乗用田植機
【課題】本発明の課題は、車速の変化に応じて整地ロータ、特に中央のセンタロータを昇降制御することによって、ロータの地中への潜り込みを防止し、整地作業が的確に行えるようにする。
【解決手段】この発明は、苗植付部(4)の前側に植付直前の圃場面を均平化する前位のセンタロータ(27b)と後位のサイドロータ(27a)からなる整地ロータ(27)を設置し、該整地ロータ(27)は、車速の変化に応じて上下動可能に構成すると共に、車速の所定以上の増速に伴い前位のセンタロータが上昇変位すべく関連構成する。
【解決手段】この発明は、苗植付部(4)の前側に植付直前の圃場面を均平化する前位のセンタロータ(27b)と後位のサイドロータ(27a)からなる整地ロータ(27)を設置し、該整地ロータ(27)は、車速の変化に応じて上下動可能に構成すると共に、車速の所定以上の増速に伴い前位のセンタロータが上昇変位すべく関連構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整地ロータを供えた乗用田植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、苗植付部の前側に植付直前の圃場面を均平化するための整地ロータが設けられている。この整地ロータは、上下位置調節レバーの操作で標準位置より最大15mm高くでき、また、標準位置より15mm低くできるように調節可能に構成されたロータ上下調節手段が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−330199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
深い圃場等の悪条件下での整地作業においては、整地ロータが深い箇所に達すると沈下して潜り込んでしまい、的確な整地作業が行えず、ロータ破損等の不具合を招く問題があった。
【0005】
本発明の課題は、車速の変化に応じて整地ロータ、特に中央のセンタロータを昇降制御することによって、ロータの地中への潜り込みを防止し、整地作業が的確に行えるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の本発明は、苗植付部(4)の前側に植付直前の圃場面を均平化する前位のセンタロータ(27b)と後位のサイドロータ(27a)からなる整地ロータ(27)を設置し、該整地ロータ(27)は、車速の変化に応じて上下動可能に構成すると共に、車速の所定以上の増速に伴い前位のセンタロータが上昇変位すべく関連構成してあることを特徴とする。
【0007】
植付作業中、車速(植付作業速度)を所定の標準速より高速側に変速操作すると、これに関連してサイドロータより前側に位置するセンタロータが上昇側に位置変更される。従って、圃場の深い所でのロータの潜り込みがなくなり、整地作業が円滑、的確に行える。
【0008】
請求項2記載の本発明は、請求項1において、前記整地ロータ(27)は、ロータ回転速度を圃場の水深度に応じて制御可能に設け、水深度を検出する水深センサ(92)の検出結果に基づき、水深が深いときにはロータ回転速度を低速側に制御し、水深が浅いときには高速側に制御すべく連動構成してあることを特徴とする。
【0009】
整地ロータ(27)の回転速度は、圃場の水深度に応じて制御することができる。水深が深い時には低速側に制御してゆっくり回転させながら整地することで、水の跳ね飛ばしを防止することができる。水深が浅いときには高速側に制御して標準速度に戻すことで、通常の整地作業が良好に行える。
【0010】
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2において、前記整地ロータ(27)は、圃場面に対する対地高さを圃場の水深が深い時は高くし、水深が浅いときには対地高さが低くくなるよう水深センサ(92)の検出結果に基づき自動制御すべく構成してあることを特徴とする。
【0011】
圃場の水深度(深浅)は水深センサ(92)によって検出し、水深が深い時は、ロータを高めに制御して水の抵抗を抑制し、水深が浅い時は低めの標準高さに戻し制御して、通常の整地作業が行えるように自動調整することができる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の本発明によれば、左右のサイドロータに対し前方に位置するセンタロータが車速の変化に応じて上下動し、車速の増速に伴って上昇するので、圃場の悪条件下でもロータが地中に潜り込むのを未然に防止でき、整地作業が的確、円滑に行える。
【0013】
請求項2記載の本発明によれば、請求項1の発明効果を奏するものでありながら、ロータ回転速度を圃場の水深度に応じて制御することができ、水深が深い時には低速側に制御してゆっくり回転させながら整地することで、水の跳ね飛ばしを防止することができる。また、水深が浅いときには高速側に制御して標準速度に戻すことで、通常の整地作業が良好に行える。
【0014】
請求項3記載の本発明によれば、請求項1又は請求項2の発明効果をそうするものでありながら、ロータの高さを、圃場の水深が深い時は高めに制御して水の抵抗を抑制し、水深が浅い時は低めの標準高さに戻すことで、通常の適正な整地作業が良好に行える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】乗用型田植機の側面図
【図2】同上平面図
【図3】図3(a)は、図1の乗用型田植機の操向操作に連動する後輪のクラッチ作動機構図(平面図)、図3(b)は、図3(a)の側面図
【図4】図3(b)のミッションケース周辺の拡大側面図
【図5】図3(a)に油圧式無段変速装置を図示した場合の図
【図6】制御ブロック回路図
【図7】旋回制御パターンを示す説明図
【図8】旋回制御のフローチャート
【図9】田植機の操作盤の間欠サイドクラッチ制御調節ダイヤル部分の平面図
【図10】田植機の操作盤の植始め調節ダイヤル部分の平面図
【図11】田植機の操向操作に連動する後輪のクラッチ作動用の油圧回路図
【図12】図1の苗植付部の要部拡大側面図
【図13】同上苗植付部の要部背面図
【図14】同上苗植付部の要部平面図
【図15】苗載台の前板を示す側面図
【図16】苗載台のフェンス部構造を示す要部の背面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1及び図2は本発明を用いた一実施例である粉粒体繰出し装置として施肥装置を装着した乗用型田植機の側面図と平面図である。この乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0017】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸(前輪アクスル)14(図4)に左右前輪10,10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸17を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸11aに後輪11,11が取り付けられている。後輪ローリング軸17の後輪ローリング軸フレーム17a上には後輪の左右傾斜を検出する後輪ローリングセンサ22が設置されている。
【0018】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及び油圧式無段変速装置23を介してミッションケース12に伝達される。変速レバー16などにより決められるミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構28によって施肥装置5へ伝動される。
【0019】
植付伝動軸26に回転センサ94(図12)を設け、この回転センサ94が植付伝動軸の不等速回転を検知すると、エンジン20のエンジン回転を下げるように連動構成し、不等速回転がおさまるまでエンジン回転を下げることで、脈動による苗植え付けの乱れを防止することができることになる。
【0020】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に運転席31が設置されている。運転席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作する操向ハンドル(ステアリングハンドル)34が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。車体2の前部側には機体前後方向の傾斜を検出する前後傾斜センサ29が設置されている。
【0021】
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38,38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。そして、苗植付部4は、左右傾斜センサ47からの信号に基づいて植付部のローリング角を判別しながらローリングモータ63を駆動して苗植付部のローリング制御を行うように構成している。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧シリンダー46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0022】
苗植付部4は8条植の構成で、フレームを兼ねる苗植付伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口51a、…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a、…に供給すると苗送りベルト51b、…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a、…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52、…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ54等を備えている。なお、左右のマーカ54,54は、マーカモータ85(図6)によって線引き作用状態と線引き非作用状態とに切り替えられようになっている。
【0023】
苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にミドルフロート57とサイドフロート56がそれぞれ設けられている。これらフロート(センターフロート55、サイドフロート56、ミドルフロート57)を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55〜57が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52、…により苗が植付けられる。各フロート(センターフロート55、サイドフロート56、ミドルフロート57)は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダー46を制御する油圧バルブ161、チェックバルブ162(図6,図11)を介して苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0024】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61、…によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62、…でフロート(センターフロート55、サイドフロート56、ミドルフロート57)の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず)まで導き、施肥ガイドの前側に設けた作溝体(図示せず)によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。
【0025】
苗植付部4には整地装置の一例である整地ロータ27(27a,27b)が取り付けられている。また、苗載台51は苗植付部4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65の支持ローラ65aをレールとして左右方向にスライドする構成である。
【0026】
整地ロータ27は、次のような支持構造に支持されている。すなわち、苗載台51の前記支持枠体65の両側辺部材65bに上端を回動自在に支持された梁部材66と該梁部材66の両端に固着した支持アーム67と該支持アーム67に回動自在に取り付けられたロータ支持フレーム68が設けられ、該ロータ支持フレーム68の下端には整地ロータ27(サイドロータ27aとセンタロータ27b)の駆動軸70(70a,70b)が取り付けられている。また該ロータ支持フレーム68の下端部近くは苗植付伝動ケース50に回動自在に取り付けられた連結部材71に連結している。
【0027】
フロート(センターフロート55、サイドフロート56、ミドルフロート57)との配置位置の関係でセンタフロート55の前方にあるロータ27bはサイドフロート56とミドルフロート57の前方にある各ロータ27aより前方に配置されている。そのためロータ27aの駆動軸70aへの動力は後輪11のギアケース18内のギアから自在継手72等を介して伝達され、ロータ27bの駆動軸70bへは両側のロータ27a,27aの駆動軸70a,70aの車体内側の端部からチエンケース73内のチエンを介して動力伝達される。左右のチエンケース73,73間には補強部材74が設けられている。
【0028】
また、ロータ27bは梁部材66に上端部が支持された一対のリンク部材76,77によりスプリング78を介して吊り下げられている。
また、ロータ上下位置調節レバー81の下端部には折曲片82が固着されており、該折曲片82は支持枠体65に回動自在に支持されている。そして前記レバー81が機体の左右方向に回動操作されると、支持枠体65の両側辺部材65bに回動自在に支持された梁部材66に固着支持された突出部66aの近くを折曲片82が上下に回動する。折曲片82は前記突出部66aの下方を係止しているので、該突出部66aがレバー81の機体右方向の回動で、上向きに梁部材66を中心として回動する。該突出部66aの前記回動により第一リンク部材76の梁部材66との連結部と反対側の端部も梁部材66を中心として上向きに回動する。この第一リンク部材76の上方への回動により第二リンク部材77とスプリング78を介してロータ27bを上方に上げることができる。ロータ27bを上方に移動させると、駆動軸70bと駆動軸70aを介してロータ27aも同時に上方に移動する。ロータ27a,27bをロータ昇降用モータ75で上下動ができるように構成することもできる。
【0029】
なお、ロータ上下位置調節レバー81は車体2のほぼ中央部に設けているので、ロータ27a,27bの上下動を行う場合に左右のバランスを取りやすい。
また、苗植付部4を圃場に下げたときに、苗植付部4を水平位置に戻すケーブル45をセンタロータ27bのリンク部材76,77とスプリング78等からなる引上げスプリング部と油圧ピストン46と連動させた構成としている。
【0030】
このように、センタロータ27bのスプリング78等によるスイング機構の他にケーブル45を設けることで苗植付部4を上昇位置から下降させるごとにセンタロータ27bを水平位置に戻すことができ、センタロータ27bの保持位置を安定化させることができる。
【0031】
センタロータ27bは、サイドロータ27a,27aの駆動軸70a,70aを回動支点として上下動するようになっており、該ロータ27bの前部に連動ワイヤー79(図12)を連結してロータの前部側を持ち上げできるようにしている。そして、このワイヤー79は変速レバー16(図2、図12)に連結し、変速レバー16を標準速度(標準作業速)から高速側に変速操作すると、センタロータ27bが上昇するよう連動構成している。従って、変速レバーによる車速アップに伴いセンタロータが上昇するので、深い圃場での沈み込みを防止することができる。なお、上記実施例における車速は無断変速する構成であるが、車速を高低2段階に切替可能な構成とし、高速側に切り替えた時、センタロータが所定位置まで上昇するように連動構成するものであってもよい。
【0032】
整地ロータ27は、この回転速度を圃場の水深が深い時にはゆっくり回転させて水を跳ね飛ばさないようにし、水深が浅い時には標準速度に戻して通常の整地作業が行えるように制御することができる。つまり、圃場の水深度(浅深)は水深センサ92(図6、図12)によって検出するようにし、ロータの回転速度は水深センサ92の検出結果に基づきロータ変速モータ93(図6)を作動させて自動的に調整する。
【0033】
また、整地ロータ27の高さは、圃場の水深が深い時、高めにして水の抵抗を抑制し、水深が浅い時は標準となるように、水深センサ92によって検出し、ロータ昇降モータ75を介してロータ高さを自動的に調整する構成としている。
【0034】
エンジン20の回転動力は、ベルト伝動装置21などを介して油圧式無段変速装置23に伝えられ、油圧式無段変速装置23からの出力はベルト(図示せず)を介してミッションケース12の図示しない入力軸に伝えられる。
【0035】
苗植付部4は、走行車体2のメインフレーム15に昇降リンク装置3で昇降自在に装着されているが、その昇降させる構成と苗植付部4の構成について説明する。
先ず、走行車体2に基部が回動自在に設けられた一般的な油圧シリンダー46(図1)のピストン上端部を昇降リンク装置3に連結し、走行車体2に設けた油圧ポンプ49(図4,図5)により油圧シリンダー46に圧油を供給・排出して、油圧シリンダー46のピストンを伸進・縮退させて昇降リンク装置3に連結した苗植付部4が上下動されるように構成されている。
【0036】
図3に示すように、左右の後輪11の伝動軸のサイドクラッチ操作アーム86Iを作動させるクラッチ連動用の左右ロッド180がミッションケース12の左右両側に設けられ、該クラッチ連動用の左右ロッド180とサイドクラッチ操作アーム86Iは左右のプルシリンダ217を介して連結している。
【0037】
左右のサイドクラッチ操作アーム86Iは、前記左右のプルシリンダ217(旋回時にシリンダ217を引き、旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチを切る)作動制御用のサイドクラッチ制御用電磁バルブ221(図4,図5,図11)を備えている。 上記構成を用いて、ハンドル34を一定角度回転させた後に、一つは継続して前記サイドクラッチを切り又は入りにする制御(A)ともう一つは一定周期で前記サイドクラッチを接続/切断する制御(B)に切替え選択可能にした。制御(A)は標準用であり、制御(B)は湿田用である。ハンドル34を操作するとトルクジェネレータ(パワーステアリング)37(図11にも図示)によって旋回内側のプルシリンダ217を作動させてサイドクラッチを切り(又は入り)にする。これらサイドクラッチ操作アーム86I、クラッチ連動用の左右ロッド180、プルシリンダ217、サイドクラッチ制御用電磁バルブ221などをステアリング機構と言う。
【0038】
上記した実施例では、ステアリングハンドル34の所定角以上の操作により、旋回内側の後輪11のサイドクラッチ(図示せず)を切る例を示したが、サイドクラッチスイッチを作業モニタ装置に備えた操作盤33(図2)に設けておき、手動でサイドクラッチの「切」が可能な構成にしても良い。または、サイドクラッチペダルにより、手動でサイドクラッチの「切」が可能な構成にしても良い。
【0039】
次に、後進時に苗植付部4を自動的に上昇させる制御構成について説明する。先ず、前後進レバー90を後進速に操作すると、該レバー90の基部に設けた接当片が接当してオンになるバックリフトスイッチ191(図6)が設けられており、制御装置163(図6)の苗植付装置上昇手段により電磁油圧バルブ(昇降バルブ)161(図6,図11)を作動させる電磁ソレノイドを制御して油圧シリンダー46にて苗植付部4を最大位置まで上昇させるように構成されている。
【0040】
このように、前後進レバー90を後進速に操作すると、自動的に苗植付部4を最大位置まで上昇させるように構成しておくと、圃場の畦際で機体を旋回させるため等に機体を畦に向かって後進させる時に、自動的に苗植付部4は最大位置まで上昇しているので、苗植付部4が畦に衝突して破損することが未然に防止でき作業性が良い。
【0041】
次に、旋回時に苗植付部4を自動的に上昇させる制御構成について説明する。前記ステアリングハンドル34を左右何れかに200度回転させた時に自動リフト切替スイッチ192(図6、図10)をオンにすると、制御装置163に備えられた昇降制御手段の苗植付部上昇手段により電磁油圧バルブ161を作動させる電磁ソレノイドを制御して油圧シリンダー46にて苗植付部4を最大位置まで上昇させるように構成されている。
【0042】
このように、畦際で機体を旋回させるためにステアリングハンドル34を左右何れかに最大限まで回転させると、自動的に苗植付部4は最大位置まで上昇するので、機体旋回時に苗植付部4を上昇させる操作が不要となり、能率良く機体旋回が行えて作業性が良い。
【0043】
