説明

乗客コンベヤの安全装置

【課題】移動手摺の入り込み口への幼児の手の巻き込みを確実に防止しながら、移動手摺に付着した異物を検出することができる乗客コンベヤの安全装置を提供する。
【解決手段】エスカレータ10の乗降口12にある移動手摺18の入り込み口22近傍に設けられ安全装置30は、移動手摺18に接触して設けられるローラ36と、ローラ36を移動手摺18に対して接離方向へ移動可能に支持するレバー38と、ローラ36を移動手摺18に向けて付勢するコイルバネ40と、移動手摺18とローラ36との間に異物をかみ込んだときのレバー38の揺動を検出するリミットスイッチ42とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客コンベヤの安全装置に係り、特に、移動手摺のトラス内への入り込み口に対する幼児の手や異物等の引き込み防止を図るための乗客コンベヤの安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗客コンベヤの1つであるエスカレータは、階段状をなして移動するステップと同期してその両側の欄干部上を移動する移動手摺を有している。移動手摺は、下りエスカレータでは下層階の乗降口、上りエスカレータでは上層階の乗降口において、Uターンするように移動方向を反転してからトラスの手摺入り込み口内へと進入していく。
【0003】
この手摺入り込み口にハンドガードスイッチ(HGS)なる安全装置が設けられたエスカレータが知られている。このハンドガードスイッチは、トラスの手摺入り込み口と移動手摺との間の隙間に移動手摺と共に幼児の手や異物が引き込まれるのを防止するためのものである。
【0004】
上記ハンドガードスイッチは、上記手摺入り込み口において移動手摺を若干の隙間を空けて覆うとともにトラス端面から外側に例えば数センチメートル程度突出して設けられるゴム製のブーツと、このブーツをトラス内側から付勢して所定位置に保持する例えばバネ等の付勢部材と、乗降口付近にいる子供(特に幼児)の手がブーツ端面にぶつかってブーツがトラス内側に移動したことを検出する検出スイッチとを備える。この検出スイッチで上記ブーツがトラス奥側へ移動したことを検出したとき、エスカレータの運転を非常停止させることによって上記手摺入り込み口への乗客の手の引き込みを防止している。
【0005】
このようにハンドガードスイッチによりエスカレータの手摺入り込み口における安全性が確保されている。しかしながら、上記ブーツに対する付勢部材の付勢力が例えば数kg程度に設定されている場合には、それ以上の押し込み荷重がかかるまではブーツが移動しないこととなるので、乗客の手等の異物がブーツ端部に当接してからエスカレータの非常停止までに若干の時間を要することがある。したがって、移動手摺に付着した異物や幼児の手をより迅速に検出することができる安全装置が望まれる。
【0006】
エスカレータの移動手摺入り込み口への異物巻き込み防止に関連する先行技術文献として、例えば特開平10−291762号公報(以下、特許文献1という)には、移動手摺に巻き込まれて侵入する異物を駆動系に巻き込む前にハンドガード外に押し戻すことを課題としたエスカレータの安全装置が開示されている。このエスカレータの安全装置は、ハンドレール、このハンドレールに沿って摺動する移動手摺、および、この移動手摺を入り込ませる降部床近傍のインレットを有するエスカレータの安全装置において、摺動する上記移動手摺と接触して回転する駆動伝達ローラと、上記インレットと駆動伝達ローラの間に設けられ、上記駆動伝達ローラの回転方向に対して逆回転し、かつ上記移動手摺と所定の間隔を置いて配置され逆転ローラと、を備えたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−291762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1のエスカレータの安全装置では、幼児の手が逆転ローラによってハンドガード外へ押し出すことができるので、移動手摺のインレットへの幼児の手の巻き込みを有効に防止できる。しかしながら、例えばガム等の強粘着性の異物が移動手摺に付着されられた場合、その付着力ゆえに逆転ローラとの間の隙間を平らになってすり抜けて移動手摺と共に移動し、移動手摺の駆動系に巻き込まれて故障の原因となることが考えられる。
【0009】
本発明の目的は、移動手摺の入り込み口への幼児の手の巻き込みを確実に防止しながら、移動手摺に付着した異物を検出することができる乗客コンベヤの安全装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る乗客コンベヤの安全装置は、乗客コンベヤの乗降口にある移動手摺の入り込み口近傍に設けられる乗客コンベヤの安全装置であって、前記移動手摺に接触または近接して設けられる異物検知部材と、前記異物検知部材を前記移動手摺に対して接離方向へ移動可能に支持する支持部材と、前記異物検知部材を前記移動手摺に向けて付勢する付勢部材と、前記移動手摺と前記異物検知部材との間に異物をかみ込んだときの前記支持部材または前記異物検知部材の前記移動手摺から離れる方向への移動を検出するセンサと、を備えるものである。
