説明

乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜

【課題】化粧層表面の色褪せ及び変形を生じさせることなく、帆布層の補修を精度よく、かつ、難なく行える乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜の提供。
【解決手段】上記課題は、複数の帆布を積層してなる帆布層と、この帆布層の表面を覆う化粧層と、前記帆布層に埋設される抗張体とからなり、かつ、断面形状を略C字状に形成してなる乗客コンベア用移動手摺であって、この乗客コンベア用移動手摺の帆布層を補修する乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜において、上板2と、この上板2に設けられた発熱体3と、上板2によって押圧され、かつ、発熱体3の熱を伝導することで帆布層の損傷部を加熱加圧する中型部材4と、化粧層の表面に接触した下板5と、この下板5に設けた放熱体と、上板2を下板5側の押圧することで、中型部材4を帆布層の補修部に加圧させる加圧手段7を包含する構成とすることで、達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、乗客コンベア用移動手摺は、複数の帆布を積層してなる帆布層と、この帆布層の表面を覆う化粧層と、前記帆布層に埋設される抗張体とからなり、帆布層の帆布間、帆布層の帆布と抗張体との間及び帆布層と化粧層との間を接着剤で接着するとともに、かつ、断面形状を略C字状とする構成にしてある。そして、この乗客コンベア用移動手摺は、移動手摺駆動装置により挟圧駆動されて、案内する軌道から屈曲することで伸縮したり、ガイドレールとの間の摩擦で帆布層の表面が摩耗したりするために、長時間使用している間に、帆布層の帆布間及び帆布層の帆布と抗張体との間に層間剥離が発生したり、帆布層の表面が摩耗劣化したりしてしまう。その結果、抗張体が帆布層の表面から外方に飛び出してしまうという不具合が発生するので、乗客コンベア用移動手摺を定期的に点検して、帆布層の摩耗劣化や層間剥離などを見つけたならば、その乗客コンベア用移動手摺の補修をする必要があった。
【0003】
従来の乗客コンベア用移動手摺を補修するための帆布補修釜30としては、図5に示すように、上板31と下板32との間に、乗客コンベア用移動手摺33の全周を、上型34、下型35及び3個の中型36、37、38によって挟み込むように設置して、上型34に設けた上発熱体34Aと下型35に設けた下発熱体35Aの熱によって乗客コンベア用移動手摺33の全周を加熱するとともに、加圧ボルト39A及びナット39Bからなる複数個の加圧手段39によって上板31を下板32に向って押圧させることで乗客コンベア用移動手摺33の全周を加圧するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
乗客コンベア用移動手摺を補修するための加熱整圧器(アイロン)40としては、図6に示すように、発熱体を内蔵した本体ケース部41と、この本体ケース部41の下面に形成された加熱面42と、本体ケース部41の上面に形成された取手部43と、本体ケース部41に内蔵された発熱体に100V電源を接続するための電源コード44からなり、乗客コンベアの踏段上に任意に設置された作業台に、乗客コンベア用移動手摺を、その乗客コンベア用移動手摺の帆布層表面が上向きとなるように載せた後、その帆布層表面の補修部に本体ケース部41の加熱面42を人手で押し当てることで、帆布層表面の補修部の補修作業が行えるようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2000−289027号公報
【特許文献2】特開平11−60131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図5に示す乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜では、乗客コンベア用移動手摺33の全周を、上型34、下型35及び3個の中型36、37、38によって挟み込み加熱加圧するようにしているので、帆布層表面の補修部以外の化粧層表面全周も加熱加圧されるため、化粧層表面が色褪せたり変形したりしてしまうという問題があった。しかも、図5に示す乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜は、上型34、下型35及び3個の中型36、37、38という5個の型を必要とするために、重量物となり、運搬性及び取扱性が悪く、乗客コンベア用移動手摺の補修作業性がよくないという問題があった。
【0006】
さらに、図6に示す乗客コンベア用移動手摺用の加熱整圧器では、帆布層表面の補修部に本体ケース部41の加熱面42を人手で押し当てるようにしているため、帆布層の帆布や抗張体を接着するのに十分な加圧力を、帆布層表面の補修部全域に均一に加えることが困難であって、乗客コンベア用移動手摺の補修精度が悪いという問題があった。
