説明

乱用に対して保護された経口剤形

本発明は、乱用に対して保護され、1日1回の投与のためにオピオイド徐放性を有する経口剤形に関する。本発明は、経口剤形が、乱用の可能性を有する少なくとも1つのオピオイド(A)、少なくとも1つの合成および/または天然ポリマー(C)を含み、遅延マトリックス材料、生理的に適合性の補助剤(B)を任意選択的に含み、ワックス(D)を任意選択的に含み、かつ少なくとも1つの遅延コーティングを任意選択的に含むことを特徴とする。成分(C)または(D)は、それぞれ、少なくとも500N、好ましくは少なくとも750Nの耐破壊性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1日1回の投与のためにオピオイド徐放性を有する乱用防止経口剤形に関し、該剤形は、乱用の可能性を有する少なくとも1つのオピオイド(A)、少なくとも1つの合成または天然ポリマー(C)、任意選択的に、遅延放出マトリックス材料、任意選択的に、少なくとも1つの遅延放出コーティング、任意選択的に、生理的に許容可能な補助物質(B)、任意選択的に、ワックス(D)を含み、成分(C)または(D)はそれぞれ、少なくとも500N、好ましくは750Nの破壊強度を示す。
【背景技術】
【0002】
オピオイドという呼称は、本発明によれば、少なくとも1つのオピオイド受容体と相互作用する化合物を意味する。特に、(1R,2R)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)フェノール、生理的に許容可能なその塩および/または誘導体、ならびに対応する立体異性体および/または薬学的に許容されるその化合物または誘導体を除いて、オピオイドは乱用の可能性を示すオピオイド化合物を意味する。
【0003】
好ましくは、オピオイドは痛みを抑制するために使用される。この目的のために、長期治療において、例えば慢性疼痛または腫瘍による疼痛の場合に、鎮痛薬が使用されることが多い。長期治療において、特に、患者が良好な生活の質を享受し得ることが重要である。患者の生活の質を向上させる手段は、1日1回の投与を可能にする剤形を含む。しかし、比較的多量のオピオイドにより、活性成分の遅延放出を与えるそのような剤形は、所望の昏睡状態または陶酔感をできるだけ速く誘発させたい乱用者にとって特に魅力的である。
【0004】
しかし、乱用可能性を有するオピオイドを含有する遅延放出剤形は、乱用的多量に経口摂取した場合でも乱用者に所望されるキック(kick)を一般に生じないので、乱用者は、乱用目的で、例えば錠剤またはカプセル剤形態のこれらの剤形を微粉砕し、例えばすりつぶして、鼻から吸うか、または、水性液体を使用して、このようにして得た粉末から活性成分を抽出し、得られた溶液を、脱脂綿または紙綿で任意選択的に濾過した後に、非経口的に、特に静脈内的に投与する。この種の投与は、経口または経鼻乱用よりかなり加速されたオピオイドレベルの増加を生じて、乱用者に所望される結果、即ち、「キック」または「ラッシュ」を生じる。
【0005】
US−A−4,070,494は、乱用を防止するために、膨潤剤を剤形に添加することを提案している。オピオイドを抽出するために水を添加した場合、この膨潤剤が膨潤し、ゲルから分離した濾液が少量の活性成分しか含有しないようにしている。
【0006】
WO95/20947に開示されている多層錠剤は、非経口乱用を防止する同様の方法に基づき、該錠剤は、乱用の可能性を有するオピオイド、および少なくとも1つのゲル形成剤をそれぞれ異なる層に含有する。
【0007】
WO03/015531 A2は、非経口乱用を防止する別の方法を開示している。鎮痛性オピオイドおよび嫌悪剤としての染料を含有する剤形がそれに記載されている。剤形を不正に変更することによって放出される色は、乱用者が不正に変更された剤形を使用する気をなくすことを意図している。
【0008】
乱用を複雑化する他の既知の選択肢は、オピオイドに対する拮抗薬、例えばナロキソンまたはナルテキソン、または生理的防御反応を生じる化合物、例えばトコン(イペカック)の根、または苦味物質を剤形に添加することを含む。
【発明の開示】
【0009】
しかし、オピオイド遅延放出性を有する剤形を乱用するほとんどの場合に、剤形を粉砕することがやはり必要なので、本発明の目的は、潜在的乱用に一般に利用可能な手段を含む剤形乱用前の粉砕を複雑化するかまたは防止し、それによって、1日1回正しく投与した場合に所望の治療効果を保証するが、単に粉砕するだけでは該剤形からのオピオイドを乱用に好適な形態に変換することができない、乱用可能性を有するオピオイドの徐放性を有する剤形を与えることである。
【0010】
この目的は、1日1回の投与のために少なくとも1つのオピオイドの徐放性を有する本発明の乱用防止経口剤形の調製によって達成でき、該剤形は、下記物質を含む。乱用の可能性を有する少なくとも1つのオピオイドおよび/または少なくとも1つの生理的に許容可能なその化合物、好ましくは、その塩または溶媒化合物または誘導体、好ましくは、アミド、エステルまたはエーテルおよび/または少なくとも1つの対応する立体異性化合物、好ましくは、対応するエナンチオマー、立体異性体、ジアステレオマーまたはラセミ化合物および/または生理的に許容可能なその化合物、例えば、塩または溶媒化合物または誘導体、例えば、アミド、エーテルまたはエステル(A)、少なくとも1つの合成および/または天然ポリマー(C)、任意選択的に、少なくとも1つの遅延放出マトリックス材料、任意選択的に、少なくとも1つの遅延放出コーティング、任意選択的に、生理的に許容可能な補助物質(B)、任意選択的に、少なくとも1つのワックス(D)。ここで、成分(C)または(D)はそれぞれ、少なくとも500N、好ましくは少なくとも750Nの破壊強度を示す。
【0011】
前記の最小破壊強度(本出願に開示のように測定)を有する成分(C)および任意選択的に(D)を、好ましくは、剤形も、少なくとも500N、好ましくは少なくとも750Nの最小破壊強度を示す量で使用することによって、一般的手段での剤形の粉砕、およびその後の乱用、好ましくは経鼻または非経口乱用を、かなり複雑化し得るかまたは防止し得る。
【0012】
剤形を充分に粉砕しなければ、危険でない非経口、特に静脈内または経鼻投与が不可能であるか、または乱用者が活性成分を抽出するのに時間がかかりすぎるか、または、自発的放出が起きないので、乱用的経口投与の際にキックが得られないかまたは充分なキックが得られない。
【0013】
本発明によれば、粉砕とは、乱用者に入手可能な一般的手段、例えば、乳棒および乳鉢、ハンマー、マレット、または力の適用によって粉砕する他の一般的手段を使用して、剤形を微粉化することを意味する。
【0014】
従って、本発明による剤形は、乱用の可能性のあるオピオイドの非経口、経鼻および/または経口乱用を防止するのに好適である。
【0015】
乱用の可能性のあるオピオイドは、使用すべきその投与量およびその製造法と同様に当業者に既知である。本発明の剤形において、対応するその誘導体、特に、アミド、エステルまたはエーテルの形態、またはそれぞれの場合に対応する生理的に許容可能な化合物の形態、特にその塩または溶媒化合物の形態において、ラセミ化合物または立体異性体として、存在し得る。本発明の剤形は、複数のオピオイドを投与するのにも好適である。該剤形は、ヒトまたは哺乳動物、好ましくはヒトへの投与のために、少なくとも24時間にわたって疼痛を抑制する特定のオピオイドに使用するのが好ましい。
【0016】
オピオイドの種類に含まれる物質は、例えば下記の文献から、当業者に既知である。「Opioid Analgesics」by Alan F.Casy et al.1986 edition,特に、page 508−518,Plenum Publishing Corporation,「Analgesics」 by H.Buschmann,2002 edition,page 171−245,WILEY−CHF、および「Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry」 by Elmar Fiedrics et al.,6th edition,pages 1−53,WILEY−VCH。それらに列挙されているオピオイドおよびそれらの代謝産物が特に好ましい。対応する記載は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0017】
本発明の剤形は、下記を含む群から選択されるオピオイドの乱用を防止するのに極めて好適である。N−{1−[2−(4−エチル−5−オキソ−2−テトラゾリン−1−イル)エチル]−4−メトキシメチル−4−ピペリジル}プロピオンアニリド(アルフェンタニル)、アリルプロジン、アルファプロジン、アニレリジン、ベミドン、ベンジルモルフィン、ベジトラミド、17−シクロプロピルメチル−4,5α−エポキシ−7α[(S)−1−ヒドロキシ−1,2,2−トリメチル−プロピル]−6−メトキシ−6,14−エンド−エタノモルフィナン−3−オール(ブプレノルフィン)、ブトルファノール、カルフェンタニル、クロニタゼン、(−)−メチル−[3β−ベンゾイルオキシ−2β(1αH,5αH)−トロパンカルボキシレート](コカイン)、4,5α−エポキシ−3−メトキシ−17−メチル−7−モルフィネン−6α−オール(コデイン)、デソモルフィン、デキストロモラミド、(+)−(1−ベンジル−3−ジメチルアミノ−2−メチル−1−フェニルプロピル)プロピオネート(デキストロプロポキシフェン)、デゾシン、ジアンプロミド、ジアモルフォン、4,5α−エポキシ−3−メトキシ−17−メチル−6α−モルフィナノール(ジヒドロコデイン)、4,5α−エポキシ−17−メチル−3,6a−モルフィナンジオール(ジヒドロモルフィン)、ジメノキサドール、ジメフェタルノール(dimephetamol)、ジメチルチアンブテン、ジオキサフェチルブチレート、ジピパノン、ジヒドロモルフォン、エプタゾシン、エトヘプタジン、エチルメチルチアンブテン、4,5α−エポキシ−3−エトキシ−17−メチル−7−モルフィネン−6α−オール(エチルモルフィン)、エトニタゼン、4,5α−エポキシ−7α−(1−ヒドロキシ−1−メチルブチル)−6−メトキシ−17−メチル−6,14−エンド−エテノ−モルフィナン−3−オール(エトルフィン)、フェンピプラミド、N−(1−フェネチル−4−ピペリジル)プロピオンアニリド(フェンタニル)、ヘロイン、4,5α−エポキシ−3−メトキシ−17−メチル−6−モルフィナノン(ヒドロコドン)、4,5α−エポキシ−3−ヒドロキシ−17−メチル−6−モルフィナノン(ヒドロモルホン)、ヒドロキシペチジン、イソメサドン、ヒドロキシメチルモルフィナン、1−[4−(3−ヒドロキシフェニル)−1−メチル−4−ピペリジル]−1−プロパノン(ケトベミドン)、(3S,6S)−6−ジメチルアミノ−4,4−ジフェニルヘプタン−3−イルアセテート(レバセチルメサドール)、(−)−6−ジメチルアミノ−4,4−ジフェノール−3−ヘプタノン(レボメサドン)、(−)−17−メチル−3−モルフィナノール(レボルファノール)、レボフェナシルモルファン、レボゼマシン(levoxemacin)、ロフェンタニル、メペリジン、2−メチル−2−プロピルトリメチレンジカルバメート、メプタジノール、メタゾシン、メサドン、メチルモルフィン、メタポン、3−メチルフェンタニル、4−メチルフェンタニル、4,5α−エポキシ−17−メチル−7−モルフィネン−3,6α−ジオール(モルフィン)、モルフィン−6−グルコロニド、ミロフィン、ナルブフェン、ナロルフィン、ナルセイン、ニコモルフィン、6−ジメチルアミノ−4,4−ジフェニル−3−ヘキサノン(ノルメサドン)、ノルモルフィン、ノルピパノン、Papaver