【0011】
本発明に係る乗客コンベヤの安全装置において、前記異物検知部材は、前記移動手摺の表面に接触しつつ回転するローラであってもよい。
【0012】
また、本発明に係る乗客コンベヤの安全装置において、前記異物検知部材は、前記移動手摺の表面のうち平面部に接触しつつ回転する中央ローラと、前記移動手摺の表面のうち両側曲面部に接触しつつ回転するサイドローラとで構成されてもよい。
【0013】
また、本発明に係る乗客コンベヤの安全装置において、前記異物検知部材は、前記移動手摺の表面の平面部および両側曲面部に接触しつつ回転する略鼓状のローラであってもよい。
【0014】
さらに、本発明に係る乗客コンベヤの安全装置において、前記支持部材は、前記異物検知部材が取り付けられる第1の端部と、前記支持部材の揺動中心となる第2の端部とを有する揺動レバーであり、前記センサは、前記揺動レバーに接触または近接して配置される接触型スイッチであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る乗客コンベヤの安全装置によれば、移動手摺と異物検知部材との間に異物をかみ込んだときの支持部材または異物検知部材の移動手摺から離れる方向への移動をセンサで検出するようにしたことで、比較的軽い荷重の付加で異物検出部材を移動させることができ、その結果、移動手摺に付着して手摺入り込み口に接近した幼児の手や異物を迅速かつ確実に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態である安全装置を適用したエスカレータを示す概略構成図である。
【図2】エスカレータの乗降口を側方から見たときの側面図である。
【図3】本実施形態のエスカレータの安全装置の側面図である。
【図4】異物検知部材であるローラを、移動手摺の図3中のB−B線断面と共に示す図である。
【図5】異物検知部材であるローラの別の形態を示す図である。
【図6】異物検知部材であるローラのさらに別の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態である乗客コンベヤの安全装置(以下、適宜に「安全装置」とだけいう。)30を適用したエスカレータ10の下層階側乗降口12を示す図である。また、図2は、図1のエスカレータ10の下層階側乗降口12を側方から見たときの側面図である。
【0019】
以下の説明では、乗降口12からステップ14方向に向いた乗客から見て、左右の方向を「幅方向」といい、前後方向を「奥行き方向」ということとする。また、本実施形態では、安全装置がエスカレータに適用される例について説明するが、これに限定されず、本発明は例えば動く歩道等の他の乗客コンベヤに適用されてもよい。
【0020】
エスカレータ10は、上層階と下層階との間で乗客を搬送する又は移動させる周知構成のものであり、階段状に連なって周回移動する多数のステップ14と、ステップ14の両側にステップ移動方向に延伸して立設される欄干部16と、欄干部16上でガイドされながらステップ14の移動に同期して周回移動する例えばウレタンゴム製の無端状の移動手摺18とを備える。ここで、エスカレータ10は、ステップ14および移動手摺18が矢印A方向に移動する下りエスカレータとして運転されている。
【0021】
エスカレータ10の下層階側の乗降口12において、移動手摺18はUターン領域19を有しており、このUターン領域19において移動方向を反転させた移動手摺18はトラス20に形成される手摺入り込み口22内へと進入していく。そして、無端状の移動手摺18は、トラス20内を上層階側に向かって移動し、上層階側の乗降口においてトラス20から出た後、上記と同様にUターン領域を介して移動方向を反転させて再び矢印A方向へと移動するようになっている。また、トラス20内であって下層階と上層階との略中間位置に、ステップ14の移動に同期して移動手摺18を周回移動させるための駆動ローラ(図示せず)が設けられている。
【0022】
エスカレータ10の乗降口12の床部15には、例えばステンレス等の金属からなる長方形状の平板で構成されるランディングプレート24が設置されている。ランディングプレート24は、両側の移動手摺18の横幅、すなわちトラス20の横幅を有しており、トラス20に設けられるL型鋼材等からなる支持部材(図示せず)上に載置または固定されて設置される。
【0023】
