なお、上記従来技術と同一部分または相当部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0016】
図1〜図4において、乗客コンベアとしてのエスカレータ1の踏段鎖異常検出装置9は、引っ張り軸2の移動に連動して移動するように配設された作動腕27と、引っ張り軸2が自身の軸方向に所定量移動したことを検出するリミットスイッチ10と、引っ張り軸2の自身の軸方向への移動に連動して移動し、リミットスイッチ10を作動させるスライドカム41と、スライドカム41を引っ張り軸2の軸方向にガイドする取付金具30と、作動腕27の移動力をスライドカム41に伝達する動力伝達手段と、リミットスイッチ10から入力された信号に応じて所定の制御動作を行う監視制御盤60と、を有している。
【0017】
まず、リミットスイッチ10の詳細構成について説明する。
図5において、リミットスイッチ10は、ケース11、補強部材13、プランジャ14、摺接片15、常開式のa接点19、常閉式のb接点20、付勢ばね21、a接点接続端子22、b接点接続端子23、及び共通接点接続端子24を有している。
【0018】
ケース11は、中空の直方体状に形成されている。
また、プランジャ14は、断面円の軸部14a及びプランジャローラ14bで構成され、プランジャローラ14bが軸部14aの一端に連結されている。そして、軸部14aは、ケース11の壁に遊嵌状態に挿通されており、その他端側がケース11内部に配置されている。
また、補強部材13が、ケース11の外方に延在する軸部14aの部位を外嵌状態に覆うようにケース11に固定され、軸部14aは、その長さ方向にスライド移動可能に補強部材13に支持されている。これにより、プランジャ14はケース11に出没自在となっている。
【0019】
摺接片15は、導電性部材により直方体状に形成され、長手方向を軸部14aの長さ方向に一致させて軸部14aの他端に連結されている。このとき、摺接片15の長手方向に垂直な一端面の中央部が軸部14aの他端に連結されている。
【0020】
a接点19は第1導電片16と共通導電片18とで構成され、b接点20は第2導電片17と共通導電片18とで構成されている。
第1導電片16及び第2導電片17は軸部14aの長さ方向に所定の距離をあけてケース11内に配置されている。このとき、第2導電片17が、プランジャ14のケース11への挿通部位側に配置されている。さらに、共通導電片18は軸部14aの軸心を含む直線を挟んで第1導電片16及び第2導電片17と対向するように配置されている。なお、図示しないが、第1導電片16、第2導電片17及び共通導電片18はケース11の内壁に支持固定されている。
【0021】
また、第1ストッパ18a及び第2ストッパ18bのそれぞれが、共通導電片18の軸部14aの長さ方向の両端のそれぞれから、第1導電片16及び第2導電片17側に向かって突出するように形成されている。そして、摺接片15は、第1ストッパ18aと第2ストッパ18bとの間を、第1導電片16及び第2導電片17の少なくとも一方と共通導電片18とに摺接しながら往復移動することが可能になっている。
【0022】
さらに、付勢ばね21が、その弾性力が摺接片15を軸部14aのケース11への挿通部側に押圧する方向に働くように、摺接片15の長手方向に垂直な他端面とケース11の内壁との間に縮設されている。
これにより、初期状態では、摺接片15は図5の(c)に示されるように、付勢ばね21の弾性力によりプランジャ14のケース11への挿通部側にプランジャ14とともに移動して、第2ストッパ18bに当接した状態で安定保持されている。
【0023】
そして、a接点19における摺接片15を介した第1導電片16と共通導電片18との間の導通状態、及びb接点20における摺接片15を介した第2導電片17と共通導電片18との間の導通状態は、初期位置からのプランジャ14の変位量(押し込み量)に応じて変化するようになっている。
【0024】
初期位置からのプランジャ14の押し込み量が第1距離以上であるときは、図5の(a)に示されるように、摺接片15は第2導電片17から離反した状態で、第1導電片16及び共通導電片18に接するようになっている。即ち、b接点20は開成され、a接点19は閉成された状態となる。
【0025】
そして、初期位置からのプランジャ14の押し込み量が、第1距離より小さな第2距離以上第1距離未満であるときは、図5の(b)に示されるように、摺接片15は第1導電片16、第2導電片17及び共通導電片18のそれぞれに接するようになっている。即ち、a接点19及びb接点20が共に閉成された状態となる。
【0026】
また、初期位置からのプランジャ14の押し込み量が、0以上第2距離未満である場合、図5の(c)に示されるように、摺接片15は、第1導電片16から離反した状態で、第2導電片17及び共通導電片18に接するようになっている。即ち、b接点20は閉成され、a接点19は開成された状態となる。
【0027】
ここでは、リミットスイッチ10は、第1距離及び第2距離をそれぞれd1及びd2としたとき、d1=2.5mm、及びd2=1mmとなるものが用いられている。
そして、プランジャ14のa接点19及びb接点20の状態と、第1距離d1及び第2距離d2との間の関係をまとめると、図7に示されるように、初期位置からのプランジャ14の押し込み量が0mm以上1mm未満のときは、a接点19及びb接点20はそれぞれ開成及び閉成状態となり、初期位置からのプランジャ14の押し込み量が1mm以上2.5mm未満のときは、a接点19及びb接点20は共に閉成状態となり、初期位置からのプランジャ14の押し込み量が2.5mm以上のときは、a接点19及びb接点20はそれぞれ閉成及び開成状態となる。