操作盤33には、苗植付部4の自動上昇を行わせる状態と行わせない状態とに切替える自動リフト切替スイッチ192(図6,図10)が設けられており、自動リフト切替スイッチ192を自動にしていると、上記のようにバックリフトスイッチ191がオンになるか自動リフト切替スイッチ192がオンでステアリングハンドル34を左右何れかに200度回転すると自動的に苗植付部4は制御装置163の苗植付装置上昇手段により自動上昇される。そして、自動リフト切替スイッチ192をオフにしていると、バックリフトスイッチ191がオンになってもステアリングハンドル34を左右何れかに200度回転しても苗植付部4は自動上昇されない。
【0044】
このように、一つの自動リフト切替スイッチ192で、バックリフトスイッチ191がオンになっても自動リフト切替スイッチ192がオフであればステアリングハンドル34を左右何れかに200度回転しても苗植付部4は自動上昇されない状態にすることができるので、バックリフトとオートリフトの各々を入り切りするスイッチを別々に設けた構成よりも簡潔な構成となり、一つのスイッチで両者の状態切替えが行えるので、操作ミスが少なくなり作業性が良い。
【0045】
なお、自動リフト切替スイッチ192をオフにして、バックリフトスイッチ191がオンになってもステアリングハンドル34を左右何れかに200度回転しても苗植付部4が自動上昇しない状態にしておくと、機体を後進で納屋等にしまう時に前後進レバー90を後進速に操作しても苗植付部4が自動上昇しないので、苗植付部4を下げたまま後進することができ、納屋の入口上部や納屋内の他の部材に苗植付部4をぶつけてしまうような事態が回避できる。また、扇型やひょうたん型等の変形圃場で畦際に沿って周り植えをする場合に、曲がった畦に沿ってステアリングハンドル34を回しながら植付け作業を行うが、この時に、自動リフト切替スイッチ192を自動位置にしていると、ステアリングハンドル34を左右何れかに200度以上回転すると自動的に苗植付部4が上昇してしまい植付け作業が行えないが、自動リフト切替スイッチ192をオフにしていると、ステアリングハンドル34を左右何れかに200度以上回転しても苗植付部4は上昇しないので植付け作業が行え、変形圃場でも適切に苗植付け作業が行える。
【0046】
また、上記構成からなる乗用型田植機1では、本実施例の制御装置163は旋回内側の後輪11のドライブシャフト(伝動軸)(図示せず)の回転数の検出に基づいて、旋回時の苗植え付けなどの諸作動を自動的に行わせる旋回連動制御ができる。この制御モードを自動植付開始モードということがあるが、特に、旋回内側の後輪11が所定角度以上操舵されているときに、前記旋回連動制御ができる。
【0047】
旋回後の苗の植始め位置の設定を後輪の回転数に基づいて自動的に行う制御モード(自動植付開始モード)の設定ができ、この制御モード設定は旋回開始タイミングをハンドル34の旋回角度(切れ角)センサ193で検知し、該旋回角度センサ193で検知した旋回開始時からの走行距離を車輪(旋回内側の後輪11の伝動軸)の回転数センサ205の検出値に基づき測定し、前記走行距離が所定値に達すると苗植付レバー19(図2)の操作をしなくても、自動的に苗の植え付けを開始する自動植付開始モードである。
【0048】
この旋回制御方式を図7と表1に示す。
【0049】
【表1】
すなわち、ステアリングハンドル34を切り、旋回内側の後輪11のサイドクラッチが切れた状態で、左右ドライブシャフトの回転数を検出し、旋回時の内側の後輪11の伝動軸回転数が設定値N1を超えると苗植付部4を下降させる。その後、後輪11の伝動軸回転数が設定値N2と苗植付け具126の作動が「切り」状態に入って(=苗植付装置52が上げ状態に移って)からステアリングハンドル34の切り操作開始までの後輪11の伝動軸の回転数nの合計値以上になると植付「入り」にする機構である。
【0050】
上記旋回連動制御のフローを図8に示す。
まず、左右の後輪11,11の伝動軸の回転数を伝動軸回転数センサ205で検出し、また設定値N1(旋回開始から機体90°旋回までの旋回内側の後輪11のドライブシャフト(伝動軸)回転信号設定値)、N2(機体90°旋回から植付クラッチ「入り」までの前記ドライブシャフト回転信号設定値)、θ1((直進操作時のハンドル切り設定角度の)下限値(左旋回と判断する角度))、θ2((直進操作時のハンドル切り設定角度の)上限値(右旋回と判断する角度))をセットする。
【0051】
次いで、圃場の硬軟や水深、耕盤深さ(圃場深さ)等の圃場条件の相違に対応するために、前記回転数N1、N2及びハンドル切り角度θ1、θ2の各設定値を調節する設定ダイヤル206a〜208b(図6)により、補正値n0を設定する。
【0052】
苗植付部4の苗植付け具126が苗の植え付け状態にあるか無いかをフィンガーレバー166(苗植付部4の駆動の入り切り操作をしたり、苗植付部4の昇降操作をしたりできるレバー)の操作に伴う制御装置163の状態で検出して、植付「入」から植付「切」になったとき、苗植付け具126の作動が「入り」状態に入ってから苗植付け具126の作動が「切り」状態になるまでの後輪11の伝動軸の回転数nを旋回内側の伝動軸回転数センサ205で検出して、その値(n)を記憶しておく。次いで、ステアリングハンドル34の切り角度(操舵角度)θをステアリングハンドル34のシャフトに設けたハンドル切れ角センサ(ポテンショメータ)193(図6)で検出して直進時(θ1<θ<θ2)以外の時には左右のいずれの方向に旋回中であるかどうかを検出する。
【0053】
左旋回中であると左後輪11の伝動軸の回転数を検出して、回転数n1がn1≧N1+n0になると、旋回開始から機体が90度以上旋回したことになるので苗植付部4を昇降制御手段の苗植付部下降手段により油圧シリンダ46を作動させて接地位置まで下げる。この苗植付部4の下降で枕地が均平化される。また、機体を90度旋回させた後には、ハンドル34の旋回度合いを緩めながら前進させ、左後輪11の左右ドライブシャフトの回転数n2がn2≧N2+n+n0になると、苗植付け具126を作動させて苗の植え付けを開始させる。
【0054】
本実施例の乗用型田植機1では、自動植付開始モードが設定された時にのみ自動的に制御装置163によって、旋回外側の後輪11の回転数に応じて旋回内側の後輪11の駆動を断続的にサイドクラッチを伝動する断続的入り切り制御機能(B1)(上記制御(B)に対応するもので、間欠サイドクラッチ制御という)を作動させることができる。
【0055】
このように間欠サイドクラッチ制御を行うことにより、ブレーキングによる衝撃も少なく、エンジン回転や車速の影響を受けずに後輪11の旋回角度に応じたブレーキングの周期を得ることができる。前記旋回内側の後輪11のクラッチをオン/オフする間欠サイドクラッチ制御において、車速が遅ければ遅い程クラッチをオン/オフする周期を短く、速ければ速いほどクラッチをオン/オフする周期を長くすることで、オペレータに旋回時の違和感がないブレーキングを行うことができる。
【0056】
例えば、車速0m/sで旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチ(図示せず:クラッチ操作アーム86Iなどにより行う)の作動周期(オン/オフを含む)が0.5秒、車速0.5m/sで前記サイドクラッチ作動周期(オン/オフを含む)が1.0秒、車速1.0m/sで前記サイドクラッチ作動周期(オン/オフを含む)が1.5秒となるように一次関数的に車速に応じて旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチ作動周期を変更する。
【0057】
高速走行時は特に後輪11の伝動軸のクラッチをオンするときでも、オフするときでも衝撃が大きい。そこで上記のように、間欠サイドクラッチ制御による衝撃を少なくするために、高速走行時ほど間欠サイドクラッチ制御(クラッチ操作アーム86Iなどにより行う)のオン/オフの周期を長めにする。
【0058】
本実施例の8条植の乗用型田植機1のように、大型の走行車両は旋回時には比較的大回りをする必要がある。しかし、旋回中に旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチを切ったままでおくと、小回りになり過ぎる。しかし、本実施例のように、旋回内側の後輪11の伝動軸を間欠サイドクラッチ制御すると、オペレータに旋回時の違和感がないブレーキングを行うことができ、オペレータの希望する適切な旋回半径で8条植の乗用型田植機1に相応しい比較的大回りの旋回が可能となる。
【0059】
前記旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチの接続は、図9に示すように操作盤33に設けている間欠サイドクラッチ制御(ポンピングクラッチ制御ともいう)調節ダイヤル210で設定された回転数(回転角度)に旋回内側の後輪11の回転数が達するまでなされる。
【0060】
間欠サイドクラッチ制御調節ダイヤル210は、後輪回転角度(=後輪11の伝動軸の回転角度)で11度〜27度の間で調整を行う。なお、前記間欠サイドクラッチ制御調節ダイヤル210を後輪11(後輪11の伝動軸)の回転角度でなく、後輪11の伝動軸作動用のクラッチ(図示せず)の作動時間、例えば210msから510msまでの時間で設定できる構成にして、この間欠サイドクラッチ制御調節ダイヤル210で設定された時間の間、旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチ(図示せず)が接続される構成としても良い。また、前記調節ダイヤル210には、左右後輪11,11を常時駆動する領域210a(図9)を設けている。
【0061】
また、路上走行などで高速走行しているときには、間欠サイドクラッチ制御を選択すると、大回り旋回になり易く、そのためむしろハンドリングに違和感があるので、路上走行などの高速走行中には、前記間欠サイドクラッチ制御は不要である。そこで、走行車両が一定車速、例えば1.0m/s以上で高速走行しているときには、間欠サイドクラッチ制御が行われないようにしている。
【0062】
また、図8に示す制御フローの設定値N1(旋回開始から機体90°旋回までの旋回内側の後輪11のドライブシャフト(伝動軸)回転信号設定値)、N2(機体90°旋回から植付クラッチ「入り」までの前記ドライブシャフト回転信号設定値)を小さくするほど、旋回内側の後輪11が深い圃場などにおいて深く沈み込んでいる場合など、苗の植え付け時の苗植付装置52の下降を速く行いたい場合に有効である。
【0063】
後輪11が深く圃場に沈み込んでいる場合には昇降リンクセンサ48で上リンク40と下リンク41の昇降の程度を検出することにより、苗植付部4の昇降の程度も検出できる。
【0064】
