乳光の低減を伴う方法および組成物
製剤のイオン強度を修飾することによって、タンパク質製剤の乳白色外観を低減するための方法、ならびに乳光が減少した、濃縮タンパク質の組成物、例えば、医薬組成物が開示されている。選択された工程で塩濃度をモニターおよび/または低減する精製方法も開示されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれている、2006年10月12日に出願された米国出願第60/851,651号に対して優先権を主張する。
【0002】
本発明は、タンパク質製剤の乳光を低減するための方法、ならびに乳光が減少した濃縮タンパク質製剤の組成物、例えば医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
抗体を含めたタンパク質は、過去20年間、薬物療法において使用されてきた。高治療用量を達成するために、抗体は、高濃度(約10mg/mlから100mg/ml以上)で一般に製剤化される(Brekke,O.H.およびSandlie,I.(2003)Nat.Rev.Drug Discov.2:52〜62)。ある特定のタンパク質投与様式では、高度に濃縮されたタンパク質製剤が一般に必要とされる。例えば、治療抗体の皮下投与は、約100mg/ml超の濃度で処方されることが多い。これらの濃縮タンパク質製剤の一部は、高濃度で乳白色外観、すなわち、多くの場合乳光と呼ばれる性質を持つようになる(Schellekens,H.(2002)Nat.Rev.Drug Discov.1:457〜462)。
【0004】
濃縮タンパク質溶液における乳白色外観は、とりわけ、タンパク質濃度、レイリー散乱におけるその効果、温度、溶質−溶質相互作用の性質を含めた、様々な要因から生じ得る。タンパク質が乳光の影響を受けやすい場合、乳白色外観は、タンパク質濃度が増加するにつれて、通常増大する。乳白色溶液の凝集タンパク質溶液との類似性により、医薬製剤において、タンパク質活性、および免疫原性をもたらす潜在性を喪失することに関する懸念が生じている(Pinckardら(1967)Clin Exp.Immunol.2:331〜340;Robbinsら(1987)Diabetes 36:838〜845;Clelandら(1993)Crit.Rev.Therapeutic Drug Carrier Systems 10:307〜377)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【特許文献1】Brekke,O.H.ら、Nat.Rev.Drug Discov.2:52〜62(2003)
【特許文献2】Schellekens,H.、Nat.Rev.Drug Discov.1:457〜462(2002)
【特許文献3】Pinckardら、Clin Exp.Immunol.2:331〜340(1967)
【特許文献4】Robbinsら、Diabetes 36:838〜845(1987)
【特許文献5】Clelandら、Crit.Rev.Therapeutic Drug Carrier Systems 10:307〜377(1993)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、乳光が低減した、高度に濃縮された治療タンパク質、例えば、治療抗体の製剤を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、抗体製剤中の塩、例えば、塩化ナトリウムの濃度を低減することにより、製剤の乳白色外観および/または製剤中の高分子量種の形成が低減するという発見に、少なくともある程度基づく。したがって、タンパク質、例えば抗体の製剤の乳白色外観を、例えば、製剤のイオン強度を修飾することによって低減する方法、ならびに乳光が減少した濃縮タンパク質の組成物、例えば、医薬組成物が開示されている。精製プロセスにおいて選択された工程で、塩濃度(複数も)をモニターおよび/または低減する精製方法も開示されている。
【0008】
したがって、一態様では、本発明は、タンパク質製剤、例えば、抗体製剤(例えば、タンパク質、例えば抗体を含む溶液)の乳光を減少させ、またはこの製剤中の高分子量種の量を低減する方法を特徴とする。この方法は、タンパク質製剤の乳白色外観、および/またはこの製剤中の高分子量種の量が低減および/または排除されるように、製剤のイオン強度を修飾する工程、例えば、減少または増大させる工程を含む。実施形態では、タンパク質製剤の乳白色外観、および/またはこの製剤中の高分子量種の量が低減および/または排除されるように、タンパク質製剤中のイオン強度とタンパク質濃度、例えば抗体濃度の比を修飾しまたは変化させ、例えば、減少または増大させる。実施形態では、タンパク質製剤は、医薬として有効な濃度、例えば、抗体製剤について、約5、10、25、50、75、100、125、150mg/mlで、イオン強度を低減する前に、望まれない乳光および/または高分子量種を示す(例えば、約1、2、3、4もしくは5、もしくはそれ以上の欧州薬局方基準を超える濁度、および/または約2%、3%、5%、10%、15%、20%、30%、もしくはそれ以上のタンパク質製剤の質量百分率に相当する高分子量種の割合)。
【0009】
実施形態では、製剤中のタンパク質は、本明細書で以下により詳細に説明するように、分泌タンパク質、例えば、抗体、抗体の抗原結合性断片、結合ドメイン−免疫グロブリン融合物(例えば、SMIP(商標))、可溶性受容体、受容体融合物、サイトカイン、成長因子、酵素、または凝固因子である。タンパク質が抗体である実施形態では、抗体は、少なくとも1本、好ましくは2本の全長重鎖、および少なくとも1本、好ましくは2本の軽鎖を含むことができる。本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、抗原結合性断片などの抗体断片または変異体分子(例えば、Fab、F(ab’)2、Fv、単鎖Fv断片、および重鎖断片(例えば、ラクダVHH))を含む。抗体は、モノクローナルまたは単一特異性抗体とすることができる。抗体は、ヒト、ヒト化、キメラ、CDR移植、またはin vitro生成抗体とすることもできる。さらに他の実施形態では、抗体は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4から選択される重鎖定常領域を有する。別の実施形態では、抗体は、例えば、κまたはλから選択される軽鎖を有する。一実施形態では、定常領域を変化させ、例えば突然変異させて抗体の性質を修飾する(例えば、Fc受容体結合性、抗体のグリコシル化、システイン残基数、エフェクター細胞機能、または補体機能のうちの1つまたは複数を増大または減少させる)。一般に、抗体は、所定の抗原、例えば、障害、例えば、神経変性障害、代謝性障害、炎症性障害、自己免疫障害および/または悪性障害と関連する抗原に特異的に結合する。本発明の方法において使用することができる例示的な抗体として、それだけに限らないが、Aβペプチド、インターロイキン−12(IL−12)、インターロイキン−13(IL−13)、インターロイキン−22(IL−22)、5T4、ならびに成長および分化因子−8(GDF−8)に対する抗体が挙げられる。実施形態では、抗体は、抗GDF−8抗体、例えば、Myo−029である。
【0010】
実施形態では、タンパク質は、より高いタンパク質および/または塩の濃度で自己凝集し、例えば、高塩製剤(例えば、約50から200mMの塩濃度(例えば、約100から150mMの塩)を有する製剤)において、負の第2ビリアル係数を有する。例えば、タンパク質は、例えば、150mMの塩化ナトリウムを含有する製剤において、約−1×10−1から−1、約−1×10−2から−10×10−2、約−1×10−3から−10×10−3、約−1×10−4から−10×10−4、約−1×10−5から−10×10−5mol−mg/g2の第2ビリアル係数を有する。他の実施形態では、タンパク質は、例えば、150mMの塩化ナトリウムを含有する製剤において、正のビリアル係数、例えば、約1×10−5から10×10−5、約1×10−4から10×10−4、約1×10−3から10×10−3、約1×10−2から10×10−2mol−mg/g2を有する。タンパク質が抗体またはその断片である実施形態では、抗体は、本発明の方法を実行する前および/または実行した後に、約0.1から約1,000mg/ml、一般に、約0.5から約500、約1から400、約5から300、約10から250、約15から200、約20から150、約50から100mg/mlの濃度で存在する。
【0011】
実施形態では、タンパク質製剤のイオン強度は修飾される、例えば、製剤中に存在する塩の濃度を減少させる、および/または製剤中に使用された塩を、より少ない乳光しか誘発しない塩と置換することによって低減される。製剤中の塩は、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムまたはリン酸ナトリウムのうちの1つまたは複数から選択することができる。製剤中の塩濃度は、より低濃度、例えば、乳白色製剤中の濃度の約2、3、5、10、または100分の1にすることができる。例えば、タンパク質製剤中の塩(例えば、塩化ナトリウム)濃度は、約300mM未満、一般に、約200、150、100、75、50、40、30、25、20、15、10、5、4、3、2、1mM未満、または0mMに低減することができる。タンパク質製剤中の塩濃度は、例えば、限外濾過または透析のうちの1つまたは複数から選択される、1つまたは複数の濾過方法を適用することによって修飾する、例えば低減することができる。あるいは、またはさらに、タンパク質製剤中のイオン強度は、例えば、1つまたは複数の第1の塩、例えば、高い乳光誘発物質を、1つまたは複数の第2の塩、例えば、より低い乳光誘発物質と置換することによって修飾され、例えば、減少または増大される。高乳光誘発物質から低乳光誘発物質の以下の順序で、抗体製剤中の乳光誘発のレベルによって、以下の例示的な塩が位置づけられた:塩化ナトリウム(NaCl)、リン酸ナトリウム(NaHPO4)、塩化マグネシウム(MgCl2)および塩化カルシウム(CaCl2)。したがって、実施形態では、第1の塩はNaClであり、例えば、NaHPO4、MgCl2、またはCaCl2のうちの1つまたは複数から選択される第2の塩と置換され、第1の塩はNaHPO4であり、例えば、MgCl2またはCaCl2のうちの1つまたは複数から選択される第2の塩と置換され、第1の塩はMgCl2であり、第2の塩であるCaCl2と置換される。実施形態では、例えば、透析または限外濾過によって第1の塩を除去し、タンパク質製剤に第2の塩を加えることによって、第1の塩が、タンパク質製剤中で第2の塩によって置換される。実施形態では、第2の塩の濃度は、第1の塩の濃度より高い。実施形態では、第2の塩の濃度は、第1の塩の濃度に等しい。他の実施形態では、第2の塩の濃度は、第1の塩の濃度より低い。
【0012】
他の実施形態では、タンパク質製剤のイオン強度は、例えば、使用された高乳光誘発物質塩の濃度を減少させることによって、タンパク質の製造および/または精製プロセス中に修飾され、例えば、減少または増大される。本実施形態は、(i)(所望により)タンパク質製剤が、1つまたは複数のタンパク質濃度および/または塩濃度で、乳白色溶液を形成するかどうかを評価する工程;(ii)(所望により)タンパク質製剤に塩濃度を提供する工程;および/または(iii)タンパク質製剤のイオン強度を修飾し、例えば低減する工程(例えば、タンパク質製剤中のイオン強度とタンパク質濃度の比を修飾する工程)を含む。工程(ii)および/または(iii)は、必要な場合、任意の順序で繰り返す、および/または実施することができる。工程(i)は、例えば、本明細書の実施例に記載されているように、様々な濃度のタンパク質および/または塩を含有する1つまたは複数の試料中の乳光および/または高分子量種の存在を検出することによって実施することができる。タンパク質製剤のイオン強度は、例えば、本明細書に記載される1つまたは複数の濾過方法を適用することによって修飾し、例えば低減することができる。あるいは、またはさらに、タンパク質製剤のイオン強度は、タンパク質の製造および/または精製プロセスにおける、1つまたは複数の工程のイオン強度、例えば塩濃度を低減することによって減少させることができる。タンパク質の製造および/または精製プロセスにおけるイオン強度のそのような低減は、1つまたは複数の工程で使用された塩濃度を減少させることによって行うことができる。他の実施形態では、イオン強度は、1つまたは複数の工程で使用された塩を、低乳光誘発物質と置換することによって修飾される。ある特定の実施形態では、製剤中のタンパク質は、例えば、細胞結合タンパク質、可溶性タンパク質、または分泌タンパク質として組換えで作製される、例えば、組換え技術を使用して発現される。そのような実施形態では、タンパク質は、組換え宿主から発現され、分離される(例えば、培地中に分泌され、例えば、遠心分離または濾過によって分離される)。分離されたタンパク質は、それだけに限らないが、プロテインAクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ダイアフィルトレーション、限外濾過、ウイルス除去濾過(viral removal filtration)、陰イオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよび/または陽イオン交換クロマトグラフィーを含めた、当技術分野で既知の方法によってさらに精製される。タンパク質は、さらに凍結乾燥し、および/または緩衝溶液中で復元することができる。本発明の方法は、前述の工程の1つまたは複数において使用される溶液(例えば、洗浄、添加、溶出、復元溶液)のイオン強度、例えば塩濃度を修飾し、例えば低減する工程を含む。
【0013】
理論によって束縛されることなく、限外濾過および透析などの濾過方法を適用した後でも、残留量の塩がタンパク質製剤中に存在する場合があると考えられる。そのような残留塩量は、「ドナン効果」として当技術分野で特徴づけられている(Miro,Mら(2004)Analytica Chimica Acta 512(2):311〜317)。そのような残留塩量は、特に製剤中のタンパク質が自己凝集する傾向を有する、例えば、負のビリアル係数を有する場合、乳白色外観を有するタンパク質製剤に至る場合があるであろう。したがって、本明細書に開示される方法を使用してイオン濃度を修飾する工程は、タンパク質精製技法に対して広い適応性を有することができる。
【0014】
実施形態では、タンパク質製剤の乳光の低減は、溶液の濁度を評価することによって検出される。例えば、タンパク質製剤の濁度は、約5、4、3、2、1またはそれ未満の欧州薬局方基準に低減される。
【0015】
他の実施形態では、タンパク質製剤の乳光の低減は、タンパク質の第2ビリアル係数の変化を評価することによって判定される。例えば、タンパク質の第2ビリアル係数の、2、3、5、10または100倍の変化、例えば、増加または減少が、タンパク質製剤のイオン強度を修飾し、例えば低減した後に検出される。例えば、ビリアル係数は、約1×10−2と1×10−3の間の任意の値から、約1×10−3と1×10−4の間の任意の値に変化し、例えば減少する。
【0016】
さらに他の実施形態では、タンパク質製剤の乳光の低減は、高分子量種の量を求めることによって検出される。高分子量種は、一般に約104、より一般には、約105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、またはそれ以上の分子量を有する。製剤中のタンパク質種の重量平均分子量は、例えば、以下の実施例に記載されるような、光散乱法、例えば、静的および動的光散乱、非対称フローフィールドフローフラクショネーション、またはSEC−HPLCのうちの1つまたは複数を使用して検出することができる。実施形態では、2、3、4、5、6、7、8、9、10、50、または100分の1になる高分子量種は、タンパク質製剤中の乳光の低減を示す。例えば、非凝集タンパク質の質量百分率が、全タンパク質質量の約60〜70%から約95%以上に増加すると同時に、高分子量種の質量百分率が、全タンパク質質量の約30〜40%から約5%未満に減少した(動的光散乱によって検出した場合)。
【0017】
別の態様では、本発明は、タンパク質、例えば抗体の製剤(例えば、本明細書に記載されるような、タンパク質、例えば抗体の製剤)中の高分子量種の形成を減少させる、および/または高分子量種の量を低減する方法を特徴とする。この方法は、タンパク質製剤中の高分子量種の量が低減および/または排除されるように、製剤のイオン強度を修飾する、例えば減少または増加させる工程(例えば、タンパク質製剤中のイオン強度とタンパク質濃度の比を修飾する工程)を含む。
【0018】
実施形態では、高分子量種は、タンパク質凝集体であり、これは、タンパク質および/または塩濃度を低減すると、実質的に可逆的に解離することができる。高分子量種は、一般に約104kDa、より一般には、約105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013kDa、またはそれ以上の分子量を有する。製剤中のタンパク質種の重量平均分子量は、例えば、以下の実施例に記載されるような、光散乱法、例えば、静的および動的光散乱、非対称フローフィールドフローフラクショネーション、またはSEC−HPLCのうちの1つまたは複数を使用して検出することができる。実施形態では、2、3、4、5、6、7、8、9、10、50、または100分の1になる高分子量種は、タンパク質製剤中の乳光の低減を示す。例えば、非凝集タンパク質の質量百分率が、全タンパク質質量の約60〜70%から約95%以上に増加すると同時に、高分子量種の質量百分率が、全タンパク質質量の約30〜40%から約5%未満に減少する(動的光散乱によって検出した場合)。
