説明

乗用型防除機

【課題】ブリッジを用いたトラック積み降ろし時の機体を安定させること、残液の発生を回避しつつ部品点数の削減を図ること等が可能な乗用型防除機を提供する。
【解決手段】薬液タンク32の下面に、前方から後方に向かうのに従って徐々に高さが低くなる後下がりの斜面部32dと、走行装置20に近接して配置される水平な底面部32eとを前後して形成する。斜面部32dと底面部32eとのなす角度を、機体が安全に登坂できる最大角度よりも大とする。さらに、このような薬液タンク32をフレーム本体10の左右側に設けると共に、薬液タンク32の斜面部32dの下方側に、作動油タンク51或いは燃料タンク52を配設すると共に、これら作動油タンク51或いは燃料タンク52に、薬液タンク32の斜面部32dに応じて隅切りされた隅切り部51a或いは52aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗用型防除機に関し、さらに詳しくは、茶畝を跨いで走行しながら茶樹の防除作業を行う乗用型防除機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の乗用型防除機にあっては、機体バランスや操縦安定性を確保するために、機体の左右側部に、薬液タンク、燃料タンク及び作動油タンクを対称的に搭載することが行われている。
これらタンク類の搭載例としては、図5(a),(b)に示されるように、前後の門型フレーム1,2間の上部デッキ3上の左右側に、薬液タンク4,4の上部を対称的に配置すると共に、その前方に燃料タンク5或いは作動油タンク6を配置し、さらに、前後の門型フレーム1,2の脚部間に薬液タンク4,4の下部を配置したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、図6(a),(b)に示されるように、前後の門型フレーム1,2間の上部デッキ3上の左右側に、薬液タンク4,4の上部を対称的に配置すると共に、前後の門型フレーム1,2の脚部間に薬液タンク4,4の下部、その下方に燃料タンク5或いは作動油タンク6を配置したものが知られている。なお、図5,6中の符号7は、走行装置である。
【0003】
【特許文献1】特開2003−38019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の乗用型防除機にあっては、次のような問題がある。すなわち、機体をトラックに積み込む際、薬液タンク4,4の中は空にされる。しかも、ブリッジ(トラックの荷台と地面との間に架け渡す積み降ろし用の板材のこと)を用いたトラック積み込み時の角度は、機体が安全に登坂できる最大角度(例えば、約15度)を超えてしまうことがある。
このため、前者にあっては、燃料タンク5と作動油タンク6とが上部デッキ3上に配置されているので、薬液タンク4,4が空だと重心位置が高くなってしまい、ブリッジを用いたトラック積み込み時に機体が転倒しやすいという問題がある。
一方、後者にあっては、燃料タンク5、作動油タンク6が前後方向に長く、かつ高さが低くなるように配置されているので、機体が前傾、或いは後傾した際に、タンクキャップのブリーザ(エア抜き孔)からタンク内の油が漏れる虞がある。
【0005】
さらには、前後者共に、薬液タンク4,4の底部はほぼ水平に形成されている。そのため、機体が安全に登坂できる最大角度(例えば、約15度)ぐらい傾斜した茶園の防除作業を行う場合、機体の傾きに応じて薬液タンク4,4内の薬液が低位側に移動し、タンク4,4内の薬液をタンク外に排出するドレンが液面よりも高くなってしまうことがある。そのような場合には、薬液タンク4,4から薬液が排出されずに残ってしまう、所謂残液が発生するため、タンク底部の前後2箇所には薬液排出用のドレンを設けなければならなかった。つまり、ドレンは、左右の薬液タンク4,4を合わせて4つ必要となるうえに、これら4つのドレンと動噴とを結ぶ薬液供給用のゴムホースも必要となるため、部品点数が多くなり、コストが上昇してしまうという問題があった。
【0006】