【0007】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、補修部ではない化粧層表面の色褪せ及び変形を生じさせることなく、帆布層の補修部の補修を精度よく、かつ、難なく行うことのできる乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の帆布を積層してなる帆布層と、この帆布層の表面を覆う化粧層と、前記帆布層に埋設される抗張体とからなり、かつ、断面形状を略C字状に形成してなる乗客コンベア用移動手摺であって、この乗客コンベア用移動手摺の前記帆布層の帆布を補修する乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜において、上板と、この上板に設けられた発熱体と、前記上板によって押圧され、かつ、前記発熱体の熱を伝導することで前記帆布層の補修部を加熱加圧する中型部材と、前記化粧層の表面に接触した下板と、この下板に設けた放熱体と、前記上板を前記下板側に押圧することで、前記中型部材を前記帆布層の補修部に加圧させる加圧手段とを包含する構成としたことを特徴としている。
【0009】
さらに、本発明は、前記上板と前記発熱体との間に、前記発熱体の熱を断熱する断熱手段を設けたことを特徴としている。
【0010】
さらに、本発明は、前記中型部材を、前記上板側に接触させる第1中型部材と、上端面側を前記第1中型部材に接触させ、かつ、下端面側を前記帆布層の補修部の表面に接触させてなる一対の第2中型部材とから構成し、この一対の第2中型部材を、この第2中型部材の一方に設けた溝とこの第2中型部材の他方に設けた突起により平板状に組み立てられる構成としたことを特徴としている。
【0011】
さらに、本発明は、複数の帆布を積層してなる帆布層と、この帆布層の表面を覆う化粧層と、前記帆布層に埋設される抗張体とからなり、かつ、断面形状を略C字状に形成してなる乗客コンベア用移動手摺であって、この乗客コンベア用移動手摺の前記帆布層の帆布を補修する乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜において、上板と、前記上板によって押圧され、かつ、内蔵した発熱体の熱を伝導することで前記帆布層の補修部を加熱加圧する中型部材と、前記化粧層の表面に接触した下板と、この下板に設けた放熱体と、前記上板を前記下板側の押圧することで、前記中型部材を前記帆布層の補修部に加圧させる加圧手段とから少なくとも構成したことを特徴としている。
【0012】
さらに、本発明は、前記中型部材を、前記上板側に接触され、かつ、前記発熱体を内蔵させた第1中型部材と、上端面側を前記第1中型部材に接触させ、かつ、下端面側を前記帆布層の補修部の表面に接触させてなる一対の第2中型部材とから構成し、この一対の第2中型部材を、この第2中型部材の一方に設けた溝とこの第2中型部材の他方に設けた突起により平板状に組み立てられる構成としたことを特徴としている。
【0013】
さらに、本発明は、前記上板側と前記発熱体を内蔵させた第1中型部材との間に、前記発熱体の熱を断熱する断熱材からなる高さ調整部材を設けたことを特徴としている。
【0014】
さらに、本発明は、前記コンベア用移動手摺の側面部外方に、前記放熱体が配設される構成としたことを特徴としている。
【0015】
さらに、本発明は、前記下板に、複数個の移動車輪を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、前記帆布層表面のみに接触する中型部材のみによって帆布層の補修部を加熱加圧するとともに、前記化粧層の表面に接触した下板及び下板に設けた放熱体によって前記化粧層の熱を放熱するようにしたので、化粧層表面の色褪せ及び変形を生じさせることなく、帆布層表面の補修部の補修を精度よく、かつ、効率よく行うことのできる乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜の一実施形態を、図1〜図4に、基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係り、乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜を示す要部縦断面図である。図2は、本発明の一実施形態に係り、乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜による帆布補修作業の説明図である。図3は、本発明の一実施形態に係り、乗客コンベア用移動手摺の構造説明図である。図4は、本発明の他実施形態に係り、乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜を示す要部縦断面図である。