更に、図8に示す自動植付制御モードにおいて、ステアリングハンドル34の操作角度θ1((直進操作時のハンドル切り設定角度の)下限値)、θ2((直進操作時のハンドル切り設定角度の)上限値)による苗植付部4の上昇のタイミングを前記θ1、θ2の設定ダイヤル206a,206bで任意に変更可能なように構成することができる。 上記構成により旋回制御中にオペレータが苗植付部4の上昇タイミングを任意に設定できるので自分のペースに合わせて作業を行うことができる。
【0065】
こうして、8条植えなどの多条植え用の乗用型作業機であっても、前回の植付条に一部重なった状態で苗の植え付けをするおそれなく圃場での旋回が可能となる。
右旋回の場合にも左旋回時と全く同様の制御が行われる。
【0066】
このようにサイドクラッチが切れている後輪11の伝動軸(ドライブシャフト)の回転数を検出する方法は、動力の伝わっている後輪11の回転数検出方法に比べてよりスリップなどの影響を受け難い特徴がある。また、後輪11より回転の速いドライブシャフトの回転数を検出するため、容易にその測定精度を上げることができる。その結果、各植え付け条毎の苗の植え付け始めがほぼ一定(枕地幅が一定)となる効果がある。
【0067】
なお、上記図8に示す一連の旋回制御の諸動作を行う旋回制御のスタートボタン(スイッチ)184を上記苗植付のスタート位置の設定を行うボタンとして兼用してもよい。 前記自動植付開始モードの設定は植始め調節ダイヤル212(図6、図10)で行い、また前記旋回開始時からの苗の植付け始めまでの走行距離は、図10に示す植始め調節ダイヤル212を回して設定する。
【0068】
前記植始め調節ダイヤル212の回転角度に応じて前記走行距離を適宜選択できる構成であるが、該ダイヤル212の前記走行距離の調節範囲より外れたダイヤル旋回角度領域(しかも自動植付開始モードに入る前のダイヤル旋回角度領域)に、車両の旋回開始時に自動的に苗植付装置4を上昇させる制御モードを選択できるオ−トリフト機能及び車両の後進時に自動的に苗植付装置4を上昇させる制御モードを選択できるバックリフト機能を兼用させている。
【0069】
そして、植始め調節ダイヤル212のダイヤル回転操作でオ−トリフト機能に対応した位置に植始め調節ダイヤル212の指示部が「オートリフト」と指示された位置(図10に示す)に至ると、当該オートリフト機能がオンになり、オートリフト制御モードが開始すると同時に前記間欠サイドクラッチ制御を開始する制御モードを採用することもできる。
【0070】
上記のように旋回制御手段を備えた田植機において、旋回時の車速が標準値より速い速度に設定されている場合には、苗植付部4の下降速度が標準値より速くなるように設定している。つまり、図6に示す制御装置163には、後輪伝動軸回転数センサ205の標準値を越える速度検出結果に基づき、油圧シリンダ46の作動速度を高める下降速度制御手段が備えられ、標準値より速く降下することによって苗植付部はタイミングよく所定位置に下降することになる。なお、前記旋回制御手段を備えた田植機において、旋回前の苗植付部への動力伝達制御は、隣接条の植付苗の終りの位置で植付クラッチ「切」となるよう隣接条センサ108(図1)の検出結果に基づき制御する構成としている。すなわち、旋回前の植付作業部への植付クラッチ「切」制御は、苗植付部4が隣接条の苗植え終り位置に達すると、その苗終り位置の苗を隣接条センサ108で検出し、このセンサ検出結果に基づき、PTOクラッチ作動ソレノイド218を作動させて植付クラッチを「切」制御する構成としている。
【0071】
また、旋回制御手段を備えた田植機において、枕地植付時、旋回した後、ぎりぎりまでバックして植え付けを開始するとき、後方距離センサ105(図1)によって機体後尾が畦までの適正距離に達すると、ブザーなどによって報知するか、バックストップさせるように構成し、更に、その後、自動的に苗植付部を下げにし、且つ、植付クラッチを入りにして植付作業を開始する制御手段を設けることができ、これにより、植え残しや畦への激突を防止することができる。
【0072】
更に、本実施例の乗用型田植機1には、左右のサイドクラッチ又はサイドブレーキ(図示せず)を左右個別に操作できる操作具として左右のブレーキペダル111,111(図3,図4)を設けているが、左右のブレーキペダル111,111の連結中にも制御装置163によって間欠サイドクラッチ制御(B1)を選択する制御が行われないようにする。
【0073】
左右のブレーキペダル111,111が連結中(又は連結中でない)であることを検出するブレーキペダル連結センサ114をブレーキペダル111,111近傍に設けて、ブレーキペダル連結センサ114からの検出値によって間欠サイドクラッチ制御(B1)の作動の有無を制御装置163により選択する。
【0074】
図3に示すように、左右のブレーキペダル111,111は前端部上側が保持プレート113によって保持され、前端部下側が左右のブレーキペダル111,111を連結するための連結プレート115によって支持されている。そして連結プレート115の下面は、左右のブレーキペダル111,111の基部111a,111aに連結しており、ブレーキペダル基部111a,111aの先端はアーム116,117を介して第1ロッド119に連結している。ブレーキペダル111を矢印P方向に踏み込むと、アーム116はブレーキペダル基部111aとアーム116との連結軸118を支点として矢印A方向に回動してアーム117と共に第1ロッド119が上方(矢印B方向)に動く。
【0075】
一方、ブレーキペダル111を矢印P方向とは反対方向に戻すと、アーム116は矢印A方向とは反対の方向に回動してアーム117と共に第1ロッド119が下方(矢印B方向とは反対方向)に動く。このようにブレーキペダル111を操作することで、第1ロッド119は上下方向に動く。
【0076】
左右一方の第1ロッド119は左右一方の中継アーム134に連結し、更に中継アーム134はカウンタ軸133に連結し、カウンタ軸133に連結した左右他方の中継アーム134から、カウンタロッド137、カウンタアーム139等を介してクラッチ連動用の左右一方のロッド180に繋がっている。また、左右他方の第1ロッド119は、中継アーム134、カウンタ軸133、カウンタロッド137などを介さずにカウンタアーム139からクラッチ連動用の左右他方のロッド180に繋がっている。
【0077】
これら左右ロッド180はそれぞれプルシリンダ217,サイドクラッチ操作アーム86Iに連結しており、第1ロッド119が上下に動くと、左右ロッド180が前後方向に動いて左右のサイドクラッチ操作アーム86Iは左右ロッド180の動きに連動して回動する。
【0078】
ブレーキペダル111を矢印P方向に踏み込むと、上述のように第1ロッド119が上方(矢印B方向)に動き、左右ロッド180は前方(矢印C方向)に引かれてサイドクラッチ操作アーム86Iが矢印U方向に回動して、旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチが切れる。
【0079】
一方、左右のサイドクラッチ操作アーム86Iは、左右のプルシリンダ217作動制御用のサイドクラッチ制御用電磁バルブ221を備えており、制御装置163からの出力信号によりサイドクラッチ制御用電磁バルブ221が作動して継続的入り切り制御機能(A1)又は間欠サイドクラッチ制御(B1)が行われる。
【0080】
左右のブレーキペダル111,111が連結中の時に、オペレータが一方又は両方のブレーキペダル111を操作すると、ブレーキングが行われる。しかし、左右のブレーキペダル111,111を連結している場合は、路上走行等のときであり、走行速度が速く、また傾斜地を走行することもあるから、より安全性を確保するために、間欠サイドクラッチ制御(B1)を作動させないようにする。
【0081】
したがって、本構成を採用することにより、オペレータの意思とは無関係に継続的入り切り制御機能(A1)又は間欠サイドクラッチ制御(B1)が作動しないようにできるので、安全性の向上が図れる。
【0082】
また、左右のブレーキペダル111,111の操作の動きを感知するセンサ(ポテンショメータ)112,112(図3)をそれぞれ設け、間欠サイドクラッチ制御(ポンピングクラッチ)調節ダイヤル210により手動で設定した手動旋回時に、オペレータの操作パターンを制御装置163に記憶させるようにしても良い。
【0083】
これは、旋回時のポテンショメータ112,112の操作パターンを記憶するものであるが、ハンドル切れ角センサ193により旋回を開始したことを検出してから、ハンドル切れ角センサ193により旋回を終了したことを検出するまでの間、制御装置163に入力される旋回内側の伝動軸回転数センサ205の累計回転数検出値に対応する旋回内側のポテンショメータ112,112の検出値を自動的に記憶することになる。
【0084】
そして、手動旋回時の制御装置163に記憶したパターン通りに、次工程では自動で間欠サイドクラッチ(B1)(旋回内側の後輪11の駆動を断続的に入/切する)を制御するような構成としても良い。
【0085】
図15、図16は苗載台の構成例を示す。苗載台51の下端側に設けられた前板96は、土付マット苗を受ける苗受面96aと苗載台51の苗載せ面と平行な載台受面96bとからなり、苗受面96aと載台受面96bとのなす角度が鈍角となるよう該載台受面96bを緩やかな曲面形状96Rとし(図15)て苗を前側へ押し出し易くしている。従来の直角形状では、下側の苗の終り部分が角に残ることがあり、欠株になる問題があったが、下の苗と上の苗との継目で前側に押し出す構造のため、下側の苗が残らず欠株が減少する。
【0086】
また、図16に示すように苗載台下部のフェンス部97の形状としてテーパ部97Tをもたせた構成としている。これにより、苗を横移動させるときの負荷が減少し、苗載台の耐久性が向上する。
【符号の説明】
【0087】
4 苗植付部 27 整地ロータ
16 変速レバー 79 連動ワイヤー
【技術分野】
【0001】
本発明は、整地ロータを供えた乗用田植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、苗植付部の前側に植付直前の圃場面を均平化するための整地ロータが設けられている。この整地ロータは、上下位置調節レバーの操作で標準位置より最大15mm高くでき、また、標準位置より15mm低くできるように調節可能に構成されたロータ上下調節手段が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−330199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
深い圃場等の悪条件下での整地作業においては、整地ロータが深い箇所に達すると沈下して潜り込んでしまい、的確な整地作業が行えず、ロータ破損等の不具合を招く問題があった。