somniferum種に属する植物の分泌物(オピウム)、4,5α−エポキシ−14−ヒドロキシ−3−メトキシ−17−メチル−6−モルフィナノン(オキシコドン)、オキシモルホン、Papaver somniferum種(亜種setigerumを含む)に属する植物および植物の一部(Papaver somniferum)、パパベレタム、1,2,3,4,5,6−ヘキサヒドロ−6,11−ジメチル−3−(3−メチル−2−ブテニル)−2,6−メタノ−3−ベンザゾシン−8−オール(ペンタゾシン)、エチル−(1−メチル−4−フェニル−4−ピペリジンカルボキシレート)(ペチジン)、フェナドキソン、フェノモルファン、フェナゾシン、フェノペリジン、ピミノジン、フォルコデイン、1’−(3−シアノ−3,3−ジフェニルプロピル)[1,4’−ビピペリジン]−4’−カルボキサミド(ピリトラミド)、プロヘプタジン、プロメドール、プロペリジン、プロポキシフェン、メチル{3−[4−メトキシカルボニル−4−(N−フェニルプロパンアミド)ピペリジノ]プロパノエート}(レミフェンタニル)、N−{4−メトキシメチル−1−[2−(2−チエニル)エチル]−4−ピペリジル}プロピオンアニリド(スフェンタニル)、エチル(2−ジメチルアミノ−1−フェニル−3−シクロヘキセン−1−カルボキシレート(チリジン、シスおよびトランス)、テバイン、トラマドール、(1R,2R,4S)−2−(ジメチルアミノ)メチル−4−(p−フルオロベンジルオキシ)−1−(m−メトキシ−フェニル)シクロヘキサノール、(1R,2R)−3−(2−ジメチルアミノメチル−シクロヘキシル)フェノール、(1S,2S)−3−(3−ジメチルアミノ−1−エチル−2−メチル−プロピル)フェノール、(2R,3R)−1−ジメチルアミノ−3(3−メトキシフェニル)−2−メチル−ペンタン−3−オール、(1RS、3RS,6RS)−6−ジメチルアミノメチル−1−(3−メトキシフェニル)−シクロヘキサン−1,3−ジオール、好ましくはラセミ化合物として、3−(2−ジメチル−アミノメチル−1−ヒドロキシ−シクロヘキシル)フェニル2−(4−イソブトキシ−フェニル)プロピオネート、3−(2−ジメチルアミノメチル−1−ヒドロキシ−シクロヘキシル)フェニル2−(6−メトキシ−ナフタレン−2−イル)プロピオネート、3−(2−ジメチルアミノメチル−シクロヘキサ−1−エニル)−フェニル2−(4−イソブチル−フェニル)プロピオネート、3−(2−ジメチルアミノメチル−シクロヘキサ−1−エニル)−フェニル2−(6−メトキシ−ナフタレン−2−イル)プロピオネート、(RR−SS)−2−アセトキシ−4−トリフルオロメチル−安息香酸3−(2−ジメチルアミノメチル−1−ヒドロキシ−シクロヘキシル)−フェニルエステル、(RR−SS)−2−ヒドロキシ−4−トリフルオロメチル−安息香酸3−(2−ジメチルアミノメチル−1−ヒドロキシ−シクロヘキシル)−フェニルエステル、(RR−SS)−4−クロロ−2−ヒドロキシ−安息香酸3−(2−ジメチルアミノメチル−1−ヒドロキシ−シクロヘキシル)−フェニルエステル、(RR−SS)−2−ヒドロキシ−4−メチル−安息香酸3−(2−ジメチルアミノメチル−1−ヒドロキシ−シクロヘキシル)−フェニルエステル、(RR−SS)−2−ヒドロキシ−4−メトキシ−安息香酸3−(2−ジメチルアミノメチル−1−ヒドロキシ−シクロヘキシル)−フェニルエステル、(RR−SS)−2−ヒドロキシ−5−ニトロ−安息香酸3−(2−ジメチルアミノメチル−1−ヒドロキシ−シクロヘキシル)−フェニルエステル、(RR−SS)−2’,4’−ジフルオロ−3−ヒドロキシ−ビフェニル−4−カルボン酸3−(2−ジメチルアミノメチル−1−ヒドロキシ−シクロヘキシル)−フェニルエステル、ならびに対応する立体異性化合物、各場合に、対応するその誘導体、特に、アミド、エステルまたはエーテル、および、各場合に、生理的に許容可能なその化合物、特にその塩および溶媒化合物、特に好ましくは、塩酸塩、硫酸塩、サッカリン塩、活性代謝産物、ジフェノキシレート、レボメサドン、ノルチリジン、ピリトラミドおよびビミノール。
【0018】
本発明の剤形は、下記を含む群から選択されるオピオイド活性成分の乱用を防止するのに特に好適である。オキシコドン、ヒドロモルホン、モルフィン、オキシモルホン、トラマドールおよび生理的に許容可能なそれらの誘導体または化合物、好ましくはそれらの塩および溶媒化合物、好ましくは、それらの塩酸塩、硫酸塩、サッカリン塩、および/またはそれらの立体異性体または対応する化合物および/または誘導体。
【0019】
さらに、本発明の剤形は、下記を含む群から選択されるオピオイド活性成分の乱用を防止するのにも特に好適である。(2R,3R)−1−ジメチルアミノ−3−(3−メトキシフェニル)−2−メチル−ペンタン−3−オール、(1RS,3RS,6RS)−6−ジメチルアミノメチル−1−(3−メトキシフェニル)−シクロヘキサン−1,3−ジオール、(1R,2R)−3−(2−ジメチルアミノメチル−シクロヘキシル)フェノール、生理的に許容可能なそれらの塩、好ましくは、塩酸塩、硫酸塩、サッカリン塩、生理的に許容可能なエナンチオマー、立体異性体、ジアステレオマーおよびラセミ化合物、および生理的に許容可能なそれらの誘導体、好ましくは、エーテル、エステルまたはアミド。
【0020】
これらの化合物およびそれらの製造方法は、それぞれ、EP−A−693475およびEP−A−780369に記載されている。対応する記載は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0021】
遅延放出剤形における投与量は、1日1回の投与が確実にされるように選択される。対応する投与量は、当業者に既知である。
【0022】
本発明の剤形における活性成分の含有量は、好ましくは0.05〜80wt%、特に好ましくは0.05〜60wt%、極めて特に好ましくは0.05〜40wt%である。
【0023】
本発明の剤形に必要な破壊強度を得るために、本出願に開示されている方法を使用して測定される破壊強度、少なくとも500N、好ましくは750Nを有する少なくとも1つの合成、半合成または天然ポリマー(C)を使用する。好ましくは、この目的のために、少なくとも1つのポリマーを、下記を含む群から選択する。ポリアルキレンオキシド、好ましくは、ポリメチレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリオレフィン、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロリド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、それらのコポリマー、および前記ポリマーまたはポリマー種の少なくとも2つの混合物。特に好ましくは、水溶性または水膨潤性ポリマーを使用する。高分子量熱可塑性ポリアルキレンオキシドが好ましい。レオロジー的測定によって測定して、少なくとも50万、好ましくは100万〜1500万の分子量を有するポリエチレンオキシドが特に好ましい。これらのポリエチレンオキシドは、25℃において、下記に示す粘度を有する。モデルRVF Brookfield粘度計(スピンドル番号2/回転速度2rpm)を使用し、5wt%水溶液において測定して4500〜17600cP。前記粘度計(但し、スピンドル番号1または3/回転速度10rpm)を使用し、2wt%水溶液において測定して400〜4000cP。または前記粘度計(但し、スピンドル番号2/回転速度2rpm)を使用し、1wt%水溶液において測定して1650〜10000cP(Handbook of Pharmaceutical Excipients by Raymond C.Rowe et al.,4th edition,2003,page 460参照)。
【0024】
ポリマーを好ましくは粉末として使用して、本発明の剤形を製造する。該ポリマーは、水溶性または水膨潤性であってよい。
【0025】
成分(C)は、剤形の全重量に対して、好ましくは20〜99.9wt%、特に好ましくは少なくとも35wt%、極めて特に好ましくは少なくとも50wt%の量で使用される。
【0026】
使用し得る補助物質(B)は、固体剤形の配合に関して既知の一般的な補助物質である。これらは、好ましくは、可塑剤、例えば、0.01〜20wt%、特に好ましくは15wt%まで、極めて特に好ましくは10wt%までの量のポリエチレングリコール、活性成分の放出に影響を与える下記の補助物質、好ましくは疎水性または親水性、好ましくは親水性ポリマー、極めて特に好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロース、および/または酸化防止剤である。好適な酸化防止剤は、アスコルビン酸、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、アスコルビン酸の塩、モノチオグリセロール、亜リン酸、ビタミンC、ビタミンEおよびその誘導体、二亜硫酸ナトリウム、特に好ましくはブチルヒドロキシトルエン(BHT)またはブチルヒドロキシアニソール(BHA)およびα−トコフェロールである。
【0027】
酸化防止剤は、剤形の全重量に対して0.01〜10wt%、好ましくは0.03〜5wt%の量で使用するのが好ましい。
【0028】
さらに、前記ポリマーに加えて、本出願に開示する方法を使用して測定される破壊強度少なくとも500N、好ましくは750Nを有する少なくとも1つの天然、半合成または合成ワックス(D)を付加的に使用して、本発明の剤形に必要な破壊強度が得られる。少なくとも60℃の軟化点を有するワックスが好ましい。カルナウバワックスおよび蜜蝋が特に好ましい。カルナウバワックスが極めて好ましい。カルナウバワックスは、ブラジルロウヤシの葉から得られる天然ワックスであり、高くて90℃の軟化点を有する。ワックス成分を付加的に使用する場合、該ワックス成分は、少なくとも1つのポリマー(C)、好ましくはポリエチレンオキシドと共に、剤形が本出願に記載する方法を使用して測定して少なくとも500N、好ましくは少なくとも750Nの破壊強度を示す量で使用される。
【0029】
本発明の剤形は、その硬度により、一般的な粉砕器具、例えば乳鉢または乳棒を使用して、粉砕できないことにおいて顕著に優れている。それによって、経口、非経口、特に静脈内または経鼻乱用は、実際に不可能にされる。しかし、好ましい実施形態において、本発明の剤形のあらゆる可能な乱用を防止するために、本発明の剤形は、乱用を複雑化するかまたは防止する物質を補助物質(B)としてさらに含有し得る。
【0030】
従って、本発明の乱用防止剤形は、乱用可能性を有する少なくとも1つのオピオイドに加えて、少なくとも1つのポリマー(C)、および任意選択的に、少なくとも1つのワックス(D)、補助物質(B)としての少なくとも1つの下記成分(a)〜(f)を含んでよい。
(a) 鼻管(nasal passages)および/または咽頭を刺激する少なくとも1つの物質;
(b) 必要な最少量の水性液体の補助により、好ましくは剤形から得られる水性抽出物として、ゲルを形成する(該ゲルは、追加量の水性液体への導入時に、好ましくは、視覚的に識別可能に維持される)少なくとも1つの粘度上昇剤;
(c) 乱用の可能性を有する本発明のオピオイドの少なくとも1つの拮抗薬;
(d) 少なくとも1つの催吐剤;
(e) 嫌悪剤としての少なくとも1つの染料;
(f) 少なくとも1つの苦味物質。
【0031】