【0018】
図1に示す本発明の一実施形態に係る乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜1は、平板状の上板2と、この上板2に設けられたシーズヒーターなどからなる発熱体3と、上板2によって押圧され、かつ、発熱体3の熱を伝導することで後述する乗客コンベア用移動手摺8の帆布層9おける補修部の表面に接触して加熱加圧する中型部材4と、後述する乗客コンベア用移動手摺8の化粧層10表面に接触した平板状の下板5と、この下板5に設けた放熱体6と、上板2を下板5側に押圧することで、中型部材4を後述する乗客コンベア用移動手摺8の帆布層9の補修部に加圧させるための複数個の加圧手段7を、包含する構成としてある。
【0019】
上板2及び下板5は、高強度材から形成される。中型部材4は、熱伝導率の優れたアルミニュムなどの材料から形成される。加圧手段7は、図1に示すように、乗客コンベア用移動手摺8を挟んで上板2及び下板5の左右端部にそれぞれ配設される加圧用ボルト7A及びナット7Bなどからなり、ナット7Bを下降させることで上板2を下板5側に向って押圧するようにしてある。放熱体6は、図1に示すように、コンベア用移動手摺8の両側面部8B外方に、それぞれ配設されるようにしてある。発熱体3は、図1に示すように、熱伝導率の優れた材料からなる耐熱性の固定板18によって上板2の下面側に予め固定されるようにしてある。上板2と発熱体3との間には、図1に示すように、発熱体3の熱を断熱する断熱材からなる断熱手段16と断熱用の空間17が設けられている。
【0020】
帆布補修釜1の下板5には、図2に示すように、乗客コンベアの踏段12上に設置した帆布補修釜1が踏段12上を移動させることができるようにするための、キャスターなどからなる移動用車輪13が複数個設けられている。移動用車輪13としては、オートスロープ用あるいは車輪部分がゴム製若しくはプラスチック製でストッパー付きのものが用いられる。帆布補修釜1には、発熱体3の発熱量を調節することによって中型部材4の温度を制御するための温度制御装置14が接続されている。図2において、符号15は、乗客コンベアの欄干を示している。帆布補修釜1は、ナット7Bを加圧用ボルト7Aから取り除き、上板2を上方に持ち上げて、上板2と加圧用ボルト7Aの嵌合状態を解除させることにより、上板2と下板5に分離できるようにしてある。
【0021】
エスカレーターや動く歩道などに用いられる乗客コンベア用移動手摺8は、図3示すように、複数の帆布を積層してなる帆布層9と、この帆布層9の表面を覆う化粧層10と、帆布層9に埋設される抗張体11とからなり、かつ、断面形状を略C字状とした構成になっている。そして、乗客コンベア用移動手摺8は、図3示すように、乗客コンベアの欄干15上に配置される背部8Aと、この背部8Aの両端から湾曲しながら下方に向って延接される一対の側面部8Bと、この一対の側面部8Bの下端から互いに近づくように突出する耳部8Cとに区分される。図3において、L寸法は、乗客コンベア用移動手摺8の両耳部8C間の間隔寸法を、H寸法は、乗客コンベア用移動手摺8の耳部8Cの外周下面から背部8Aの外周上面までの高さ寸法を、それぞれ示している。
【0022】
帆布層9は、綿などの天然繊維及びポリエステル、ナイロンなどの化学繊維を織ることで構成された帆布を複数枚積層することによって、構成されている。化粧層10は、屈曲性及引張力の優れたゴム若しくはプラスチックからなっている。本実施形態の帆布層9では、加硫スルフォン化ポリエチレンゴム製としてある。抗張体11は、帆布層9を構成する帆布の剛性よりも数百倍の剛性を有するスチール製のテープ若しくはコードあるいは帆布層9を構成する帆布の剛性よりも数百倍の剛性を有する強化化学繊維若しくはガラス繊維からなる織物若しくはコードからなっており、乗客コンベア用移動手摺8における帆布層9の背部8A内に埋設されている。帆布層9の帆布間、帆布層9の帆布と抗張体11との間及び帆布層9と化粧層10との間は、ゴム系の接着剤で接着するようにしてある。
【0023】
帆布補修釜1の中型部材4は、図1に示すように、前記上板側に接触させる第1中型部材4Aと、上端面側を前記第1中型部材4Aに接触させ、かつ、下端面側を前記帆布層の補修部の表面に接触させてなる一対の第2中型部材4B、4Cとからなっている。第1中型部材4Aと一対の第2中型部材4B、4Cとは、分離できるようにしてある。第2中型部材4Bと第2中型部材4Cは、分離したり、一体に組み立てたりすることができるようにしてある。また、一対の第2中型部材4B、4Cは、この第2中型部材4B、4Cの一方に設けた溝4Dとこの第2中型部材4B、4Cの他方に設けた突起4Eにより平板状に組み立てられる構成としてある。第2中型部材4Bには、熱電対挿入孔4Fが設けられている。
【0024】
