説明

乗客コンベア

【課題】回転体に挟まれることによる重大事故を防止することのできる乗客コンベアの提供。
【解決手段】乗降口1、2間に、進行方向と直交する向きに連続して敷設される複数の回転体3と、これらの回転体を駆動する駆動手段、例えば乗降口2下方に設けられる駆動機4、この駆動機4に取付けられ駆動される駆動用プーリ5、乗降口1下方に設けられる張り用プーリ6、および無端状につながれるとともに、プーリ5、6に巻き掛けられ回転体3を摩擦により駆動するベルト7とを備え、回転体3の回転により乗客を搬送するものにあって、何らかの原因により1つの回転体3と隣接する他の回転体3の間に人や物が挟まり回転体3に所定以上の力が加わると、ベルト7と回転体3との間にスリップが生じ、一定以上の力が被挟まれ体に加わることを防ぐようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗降口間に、進行方向と直交する向きに連続して敷設される複数の回転体の回転により、一方の乗降口から他方の乗降口に乗客を搬送する乗客コンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、乗降口間に、進行方向と直交する向きに連続して敷設される複数の回転体と、これらの回転体の同軸に設けられるスプロケットと、これらのスプロケットを駆動するチェーンとを備え、回転体の回転により一方の乗降口から他方の乗降口に乗客を搬送する乗客コンベアが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−77444号公報(段落番号0007〜0015、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前述した従来の乗客コンベアでは、乗降口間に敷設される複数の回転体は、これらの回転体の同軸に設けられるスプロケットをチェーンにより駆動することにより回転力が付与され、スリップが生じることなくチェーンの駆動力がスプロケットおよび回転体に伝達される。しかしながら、従来のものは駆動力の伝達効率の点では優れたものであるが、何らかの原因により回転体と回転体との間に人や物が挟まり回転体が固渋した状態となっても、継続して大きな力が回転体に加わることになり、重大事故を招く恐れがあった。
【0004】
本発明は、前述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、回転体に挟まれることによる重大事故を防止することのできる乗客コンベアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明は、乗降口間に、進行方向と直交する向きに連続して敷設される複数の回転体と、これらの回転体を駆動する駆動手段とを備え、前記回転体の回転により乗客を搬送する乗客コンベアにおいて、前記駆動手段は、前記回転体に摺接するベルトを備え、このベルトによる摩擦により前記回転体を駆動することを特徴としている。
【0006】
このように構成した本発明の請求項1に係る発明は、駆動手段のベルトを循環させることにより、このベルトに摺接した回転体を摩擦により回転させ、一方の乗降口から他方の乗降口に乗客を搬送する。これにより万が一、回転体に人や物が挟まり回転体に所定以上の力が加わると、ベルトと回転体との間にスリップが生じる。このように、回転体に人や物が挟まった場合にベルトと回転体との間にスリップが生じることにより、一定以上の力が被挟まれ体に加わることを防ぎ、重大事故を防止することができる。
【0007】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記乗降口に近接する回転体は、自由回転とすることを特徴としている。
【0008】
このように構成した本発明の請求項2に係る発明は、乗降口に隣接する回転体には駆動手段により駆動力を付与せず自由回転としてある。これによって、乗降口と乗降口に隣接する回転体との間に乗客や物が挟まれることを防止することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回転体に挟まれることによる重大事故を防止し、乗客コンベアの安全性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る乗客コンベアの実施の形態を図に基づいて説明する。
【0011】
図1は本発明に係る乗客コンベアの一実施形態を示す側面図、図2は乗客コンベアの正面図である。
【0012】
本実施形態の乗客コンベアは図1に示すように、乗降口1、2間に、進行方向と直交する向きに連続して敷設される複数の回転体3と、これらの回転体3を駆動する駆動手段、例えば乗降口2下方に設けられる駆動機4、この駆動機4に取付けられ駆動される駆動用プーリ5、乗降口1下方に設けられる張り用プーリ6、および無端状につながれるとともに、プーリ5、6に巻き掛けられ回転体3を摩擦により駆動するベルト7とを備えている。また、乗降口1に近接する回転体3a、および乗降口2に近接する回転体3bは、ベルト7に摺接しておらず自由回転としてある。さらに、回転体3は図2に示すように、軸受8を介して枠体9に支持されるとともに、回転体3の下方にはローラ10が配設され、乗客が回転体3に乗った際の撓みを低減する。また、枠体9の両側にはベルト7と同期して移動する移動手摺り11が設けられている。
【0013】
なお、回転体3の径は小さいほど良いが、製作コストや設置数、駆動等の観点からφ30mm程度がよいと考えられる。また、駆動機4はギヤレスモータにより駆動用プーリ5と一体であってもよいし、プーリ5にスプロケットを取付け、それをチェーンにより駆動機4と接続することで駆動する構造としてもよい。さらに、回転体3の配置をおわん状に配置することでベルト7の張り装置と同等の効果を得ることが可能である。
【0014】
本実施形態にあっては、駆動機4の駆動により駆動プーリ5が回動し、この駆動用プーリ5および張り用プーリ6に巻き掛けられたベルト7が移動する。これに応じてベルト7に摺接される回転体3が摩擦により、例えば図1中時計回りに回転する。この状態で乗客が乗降口1から乗り込むと、回転体3は乗客の足元に摺接しつつ回転することにより次の回転体3へと順次搬送する。この動作の繰り返しにより乗客は一方の乗降口1から他方の乗降口2へと搬送される。そして、万が一、何らかの原因により1つの回転体3と隣接する他の回転体3の間に人や物が挟まり回転体3に所定以上の力が加わると、ベルト7と回転体3との間にスリップが生じ、一定以上の力が被挟まれ体に加わることを防ぐ。
【0015】
本実施形態によれば、回転体3に人や物が挟まった場合にベルト7と回転体3との間にスリップが生じることにより、一定以上の力が被挟まれ体に加わることを防ぎ、重大事故を防止することができる。また、乗降口1、2に隣接する回転体3a、3bを自由回転とすることによって、乗降口1、2と乗降口1、2に隣接する回転体3a、3bとの間に乗客や物が挟まれることを防止することができる。これによって、乗客コンベアの安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る乗客コンベアの一実施形態を示す側面図である。
【図2】乗客コンベアの正面図である。
【符号の説明】
【0017】
1、2 乗降口
3 回転体
4 駆動機
5 駆動用プーリ
6 張り用プーリ
7 ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降口間に、進行方向と直交する向きに連続して敷設される複数の回転体と、これらの回転体を駆動する駆動手段とを備え、前記回転体の回転により乗客を搬送する乗客コンベアにおいて、
前記駆動手段は、前記回転体に摺接するベルトを備え、このベルトによる摩擦により前記回転体を駆動することを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
前記乗降口に隣接する回転体は、自由回転とすることを特徴とする請求項1記載の乗客コンベア。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−1440(P2008−1440A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170139(P2006−170139)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】