そこで、この発明は、上記した従来技術が有している問題点を解決するためになされたものであって、ブリッジを用いたトラック積み込み時の機体を安定させること、残液の発生を回避しつつ部品点数の削減を図ること等が可能な乗用型防除機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、門型に形成されたフレーム本体と、前記フレーム本体の下端に連結された走行装置と、前記フレーム本体に搭載されて茶葉の防除作業を行う薬液タンク、動噴、噴口、ブームからなる防除装置と、前記フレーム本体、前記走行装置及び前記防除装置に装着される各種の油圧式アクチュエータ用の作動油を貯留する作動油タンクと、前記フレーム本体に搭載される駆動源用の燃料タンクと、備え、茶畝を跨いで走行しながら茶樹の防除作業を行う乗用型防除機において、
前記薬液タンクの下面には、前後方向の一方から他方に向かうのに従って徐々に高さが低くなる後下がりの斜面部と、前記走行装置に近接して配置される水平な底面部とが前後して形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、ほぼ平坦な茶園で防除作業を行う場合、薬液タンク内の薬液が少量となっても、薬液は斜面部によって底面部上に溜まるようになる。これにより、底面部にドレンを1つ設けるだけで、薬液タンク内のほぼすべての薬液を動噴に供給したり、タンク外に排出することができるようになる。従って、ドレンと動噴とを結ぶ薬液供給用のゴムホースも削減できるため、部品点数を削減することができ、コストの低減化を図ることができるようになる。
【0009】
上記目的を達成するため請求項2に記載の発明は、前記斜面部と前記底面部とのなす角度は、機体が安全に登坂できる最大角度よりも大であることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、平坦地のみならず、乗用型防除機が安全に走行できるように整えられた傾斜した茶園で防除作業を行う場合、機体が前傾、或いは後傾しても、薬液タンク内の薬液は残量に関係なく常にタンク最深部となる底面部上には必ず溜まることとなる。つまり、傾斜地であっても、薬液タンクのドレンが液面以上となってしまうことは殆どないので、1つのドレンによって、薬液タンク内のほぼすべての薬液を動噴に供給したり、タンク外に排出することができるようになる。その結果、従来は薬液タンクの底部の前後にそれぞれドレンを設けなくてはならなかったが、本発明によれば、薬液タンクの底部に1つのドレンを取り付ければよいので、ドレンの数を削減することができ、しかも、ドレンの削減に応じて、ドレンと動噴とを結ぶ薬液供給用のゴムホースも削減できるため、部品点数を削減することができ、コストの低減化を図ることができるようになる。
【0011】
上記目的を達成するため請求項3に記載の発明は、前記薬液タンクは、前記フレーム本体の左右側に設けられていると共に、前記薬液タンクの斜面部の下方側には、前記作動油タンク或いは前記燃料タンクが配設されていると共に、前記薬液タンクの斜面部に臨んだ前記作動油タンクと前記燃料タンクとの面部には、前記薬液タンクの斜面部に応じて隅切りされた隅切り部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、作動油タンクと燃料タンクとを薬液タンクの下方側、例えば、フレーム本体の前寄りに低く搭載すると共に、薬液タンクの斜面部に臨んだ作動油タンクと燃料タンクとの面部を薬液タンクの斜面部に応じて隅切りすると、作動油タンクと燃料タンクとのタンク内の液量が多ければ多いほど機体の重心位置がより低くなるうえに、機体が後傾した状態にあっては、タンク内の作動油や燃料が後側フレームに近接して片寄りするのが防止される。その結果、ブリッジを用いて機体(薬液タンクは空の状態)をトラックに積み込む際に、ブリッジの角度が、機体が安全に登坂できる最大角度を超えているような場合であっても、機体を転倒させることなく、安定して積み込むことができるようになる。また、作動油タンクと燃料タンクとには、十分な高低差がつけられることとなるので、機体が前傾、或いは後傾しても、タンクキャップのブリーザから作動油タンク、燃料タンク内の油が漏れるのを防止することができるようになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の乗用型防除機によれば、機体が前傾、或いは後傾しても、薬液タンク内の薬液が残量に関係なく常にタンク最深部となる底面部上には必ず溜まるように薬液タンクの下面に斜面部を設けた。これにより、1つのドレンによって、タンク内のほぼすべての薬液を動噴に供給したり、タンク外に排出することができるようになるので、従来に比べてドレンや薬液供給用のゴムホースの数を削減することができる。