次に、上記一実施形態に係る乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜1よる補修作業手順を、説明する。
【0025】
まず、乗客コンベアの踏段12上に設置した下板5上に、欄干15から外した乗客コンベア用移動手摺8を、その乗客コンベア用移動手摺8の帆布層9表面が上向きとなるように載せた後、その帆布層9の補修部分の表面に一対の第2中型部材4B、4Cに載せる。
【0026】
次いで、帆布層9表面に載せた一対の第2中型部材4B、4Cの上に、第1中型部材4Aを載せた後、上板2を加圧用ボルト7Aに嵌合させることで、図1に示すように、上板2の固定板18を当接させた状態とする。
【0027】
次いで、ナット7Bを加圧用ボルト7Aに螺着して、そのナット7Bをスパナなどで締め付けることにより、上板2を下板5に向って押圧させることによって、第1中型部材4A及び一対の第2中型部材4B、4Cからなる中型部材4におけるところの一対の第2中型部材4B、4Cの下面で、帆布層9の補修部分が加圧される状態とすることで、乗客コンベアの踏段12上に帆布補修釜1が設置される。
【0028】
次いで、乗客コンベアの踏段12上に設置した温度制御装置14を帆布補修釜1に接続した後、発熱体3を通電状態にすることで、発熱体3を発熱させることにより、その熱が第1中型部材4Aを介して一対の第2中型部材4B、4Cに伝導されて、一対の第2中型部材4B、4Cの下面で、帆布層9の補修部分を加熱する。これにより、帆布層9の補修部分の接着に必要な加熱及び加圧が十分に得られて、帆布層9の補修が精度よく行われる。
【0029】
補修後は、ナット7Bを加圧用ボルト7Aから取り除き、上板2を上方に持ち上げて、上板2と加圧用ボルト7Aの嵌合状態を解除させることで、上板2を下板5から分離して、第1中型部材4A及び一対の第2中型部材4B、4Cからなる中型部材4を、乗客コンベア用移動手摺8から取り除き、その後、上板2、中型部材4、下板5及び温度制御装置14を片付けて、乗客コンベア用移動手摺8を欄干15に装着することで、全ての補修作業を終了させることができる。
【0030】
上記一実施形態に係る乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜1によれば、乗客コンベア用移動手摺8の化粧層10の背部8A部分の表面のみが下板5に接触し、かつ、その下板5に放熱体6を設けることで、化粧層10の背部8A部分及び下板5の温度を、化粧層10の流動点以下とすることができるため、化粧層10表面の色褪せ及び変形を生じさせることなく、帆布層9の補修部の補修作業を行うことができる。
【0031】
上記一実施形態に係る乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜1によれば、上板2と発熱体3との間に、発熱体3の熱を断熱する断熱材からなる断熱手段16と断熱用の空間17が設けられているので、上板2側への発熱体3の熱の伝導が抑えられて、発熱体3の熱が帆布層9側に効率よく伝導されるため、帆布層9の加熱が効率よく行われる。
【0032】
さらに、上記一実施形態に係る乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜1によれば、一対の第2中型部材4B、4Cを溝4Dと突起4Eにより平板状に組み立てられる構成としたので、一対の第2中型部材4B、4Cを帆布層9表面に隙間なく接触させることができるため、帆布層9表面を均一に加熱加圧することができる。また、複数個のナット7Bを締め付けることで、上板2を下板5に向って押圧させることによって、帆布層9表面を均一に加熱加圧させることが可能となるため、作業者の熟練に左右されることなく、帆布層9の補修部の補修を精度よく、行うことができる。
【0033】
さらに、上記一実施形態に係る乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜1によれば、乗客コンベアの踏段12上に設置した帆布補修釜1を、移動用車輪13により踏段12上を移動させることができるので、補修作業を円滑に行うことができる。
【0034】
さらに、上記一実施形態に係る乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜1によれば、放熱体6を、コンベア用移動手摺8における化粧層10の側面部8B外方に配設するようにしたので、その放熱体6が乗客コンベアの踏段12に接触することがないため、乗客コンベアの踏段12上に設置した帆布補修釜1により、踏段12が損傷することなく、踏段12上に設置した帆布補修釜1を移動させて補修作業を円滑に行うことができる。
【0035】