【0019】
実施形態では、製剤のイオン強度の減少は、本明細書に開示される方法によって行われる。
【0020】
別の態様では、本発明は、タンパク質、例えば抗体の製剤(例えば、本明細書に記載されるような、タンパク質、例えば抗体の製剤)の製造および/または精製プロセスの効率を改善する方法を特徴とする。この方法は、(i)(所望により)タンパク質製剤が、1つまたは複数のタンパク質濃度および/または塩濃度で、乳白色溶液を形成するかどうかを評価する工程;(ii)タンパク質製剤中の高分子量種の量が低減および/または排除されるように、製剤のイオン強度を修飾する、例えば減少させる工程を含む。工程(i)は、例えば、本明細書の実施例に記載されているように、様々な濃度のタンパク質および/または塩を含有する1つまたは複数の試料中の乳光および/または高分子量種の存在を検出することによって実施することができる。タンパク質製剤のイオン強度は、例えば、本明細書に記載される1つまたは複数の濾過方法を適用する、例えば、本明細書に記載されるように、タンパク質製剤中に使用された塩を、低乳光誘発物質と置換する、および/または例えば、本明細書に記載されるように、タンパク質の製造および/もしくは精製プロセスにおける、1つまたは複数の工程のイオン強度を低減することによって修飾し、例えば低減することができる。
【0021】
さらに別の態様では、本発明は、例えば、抗体を作製するプロセスにおいて使用するための塩または塩濃度を選択して、抗体の作製を改善する方法を特徴とする。この方法は、(i)抗体溶液を回収する工程(例えば、マトリックスから抗体を溶出する工程、透析された溶液または他の濾液を回収する工程、および/または乾燥製剤、例えば、凍結乾燥または乾燥した製剤を、第1のイオン強度、例えば第1の塩濃度を有する第1の溶液で可溶化する工程)、(ii)抗体溶液中の乳光および/または高分子量種の存在のレベルを評価する工程であって、(a)乳光および/もしくは高分子量種のレベルが、所定レベル以下である場合、抗体製品、例えば、抗体溶液を含む医薬組成物において使用するために、前記抗体溶液を選択し、または(b)乳光および/もしくは高分子量種のレベルが、所定レベルより高い場合、第2の、例えば、より低いイオン強度(例えば、第2の、例えば、より低い塩濃度)を有する第2の溶液を選択する工程を含む。抗体を含有する第2の溶液中の乳光および/または高分子量種の存在のレベルは、必要な場合評価することができ、乳光のレベルが所定レベル(または所定レベル未満)に到達するまで、追加の溶液を加えることができる。
【0022】
実施形態では、抗体溶液は、それだけに限らないが、プロテインAクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ダイアフィルトレーション、限外濾過、ウイルス除去濾過、陰イオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよび/または陽イオン交換クロマトグラフィーを含めた、当技術分野で既知の1つまたは複数のタンパク質精製方法から回収される。タンパク質は、さらに凍結乾燥し、および/または緩衝溶液中で復元することができる。
【0023】
実施形態では、抗体(第1、第2および追加の)溶液の所定レベルは、医薬として有効な濃度、例えば、抗体製剤について約5、10、25、50、75、100、125、または150mg/mlで、約1、2、3、4、5もしくはそれ以上の欧州薬局方基準よりほぼ大きい、一般に約3の濁度値、および/または1%、2%、3%、5%、10%、15%、20%、30%もしくはそれ以上のタンパク質製剤の質量百分率、一般に約2%への高分子量種の増加である。
【0024】
別の態様では、本発明は、抗体に結合した残留塩濃度の量が、抗体が徹底的に透析された後、例えば、0mMの塩で透析された後に見られる量未満である、抗体精製方法または抗体製剤を特徴とする。
【0025】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載されるようなタンパク質、例えば、抗体製剤が乳白色外観を有する性向を判定する方法を特徴とする。この方法は、(i)(所望により)例えば、表面タンパク質電荷および/もしくは第2ビリアル係数を求めることによって、タンパク質を自己凝集する傾向を有すると認定する工程、ならびに/または(ii)溶液中にタンパク質を含有する1つもしくは複数の試料中の、タンパク質濃度および/もしくは塩濃度を増加および/もしくは減少させた後の、それぞれ高分子量種の形成および/もしくは消失を検出する工程を含む。塩濃度および/またはタンパク質濃度を増加させた後の、負のビリアル係数および/または高分子量種の増加により、製剤中のタンパク質が乳白色外観を有する性向の増大が示される。
【0026】
さらに別の態様では、本発明は、タンパク質、例えば抗体の試料の乳光を評価する方法を特徴とする。この方法は、タンパク質、例えば抗体の試料を提供する工程;1つまたは複数(例えば、少なくとも2つ、3つまたはそれ以上)の塩、例えばNaClの濃度で、濁度および/または高分子量種の存在を求める工程;1つまたは複数の塩、例えばNaClの濃度での濁度および/または高分子量種の存在の関数として、タンパク質、例えば抗体の試料中の乳光レベルについて報告する工程を含む。
【0027】
他の態様では、乳光が低減した、タンパク質、例えば抗体の製剤(ならびに本明細書に開示されるタンパク質製剤を含む、医薬組成物および/または製剤)も、本発明の範囲内である。実施形態では、タンパク質製剤は、本明細書で説明される方法によって作製される。
【0028】
他の実施形態では、タンパク質製剤は、1つまたは複数の高分子量種の除去、例えば、濾過または遠心分離工程の前に、高分子量種と比較して、少なくとも、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の質量百分率の非凝集種を含む(例えば、動的光散乱によって検出される場合)。実施形態では、タンパク質製剤のイオン強度の修飾し、例えば減少により、高分子量種と比較して、2、3、4、5、6、7、8、9、10、50または100倍、非凝集タンパク質の割合が増加する。
【0029】
さらに別の態様では、本発明は、約50、40、30、20、10、5、または1mM未満の塩、例えばNaClにおいて、少なくとも約50、75、100、125、または150mg/mlの濃度で、抗体、例えば、ヒトまたはヒト化抗体を含む、医薬上許容される抗体製剤を特徴とする。
【0030】
別の態様では、本発明は、抗体製剤を提供する方法であって、(i)1つまたは複数の高分子量種の除去、例えば、濾過または遠心分離工程の前に、少なくとも、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の質量百分率の非凝集種を有する、例えばヒトまたはヒト化抗体の抗体溶液を提供する工程、(ii)1つまたは複数の精製工程を実施することによって、中間体抗体溶液を提供する工程、および(iii)この中間体溶液を処理することによって、少なくとも約50から150mg/mlの濃度、および約5、4、3、2、1未満、またはそれ未満の欧州薬局方基準の濁度を有する抗体製剤を提供する工程を含む方法を特徴とする。
【0031】
他の態様、特徴、および利点は、それらの好ましい実施の説明および特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】漸増NaCl濃度に曝された抗体M1(本明細書では「Myo−029」とも呼ばれる)溶液の画像である(視覚的に認知できる乳光の増大を示している)。
【図2】0mMのNaClおよび100mMのNaCl中の抗体M1溶液についての、動的光散乱のプロットを示すグラフである。
【図3】100mMのNaCl中の抗体M1溶液についての、非対称フローフィールドフローフラクショネーションのプロットを示すグラフである。
【図4】100mMのNaCl中の抗体M1溶液についてのSEC−HPLCクロマトグラフを示すグラフである。
【図5】0mMのNaClから100mMのNaClまで、および0mMのNaClに戻って透析された抗体M1溶液の画像である(塩濃度の変化とともに、明白に可逆的な乳光を示している)。
【図6】乳白色種の可逆的形成を示す、抗体M1溶液の動的光散乱のプロットを示すグラフである:(a)0mMのNaClから透析された、100mMのNaCl、および(b)100mMのNaClから透析された0mMのNaCl。
【図7】漸増NaCl濃度での抗体M2溶液の画像である(視覚的に認知できる乳光の増大がないことを示している)。
【図8】0mMのNaClおよび150mMのNaCl中の抗体M2溶液についての、動的光散乱のプロットを示すグラフである。
【図9】0mMのNaClおよび150mMのNaCl中の抗体M3溶液についての動的光散乱のプロットを示すグラフである。
【図10】100mMのNaClでの、抗体M1についての第2ビリアル係数のプロットを示すグラフである。
【図11】100mMのNaClでの、抗体M2についての第2ビリアル係数のプロットを示すグラフである。
【図12】1時間後の乳光を示す、様々な塩を含有する抗体M1溶液の画像である。
【図13】2週間後の乳光を示す、様々な塩を含有する抗体M1溶液の画像である。
【図14】様々な塩を含有する抗体M1溶液についての、OD400nm対温度サイクル数のプロットを示すグラフである。
【図15】様々な塩を含有する抗体M1溶液についての、高分子量の百分率対塩濃度のプロットを示すグラフである。
【図16】様々な塩を含有する抗体M1溶液についての、OD400nm対塩濃度のプロットを示すグラフである。
【図17】図16に示したプロットを拡大した領域を示すグラフである。
【図18】OD400nm対20mMのCaCl2中の抗体M1濃度のプロットを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本願は、製剤のイオン強度を修飾することによって、タンパク質製剤の乳白色外観を低減する方法、ならびに乳光が減少した濃縮タンパク質の組成物、例えば医薬組成物を開示する。選択された工程で塩濃度をモニターおよび/または低減する精製方法も開示されている。
【0034】
一実施形態では、3つの抗体、すなわち、抗体M1(本明細書では「Myo−029」とも呼ばれる)、抗体M2、および抗体M3について、塩濃度、すなわちイオン強度の、濃縮抗体製剤の乳白色外観への影響が評価された。添付した実施例により詳細に説明されるように、すべての3つの抗体は、pH6.0のちょうど10mMのヒスチジン中で、極端に大きな種を比較的少量しか含有していないことが判明した。この大きな種は、大きすぎてSEC−HPLCカラムを使用して分離することができなかった。抗体M1について、抗体製剤中の塩化ナトリウム量を増加させることによってイオン強度を増大させることにより、乳光、ならびに液液相分離の出現が増大する(例えば、図1〜4を参照されたい)。抗体M1について図5〜6で示したように、この乳白色外観は、塩を除去すると可逆的になる。非対称フローフィールドフローフラクショネーション(aFFFF)を使用して、抗体M1について大きな種が観察され、これは、後に動的光散乱法を使用して確認された(図2を参照されたい)。抗体M1と比較して、抗体M2とM3は、目視検査によって検出可能な乳光の著しい増大を示さなかったが(例えば、図7を参照されたい)、光散乱法を使用して、両方の抗体について高分子量種が検出された(図8および9に示した)。
【0035】
抗体M1について計算された負のビリアル係数は、抗体M3と抗体M2(両方とも正のビリアル係数を有する)と比較して、抗体M1の凝集/会合傾向と一致する(図10を図11と比較されたい)。
【0036】
本明細書に示される結果は、研究した抗体の乳白色外観は、主に可逆的自己会合によるものであることを示し、これは、イオン強度を増大させることによってさらに誘発される。したがって、本発明によって開示されるように、濃縮抗体製剤(特に、凝集する傾向を有するもの)の乳白色外観を低減するためには、抗体製剤のイオン強度は、製剤から減少され、および/または処理方法において制限されるべきである。
【0037】
本発明をより容易に理解することができるように、ある特定の用語を最初に定義する。追加の定義は、詳細な説明の全体にわたって示される。
【0038】
用語「乳光」または「乳白色外観」は、溶液、例えばタンパク質製剤中で検出される濁度の、この溶液中の1つまたは複数の成分の濃度、例えば、タンパク質濃度および/または塩濃度の関数としての程度を指す。濁度の程度は、既知の濁度の懸濁液を使用して作成される標準曲線を参照して計算することができる。医薬組成物についての濁度の程度を求めるための参照基準は、欧州薬局方基準(European Pharmacopoeia、4版、Directorate for the Quality of Medicine of the Council of Europe(EDQM)、Strasbourg、France)に基づくことができる。欧州薬局方基準によれば、透明溶液は、欧州薬局方基準による約3の濁度を有する参照懸濁液未満またはこれに等しい濁度を有するものとして定義される。比濁分析の濁度測定により、レイリー散乱を検出することができ、これは一般に、会合または非理想効果のない状態で、濃度とともに直線的に変化する。
【0039】
例えば、理想的な溶液は、以下の式と一致して挙動する:
【0040】
【数1】
(式中、Mは分子量であり、Kは定数であり、Rθはレイリー比(いくつかの実験的パラメーターを合わせる)であり、Cは濃度である)。一方、非理想的な溶液は、以下の式を使用して記述することができる:
【0041】
【数2】
(式中、Bは第2ビリアル係数である)。Mを得るために、KC/Rθをゼロ角度およびゼロ濃度に外挿する。ジムプロットにより、KC/Rθを縦軸に配置し、sin2(θ/2)+kC(式中、kは、任意定数である)を横軸に配置する。したがって、ジムプロットにより、KC/Rθのゼロ角度とゼロ濃度の両方の外挿を同じグラフ上に作成することが可能になる。このジムプロットで、MとBはそれぞれ、ゼロ角度の線の切片と傾きである。
【0042】
用語「第2ビリアル係数」は、排除体積効果と分子間相互作用の尺度を指すことが当技術分野で認知されている(Tessier,P.M.ら(2003)Current Opinion in Biotechnology 14(5):512〜516)。正の第2ビリアル係数は、排除体積効果と分子間反発的相互作用の両方を一般に示す。対照的に、負の第2ビリアル係数は、誘引性分子間相互作用を一般に示す。これらの分子内および分子間相互作用の平衡により、第2ビリアル係数の符号と大きさが決まる。
【0043】
用語「イオン強度」は、溶液中のイオン濃度を指す。「I」をイオン強度とすると
【0044】
【数3】
(式中、ciはイオンiのモル濃度であり、ziはそのイオンの電荷であり、和は、溶液中のすべてのイオンにわたってとられる)である。(IUPAC Compendium of Chemical Terminology、2版(1997)。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「タンパク質」は、ユニットとして機能することができる1つまたは複数のポリペプチドを指す。本明細書で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合によって一緒に連結した、アミノ酸の連続鎖を指す。この用語「ポリペプチド」は、任意の長さのアミノ酸鎖を指すのに使用されるが、当業者は、この用語は、非常に長い鎖に制限されず、ペプチド結合によって一緒に連結した2個のアミノ酸を含む、最小の鎖も指すことができることを理解するであろう。単一のポリペプチドがユニットとして機能することができる場合、用語「ポリペプチド」と「タンパク質」は、互換的に使用することができる。このタンパク質とポリペプチドという用語には、以下により詳細に説明されるように、抗体、受容体融合物、SMIP(商標)、成長因子、サイトカイン、凝固因子および酵素が含まれる。
【0046】
用語「抗体」は、任意の免疫グロブリンまたはその断片を指し、抗原結合部位を含む任意のペプチドまたはポリペプチドを包含する。この用語には、それだけに限らないが、ポリクローナル、モノクローナル、単一特異性、多特異性、二重特異性、ヒト化、脱免疫化、ヒト、ラクダ、げっ歯類、単鎖、キメラ、合成、組換え、ハイブリッド、突然変異、移植、およびin vitro生成抗体が含まれる。この用語「抗体」には、抗体断片および変異体分子、例えば、Fab、F(ab’)2、Fv、scFv、Fd、dAb、VHHなど、ならびに抗体結合機能を保持する他の抗体断片および変異体分子も含まれる。一般に、そのような断片は、抗原結合ドメインを含む。
【0047】
用語「タンパク質製剤」は、製剤のイオン強度を増大させると高分子量種を形成することができる、溶液中に少なくとも1つのタンパク質、例えば抗体を含有する任意の組成物を指す。タンパク質製剤は、同じ、または異なるタンパク質、例えば異なる結合特異性を有する抗体を含有することができる。
【0048】
用語「高分子量種」は、少なくとも2つのタンパク質、例えば抗体の会合物を指す。実施形態では、タンパク質会合により、単量体タンパク質の高次の凝集物が形成される。この会合は、非共有結合性(例えば、静電気的、ファンデルワールス)タンパク質−タンパク質相互作用の結果として生じ得る。この会合は、タンパク質製剤のイオン強度を低減すると、一般に可逆的になる。タンパク質は、同じ、または異なる、例えば異なる結合特異性を有する抗体とすることができる。高分子量種は、一般に約104、より一般には約105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、またはそれ以上の分子量を有する。
【0049】