ランディングプレート24のステップ14側には、コムプレート26が配置されている。コムプレート26には、ステップ14の踏板上に奥行き方向に延伸して形成される多数のクリート(滑り止め溝)に対して若干の隙間を空けた状態で噛合するコム28が固定されている。コムプレート26は、ランディングプレート24に対して連結固定されていてもよいし、ランディングプレート24とは別にトラス20に対して固定されてもよい。また、コムプレート26は、ランディングプレート24の一部として一体に構成されてもよい。
【0024】
移動手摺18がトラス20内に進入する手摺入り込み口22の近傍には、安全装置30が設けられている。安全装置30は、移動手摺18を握った状態にある幼児の手、ガム等の粘着性の異物等が手摺入り込み口22からトラス20へ引き込まれるのを防止するためのものである。安全装置30は、エスカレータ10が上り運転されることがある場合には、上層階の乗降口にも配置されるのが好ましい。
【0025】
手摺入り込み口22が形成されているトラス20の側壁には、カバー32が着脱可能に固定されている。カバー32は、例えばゴム等の柔らかい材料で形成されており、その内部に収容空間を含んでいる。また、カバー32は、移動手摺18の外形と略対応する形状の開口部を有しており、上記収容空間内への埃や塵等の侵入を防止している。さらに、カバー32は、後述する安全装置30を構成するローラおよびレバー等を乗客の視線から隠す機能も果たす。なお、カバー32は、移動手摺18の下方に位置するランディングプレート24上に取り付けられてもよい。
【0026】
ランディングプレート24の下方には機械室(図示せず)が設けられており、機械室内にはエスカレータ10全体の制御を司るエスカレータ制御盤34、ステップ14を駆動する駆動ユニット等が配設されている。エスカレータ制御盤34は、上記安全装置30に含まれるセンサからの異物検知信号を受信すると、エスカレータ10の運転を非常停止させるようになっている。
【0027】
続いて、図3および図4を参照して、安全装置30について説明する。図3は、本実施形態の安全装置30の側面図であり、図4は、異物検知部材であるローラ36を移動手摺18の断面と共に示す図である。
【0028】
安全装置30は、異物検知部材であるローラ36と、支持部材であるレバー38と、付勢部材であるコイルバネ40と、移動手摺18に接触して設けられる異物検知部材としてのローラ36と、センサであるリミットスイッチ42とを備える。
【0029】
上記ローラ36は、移動手摺18の表面に接触しつつ回転する円柱状ローラである。ローラ36は、上記カバー32内の収容空間にあって、移動手摺18の移動方向に関して手摺入り込み口22の上流側に配置されている。ローラ36の中心にはシャフト44が貫通して設けられている。ローラ36は、例えばベアリング等を介してシャフト44に取り付けられることにより、シャフト44に対して回転可能になっていてもよいし、あるいは、固定されているシャフトと共に回転可能になっていてもよい。
【0030】
ローラ36の少なくとも外周部は、移動手摺18を傷つけないように、例えばゴム、ウレタン、樹脂等の比較的柔らかい材料で形成されるのが好ましい。また、ローラ36は、略C字状の断面を有する移動手摺18の外表面のうち平面部18aの全体に接触して回転するようになっている。すなわち、図3に示すように、移動手摺18が矢印A方向へ移動するとき、ローラ36は矢印C方向(すなわち反時計回り方向)に回転する。
【0031】
上記レバー38は、ローラ36を移動手摺18に対して接離方向へ移動可能に支持するものである。詳細には、一対のレバー38がローラ36の両側に配置されており、ローラ36に取り付けられたシャフト44の両端がレバー38の一端部(第1の端部)38aに固定状態で又は回転可能に支持されている。シャフト44の端部がレバー38から抜け落ちないようにするため、シャフト44の端部にはレバー38の外側において例えばCリング等の留め部材(図示せず)が係合されている。
【0032】
レバー38は、ローラ36を支持する一端部38aからトラス20内へと延伸する長尺状の板部材であり、例えば金属製の平板により好適に構成される。レバー38において上記一端部38aとは反対側の他端部(第2の端部)38bは、トラス20に固定されたレバー支持部材46に回動可能に軸支されている。これによりレバー38は、他端部38bを揺動中心として矢印D方向に揺動するようになっており、その結果、レバー38の一端部38aに支持されるローラ36が移動手摺18に対して接近する方向および離れる方向へ移動可能になっている。
【0033】
