説明

乗用型茶園管理機

【課題】 効率よく剪枝と薬液散布を行なうことができる装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 茶畝を跨いだ門型の機体を茶畝に沿って走行させる走行機体と、刈刃で枝葉を摘採し、刈刃の前方に設けた送風管から強風を吹き出して、摘採した枝葉を刈刃後方の畝間に枝葉を刈落とす剪枝装置と、茶畝へ向けて薬液を散布するために刈刃の後方に設けた薬液散布装置とより構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状に植栽された茶畝に沿って走行しながら枝葉を摘採する乗用型茶園管理機(レール走行や無端輸送帯による走行)であって、枝葉の刈落し作業と同時に薬液散布作業をする装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、摘採に用いられる乗用型茶園管理機では、バリカン型の刈刃の後方に茶袋や、コンテナ等の収容装置を取付け、刈刃の前方に設けた送風管から強風を吹き出して、摘採した茶葉を吹き飛ばし、収容装置内に収容する方式を取っている。茶園では、茶芽を刈り取った後、茶樹の表面を浅く刈落して平らにならす作業を行なう。この場合、摘採の時と同様に茶袋をセットし、一度、茶袋内へ枝葉を収容し、茶袋を外して茶袋内へたまった枝葉を畝間へまき散らしたり、或いは、茶袋の後端を開口しておいて、この開口部が畝間へ向くように固定し、刈落した枝葉が茶袋を通って畝間に落ちるようにしている。レール走行式茶葉摘採機に関しては、刈落し作業に茶袋を利用することから開発されたもの(特許文献1)がある。又、摘採された枝葉を摘採物搬送装置で一度上方に運び、摘採物分離体で分離し、ホッパーを介して畝間に落とすという装置が開発されている(特許文献2)。
【0003】
剪枝作業をした後には、病害虫予防のために薬液散布をおこなうことが多い。薬液散布には、別の乗用型の専用機(特許文献3)があり、専用機で薬液散布をおこなう。この薬液散布の乗用型の専用機は大型で高価な為、小規模の畑では導入することが難しく、乗用型の専用機を持っていない人が多かった。乗用型の専用機を持っていない場合は、作業者が小型で可搬式の薬液散布装置を持ちながら、散布作業を行っていた。
【特許文献1】特許第2884146号公報
【特許文献2】特開平8−214668号公報
【特許文献3】特開2003−170089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
剪枝作業は、暑い夏場に行うことが多い。その時に、切り口を放置すると、赤くなって病気(輪斑病など)になってしまう。そのため、できる限りすぐに切り口を消毒する必要があった。
【0005】
剪枝と薬液散布はそれぞれの乗用型の機械があり、両方の作業を行うには2台の機械をそろえなければならない。また、2台の機械があったとしても、同じところを2回走らなければならない。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決する為、効率よく剪枝と薬液散布を行なうことができる装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一手段は、茶畝を跨いだ門型の機体を茶畝に沿って走行させる走行機体と、刈刃で枝葉を摘採し、刈刃の前方に設けた送風管から強風を吹き出して、摘採した枝葉を刈刃後方の畝間に枝葉を刈落とす剪枝装置と、茶畝へ向けて薬液を散布するために刈刃の後方に設けた薬液散布装置とより構成する。この手段により、剪枝装置と薬液散布装置を一台の乗用型茶園管理機に載せ、剪枝と薬液散布をほぼ同時に行なうことができ、剪枝後の茶葉に薬液をすぐに散布することができる。
【0008】
本発明の第二手段は、第一手段の剪枝装置の刈落とし部は、刈刃後部の保持板の上に2枚の案内板を立て、2枚の先端を刈刃中央部の支柱に合わせ、後端を左右へ開いて先端がとがった三角形とし、左右の案内板の斜面と保持板の左右の手摺面とで出来る逆三角形の空間の天井を網で覆い、左右の案内板の後端に網で囲んだ収葉ポケットを設け、その底面を開口して畝間に臨ませた。この手段により、刈り取った枝葉を畝間に落とすことができる。
【0009】
本発明の第三手段は、第一または第二手段の薬液散布装置は、保持板後部に薬液散布用の配管およびノズルを設け、配管によって接続した動力噴霧器により薬液を供給するものである。簡単な構造で、安価である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、茶畑を1度走るだけで、剪枝と薬液散布の両方を行なうことができ、効率的である。また、切ってすぐに薬液を散布するため、茶の樹への薬液の浸透がスムーズで、茶が病気になりにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
無端輸送帯により茶畝に沿って走行する乗用型茶園管理機の実施の形態を説明する。1は無端輸送帯による走行装置であり、茶畝3を挟んでその両側の畝間を走行する。左右の走行装置1は門型の機体4でつながっている。門型の機体4の下方には、バリカン型の刈刃5が取付けてある。門型の機体4の上には送風ファン6が設けてあり、刈刃5の前方に設けた送風管7とフレキシブルホース8でつながれている。送風ファン6の風は送風管7についている多数の吹出枝管9から刈刃5の上へ吹き付けられる。刈刃5のまわりは、誘導板10で囲んである。その後方は茶袋取付枠11となっていて、茶袋取付時には開口して取り付ける。この後方には保持板12が設けてあり、摘採した茶葉を収容した茶袋を保持する板である。茶袋は2.0〜2.5mの長さがあり、通常、茶袋保持板は前部と後部の2枚に分けてある。本発明の刈落し作業では、刈取った枝葉を直接、畝間に散布し、茶袋に収容することはしないので、後部の保持板は取り外し、前部の保持板12だけを使用する。