高分子量種を形成するためのタンパク質の凝集は、それだけに限らないが、本明細書でより詳細に説明される、光学濃度、非対称フローフィールドフローフラクショネーション、SEC−HPLC、静的光散乱、および動的光散乱を含めた、いくつかの分析技法を使用してモニターすることができる。
【0050】
タンパク質試料の濁度は、光学濃度(特定波長での光の吸光度)として測定することができる。光学濃度測定は、分光光度法を使用して(例えば、400nmの波長でSpectraMax UV−Visを使用して)行うことができる。光学濃度の測定方法のより詳細な説明については、例えば、Eckhardt BM(1994)J Pharm Sci Technol.48(2):64〜70を参照されたい。
【0051】
非対称フローフィールドフローフラクショネーション(AF4)は、非対称フィールドフローフラクショネーションの種類である。AF4は、生体分子を含めた様々な粒子の高速分別と高分解能の特徴づけができる方法である(Giddings,J.C.;Yang,F.J.;Myers,M.N.、Flow−field−flow fractionation:a versatile new separation method、193 Science 1244〜1245(1976);Giddings,J.C.;Yang,F.J.;Myers,M.N.、Theoretical and experimental characterization of flow field−flow fractionation、48 Anal.Chem.1126〜1132(1976))。AF4は、数ナノメートルから数マイクロメートルの範囲の粒子を分離することができる。フィールドフローフラクショネーション分離は、薄いフローチャネル(クロマトグラフィー分離カラムに相当する)中で起こる。水性または有機溶媒により、試料がこのチャネルを通って搬送される。試料に作用する第1の力である、チャネルを通るこの流れは、チャネルの高さが低いため層流である。第2の力は、チャネル流に垂直に生じる。AF4では、フローチャネルの一面は膜であり、第2の力は、この膜を通ってチャネルを横切る流体の流れである。粒子の分離は、これら2つの力の結果として、この系内で起こる。第1に、チャネル内の層流による速度勾配により、チャネルの中心にある粒子が、チャネルに沿ってより急速に移動し、チャネルの両側に近い粒子から分離される。第2に、第2の力により、試料が膜に向かわされる。サイズの分離が起こるが、これは、チャネルの中心に向かうより急速な溶媒の流れのために、小さな分子が、大きな粒子より急速にチャネルの中心に向かって拡散して戻り、したがって、大きな粒子から分離されるためである。
【0052】
頭字語SEC−HPLCは、サイズ排除クロマトグラフィー−高速液体クロマトグラフィーを表す。SECおよびHPLCは、組合せのSEC−HPLC分析技法と同様に、個々に周知の分析技法である(Garnick,R.L.、Ross,M.J.、Du Mee,C.P.、Encyclopedia of Pharmaceutical Technology、J.Swarbrick、J.C.,Boylan編、1巻:253(Marcel Dekker,Inc.、New York、1988))。各技法の背景にある理論を掘り下げることなく、ゲル浸透クロマトグラフィーとしても知られるSECでは、ゲルマトリックスを通って移動する分子の能力によって、サイズに基づいて分子が分離され、HPLCでは、分子が高圧下で固定媒質を通過して移動する場合の拡散係数に基づいて、分子が分離される。
【0053】
静的および動的光散乱は、溶媒/溶質系から散乱される光のパターンを測定するための、2つの異なる実験方法である(Berne,B.およびPecora,R.Dynamic Light Scattering with Applications to Chemistry、Biology and Physics(Wiley、New York、1976))。静的および動的光散乱により、情報の相補的な断片が得られ、この理由で、これらは、溶液の特徴づけのために一般に相前後して使用される。
【0054】
静的光散乱では、溶液中の粒子によって散乱されるレーザー光の時間平均強度の角度依存性を測定する。粒子のサイズと構造は、検出器の角度の関数として、光散乱強度に影響する。低散乱ベクトルと低濃度の限界では、散乱強度の角度分布は、粒子の形状に無関係になることが十分に確立している(Zimm、B.、The scattering of light and the radial distribution function of high polymer solutions、16 J.Chem.Phys.1093〜9(1948))。上記に考察したように、(Kc/Rθ)をゼロ角度とゼロ濃度に外挿することによって、平均分子量、回転運動半径、および第2ビリアル定数を含めたいくつかの因子を推定することができる。
【0055】
動的光散乱では、溶液中の粒子が、この場合タンパク質であるが、ランダムブラウン運動を起こすために起こる、散乱光強度の時間依存変動を測定する。こうした強度変動を分析することによって、粒子の拡散係数の分布を求めることができる。次いで、この拡散係数の分布は、周知の理論を使用してサイズ分布に変換することができる。動的光散乱に対するサイズの上限は、試料の密度に依存し、すなわち、粒子は移動することができなければならず、したがって上限は、多くの場合、粒子の沈降が拡散プロセスより優位になる点である。下限は、懸濁媒質と比較して、試料が生成する過剰の散乱光、ならびに試料濃度、相対屈折率、レーザーパワー、レーザー波長、検出器感度などを含めた他の要因に依存することになる。
【0056】
タンパク質
ある特定の実施形態では、タンパク質製剤中のタンパク質は、組換えで作製される。本明細書で使用される場合、用語「組換えで発現されたタンパク質」、および「組換えタンパク質」は、宿主細胞から発現されるポリペプチドを指し、この宿主細胞は、そのポリペプチドを発現するように人手によって操作されたものである。ある特定の実施形態では、宿主細胞は哺乳動物細胞である。ある特定の実施形態では、この操作は、1つまたは複数の遺伝的修飾を含むことができる。例えば、宿主細胞は、発現されるポリペプチドをコードする、1つまたは複数の異種遺伝子を導入することによって、遺伝的に修飾することができる。異種の組換えで発現されたポリペプチドは、宿主細胞中で正常に発現されるポリペプチドと同一となり得るか、類似し得る。異種の組換えで発現されたポリペプチドは、宿主細胞に対して異質、例えば、宿主細胞中で正常に発現されるポリペプチドに対して異種にもなり得る。ある特定の実施形態では、異種の組換えで発現されたポリペプチドは、キメラである。例えば、ポリペプチドの一部は、宿主細胞中で正常に発現されるポリペプチドと同一であるか、類似するアミノ酸配列を含有することができ、一方他の部分は、宿主細胞と異質であるアミノ酸配列を含有する。さらに、またはあるいは、ポリペプチドは、両方とも宿主細胞中で正常に発現される、2つ以上の異なるポリペプチドに由来するアミノ酸配列を含有することができる。さらに、ポリペプチドは、両方とも宿主細胞に対して異質である、2つ以上のポリペプチドに由来するアミノ酸配列を含有することができる。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、1つまたは複数の内在性遺伝子を活性化、または上方制御することによって、遺伝的に修飾される。
【0057】
望ましくない程度の乳光を示し、および/または高分子量種を形成する任意のタンパク質を、本発明によって使用することができる。例えば、本発明を使用することによって、とりわけ、任意の医薬的、または商業的に関連した抗体、受容体、サイトカイン、成長因子、酵素、凝固因子、ホルモン、制御因子、抗原、結合剤の乳光を低減することができる。本発明によって分離することができるタンパク質の以下のリストは、本来単に例示的であり、限定する列挙であることを意図していない。当業者は、任意のタンパク質を、本発明によって発現することができることを理解し、必要に応じて、作製される特定のタンパク質を選択することができるであろう。
【0058】
抗体および結合性断片
免疫グロブリンとしても知られる抗体は、一般に、それぞれ約25kDaの2本の軽(L)鎖と、それぞれ約50kDaの2本の重(H)鎖からなる、四量体のグリコシル化タンパク質である。λとκと呼ばれる2種類の軽鎖を、抗体中に見出すことができる。重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、5つの主分類、すなわちA、D、E、G、およびMに割り当てることができ、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分けることができる。それぞれの軽鎖は、N末端可変(V)ドメイン(VL)と定常(C)ドメイン(CL)を含む。それぞれの重鎖は、N末端Vドメイン(VH)、3つまたは4つのCドメイン(CH)、およびヒンジ領域を含む。VHに最も近位のCHドメインは、CH1と呼ばれる。VHとVLドメインは、フレームワーク領域(FR1、FR2、FR3、およびFR4)と呼ばれる比較的保存された配列の4つの領域からなり、このフレームワーク領域は、高頻度可変配列(相補性決定領域、CDR)の3つの領域の骨格を形成する。CDRは、抗体の抗原との特異的相互作用に関与する残基の大部分を含有する。CDRは、CDR1、CDR2、およびCDR3と呼ばれる。したがって、重鎖上のCDR成分は、H1、H2、およびH3と呼ばれ、一方、軽鎖上のCDR成分は、L1、L2、およびL3と呼ばれる。CDR3は、一般に、抗体結合部位内で、最も大きな分子多様性の供給源である。例えば、H3は、2個のアミノ酸残基と短い場合もあり、または26アミノ酸より大きい場合もある。免疫グロブリンの異なる分類のサブユニット構造と3次元配置は、当技術分野で周知である。抗体構造の総説については、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Harlowら編、1988を参照されたい。当業者は、それぞれのサブユニット構造、例えば、CH、VH、CL、VL、CDR、FR構造は、活性断片、例えば、抗原に結合するVH、VL、もしくはCDRサブユニットの一部、すなわち、抗原結合性断片、または例えば、Fc受容体および/もしくは補体に結合し、および/またはこれらを活性化するCHサブユニットの一部を含むことを認識するであろう。CDRは、Sequences of Proteins of Immunological Interest、US Department of Health and Human Services(1991)、Kabatら編に記載されているように、Kabat CDRを一般に指す。抗原結合部位を特徴づけるための別の基準は、Chothiaによって説明されているような高頻度可変ループを参照することである。例えば、Chothia,D.ら(1992)J.Mol.Biol.227:799〜817;およびTomlinsonら(1995)EMBO J.14:4628〜4638を参照されたい。さらに別の基準は、Oxford Molecular’s AbM抗体モデル化ソフトウェアで使用されるAbM定義である。一般に例えば、Antibody Engineering Lab Manual(Duebel,S.およびKontermann,R.編、Springer−Verlag、Heidelberg)中のProtein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains.を参照されたい。Kabat CDRに関して説明した実施形態は、Chothiaの高頻度可変ループまたはAbMで定義されるループに関する、同様の説明した関係を使用して、もう1つの選択肢として実行することができる。
【0059】
用語、抗体の「抗原結合性断片」の中に包含される結合性断片の例として、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片である、Fab断片、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片である、F(ab’)2断片、(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の1本のアームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片、(vi)ラクダまたはラクダ化可変ドメイン、例えば、VHHドメイン、(vii)単鎖Fv(scFv)、ならびに(viii)二重特異性抗体が挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVLとVHは、別々の遺伝子によってコードされるが、合成リンカーによって、組換え法を使用してこれらを結合することができ、この合成リンカーは、VL領域とVH領域が対を形成することによって一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖(単鎖Fv(scFv)として知られる、例えば、Birdら(1988)Science 242:423〜26;Hustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:5879〜83)を参照されたい)になることを可能にする。そのような単鎖抗体も、用語、抗体の「抗原結合性断片」の範囲内に包含されることが意図されている。これらの抗体断片は、当業者に既知の従来の技法を使用して得られ、これらの断片は、インタクトな抗体と同じ様式で機能を評価される。
【0060】
「二重特異性」または「二機能性」抗体以外、抗体は、それぞれのその結合部位は同一であると理解される。「二重特異性」または「二機能性抗体」は、2つの異なる重鎖/軽鎖対と2つの異なる結合部位を有する人工ハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合、またはFab’断片の連結を含めた、様々な方法によって作製することができる。例えば、Songsivilai&Lachmann、Clin.Exp.Immunol.79:315〜321(1990);Kostelnyら、J.Immunol.148、1547〜1553(1992)を参照されたい。
【0061】
抗体を得るために、当業者に既知の多数の方法が利用可能である。例えば、モノクローナル抗体は、既知の方法によってハイブリドーマを生成することにより、作製することができる。次いでこの様式で形成されたハイブリドーマは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)および表面プラズモン共鳴(BIACORE(商標))分析などの標準的な方法を使用してスクリーニングされることによって、特定の抗原に特異的に結合する抗体を産生する、1つまたは複数のハイブリドーマが同定される。任意の形態の特定の抗原、例えば、組換え抗原、自然発生形態、それらの任意の変異体または断片、ならびにそれらの抗原ペプチドを免疫原として使用することができる。
【0062】
抗体を作製する一例示的方法は、タンパク質発現ライブラリー、例えば、ファージまたはリボソームディスプレイライブラリーをスクリーニングすることを含む。ファージディスプレイは、例えば、Ladnerら、米国特許第5,223,409号;Smith(1985)Science 228:1315〜1317;WO92/18619;WO91/17271;WO92/20791;WO92/15679;WO93/01288;WO92/01047;WO92/09690;およびWO90/02809に記載されている。
【0063】
ディスプレイライブラリーの使用に加えて、特定の抗原は、非ヒト動物、例えば、げっ歯類、例えば、マウス、ハムスター、またはラットを免疫するのに使用することができる。一実施形態では、非ヒト動物は、ヒト免疫グロブリン遺伝子の少なくとも一部を含む。例えば、マウス抗体産生が欠損しているマウス系統を、ヒトIg遺伝子座の大きな断片を用いて操作することが可能である。ハイブリドーマ技術を使用して、所望の特異性を有する遺伝子に由来する抗原特異的モノクローナル抗体を作製し、選択することができる。例えば、XENOMOUSE(商標)、Greenら(1994)Nature Genetics 7:13〜21、US2003−0070185、1996年10月31日に公開されたWO96/34096、および1996年4月29日に出願されたPCT出願第PCT/US96/05928号を参照されたい。
【0064】
別の実施形態では、モノクローナル抗体は非ヒト動物から得られ、次いで修飾、例えば、ヒト化、脱免疫化され、キメラは、当技術分野で既知の組換えDNA技法を使用して作製することができる。キメラ抗体を作製するための様々な手法が記載されている。例えば、Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81:6851、1985;Takedaら、Nature 314:452、1985、Cabillyら、米国特許第4,816,567号;Bossら、米国特許第4,816,397号;Tanaguchiら、欧州特許公開第EP171496号;欧州特許公開第0173494号、英国特許第GB2177096B号を参照されたい。ヒト化抗体は、例えば、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子を発現するが、内在性マウス免疫グロブリン重鎖および軽鎖遺伝子を発現することができないトランスジェニックマウスを使用しても作製することができる。Winterは、本明細書に記載されるヒト化抗体を調製するのに使用することができる、例示的なCDR移植法を記述している(米国特許第5,225,539号)。特定のヒト抗体のCDRのすべては、非ヒトCDRの少なくとも一部と置換することができ、またはこのCDRの一部のみを、非ヒトCDRと置換することができる。ヒト化抗体を所定の抗原に結合するのに必要なCDRの数を置換するだけでよい。