さらに、薬液タンクの斜面部に応じて隅切りした作動油タンクと燃料タンクとを薬液タンクの下方側に搭載した。これにより、燃料タンクと作動油タンクとのタンク内の液量が多ければ多いほど機体の重心位置がより低くなるうえに、機体が後傾した状態にあっては、タンク内の作動油や燃料が後側フレームに近接して片寄りするのが防止されるので、機体をトラックに積み込む際、ブリッジの角度が、機体が安全に登坂できる最大角度を超えていても、機体を転倒させることなく、安定して積み込むことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された乗用型防除機の正面図、図2は、同乗用型防除機の平面図、図3は、同乗用型防除機の左側面図、図4は、同乗用型防除機の右側面図である。
【0015】
図1〜4に示されるように、乗用型防除機100は、フレーム本体10、走行装置20、防除装置30、作動油タンク51、燃料タンク52を備えて構成されている。
【0016】
詳述すると、フレーム本体10は、茶畝を跨ぐために正面視が門型に形成された前側フレーム11及び後側フレーム12と、これら前側及び後側フレーム11,12を連結する左右一対の上部及び下部連結フレーム13,14(図3,4に図示)と、を備えて構成されている。
【0017】
前側及び後側フレーム11,12は、前後方向に離間した状態で対向配置されていると共に、軌間伸縮が可能となるように、左右方向に延びる横フレーム部が伸縮自在とされている。そして、図3,4に示されるように、これら前側及び後側フレーム11,12は、前後方向に延びる2つの長尺状の上部連結フレーム13によって、前側フレーム11の左右肩部と後側フレーム12の左右肩部とが連結固定されている。また、前後方向に延びる2つの長尺状の下部連結フレーム14によって、前側フレーム11の垂直な左右脚部11aの下部と後側フレーム12の垂直な左右脚部12aの下部とが連結固定されている。
【0018】
さらに、フレーム本体10の下端、つまり前側フレーム11の左右脚部11aの下端と後側フレーム12の左右脚部12aの下端とには、前後方向に延びる左右一対の補剛フレーム15を介して走行装置20,20が取り付け固定されており、これにより、機体が構成されるようになっている。
【0019】
走行装置20は、油圧式の走行モータ(図示せず)が組み込まれた駆動輪21、従動輪22、ゴム製或いは鉄製のクローラ23を備えて構成されており、クローラ23の張り調整は、グリススプリング方式の採用によりグリースガンで容易に行うことができるようになっている。なお、走行装置20は、クローラを用いたものに限定されるものではなく、例えば、車輪、レール式等であってもよい。
【0020】
防除装置30は、茶葉の防除作業を行うために機体に搭載されているものであって、3連ブーム31、噴口、動力噴霧装置(以下、動噴という)、薬液タンク32,32を備えて構成されている。
【0021】
3連ブーム31は、ブーム折り畳み用シリンダ33、ブーム受け34、ブーム昇降用シリンダ35等と共に前側フレーム11の前面側に配設されているものであって、それぞれ茶畝の上面に沿うように湾曲形成されたブーム本体31a〜31cの長手方向に沿って薬液噴霧用の噴口(図示せず)が複数設けられていると共に、ブーム本体31a〜31cには、噴口から茶畝に向かって噴霧した薬液の拡散を防止する合成樹脂製の柔らかい飛散防止カバー36がそれぞれ取り付けられている。
【0022】