【0005】
本発明の課題は、車速の変化に応じて整地ロータ、特に中央のセンタロータを昇降制御することによって、ロータの地中への潜り込みを防止し、整地作業が的確に行えるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の本発明は、苗植付部(4)の前側に植付直前の圃場面を均平化する前位のセンタロータ(27b)と後位のサイドロータ(27a)からなる整地ロータ(27)を設置し、該整地ロータ(27)は、車速の変化に応じて上下動可能に構成すると共に、車速の所定以上の増速に伴い前位のセンタロータが上昇変位すべく関連構成してあることを特徴とする。
【0007】
植付作業中、車速(植付作業速度)を所定の標準速より高速側に変速操作すると、これに関連してサイドロータより前側に位置するセンタロータが上昇側に位置変更される。従って、圃場の深い所でのロータの潜り込みがなくなり、整地作業が円滑、的確に行える。
【0008】
請求項2記載の本発明は、請求項1において、前記整地ロータ(27)は、ロータ回転速度を圃場の水深度に応じて制御可能に設け、水深度を検出する水深センサ(92)の検出結果に基づき、水深が深いときにはロータ回転速度を低速側に制御し、水深が浅いときには高速側に制御すべく連動構成してあることを特徴とする。
【0009】
整地ロータ(27)の回転速度は、圃場の水深度に応じて制御することができる。水深が深い時には低速側に制御してゆっくり回転させながら整地することで、水の跳ね飛ばしを防止することができる。水深が浅いときには高速側に制御して標準速度に戻すことで、通常の整地作業が良好に行える。
【0010】
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2において、前記整地ロータ(27)は、圃場面に対する対地高さを圃場の水深が深い時は高くし、水深が浅いときには対地高さが低くくなるよう水深センサ(92)の検出結果に基づき自動制御すべく構成してあることを特徴とする。
【0011】
圃場の水深度(深浅)は水深センサ(92)によって検出し、水深が深い時は、ロータを高めに制御して水の抵抗を抑制し、水深が浅い時は低めの標準高さに戻し制御して、通常の整地作業が行えるように自動調整することができる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の本発明によれば、左右のサイドロータに対し前方に位置するセンタロータが車速の変化に応じて上下動し、車速の増速に伴って上昇するので、圃場の悪条件下でもロータが地中に潜り込むのを未然に防止でき、整地作業が的確、円滑に行える。
【0013】
請求項2記載の本発明によれば、請求項1の発明効果を奏するものでありながら、ロータ回転速度を圃場の水深度に応じて制御することができ、水深が深い時には低速側に制御してゆっくり回転させながら整地することで、水の跳ね飛ばしを防止することができる。また、水深が浅いときには高速側に制御して標準速度に戻すことで、通常の整地作業が良好に行える。
【0014】
請求項3記載の本発明によれば、請求項1又は請求項2の発明効果をそうするものでありながら、ロータの高さを、圃場の水深が深い時は高めに制御して水の抵抗を抑制し、水深が浅い時は低めの標準高さに戻すことで、通常の適正な整地作業が良好に行える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】乗用型田植機の側面図
【図2】同上平面図
【図3】図3(a)は、図1の乗用型田植機の操向操作に連動する後輪のクラッチ作動機構図(平面図)、図3(b)は、図3(a)の側面図
【図4】図3(b)のミッションケース周辺の拡大側面図
【図5】図3(a)に油圧式無段変速装置を図示した場合の図
【図6】制御ブロック回路図
【図7】旋回制御パターンを示す説明図
【図8】旋回制御のフローチャート
【図9】田植機の操作盤の間欠サイドクラッチ制御調節ダイヤル部分の平面図
【図10】田植機の操作盤の植始め調節ダイヤル部分の平面図
【図11】田植機の操向操作に連動する後輪のクラッチ作動用の油圧回路図
【図12】図1の苗植付部の要部拡大側面図
【図13】同上苗植付部の要部背面図
【図14】同上苗植付部の要部平面図
【図15】苗載台の前板を示す側面図
【図16】苗載台のフェンス部構造を示す要部の背面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1及び図2は本発明を用いた一実施例である粉粒体繰出し装置として施肥装置を装着した乗用型田植機の側面図と平面図である。この乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0017】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸(前輪アクスル)14(図4)に左右前輪10,10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸17を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸11aに後輪11,11が取り付けられている。後輪ローリング軸17の後輪ローリング軸フレーム17a上には後輪の左右傾斜を検出する後輪ローリングセンサ22が設置されている。
【0018】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及び油圧式無段変速装置23を介してミッションケース12に伝達される。変速レバー16などにより決められるミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構28によって施肥装置5へ伝動される。
【0019】
植付伝動軸26に回転センサ94(図12)を設け、この回転センサ94が植付伝動軸の不等速回転を検知すると、エンジン20のエンジン回転を下げるように連動構成し、不等速回転がおさまるまでエンジン回転を下げることで、脈動による苗植え付けの乱れを防止することができることになる。
【0020】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に運転席31が設置されている。運転席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作する操向ハンドル(ステアリングハンドル)34が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。車体2の前部側には機体前後方向の傾斜を検出する前後傾斜センサ29が設置されている。
【0021】
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38,38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。そして、苗植付部4は、左右傾斜センサ47からの信号に基づいて植付部のローリング角を判別しながらローリングモータ63を駆動して苗植付部のローリング制御を行うように構成している。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧シリンダー46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0022】
苗植付部4は8条植の構成で、フレームを兼ねる苗植付伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口51a、…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a、…に供給すると苗送りベルト51b、…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a、…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52、…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ54等を備えている。なお、左右のマーカ54,54は、マーカモータ85(図6)によって線引き作用状態と線引き非作用状態とに切り替えられようになっている。
【0023】
苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にミドルフロート57とサイドフロート56がそれぞれ設けられている。これらフロート(センターフロート55、サイドフロート56、ミドルフロート57)を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55〜57が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52、…により苗が植付けられる。各フロート(センターフロート55、サイドフロート56、ミドルフロート57)は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダー46を制御する油圧バルブ161、チェックバルブ162(図6,図11)を介して苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0024】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61、…によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62、…でフロート(センターフロート55、サイドフロート56、ミドルフロート57)の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず)まで導き、施肥ガイドの前側に設けた作溝体(図示せず)によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。
【0025】
苗植付部4には整地装置の一例である整地ロータ27(27a,27b)が取り付けられている。また、苗載台51は苗植付部4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65の支持ローラ65aをレールとして左右方向にスライドする構成である。
【0026】