【0028】
また、a接点接続端子22、b接点接続端子23、及び共通接点接続端子24のそれぞれが、ケース11の外部に露出するように配設されている。
そして、a接点接続端子22、b接点接続端子23、及び共通接点接続端子24のそれぞれと第1導電片16、第2導電片17及び共通導電片18のそれぞれとの間は、電気配線などを用いて電気的に接続されている。
【0029】
次いで、作動腕27の詳細について説明する。
図1〜図4において、作動腕27は、軸固定辺27a及び軸固定辺27aの一端から垂直に延出するピン取付辺27bを有するL字状に形成されている。軸固定辺27aは、その他端側がブラケット3から下鎖車74側に所定距離だけ離間した引っ張り軸2の部位に一対のナット29a,29bにより固定されて、一端側が引っ張り軸2の上方に突出している。
また、ピン取付辺27bは、軸固定辺27aの上端から下部トラスエンド78bに向かうように引っ張り軸2の軸方向に延在している。これにより、作動腕27は、引っ張り軸2の移動に連動して引っ張り軸2の軸方向に移動可能となっている。
【0030】
なお、引っ張り軸2の踏段鎖72の伸びに起因した自身の軸方向への移動量は、踏段鎖72の移動量に対して一義的に決まる。つまり、引っ張り軸2は、コイルばね5により下部トラスエンド78b側に引っ張られているので、踏段鎖72が伸びたときには、その伸び量の略1/2だけコイルばね5の引っ張り方向に、即ち自身の軸方向にスライド移動する。なお、ここでは、引っ張り軸2の軸方向は、下鎖車74の回転軸(図示せず)に垂直、かつ、水平な方向に一致している。また、一対の貫通孔28が、図4に示されるように、ピン取付辺27bに、ピン取付辺27bの長手方向に所定の距離だけ離間して形成されている。
【0031】
次いで、取付金具30について説明する。
図1〜図4において、取付金具30は、矩形平板形状のカム取付部30a、及びカム取付部30aの長辺の一辺縁部から垂直に延出するスイッチ固定部30bを有するL字状に形成されている。そして、図3に示されるように、カム取付部30aの一方の短辺に開口するガイド切り欠き31が、他方の短辺近傍まで所定の幅でカム取付部30aの長手方向に延在するようにカム取付部30aに形成されている。
【0032】
そして、取付金具30は、カム取付部30aが引っ張り軸2と相対するように水平に、、かつ、ガイド切り欠き31の延在方向が引っ張り軸2の軸方向に一致し、スイッチ固定部30bがカム取付部30aから鉛直上方に延出するように配置されている。このとき、カム取付部30aはピン取付辺27bの上方に所定の距離だけ離反し、かつ、ガイド切り欠き31がピン取付辺27bの貫通孔28の上方に位置している。また、詳細に図示しないが、スイッチ固定部30bは、トラス78などの固定部に固定されている。
【0033】
また、長孔32が、その延在方向が鉛直方向に一致するようにスイッチ固定部30bに形成されている。そして、リミットスイッチ10は、長孔32に挿通されたビス33などを用いてスイッチ固定部30bに締着固定されている。また、リミットスイッチ10は、ビス33を緩めることにより、長孔32の延在方向にビス33とともに移動することができ、リミットスイッチ10の鉛直方向の位置は容易に調整することができるようになっている。
【0034】
次いで、スライドカム41の詳細な構成について説明する。
スライドカム41は、カム本体部42と、カム本体部42の下部外壁面42aに突設されたガイド部51と、を備えている。そして、ガイド部51がガイド切り欠き31に係合されて、カム本体部42がカム取付部30aの上面に配置され、スライドカム41はガイド切り欠き31に案内されてガイド切り欠き31の延在方向に水平移動可能になっている。
ここで、スライドカム41の移動方向をカム本体部42の長さ方向とし、カム本体部42の長さ方向の一端側及び他端側は引っ張り軸2の一端側及び他端側に一致する。以下、カム本体部42の長さ方向の一端及び他端を単にカム本体部42の一端及び他端とする。
【0035】
次いで、カム本体部42の詳細について説明する。
カム本体部42の上面には図6の(a)及び(b)に示されるように、第1カム面44〜第5カム面48を有するカム面43が形成されている。また、第1カム面44〜第5カム面48の一端側及び他端側は、カム本体部42の一端側及び他端側に一致する。
【0036】
そして、第1カム面44は、引っ張り軸2の軸方向に平行(水平)な底面で構成され、第2カム面45は第1カム面44の一端に連結されて第1カム面44からの高さがカム本体部42の一端側に向かって漸次高くなる傾斜面により構成されている。また、第3カム面46が、第2カム面45の一端に連結されてカム本体部42の一端側に延在する水平面により構成されている。このとき、第1カム面44と第3カム面46との間の高さ方向の距離は、前述の第2距離d2と同じになっている。
【0037】
さらに、第4カム面47が、第3カム面46の一端に連結されて第3カム面46からの高さがカム本体部42の一端側に向かって漸次高くなる傾斜面により構成され、第5カム面48が、第4カム面47の一端とカム本体部42の一端との間に、第1カム面44からの高さ方向の距離が前述の第1距離d1となるように形成された水平面で構成されている。また、三角形の位置調整マーカ49が、頂点の一つで第1カム面44の所定の部位を指し示すようにカム本体部42の側壁面に印刷されている。そして、カム本体部42の長さ方向に関し、位置調整マーカ49に指し示された第1カム面44の部位と第3カム面46の他端との間の距離はL2であり、位置調整マーカ49で指し示された第1カム面44の部位と第5カム面48の他端との間の距離はL1となっている。