また、これらブーム本体31a〜31cは、図1,2に示されるように、それぞれ左右方向に延びる3つの支持フレーム37a〜37cによって支持されていると共に、中央に位置する中央の支持フレーム37bの左右両端部には、左右側に位置する支持フレーム37a,37cを跳上げ式に回動可能に片持ち支持するヒンジ部38がそれぞれ設けられている。そして、中央の支持フレーム37bと左右の支持フレーム37a,37cとの間には、それぞれ油圧式のブーム折り畳み用シリンダ33,33が介設されている。
【0023】
そして、ブーム折り畳み用シリンダ33の伸縮ロッドを縮めると、左右のブームが機体幅内に収まるようにヒンジ部38,38を回動支点として回動し、中央のブームの上方に位置するように折り畳まれるようになっている。また、伸縮ロッドを伸張させると、折り畳まれた左右のブームがヒンジ部38,38を回動支点として機体外側に向かって展開するように回動し、図1に示されるように、機体が跨ぐ茶畝の左右隣の茶畝の上面を左右のブームが臨むようになっている。
なお、中央の支持フレーム37bには、左右のブームを折り畳んだ際に左右の支持フレーム37a,37cをそれぞれ受け止めるブーム受け34が2つ配設されている。
【0024】
また、3連ブーム31は、その中央の支持フレーム37bが、図2に示されるように、上下2段からなる左右一対の平行リンク40,40,41,41を介して前側フレーム11の前面に上下方向に回動可能に取り付け固定されている。上側の平行リンク40,40と下側の平行リンク41,41とは、それぞれ左右方向に延びる上下2段の連結部材42,43(図2に図示)によってそれぞれ一体化するように連結されていると共に、下側の連結部材43には、油圧式のブーム昇降用シリンダ35の伸縮ロッドの下端部が揺動可能に連結固定されている。
【0025】
また、ブーム昇降用シリンダ35の上部は、フレーム本体10側の前部(後述する上部デッキ18上のこと)に配設された門型の前側補剛フレーム16aに揺動可能に取り付け固定されており、伸縮ロッドを伸縮させることによって3連ブーム31の高さ位置を調節することができるようになっている。
【0026】
ところで、前側及び後側フレーム11,12の上部横フレーム間には、上部連結フレーム13,13と平行して前後方向に延びる複数本の補剛連結フレーム131,131(図2に図示)や板状のフロア部材17(図4に図示)が配設されることによって、オペレータや重量物を搭載可能とする上部デッキ18が形成されている。
【0027】
この上部デッキ18の前部には、上述した前側補剛フレーム16aが立設されていると共に、上部デッキ18の後部には、門型の後側補剛フレーム16bが立設されている。これら前側及び後側補剛フレーム16a,16bの上部間は、前後方向に延びる長尺状の連結部材16cによって連結されており、前側及び後側補剛フレーム16a,16bが前後方向にぐらつくことがないように剛性が高められている。そのため、前側補剛フレーム16aがブーム昇降用シリンダ35,35を介して3連ブーム31を高さ調整可能に支承することが可能となっている。なお、後側補剛フレーム16bには、作動油を冷却するためのファン式のオイルクーラ44が取り付けられており、作動油は、このオイルクーラ44で冷却されたのち作動油タンク51にリターンされるようになっている。
【0028】
さらに、上部デッキ18上には、操縦部45、ハンドル46、操縦席47、油圧ポンプ・作業ポンプ一体型のエンジン、作業モータ一体型の動力噴霧装置(以下、動噴という)、油圧制御用のバルブモジュール、薬液タンク32,32の上部等が配設されている。
【0029】
操縦部45は、上部デッキ18上の右前部に設けられており、機体操作及び茶園管理作業(この場合、防除作業)を行うための制御手段としての制御ユニットが組み込まれたタッチパネル式(例えば、入力数値としてはブームの高さ、軌間伸縮量等)の入力操作表示部、イグニションスイッチ、作業形態に応じて入力操作表示部の表示高さと実際のブーム高さとに誤差を生じさせないための作動切換スイッチ等(いずれも図示せず)が備えられている。
【0030】
さらに、この操縦部45の制御ユニットは、車載された各種検出手段からの検出値や走行履歴情報、入力情報等に基づいて3連ブーム31の姿勢制御、例えばきめ細かな高さ制御等を行うように予め設定されていると共に、GPS(Global Positioning System、ナビゲーションシステムのこと)による走行履歴情報、例えば走行距離情報、走行スピード情報等を記憶、表示、かつ通信回線を介して送出可能とする機能が備えられている。