【0065】
ヒト化抗体は、抗原結合に直接関与していないFv可変ドメインの配列を、ヒトFv可変ドメインに由来する等価な配列と置換することによって生成することができる。ヒト化抗体またはその断片を生成するための例示的な方法は、Morrison(1985)Science 229:1202〜1207によって;Oiら(1986)BioTechniques 4:214によって;ならびにUS5,585,089;US5,693,761;US5,693,762;US5,859,205;およびUS6,407,213によって提供されている。これらの方法は、重鎖または軽鎖のうちの少なくとも1つから、免疫グロブリンFv可変ドメインのすべてまたは一部をコードする核酸配列を単離、操作し、発現させる工程を含む。そのような核酸は、上述したように、所定の標的に対する抗体を産生するハイブリドーマ、ならびに他の供給源から得ることができる。次いで、ヒト化抗体分子をコードする組換えDNAは、適切な発現ベクター中にクローン化することができる。
【0066】
ある特定の実施形態では、ヒト化抗体は、同類置換、コンセンサス配列置換、生殖系列置換および/または逆突然変異の導入によって最適化される。そのような変化した免疫グロブリン分子は、当技術分野で既知のいくつかの技法のいずれによっても作製することができ(例えば、Tengら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、80:7308〜7312、1983;Kozborら、Immunology Today、4:7279、1983;Olssonら、Meth.Enzymol.、92:3〜16、1982)、PCT公開第WO92/06193号またはEP0239400の教示によって作製することができる。
【0067】
抗体は、ヒトT細胞エピトープの特異的欠失、またはWO98/52976およびWO00/34317に開示されている方法による「脱免疫化」によって修飾することもできる。簡単に言えば、抗体の重鎖および軽鎖可変ドメインは、MHCクラスIIに結合するペプチドについて分析することができ、これらのペプチドは、潜在的T細胞エピトープを表す(WO98/52976およびWO00/34317に定義されているように)。潜在的T細胞エピトープの検出のために、「ペプチドスレッディング(peptide threading)」と呼ばれるコンピューターモデル化手法を適用することができ、さらに、WO98/52976およびWO00/34317に記載されているように、VHおよびVL配列中に存在するモチーフについて、ヒトMHCクラスII結合ペプチドのデータベースを探索することができる。これらのモチーフは、18の主要MHCクラスII DRアロタイプのいずれにも結合し、したがって、潜在的T細胞エピトープを構成する。検出される潜在的T細胞エピトープは、可変ドメイン中の少数のアミノ酸残基を置換することによって、または好ましくは、1個のアミノ酸を置換することによって排除することができる。一般に、同類置換が行われる。多くの場合、しかしもっぱらではなく、ヒト生殖系列の抗体配列中の1つの位置に共通なアミノ酸を使用することができる。ヒト生殖系列配列は、例えば、Tomlinsonら(1992)J.Mol.Biol.227:776〜798;Cook,G.P.ら(1995)Immunol.Today 16巻(5):237〜242;Chothia,D.ら(1992)J.Mol.Biol.227:799〜817;およびTomlinsonら(1995)EMBO J.14:4628〜4638に開示されている。V BASEディレクトリーは、ヒト免疫グロブリン可変領域配列の包括的ディレクトリーを提供する(Tomlinson,I.A.ら(MRC Centre for Protein Engineering、Cambridge、UK)によって編集された)。これらの配列は、例えば、フレームワーク領域およびCDRのためのヒト配列の供給源として使用することができる。U.S.6,300,064に記載されているように、コンセンサスヒトフレームワーク領域も使用することができる。
【0068】
ある特定の実施形態では、抗体は、変化した免疫グロブリンの定常領域またはFc領域を含有することができる。例えば、本明細書の教示によって作製される抗体は、補体および/もしくはFc受容体などのエフェクター分子に、より強く、またはより特異性を伴って結合することができ、これは、抗体のいくつかの免疫機能、例えば、エフェクター細胞活性、溶解、補体媒介性活性、抗体クリアランス、および抗体半減期などを制御することができる。抗体(例えば、IgG抗体)のFc領域に結合する一般的なFc受容体には、それだけに限らないが、対立遺伝子変異体を含めた、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIおよびFcRnサブクラスの受容体、ならびにこれらの受容体の選択的にスプライスされた形態が含まれる。Fc受容体は、RavetchおよびKinet、Annu.Rev.Immunol 9:457〜92、1991;Capelら、Immunomethods 4:25〜34、1994;ならびにde Haasら、J.Lab.Clin.Med.126:330〜41、1995に総説されている。
【0069】
本発明の方法によって分離することができる抗体の非限定的な例として、それだけに限らないが、Aβ、IL−13、IL−22、GDF8および5T4に対する抗体が挙げられる。これらの抗体のそれぞれは、以下および添付した実施例により詳細に説明される。
【0070】
抗GDF8抗体
本発明の方法に使用することができる例示的な抗体は、抗GDF8抗体である。用語「GDF−8」は、成長および分化因子−8、および適切な場合、構造的または機能的にGDF−8に関係する因子、例えば、BMP−11、およびTGF−βスーパーファミリーに属する他の因子を指す。この用語は、GDF−8の全長の未処理前駆体形態、ならびに翻訳後切断から生じる成熟形態およびプロペプチド形態を指す。この用語は、修飾された配列を含む、成熟GDF−8に関連する、少なくともいくつかの生物活性を維持する、GDF−8の任意の断片および変異体も指す。アミノ酸配列ヒトGDF−8、ならびに多くの他の脊椎動物種(マウス、ヒヒ、ウシ、ニワトリを含む)は、例えば、U.S.04/0142382、US02/0157125、およびMcPherronら(1997)Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.、94:12457〜12461)に開示されている。GDF−8に対する中和抗体の例、例えばMyo−029は、例えば、U.S.2004/0142382に開示されており、本明細書に添付した実施例全体にわたって参照されている。例示的な疾患および障害として、筋肉障害および神経筋障害、例えば、筋ジストロフィー(デュシェンヌ型筋ジストロフィーを含む)など;筋萎縮性側索硬化症;筋萎縮;臓器萎縮;虚弱;管症候群;うっ血性閉塞性肺疾患;筋肉減少症、カヘキシー、および他の筋肉消耗症候群;脂肪組織障害(例えば、肥満症);2型糖尿病;耐糖能障害;代謝症候群(例えば、シンドロームX);やけどまたは窒素不均衡(nitrogen imbalance)などの外傷によって誘発されたインスリン抵抗性;ならびに骨変性疾患(例えば、骨関節炎および骨粗鬆症)が挙げられる。
【0071】
抗Aβ抗体
抗Aβ抗体製剤の乳光の低減は、本発明の教示に従って実行することができる。用語「AB抗体」、「Aβ抗体」、「抗Aβ抗体」、および「抗Aβ」は、APP、Aβタンパク質、またはその両方の1つまたは複数のエピトープまたは抗原決定基に結合する抗体を指すために、本明細書で互換的に使用される。例示的なエピトープまたは抗原決定基は、ヒトアミロイド前駆体タンパク質(APP)内に見出すことができるが、APPのAβペプチド内に見出されることが好ましい。APPの多数のイソ型、例えば、APP695、APP751、およびAPP770が存在する。APP内のアミノ酸は、APP770イソ型の配列による、割り当てられた数である(例えば、GenBankアクセション番号P05067を参照されたい)。Aβ(本明細書では、ベータアミロイドペプチドおよびAベータとも呼ばれる)ペプチドは、APP(Aβ39、Aβ40、Aβ41、Aβ42、およびAβ43)の39〜43アミノ酸の約4kDaの内部断片である。例えば、Aβ40は、APPの残基672〜711からなり、Aβ42は、APPの残基672〜713からなる。iv vivoまたはin situでの異なるセクレターゼ酵素によるAPPのタンパク質分解プロセシングの結果として、Aβは、長さで40個のアミノ酸の「短形態」、および長さで42〜43個のアミノ酸の範囲の「長形態」の両方で見出される。エピトープまたは抗原決定基は、AβペプチドのN末端内に位置し、Aβのアミノ酸1〜10内、好ましくはAβ42の残基1〜3、1〜4、1〜5、1〜6、1〜7、2〜7、3〜6、もしくは3〜7から、あるいはAβの残基2〜4、5、6、7、もしくは8、Aβの残基3〜5、6、7、8、もしくは9、またはAβ42の残基4〜7、8、9、もしくは10内の残基を含むことができる。「中央」エピトープまたは抗原決定基は、Aβペプチドの中央または中間部分内に位置し、Aβのアミノ酸16〜24、16〜23、16〜22、16〜21、19〜21、19〜22、19〜23、または19〜24内の残基を含む。「C末端」エピトープまたは抗原決定基は、AβペプチドのC末端内に位置し、Aβのアミノ酸33〜40、33〜41、または33〜42内の残基を含む。
【0072】
様々な実施形態では、Aβ抗体は末端特異的である。本明細書で使用される場合、用語「末端特異的」は、AβペプチドのN末端またはC末端残基に特異的に結合するが、この残基を含むより長いAβ種またはAPP内に存在する場合、同じ残基を認識しない抗体を指す。
【0073】
様々な実施形態では、Aβ抗体は「C末端特異的」である。本明細書で使用される場合、用語「C末端特異的」は、抗体が、Aβペプチドの遊離C末端を特異的に認識することを意味する。C末端特異的Aβ抗体の例には、残基40で終わるAβペプチドを認識するが、残基41、42、および/または43で終わるAβペプチドを認識しないもの、残基42で終わるAβペプチドを認識するが、残基40、41、および/または43で終わるAβペプチドを認識しないものなどが含まれる。
【0074】
一実施形態では、抗体は、3D6抗体もしくはその変異体、または10D5抗体もしくはその変異体とすることができ、その両方は、米国特許公開第2003/0165496A1号、米国特許公開第2004/0087777A1号、国際特許公開第WO02/46237A3号に記載されている。3D6および10D5の記述は、例えば、国際特許公開WO02/088306A2号および国際特許公開第WO02/088307A2号にも見出すことができる。3D6は、ヒトβ−アミロイドペプチド内に位置するN末端エピトープ、特に残基1〜5に特異的に結合するモノクローナル抗体(mAb)である。比較して、10D5は、ヒトβ−アミロイドペプチド内に位置するN末端エピトープ、特に残基3〜6に特異的に結合するmAbである。別の実施形態では、抗体は、米国特許公開第20040082762A1号、および国際特許公開第WO03/077858A2号に記載されているような、12B4抗体またはその変異体とすることができる。12B4は、ヒトβ−アミロイドペプチド内に位置するN末端エピトープ、特に残基3〜7に特異的に結合するmAbである。さらに別の実施形態では、抗体は、米国特許出願第10/858,855号、および国際特許出願第PCT/US04/17514号に記載されているような、12A11抗体またはその変異体とすることができる。12A11は、ヒトβ−アミロイドペプチド内に位置するN末端エピトープ、特に残基3〜7に特異的に結合するmAbである。さらに別の実施形態では、抗体は、米国特許出願第10/789,273号、および国際特許出願第WO01/62801A2号に記載されているような、266抗体とすることができる。本発明で使用するための、ヒトβ−アミロイドペプチド内に位置するC末端エピトープに特異的に結合するように設計された抗体には、それだけに限らないが、米国特許第5,786,160号に記載されているような、369.2Bが含まれる。
【0075】
例示的な実施形態では、抗体は、Aβペプチドを選択的に結合するヒト化抗Aβペプチド3D6抗体である。より具体的には、ヒト化抗Aβペプチド3D6抗体は、脳内(例えば、アルツハイマー病に罹患している患者中の)のプラーク沈着物中に見出される、ヒトβ−アミロイドの1〜40または1〜42ペプチド内に位置するNH2末端エピトープに特異的に結合するように設計される。
【0076】
抗Aβ抗体は、アミロイド形成疾患、特にアルツハイマー病を治療するのに使用することができる。用語「アミロイド形成疾患」は、不溶性のアミロイド原線維の形成または沈着に関連する(またはこれによって引き起こされる)任意の疾患を含む。例示的なアミロイド形成疾患として、それだけに限らないが、全身性アミロイド症、アルツハイマー病、成人発症型糖尿病(mature onset diabetes)、パーキンソン病、ハンチントン病、前頭側頭認知症、およびプリオン関連(prion−related)伝染性海綿状脳症(ヒトにおけるクールー病およびクロイツフェルト−ヤコブ病、ならびにそれぞれヒツジおよびウシにおける、スクレイピーおよびBSE)が挙げられる。沈着した原線維のポリペプチド成分の性質によって、様々なアミロイド形成疾患が定義され、または特徴づけられている。例えば、アルツハイマー病を有する対象または患者において、β−アミロイドタンパク質(例えば、野生型、変異体、または切断されたβ−アミロイドタンパク質)は、アミロイド沈着物の特徴ポリペプチド成分である。したがって、アルツハイマー病は、例えば、対象または患者の脳内における、「Aβの沈着物によって特徴づけられる疾患」、または「Aβの沈着物に関連する疾患」の一例である。用語「β−アミロイドタンパク質」、「β−アミロイドペプチド」、「β−アミロイド」、「Aβ」、および「Aβペプチド」は、本明細書で互換的に使用される。
【0077】
抗5T4抗体
5T4抗原は、以前に特徴づけられている(例えば、WO89/07947を参照されたい)。ヒト5T4の全核酸配列は知られている(Myersら(1994)J Biol Chem 169:9319〜24およびアクセション番号Z29083のGenBank)。他の種に由来する5T4抗原の配列も知られており、例えば、マウス5T4(WO00/29428)、イヌ5T4(WO01/36486)、またはネコ5T4(US05/0100958)が知られている。
【0078】
ヒト5T4は、癌において広く発現されるが、正常な成人組織において高度に制限された発現パターンを有する、約72kDaの糖タンパク質である。これは、直腸結腸癌および胃癌における転移に強く相関すると思われる。5T4抗原の発現は、乳癌および卵巣癌においても高頻度で見出される(Starzynskaら(1998)Eur.J.Gastroenterol.Hepatol.10:479〜84;Starzynskaら(1994)Br.J.Cancer 69:899〜902;Starzynskaら(1992)Br.J.Cancer 66:867〜9)。5T4は、腫瘍進行および転移の可能性に関して、機構的関与の可能性を有するマーカーとして提案された(Carsbergら(1996)Int J Cancer 68:84〜92)。5T4は、免疫療法剤として使用することも提案された(WO00/29428を参照されたい)。5T4の抗原ペプチドも、例えば、US05/0100958に開示されており、この内容は参照により組み込まれている。
【0079】
いくつかの係属中の出願、例えば、米国出願公開第2003/0018004号および同第2005/0032216号は、一般に、抗5T4モノクローナル抗体をコードする核酸、そのベクターおよび宿主細胞に関する。一般に、ヒト化抗5T4 H8モノクローナル抗体、およびそのカリケアマイシンコンジュゲート、ならびにこれらのカリケアマイシンコンジュゲートを使用する治療方法に関係する仮特許出願が出願された(米国出願公開第2006/0088522号)。これらすべての出願の内容は、その全体が本明細書に参照により組み込まれている。
【0080】
抗IL13抗体
インターロイキン−13(IL−13)は、Tリンパ球およびマスト細胞によって分泌される、以前に特徴づけられたサイトカインである(McKenzieら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:3735〜39;Bostら(1996)Immunology 87:663〜41)。用語「IL−13」は、IL−13の全長の未処理前駆体形態、ならびに翻訳後切断から生じる成熟形態を含めたインターロイキン−13を指す。この用語は、修飾された配列を含む、成熟IL−13に関連する、少なくともいくつかの生物活性を維持する、IL−13の任意の断片および変異体も指す。用語「IL−13」は、ヒトIL−13、ならびに他の脊椎動物種を含む。いくつかの係属中の出願、例えば、米国出願公開第2006/0063228A号および同第2006/0073148号には、ヒトおよびサルIL−13、IL−13ペプチド、これらを産生するベクターおよび宿主細胞が開示されている。これらすべての刊行物の内容は、その全体が本明細書に参照により組み込まれている。
【0081】