ここでは、距離L1は12.5mmとされ、距離L2は7.5mmとされている。
【0038】
また、ガイド部51は、それぞれ偏平円柱状に形成された切り欠き挿通部52、及び抜け防止部53が同軸に連結されて構成されている。
切り欠き挿通部52は、その軸方向が鉛直方向に一致し、カム本体部42の下部外壁面42aから下方に突設されてガイド切り欠き31に挿通されている。このとき、切り欠き挿通部52の下端面は、ガイド切り欠き31から僅かに下方に突出している。また、切り欠き挿通部52の外周面とガイド切り欠き31の内側壁面との間の略隙間も僅かである。
【0039】
そして、抜け防止部53は、ガイド切り欠き31の幅より大きな直径を有し、切り欠き挿通部52の下端面に同軸に連結されている。これにより、抜け防止部53の上端面の一部とカム取付部30aの下面とは、僅かに隙間をあけて相対している。
【0040】
次いで、動力伝達手段について説明する。
動力伝達手段は、カム本体部42に形成された一対のガイド孔50、及び引っ張り軸2の移動に連動して移動し、上端側がガイド孔50に挿入されたガイドピン55とで構成される。
一対のガイド孔50は、その孔形状が孔方向を鉛直方向とする円形であり、開口がガイド切り欠き31に臨むようにカム本体部42の両端近傍に形成されている。このとき、ガイド孔50の互いの孔中心の間隔は、ピン取付辺27bに形成された一対の貫通孔28の孔中心の間隔に一致している。
【0041】
ガイドピン55は、図4に示されるように、外周にネジ溝を有する円柱状のネジ部56、及びネジ部56より大径の円柱形状に形成されてネジ部56の一端面に同軸に連結されたカム挿入部57を有している。
【0042】
そして、一対のガイドピン55のそれぞれのネジ部56が図1〜図3に示されるように、ピン取付辺27bに形成された貫通孔28のそれぞれに上方から挿通され、ナット58によりピン取付辺27bに締着固定されている。これにより、ガイドピン55は、引っ張り軸2の移動に連動して引っ張り軸2と同じ方向に同じ量だけ移動する。また、ガイドピン55の軸方向は鉛直方向に一致している。
【0043】
さらに、カム挿入部57の上端側は、ガイド切り欠き31に挿通され、さらにガイド孔50に挿入されている。このとき、ガイド孔50の内壁面とカム挿入部57の外周面との間の隙間は僅かである。即ち、引っ張り軸2の移動に連動して移動するガイドピン55は、ガイド孔50内での移動が、鉛直方向に対しては自在となるが、ガイド切り欠き31の延在方向に対してはガイド孔50の内周面により規制される。
【0044】
ここで、引っ張り軸2は、踏段鎖72の伸びに起因して自身の軸方向へ移動する他、踏段鎖72の走行に伴う自身の揺動によっても移動する。そして、引っ張り軸2の揺動による移動方向は、主に引っ張り軸2の軸方向を含む鉛直面内のいずれかの方向となる。即ち、引っ張り軸2の移動力のベクトルは、鉛直方向成分とガイド切り欠き31の延在方向成分とに分けられ、また、引っ張り軸2の移動に連動して移動するガイドピン55の移動力のベクトルも同様である。
【0045】
ここで、上述したように、ガイドピン55とスライドカム41とは、カム挿入部57が、孔方向が鉛直方向に一致するガイド孔50に遊嵌状態に挿入されて連結されている。このため、ガイドピン55が鉛直方向へ移動する場合、ガイドピン55はガイド孔50の孔内を孔方向に移動するだけとなり、ガイドピン55(引っ張り軸2)の移動力のベクトルの鉛直方向成分は、スライドカム41に伝達されることがない。従って、引っ張り軸2が鉛直方向に移動してもスライドカム41が鉛直方向に移動することはない。
【0046】
一方、ガイドピン55の移動力のベクトルのガイド切り欠き31の延在方向成分は、カム挿入部57が当接するカム本体部42のガイド孔50の部位に伝達される。このとき、引っ張り軸2の軸方向とガイド切り欠き31の延在方向は一致しているので、スライドカム41は、引っ張り軸2の自身の軸方向への移動量だけ、引っ張り軸2の移動に連動して引っ張り軸2の軸方向にスライド移動する。
【0047】
そして、上述したリミットスイッチ10は、プランジャ14の出没方向(変位方向)が鉛直方向に一致するように、かつ、スライドカム41が初期位置にあるときに、プランジャローラ14bの先端(プランジャ14の先端)が、位置調整マーカ49が指し示す第1カム面44の部位に接するように配置されている。なお、踏段鎖72が伸び、作動腕27が引っ張り軸2とともに引っ張り軸2の軸方向に移動する前のスライドカム41の位置をスライドカム41の初期位置とする。
【0048】
次いで、監視制御盤60の詳細構成について図8を参照しつつ説明する。
監視制御盤60は、演算制御手段としてのCPU61、外部から入力された各種信号に基づいて、CPU61に所定の演算制御を行わせるためのプログラムが書き込まれたROM62、及びCPU61が行う各種演算のワーキングエリアに用いられるRAM63などを有している。
【0049】
次いで、踏段鎖異常検出装置9を備えるエスカレータ1のシステム構成について図8を参照しつつ説明する。