成分(a)〜(f)は、それぞれ、本発明の剤形を乱用から付加的に保護するものとしてそれ自体で好適である。従って、成分(a)は、好ましくは、経鼻、経口および/または非経口、好ましくは静脈内乱用に対して剤形を保護するのに好適であり;成分(b)は、好ましくは、非経口、特に好ましくは静脈内および/または経鼻乱用に対する保護に好適であり;成分(c)は、好ましくは、経鼻および/または非経口、特に好ましくは静脈内乱用に対する保護に好適であり;成分(d)は、好ましくは、非経口、特に好ましくは静脈内、および/または経口および/または経鼻乱用に対する保護に好適であり;成分(e)は、経口または非経口乱用に対して視覚的抑止物質として好適であり;成分(f)は、経口または経鼻乱用に対する保護に好適である。少なくとも1つの前記成分の同時使用によって、本発明の剤形に関して、より有効に乱用を複雑化し得る。
【0032】
1つの実施形態において、本発明の剤形は、(a)〜(f)の2つ以上の成分の組合せ、好ましくは、(a)、(b)および任意選択的に(c)および/または(f)および/または(e)の組合せ、または(a)、(b)および任意選択的に(d)および/または(f)および/または(e)の組合せを含んでもよい。
【0033】
他の実施形態において、本発明の剤形は、成分(a)〜(f)の全てを含んでよい。
【0034】
本発明の剤形が、成分(a)を乱用に対する付加的な保護物として含む場合、本発明により考え得る鼻管および/または咽頭刺激物質は、鼻管および/または咽頭を経て投与した場合に、乱用者が投与の継続を望まないかまたは継続できないほど不快であるか(例えば焼灼感)、または、例えば増加した鼻分泌またはくしゃみによって、対応するオピオイドおよび/またはアヘン剤の摂取を生理的に阻止する身体反応を生じる任意の物質である。鼻管および/または咽頭を一般に刺激するこれらの物質は、非経口的、特に静脈内的に投与した場合に、極めて不快な感覚、または耐えられない痛みも生じる場合があり、それによって、乱用者は該物質の摂取を望まないかまたは継続することができない。
【0035】
鼻管および/または咽頭を刺激する特に好適な物質は、焼灼感、かゆみ、くしゃみ衝動、分泌物形成の増加、またはこれらの刺激の少なくとも2つの組合せを生じる物質である。一般に使用される適切な物質およびその量は、それ自体で当業者に既知であるか、または簡単な予備試験によって同定し得る。
【0036】
成分(a)の鼻管および/または咽頭刺激物質は、好ましくは、少なくとも1つの辛味物質薬(hot substance drug)の1つ以上の成分または辛物質薬の1つ以上の植物部分に基づく。
【0037】
対応する辛味物質薬は、それ自体で当業者に既知であり、例えば下記に記載されている。「Pharmazeutische Biologie−Drogen und ihre Inhaltsstoffe」 by Prof.Dr.Hildebert Wagner,2nd.,revised edition,Gustav Fischer Verlag,Stuttgart−New York,1982,pages 82以下参照。対応する記載は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0038】
Allii sativi bulbus(ニンニク)、Asari rhizoma cum herba(アサルム根および葉)、Calami rhizoma(ショウブ根)、Capsici fructus(トウガラシ)、Capsici fructus acer(カイエンヌペッパー)、Curcumae longae rhizoma(ウコン根)、Curcumae xanthorrhizae rhizoma(ジャワウコン根)、Galangae rhizoma(ガランガ根)、Myristicae semen(ニクズク)、Piperis nigri fructus(コショウ)、Sinapis albae semen(シロガラシ種子)、Sinapis nigri semen(クロガラシ種子)、Zedoariae rhizoma(ツェドリア根)およびZingiberis rhizoma(ショウガ根)からなる群、特に好ましくは、Capsici fructus(トウガラシ)、Capsici fructus acer(カイエンヌペッパー)およびPiperis nigri fructus(コショウ)からなる群から選択される少なくとも1つの辛味物質薬の1つ以上の成分を、成分(a)として本発明の剤形に添加するのが好ましい。
【0039】
辛味物質薬の成分は、好ましくは、o−メトキシ(メチル)フェノール化合物、酸アミド化合物、マスタードオイルまたはスルフィド化合物またはそれらから誘導される化合物を含む。
【0040】
特に好ましくは、辛味物質薬の少なくとも1つの成分は、ミリスチシン、エレミシン、イソオイゲノール、α−アサロン、サフロール、ジンゲロール、キサントリゾール、カプサイシノイド、好ましくは、カプサイシン、カプサイシン誘導体、例えば、N−バニリル−9E−オクタデセンアミド、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ノルカプサイシンおよびノモルカプサイシン、ピペリン、好ましくはトランス−ピペリン、グルコシノレート、好ましくは、不揮発性マスタードオイルに基づき、特に好ましくは、p−ヒドロキシベンジルマスタードオイル、メチルメルカプトマスタードオイルまたはメチルスルホニルマスタードオイルに基づき、およびこれらの成分から誘導される化合物からなる群から選択される。
【0041】
本発明の剤形は、対応する辛味物質薬の植物部分を、投与単位の全重量に対して、好ましくは0.01〜30wt%、特に好ましくは0.1〜0.5wt%の量で含有し得る。
【0042】
対応する辛味物質薬の1つ以上の成分を使用する場合、本発明の投与単位におけるその量は、投与単位の全重量に対して好ましくは0.001〜0.005wt%である。
【0043】
本発明の剤形の乱用を防止する他の選択肢は、少なくとも1つの粘度上昇剤を付加的乱用防止成分(b)として剤形に添加することであり、該粘度上昇剤は、必要な最少量の水性液体の補助により、好ましくは剤形から得られる水性抽出物として、ゲルを形成し、該ゲルは、追加量の水性液体に導入した際に、安全に投与することが実質的に不可能であり、かつ、好ましくは、視覚的に識別可能に維持される。
【0044】
本出願の目的のために、視覚的に識別可能とは、必要な最少量の水性液体を用いて形成されるオピオイド含有ゲルまたはアヘン剤含有ゲルが、好ましくは皮下注射針を用いて、追加量の水性液体に37℃で導入された際に、実質的に不溶性かつ粘着性に維持され、非経口的、特に静脈内的に安全に投与し得るように簡単に分散させることができないことを意味する。該物質は、少なくとも1分間、好ましくは少なくとも10分間、視覚的に識別可能に維持されることが好ましい。
【0045】
粘度を上昇させてゲルにすることは、それを針に通すこと、または注射することをより困難にするか、さらには不可能にする。ゲルが視覚的に識別可能に維持される場合、これは以下のことを意味する。例えば血液中への注射によって、追加量の水性液体に導入する際に得られるゲルが、初めに、極めて粘着性の糸の形態に維持され、これは、実際に、機械的に、より小さい断片に分解し得るが、非経口的、特に静脈内的に安全に投与し得るように分散または溶解することができない。少なくとも1つの付加的存在成分(a)、(d)〜(f)との組合せにおいて、これは、付加的に、不快な焼灼感、嘔吐、不快な風味(bad flavour)および/視覚的な抑止を生じる。
【0046】
そのようなゲルの静脈内投与は、乱用者の健康への重大な損傷に関係した血管の閉塞を生じる可能性が高い。
【0047】
粘度上昇剤が、本発明の剤形に使用する成分(b)として好適であるかを確認するために、オピオイドおよび/またはアヘン剤を粘度上昇剤と混合し、25℃の温度で水10mLに懸濁させる。これによって、前記条件を満たすゲルが形成された場合、対応する粘度上昇剤は、本発明の剤形の乱用を付加的に防止するかまたは阻止するのに好適である。
【0048】
本発明の方法によって得られる剤形に成分(b)を添加する場合、好ましくは、下記を含む群から選択される1つ以上の粘度上昇剤を使用する。11wt%カルボキシメチルセルロースナトリウムを含有する微結晶性セルロース(Avicel(登録商標)RC 591)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Blanose(登録商標)、CMC−Na C300P(登録商標)、Frimulsion BLC−5(登録商標)、Tylose C300 P(登録商標))、ポリアクリル酸(Carbopol(登録商標)980NF、Carbopol(登録商標)981)、イナゴマメ粉(Cesagum(登録商標)LA−200、Cesagum(登録商標)LID/150、Cesagum(登録商標)LN−1)、ペクチン(好ましくは柑橘類果実またはリンゴから)(Cesapectin(登録商標)HM Medium Rapid Set)、ワックス様トウモロコシデンプン(C*Gel 04201(登録商標))、アルギン酸ナトリウム(Frimulsion ALG(E401)(登録商標))、グアール粉(Frimulsion BM(登録商標)、Polygum 26/1−75(登録商標))、イオタカラゲナン(Frimulsion D021(登録商標))、カラヤガム、ゲランガム(Kelcogel F(登録商標)、Kelcogel LT100(登録商標))、ガラクトマンナン(Meyprogat 150(登録商標))、タラストーン粉(tara stone flour)(Polygum 43/1(登録商標))、アルギン酸プロピレングリコール(Protanal−Ester SD−LB(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガカント、タラガム(Vidogum SP 200(登録商標))、発酵多糖ウェランガム(fermented polysaccharide welan gum)(K1A96)、キサンタンガムのようなキサンタン(Xantural 180(登録商標))。キサンタンが特に好ましい。括弧内に記載した名称は、前記物質がそれによって商業的に既知の商品名である。一般に、剤形の全量に対して0.1〜20wt%、特に好ましくは0.1〜15wt%の量の前記粘度上昇剤が、前記条件を満たすのに充分である。
【0049】
成分(b)の粘度上昇剤は、適用される場合に、一用量単位につき、即ち一投与単位につき、少なくとも5mgの量で本発明の剤形に存在するのが好ましい。
【0050】
特に好ましい本発明の実施形態において、成分(b)として使用される粘度上昇剤は、好ましくは必要な最少量の水性液体での剤形からの抽出によって、気泡を閉じ込めたゲルを形成する粘度上昇剤である。得られるゲルは混濁した外観によって識別され、外観は、潜在的な乱用者に付加的な視覚的警告を与え、乱用者がゲルを非経口投与するのを思いとどまらせる。
【0051】
成分(C)も、場合により、必要な最少量の水性液体を用いてゲルを形成する付加的粘度上昇剤として作用し得る。
【0052】
粘度上昇成分と、本発明の剤形の他の成分とを、相互に空間的に分離して配置することもできる。
【0053】
さらに、乱用を思いとどまらせ、防止するために、本発明の剤形は、成分(c)、即ち、乱用の可能性のあるオピオイドおよび/またはアヘン剤の1つ以上の拮抗薬をさらに含んでよく、該拮抗薬は、好ましくは、本発明の剤形の残りの成分から空間的に分離しているのが好ましく、正しく使用された場合に、どのような作用も示さないようになっている。