IL−13は、IL−4といくつかの生物活性を共有する。例えば、IL−4またはIL−13のいずれも、B細胞中でIgEアイソタイプ転換を引き起こす(Tomkinsonら(2001)J.Immunol.166:5792〜5800)。さらに、細胞表面CD23と血清CD23(sCD23)のレベルの増大が、喘息患者において報告されている(Sanchez−Guererroら(1994)Allergy 49:587〜92;DiLorenzoら(1999)Allergy Asthma Proc.20:119〜25)。さらに、IL−4またはIL−13のいずれも、B細胞および単球上でのMHCクラスIIおよび低親和性IgE受容体(CD23)の発現を上方制御することができ、これにより、抗原提示が増強され、マクロファージ機能が制御される(Tomkinsonら、上記を参照されたい)。これらの観察結果は、IL−13が、気道好酸球増加症および気道過敏症(AHR)の発症において重要なプレイヤーとなり得ることを示す(Tomkinsonら、上記を参照されたい;Wills−Karpら(1998)Science 282:2258〜61)。したがって、IL−13の阻害は、それだけに限らないが、呼吸器障害、例えば、喘息;慢性閉塞性肺疾患(COPD);気道炎症、好酸球増加症、線維症および粘液過剰産生を伴う他の状態、例えば、嚢胞性線維症および肺線維症;アトピー性障害、例えば、アトピー性皮膚炎、じん麻疹、湿疹、アレルギー性鼻炎;皮膚(例えば、アトピー性皮膚炎)、消化管臓器(例えば、潰瘍性大腸炎および/またはクローン病などの炎症性腸疾患(IBD))、肝臓(例えば、肝硬変、肝細胞癌)の炎症および/または自己免疫状態;強皮症;腫瘍または癌(例えば、軟部組織腫瘍または固形腫瘍)、例えば、白血病、グリア芽細胞腫、およびリンパ腫、例えば、ホジキンリンパ腫など;ウイルス感染症(例えば、HTLV−1由来);他の臓器の線維症、例えば、肝臓の線維症、(例えば、B型肝炎ウイルスおよび/またはC型肝炎ウイルスによって生じる線維症)を含めた、いくつかの炎症および/またはアレルギー状態の病状を回復させるのに有用となり得る。
【0082】
抗IL−22抗体
インターロイキン−22(IL−22)は、IL−10と配列相同性を示す、以前に特徴づけられたクラスIIサイトカインである。その発現は、IL−9またはConAによってT細胞中で上方制御される(Dumoutier L.ら(2000)Proc Natl Acad Sci USA 97(18):10144〜9)。研究により、IL−22 mRNAの発現は、LPS投与に応答してin vivoで誘発され、IL−22は、急性期応答を示すパラメーターを調節し(Dumoutier L.ら(2000)上記を参照されたい;Pittman D.ら(2001)Genes and Immunity 2:172)、中和抗IL−22抗体を使用することによってIL−22抗体の活性を低減することにより、マウスコラーゲン誘発関節炎(CIA)モデルにおいて炎症症状が回復することが示された。したがって、IL−22アンタゴニスト、例えば、中和抗IL−22抗体およびその断片は、例えば、自己免疫障害(例えば、関節リウマチなどの関節炎障害);呼吸器障害(例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD));例えば、皮膚(例えば、乾癬)、心血管系(例えば、アテローム性動脈硬化症)、神経系(例えば、アルツハイマー病)、腎臓(例えば、腎炎)、肝臓(例えば、肝炎)および膵臓(例えば、膵炎)の炎症状態を治療するための、in vivoでの免疫抑制を誘発するのに使用することができる。
【0083】
用語「IL−22」は、IL−22の全長の未処理前駆体形態、ならびに翻訳後切断から生じる成熟形態を含めたインターロイキン−22を指す。この用語は、修飾された配列を含む、成熟IL−22に関連する、少なくともいくつかの生物活性を維持する、IL−22の任意の断片および変異体も指す。用語「IL−22」は、ヒトIL−22、ならびに他の脊椎動物種も含む。ヒトおよびげっ歯類IL−22、ならびにIL−22に対する抗体のアミノ酸ならびにヌクレオチド配列は、例えば、米国出願公開第2005−0042220号および同第2005−0158760号、ならびに米国特許第6,939,545号に開示されている。これらすべての刊行物の内容は、その全体が本明細書に参照により組み込まれている。
【0084】
小モジュール免疫薬剤(Small Modular ImmunoPharmaceuticals)(SMIP(商標))
本発明は、小モジュール免疫薬剤(SMIP(商標))にも適用することができる。これは、免疫グロブリンヒンジまたはヒンジ作用領域(hinge−acting region)ポリペプチドに融合または別の方法で接続された結合ドメインポリペプチドを含む結合ドメイン融合タンパク質を一般に指し、この結合ドメインポリペプチドは、さらにはCH1以外の免疫グロブリン重鎖由来の、1つまたは複数の天然または操作された定常領域、例えば、IgGおよびIgAのCH2およびCH3領域、またはIgEのCH3およびCH4領域を含む領域に、融合または別の方法で接続されている(より完全な説明については、例えば、Ledbetter,J.らによるU.S.05/0136049を参照されたい)。結合ドメイン−免疫グロブリン融合タンパク質は、ヒンジ領域ポリペプチドと、CH2定常領域ポリペプチド(またはIgEに全体的または部分的に由来するコンストラクトの場合、CH3)に融合または別の方法で接続されている、天然または操作された免疫グロブリン重鎖CH3定常領域ポリペプチド(またはIgEに全体的または部分的に由来するコンストラクトの場合、CH4)とに融合または別の方法で接続されている、天然または操作された免疫グロブリン重鎖CH2定常領域ポリペプチド(またはIgEに全体的または部分的に由来するコンストラクトの場合、CH3)を含む領域をさらに含むことができる。一般に、そのような結合ドメイン−免疫グロブリン融合タンパク質は、抗体依存性細胞媒介性細胞障害、補体結合、および/または標的、例えば標的抗原への結合からなる群から選択される、少なくとも1つの免疫学的活性の能力がある。
【0085】
可溶性受容体および受容体融合物
本発明は、可溶性受容体またはその断片にも適用することができる。可溶性受容体の例には、受容体の細胞外ドメイン、例えば、可溶性腫瘍壊死因子αおよびβ受容体(TNFR−1;1991年3月20日に公開されたEP417,563;TNFR−2;1991年3月20日に公開されたEP417,014;ならびにNaismithおよびSprang、J Inflamm.47(1〜2):1〜7、1995〜96の総説であり、そのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている)などが含まれる。他の実施形態では、可溶性受容体には、例えばUS2003−0108549(その内容も、参照により組み込まれている)に記載されているような、インターロイキン−21受容体(IL−21R)の細胞外ドメインが含まれる。
【0086】
融合タンパク質は、標的化部分、例えば、可溶性受容体断片またはリガンド、ならびに免疫グロブリン鎖、Fc断片、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、およびIgEを含めた様々なアイソタイプの重鎖定常領域を含むことができる。例えば、融合タンパク質は、受容体の細胞外ドメインを含むことができ、例えば、ヒト免疫グロブリンFc鎖(例えば、ヒトIgG、例えば、ヒトIgG1またはヒトIgG4、またはそれらの突然変異形態)に融合することができる。一実施形態では、ヒトFc配列は、1つまたは複数のアミノ酸で突然変異している、例えば、野生型配列からの残基254と257で突然変異していることによって、Fc受容体結合性を低減している。融合タンパク質は、第1部分を第2部分、例えば免疫グロブリン断片に結合するリンカー配列をさらに含むことができる。例えば、融合タンパク質は、ペプチドリンカー、例えば、長さがアミノ酸の個数で約4から20個、より好ましくは5から10個のペプチドリンカーを含むことができ、ペプチドリンカーは、長さがアミノ酸の個数で8個である。例えば、融合タンパク質は、式(Ser−Gly−Gly−Gly−Gly)y(式中、yは、1、2、3、4、5、6、7、または8である)を有するペプチドリンカーを含むことができる。他の実施形態では、追加のアミノ酸配列を、融合タンパク質のNまたはC末端に添加することによって、発現、立体的柔軟性、検出および/または単離もしくは精製を促進することができる。
【0087】
ある特定の実施形態では、可溶性受容体融合物は、可溶性TNFR−Ig(例えば、TNF受容体、例えば、p55もしくはp75ヒトTNF受容体、またはそれらの誘導体の可溶性断片、例えば、75kdのTNFR−IgG(例えば、ヒトIgG1の235アミノ酸Fc部分に融合した、75kDのTNF受容体))を含む。
【0088】
本発明のキメラまたは融合タンパク質は、標準的な組換えDNA技法によって作製することができる。例えば、様々なポリペプチド配列をコードするDNA断片は、従来の技法によって、例えば、連結用の平滑末端またはジグザグ末端(stagger−ended termini)、適切な末端を提供するための制限酵素消化、適切な場合、付着末端の補充、望ましくない結合を回避するためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素的連結を使用することによって、インフレームで一緒に連結される。別の実施形態では、融合遺伝子は、自動化DNA合成機を含めた従来の技法によって合成することができる。あるいは、遺伝子断片のPCR増幅は、2つの連続した遺伝子断片の間に相補的なオーバーハングを生じさせるアンカープライマーを使用して実施することができ、これは引き続いてアニールし、再増幅することによってキメラ遺伝子配列を生成することができる(例えば、Ausubelら(編)Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、1992を参照されたい)。さらに、融合部分(例えば、免疫グロブリン重鎖のFc領域)をコードする多くの発現ベクターは、市販されている。免疫グロブリン融合ポリペプチドは、当技術分野で知られており、例えば、米国特許第5,516,964号;同第5,225,538号;同第5,428,130号;同第5,514,582号;同第5,714,147号;および同第5,455,165号に記載されている。
【0089】
成長因子およびサイトカイン
医薬剤および/または市販薬剤として有効であることが示され、望ましくは、本発明の教示によって作製することができる別の分類のポリペプチドには、成長因子、およびサイトカインなどの他のシグナル分子が含まれる。
【0090】
成長因子は、一般に、細胞によって分泌され、他の細胞上の受容体に結合し、これを活性化させ、受容体細胞中で代謝的または発生的変化を開始する糖タンパク質である。哺乳動物成長因子および他のシグナル分子の非限定的な例として、サイトカイン;上皮細胞成長因子(EGF);血小板由来成長因子(PDGF);線維芽細胞成長因子(FGF)、例えば、aFGFおよびbFGFなど;トランスフォーミング成長因子(TGF)、例えば、TGF−α、およびTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、もしくはTGF−β5を含めたTGF−βなど;インスリン様成長因子−Iおよび−II(IGF−IおよびIGF−II);des(1−3)−IGF−I(脳IGF−I)、インスリン様成長因子結合タンパク質;CDタンパク質、例えば、CD−3、CD−4、CD−8、CD−19など;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒素;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン、例えば、インターフェロン−α、−β、および−γなど;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M−CSF、GM−CSF、およびG−CSF;インターロイキン(TLs)、例えば、IL−1からIL−13(例えば、IL−11);腫瘍壊死因子(TNF)αおよびβ;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;凝固因子、例えば、第VIIIC因子、第IX因子、組織因子、およびフォンウィルブランド因子など;プロテインCなどの抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性剤;プラスミノーゲンアクチベーター、例えば、ウロキナーゼもしくはヒト尿もしくは組織型プラスミノーゲンアクチベーター(t−PA)など;ボンベシン;トロンビン、造血成長因子;エンケファリナーゼ;RANTES(regulated on activation normally T−cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP−1−α);ミュラー管阻害物質;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;プロリラキシン(prorelaxin);マウスゴナドトロピン関連ペプチド;神経栄養因子、例えば、骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、−4、−5、もしくは−6(NT−3、NT−4、NT−5、もしくはNT−6)など、またはNGF−βなどの神経成長因子が挙げられる。当業者は、本発明の方法および組成物によって発現することができる、他の成長因子またはシグナル分子を認識するであろう。
【0091】
成長因子または他のシグナル分子のグリコシル化パターンにおける特定の変化は、その治療特性に劇的な効果があることが示された。一例として、慢性貧血に罹患している患者に対する治療の一般的な方法は、その患者に組換えエリトロポピエチン(erythropopietin)(rHuEPO)を頻繁に注射することによって、患者の赤血球の産生を増強することである。rHuEPOの類似体であるダルベポエチンα(ARANESP(登録商標))は、通常のrHuEPOよりも長い持続期間を有するように開発された。ダルベポエチンαとrHuEPOの間の主な差異は、2本の追加のシアル酸含有N結合型オリゴ糖鎖の存在である。ダルベポエチンαの作製は、in vitro糖鎖工学を使用して達成された(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Elliottら、Nature Biotechnology 21(4):414〜21、2003を参照されたい)。Elliottらは、in vitro変異誘発を使用することによって、rHuEPOポリペプチド主鎖中に追加のグリコシル化部位を組み込み、ダルベポエチンα類似体の発現をもたらした。追加のオリゴ糖鎖は、EPO受容体結合部位の遠位に位置し、見かけ上受容体結合を妨害しない。しかし、ダルベポエチンαの半減期は、rHuEPOよりも最大3倍長く、はるかに有効な治療剤になっている。
【0092】
凝固因子
凝固因子は、医薬剤および/または市販薬剤として有効であることが示されている。血友病Bは、患者の血液が凝固することができない障害である。したがって、出血をもたらすどんな小さな創傷も、潜在的に生命を脅かす事象である。例えば、凝固第IX因子(第IX因子または「FIX」)は単鎖糖タンパク質であり、これが欠乏すると血友病Bになる。FIXは、活性化ペプチドを放出することによって、活性化されて2本鎖のセリンプロテアーゼ(第IXa因子)になることができる、単鎖酵素原として合成される。第IXa因子の触媒ドメインは、重鎖中に位置する(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Changら、J.Clin.Invest.、100:4、1997を参照されたい)。FIXは、N結合型およびO結合型炭水化物の両方を含む、多数のグリコシル化部位を有する。セリン61での一特定のO結合型構造(Sia−α2、3−Gal−β1、4−GlcNAc−β1、3−Fuc−α1−O−Ser)は、FIXに特有であると以前に考えられたが、それ以来、哺乳動物およびショウジョウバエ(Drosophila)中のノッチタンパク質を含む、いくつかの他の分子上で見出されてきた(Maloneyら、Journal of Biol.Chem.、275(13)、2000)。細胞培養で、チャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞によって産生されるFIXは、セリン61オリゴ糖鎖中でいくつかの変異性を示す。これらの異なる糖型、および他の潜在的な糖型は、ヒトまたは動物に投与される場合、凝固を誘発するための異なる能力を有することができ、および/または血液中で異なる安定性を有し、効果の弱い凝固をもたらす場合がある。
【0093】
血友病Bと臨床的に識別不能な血友病Aは、単鎖として合成され、次いで処理されて2本鎖の活性形態になる別の糖タンパク質である、ヒト凝固第VIII因子の欠損によって引き起こされる。本発明を使用して、凝固第VIII因子のグリコシル化パターンを制御しまたは変化させることによって、その凝固活性を調節することもできる。本発明によって作製することができる他の凝固因子には、組織因子およびフォンウィルブランド因子が含まれる。
【0094】
酵素
医薬剤および/または市販薬剤として有効であることが示され、望ましくは、本発明の教示によって作製することができる別の分類のポリペプチドには、酵素が含まれる。酵素は、糖タンパク質とすることができ、そのグリコシル化パターンが酵素活性に影響する。したがって、本発明は、細胞培養で酵素を作製するのに使用することもでき、作製された酵素は、より広範な、またはさもなければより望ましいグリコシル化パターンを有する。
【0095】