リミットスイッチ10のb接点接続端子23及び共通接点接続端子24が、駆動機75への通電経路にシリーズに組み込まれている。このとき、共通接点接続端子24が図示しない電源の高圧側端子67aに接続されている。さらに、駆動機75の電源入出力端子(図示せず)のそれぞれが、b接点接続端子23と電源の低圧側端子67bとに接続されている。即ち、b接点20は、開成したときに駆動機75への通電経路を遮断するように構成されている。
【0050】
前述したように、a接点接続端子22、b接点接続端子23、及び共通接点接続端子24は第1導電片16、第2導電片17、及び共通導電片18のそれぞれに電気的に接続されている。そして、摺接片15が、共通導電片18と第1導電片16及び第2導電片17の少なくとも一方との間を電気的に接続するようになっている。
【0051】
さらに、a接点接続端子22及びb接点接続端子23は、監視制御盤60に電気配線65a,65bを用いて接続されている。このとき、電気配線65a,65bのそれぞれは、高抵抗66a,66bのそれぞれを介して接地されている。そして、監視制御盤60のCPU61はa接点接続端子22及びb接点接続端子23の電圧を読み取り可能になっている。また、監視制御盤60は、エスカレータ1の管理者が駐在する情報センタ68に通信ケーブルなどで接続されている。
【0052】
そして、a接点接続端子22及びb接点接続端子23の出力電圧は、a接点19及びb接点20の状態が切り替るときに接地電圧から所定の値の電圧に、又は所定の値の電圧から接地電圧に切り替る。これをもとに、監視制御盤60のCPU61はそれぞれの接点が閉成状態にあるか開成状態にあるかを判断し、a接点19及びb接点20の状態に応じた報知を情報センタ68に行うようになっている。
なお、b接点20が開成されたときに監視制御盤60に入力される接地電圧をb接点20の開成信号、a接点19が閉成されたときに監視制御盤60に入力される所定の値の電圧をa接点19の閉成信号とする。
【0053】
次いで、上記のように構成された踏段鎖異常検出装置9の配設手順について説明する。
予め、作動腕27の軸固定辺27aを引っ張り軸2にナット29a,29bで固定したのち、ブラケット3、コイルばね5、バネ座8、及びダブルナット7を従来の踏段鎖破断検出装置80と同様に配設する。
そして、初期状態では、引っ張り軸2が所定の張力で下部トラスエンド78b側に引っ張られるように、コイルばね5を収縮させてダブルナット7を螺着する。これにより、引っ張り軸2が所定の張力で下部トラスエンド78b側に引っ張られるので、下鎖車74も下部トラスエンド78b側に所定の張力で引っ張られて、踏段鎖72のたるみが除かれる。ここで、作動腕27の引っ張り軸2の軸方向位置は一対のナット29a,29bの螺着位置を移動させることにより調整可能になっている。
【0054】
そして、カム取付部30aが水平となるように、かつ、ガイド切り欠き31の延在方向が引っ張り軸2の軸方向に一致するように取付金具30の向きを調整する。さらに、取付金具30の位置を、ガイド切り欠き31の幅中心が、ピン取付辺27bの貫通孔28の孔中心の上方に配置されるように調整した後、スイッチ固定部30bをトラス78に固定する。
【0055】
そして、スライドカム41のガイド孔50のそれぞれの孔中心が、ピン取付辺27bの貫通孔28のそれぞれの孔中心の鉛直上方に位置するようにスライドカム41をスライド移動する。さらに、ガイドピン55をガイド孔50から挿入して、そのネジ部56をピン取付辺27bに締着固定する。
【0056】
次いで、リミットスイッチ10を、プランジャ14の出没方向を鉛直方向(長孔32の延在方向)に一致させ、スライドカム41の上方の任意の位置でビス33を用いてスイッチ固定部30bに仮止めする。なお、リミットスイッチ10は、取付金具30をトラス78に固定する前に、プランジャローラ14bの先端をガイド切り欠き31側に向け、かつ、プランジャ14の出没方向が長孔32の延在方向に一致するように配設しておいてもよい。
【0057】
さらに、ナット29a,29bの螺着位置を調整することにより、作動腕27とともにスライドカム41を移動させ、位置調整マーカ49の頂点が指し示す第1カム面44の部位とプランジャローラ14bの先端とが相対する初期位置にスライドカム41を配置する。
【0058】
そして、ビス33を緩めてリミットスイッチ10を、そのプランジャローラ14bの先端が第1カム面44に接触(ジャストタッチ)するところまで鉛直方向下方に移動したところで、ビス33を再び締めて、リミットスイッチ10をスイッチ固定部30bに固定する。そして、リミットスイッチ10と監視制御盤60との間を電気配線65a,65bにて接続する。これにより、踏段鎖異常検出装置9の配設が終了する。
【0059】
次いで、踏段鎖異常検出装置9を備えるエスカレータ1の全体動作について図9を参照しつつ説明する。
上述したように、図9の(a)に示されるリミットスイッチ10の初期位置は、スライドカム41が初期位置にあるときに、位置調整マーカ49が指し示す第1カム面44の部位にプランジャローラ14bの先端が接するように調整されている。
【0060】
そして、エスカレータ1の運行により、踏段鎖72に経年的な伸びが発生すると、引っ張り軸2が図1中、自身の軸方向の他端側(下部トラスエンド78b側)に移動する。これにより、下鎖車74が他端側に移動され、踏段鎖72に付与される所定の張力が確保される。また、引っ張り軸2の移動に連動して作動腕27が移動すると、引っ張り軸2の移動力がガイドピン55を介してスライドカム41に伝達される。これにより、スライドカム41は、引っ張り軸2の自身の軸方向への移動量と同じ量だけガイド切り欠き31の延在方向に水平移動する。