上記コイルバネ40は、ローラ36を移動手摺18に向けて付勢するためのものである。コイルバネ40の下端フックは、レバー38の上記他端部に比較的近い位置に形成された貫通孔39に引っ掛けられている。一方、コイルバネ40の上端フックは、トラス20に固定された固定部材48に引っ掛けられている。これにより、コイルバネ40がレバー38に対して引っ張り力を作用させることで、ローラ36が移動手摺18上に接触した状態が維持される。
【0034】
なお、本実施形態では、移動手摺18に対してローラ36を付勢する付勢手段として引っ張りコイルバネを用いているが、これに限定されない。例えば、レバー38を下方から押し上げて付勢する圧縮コイルバネを用いてもよいし、レバー38の軸支された他端部に配置される捻りバネを用いてもよいし、あるいは、板バネ、ゴム等の他の弾性部材を用いてもよい。
【0035】
リミットスイッチ42は、移動手摺18とローラ36との間に例えばガム等の異物をかみ込んだときのレバー38の揺動を検出するためのものである。リミットスイッチ42は、トラス20内であってレバー38の下方に配置されている。そして、リミットスイッチ42の接触子43がレバー38の下面に接触または近接している。これにより、移動手摺18とローラ36との間に異物または幼児の手等がかみ込まれてレバー38が下方(すなわち矢印E方向)へ揺動すると、接触子43が押し下げられることによってレバー38の揺動、すなわち、ローラ36が移動手摺18から離れる方向へ移動したことを検出できるようになっている。
【0036】
なお、本実施形態では、レバー38の揺動を検出するセンサとして接触型のリミットスイッチを用いたが、これに限定されるものではなく、例えば光センサ、静電容量センサ等の非接触型センサがレバーまたはローラの移動を検出するために用いられてもよい。
【0037】
次に、上記構成からなる安全装置30の動作について説明する。
【0038】
エスカレータ10が下り運転されているとき、移動手摺18はステップ14の移動に同期して矢印A方向へ移動する。このとき、安全装置30のローラ36は、移動手摺18と接触していることによって矢印C方向に従動回転する。
【0039】
エスカレータ10の乗客であるか又は乗降口12付近で遊んでいる子供の手が移動手摺につかまった状態で手摺入り込み口22に接近してきたとき、柔らかい素材からなるカバー32の開口部を越えて収容空間内へ移動し、移動手摺18とローラ36との間にかみ込まれる。すると、ローラ36が移動手摺18から離れる方向、すなわち下方へ移動し、これに伴ってレバー38が下方へ回動する。これにより、リミットスイッチ42の接触子43が押し下げられて、手、衣服、ガム等の異物のかみ込みを検出することができる。
【0040】
リミットスイッチ42からのオン信号を受信すると、エスカレータ制御盤34は、エスカレータ10の運転を非常停止させる。これにより、移動手摺18とローラ36間に侵入した異物が幼児の手であった場合には、移動手摺18の移動停止によって手摺入り込み口22へと引き込まれるのを迅速かつ確実に防止することができる。また、移動手摺18に付着した異物が例えばガム等の粘着性のものであった場合には、このような異物でもエスカレータ10を非常停止させて除去することで、移動手摺18の駆動ローラにガム等の異物が転着して故障の原因となるのを回避できる。
【0041】
上述したように本実施形態の安全装置30によれば、移動手摺18とローラ36との間に異物をかみ込んだときのレバー38の移動手摺18から離れる方向への移動をリミットスイッチ42で検出するようにしたことで、比較的軽い荷重の付加でローラ36を下方へ移動させることができ、その結果、移動手摺18に付着して手摺入り込み口22に接近した幼児の手や異物を迅速かつ確実に検出することができる。
【0042】
次に、図5および図6を参照して、異物検知部材であるローラの変形例について説明する。ここでは、上記実施形態と異なる特徴についてだけ説明することとし、同一または類似の構成要素に同一または類似の符合を付して重複する説明を省略する。
【0043】
図5を参照すると、この変形例では、異物検知部材が、略C字状断面を有する移動手摺18の外表面のうち平面部18aに接触しつつ回転する中央ローラ36と、移動手摺18の外表面のうち両側の曲面部18bにそれぞれ接触しつつ回転する一対のサイドローラ37とで構成される。この場合、中央ローラ36のシャフト44はレバー38に対して回転しないように固定され、シャフト44の周囲でローラ36が回転するようになっている。そして、サイドローラ37を回転可能に支持するサブシャフト45がローラ36の両側からそれぞれ斜め上方に向かって延伸するようにシャフト44上に固定されている。
【0044】
このように移動手摺18の外表面のうちの平面部18aだけでなく曲面部18bに接触して回転するサイドローラ37を付加することにより、曲面部18b上に異物が付着した場合でもサイドローラ37との間にかみ込まれてレバー38の下方への揺動を生じさせることができ、移動手摺18の曲面部18bに付着した異物も効果的に検出することができる。