1つの非限定的な例として、グルコセレブロシダーゼ(GCR)の欠乏により、ゴーシェ病として知られる状態がもたらされ、これは、ある特定の細胞のリソソーム中にグルコセレブロシダーゼが蓄積することによって引き起こされる。ゴーシェ病を有する対象は、脾腫、肝腫、骨障害、血小板減少症および貧血を含めた、一連の症状を示す。FriedmanとHayesは、一次アミノ酸配列中に1個の置換を含む組換えGCR(rGCR)は、自然に存在するGCRと比較して、変化したグリコシル化パターン、特に、フコースおよびN−アセチルグルコサミン残基の増加を示すことを示した(米国特許第5,549,892号を参照されたい)。
【0096】
FriedmanとHayesは、このrGCRは、自然に存在するrGCRと比較して、改善された薬物動態学的性質を示すことも実証した。例えば、自然に存在するGCRが標的にするよりも、約2倍のrGCRが、肝臓クッパー細胞を標的にした。この2つのタンパク質の一次アミノ酸配列は、1個の残基で異なるが、FriedmanとHayesは、rGCRの変化したグリコシル化パターンも、クッパー細胞への標的化に影響し得ると仮定した。当業者は、酵素のグリコシル化パターンの変化から生じる、変化した酵素的、薬物動態学的、および/または薬力学的性質を示す酵素の他の既知の例を認識するであろう。
【0097】
タンパク質作製
本発明によってタンパク質を作製する組換え方法は、当技術分野で知られている。タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、所望量の修飾抗体を作製するのに使用することができる宿主細胞中に導入するために、発現ベクター中に一般に挿入され、これはさらには、ポリペプチドを提供する。用語「ベクター」は、核酸、例えば遺伝子を多くの場合含み、核酸複製、転写、安定性、および/または宿主細胞からのタンパク質発現もしくは分泌に必要な最低限のエレメントを含む、核酸コンストラクトを含む。そのようなコンストラクトは、染色体外エレメントとして存在することができ、または宿主細胞のゲノム中に組み込むことができる。
【0098】
用語「発現ベクター」は、核酸コンストラクトが、所望のタンパク質産物の高レベルな発現のために最適化された、特定の種類のベクターを含む。発現ベクターは、特定の細胞型中での高レベルな転写のために最適化され、および/または発現が、特定の誘発剤の使用に基づいて恒常的であるように最適化された、転写調節剤、例えば、プロモーターおよびエンハンサーエレメントなどを多くの場合有する。発現ベクターは、タンパク質の適切および/または増強された翻訳を提供する配列をさらに有する。当業者に知られているように、そのようなベクターは、プラスミド、ファージ、ウイルス、およびレトロウイルスからなる群から容易に選択することができる。用語「発現カセット」は、遺伝子を含み、遺伝子に加えて、宿主細胞中でのその遺伝子の適切および/または増強された発現を可能にするエレメントを有する核酸コンストラクトを含む。抗体を作製するために、軽鎖および重鎖をコードする核酸を、発現ベクター中に挿入することができる。そのような配列は、同じ核酸分子(例えば、同じ発現ベクター)中に存在することができ、あるいは別々の核酸分子(例えば、別々の発現ベクター)から発現することができる。
【0099】
用語「作動可能に連結した」は、成分が、それらの意図した様式で機能することを可能にする関係にある(例えば、機能的に連結した)近位を含む。例として、対象とするポリヌクレオチドに作動可能に連結したプロモーター/エンハンサーは、プロモーター/エンハンサーによって誘導される発現を活性化する条件下で、対象とするポリヌクレオチドの発現が達成されるように、前記ポリヌクレオチドに連結される。
【0100】
発現ベクターは、エピソームまたは宿主染色体DNAの必須部分のいずれかとして、宿主生物体中で一般に複製可能である。一般に、発現ベクターは、選択マーカー(例えば、アンピシリン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、カナマイシン耐性またはネオマイシン耐性)を含有することによって、所望のDNA配列で形質転換された細胞の検出を可能にする(例えば、Itakuraら、米国特許第4,704,362号を参照されたい)。免疫グロブリンDNAカセット配列、挿入配列、および制御配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、追加の配列、例えば、宿主細胞中のベクターの複製を制御する配列(例えば、複製開始点)および選択可能マーカー遺伝子などを担持することができる。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を促進する(例えば、すべてAxelらによる、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号、および同第5,179,017号を参照されたい)。例えば、一般に、選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に、薬物、例えば、G418、ハイグロマイシン、またはメトトレキセートなどに対する耐性を与える。好ましい選択可能マーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(メトトレキセート選択/増幅を伴うdhfr−宿主細胞中で使用するため)、およびネオ遺伝子(G418選択のため)が含まれる。
【0101】
ベクターが適切な宿主細胞中に組み込まれた場合、この宿主細胞は、ヌクレオチド配列の高レベル発現、ならびに所望の抗体の採取および精製に適した条件下で維持される。細胞培養、およびタンパク質またはポリペプチドの発現が可能な任意の宿主細胞を、本発明によって利用することができる。ある特定の実施形態では、宿主細胞は哺乳動物である。本発明によって使用することができる哺乳動物細胞の非限定的な例として、BALB/cマウス骨髄腫系統(NSO/l、ECACC番号:85110503);ヒト網膜芽細胞(PER.C6、CruCell、Leiden、The Netherlands);SV40(COS−7、ATCC CRL 1651)によって形質転換されたサル腎臓CV1系統;ヒト胚腎臓系統(293細胞、または、懸濁培養で成長させるためにサブクローニングされた293細胞、Grahamら、J.GenVirol.、36:59、1977);新生仔ハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞+/−DHFR(CHO、UrlaubおよびChasin、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77:4216、1980);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather、Biol.Reprod.、23:243〜251、1980);サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1 587);ヒト子宮頚癌細胞(HeLa、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Matherら、Annals N.Y.Acad.Sci.、383:44〜68、1982);MRC5細胞;FS4細胞;およびヒト肝細胞腫系統(Hep G2)が挙げられる。
【0102】
さらに、ポリペプチドまたはタンパク質を発現する、いくつもの市販の、および市販されていないハイブリドーマ細胞系統を、本発明によって利用することができる。当業者は、ハイブリドーマ細胞系統は、最適な成長およびポリペプチドまたはタンパク質発現のために、様々な栄養必要量を有し、および/または様々な培養条件を必要とする場合があり、必要に応じて条件を修飾することができることを理解するであろう。
【0103】
これらの細胞のための発現ベクターは、発現制御配列、例えば、複製開始点、プロモーター、およびエンハンサー、(Queenら、Immunol.Rev.89:49(1986))など、ならびに必要なプロセシング情報部位、例えば、リボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写ターミネーター配列などを含むことができる。好ましい発現調節配列は、免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、サイトメガロウイルスなどに由来するプロモーターである(例えば、Coら、(1992)J.Immunol.148:1149を参照されたい)。哺乳動物宿主細胞発現に好ましい制御配列には、哺乳動物細胞中での高レベルのタンパク質発現を誘導するウイルスエレメント、例えば、FF−1aプロモーターおよびBGHポリA、サイトメガロウイルス(CMV)(CMVプロモーター/エンハンサーなど)、シミアンウイルス40(SV40)(SV40プロモーター/エンハンサーなど)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、およびポリオーマに由来するプロモーターおよび/またはエンハンサーなどが含まれる。ウイルス制御エレメント、およびその配列のさらなる記述については、例えば、Stinskiによる米国特許第5,168,062号、Bellらによる米国特許第4,510,245号、およびSchaffnerらによる米国特許第4,968,615号を参照されたい。例示的な実施形態では、抗体の重鎖および軽鎖遺伝子は、エンハンサー/プロモーター制御エレメント(例えば、CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター制御エレメント、またはSV40エンハンサー/AdMLPプロモーター制御エレメントなどの、SV40、CMV、アデノウイルスなどに由来した)に作動可能に連結することによって、遺伝子の高レベルの転写を推進する。本発明の例示的な実施形態では、コンストラクトは、配列内リボソーム進入部位(IRES)を含むことによって、真核宿主細胞中で比較的高レベルの本発明のポリペプチドを提供する。適合性のIRES配列は、米国特許第6,193,980号に開示されており、これも本明細書に組み込まれている。
【0104】
あるいは、コード配列は、導入遺伝子中に組み込んで、トランスジェニック動物のゲノム中に導入し、引き続いてこのトランスジェニック動物の乳中で発現させることができる(例えば、Deboerら、US5,741,957、Rosen、US5,304,489、およびMeadeら、US5,849,992を参照されたい)。適当な導入遺伝子は、カゼインまたはβラクトグロブリンなどの、乳腺特異的遺伝子由来のプロモーターおよびエンハンサーと作動可能に連結した軽鎖および/または重鎖のコード配列を含む。
【0105】
原核宿主細胞も、本発明の抗体を作製するのに適当となり得る。イー・コリは、本発明のポリヌクレオチド(例えば、DNA配列)をクローン化するのに特に有用な一原核宿主である。使用するのに適した他の微生物宿主として、バシルス・スブチリスなどのバシリ、エンテロバクテリアセアエ、例えば、エスケリキア、サルモネラ、およびセラチアなど、ならびに様々なシュードモナス種が挙げられる。これらの原核宿主中で、発現ベクターも作製することができ、これは、宿主細胞と適合した発現制御配列(例えば、複製開始点)を一般に含有する。さらに、いくつもの様々な周知のプロモーター、例えば、ラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、β−ラクタマーゼプロモーター系、またはλファージ由来のプロモーター系などが存在する。プロモーターは、転写および翻訳を開始し、完了するために、所望によりオペレーター配列とともに発現を一般に制御し、リボソーム結合部位配列などを有する。
【0106】
原核生物中でのタンパク質の発現は、融合または非融合タンパク質のいずれかの発現を誘導する、構成的または誘導的プロモーターを含有するベクターを含むイー・コリ中で実施されることが最も多い。融合ベクターは、その中でコードされた抗体、多くの場合、組換え抗体の定常領域に、この抗体の特異性または抗原認識に影響することなく、いくつかのアミノ酸を添加する。融合ペプチドのアミノ酸の添加により、例えばマーカー(例えば、mycまたはフラッグなどのエピトープタグ)としての抗体に、追加の機能を加えることができる。
【0107】
イーストなどの他の微生物も発現に有用である。サッカロミセスは好ましいイースト宿主であり、適当なベクターは、望まれる通りに、発現制御配列(例えば、プロモーター)、複製開始点、終止配列などを有する。典型的なプロモーターには、3−ホスホグリセリン酸キナーゼおよび他の糖分解酵素が含まれる。誘導的イーストプロモーターには、とりわけ、アルコール脱水素酵素、イソチトクロームC、ならびにマルトースおよびガラクトースの利用に関与する酵素に由来するプロモーターが含まれる。
【0108】
対象とするポリヌクレオチド配列(例えば、重鎖および軽鎖をコードする配列、ならびに発現制御配列)を含むベクターは、周知の方法によって宿主細胞中に移すことができ、この方法は、細胞宿主の種類に応じて変化する。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションは、原核細胞に対して一般に利用され、一方、リン酸カルシウム処理、電気穿孔、リポフェクション、微粒子銃またはウイルスベースのトランスフェクションは、他の細胞宿主に対して使用することができる。(一般に、すべての目的に対してその全体が本明細書に参照により組み込まれている、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press、2版、1989)を参照されたい)。哺乳動物細胞を形質転換するのに使用される他の方法には、ポリブレン、プロトプラスト融合、リポソーム、電気穿孔、および微量注入の使用が含まれる(一般に、Sambrookら、上記を参照されたい)。トランスジェニック動物を作製するために、導入遺伝子を、受精卵母細胞中に微量注入することができ、または胚幹細胞のゲノム、および除核卵母細胞中に移されたそのような細胞の核中に組み込むことができる。
【0109】
重鎖および軽鎖が別々の発現ベクターでクローン化される場合、ベクターは、同時形質移入されることによって、インタクトな免疫グロブリンを発現し、構築する。発現されると、抗体全体、その二量体、個々の軽鎖および重鎖、または本発明の他の免疫グロブリン形態は、本明細書で説明したように分離し、および/または硫安塩析、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、HPLC精製、ゲル電気泳動などを含めた、当技術分野で既知の手順によってさらに精製することができる(一般に、Scopes、Protein Purification(Springer−Verlag、N.Y.、(1982)を参照されたい)。医薬品用途のためには、少なくとも約90から95%の均一性の実質的に純粋な免疫グロブリンが好ましく、98から99%またはそれ以上の均一性が最も好ましい。
【0110】
タンパク質精製
本発明によって発現されたタンパク質を単離および/または精製することが望ましい。ある特定の実施形態では、発現されたタンパク質は、培地中に分泌され、したがって、精製プロセスの第1工程として、例えば遠心分離またはフィルタリングによって、細胞および他の固形物を除去することができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、発現されたタンパク質は、宿主細胞の表面に結合される。そのような実施形態では、精製プロセスの第1工程として、培地は除去され、ポリペプチドまたはタンパク質を発現する宿主細胞は溶解される。哺乳動物宿主細胞の溶解は、ガラスビーズによる物理的破壊および高pH状態への暴露を含む、当業者に既知のいくつもの手段によって達成することができる。
【0112】
タンパク質は、それだけに限らないが、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、サイズ排除、およびヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー)、ゲル濾過、遠心分離、または示差溶解度(differential solubility)、エタノール沈殿、またはタンパク質精製のための任意の他の利用可能な技法を含めた、標準的な方法によって単離し、精製することができる(例えば、そのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Scopes、Protein Purification Principles and Practice 2版、Springer−Verlag、New York、1987; Higgins,S.J.およびHames,B.D.(編)、Protein Expression:A Practical Approach、Oxford Univ Press、1999;ならびにDeutscher,M.P.、Simon,M.I.、Abelson,J.N.(編)、Guide to Protein Purification:Methods in Enzymology(Methods in Enzymology Series、182巻)、Academic Press、1997を参照されたい)。特に免疫アフィニティークロマトグラフィーについては、タンパク質は、そのタンパク質に対して産生され、固定支持体に固定された抗体を含むアフィニティーカラムにこれを結合することによって、単離することができる。アフィニティータグ、例えば、インフルエンザコート配列、ポリヒスチジン、またはグルタチオンSトランスフェラーゼなどを、標準的な組換え技術によりタンパク質に結合させることによって、適切なアフィニティーカラムを通過させることによる容易な精製を可能にすることができる。精製プロセスの間のポリペプチドまたはタンパク質の分解を低減または排除するために、プロテアーゼ阻害剤、例えば、フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)、ロイペプチン、ペプスタチンまたはアプロチニンなどを、任意のまたはすべての段階で加えることができる。プロテアーゼ阻害剤は、発現されたポリペプチドまたはタンパク質を単離し、精製するために、細胞を溶解しなければならない場合、特に有利である。