以下、スライドカム41のガイド切り欠き31の延在方向への移動量を単にスライドカム41の移動量とする。
【0061】
そして、踏段鎖72が経年的に伸び続けると、スライドカム41は、第1カム面44がプランジャローラ14bの先端に接した状態でガイド切り欠き31の延在方向の他端側に移動し、図9の(b)に示されるように第2カム面45に当接する。さらに、スライドカム41が移動するにつれ、プランジャローラ14bは第2カム面45に徐々に押し込まれる。そして、スライドカム41の移動量が、図9の(c)に示されるように前述の距離L2と同じ値の第2移動量M2となったところで、プランジャローラ14bは、第3カム面46の他端側の部位により押しこまれ、プランジャ14の押し込み量が第2距離d2に達してa接点19が閉成する。
【0062】
このとき、a接点19の閉成信号が監視制御盤60に入力され、監視制御盤60のCPU61は、踏段鎖72の伸び量が、踏段鎖72の張力の再調整を行う必要がある伸び量に達したと判断し、踏段鎖72の再調整を促すための警告信号を情報センタ38に発信する。これにより、エスカレータ1の管理者は、踏段鎖72の張力の再調整時期が到来したと判断する。そして、エスカレータ1の管理者は、保守作業員を派遣し、踏段鎖72に適切な張力を与えるようにコイルばね5の収縮量を再調整するとともに、作動腕27、及びリミットスイッチ10の位置を再調整するなどの対応を作業員にとらせる。
【0063】
また、何等かの原因で急激に踏段鎖72が伸長したり、踏段鎖72が破断したりして、初期位置からの引っ張り軸2の移動量が急激に増大したときには、スライドカム41は、第3カム面46がプランジャ14に接した状態で移動して第4カム面47に当接し、スライドカム41は図9の(d)に示されるように第4カム面47によりプランジャローラ14bを押し込みながら急激に移動する。そして、スライドカム41の移動量が図9の(e)に示されるように、前述の距離L1と同じ値の第1移動量M1となったところで、プランジャローラ14bは、第5カム面48の他端側の部位により押しこまれ、プランジャ14の押し込み量が第1距離d1に達してb接点20が開成する。これにより、踏段鎖72の異常伸びがリミットスイッチ10で検出される。
【0064】
このとき、b接点20が開成するとともに、駆動機75への通電が遮断されて踏段鎖72の走行が強制的に停止される。そして、b接点20の開成信号が監視制御盤60に入力され、CPU61はb接点20が開成したと判断し、引っ張り軸2を第1移動量M1以上移動させる踏段鎖72の異常伸びが発生したことを報知する緊急対処警告信号を情報センタ68に送信する。
【0065】
この実施の形態の踏段鎖異常検出装置9によれば、引っ張り軸2の鉛直方向の移動力を伝達することなく、ガイド切り欠き31の延在方向の移動力をカム本体部42に伝達する構成としている。これにより、引っ張り軸2の移動方向にかかわらず、スライドカム41は、引っ張り軸2の自身の軸方向への移動量と同じ量だけガイド切り欠き31の延在方向に水平移動し、鉛直方向へは移動しない。また、カム本体部42は、スライドカム41の移動量が第1移動量M1以上となったときに、プランジャ14の押し込み量が第1距離d1以上となるようにプランジャ14を押圧し、引っ張り軸2の自身の軸方向への初期位置からの移動量が第2移動量以上となったときにプランジャ14の押し込み量が第2距離d2以上となるようにプランジャ14を押圧する面形状に構成されたカム面43を有している。
【0066】
ここで、上述したように、リミットスイッチ10においては、a接点19が閉成するプランジャ14の押し込み量である第2距離d2が1mm、b接点20が開成するプランジャ14の押し込み量である第1距離d1が2.5mmであるものが用いられている。このように、第1距離d1と第2距離d2の差は大変狭いものとなっている。なお、上述のリミットスイッチ10に限らず、一般的に広く普及されている常開式のa接点及び常閉式のb接点を有するリミットスイッチにおいても、a接点が閉成するプランジャの押し込み量である第2距離、b接点が開成するプランジャの押し込み量である第1距離との差は僅か数mmのものが多い。
【0067】
上述したように、スライドカム41の鉛直方向の位置は、引っ張り軸2が移動して、引っ張り軸2の鉛直方向の位置が変化しても一定のままとなる。これにより、例えば、プランジャローラ14bが第1カム面44に接した状態にあるときに、引っ張り軸2の揺動などに起因して引っ張り軸2の鉛直方向の位置が変化しても、a接点19又はb接点20が開成されることが抑制される。また、プランジャローラ14bが第3カム面46の他端と第5カム面48の他端との間の所定の部位に所定量押し込まれた状態にあるときに、引っ張り軸2の鉛直方向の位置が変化してもb接点20が開成されることが抑制される。
【0068】
即ち、引っ張り軸2が、自身の軸方向だけでなく、鉛直方向に移動したとしても、a接点19は、引っ張り軸2の自身の軸方向への移動量が第2移動量M2となったときに初めて閉成し、b接点20は、引っ張り軸2の自身の軸方向への移動量が第1移動量M1となったときに初めて開成する。
【0069】
つまり、仮にスライドカム41が、引っ張り軸2の鉛直方向への移動に連動して鉛直方向に移動する場合、引っ張り軸2の自身の軸方向への移動量が第1移動量M1に達する前にb接点20が開成したり、引っ張り軸2の自身の軸方向への移動量が第2移動量M2に達する前にa接点19が閉成したりする。