さらに、上記一実施形態に係る乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜1によれば、高さの異なる第1中型部材4Aを複数個用意しておき、適宜に交換することで、高さHの異なる乗客コンベア用移動手摺8に対応させることができる。また、帆布補修釜1の上板2及び中型部材4を下板5から取り除き、下板5のみを、乗客コンベアの踏段12に設置することで、その下板5を、帆布層9や抗張体11の切り取り作業及び接着剤の塗布作業などの作業台として使用することができる。また、本実施形態の帆布補修釜1によれば、乗客コンベアの踏段12に設置できる長さ(約500mm)とすることができ、大きさ及び重量を、従来の1/2以下とすることができるため、軽量化及び小型化が図られて、運搬性及び作業性を向上させることができる。
【0036】
次に、本発明の他実施形態に係る乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜20を、図4に基づき説明する。図4において、図1と同一符号は同一内容を表している。
【0037】
図4に示す他実施形態に係る帆布補修釜20は、上板2と、上板2によって押圧され、かつ、内蔵した発熱体3の熱を伝導することで帆布層9の補修部を加熱加圧する中型部材21と、化粧層10の表面に接触した下板5と、この下板5に設けた放熱体6と、上板2を下板5側の押圧することで、中型部材21を帆布層9の補修部に加圧させる加圧手段7とを、包含する構成としてある。
【0038】
帆布補修釜20の中型部材21は、上板2側に接触され、かつ、発熱体3を内蔵させた第1中型部材21Aと、上端面側を第1中型部材21に接触させ、かつ、下端面側を帆布層9の補修部の表面に接触させてなる一対の第2中型部材21B、21Cとからなり、この一対の第2中型部材21B、21Cを、この第2中型部材21B、21Cの一方に設けた溝21Dとこの第2中型部材21B、21Cの他方に設けた突起21Eにより平板状に組み立てられる構成としてある。第2中型部材21Bには、熱電対挿入孔21Fが設けられている。上板5側と発熱体3を内蔵させた第1中型部材21Aとの間には、発熱体3の熱を断熱する断熱材からなる高さ調整部材22が設けられている。第1中型部材21Aに内蔵された発熱体3の上方には、発熱体3の熱を断熱する断熱材からなる断熱手段23と断熱用の空間24が設けられている。
【0039】
上記他実施形態に係る乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜20によれば、上記一実施形態に係る乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜1と同様に、乗客コンベア用移動手摺8の化粧層10の背部8A部分の表面のみが下板5に接触し、かつ、その下板5に放熱体6が設けられているので、化粧層10の背部8A部分及び下板5の温度を、化粧層10の流動点以下とすることができるため、化粧層10表面の色褪せ及び変形を生じさせることなく、帆布層9の補修部の補修作業を行うことができる。
【0040】
さらに、上記他実施形態に係る乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜20によれば、厚さの異なる高さ調整部材22を複数個用意しておき適宜に交換することで、高さHの異なる乗客コンベア用移動手摺8に対応させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係り、乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜を示す要部縦断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係り、乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜による帆布補修作業の説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係り、乗客コンベア用移動手摺の構造説明図である。
【図4】本発明の他実施形態に係り、乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜を示す要部縦断面図である。
【図5】従来の乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜の概略構造を示す要部縦断面図である。
【図6】従来の乗客コンベア用移動手摺用の加熱静圧器の概略構造を示す要部側面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 帆布補修釜
2 上板
3 発熱体
4 中型部材
4A 第1中型部材
4B、4C 一対の第2中型部材
4D 溝
4E 突起
4F 熱電対挿入孔
5 下板
6 放熱体
7 加圧手段
7A 加圧用ボルト
7B ナット
8 乗客コンベア用移動手摺
8A 背部
8B 側面部
8C 耳部
9 帆布層
10 化粧層
11 抗張体
12 踏段
13 移動用車輪
14 温度制御装置