【0045】
図6は、さらに別の形態のローラ36aを示す。このローラ36aは、移動手摺18の外表面の平面部18aから両側の曲面部18bにかけて接触しつつ回転する略鼓状のローラである。このようなローラ形状に形成することで、図5に示す変形例に比べてローラ数を抑制するとともにシャフト形状の複雑化を回避しながら、移動手摺18の曲面部18bに付着した異物も効果的に検出することができる。
【0046】
なお、上記実施形態においては、異物検知部材であるローラ36が移動手摺18に接触しているものとして説明したが、これに限定されるものではなく、移動手摺18の表面から例えば1〜2mm程度の隙間を空けた近接状態でローラ36を移動手摺18に対して非接触で配置してもよい。この場合、レバー上縁部に当接してレバー38を所定位置で止めるストッパ部材をトラス20に固定することにより容易に実現することができる。
【0047】
また、上記実施形態においては、ローラを支持するレバーの揺動をリミットスイッチにより検出して移動手摺に付着した異物を検出するようにしたが、これに限定されるものではなく、種々の変更や改良が可能である。例えば、移動手摺とローラとの間に異物がかみ込まれたときのローラの移動手摺から離れる方向への移動を非接触型センサで検出するようにしてもよい。この場合、ローラを支持する支持部材は揺動するレバーでなくてもよく、移動手摺に対してローラを鉛直方向へ直線移動可能に支持する例えばコ字状ブラケットを支持部材としてトラスまたは床部に設置してもよく、コ字状ブラケットを下方から押し上げる圧縮バネを付勢部材として用いてもよい。
【0048】
さらに、上記実施形態では、回転可能に支持されたローラを異物検知部材として用いたが、これに限定されるものではなく、例えば移動手摺の平面部に対して不回転で摺接する低摩擦部材を異物検知部材として用いてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10 エスカレータ、12 乗降口、14 ステップ、15 床部、16 欄干部、18 移動手摺、18a 平面部、18b 曲面部、19 Uターン領域、20 トラス、22 手摺入り込み口、24 ランディングプレート、26 コムプレート、28 コム、30 安全装置、32 カバー、34 エスカレータ制御盤、36,36a ローラまたは中央ローラ、37 サイドローラ,38 レバー、38a 一端部、38b 他端部、39 貫通孔、40 コイルバネ、42 リミットスイッチ、43 接触子、44 シャフト、45 サブシャフト、46 レバー支持部材、48 固定部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗客コンベヤの乗降口にある移動手摺の入り込み口近傍に設けられる乗客コンベヤの安全装置であって、
前記移動手摺に接触または近接して設けられる異物検知部材と、
前記異物検知部材を前記移動手摺に対して接離方向へ移動可能に支持する支持部材と、
前記異物検知部材を前記移動手摺に向けて付勢する付勢部材と、
前記移動手摺と前記異物検知部材との間に異物をかみ込んだときの前記支持部材または前記異物検知部材の前記移動手摺から離れる方向への移動を検出するセンサと、
を備える乗客コンベヤの安全装置。
【請求項2】
請求項1に記載の乗客コンベヤの安全装置において、
前記異物検知部材は、前記移動手摺の表面に接触しつつ回転するローラであることを特徴とする、乗客コンベヤの安全装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の乗客コンベヤの安全装置において、
前記異物検知部材は、前記移動手摺の表面のうち平面部に接触しつつ回転する中央ローラと、前記移動手摺の表面のうち両側曲面部に接触しつつ回転するサイドローラとで構成されることを特徴とする、乗客コンベヤの安全装置。
【請求項4】
請求項2に記載の乗客コンベヤの安全装置において、
前記異物検知部材は、前記移動手摺の表面の平面部および両側曲面部に接触しつつ回転する略鼓状のローラであることを特徴とする、乗客コンベヤの安全装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の乗客コンベヤの安全装置において、
前記支持部材は、前記異物検知部材が取り付けられる第1の端部と、前記支持部材の揺動中心となる第2の端部とを有する揺動レバーであり、前記センサは、前記揺動レバーに接触または近接して配置される接触型スイッチであることを特徴とする、乗客コンベヤの安全装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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