これに対し、踏段鎖異常検出装置9では、スライドカム41の鉛直方向への移動が抑制されたので、引っ張り軸2の自身の軸方向への移動量が第2移動量M2及び第1移動量M1に達する前にa接点19が閉成したり、b接点20が開成したりする誤動作をなくすことができる。
【0070】
これにより、a接点19の開成信号及びb接点20の開成信号のそれぞれを、踏段鎖72の張力の再調整時期の到来及び踏段鎖72の異常な伸び発生のそれぞれに関連付けさせてエスカレータ1の動作を規定することができる。ここで、引っ張り軸2の鉛直方向への揺動は、踏段鎖72の伸びに起因するものではない。
そこで、第2移動量M2を張力の再調整の必要性が発生する踏段鎖72の伸び量に対応する初期位置からの引っ張り軸2の自身の軸方向への移動量として設定する。また、第1移動量M1を踏段鎖72の所定の張力が保てなくなる前の踏段鎖72の伸び量に対応する初期位置からの引っ張り軸2の自身の軸方向への移動量として設定する。また、この実施の形態では、第1移動量M1は12.5mmとし、第2移動量M2は7.5mmとしているが、エスカレータ1の仕様に応じて第1移動量M1及び第2移動量M2の値は適宜設定すればよい。
【0071】
上述したように、a接点19が閉成したときには、監視制御盤60は、警告信号を情報センタ68に送信し、b接点20が開成したときには、駆動機75への通電が強制的に遮断して、踏段鎖72の走行が強制的に停止されるとともに、監視制御盤60が緊急対処警告信号を情報センタ68に送信している。これにより、エスカレータ1の管理者は、引っ張り軸2の移動量が第2移動量M2に達した時点で、踏段鎖72の張力の再調整時期が到来したことを認識可能となるので、踏段鎖72の張力をタイムリーに再調整することができる。つまり、管理者は、踏段鎖72の伸び量が、その走行を停止させるべき異常な量となる前に、踏段鎖72の張力の再調整時期が到来したことを認識可能であり、引っ張り軸2の移動量が第1移動量M1に達してエスカレータ1が突然に停止することが最大限に防止できる。これにより、利用者に負担をかけることが未然に防止できる。
【0072】
また、従来の踏段鎖破断検出装置80の配設においては、作動片87aと作動片87aが作用する検出器81の所定部位との間の距離を距離計測器などを用いて厳密に管理しつつ作動片87aと検出器81の初期位置の調整を行う必要がある。
【0073】
一方、踏段鎖異常検出装置9のリミットスイッチ10と作動腕27の初期位置の調整は、まず、位置調整マーカ49が指し示すスライドカム41の第1カム面43の部位とプランジャローラ14bの先端とが相対するように作動腕27を移動し、プランジャローラ14bの先端が第1カム面43に接触するようにリミットスイッチ10を移動するだけである。従って、リミットスイッチ10と作動腕27の初期位置の調整は距離計測器などを用いずに容易に行うことができるので、踏段鎖異常検出装置9の配設にかかる時間を短縮することができる。
【0074】
なお、上記実施の形態では、乗客コンベアとしてのエスカレータ1に適用するものとして説明しているが、本発明は、動く歩道などの乗客コンベアに対しても適用できる。
【0075】
また、引っ張り軸2が、その一端を上下一対の鎖車のうちの下鎖車74に連結されて上鎖車73から離反する方向に延設され、コイルばね5が引っ張り軸2を介して下鎖車74を上鎖車73から離反する方向に付勢するように配設されるものとして説明したが、引っ張り軸2は上鎖車73に連結されて下鎖車74から離反する方向に延設され、コイルばね5が引っ張り軸2を介して上鎖車73を下鎖車74から離反する方向に付勢するように配設されているものでもよい。
【0076】
また、ガイド孔50の孔形状は、カム挿入部57の外形より僅かに大きな直径を有する円形であるものとして説明したが、ガイド孔の形状は、長軸方向を引っ張り軸2に垂直かつ水平な方向とする長孔であってもよい。このとき、短軸方向は、ガイド切り欠き31の延在方向に一致し、かつ、短軸方向の長さがガイド挿通部の直径より僅かに長い形状とする。そして、上記説明では、引っ張り軸2の揺動による移動方向は、引っ張り軸2の軸方向を含む鉛直面内のいずれかの方向となるものとして説明したが、引っ張り軸2が当該鉛直面に垂直な方向、即ち、長軸方向にも揺動する場合、ガイド孔の形状を楕円形とすることで以下の効果が得られる。
【0077】
ここで、ガイド孔の長軸方向の長さは、ガイド孔の内壁面とガイド挿通部の外周面との間の隙間が、ガイド孔の長軸方向に関し、引っ張り軸2の揺動に起因する引っ張り軸2の長軸方向への最大の移動幅より大きくなるように形成する。
これにより、引っ張り軸2の長軸方向への移動に起因してガイドピン55が移動しても、ガイド孔の内壁面には当接しないので、ガイドピン55に大きな圧力がかかってガイドピン55が破損することが防止される。
【0078】
また、引っ張り軸2の軸方向は水平な方向に一致するものとして説明したが、引っ張り軸2の軸方向は水平であるものに限定されない。そして、取付金具30のカム取付部30aは、引っ張り軸2の軸方向が水平方向から所定角度傾斜していても、引っ張り軸2の軸方向が水平な方向に一致する場合と同様に、ガイド切り欠き31の延在方向が引っ張り軸2の軸方向を含む鉛直面内の水平方向に延在するように配設すればよい。このとき、引っ張り軸2の自身の軸方向への移動量と、引っ張り軸2の移動に連動してガイド切り欠き31の延在方向に水平移動するスライドカム41の移動量は異なる。この場合は、引っ張り軸2の第1移動量M1に対応するスライドカム41の移動量を上述の距離L1に設定し、引っ張り軸2の第2移動量M2に対応するスライドカム41の移動量を上述の距離L2に設定して、カム本体部42のカム面43を形成すればよい。