【0054】
オピオイドの乱用を防止するのに好適な拮抗薬は、それ自体で当業者に既知であり、それ自体で、または対応する誘導体、特にエステルまたはエーテルの形態、または各場合に、対応する生理的に許容可能な化合物の形態、特にその塩または溶媒化合物の形態で、本発明の剤形に存在し得る。
【0055】
使用される拮抗薬は、好ましくは、ナロキソン、ナルトレキソン、ナルメフェン、ナリド(nalide)およびナルメキソン(nalmexone)を含む群から選択され、各場合に、対応する生理的に許容可能な化合物の形態、特に、塩基、塩または溶媒化合物の形態であってよい。成分(c)が使用される場合、対応する拮抗薬は、一剤形につき、即ち一投与単位につき、好ましくは少なくとも1mgの量で、特に好ましくは3〜100mgの量で、極めて特に好ましくは5〜50mgの量で使用される。
【0056】
本発明の剤形は、拮抗薬成分を、好ましくは、当業者に既知の一般的な治療用量で含み、特に好ましくは、一投与単位につき、この用量の2〜3倍の量で含む。
【0057】
本発明の剤形の乱用を付加的に思いとどまらせ、防止するための組合せが、成分(d)を含む場合、それは少なくとも1つの催吐剤を含んでよく、該催吐剤は、本発明の剤形の他の成分から空間的に離れた配置で存在するのが好ましく、正しく使用された場合は、体内でその作用を示さないようになっている。
【0058】
オピオイドの乱用を付加的に防止するための好適な催吐剤は、それ自体で当業者に既知であり、それ自体で、または対応する誘導体、特にエステルまたはエーテルの形態、または各場合に、対応する生理的に許容可能な化合物の形態、特にその塩または溶媒化合物の形態で、本発明の剤形に存在し得る。
【0059】
例えば「Pharmazeutische Biologie−Drogen und Ihre Inhaltsstoffe」by Prof.Dr.Hildebert Wagner,2nd,revised edition,Gustav Fischer Verlag,Stuttgart,New York1982に記載されているように、トコン(イペカック)根の1つ以上の成分に基づく、好ましくは成分エメチンに基づく催吐剤を、本発明の剤形に関して考えるのが好ましい。対応する文献の記載は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0060】
本発明の剤形は、成分(d)として、催吐性エメチンを、一剤形につき、即ち一投与単位につき、好ましくは少なくとも3mg、特に好ましくは少なくとも10mg、極めて特に好ましくは少なくとも20mgの量で含むのが好ましい。
【0061】
アポモルヒネも、付加的乱用防止用の催吐剤として、一投与単位につき、好ましくは少なくとも3mg、特に好ましくは少なくとも5mg、極めて特に好ましくは少なくとも7mgの量で使用するのが好ましい。
【0062】
本発明の剤形が、成分(e)を付加的乱用防止補助物質として含有する場合、そのような染料の使用は、特に、非経口、好ましくは静脈内投与のために、オピオイドを抽出しようとする際に、対応する水溶液の濃い着色を生じ、該着色は潜在的乱用者に抑止として作用し得る。オピオイドの水抽出によって一般に開始される経口乱用も、この着色によって防止し得る。好適な染料、および必要とされる抑止に必要なその量は、WO03/015531にみられ、対応する開示は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0063】
本発明の剤形が、成分(f)を付加的乱用防止補助物質として含有する場合、少なくとも1つの苦味物質の添加、およびその後の剤形の香りの悪化が、経口および/または経鼻乱用を付加的に防止する。
【0064】
好適な苦味物質および使用に有効なその量は、US2003/0064099にみられ、対応するその開示は引用することにより本明細書の一部をなすものとする。好適な苦味物質は、好ましくは芳香油、好ましくは、ハッカ油、ユーカリ油、苦扁桃油、メントール、果実芳香物質、好ましくは、レモン、オレンジ、ライム、グレープフルーツまたはそれらの混合物からの芳香物質、および/または安息香酸デナトニウム(Bitrex(登録商標))である。安息香酸デナトニウムを使用するのが特に好ましい。
【0065】
1日1回の投与を確実にするために、本発明の剤形は、乱用可能性を有するオピオイドおよび/またはアヘン剤を、少なくとも部分的に遅延放出形態で含み、その場合、活性成分の遅延放出は、当業者に既知の一般的物質および方法を用いて、例えば、遅延放出マトリックスにオピオイドを埋め込むことによるか、または1つ以上の遅延放出コーティングを適用することによって、達成し得る。しかし、オピオイド放出は、各場合に、前記の条件が満たされるように、例えば、剤形を正しく投与した場合に、任意選択的に存在する成分(c)および/または(d)が損傷作用を示し得る前に、オピオイドが実質的に完全に放出されるように、調節すべきである。特に、オピオイドの放出は、少なくとも24時間にわたる鎮痛作用を確実にすべきである。
【0066】
本発明の剤形からのオピオイドの放出が、少なくとも1つの遅延放出コーティングを用いて調節される場合、該遅延放出コーティングは、当業者に既知の一般的物質からなってよい。
【0067】
本発明の剤形の好ましい実施形態において、遅延放出コーティングは、水不溶性の任意選択的に改質された天然および/または合成ポリマーに基づくか、または天然、半合成または合成ワックスに基づくか、または脂肪または脂肪アルコールに基づくか、または前記成分の少なくとも2つの混合物に基づくのが好ましい。
【0068】
遅延放出コーティングを製造するために、水不溶性ポリマーは、好ましくは、下記物質を含む。ポリ(メタ)アクリレート、特に好ましくは、ポリ(C1-4)−アルキル(メタ)アクリレート、ポリ(C1-4)−ジアルキルアミノ−(C1-4)−アルキル(メタ)アクリレートおよび/またはそれらのコポリマー、極めて特に好ましくは、モノマーのモル比が2:1の、エチルアクリレートとメチルメタアクリレートとのコポリマー(Eudragit NE30D(登録商標))、モノマーのモル比が1:2:0.1のエチルアクリレート、メチルメタクリレートおよびトリメチルアンモニウムメチルメタクリレートクロリドのコポリマー(Eudragit RS(登録商標))、モノマーのモル比が1:2:0.2のエチルアクリレート、メチルメタクリレートおよびトリメチルアンモニウムメチルメタクリレートクロリドのコポリマー(Eudragit RL(登録商標))、または前記コポリマーのうち少なくとも2つの混合物。これらのコーティング材料は、30wt%水性ラテックス分散物、即ち、Eudragit RS30D(登録商標)、Eudragit NE30D(登録商標)またはEudragit RL30D(登録商標)として商業的に入手可能であり、好ましくは、それ自体でコーティング材料として使用される。
【0069】
さらなる補助物質と任意選択的に組み合わせたポリビニルアセテートも、好ましくは、本発明の剤形の遅延放出コーティングを製造するための水不溶性ポリマーとして使用し得る。これらは、27wt%のポリビニルアセテート、2.5wt%のポビドンおよび0.3wt%のラウリル硫酸ナトリウムを含有する水性分散物(Kollicoat SR 30D(登録商標))として商業的に入手可能である。
【0070】
他の好ましい実施形態において、本発明の剤形の遅延放出コーティングは、水不溶性セルロース誘導体、好ましくはアルキルセルロース、例えばエチルセルロース、またはセルロースエステル、例えばセルロースアセテートに基づく。エチルセルロースまたはセルロースアセテートのコーティングは、好ましくは、水性疑似ラテックス分散物から適用される。水性エチルセルロース疑似ラテックス分散物は、30wt%分散物(Aquacoat(登録商標))または25wt%分散物(Surelease(登録商標))として商業的に入手可能である。
【0071】
遅延放出コーティングが水不溶性の任意選択的に改質された天然および/または合成ポリマーを主成分とする場合、必要な最低フィルム温度を低下させるために、コーティング分散液または溶液は、対応するポリマーに加えて、当業者に既知の一般的な生理的に許容可能な可塑剤を含んでよい。
【0072】
好適な可塑剤は、例えば、下記の可塑剤である。C6−C40脂肪族または芳香族ジカルボン酸およびC1−C8脂肪族アルコールからの親油性ジエステル、例えば、ジブチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルセバケートまたはジエチルセバケート、クエン酸の親水性または親油性エステル、例えば、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリブチルシトレートまたはアセチルトリエチルシトレート、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロールのエステル、例えば、トリアセチン、Myvacet(登録商標)(アセチル化モノ−およびジグリセリド、C23445〜C25477)、中鎖トリグリセリド(Miglyol(登録商標))、オレイン酸または前記可塑剤のうち少なくとも2つの混合物。Eudragit RS(登録商標)および任意選択的にEudragit RL(登録商標)の水性分散物は、好ましくはトリエチルシトレートを含有する。
【0073】
本発明による剤形の遅延放出コーティングは、可塑剤を、使用されるポリマーの量に対して、好ましくは5〜50wt%、特に好ましくは10〜40wt%、極めて特に好ましくは10〜30wt%の量で含有する。各場合に、例えば、酢酸セルロースに関して、より多い量の可塑剤を使用することもできる。
【0074】
さらに、遅延放出コーティングは、当業者に既知の他の一般的な補助物質、例えば、スリップ剤、好ましくはタルカムまたはグリセロールモノステアレート、着色顔料、好ましくは酸化鉄または二酸化チタン、または界面活性剤、例えばTween 80(登録商標)を含んでよい。
【0075】
オピオイドに関して得られる放出プロフィールは、当業者に既知の一般的方法、例えば、コーティングの厚さ、または付加的補助物質をコーティングの成分として使用することによって、さらに調節し得る。好適な補助物質は、例えば、親水性またはpH依存性増孔剤、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ラクトース、ポリエチレングリコールまたはマンニトールまたは水溶性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドンまたは水溶性セルロース、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースである。
【0076】
オピオイドの放出用の本発明の剤形は、胃液に耐性の、pH依存的に溶解するコーティングをさらに含んでもよい。このコーティングは、本発明の剤形が、溶解せずに胃を通過し、腸に到達するまでオピオイドが放出されないようにし得る。
【0077】
胃液に耐性のコーティングは、メタクリル酸/アルキルメタクリレートコポリマー、好ましくはメチルメタクリレート、例えば、特定モノマーのモル比1:1〜1:2のメタクリル酸またはエチレンメタクリレートコポリマー、例えば、Eudragit L(登録商標)、Eudragit S(登録商標)、Eudragit L30D−55(登録商標)、Eudragit FS(登録商標)に基づくのが好ましい。