整地ロータ27は、次のような支持構造に支持されている。すなわち、苗載台51の前記支持枠体65の両側辺部材65bに上端を回動自在に支持された梁部材66と該梁部材66の両端に固着した支持アーム67と該支持アーム67に回動自在に取り付けられたロータ支持フレーム68が設けられ、該ロータ支持フレーム68の下端には整地ロータ27(サイドロータ27aとセンタロータ27b)の駆動軸70(70a,70b)が取り付けられている。また該ロータ支持フレーム68の下端部近くは苗植付伝動ケース50に回動自在に取り付けられた連結部材71に連結している。
【0027】
フロート(センターフロート55、サイドフロート56、ミドルフロート57)との配置位置の関係でセンタフロート55の前方にあるロータ27bはサイドフロート56とミドルフロート57の前方にある各ロータ27aより前方に配置されている。そのためロータ27aの駆動軸70aへの動力は後輪11のギアケース18内のギアから自在継手72等を介して伝達され、ロータ27bの駆動軸70bへは両側のロータ27a,27aの駆動軸70a,70aの車体内側の端部からチエンケース73内のチエンを介して動力伝達される。左右のチエンケース73,73間には補強部材74が設けられている。
【0028】
また、ロータ27bは梁部材66に上端部が支持された一対のリンク部材76,77によりスプリング78を介して吊り下げられている。
また、ロータ上下位置調節レバー81の下端部には折曲片82が固着されており、該折曲片82は支持枠体65に回動自在に支持されている。そして前記レバー81が機体の左右方向に回動操作されると、支持枠体65の両側辺部材65bに回動自在に支持された梁部材66に固着支持された突出部66aの近くを折曲片82が上下に回動する。折曲片82は前記突出部66aの下方を係止しているので、該突出部66aがレバー81の機体右方向の回動で、上向きに梁部材66を中心として回動する。該突出部66aの前記回動により第一リンク部材76の梁部材66との連結部と反対側の端部も梁部材66を中心として上向きに回動する。この第一リンク部材76の上方への回動により第二リンク部材77とスプリング78を介してロータ27bを上方に上げることができる。ロータ27bを上方に移動させると、駆動軸70bと駆動軸70aを介してロータ27aも同時に上方に移動する。ロータ27a,27bをロータ昇降用モータ75で上下動ができるように構成することもできる。
【0029】
なお、ロータ上下位置調節レバー81は車体2のほぼ中央部に設けているので、ロータ27a,27bの上下動を行う場合に左右のバランスを取りやすい。
また、苗植付部4を圃場に下げたときに、苗植付部4を水平位置に戻すケーブル45をセンタロータ27bのリンク部材76,77とスプリング78等からなる引上げスプリング部と油圧ピストン46と連動させた構成としている。
【0030】
このように、センタロータ27bのスプリング78等によるスイング機構の他にケーブル45を設けることで苗植付部4を上昇位置から下降させるごとにセンタロータ27bを水平位置に戻すことができ、センタロータ27bの保持位置を安定化させることができる。
【0031】
センタロータ27bは、サイドロータ27a,27aの駆動軸70a,70aを回動支点として上下動するようになっており、該ロータ27bの前部に連動ワイヤー79(図12)を連結してロータの前部側を持ち上げできるようにしている。そして、このワイヤー79は変速レバー16(図2、図12)に連結し、変速レバー16を標準速度(標準作業速)から高速側に変速操作すると、センタロータ27bが上昇するよう連動構成している。従って、変速レバーによる車速アップに伴いセンタロータが上昇するので、深い圃場での沈み込みを防止することができる。なお、上記実施例における車速は無断変速する構成であるが、車速を高低2段階に切替可能な構成とし、高速側に切り替えた時、センタロータが所定位置まで上昇するように連動構成するものであってもよい。
【0032】
整地ロータ27は、この回転速度を圃場の水深が深い時にはゆっくり回転させて水を跳ね飛ばさないようにし、水深が浅い時には標準速度に戻して通常の整地作業が行えるように制御することができる。つまり、圃場の水深度(浅深)は水深センサ92(図6、図12)によって検出するようにし、ロータの回転速度は水深センサ92の検出結果に基づきロータ変速モータ93(図6)を作動させて自動的に調整する。
【0033】
また、整地ロータ27の高さは、圃場の水深が深い時、高めにして水の抵抗を抑制し、水深が浅い時は標準となるように、水深センサ92によって検出し、ロータ昇降モータ75を介してロータ高さを自動的に調整する構成としている。
【0034】
エンジン20の回転動力は、ベルト伝動装置21などを介して油圧式無段変速装置23に伝えられ、油圧式無段変速装置23からの出力はベルト(図示せず)を介してミッションケース12の図示しない入力軸に伝えられる。
【0035】
苗植付部4は、走行車体2のメインフレーム15に昇降リンク装置3で昇降自在に装着されているが、その昇降させる構成と苗植付部4の構成について説明する。
先ず、走行車体2に基部が回動自在に設けられた一般的な油圧シリンダー46(図1)のピストン上端部を昇降リンク装置3に連結し、走行車体2に設けた油圧ポンプ49(図4,図5)により油圧シリンダー46に圧油を供給・排出して、油圧シリンダー46のピストンを伸進・縮退させて昇降リンク装置3に連結した苗植付部4が上下動されるように構成されている。
【0036】
図3に示すように、左右の後輪11の伝動軸のサイドクラッチ操作アーム86Iを作動させるクラッチ連動用の左右ロッド180がミッションケース12の左右両側に設けられ、該クラッチ連動用の左右ロッド180とサイドクラッチ操作アーム86Iは左右のプルシリンダ217を介して連結している。
【0037】
左右のサイドクラッチ操作アーム86Iは、前記左右のプルシリンダ217(旋回時にシリンダ217を引き、旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチを切る)作動制御用のサイドクラッチ制御用電磁バルブ221(図4,図5,図11)を備えている。 上記構成を用いて、ハンドル34を一定角度回転させた後に、一つは継続して前記サイドクラッチを切り又は入りにする制御(A)ともう一つは一定周期で前記サイドクラッチを接続/切断する制御(B)に切替え選択可能にした。制御(A)は標準用であり、制御(B)は湿田用である。ハンドル34を操作するとトルクジェネレータ(パワーステアリング)37(図11にも図示)によって旋回内側のプルシリンダ217を作動させてサイドクラッチを切り(又は入り)にする。これらサイドクラッチ操作アーム86I、クラッチ連動用の左右ロッド180、プルシリンダ217、サイドクラッチ制御用電磁バルブ221などをステアリング機構と言う。
【0038】
上記した実施例では、ステアリングハンドル34の所定角以上の操作により、旋回内側の後輪11のサイドクラッチ(図示せず)を切る例を示したが、サイドクラッチスイッチを作業モニタ装置に備えた操作盤33(図2)に設けておき、手動でサイドクラッチの「切」が可能な構成にしても良い。または、サイドクラッチペダルにより、手動でサイドクラッチの「切」が可能な構成にしても良い。
【0039】
次に、後進時に苗植付部4を自動的に上昇させる制御構成について説明する。先ず、前後進レバー90を後進速に操作すると、該レバー90の基部に設けた接当片が接当してオンになるバックリフトスイッチ191(図6)が設けられており、制御装置163(図6)の苗植付装置上昇手段により電磁油圧バルブ(昇降バルブ)161(図6,図11)を作動させる電磁ソレノイドを制御して油圧シリンダー46にて苗植付部4を最大位置まで上昇させるように構成されている。
【0040】
このように、前後進レバー90を後進速に操作すると、自動的に苗植付部4を最大位置まで上昇させるように構成しておくと、圃場の畦際で機体を旋回させるため等に機体を畦に向かって後進させる時に、自動的に苗植付部4は最大位置まで上昇しているので、苗植付部4が畦に衝突して破損することが未然に防止でき作業性が良い。
【0041】
次に、旋回時に苗植付部4を自動的に上昇させる制御構成について説明する。前記ステアリングハンドル34を左右何れかに200度回転させた時に自動リフト切替スイッチ192(図6、図10)をオンにすると、制御装置163に備えられた昇降制御手段の苗植付部上昇手段により電磁油圧バルブ161を作動させる電磁ソレノイドを制御して油圧シリンダー46にて苗植付部4を最大位置まで上昇させるように構成されている。
【0042】
このように、畦際で機体を旋回させるためにステアリングハンドル34を左右何れかに最大限まで回転させると、自動的に苗植付部4は最大位置まで上昇するので、機体旋回時に苗植付部4を上昇させる操作が不要となり、能率良く機体旋回が行えて作業性が良い。
【0043】
操作盤33には、苗植付部4の自動上昇を行わせる状態と行わせない状態とに切替える自動リフト切替スイッチ192(図6,図10)が設けられており、自動リフト切替スイッチ192を自動にしていると、上記のようにバックリフトスイッチ191がオンになるか自動リフト切替スイッチ192がオンでステアリングハンドル34を左右何れかに200度回転すると自動的に苗植付部4は制御装置163の苗植付装置上昇手段により自動上昇される。そして、自動リフト切替スイッチ192をオフにしていると、バックリフトスイッチ191がオンになってもステアリングハンドル34を左右何れかに200度回転しても苗植付部4は自動上昇されない。
【0044】
このように、一つの自動リフト切替スイッチ192で、バックリフトスイッチ191がオンになっても自動リフト切替スイッチ192がオフであればステアリングハンドル34を左右何れかに200度回転しても苗植付部4は自動上昇されない状態にすることができるので、バックリフトとオートリフトの各々を入り切りするスイッチを別々に設けた構成よりも簡潔な構成となり、一つのスイッチで両者の状態切替えが行えるので、操作ミスが少なくなり作業性が良い。
【0045】
なお、自動リフト切替スイッチ192をオフにして、バックリフトスイッチ191がオンになってもステアリングハンドル34を左右何れかに200度回転しても苗植付部4が自動上昇しない状態にしておくと、機体を後進で納屋等にしまう時に前後進レバー90を後進速に操作しても苗植付部4が自動上昇しないので、苗植付部4を下げたまま後進することができ、納屋の入口上部や納屋内の他の部材に苗植付部4をぶつけてしまうような事態が回避できる。また、扇型やひょうたん型等の変形圃場で畦際に沿って周り植えをする場合に、曲がった畦に沿ってステアリングハンドル34を回しながら植付け作業を行うが、この時に、自動リフト切替スイッチ192を自動位置にしていると、ステアリングハンドル34を左右何れかに200度以上回転すると自動的に苗植付部4が上昇してしまい植付け作業が行えないが、自動リフト切替スイッチ192をオフにしていると、ステアリングハンドル34を左右何れかに200度以上回転しても苗植付部4は上昇しないので植付け作業が行え、変形圃場でも適切に苗植付け作業が行える。