【0079】
また、カム面43は、第1カム面44〜第5カム面48により構成されるものとして説明したが、カム面43は第1カム面44〜第5カム面48により構成されるものに限定されない。カム面43は、引っ張り軸2の自身の軸方向への移動量が第1移動量M1以上となったときに、プランジャ14の押し込み量が第1距離d1以上となるようにプランジャ14を押圧し、引っ張り軸2の自身の軸方向への初期位置からの移動量が第2移動量以上となったときにプランジャ14の変位量が第2距離d2以上となるようにプランジャ14を押圧するものであればその面形状は問わない。例えば、カム面43は、第1カム面44の一端と第5カム面48の他端との間が一つの傾斜面で構成されているものなどでもよい。
【0080】
さらに、カム面43が、スライドカム41が第2移動量M2移動したときに、初期位置からのプランジャ14の押し込み量が距離d2だけ減少するようにプランジャ14を変位させてa接点20を閉成させ、スライドカム41が第1移動量M1以上移動したときに初期位置からのプランジャ14の押し込み量が距離d1だけ減少するようにプランジャ14を変位させてa接点20を開成させる面形状に構成されているものでもよい。
【0081】
また、リミットスイッチは、図2に示されるリミットスイッチ10の構成に限定されるものではなく、初期位置からのプランジャ14の変位量が第2距離d2以上になるとa接点19が閉成し、初期位置からのプランジャ14の変異量が第1距離d1以上になるとb接点20が開成するように構成されていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】この発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置の正面図である。
【図2】この発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置の側面図である。
【図3】図1のIII−III矢視要部断面図である。
【図4】この発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置の要部分解正面図である。
【図5】この発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置のリミットスイッチにおけるa接点及びb接点の動作を説明するための断面図である。
【図6】この発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置のスライドカムの構成を説明する拡大図である。
【図7】この発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置のリミットスイッチにおけるa接点及びb接点の状態を示す図である。
【図8】この発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置のシステム構成図である。
【図9】この発明に係る乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置の動作を説明する図である。
【図10】従来の踏段鎖破断検出装置を備えるエスカレータの模式図である。
【図11】従来の踏段鎖破断検出装置の拡大図である。
【符号の説明】
【0083】
1 エスカレータ(乗客コンベア)、2 引っ張り軸、5 コイルばね、9 踏段鎖異常検出装置、10 リミットスイッチ、11 ケース、14 プランジャ、19 a接点、20 b接点、30a カム取付部、31 ガイド切り欠き、50 ガイド孔(動力伝達手段)、55 ガイドピン(動力伝達手段)、60 監視制御盤、71 踏段、72 踏段鎖、73 上鎖車(鎖車)、74 下鎖車(鎖車)、75 駆動機、78 トラス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の踏段がトラスの乗り口側と降り口側とに設置された一対の鎖車に掛け渡された無端状の踏段鎖に連結され、引っ張り軸がその一端を上記一対の鎖車の一方の鎖車に連結されて他方の鎖車から離反する方向に延設され、コイルばねが上記引っ張り軸を介して上記一方の鎖車を上記他方の鎖車から離反する方向に付勢するように配設され、駆動機が上記他方の鎖車を回転駆動することにより上記踏段鎖を循環移動させるように構成され、上記踏段鎖の伸びに伴って軸方向に移動する引っ張り軸の移動量が第1移動量以上となったときに上記踏段鎖の異常伸びを検出する乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置であって、
ケースに出没自在に配設されたプランジャ、該プランジャの初期位置からの変位量が第1距離以上で開成して上記駆動機への通電経路を遮断するように構成されたb接点、及び上記プランジャの初期位置からの変位量が上記第1距離より小さな第2距離以上で閉成するa接点を有するリミットスイッチと、
上記引っ張り軸と相対して配設され、該引っ張り軸の軸方向を含む鉛直面内の水平方向に延在するガイド切り欠きが形成されたカム取付部と、
上記ガイド切り欠きに案内されて該ガイド切り欠きの延在方向に水平移動可能に上記カム取付部に配設されたカム本体部と、