【0031】
なお、GPSの構成に代えて、制御ユニットから送出された走行距離情報、走行スピード情報及び作業内容(例えば、日付・時間・作業時間・天候・作業場所・作業の種類・作業条件等の情報データ)を、乗用型防除機100に搭載した図示しない制御機器(例えば、PCL:プログラマブルロジックコントローラ)に自動的に記憶格納するように構成することが可能である。そして、この制御機器とパソコンとを無線や有線で接続することによって、制御機器内部に記憶格納した情報データがパソコンから取り出される。これにより、GPSを用いることなく作業の内容を容易に管理することが可能となるだけでなく、乗用型防除機100の価格上昇を抑えることもできる。
【0032】
そして、この操縦部45の後方に、正面視T字状の操作ハンドル46、オペレータが着座して機体操作及び防除作業を行うための操縦席47や図示しない各種機体操作レバーが配設されている。
【0033】
また、操縦席47の左後方、つまり上部デッキ18の中央後部には、乗用型防除機100の動力源としてのエンジン(図示せず)が、上面に通気孔があけられた箱型のエンジンカバー48内に格納配置されている。このエンジンには、走行駆動・昇降駆動・軌間伸縮用の油圧ポンプ、攪拌用の作業用ポンプ(ジェットポンプ)が一体化されており、エンジン動力によって油圧ポンプ、作業用ポンプが駆動されるようになっている。
【0034】
エンジンカバー48の前方、つまり、操縦席47の左側となる上部デッキ18の中央前部には、3連ブーム31に薬液を圧送するためのプランジャー式の動噴が、正面及び上面に通気孔があけられた箱型の動噴カバー49内に格納された状態では配置されている。なお、この動噴には、油圧式の作業用モータが一体化されている。
【0035】
また、この動噴カバー49の左隣、つまり上部デッキ18の左前部には、油圧ポンプから吐出される作動油を調圧して、ブーム折り畳み用シリンダ33、ブーム昇降用シリンダ35、走行モータ、軌間伸縮用シリンダなどの各種油圧式アクチュエータに供給する油圧制御用のバルブモジュールが、正面、上面及び左側面に通気孔があけられた箱型の保護カバー50内に格納された状態で配置されている。
【0036】
そして、上部デッキ18の左右側部には、左右一対とされた合成樹脂製の薬液タンク32,32がそれぞれ搭載されている。上部デッキ18よりも上方に位置する薬液タンク32の一部は、それぞれ上部連結フレーム13と機体外側に位置する補剛連結フレーム131(図2に図示)とに跨って載置されるように機体の左右中心に向かって膨出形成されている。また、上部デッキ18よりも下方に位置する薬液タンク32の他部は、図3,4に示されるように、上部連結フレーム13よりも機体外側において、前側及び後側フレーム11,12の脚部11a,12aに沿って延設され、下部連結フレーム14に所定距離をあけて位置するように下方に向けて膨出形成されている。
【0037】
さらに、図3,4に示されるように、これら薬液タンク32,32の上面には、それぞれ水平な低位部32aと高位部32bとが前後して形成されており、各低位部32aには、操縦席47(図3に図示)、或いはホースリール(図示せず)が取り付けられ、また、各高位部32bには、タンク内部に通じる注入口(図示せず)を開閉するスクリュウ式の開閉蓋32cが取り付けられている(図1〜4に図示)。
【0038】
また、薬液タンク32,32の下面には、それぞれ前方から後方に向かうのに従って徐々に高さが低くなる(つまり、下方への突出量が増す、タンクが深くなる)ように形成された後下がりの斜面部32dと、走行装置20に近接して配置されると共にタンク最深部となる水平な底面部32eとが前後に連なるようにして形成されており、この斜面部32dによって、薬液タンク32の底部前側が斜めに隅切りされた状態となっている。また、各底面部32eには、薬液タンク32内の薬液を動噴に供給したり、タンク外に排出するためのゴムホースが接続されるドレン32fがそれぞれ1つずつ設けられている。
【0039】