【0078】
遅延放出コーティングは、当業者に既知の一般法によって、例えば、溶液、分散液または懸濁液の吹き付け、溶融法、または粉末適用法によって、適用し得る。溶液、分散液または懸濁液は、水性または有機溶液または分散液の形態で使用し得る。水性分散液をこれに関して使用するのが好ましい。使用し得る有機溶媒は、アルコール、例えば、エタノールまたはイソプロパノール、ケトン、例えば、アセトン、エステル、例えば酢酸エチルであり、好ましくはアルコールおよびケトンを使用する。被覆方法は、先行技術、例えば、H.Sucker,Georg Thieme Verlag,1991,pages 347以下から既知である。それらは、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0079】
本発明の剤形が多粒子形態(multiparticulate form)である場合、遅延放出コーティングは、好ましくは、以下のように適用される。オピオイドを含有する多粒子形態を、その製造後に、特定ポリマーおよび任意選択的に付加的な補助物質で、水性および/または有機媒質から、好ましくは水性媒質から、流動床法を用いてコーティングし、該コーティングは、好ましくは、流動床において通常温度で同時に乾燥させる。
【0080】
ポリ(メタ)アクリレートに基づくコーティングは、好ましくは30〜50℃、特に好ましくは35〜45℃の温度で乾燥させる。セルロースに基づくコーティング、例えばエチルセルロースについては、乾燥を好ましくは50〜80℃、特に好ましくは55〜65℃の温度で行う。必要であれば、安定な放出プロフィールを得るために、乾燥後、付加的に温度調節処理を行ってよい。
【0081】
本発明の剤形からの活性成分遅延放出は、遅延放出マトリックスにオピオイドを埋め込むことによって行ってもよい。
【0082】
遅延放出マトリックスに使用し得る材料は、好ましくは生理的に許容可能な親水性ポリマー、好ましくは、セルロースエーテル、セルロースエステルおよび/またはアクリル樹脂である。エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリ(メタ)アクリル酸および/またはそれらの誘導体、例えば、それらの塩、アミドまたはエステルを使用するのが特に好ましい。
【0083】
疎水性化合物を遅延放出マトリックスとして使用する場合、脂肪酸、脂肪アルコールまたは対応するそれらのエステルまたはエーテルまたは混合物を使用し得る。C12−C30脂肪酸のモノグリセリドまたはジグリセリド、および/またはC12−C30脂肪アルコールおよび/またはワックスまたはそれらの混合物を、疎水性化合物として使用するのが特に好ましい。
【0084】
前記の親水性および疎水性マトリックス材料の混合物を使用することもできる。
【0085】
本発明の剤形の構造が許せば、粘度上昇剤としての成分(b)が、好ましくは、遅延放出マトリックス用の材料としても機能し得る。
【0086】
本発明に必要な少なくとも500N、好ましくは少なくとも750Nの破壊強度を与える作用をする成分(C)および任意選択的に存在してもよい成分(D)も、付加的な遅延放出マトリックス材料として機能してよい。
【0087】
本発明の剤形の遅延放出および胃液耐性コーティングの適用のための対応する遅延放出化合物および方法は、例えば、下記文献から当業者に既知である。「Coated Pharmaceutical Dosage Forms−Fundamentals,Manufacturing Techniques,Biopharmaceutical Aspects,Test Methods and Raw Materials」 by Kurt H.Bauer,K.Lehmann,Hermann P.Osterwald,Rothgang,Gerhart,1st edition,1998,Medpharm Scientific Publishers。対応する文献の記載は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0088】
本発明の剤形は、ヒトおよび動物への、1日1回の経口、膣または直腸投与、好ましくは経口投与に好適である。
【0089】
本発明の剤形は、多粒子形態(multiparticulate form)、好ましくは、カプセルに充填されているかまたは錠剤にプレス成形されていてよいマイクロタブレット、マイクロペレット、グラニュール、スフェロイド、ビーズまたはペレットの形態であってよい。多粒子形態は、好ましくは0.1〜3mm、特に好ましくは0.5〜2mmの粒度または粒度分布を有する。所望される剤形によって、一般的な補助物質(B)も、剤形の配合に任意選択的に使用される。
【0090】
特に好ましい実施形態において、好ましくは、少なくとも1つの付加的な乱用防止成分(a)〜(f)も存在する場合に、本発明の剤形は、錠剤、カプセル剤の形態であるか、または経口浸透圧治療システム(oral osmotic therapeutic system)(OROS)の形態である。
【0091】
本発明の乱用防止固体剤形は、成分(A)、(C)、任意選択的に(D)、任意選択的に少なくとも1つの付加的乱用防止成分(a)〜(f)、および任意選択的に付加的補助物質(B)、例えば、好ましくは遅延放出マトリックス化合物、を混合することによって製造するのが好ましく、その場合、必要であれば、成分(a)〜(f)を成分(C)および任意選択的に(D)と別々に混合し、直前にまたは同時に熱に暴露し、得られた混合物を、任意選択的にペレット化した後に、力の適用によって剤形に形成する。
【0092】
ペレット化は、溶融法または湿式ペレット化によって行ってよい。
【0093】
本発明の剤形の成分のそのような混合は、当業者に既知のミキサーで行ってよい。ミキサーは、例えば、ロールミキサー、振とうミキサー、剪断ミキサーまたは強制ミキサー(compulsory mixer)であってよい。
【0094】
直前にまたは同時に熱に暴露して力を適用することによって、得られた混合物を、直接的に本発明の剤形に形成するのが好ましい。混合物を、例えば、直接タブレット成形によって錠剤に形成してよい。熱への同時暴露を行う直接タブレット成形において、錠剤成形器具、即ち、ボトムパンチ、トップパンチおよびダイを、ポリマー成分(C)の少なくとも軟化温度に短時間加熱し、加圧する。熱への直前暴露を行う直接タブレット成形において、圧縮される材料を、タブレット成形の直前に、成分(C)の少なくとも軟化温度に加熱し、次に、加圧する。
【0095】
成分(A)、(C)、任意選択的に(D)、任意の存在成分(a)〜(f)、および任意の付加的な補助物質(B)、特に遅延放出マトリックス化合物の、得られた混合物を、先ずペレット化し、次に、熱に直前にまたは同時に暴露して力を適用することによって、本発明の剤形に形成してもよい。
【0096】
活性成分および/または1つ以上の薬学的に許容されるその塩(A)、および任意選択的に、生理的に許容可能な補助物質(B)、例えば成分(a)〜(f)、および任意選択的に、遅延放出マトリックス化合物および少なくとも1つの合成または天然ポリマー(C)、および任意選択的にワックス(D)を含有する得られた混合物を、力の適用によって剤形に形成し、成形品を任意選択的に個別化し(singulate)、任意選択的に、各場合にそれらを大きさによって等級付けし、成分(C)の少なくとも軟化点に加熱後または加熱中に、成形品が少なくとも500N、好ましくは少なくとも750Nの破壊硬度を示すまでそれらを力に暴露し、任意選択的に、それらにカバー(任意選択的に、遅延放出特性を有する)を適用し、任意選択的に、全ての成形品を再び混合することもできる。そのような手順は、国際特許出願PCT/EP2004/014679にも開示され、その対応する開示は引用することにより本明細書の一部をなすものとする。ここで酸化防止剤を使用することによって、製造工程中に不活性ガス雰囲気を維持しなくてよい場合もあることは当業者に既知である。
【0097】
さらに、少なくとも500N、好ましくは750Nの本発明による破壊強度または硬度を得るために必要とされる力の適用前または適用中に、混合物および/または成形品の必要とされる加熱を、超音波を用いて行ってもよい。対応する手順は、国際特許出願PCT/EP2005/004225に開示されており、かかる開示は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0098】
成分(c)および/または(d)および/または(f)が本発明の剤形に存在する場合、正しく投与された際に、剤形が患者またはオピオイドの有効性を害する作用を実質的に引き起こすことができないように、それらの成分が配合されるか、またはそのような低い用量で存在するよう注意すべきである。
【0099】
本発明の剤形が成分(d)および/または(f)を含有する場合、正しく経口投与された際に悪影響が生じないように、投与量を選択すべきである。しかし、特に子供による使用か、または乱用の場合に、剤形の意図する投与量を不注意に超えた場合は、吐き気または嘔吐傾向または不快な風味が生じる。正しい経口投与の場合に、患者によって許容される成分(d)および/または(f)の特定量は、簡単な予備試験により当業者によって決定し得る。
【0100】
しかし、本発明の剤形が実質的に微粉砕できないにもかかわらず、成分(c)および/または(d)および/または(f)を含有する剤形に保護が与えられる場合、これらの成分は、好ましくは、乱用的に投与された際に乱用者に強い負の作用を生じるのに充分に高い投与量で使用すべきである。これは、好ましくは、成分(c)および/または(d)および/または(f)からの少なくともオピオイドの空間的分離によって達成でき、その場合、オピオイドは少なくとも1つのサブユニット(X)に存在し、成分(c)および/または(d)および/または(f)は少なくとも1つのサブユニット(Y)に存在し、かつ、剤形が正しく投与された際に、成分(c)、(d)および(f)は、摂取時および/または体内において、それらの作用を示さず、配合物の残りの成分、特に成分(C)および任意選択的に(D)は同じである。
【0101】
本発明の剤形が、成分(c)および(d)または(f)の少なくとも2つを含む場合、これらは、それぞれ、同じかまたは異なるサブユニット(Y)に存在し得る。好ましくは、存在する場合に、全ての成分(c)および(d)および(f)が1つの同じサブユニット(Y)に存在する。
【0102】
サブユニット(X)およびサブユニット(Y)に空間的に分離した場合、かつ剤形におけるこれらのサブユニットの配置に関係なく、サブユニット(X)は、遅延放出形態の活性成分を含有し、それによって、該活性成分は1日1回投与のための徐放を確実にする。
【0103】
本発明の目的のために、サブユニットは固体配合物であり、該配合物は、各場合に、当業者に既知の一般的補助物質に加えて、オピオイド、少なくとも1つのポリマー(C)および任意選択的に、少なくとも1つの任意の存在成分(a)および/または(b)および/または(e)を含有するか、または、各場合に、少なくとも1つのポリマー(C)および拮抗薬および/または催吐薬および/または成分(e)および/または成分(f)および任意選択的に、少なくとも1つの任意の存在成分(a)および/または(b)および任意選択的に、遅延放出マトリックス化合物を含有する。この場合、各サブユニットが、前記の方法で配合されるよう注意すべきである。
【0104】