【0046】
また、上記構成からなる乗用型田植機1では、本実施例の制御装置163は旋回内側の後輪11のドライブシャフト(伝動軸)(図示せず)の回転数の検出に基づいて、旋回時の苗植え付けなどの諸作動を自動的に行わせる旋回連動制御ができる。この制御モードを自動植付開始モードということがあるが、特に、旋回内側の後輪11が所定角度以上操舵されているときに、前記旋回連動制御ができる。
【0047】
旋回後の苗の植始め位置の設定を後輪の回転数に基づいて自動的に行う制御モード(自動植付開始モード)の設定ができ、この制御モード設定は旋回開始タイミングをハンドル34の旋回角度(切れ角)センサ193で検知し、該旋回角度センサ193で検知した旋回開始時からの走行距離を車輪(旋回内側の後輪11の伝動軸)の回転数センサ205の検出値に基づき測定し、前記走行距離が所定値に達すると苗植付レバー19(図2)の操作をしなくても、自動的に苗の植え付けを開始する自動植付開始モードである。
【0048】
この旋回制御方式を図7と表1に示す。
【0049】
【表1】
すなわち、ステアリングハンドル34を切り、旋回内側の後輪11のサイドクラッチが切れた状態で、左右ドライブシャフトの回転数を検出し、旋回時の内側の後輪11の伝動軸回転数が設定値N1を超えると苗植付部4を下降させる。その後、後輪11の伝動軸回転数が設定値N2と苗植付け具126の作動が「切り」状態に入って(=苗植付装置52が上げ状態に移って)からステアリングハンドル34の切り操作開始までの後輪11の伝動軸の回転数nの合計値以上になると植付「入り」にする機構である。
【0050】
上記旋回連動制御のフローを図8に示す。
まず、左右の後輪11,11の伝動軸の回転数を伝動軸回転数センサ205で検出し、また設定値N1(旋回開始から機体90°旋回までの旋回内側の後輪11のドライブシャフト(伝動軸)回転信号設定値)、N2(機体90°旋回から植付クラッチ「入り」までの前記ドライブシャフト回転信号設定値)、θ1((直進操作時のハンドル切り設定角度の)下限値(左旋回と判断する角度))、θ2((直進操作時のハンドル切り設定角度の)上限値(右旋回と判断する角度))をセットする。
【0051】
次いで、圃場の硬軟や水深、耕盤深さ(圃場深さ)等の圃場条件の相違に対応するために、前記回転数N1、N2及びハンドル切り角度θ1、θ2の各設定値を調節する設定ダイヤル206a〜208b(図6)により、補正値n0を設定する。
【0052】
苗植付部4の苗植付け具126が苗の植え付け状態にあるか無いかをフィンガーレバー166(苗植付部4の駆動の入り切り操作をしたり、苗植付部4の昇降操作をしたりできるレバー)の操作に伴う制御装置163の状態で検出して、植付「入」から植付「切」になったとき、苗植付け具126の作動が「入り」状態に入ってから苗植付け具126の作動が「切り」状態になるまでの後輪11の伝動軸の回転数nを旋回内側の伝動軸回転数センサ205で検出して、その値(n)を記憶しておく。次いで、ステアリングハンドル34の切り角度(操舵角度)θをステアリングハンドル34のシャフトに設けたハンドル切れ角センサ(ポテンショメータ)193(図6)で検出して直進時(θ1<θ<θ2)以外の時には左右のいずれの方向に旋回中であるかどうかを検出する。
【0053】
左旋回中であると左後輪11の伝動軸の回転数を検出して、回転数n1がn1≧N1+n0になると、旋回開始から機体が90度以上旋回したことになるので苗植付部4を昇降制御手段の苗植付部下降手段により油圧シリンダ46を作動させて接地位置まで下げる。この苗植付部4の下降で枕地が均平化される。また、機体を90度旋回させた後には、ハンドル34の旋回度合いを緩めながら前進させ、左後輪11の左右ドライブシャフトの回転数n2がn2≧N2+n+n0になると、苗植付け具126を作動させて苗の植え付けを開始させる。
【0054】
本実施例の乗用型田植機1では、自動植付開始モードが設定された時にのみ自動的に制御装置163によって、旋回外側の後輪11の回転数に応じて旋回内側の後輪11の駆動を断続的にサイドクラッチを伝動する断続的入り切り制御機能(B1)(上記制御(B)に対応するもので、間欠サイドクラッチ制御という)を作動させることができる。
【0055】
このように間欠サイドクラッチ制御を行うことにより、ブレーキングによる衝撃も少なく、エンジン回転や車速の影響を受けずに後輪11の旋回角度に応じたブレーキングの周期を得ることができる。前記旋回内側の後輪11のクラッチをオン/オフする間欠サイドクラッチ制御において、車速が遅ければ遅い程クラッチをオン/オフする周期を短く、速ければ速いほどクラッチをオン/オフする周期を長くすることで、オペレータに旋回時の違和感がないブレーキングを行うことができる。
【0056】
例えば、車速0m/sで旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチ(図示せず:クラッチ操作アーム86Iなどにより行う)の作動周期(オン/オフを含む)が0.5秒、車速0.5m/sで前記サイドクラッチ作動周期(オン/オフを含む)が1.0秒、車速1.0m/sで前記サイドクラッチ作動周期(オン/オフを含む)が1.5秒となるように一次関数的に車速に応じて旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチ作動周期を変更する。
【0057】
高速走行時は特に後輪11の伝動軸のクラッチをオンするときでも、オフするときでも衝撃が大きい。そこで上記のように、間欠サイドクラッチ制御による衝撃を少なくするために、高速走行時ほど間欠サイドクラッチ制御(クラッチ操作アーム86Iなどにより行う)のオン/オフの周期を長めにする。
【0058】
本実施例の8条植の乗用型田植機1のように、大型の走行車両は旋回時には比較的大回りをする必要がある。しかし、旋回中に旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチを切ったままでおくと、小回りになり過ぎる。しかし、本実施例のように、旋回内側の後輪11の伝動軸を間欠サイドクラッチ制御すると、オペレータに旋回時の違和感がないブレーキングを行うことができ、オペレータの希望する適切な旋回半径で8条植の乗用型田植機1に相応しい比較的大回りの旋回が可能となる。
【0059】
前記旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチの接続は、図9に示すように操作盤33に設けている間欠サイドクラッチ制御(ポンピングクラッチ制御ともいう)調節ダイヤル210で設定された回転数(回転角度)に旋回内側の後輪11の回転数が達するまでなされる。
【0060】
間欠サイドクラッチ制御調節ダイヤル210は、後輪回転角度(=後輪11の伝動軸の回転角度)で11度〜27度の間で調整を行う。なお、前記間欠サイドクラッチ制御調節ダイヤル210を後輪11(後輪11の伝動軸)の回転角度でなく、後輪11の伝動軸作動用のクラッチ(図示せず)の作動時間、例えば210msから510msまでの時間で設定できる構成にして、この間欠サイドクラッチ制御調節ダイヤル210で設定された時間の間、旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチ(図示せず)が接続される構成としても良い。また、前記調節ダイヤル210には、左右後輪11,11を常時駆動する領域210a(図9)を設けている。
【0061】
また、路上走行などで高速走行しているときには、間欠サイドクラッチ制御を選択すると、大回り旋回になり易く、そのためむしろハンドリングに違和感があるので、路上走行などの高速走行中には、前記間欠サイドクラッチ制御は不要である。そこで、走行車両が一定車速、例えば1.0m/s以上で高速走行しているときには、間欠サイドクラッチ制御が行われないようにしている。
【0062】
また、図8に示す制御フローの設定値N1(旋回開始から機体90°旋回までの旋回内側の後輪11のドライブシャフト(伝動軸)回転信号設定値)、N2(機体90°旋回から植付クラッチ「入り」までの前記ドライブシャフト回転信号設定値)を小さくするほど、旋回内側の後輪11が深い圃場などにおいて深く沈み込んでいる場合など、苗の植え付け時の苗植付装置52の下降を速く行いたい場合に有効である。
【0063】
後輪11が深く圃場に沈み込んでいる場合には昇降リンクセンサ48で上リンク40と下リンク41の昇降の程度を検出することにより、苗植付部4の昇降の程度も検出できる。
【0064】
更に、図8に示す自動植付制御モードにおいて、ステアリングハンドル34の操作角度θ1((直進操作時のハンドル切り設定角度の)下限値)、θ2((直進操作時のハンドル切り設定角度の)上限値)による苗植付部4の上昇のタイミングを前記θ1、θ2の設定ダイヤル206a,206bで任意に変更可能なように構成することができる。 上記構成により旋回制御中にオペレータが苗植付部4の上昇タイミングを任意に設定できるので自分のペースに合わせて作業を行うことができる。
【0065】
こうして、8条植えなどの多条植え用の乗用型作業機であっても、前回の植付条に一部重なった状態で苗の植え付けをするおそれなく圃場での旋回が可能となる。
右旋回の場合にも左旋回時と全く同様の制御が行われる。
【0066】
このようにサイドクラッチが切れている後輪11の伝動軸(ドライブシャフト)の回転数を検出する方法は、動力の伝わっている後輪11の回転数検出方法に比べてよりスリップなどの影響を受け難い特徴がある。また、後輪11より回転の速いドライブシャフトの回転数を検出するため、容易にその測定精度を上げることができる。その結果、各植え付け条毎の苗の植え付け始めがほぼ一定(枕地幅が一定)となる効果がある。
【0067】
なお、上記図8に示す一連の旋回制御の諸動作を行う旋回制御のスタートボタン(スイッチ)184を上記苗植付のスタート位置の設定を行うボタンとして兼用してもよい。 前記自動植付開始モードの設定は植始め調節ダイヤル212(図6、図10)で行い、また前記旋回開始時からの苗の植付け始めまでの走行距離は、図10に示す植始め調節ダイヤル212を回して設定する。
【0068】
前記植始め調節ダイヤル212の回転角度に応じて前記走行距離を適宜選択できる構成であるが、該ダイヤル212の前記走行距離の調節範囲より外れたダイヤル旋回角度領域(しかも自動植付開始モードに入る前のダイヤル旋回角度領域)に、車両の旋回開始時に自動的に苗植付装置4を上昇させる制御モードを選択できるオ−トリフト機能及び車両の後進時に自動的に苗植付装置4を上昇させる制御モードを選択できるバックリフト機能を兼用させている。