これら斜面部32dと底面部32eとのなす角度αは、機体が安全に登坂できる最大角度(例えば15度)よりも大きい角度、具体的には約22度(好ましくは22.2度)とされている(平坦地、傾斜地での防除作業を行う場合)が、この数値に限定されるものではない。
【0040】
これにより、乗用型防除機100が安全に走行できるように整えられた茶園(平坦地、傾斜地)において防除作業を行うのであれば、機体が前傾、或いは後傾しても、薬液タンク32,32内の薬液は残量に関係なく常にタンク最深部となる底面部32e上には必ず溜まることとなる。つまり、薬液タンク32のドレンが液面よりも高くなってしまうことは殆どないので、1つのドレン32fによって、薬液タンク32内のほぼすべての薬液を動噴に供給したり、タンク外に排出することができるようになる。その結果、ドレン32fは、左右の薬液タンク32,32を合わせて2つ必要となるだけであり、従来の薬液タンクよりも合計2つのドレンを削減することができる。しかも、2つのドレンの削減に応じて、2つのドレンと動噴とを結ぶ薬液供給用のゴムホースも削減できるため、部品点数を大幅に削減することができ、コストの低減化を図ることができるようになる。
【0041】
なお、平坦な茶園での防除作業に特化するのであれば、斜面部32dと底面部32eとのなす角度αは、最大角度よりも小さくてもよい。すなわち、斜面部32dと底面部32eとのなす角度αを最大角度以下に設定した薬液タンク32,32を用いて、ほぼ平坦な茶園での防除作業を行う場合、薬液タンク32内の薬液が少量となっても、薬液は斜面部32dによって底面部32e上に溜まるように導かれる。これにより、底面部32eにドレン32fを1つ設けるだけで、薬液タンク32内のほぼすべての薬液を動噴に供給したり、タンク外に排出することができる。従って、ドレン32fと動噴とを結ぶ薬液供給用のゴムホースも削減できるため、部品点数を削減することができ、コストの低減化を図ることができる。
【0042】
さらに、図3に示されるように、機体左側の薬液タンク32の斜面部32dの下方側、かつ下部連結フレーム14の上方となる位置には、作動油を貯留する作動油タンク51が配設されている。また、図4に示されるように、機体右側の薬液タンク32の斜面部32dの下方側、かつ下部連結フレーム14の上方となる位置には、エンジンの燃料を貯留する燃料タンク52が配設されている。
【0043】
これら作動油タンク51及び燃料タンク52は、それぞれ前側フレーム11の脚部11aと下部連結フレーム14とに跨って取り付け支持されているものであって、いずれも従来の作動油タンク、燃料タンクとほぼ同一のタンク容量でありながら側面視矩形状のタンク形状が、斜面部32dに臨んだ面部が薬液タンク32に干渉しないように、薬液タンク32の斜面部32dの傾斜角度に応じて隅切り(凹み)形成された隅切り部51a,52aが形成されており、タンク上部よりも底部の前後長が長く、各タンク51,52の後端が薬液タンク32の底面部32eに近接するように後方に向けて延出されている。そして、水平なタンク上面側には、ブリーザ付のタンクキャップ53,53が取り付けられている。
【0044】
すなわち、作動油タンク51と燃料タンク52とが上部デッキ18よりも下方側で、しかもフレーム本体10の前寄りに低く搭載されていると共に、薬液タンク32の斜面部32dに応じて隅切りされているので、作動油タンク51と燃料タンク52とのタンク内の液量が多ければ多いほど機体の重心位置がより低くなり、機体をより安定させることとなる。これにより、ブリッジを用いて機体(薬液タンク32,32は空の状態)をトラックに積み込む際に、ブリッジの角度が、機体が安全に登坂できる最大角度を超えているような場合であっても、機体を転倒させることなく、安定して積み込むことができるようになる。
また、作動油タンク51と燃料タンク52とには、十分な高低差がつけられることとなるので、機体が前傾、或いは後傾しても、タンクキャップ53,53のブリーザから作動油タンク内の作動油や燃料タンク内の燃料が漏れるのを防止することができるようになる。
【0045】