【0113】
本発明のある特定の方法によって発現されるタンパク質は、本発明ではない細胞培養条件下で生じた場合に有するよりも、広範な、および/または修飾されたグリコシル化パターンを有することができる。したがって、精製工程で利用することができる本発明の1つの実用的な利点は、ある特定の本発明の方法および/または組成物によって生じさせた糖タンパク質上に存在する追加の、および/または修飾された糖残基により、その糖タンパク質をより容易に精製するため、または本発明ではない方法および/もしくは組成物によって生じさせた糖タンパク質について可能であるよりも高く精製するために専門家が使用することができる、異なる生化学的性質を糖タンパク質に与えることができることである。
【0114】
当業者は、正確な精製技法が、精製されるポリペプチドもしくはタンパク質の特性、ポリペプチドもしくはタンパク質が発現される細胞の特性、および/または細胞が成長した培地の組成物に応じて様々となり得ることを理解するであろう。
【0115】
医薬製剤
本発明のタンパク質製剤は、医薬上許容される担体または賦形剤の存在下で医薬組成物として製剤化することができる。本明細書で説明されるような、タンパク質製剤を含有する組成物は、対象に投与することができ、またはそれだけに限らないが、非経口、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、経口、頬側、舌下、経鼻、気管支、眼(opthalmic)、経皮(局所的)、経粘膜、直腸、および膣の経路を含めた任意の利用可能な経路によるデリバリーのために最初に製剤化することができる。本発明の医薬組成物は、哺乳動物細胞系統から発現された、精製されたポリペプチドまたはタンパク質、医薬上許容される担体と組み合わせたデリバリー剤(すなわち、上述したような、陽イオンポリマー、ペプチド分子トランスポーター、界面活性剤など)を一般に含む。本明細書で使用される場合、用語「医薬上許容される担体」として、医薬投与に適合した、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが挙げられる。補助的な活性化合物も、本発明の組成物中に組み込むことができる。例えば、本発明によって作製されたタンパク質またはポリペプチドは、全身性薬物療法用薬物、例えば、トキシン、低分子量細胞毒性薬、生物学的応答調節物質、および放射性核種にコンジュゲートすることができる(例えば、Kunzら、Calicheamicin derivative−carrier conjugates、US04/0082764A1を参照されたい)。本発明による医薬組成物を調製するのに有用な追加の成分として、例えば、香味剤、滑剤、可溶化剤、懸濁剤、増量剤、流動促進剤、圧縮助剤、結合剤、錠剤崩壊剤、封入材料、乳化剤、緩衝液、保存剤、甘味料、増粘剤、着色剤、粘性調節剤、安定剤もしくは浸透圧調節剤、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0116】
あるいは、またはさらに、本発明によって作製されたタンパク質またはポリペプチドは、1つまたは複数の追加の医薬として活性な薬剤と組み合わせて(同時にでも、経時的にでも)投与することができる。これらの医薬として活性な薬剤の例示的なリストは、参照により本明細書に組み込まれている、Medical Economics Co.、Inc.、Montvale、NJ、2001によって出版された医師用卓上参考書、55版に見出すことができる。これらのリストされた薬剤の多くについては、医薬として有効な投与量およびレジメンは、当技術分野で知られており、多くは、医師用卓上参考書自体に示されている。
【0117】
固体の医薬組成物は、1つまたは複数の固体担体、および所望により1つまたは複数の他の添加剤、例えば、香味剤、滑剤、可溶化剤、懸濁剤、増量剤、流動促進剤、圧縮助剤、結合剤または錠剤崩壊剤または封入材料などを含有することができる。適当な固体担体として、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリジン、低融点ワックスもしくはイオン交換樹脂、またはこれらの組合せが挙げられる。粉末医薬組成物では、担体は、微粉化した固体とすることができ、これは、微粉化した活性成分と混合されている。錠剤では、活性成分は、適当な比率で必要な圧縮特性を有する担体、および所望により他の添加剤と一般に混合され、圧縮されて所望の形状およびサイズにされる。
【0118】
液体医薬組成物は、本発明によって発現されたポリペプチドまたはタンパク質、および1つまたは複数の液体担体を含有することによって、溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エリキシル剤、または加圧組成物を形成することができる。医薬上許容される液体担体として、例えば、水、有機溶媒、医薬上許容される油もしくは脂肪、またはこれらの組合せが挙げられる。液体担体は、他の適当な医薬添加剤、例えば、可溶化剤、乳化剤、緩衝液、保存剤、甘味料、香味剤、懸濁剤、増粘剤、染料、粘性調節剤、安定剤もしくは浸透圧調節剤、またはこれらの組合せを含有することができる。液体製剤が、小児科での使用のために意図されている場合、アルコールを含めることを回避するか、アルコールの量を制限することが一般に望ましい。
【0119】
経口または非経口投与に適した液体担体の例として、水(所望により、ナトリウムカルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体などの添加剤を含有する)、アルコールもしくはその誘導体(一価アルコールもしくはグリコールなどの多価アルコールを含む)、または油(例えば、ヤシ油およびラッカセイ油)が挙げられる。非経口投与については、担体は、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルなどの油性エステルとすることもできる。加圧組成物用の液体担体は、ハロゲン化炭化水素、または他の医薬上許容される噴霧剤とすることができる。
【0120】
滅菌溶液または懸濁液である液体医薬組成物は、例えば、筋肉内、腹腔内、硬膜外、くも膜下腔内、静脈内または皮下の注射によって、非経口的に投与することができる。経口または経粘膜投与用の医薬組成物は、液体または固体の組成物形態のいずれであってもよい。
【0121】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、その投与の意図した経路と適合するように製剤化される。非経口、皮内、または皮下用途に使用される溶液または懸濁液は、以下の成分を含むことができる:滅菌希釈剤、例えば、注射用水、食塩液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒など;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなど;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなど;エチレンジアミン四酢酸などのキレート化剤;緩衝液、例えば、酢酸、クエン酸またはリン酸など、および張性を調節するための作用剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロースなど。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基を用いて調節することができる。非経口製剤は、アンプル、使い捨てシリンジ、またはガラスもしくはプラスチック製の多回用量バイアル中に封入することができる。
【0122】
注射可能用途に適した医薬組成物は、滅菌水溶液(水溶性である場合)または分散系、および滅菌注射溶液または分散系の即時調製用の滅菌粉末を一般に含む。静脈内投与については、適当な担体として、生理食塩水、静菌水、CREMOPHOR EL(商標)(BASF、Parsippany、NJ)、またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。すべての場合において、組成物は無菌的であるべきであり、容易に注射ができる程度まで流動性であるべきである。有利には、ある特定の医薬製剤は、製造および貯蔵条件下で安定であり、細菌および菌類等の微生物の汚染作用から保護されていなければならない。一般に、関連する担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレン(polyetheylene)グリコールなど)、およびこれらの適当な混合物を含有する溶媒または分散系媒質とすることができる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散系の場合、要求される粒径の維持、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。ある特定の場合では、組成物中に等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えば、マンニトール(manitol)、ソルビトールなど、または塩化ナトリウムを含めることが有用になる。注射可能組成物の吸収の延長は、吸収を遅延させる作用剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンをこの組成物中に含めることによってもたらすことができる。
【0123】
滅菌注射溶液は、必要に応じて上記に列挙した成分の1つまたは組合せとともに、適切な溶媒中に必要量の精製されたポリペプチドまたはタンパク質を組み込み、その後に濾過滅菌を行うことによって調製することができる。一般に、分散系は、哺乳動物細胞系統から発現された、精製されたポリペプチドまたはタンパク質を、基本分散媒質と上記に列挙したものからの必要とされる他の成分とを含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことによって調製される。滅菌注射溶液調製用の滅菌粉末の場合、有利な調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、これらにより、あらかじめ滅菌濾過された、活性成分と任意の追加の所望の成分との溶液から、これらの成分の粉末が得られる。
【0124】
経口組成物は、不活性な希釈剤と食用の担体を一般に含む。経口治療投与の目的のために、精製されたポリペプチドまたはタンパク質を、賦形剤とともに組み込み、錠剤、トローチ、またはカプセル、例えば、ゼラチンカプセルの形態で使用することができる。経口組成物は、例えば、口内洗剤として使用するために、流体担体を使用して調製することもできる。医薬として適合した結合剤、および/またはアジュバント物質を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、ピル、カプセル、トローチなどは、以下の成分、または類似した性質の化合物のいずれも含有することができる:結合剤、例えば、微結晶性セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチンなど;賦形剤、例えば、デンプンもしくはラクトースなど、崩壊剤、例えば、アルギン酸、プリモゲル(Primogel)、もしくはコーンスターチなど;滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムもしくはステロテス(Sterotes)など;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;甘味剤、例えば、スクロースもしくはサッカリンなど;または香味剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ香料など。そのような製剤は、望ましい場合、例えば、小児、錠剤を嚥下する能力が損なわれた個体、または動物への投与を促進するため、混合された咀しゃく製剤もしくは液体製剤、または食品材料もしくは食品液体とすることができる。経口デリバリー用製剤は、消化管内での安定性を改善し、および/または吸収を高めるための作用剤を有利に組み込むことができる。
【0125】
吸入による投与については、哺乳動物細胞系統から発現されたタンパク質製剤とデリバリー剤を含む本発明の組成物は、鼻腔内、または吸入によっても投与することができ、乾燥粉末吸入器、または適当な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、ヒドロフルオロアルカン、例えば、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA 134A(商標))、もしくは1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA 227EA(商標))など、二酸化炭素もしくは他の適当なガスを使用する、しないにかかわらず、加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザーもしくはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示の形態で送達されることが好都合である。加圧エアロゾルの場合、投与量単位は、計量された、例えば、治療有効量を送達するためのバルブを提供することによって決定することができる。本発明は、経鼻スプレー、吸入器、または上気道および/もしくは下気道への他の直接デリバリーを使用する、本発明の組成物のデリバリーを特に企図している。インフルエンザウイルスに向けられたDNAワクチンの鼻腔内投与により、CD8 T細胞応答が誘発されることが示され、この経路によって送達される場合、呼吸器内の少なくとも一部の細胞は、DNAを取り込むことができ、本発明のデリバリー剤により、細胞取り込みが増強されることを示している。ある特定の実施形態によれば、哺乳動物細胞系統から発現された、精製されたポリペプチドとデリバリー剤を含む組成物は、エアロゾル投与用の大きな多孔質粒子として製剤化される。
【0126】
調節放出およびパルス放出経口剤形は、放出速度調節物質として作用する賦形剤を含有することができ、これらは、デバイスの本体上にコーティングされており、および/または本体中に含まれている。放出速度調節物質として、まったくそれだけに限るものではないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、ポリエチレンオキシド、キサンタンガム、カルボマー、アンモニオメタクリレートコポリマー、硬化ヒマシ油、カルナウバワックス、パラフィンワックス、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸コポリマー、およびこれらの混合物が挙げられる。調節放出およびパルス放出経口剤形は、放出速度調節賦形剤の1つまたは組合せを含有することができる。放出速度調節賦形剤は、剤形内、すなわちマトリックス内、および/または剤形上、すなわち表面もしくはコーティング上の両方に存在してもよい。
【0127】
全身投与は、経粘膜または経皮手段によるものとすることもできる。経粘膜または経皮投与については、浸透されるバリアーに適切な浸透剤が、製剤中に使用される。そのような浸透剤は当技術分野で一般に知られており、これには、例えば、経粘膜投与について、界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、経鼻スプレーまたは坐剤の使用により達成することができる。経皮投与については、精製されたポリペプチドまたはタンパク質とデリバリー剤は、例えば、以下のうちの1つまたは複数の混合物中に懸濁または溶解した活性化合物を含有する適当な軟膏剤として製剤化することができる:鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス、および水。あるいは、これらは、例えば、以下のうちの1つまたは複数の混合物中に懸濁または溶解した、適当なローション剤またはクリームとして製剤化することができる:鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水。
【0128】
あるいは、化合物は、坐剤もしくはペッサリーの形態で投与することができ、またはこれらは、ゲル、ヒドロゲル、ローション剤もしくは他のグリセリド、溶液、クリーム、軟膏剤もしくは散粉剤の形態で局所的に適用することができる。
【0129】
いくつかの実施形態では、組成物は、インプラントおよびマイクロカプセル化デリバリーシステムを含めた制御放出製剤など、タンパク質を身体からの急速な排出から保護する担体ともに調製される。一般に、本発明の組成物は、即時放出、遅延放出、調節放出、徐放、パルス放出、または制御放出デリバリー用に製剤化することができる。エチレンビニルアセテート、ポリアンヒドリド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの、生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。そのような製剤の調製方法は、当業者に明白となるであろう。適当な材料は、Alza Corporation and Nova Pharmaceuticals,Incから市販で得ることもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体に感染した細胞を標的にしたリポソームを含む)も医薬上許容される担体として使用することができる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されているように、当業者に既知の方法によって調製することができる。