本発明の剤形のサブユニット(X)および(Y)における、成分(c)または(d)または(f)からのオピオイドの分離された製剤の1つの重要な利点は、正しく投与された際に、成分(c)および/または(d)および/または(f)が、摂取時および/または体内においてほとんど放出されないか、または、患者または治療効果を害する作用を示さない少ない量で放出されるか、または、患者の体を通る際に、有効になるほど充分に吸収されない場所でのみ遊離されることである。剤形が正しく投与された場合、好ましくは、成分(c)および/または(d)および/または(f)のいずれも患者の体内にほとんど放出されないかまたは患者に認識されない。
【0105】
前記条件が、使用される特定成分(c)、(d)および/または(f)およびサブユニットまたは剤形の処方との関係において変化し得ることを当業者は理解する。特定剤形の最適配合は、簡単な予備試験によって決定し得る。重要なことは、各サブユニットがポリマー(C)を含有し、前記のように配合されていることである。
【0106】
予想に反して、乱用者が、オピオイドの乱用を目的として、成分(c)および/または(e)および/または(d)および/または(f)をサブユニット(Y)に含む本発明のそのような剤形を粉砕することに成功し、好適な抽出剤で抽出される粉末を得た場合、オピオイドだけでなく特定成分(c)および/または(e)および/または(f)および/または(d)もオピオイドから容易に分離できない形態で得られ、それによって、不法に改変された剤形を、特に経口および/または非経口投与によって投与した際に、該剤形は、摂取時直ぐおよび/または体内において、成分(c)および/または(d)および/または(f)に対応する乱用者への付加的な負の作用と共に、その作用を示すか、または活性成分を抽出しようとした際に、着色が抑止力として作用し、それによって剤形の乱用を防止する。
【0107】
好ましくは異なるサブユニットにおける処方によって、オピオイドが成分(c)、(d)および/または(e)から空間的に分離している本発明の剤形は、種々の方法で処方することができる。その場合、対応するサブユニットはそれぞれ、互いに任意の所望の空間配置で本発明の剤形に存在してよい。但し、一方で、成分(c)および/または(d)の放出について、他方で、オピオイドの放出、即ち、1日1回投与のための徐放について、前記条件が満たされるものとする。
【0108】
任意選択的に存在する成分(a)および/または(b)が、本発明の剤形において、特定のサブユニット(X)および(Y)の両方において、かつサブユニット(X)および(Y)に対応する独立サブユニット(Y’)の形態において、処方されるのが好ましいことを当業者は理解し、但し、正しい投与の場合に、乱用防止および24時間にわたるオピオイド放出が、処方物の性質によって損なわれず、ポリマー(C)が処方物に含まれ、処方が前記の方法で行われるものとする。
【0109】
本発明の剤形の好ましい実施形態において、サブユニット(X)および(Y)が多粒子形態で存在し、その場合、マイクロタブレット、マイクロカプセル、マイクロペレット、粒状体、球状体、ビーズまたはペレットが好ましく、同じ形態、即ち形が、サブユニット(X)およびサブユニット(Y)の両方に選択され、それによって、機械的選別によって、サブユニット(X)を(Y)から分離することができない。多粒子形態は、0.1〜3mm、好ましくは0.5〜2mmの大きさであるのが好ましい。
【0110】
多粒子形態におけるサブユニット(X)および(Y)を、好ましくは、カプセルに充填するかまたは錠剤にプレス成形してもよく、各場合の最終的な処方は、得られた剤形にサブユニット(X)および(Y)が保持されるように行われる。
【0111】
同じ形の多粒子サブユニット(X)および(Y)は、相互に視覚的に識別できないようにもすべきであり、それによって、乱用者は、単に選別することによってそれらを相互に分離することができない。これは、例えば、同じコーティングの適用によって達成でき、該コーティングは、この偽装機能に加えて、付加的機能、例えば、特定サブユニットにおける、1つ以上のオピオイドの徐放、または胃液への仕上げ耐性(finish resistant)の付与も組み込み得る。
【0112】
本発明の他の好ましい実施形態において、サブユニット(X)および(Y)は、それぞれ互いに層状に配置される。
【0113】
層状サブユニット(X)および(Y)は、この目的のために、本発明の剤形において、互いに垂直または水平に配置するのが好ましく、各場合に、1つ以上の層状サブユニット(X)および1つ以上の層状サブユニット(Y)が剤形に存在してよく、それによって、好ましい層配列(X)−(Y)または(X)−(Y)−(X)に加えて、成分(a)および/または(b)を含有する層と任意選択的に組み合わせた、他の任意の所望の層配列も考えられる。
【0114】
本発明の他の好ましい剤形は、サブユニット(Y)がコアを形成し、該コアが遅延放出サブユニット(X)によって完全に囲まれている剤形であり、その場合、分離層(Z)がそれらの層の間に存在してよい。そのような構造は、好ましくは、前記多粒子形態にも好適であり、その場合、サブユニット(X)および(Y)の両方、ならびに任意選択的に存在する分離層(Z)(該層は本発明の硬度条件を満たす必要がある)を、1つの同じ多粒子形態に配合する。
【0115】
本発明の剤形の他の好ましい実施形態において、サブユニット(X)がコアを形成し、該コアがサブユニット(Y)によって囲まれ、該サブユニット(Y)は、コアから剤形の表面に通じる少なくとも1つのチャネルを含む。
【0116】
本発明の剤形は、サブユニット(X)の1つの層とサブユニット(Y)の1つの層の間に、各場合に1つ以上の、好ましくは1つの、任意選択的に膨潤性の分離層(Z)を含んでよく、該分離層は、サブユニット(X)を(Y)から空間的に分離する作用をする。
【0117】
本発明の剤形が、層状サブユニット(X)および(Y)ならびに任意選択的に存在する分離層(Z)を、少なくとも部分的に垂直または水平配置で含む場合、剤形は、タブレット、共押出物またはラミネートの形態をとるのが好ましい。
【0118】
1つの特に好ましい実施形態において、サブユニット(Y)の自由表面全体、および任意選択的に、サブユニット(X)の自由表面の少なくとも一部、および任意選択的に、任意の存在分離層(Z)の自由表面の少なくとも一部を、少なくとも1つのバリヤー層(Z’)で被覆してよく、該バリヤー層は、成分(c)および/または(e)および/または(d)および/または(f)の放出を防止する。バリヤー層(Z’)は、本発明の硬度条件も満たす必要がある。
【0119】
本発明の剤形の他の特に好ましい実施形態は、サブユニット(X)および(Y)の層、およびそれらの間に配置された少なくとも1つのプッシュ(push)層(p)、および任意選択的に分離層(Z)の、垂直または水平配置を含み、該剤形において、サブユニット(X)および(Y)からなる層構造物、プッシュ層および任意の存在分離層(Z)の自由表面全体に半透過性コーティング(E)を与え、該コーティングは放出媒質、即ち、一般に生理的液体に透過性であるが、オピオイドおよび成分(c)および/または(d)および/または(f)に実質的に不透過性であり、このコーティング(E)は、サブユニット(X)の領域におけるオピオイドの放出用の少なくとも1つの開口部を有する。
【0120】
対応する剤形は、例えば経口の浸透圧治療システム(OROS)の名称で、その製造に好適な材料および方法と共に、特にUS4,612,008、US4,765,989およびUS4,783,337から、当業者に既知である。対応する記載は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0121】
鎮痛性オピオイドおよび嫌悪剤としての染料を含有する浸透圧の剤形も、先行技術(WO03/015531)から当業者に既知である。錠剤コアは、好ましくは、2つの層、オピオイド含有層およびプッシュ層からなり、該プッシュ層が、染料を嫌悪剤として含有する。対応する記載は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0122】
本発明の他の好ましい実施形態において、本発明の剤形のサブユニット(X)が錠剤の形態であり、その縁面および、任意選択的に、2つの主要面の1つが、成分(c)および/または(d)および/または(f)を含有するバリヤー層(Z’)で被覆されている。
【0123】
本発明の剤形を配合するのに使用されるサブユニット(X)または(Y)および任意に存在する分離層(Z)および/またはバリヤー層(Z’)の補助物質は、本発明の剤形におけるそれらの配置、投与方法、ならびに、特定オピオイド、任意に存在する成分(a)および/または(b)および/または(e)、および成分(c)および/または(d)および/または(f)との関係において変化するが、活性成分の放出は24時間維持されることを当業者は理解する。必要な特性を有する材料は、各場合に、それ自体で当業者に既知である。
【0124】
本発明の剤形のサブユニット(Y)からの成分(c)および/または(d)および/または(f)の放出が、カバー、好ましくはバリヤー層を用いて防止される場合、該サブユニットは、本発明の剤形の硬度条件を満たす少なくとも1つのポリマー(C)を含有することを条件として、当業者に既知の標準的な材料からなってよい。
【0125】
対応するバリヤー層(Z’)が、成分(c)および/または(d)および/または(f)の放出を防止するように設けられていない場合は、サブユニットの材料を、サブユニット(Y)からの特定成分(c)および/または(d)の放出が実質的に不可能であるように選択すべきである。
【0126】
バリヤー層の製造にも好適として以下に記載する材料を、この目的に使用するのが好ましい。好ましい材料は、下記を含む群から選択される材料である。アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、グルカン、スクレログルカン、マンナン、キサンタン、好ましくはモル比が20:80のポリ[ビス(p−カルボキシフェノキシ)−プロパンおよびセバシン酸]のコポリマー(Polifeprosan 20(登録商標)の名称で市販されている)、カルボキシメチルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、(メタ)アクリル酸およびそのエステルに基づくポリマー、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ハロゲン化ポリビニル、ポリグリコリド、ポリシロキサンおよびポリウレタンならびにそれらのコポリマーまたは混合物。
【0127】
特に好適な材料は、下記を含む群から選択し得る。メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート(低、中または高分子量)、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、カルボキシメチルセルロース、セルローストリアセテート、ナトリウムセルローススルフェート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリイソブチルメタクリレート、ポリヘキシルメタクリレート、ポリイソデシルメタクリレート、ポリラウリルメタクリレート、ポリフェニルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリイソプロピルアクリレート、ポリイソブチルアクリレート、ポリオクタトデシル(polyoctatdecyl)アクリレート、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリビニルアセテートおよびポリビニルクロリド。