なお、斜面部32dは、タンク前端から底面部32eに向かって直線状となるように形成したが、これに限定されるものではなく、階段状や緩やかな湾曲線状等、非直線状としてもよい。また、斜面部32dは、本実施形態にあっては、前方から後方に向かうのに従って徐々に高さが低くなる後下がりの斜面部としたが、これに限定されるものではなく、エンジン等の重量物を機体前部に搭載するレイアウトを採用する場合には、後方から前方に向かうのに従って徐々に高さが低くなる前下がりの斜面部とすることが可能である。
また、底面部32eは、左右の薬液タンク32,32においてほぼ同一長さとしたが、機体右側の薬液タンク32の斜面部32dの長さは、機体左側の薬液タンク32の斜面部32dの長さよりも長くなるように設定されている。つまり、機体右側の薬液タンク32は、機体左側の薬液タンク32よりも、形状、容量が若干大きくなるように設定されているのは、薬液タンク32,32の下方側にそれぞれ配置される作動油タンク51と燃料タンク52との容量の違いを吸収して機体の重量バランスをとるためである。すなわち、作動油タンク51と燃料タンク52との大きさ、容量がほぼ同一となる場合には、2つの薬液タンク32,32の大きさ、容量も互いにほぼ同一となる。
また、本実施形態にあっては、機体の前側に防除装置30の3連ブーム31を設けたが、これに限定されるものではなく、機体の後側に3連ブーム31を設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明が適用された乗用型防除機の正面図である。
【図2】同乗用型防除機の平面図である。
【図3】同乗用型防除機の左側面図である。
【図4】同乗用型防除機の右側面図である。
【図5】従来のタンク類の一搭載例を示すもので、(a)は、従来の乗用型防除機の正面図、(b)は、同乗用型防除機の左側面図である。
【図6】図5とは異なる従来のタンク類の搭載例を示すもので、(a)は、従来の乗用型防除機の正面図、(b)は、同乗用型防除機の左側面図である。
【符号の説明】
【0047】
10…フレーム本体
20…走行装置
30…防除装置
31…3連ブーム
32…薬液タンク
32d…斜面部
32e…底面部
51…作動油タンク
51a…隅切り部
52…燃料タンク
52a…隅切り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
門型に形成されたフレーム本体と、
前記フレーム本体の下端に連結された走行装置と、
前記フレーム本体に搭載されて茶葉の防除作業を行う薬液タンク、動噴、噴口、ブームからなる防除装置と、
前記フレーム本体、前記走行装置及び前記防除装置に装着される各種の油圧式アクチュエータ用の作動油を貯留する作動油タンクと、
前記フレーム本体に搭載される駆動源用の燃料タンクと、備え、茶畝を跨いで走行しながら茶樹の防除作業を行う乗用型防除機において、
前記薬液タンクの下面には、前後方向の一方から他方に向かうのに従って徐々に高さが低くなる後下がりの斜面部と、前記走行装置に近接して配置される水平な底面部とが前後して形成されていることを特徴とする乗用型防除機。
【請求項2】
前記斜面部と前記底面部とのなす角度は、機体が安全に登坂できる最大角度よりも大であることを特徴とする請求項1に記載の乗用型防除機。
【請求項3】
前記薬液タンクは、前記フレーム本体の左右側に設けられていると共に、前記薬液タンクの斜面部の下方側には、前記作動油タンク或いは前記燃料タンクが配設されていると共に、前記薬液タンクの斜面部に臨んだ前記作動油タンクと前記燃料タンクとの面部には、前記薬液タンクの斜面部に応じて隅切りされた隅切り部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗用型防除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−211990(P2008−211990A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50038(P2007−50038)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000250270)落合刃物工業株式会社 (28)
【Fターム(参考)】