15 乗客コンベアの欄干
16 断熱手段
17 空間
18 固定板
20 帆布補修釜(他実施形態)
21 中型部材
21A 第1中型部材
21B、21C 一対の第2中型部材
21D 溝
21E 突起
21F 熱電対挿入孔
22 断熱材からなる高さ調整部材
23 断熱手段
24 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の帆布を積層してなる帆布層と、この帆布層の表面を覆う化粧層と、前記帆布層に埋設される抗張体とからなり、かつ、断面形状を略C字状に形成してなる乗客コンベア用移動手摺であって、この乗客コンベア用移動手摺の前記帆布層を補修する乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜において、
上板と、この上板に設けられた発熱体と、前記上板によって押圧され、かつ、前記発熱体の熱を伝導することで前記帆布層の補修部を加熱加圧する中型部材と、前記化粧層の表面に接触した下板と、この下板に設けた放熱体と、前記上板を前記下板側に押圧することで、前記中型部材を前記帆布層の補修部に加圧させる加圧手段とを包含する構成としたことを特徴とする乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜。
【請求項2】
前記上板と前記発熱体との間に、前記発熱体の熱を断熱する断熱手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜。
【請求項3】
前記中型部材を、前記上板側に接触させる第1中型部材と、上端面側を前記第1中型部材に接触させ、かつ、下端面側を前記帆布層の補修部の表面に接触させてなる一対の第2中型部材とから構成し、この一対の第2中型部材を、この第2中型部材の一方に設けた溝とこの第2中型部材の他方に設けた突起により平板状に組み立てられる構成としたことを特徴とする請求項1若しくは2記載の乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜。
【請求項4】
複数の帆布を積層してなる帆布層と、この帆布層の表面を覆う化粧層と、前記帆布層に埋設される抗張体とからなり、かつ、断面形状を略C字状に形成してなる乗客コンベア用移動手摺であって、この乗客コンベア用移動手摺の前記帆布層の帆布を補修する乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜において、
上板と、前記上板によって押圧され、かつ、内蔵した発熱体の熱を伝導することで前記帆布層の補修部を加熱加圧する中型部材と、前記化粧層の表面に接触した下板と、この下板に設けた放熱体と、前記上板を前記下板側の押圧することで、前記中型部材を前記帆布層の補修部に加圧させる加圧手段とから少なくとも構成したことを特徴とする乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜。
【請求項5】
前記中型部材を、前記上板側に接触され、かつ、前記発熱体を内蔵させた第1中型部材と、上端面側を前記第1中型部材に接触させ、かつ、下端面側を前記帆布層の補修部の表面に接触させてなる一対の第2中型部材とから構成し、この一対の第2中型部材を、この第2中型部材の一方に設けた溝とこの第2中型部材の他方に設けた突起により平板状に組み立てられる構成としたことを特徴とする請求項4記載の乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜。
【請求項6】
前記上板側と前記発熱体を内蔵させた第1中型部材との間に、前記発熱体の熱を断熱する断熱材からなる高さ調整部材を設けたことを特徴とする請求項4若しくは5記載の乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜。
【請求項7】
前記コンベア用移動手摺の側面部外方に、前記放熱体が配設される構成としたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1つに記載の乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜。
【請求項8】
前記下板に、複数個の移動用車輪を設けたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1つに記載の乗客コンベア用移動手摺の帆布補修釜。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−201514(P2008−201514A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37933(P2007−37933)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】