【0128】
特に好適なコポリマーは、下記を含む群から選択し得る。ブチルメタクリレートとイソブチルメタクリレートとのコポリマー、メチルビニルエーテルと高分子量のマレイン酸とのコポリマー、メチルビニルエーテルとマレイン酸モノエチルエステルとのコポリマー、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、およびビニルアルコールとビニルアセテートとのコポリマー。
【0129】
バリヤー層の配合に好適な他の材料は、デンプンを含むポリカプロラクトン(WO98/20073)、脂肪族ポリエステルアミド(DE19753534A1、DE19800698A1、EP0820698A1)、脂肪族および芳香族ポリエステルウレタン(DE19822979)、ポリヒドロキシアルカノエート、特に、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート、カゼイン(DE4309528)、ポリラクチドおよびコポリラクチド(EP0980894A1)。対応する記載は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0130】
前記材料は、当業者に既知の、好ましくは下記からなる群から選択される他の一般的な補助物質と任意選択的にブレンドし得る。グリセリルモノステアレート、半合成トリグリセリド誘導体、半合成グリセリド、水素化ヒマシ油、グリセリルパルミトステアレート、グリセリルベヘネート、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、タルカム、安息香酸ナトリウム、ホウ酸およびコロイダルシリカ、脂肪酸、置換トリグリセリド、グリセリド、ポリオキシアルキレングリコール、およびそれらの誘導体。
【0131】
本発明の剤形が分離層(Z’)を含む場合、該層は、被覆されていないサブユニット(Y)と同様に、バリヤー層に関して先に記載した材料からなるのが好ましい。特定のサブユニットからの、オピオイドおよび/またはアヘン剤または成分(c)および/または(d)の放出を、分離層の厚さによって調節し得ることを当業者は理解するであろう。
【0132】
本発明の剤形は、少なくとも24時間にわたる活性成分の徐放を示し、従って、1日1回の投与に好適である。
【0133】
[破壊強度の測定法]
ポリマーまたはワックスをそれぞれ成分(C)または成分(D)として使用し得るかを確認するために、ポリマーまたはワックスの軟化点に少なくとも対応する温度で、150Nの力を使用して、ポリマーまたはワックスをプレス成形して、直径10mmおよび高さ5mmのタブレットを形成し、ポリマーまたはワックスのDSCダイヤグラムを用いて測定する。この方法で製造したタブレットを使用して、European Pharmacopoeia 1997,page 143,144、方法番号2.9.8に公開されているタブレット破壊強度測定法に従って、下記の装置で破壊強度を測定する。測定に使用される装置は、「Zwick Z 2.5」材料試験器であり、Fmax=2.5kN、最大牽引(draw max.)1150mmであり、カラムおよびスピンドルを含み、クリアランスビハインド(clearance behind)100mm、試験速度0.1〜800mm/分、およびテストコントロールソフトウエアを含む機構を有する。測定は下記を使用して行った。ねじ込みインサート付き圧力ピストンおよびシリンダー(口径10mm)、力変換機(Fmax.1kN、直径=8mm、ISO 7500−1により10Nからクラス0.5、2Nからクラス1、DIN 55350−18により製造会社試験証明M、Zwick総力Fmax=1.45kN)(全ての装置は、Zwick GmbH & Co.KG.Ulm,Germanyより)、テスターの注文番号BTC−FR 2.5TH.D09、力変換機の注文番号BTC−LC 0050N.P01、センタリング装置の注文番号BO 70000 S06。
【0134】
特定の負荷において破壊に耐性であると考えられるタブレットは、破壊しなかったタブレットだけでなく、力の作用下に塑性変形を受けたと考えられるタブレットも包含する。
【0135】
本発明の剤形の破壊強度は、同じ測定法を使用して測定され、錠剤以外の剤形も試験される。
【0136】
本発明を実施例に関して下記に説明する。これらの説明は、例示するものにすぎず、本発明の一般的概念を限定するものではない。
【実施例1】
【0137】
a) オキシコドンを含有する乱用防止錠剤の製造
表1に列挙した量の、塩酸オキシコドン、ポリエチレンオキシド粉末、および遅延放出マトリックス材料としてのヒドロキシプロピルメチルセルロース(Metholose 90 SH 100 000)を、自由落下ミキサー(free-fall mixer)で混合した。ダイ、直径10mmのトップパンチおよびボトムパンチからなるタブレット成形器を、加熱室で90℃に加熱し、粉末混合物の600mg部分を、加熱した成形器によってプレス成形し、圧力を少なくとも15秒間維持した。
【0138】
【表1】

【0139】
錠剤の破壊強度を前記の方法を使用して測定する。500Nの力を適用した際に、破壊が生じなかった。錠剤は、ハンマーを使用して粉砕できず、乳棒および乳鉢を用いても粉砕できなかった。
【0140】
a)によって製造した錠剤からのインビトロ放出
塩酸オキシコドンの、a)によって製造した錠剤からのインビトロ放出を、European Pharmacopoeiaに記載されている方法によって、シンカー付き櫂形攪拌機で測定した。放出媒質の温度は37℃であり、攪拌機の回転速度は75min-1であった。使用した放出媒質は、pH6.8の腸液であった。ある時間において溶解媒質に放出された塩酸オキシコドンの量を、それぞれ分光測光法によって測定した。各時点における、塩酸オキシコドンの全量に対する放出量パーセントを、表2に示す。
【0141】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】図1は、タブレットの破壊強度の測定、特に、測定前および測定中に、この目的に使用されるタブレット(4)の調整装置(6)を示す。この目的のために、2つのニ部クランプ装置(two-part clamping device)の補助により、タブレット(4)を、力適用装置(図示せず)の上圧力板(1)と下圧力板(3)の間に保持し、該クランプ装置は、測定されるタブレットを収容しセンタリングするのに必要な間隔(5)が一旦設定されると、それぞれ上圧力板および下圧力板で堅く締め付けられる(図示せず)。間隔(5)は、ニ部クランプ装置を、それらが取り付けられている圧力板上で、各場合に、水平に外向きまたは内向きに動かすことによって、設定し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1日1回の投与のためにオピオイド徐放性を有する乱用防止経口剤形であって、乱用可能性を有する少なくとも1つのオピオイド(A)および/または生理的に許容可能なその化合物の1つと、少なくとも1つの合成または天然ポリマー(C)と、任意選択的に少なくとも1つの遅延放出マトリックス材料、任意選択的に少なくとも1つの遅延放出コーティング、任意選択的に少なくとも1つの生理的に許容可能な補助物質(B)と、任意選択的に少なくとも1つのワックス(D)とを含み、成分(C)または(D)がそれぞれ、少なくとも500Nの破壊強度を示し、成分(C)および任意選択的に(D)が、該剤形が少なくとも500Nの破壊強度を示すような量で存在することを特徴とする剤形。
【請求項2】
前記オピオイドが、オキシコドン、ヒドロモルホン、モルフィン、オキシモルホン、トラマドール、任意の所望混合物におけるそれらの立体異性体、それらのラセミ化合物、それらのエナンチオマー、それらのジアステレオマー、生理的に許容可能なそれらの化合物、好ましくは生理的に許容可能な塩、極めて特に好ましくは塩酸塩または硫酸塩またはサッカリン塩、およびそれらの溶媒化合物および誘導体、好ましくは、エステル、エーテルまたはアミドを含む群から選択される少なくとも1つのオピオイドであることを特徴とする請求項1に記載の剤形。
【請求項3】
存在する前記オピオイドが、(2R,3R)−1−ジメチルアミノ−3−(3−メトキシフェニル)−2−メチル−ペンタン−3−オール、(1RS,3RS,6RS)−6−ジメチルアミノメチル−1−(3−メトキシフェニル)−シクロヘキサン−1,3−ジオール、(1R,2R)−3−(2−ジメチルアミノメチル−シクロヘキシル)フェノール、生理的に許容可能なそれらの塩、好ましくは、塩酸塩、硫酸塩、サッカリン塩、生理的に許容可能なエナンチオマー、立体異性体、ジアステレオマーおよびラセミ化合物、および生理的に許容可能なそれらの誘導体、好ましくは、エーテル、エステルまたはアミドを含む群から選択される少なくとも1つのオピオイドであることを特徴とする請求項1に記載の剤形。
【請求項4】
錠剤の形態であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項5】
多粒子形態、好ましくは、マイクロタブレット、マイクロペレット、粒状体、球状体、ビーズまたはペレットの形態であり、任意選択的に錠剤にプレス成形されるかまたはカプセルに充填されていてもよいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項6】
前記ポリマー(C)が、ポリアルキレンオキシド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロリド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、それらのコポリマー、および前記ポリマーまたはポリマー種の少なくとも2つの混合物を含む群から選択される少なくとも1つのポリマーであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項7】
前記ポリアルキレンオキシドが、ポリメチレンオキシド、ポリエチレンオキシドおよび/またはポリプロピレンオキシドであることを特徴とする請求項6に記載の剤形。
【請求項8】
高分子量ポリエチレンオキシドが、ポリマー(C)として存在することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項9】
前記ポリマー(C)が、水溶性ポリマーまたは水膨潤性ポリマーであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項10】
前記ポリエチレンオキシド(C)が、少なくとも50万の分子量を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項11】
前記ポリエチレンオキシド(C)の分子量が、少なくとも100万であることを特徴とする請求項10に記載の剤形。
【請求項12】
前記ポリエチレンオキシド(C)の分子量が、100万〜1500万であることを特徴とする請求項10に記載の剤形。
【請求項13】
少なくとも60℃の軟化点を有する少なくとも1つの天然、半合成または合成ワックスが、ワックス(D)として存在することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項14】
前記ワックス(D)が、カルナウバワックスまたは蜜蝋であることを特徴とする請求項13に記載の剤形。
【請求項15】