【0012】
まず、保持板12の上に三角に案内板13を置く。2枚の案内板13の先端は、刈刃5の中央にある支柱15に合わせておき、後端は左右に開き、三角形となるようにする。案内板13の斜面と保持板12の左右の端の手摺16との間に生じる逆三角の空間の天井をそれぞれプラスチック網18で覆う。このとき、案内板13の斜面に対向した手摺16側の側面は開放しておく。案内板13の後端には、網で袋状に囲った収葉ポケット20とを設け、収葉ポケット20の底面は開放して畝間に臨ませておく。
【0013】
保持板12の後端に、ノズル22を備えた配管23を取付金具25により取り付ける。この取付金具25は着脱自在になっていると良い。保持板12の上部に薬液を散布する動力噴霧器21(本実施例では、薬液タンクと一体型。薬液タンクを別に備えてもよい)を置き、配管23と動力噴霧器21をチューブ配管24によって接続する。動力噴霧器21の置き場は保持板12上に限らず、置き台などを別途設けるとよい。
【0014】
刈落し作業は、茶葉を摘採した茶樹の表面を次の摘採作業に備えて平らにならす作業であり、浅く表面に突き出た茶葉だけ刈り落とす浅刈と、茶畝の表面を約5〜10cmの厚みで刈落してしまう中刈がある。どちらの場合もまず、刈刃5を上下させて、刈面の高さを決める。この刈刃5の上下に伴って、ノズル22も上下する。そのため、ノズル22は茶樹から一定の距離を保つことができる。
【0015】
ついで、送風ファン6を回転させると、吹出枝管9から刈刃5に向かって、強風を吹き付ける。刈刃5を作動させて、機体4をゆっくりと茶畝に沿って走らせ、茶樹の表面の枝葉を刈取る。刈取られた枝葉は、前方から吹き付ける強風によって後方へ吹き飛ばされる。刈刃5の直後に設けた誘導板10によって、左右の端の風は中央に寄せられ、茶袋取付枠11の中を通って後方へ飛ばされる。刈刃5の全巾に渡って平行に吹き出す風は、中央部の支柱15で左右に分けられ、案内板13の斜面に沿って、左右の端へ寄せられる。刈取られた枝葉は、風と共に後方へ飛ばされ、案内板13に当たり斜面に沿って流れ、左右の収葉ポケット20に入り、収葉ポケット20の底から畝間に散布される。前方から吹き込まれた強風は案内板13によって逆三角形の空間に誘導され、通路を狭められるので、天井の網18から上方へ抜けたり、案内板13に対向した手摺16側の開放された側面から外へ抜けていく。この部分は開放されていても、枝葉は質量があり、慣性により案内板13の斜面に沿って後方へ飛んでいくので、この開放面から飛び出ることはない。このようにして、刈落し作業をしながら、連続的に畝間に平らに枝葉を散布することが出来る。
【0016】
それと同時に、動力噴霧器21を作動させると、ノズル22から薬液が吹出し、刈刃5で切り取られた新しい切り口に薬液を吹き付ける。切り口は新しい為、薬液は浸透する。ノズル22の種類をかえることにより、噴霧量を変えることができる。
【0017】
動力噴霧器21は通常、内蔵のバッテリを備えてモータで駆動するものや、エンジンを備えて駆動するものがあるが、乗用型茶園管理機の本体から電源または動力を得るようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の後面図。
【図2】図1の平面図。
【符号の説明】
【0019】
1 無端輸送帯
2 作業者
3 茶畝
4 機体
5 刈刃
6 送風ファン
7 送風管
8 フレキシブルホース
9 吹出枝管
10 誘導板
11 茶袋取付枠
12 茶袋保持板
13 案内板
15 支柱
16 手摺
18 プラスチック網
20 収葉ポケット
21 動力噴霧器
22 ノズル
23 配管
24 チューブ配管
25 取付金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶畝を跨いだ門型の機体を茶畝に沿って走行させる走行機体と、刈刃で枝葉を摘採し、刈刃の前方に設けた送風管から強風を吹き出して、摘採した枝葉を刈刃後方の畝間に枝葉を刈落とす剪枝装置と、茶畝へ向けて薬液を散布するために刈刃の後方に設けた薬液散布装置とより構成することを特徴とする乗用型茶園管理機。
【請求項2】
剪枝装置の刈落とし部は、刈刃後部の保持板の上に2枚の案内板を立て、2枚の先端を刈刃中央部の支柱に合わせ、後端を左右へ開いて先端がとがった三角形とし、左右の案内板の斜面と保持板の左右の手摺面とで出来る逆三角形の空間の天井を網で覆い、左右の案内板の後端に網で囲んだ収葉ポケットを設け、その底面を開口して畝間に臨ませたことを特徴とする請求項1記載の乗用型茶園管理機。
【請求項3】
薬液散布装置は、保持板後部に設けた薬液散布用の配管およびノズルと、該ノズルと配管によって接続した動力噴霧器とより構成することを特徴とする請求項1または2記載の乗用型茶園管理機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−125054(P2009−125054A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306866(P2007−306866)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000145116)株式会社寺田製作所 (90)
【Fターム(参考)】