【0069】
そして、植始め調節ダイヤル212のダイヤル回転操作でオ−トリフト機能に対応した位置に植始め調節ダイヤル212の指示部が「オートリフト」と指示された位置(図10に示す)に至ると、当該オートリフト機能がオンになり、オートリフト制御モードが開始すると同時に前記間欠サイドクラッチ制御を開始する制御モードを採用することもできる。
【0070】
上記のように旋回制御手段を備えた田植機において、旋回時の車速が標準値より速い速度に設定されている場合には、苗植付部4の下降速度が標準値より速くなるように設定している。つまり、図6に示す制御装置163には、後輪伝動軸回転数センサ205の標準値を越える速度検出結果に基づき、油圧シリンダ46の作動速度を高める下降速度制御手段が備えられ、標準値より速く降下することによって苗植付部はタイミングよく所定位置に下降することになる。なお、前記旋回制御手段を備えた田植機において、旋回前の苗植付部への動力伝達制御は、隣接条の植付苗の終りの位置で植付クラッチ「切」となるよう隣接条センサ108(図1)の検出結果に基づき制御する構成としている。すなわち、旋回前の植付作業部への植付クラッチ「切」制御は、苗植付部4が隣接条の苗植え終り位置に達すると、その苗終り位置の苗を隣接条センサ108で検出し、このセンサ検出結果に基づき、PTOクラッチ作動ソレノイド218を作動させて植付クラッチを「切」制御する構成としている。
【0071】
また、旋回制御手段を備えた田植機において、枕地植付時、旋回した後、ぎりぎりまでバックして植え付けを開始するとき、後方距離センサ105(図1)によって機体後尾が畦までの適正距離に達すると、ブザーなどによって報知するか、バックストップさせるように構成し、更に、その後、自動的に苗植付部を下げにし、且つ、植付クラッチを入りにして植付作業を開始する制御手段を設けることができ、これにより、植え残しや畦への激突を防止することができる。
【0072】
更に、本実施例の乗用型田植機1には、左右のサイドクラッチ又はサイドブレーキ(図示せず)を左右個別に操作できる操作具として左右のブレーキペダル111,111(図3,図4)を設けているが、左右のブレーキペダル111,111の連結中にも制御装置163によって間欠サイドクラッチ制御(B1)を選択する制御が行われないようにする。
【0073】
左右のブレーキペダル111,111が連結中(又は連結中でない)であることを検出するブレーキペダル連結センサ114をブレーキペダル111,111近傍に設けて、ブレーキペダル連結センサ114からの検出値によって間欠サイドクラッチ制御(B1)の作動の有無を制御装置163により選択する。
【0074】
図3に示すように、左右のブレーキペダル111,111は前端部上側が保持プレート113によって保持され、前端部下側が左右のブレーキペダル111,111を連結するための連結プレート115によって支持されている。そして連結プレート115の下面は、左右のブレーキペダル111,111の基部111a,111aに連結しており、ブレーキペダル基部111a,111aの先端はアーム116,117を介して第1ロッド119に連結している。ブレーキペダル111を矢印P方向に踏み込むと、アーム116はブレーキペダル基部111aとアーム116との連結軸118を支点として矢印A方向に回動してアーム117と共に第1ロッド119が上方(矢印B方向)に動く。
【0075】
一方、ブレーキペダル111を矢印P方向とは反対方向に戻すと、アーム116は矢印A方向とは反対の方向に回動してアーム117と共に第1ロッド119が下方(矢印B方向とは反対方向)に動く。このようにブレーキペダル111を操作することで、第1ロッド119は上下方向に動く。
【0076】
左右一方の第1ロッド119は左右一方の中継アーム134に連結し、更に中継アーム134はカウンタ軸133に連結し、カウンタ軸133に連結した左右他方の中継アーム134から、カウンタロッド137、カウンタアーム139等を介してクラッチ連動用の左右一方のロッド180に繋がっている。また、左右他方の第1ロッド119は、中継アーム134、カウンタ軸133、カウンタロッド137などを介さずにカウンタアーム139からクラッチ連動用の左右他方のロッド180に繋がっている。
【0077】
これら左右ロッド180はそれぞれプルシリンダ217,サイドクラッチ操作アーム86Iに連結しており、第1ロッド119が上下に動くと、左右ロッド180が前後方向に動いて左右のサイドクラッチ操作アーム86Iは左右ロッド180の動きに連動して回動する。
【0078】
ブレーキペダル111を矢印P方向に踏み込むと、上述のように第1ロッド119が上方(矢印B方向)に動き、左右ロッド180は前方(矢印C方向)に引かれてサイドクラッチ操作アーム86Iが矢印U方向に回動して、旋回内側の後輪11の伝動軸のサイドクラッチが切れる。
【0079】
一方、左右のサイドクラッチ操作アーム86Iは、左右のプルシリンダ217作動制御用のサイドクラッチ制御用電磁バルブ221を備えており、制御装置163からの出力信号によりサイドクラッチ制御用電磁バルブ221が作動して継続的入り切り制御機能(A1)又は間欠サイドクラッチ制御(B1)が行われる。
【0080】
左右のブレーキペダル111,111が連結中の時に、オペレータが一方又は両方のブレーキペダル111を操作すると、ブレーキングが行われる。しかし、左右のブレーキペダル111,111を連結している場合は、路上走行等のときであり、走行速度が速く、また傾斜地を走行することもあるから、より安全性を確保するために、間欠サイドクラッチ制御(B1)を作動させないようにする。
【0081】
したがって、本構成を採用することにより、オペレータの意思とは無関係に継続的入り切り制御機能(A1)又は間欠サイドクラッチ制御(B1)が作動しないようにできるので、安全性の向上が図れる。
【0082】
また、左右のブレーキペダル111,111の操作の動きを感知するセンサ(ポテンショメータ)112,112(図3)をそれぞれ設け、間欠サイドクラッチ制御(ポンピングクラッチ)調節ダイヤル210により手動で設定した手動旋回時に、オペレータの操作パターンを制御装置163に記憶させるようにしても良い。
【0083】
これは、旋回時のポテンショメータ112,112の操作パターンを記憶するものであるが、ハンドル切れ角センサ193により旋回を開始したことを検出してから、ハンドル切れ角センサ193により旋回を終了したことを検出するまでの間、制御装置163に入力される旋回内側の伝動軸回転数センサ205の累計回転数検出値に対応する旋回内側のポテンショメータ112,112の検出値を自動的に記憶することになる。
【0084】
そして、手動旋回時の制御装置163に記憶したパターン通りに、次工程では自動で間欠サイドクラッチ(B1)(旋回内側の後輪11の駆動を断続的に入/切する)を制御するような構成としても良い。
【0085】
図15、図16は苗載台の構成例を示す。苗載台51の下端側に設けられた前板96は、土付マット苗を受ける苗受面96aと苗載台51の苗載せ面と平行な載台受面96bとからなり、苗受面96aと載台受面96bとのなす角度が鈍角となるよう該載台受面96bを緩やかな曲面形状96Rとし(図15)て苗を前側へ押し出し易くしている。従来の直角形状では、下側の苗の終り部分が角に残ることがあり、欠株になる問題があったが、下の苗と上の苗との継目で前側に押し出す構造のため、下側の苗が残らず欠株が減少する。
【0086】
また、図16に示すように苗載台下部のフェンス部97の形状としてテーパ部97Tをもたせた構成としている。これにより、苗を横移動させるときの負荷が減少し、苗載台の耐久性が向上する。
【符号の説明】
【0087】
4 苗植付部 27 整地ロータ
16 変速レバー 79 連動ワイヤー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗植付部(4)の前側に植付直前の圃場面を均平化する前位のセンタロータ(27b)と後位のサイドロータ(27a)からなる整地ロータ(27)を設置し、該整地ロータ(27)は、車速の変化に応じて上下動可能に構成すると共に、車速の所定以上の増速に伴い前位のセンタロータが上昇変位すべく関連構成してあることを特徴とする乗用田植機。
【請求項2】
前記整地ロータ(27)は、ロータ回転速度を圃場の水深度に応じて制御可能に設け、水深度を検出する水深センサ(92)の検出結果に基づき、水深が深いときにはロータ回転速度を低速側に制御し、水深が浅いときには高速側に制御すべく連動構成してあることを特徴とする請求項1記載の乗用田植機。
【請求項3】
前記整地ロータ(27)は、圃場面に対する対地高さを圃場の水深が深い時は高くし、水深が浅いときには対地高さが低くくなるよう水深センサ(92)の検出結果に基づき自動制御すべく構成してあることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の乗用田植機。
【請求項1】
苗植付部(4)の前側に植付直前の圃場面を均平化する前位のセンタロータ(27b)と後位のサイドロータ(27a)からなる整地ロータ(27)を設置し、該整地ロータ(27)は、車速の変化に応じて上下動可能に構成すると共に、車速の所定以上の増速に伴い前位のセンタロータが上昇変位すべく関連構成してあることを特徴とする乗用田植機。
【請求項2】
前記整地ロータ(27)は、ロータ回転速度を圃場の水深度に応じて制御可能に設け、水深度を検出する水深センサ(92)の検出結果に基づき、水深が深いときにはロータ回転速度を低速側に制御し、水深が浅いときには高速側に制御すべく連動構成してあることを特徴とする請求項1記載の乗用田植機。
【請求項3】
前記整地ロータ(27)は、圃場面に対する対地高さを圃場の水深が深い時は高くし、水深が浅いときには対地高さが低くくなるよう水深センサ(92)の検出結果に基づき自動制御すべく構成してあることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の乗用田植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−130736(P2011−130736A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295142(P2009−295142)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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