ポリマー成分(C)を、剤形の全重量に対して、少なくとも20wt%、好ましくは35〜99.9wt%、特に好ましくは少なくとも50wt%、極めて特に好ましくは少なくとも60wt%の量で使用することを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項16】
活性成分が、遅延放出マトリックスに存在することを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項17】
成分(C)および/または成分(D)が、遅延放出マトリックス成分としても機能することを特徴とする請求項16に記載の剤形。
【請求項18】
少なくとも1つの補助物質(B)が、遅延放出マトリックス用の材料として機能することを特徴とする請求項1〜17のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項19】
コーティング、好ましくは遅延放出コーティングおよび/または風味遮蔽コーティングを含むことを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項20】
下記の付加的乱用防止成分(a)〜(f):
(a) 鼻管および/または咽頭を刺激する少なくとも1つの物質、
(b) 少なくとも1つの粘度上昇剤であって、該粘度上昇剤は、必要な最少量の水性液体を用いて、好ましくは剤形から得られる水性抽出物としてゲルを形成し、該ゲルは、さらなる量の水性液体への導入時に、好ましくは、視覚的に識別可能に維持される、粘度上昇剤、
(c) 乱用の可能性を有する活性成分の少なくとも1つの拮抗薬、
(d) 少なくとも1つの催吐剤、
(e) 嫌悪剤としての少なくとも1つの染料、
(f) 少なくとも1つの苦味物質
の少なくとも1つを、補助物質(B)として含むことを特徴とする請求項1〜19のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項21】
前記成分(a)の刺激物質が、焼灼感、かゆみ、くしゃみ衝動、分泌物形成の増加、またはこれらの刺激の少なくとも2つの組合せを生じることを特徴とする請求項20に記載の剤形。
【請求項22】
前記成分(a)の刺激物質が、少なくとも1つの辛味物質薬の1つ以上の成分に基づくことを特徴とする請求項20または請求項21に記載の剤形。
【請求項23】
前記辛味物質薬が、Allii sativi bulbus(ニンニク)、Asari rhizoma cum herba(アサルム根および葉)、Calami rhizoma(ショウブ根)、Capsici fructus(トウガラシ)、Capsici fructus acer(カイエンヌペッパー)、Curcumae longae rhizoma(ウコン根)、Curcumae xanthorrhizae rhizoma(ジャワウコン根)、Galangae rhizoma(ガランガ根)、Myristicae semen(ニクズク)、Piperis nigri fructus(コショウ)、Sinapis albae semen(シロガラシ種子)、Sinapis nigri semen(クロガラシ種子)、Zedoariae rhizoma(ツェドリア根)およびZingiberis rhizoma(ショウガ根)を含む群から選択される少なくとも1つの薬剤、特に好ましくは、Capsici fructus(トウガラシ)、Capsici fructus acer(カイエンヌペッパー)およびPiperis nigri fructus(コショウ)を含む群から選択される少なくとも1つの薬剤であることを特徴とする請求項22に記載の剤形。
【請求項24】
前記辛味物質薬の成分が、o−メトキシ(メチル)フェノール化合物、酸アミド化合物、マスタードオイルまたはスルフィド化合物として存在するか、またはそのような化合物から誘導されることを特徴とする請求項22または請求項23に記載の剤形。
【請求項25】
前記辛味物質薬の成分が、ミリスチシン、エレミシン、イソオイゲノール、β−アサロン、サフロール、ジンゲロール、キサントリゾール、カプサイシノイド、好ましくはカプサイシン、ピペリン、好ましくはトランス−ピペリン、グルコシノレート、好ましくは、不揮発性マスタードオイルに基づき、特に好ましくは、p−ヒドロキシベンジルマスタードオイル、メチルメルカプトマスタードオイルまたはメチルスルホニルマスタードオイルに基づき、およびこれらの成分から誘導される化合物を含む群から選択される少なくとも1つの成分であることを特徴とする請求項22〜24のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項26】
前記成分(b)が、11wt%カルボキシメチルセルロースナトリウムを含有する微結晶性セルロース(Avicel(登録商標)RC 591)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Blanose(登録商標)、CMC−Na C300P(登録商標)、Frimulsion BLC−5(登録商標)、Tylose C300 P(登録商標))、ポリアクリル酸(Carbopol(登録商標)980NF、Carbopol(登録商標)981)、イナゴマメ粉(Cesagum(登録商標)LA−200、Cesagum(登録商標)LID/150、Cesagum(登録商標)LN−1)、柑橘類果実またはリンゴからのペクチン(Cesapectin(登録商標)HM Medium Rapid Set)、ワックス様トウモロコシデンプン(C*Gel 04201(登録商標))、アルギン酸ナトリウム(Frimulsion ALG(E401)(登録商標))、グアール0粉(Frimulsion BM(登録商標)、Polygum 26/1−75(登録商標))、イオタカラゲナン(Frimulsion D021(登録商標))、カラヤガム、ゲランガム(Kelcogel F(登録商標)、Kelcogel LT100(登録商標))、ガラクトマンナン(Meyprogat 150(登録商標))、タラストーン粉(tara stone flour)(Polygum 43/1(登録商標))、アルギン酸プロピレングリコール(Protanal−Ester SD−LB(登録商標))、リンゴペクチン、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガカント、タラガム(Vidogum SP 200(登録商標))、発酵多糖ウェランガム(K1A96)、およびキサンタンガム(Xantural 180(登録商標))を含む群から選択される少なくとも1つの粘度上昇剤であることを特徴とする請求項20〜25のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項27】
前記成分(c)が、少なくとも1つのオピオイド拮抗薬であることを特徴とする請求項20〜26のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項28】
前記成分(d)催吐剤が、トコン(イペカック)根の1つ以上の成分に基づき、好ましくは、成分エメチンに基づき、および/またはアポモルヒネであることを特徴とする請求項20〜27のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項29】
前記成分(e)が、少なくとも1つの生理的に許容可能な染料であることを特徴とする請求項20〜28のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項30】
前記成分(f)が、芳香油、好ましくは、ハッカ油、ユーカリ油、苦扁桃油、メントールおよびそれらの混合物、果実芳香物質、好ましくは、レモン、オレンジ、ライム、グレープフルーツおよび少なくとも2つの成分を含むそれらの混合物からの芳香物質、安息香酸デナトニウム、および少なくとも2つの成分を含むそれらの混合物を含む群から選択される少なくとも1つの苦味物質であることを特徴とする請求項20〜29のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項31】
活性成分(A)が、好ましくは直接接触せずに、成分(c)および/または(d)および/または(f)から空間的に分離され、該活性成分(A)は少なくとも1つのサブユニット(X)に存在し、成分(c)および/または(d)および/または(f)は少なくとも1つのサブユニット(Y)に存在し、剤形が正しく投与された際に、サブユニット(Y)からの成分(c)および/または(d)および/または(f)は、体内で、または摂取時に、その作用を示さないことを特徴とする請求項20〜30のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項32】
請求項1〜31のいずれか一項に記載の剤形を製造する方法であって、
(1) 成分(A)と、(C)と、任意選択的に(B)と、任意選択的に(D)と、任意選択的に遅延放出マトリックス化合物とを混合し、任意選択的に存在する成分(a)〜(f)を、必要であれば、成分(C)と任意選択的に(D)の添加とともに別々に混合するステップと、
(2) 任意選択的にペレット化した後に、得られた混合物を、力の適用によって剤形に形成するステップと、かつ直前にまたは同時に熱に暴露するステップと、任意選択的に、遅延放出コーティングを備えるステップと
を特徴とする方法。
【請求項33】
ペレット化を溶融法によって行うことを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
ペレット化を湿式ペレット化によって行うことを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項35】
請求項1〜31のいずれか一項に記載の剤形の製造方法であって、
(1) 成分(A)と、(C)と、任意選択的に(B)と、任意選択的に(D)と、任意選択的に遅延放出マトリックス化合物と、任意選択的に存在する成分(a)〜(f)とを含有する混合物を、別々の混合物として、力の適用によって成形品に形成するステップと、
(2) 得られた成形品を、任意選択的に個別化するステップと、任意選択的にそれぞれ大きさによって等級分けするステップと、
(3) 成分(C)の少なくとも軟化点にまで加熱後または加熱中に、成形品が少なくとも500Nの破壊硬度を示すまで成形品を力に暴露するステップと、
(4) 任意選択的に、コーティング、好ましくは、遅延放出コーティングおよび/または風味遮蔽コーティングを与えるステップと、成形品を任意選択的に再び混合するステップと
を特徴とする方法。
【請求項36】
請求項32〜35の1つ以上に記載の方法によって得られる剤形。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2008−504327(P2008−504327A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518528(P2007−518528)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【国際出願番号】PCT/EP2005/006984
【国際公開番号】WO2006/002884
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(506003624)グリューネンタール・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (13)
【Fターム(参考)】