上記引っ張り軸の移動に連動して移動し、該引っ張り軸の鉛直方向の移動力を伝達することなく上記ガイド切り欠きの延在方向の移動力を上記カム本体部に伝達する動力伝達手段と、
上記a接点の閉成信号が入力されると上記踏段鎖の張力の調整時期が到来したことを報知する監視制御盤と、を備え、
上記カム本体部は上記引っ張り軸の自身の軸方向への初期位置からの移動量が上記第1移動量以上となったときに、上記プランジャの変位量が上記第1距離以上となるように上記プランジャを押圧し、上記引っ張り軸の自身の軸方向への初期位置からの移動量が上記第1移動量より小さい第2移動量以上となったときに上記プランジャの変位量が上記第2距離以上となるように上記プランジャを押圧する面形状のカム面を有することを特徴とする乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置。
【請求項2】
上記動力伝達手段は、孔方向を鉛直方向とし、開口が上記ガイド切り欠きに臨むようにカム本体部に形成されたガイド孔と、軸方向を鉛直方向として上記ガイド切り欠きを挿通して該ガイド孔に挿入され、上記引っ張り軸の移動に連動して移動可能に配設されたガイドピンと、を備え、
上記ガイドピンは、上記ガイド孔内での移動が、鉛直方向に自在であり、かつ、ガイド切り欠きの延在方向には上記ガイド孔の内周面により規制されていることを特徴とする請求項1記載の乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置。
【請求項3】
上記ガイド孔の孔形状は、その長軸方向を上記引っ張り軸に垂直かつ水平な方向とする長孔に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置。
【請求項1】
複数の踏段がトラスの乗り口側と降り口側とに設置された一対の鎖車に掛け渡された無端状の踏段鎖に連結され、引っ張り軸がその一端を上記一対の鎖車の一方の鎖車に連結されて他方の鎖車から離反する方向に延設され、コイルばねが上記引っ張り軸を介して上記一方の鎖車を上記他方の鎖車から離反する方向に付勢するように配設され、駆動機が上記他方の鎖車を回転駆動することにより上記踏段鎖を循環移動させるように構成され、上記踏段鎖の伸びに伴って軸方向に移動する引っ張り軸の移動量が第1移動量以上となったときに上記踏段鎖の異常伸びを検出する乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置であって、
ケースに出没自在に配設されたプランジャ、該プランジャの初期位置からの変位量が第1距離以上で開成して上記駆動機への通電経路を遮断するように構成されたb接点、及び上記プランジャの初期位置からの変位量が上記第1距離より小さな第2距離以上で閉成するa接点を有するリミットスイッチと、
上記引っ張り軸と相対して配設され、該引っ張り軸の軸方向を含む鉛直面内の水平方向に延在するガイド切り欠きが形成されたカム取付部と、
上記ガイド切り欠きに案内されて該ガイド切り欠きの延在方向に水平移動可能に上記カム取付部に配設されたカム本体部と、
上記引っ張り軸の移動に連動して移動し、該引っ張り軸の鉛直方向の移動力を伝達することなく上記ガイド切り欠きの延在方向の移動力を上記カム本体部に伝達する動力伝達手段と、
上記a接点の閉成信号が入力されると上記踏段鎖の張力の調整時期が到来したことを報知する監視制御盤と、を備え、
上記カム本体部は上記引っ張り軸の自身の軸方向への初期位置からの移動量が上記第1移動量以上となったときに、上記プランジャの変位量が上記第1距離以上となるように上記プランジャを押圧し、上記引っ張り軸の自身の軸方向への初期位置からの移動量が上記第1移動量より小さい第2移動量以上となったときに上記プランジャの変位量が上記第2距離以上となるように上記プランジャを押圧する面形状のカム面を有することを特徴とする乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置。
【請求項2】
上記動力伝達手段は、孔方向を鉛直方向とし、開口が上記ガイド切り欠きに臨むようにカム本体部に形成されたガイド孔と、軸方向を鉛直方向として上記ガイド切り欠きを挿通して該ガイド孔に挿入され、上記引っ張り軸の移動に連動して移動可能に配設されたガイドピンと、を備え、
上記ガイドピンは、上記ガイド孔内での移動が、鉛直方向に自在であり、かつ、ガイド切り欠きの延在方向には上記ガイド孔の内周面により規制されていることを特徴とする請求項1記載の乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置。
【請求項3】
上記ガイド孔の孔形状は、その長軸方向を上記引っ張り軸に垂直かつ水平な方向とする長孔に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の乗客コンベアの踏段鎖異常検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−132513(P2009−132513A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310847(P2007−310847)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】
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