【0130】
本発明によって作製されたタンパク質は、シクロデキストリンと組み合わせて使用することもできる。シクロデキストリンは、ある特定の分子と包接および非包接錯体を形成することが知られている。シクロデキストリン錯体の形成により、タンパク質またはポリペプチドの溶解度、溶解速度、バイオアベイラビリティーおよび/または安定性を修飾することができる。シクロデキストリン錯体は、ほとんどの剤形および投与経路に対して一般に有用である。タンパク質またはポリペプチドとの直接錯体形成の代替として、シクロデキストリンは、補助添加剤、例えば、担体、希釈剤、または可溶化剤として使用することができる。α−、β−、およびγ−シクロデキストリンが最も一般に使用され、適当な例は、公開国際特許出願第WO91/11172号、同第WO94/02518号および同第WO98/55148号に記載されている。
【0131】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、錠剤またはカプセルなどの単位剤形で提供される。投与の容易さと投与量の均一性のために、経口または非経口組成物を単位剤形で製剤化することが有利となり得る。そのような形態では、組成物は、適切な量のポリペプチドまたはタンパク質を含有する単位用量にさらに分割される。単位剤形は、梱包された組成物、例えば、小包にした粉末、バイアル、アンプル、液体を含むプレフィルドシリンジまたはサシェとすることができる。単位剤形は、例えば、カプセルまたは錠剤自体とすることができ、またはこれは、梱包形態での適切な数の任意のそのような組成物とすることができる。当業者が認識するように、治療上有効な単位投与量は、例えば、投与方法、ポリペプチドもしくはタンパク質の効力、および/またはレシピエントの体重、および医薬組成物中の他の成分の素性を含めたいくつかの要因に依存することになる。
【0132】
タンパク質製剤、例えばタンパク質製剤を含有する医薬組成物は、必要に応じて様々な間隔で、異なる時間の期間にわたって、例えば、約1から10週間の間、2から8週間の間、約3から7週間の間、約4、5、または6週間などに、1週間当たり1回投与することができる。当業者は、それだけに限らないが、疾患または障害の重症度、以前の治療、対象の一般的な健康状態および/または年齢、ならびに存在する他の疾患を含む、ある特定の要因が、対象を有効に治療するのに要求される投与量およびタイミングに影響し得ることを理解するであろう。本明細書に記載されるようなポリペプチドまたはタンパク質を用いた対象の治療は、単回の治療または一連の治療を含むことができる。適切な用量は、ポリペプチドまたはタンパク質の効力に依存する場合があり、例えば、あらかじめ選択された所望の応答が達成されるまで、漸増用量を投与することによって、特定のレシピエントに所望により適応させることができることがさらに理解される。任意の特定の動物対象についての具体的な用量レベルは、使用される特定のポリペプチドまたはタンパク質の活性、対象の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、および食餌、投与時間、投与経路、排泄速度、任意の薬物の組合せ、ならびに調節される発現または活性の程度を含む、様々な要因に依存し得ることが理解される。
【0133】
本発明は、非ヒト動物の治療のための、本明細書に記載される組成物の使用を包含する。したがって、用量および投与方法は、獣医薬理学および獣医医薬の既知の原則によって選択することができる。ガイダンスは、例えば、Adams,R.(編)、Veterinary Pharmacology and Therapeutics、8版、Iowa State University Press;ISBN:0813817439;2001に見出すことができる。
【0134】
医薬組成物は、投与指示書と一緒に容器、パック、またはディスペンサー中に含めることができる。
【0135】
以下の実施例は例示的であり、限定的なものではない。
【実施例】
【0136】
抗体M1〜M3の溶液を、様々な塩濃度、すなわち、様々なイオン強度で、静的光散乱、動的光散乱、および非対称フローフィールドフローフラクショネーションによって評価した。
【0137】
抗体溶液の調製
すべての溶液は、適切な塩含有緩衝溶液中に、室温で、緩衝液を2回交換して一晩透析することによって調製した。
【0138】
機器による方法
静的光散乱
静的光散乱(SEC−MALS)を使用することによって、抗体溶液の重量平均分子量を測定した。静的光散乱実験のために、抗体溶液を4mg/mLに希釈し、複数の試料を計測器中に手作業で注入した。この抗体溶液を、Wyatt TechnologyからのMini Dawn計測器を使用して、複数の角度(45、90および135)での静的光散乱を利用して20℃で測定した。90°の散乱データを使用することによって、重量平均分子量を計算した。全データセット(複数の角度)を使用することによってジムプロットを作成し、これを使用して分子量および第2ビリアル係数を計算した。
【0139】
動的光散乱
動的光散乱を使用することによって、溶液中の抗体の粒径を測定した。抗体溶液は、Wyatt TechnologyからのDynaPro計測器を使用して、25℃で90°の角度で測定した。
【0140】
非対称フローフィールドフローフラクショネーション
溶液中の抗体の粒径を測定するために、非対称フローフィールドフローフラクショネーション(AF4)も使用した。AF4測定は、Wyatt TechnologyからのEclipse計測器で実施した。AF4分析パラメーターは以下の通りであった:温度20℃、透析緩衝液と同じ実行緩衝液、10KDaのカットオフ膜。
【0141】
光学濃度
タンパク質試料の濁度は、400nmの波長でSpectraMax UV−Visを使用して、見かけの光学濃度(特定波長の光の吸光度)として測定した。
【実施例1】
【0142】
IgG1抗体M1(Myo−029)の分析
抗体M1溶液は、塩濃度、すなわちイオン強度に応じて大きな乳光効果を示した。図1は、約20mg/mLのタンパク質で、濃度が0mMのNaClから150mMのNaClまで増加する場合の、視覚的に認知できる乳光の変化を示す。0mMのNaClから100mMのNaClの範囲の抗体M1溶液は、動的光散乱によっても分析し、試料は、約5mg/mLに希釈した。収集したデータを表1に示す。図1は、漸増NaCl濃度に曝された抗体M1(本明細書では、「Myo−029」とも呼ばれる)溶液の画像を示す(視覚的に認知できる乳光の増大を示している)。
【0143】
図2は、0mMのNaCl溶液と100mMのNaClの抗体M1溶液についての動的光散乱のプロットを示し、そのデータは表1に含まれている。
【0144】
表1:抗体M1についての動的光散乱データ
【0145】
【表1】
【0146】
ピーク2とピーク3の種の%質量の増加は、図1で視覚的に認知できる乳光の増大と相関する。0mMのNaCl溶液中のピーク3の存在は、抗体M1については、低塩濃度でも少量の乳白色種が存在することを示す。
【0147】
抗体M1(20mg/mLのタンパク質で)の100mMのNaCl溶液の非対称フローフィールドフローフラクショネーションにより、図3に示すように大きな種が示された。SEC−HPLC(3mg/mLに希釈された試料)では、図4に示すように、同様の抗体M1の100mMのNaCl溶液について、いかなる大きな種も識別することができなかった。
【0148】
抗体M1についての乳光効果の可逆性も検査した。抗体M1溶液を、0mMのNaClから100mMのNaClまで、次いで0mMのNaClに戻して透析した。抗体M1を100mMのNaCl溶液(最初は塩を含まない溶液中)中に一晩透析し、次いで100mMのNaClでの少量のこの物質を、塩を含まない溶液中に戻して一晩透析した。図5は、これら3つの抗体M1溶液についての、視覚的に認知できる乳光の変化を示す。図6は、乳白色の100mMのNaClの中間透析溶液、およびまた0mMのNaClの最終透析溶液についての動的光散乱のプロットを示す。
【0149】
これらのデータは、抗体M1は、極端に大きな種を含有するが、この種は、0mMのNaClで比較的少量で存在するだけであり、この大きな種の濃度は、塩濃度が増加すると増加することを示す。これらのデータは、大きな種は、非対称フローフィールドフローフラクショネーションを使用して識別することができるが、大きすぎてSEC−HPLCカラム上で実行することができず、ベッディング(bedding)によって破壊され、または希釈すると破壊されることも示す。幸いにも、この大きな種は、示したように動的光散乱を使用して分解し、分析することができる。
【実施例2】
【0150】
IgG1抗体M2の分析
抗体M2溶液は、皮下抗体投与に関連した濃度範囲にわたって、大きな乳光効果を示さない。図7は、約20mg/mLのタンパク質で、濃度が0mMのNaClから150mMのNaClまで増加する場合に、視覚的に認知できる乳光の変化がないことを示す。0mMのNaClと150mMのNaClの抗体M2溶液は、約5mg/mLのタンパク質で動的光散乱によっても分析した。収集した動的光散乱データを表2に示す。図8は、0mMのNaCl溶液と150mMのNaClの抗体M2溶液についての動的光散乱のプロットを示し、そのデータは表2に含まれている。
【0151】
表2:抗体M2についての動的光散乱データ
【0152】
【表2】
a「ピーク2」は、表1との比較目的のためだけに含まれている。
【0153】
これらのデータは、抗体M2は、皮下投与に関連する濃度範囲で、容易に認知できるほどの量の乳白色種を有していないことを示す。実際には、ピーク3の質量百分率は、150mMのNaClレベルで、0mMのNaClでの抗体Mについての質量百分率レベルに達するだけである。
【実施例3】
【0154】
抗体M3の分析
抗体M3溶液は、評価した濃度範囲にわたって大きな乳光効果を示さない。0mMのNaClと150mMのNaClの抗体M3溶液を、約5mg/mLで動的光散乱によって分析した。収集した動的光散乱データを表3に示す。
【0155】
図9は、0mMのNaCl溶液と150mMのNaClの抗体M3溶液についての動的光散乱のプロットを示し、そのデータは表3に含まれている。
【0156】
表3:抗体M3についての動的光散乱データ
【0157】
【表3】
a「ピーク2」は、表1との比較目的のために単に含まれている。
【0158】
これらのデータは、抗体M3は、評価した濃度範囲で、容易に認知できるほどの量の乳白色種を有していないことを示す。実際には、ピーク3の質量百分率は、150mMのNaClレベルで、0mMのNaClでの抗体M1についての質量百分率レベルよりもわずかに高い質量百分率レベルに達するだけである。
【実施例4】
【0159】
第2ビリアル係数の評価
静的光散乱を使用することによって、実施例1〜3で分析した抗体(抗体M1、抗体M2、および抗体M3)についての分子量と第2ビリアル係数(A2)を求めた。第2ビリアル係数測定は、静的光散乱とジム分析を使用して求めることができる。実験は、複数の希薄なタンパク質試料を手作業で光散乱システム中に注入することによって行う。これらの複数の測定と正確な濃度を使用して、ジムプロットを構築することができる。これらのデータを表4に示す。
【0160】
表4:静的光散乱データから計算した分子量と第2ビリアル係数のデータ
【0161】
【表4】
【0162】
第2ビリアル係数のデータは、正のビリアル係数を有する抗体M2および抗体M3と比較した場合、抗体M1の凝集/会合傾向、すなわち、負の第2ビリアル係数を示す。図10は、100mMのNaClでの抗体M1についての第2ビリアル係数のプロットを示し、図11は、0.1から1.1mg/mLのタンパク質濃度範囲の、150mMのNaClでの抗体M2についての第2ビリアル係数のプロットを示す。これらのデータは、第2ビリアル係数は、特定の抗体についての乳光の予測変数として使用することができることを示す。
【実施例5】
【0163】
抗体M1における乳光への塩の素性および塩濃度の効果
抗体M1の乳光への塩の素性の効果を評価するために、いくつかの実験を行った。
【0164】
時間に対する塩の素性による乳光の変化
4つの63mg/mLの抗体M1溶液、すなわち、塩をまったく含まない対照溶液、100mMのNaHPO4を含む溶液、100mMのNaClを含む溶液、および100mMのCaCl2を含む溶液を調製した。次いでこれらの溶液を、室温で1時間静置させた。1時間後のこれらの溶液の画像を図12に示す。図12で分かるように、1時間後の乳光の順序は、NaCl>NaHPO4>CaCl2である。この画像は、乳光は、塩素イオンの存在にもっぱら関係するのではない、すなわち、NaHPO4溶液も乳光を増大させることを示す。
【0165】
次いでこれらの同じ溶液を、2〜8℃に2週間維持した。2週間後のこれらの溶液の画像を図13に示す。図13に示したこれらの溶液のそれぞれは、2〜8℃で2週間後にゲル化することを示し、乳光を増大させた。しかし、ゲル化および乳光の程度は、塩の種類および濃度に依存した。乳光の順序は、1時間後と同じ、すなわちNaCl>NaHPO4>CaCl2であった。今回は示していないが、塩MgCl2も試験し、これは、以下のようなスキーム、すなわち、NaCl>NaHPO4>MgCl2>CaCl2にあてはまった。
【0166】
塩の素性および温度サイクリングによる乳光の変化
400nmでの光学濃度の変化を使用することによって、温度サイクリングの間の乳光への塩の素性の効果をモニターした。この実験のために、4つの40mg/mLの抗体M1溶液、すなわち、塩をまったく含まない対照溶液、100mMのNaHPO4を含む溶液、100mMのNaClを含む溶液、および100mMのCaCl2を含む溶液を調製した。これらの溶液を、2〜8℃から室温まで3サイクル繰り返した。2〜8℃から室温までと2〜8℃に戻すまでの各サイクルは、24時間かけた。OD400nm対サイクル数のプロットを図14に示す。NaCl溶液についての増加しているOD400nm値は、例えば、二次構造の形成の増大を示す。したがって、図14のデータは、液体とゲルの間のサイクリングにより、乳光が増大する可能性があることを示す。
【0167】
塩の素性および塩濃度による乳光の変化
塩濃度の変化に対する高分子量の百分率を、SEC−HPLCによってモニターした。この実験のために、CaCl2、NaCl、MgCl2、およびNaHPO4の溶液を、0、5、10、および20mMの濃度で調製した。高分子量物質の百分率を各試料について測定した。高分子量の百分率対濃度のプロットを図15に示す。高分子量種の百分率は、CaCl2を除く各塩で増加する。
【0168】
塩の素性および塩濃度による光学濃度の変化
400nmでの光学濃度の変化を使用することによって、乳光への塩の素性および塩濃度の効果をモニターした。この実験のために、MgCl2、CaCl2およびNaClの塩を使用して一連の抗体M1溶液を調製した。OD400nm対塩濃度のプロットを図16に示す。図17は、図16のデータの拡大した領域を示す。これらのデータは、高分子量種は、NaClの濃度が増加すると増加するが、CaCl2とMgCl2についてはわずかに増加するだけであることを示す。
【0169】
20mMのCaCl2中の抗体M1濃度に対する光学濃度の変化
最後に、400nmでの光学濃度の変化を使用することによって、20mMのCaCl2溶液中で抗体M1の濃度を変化させることの効果をモニターした。この実験のために、10、20、50、60、および75mg/mLの抗体M1の溶液を、20mMのCaCl2中で調製した。OD400nm対抗体M1の濃度のプロットを図18に示す。これらのデータは、抗体M1の濃度が増加するとともに高次構造が増加することを示す。
【0170】
実施例5についてのすべてのデータに関して、いくつかの知見を得ることができる。乳光効果は、以下の様式、すなわち、NaCl>Na2PO4>MgCl2>CaCl2で塩に依存する。所与のタンパク質濃度については、乳光は、塩濃度が増加するにつれて最初は増大し、次いで横ばい状態になるか、低下する。乳光は、タンパク質濃度とともに増大する。評価したすべての塩により、2〜8℃で抗体M1はゲル化し、ゲル化のタイミングは塩に依存し、乳光のレベルに関係するように思われる。
【0171】
本発明で使用される抗体は、抗体M1(本明細書では「Myo−029」とも呼ばれる)、抗体M2、および抗体M3であることが好ましい。抗体製剤(抗体M1、抗体M2、または抗体M3を含有していることが好ましい)のイオン強度が、本発明によって低減または減少する場合、イオン強度の低減または減少は、イオン強度と抗体濃度の比が低減するように通常実施される。
【0172】
本明細書で述べたすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が本明細書に参照により組み込まれている。
【0173】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内にある。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれている、2006年10月12日に出願された米国出願第60/851,651号に対して優先権を主張する。
【0002】
本発明は、タンパク質製剤の乳光を低減するための方法、ならびに乳光が減少した濃縮タンパク質製剤の組成物、例えば医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
抗体を含めたタンパク質は、過去20年間、薬物療法において使用されてきた。高治療用量を達成するために、抗体は、高濃度(約10mg/mlから100mg/ml以上)で一般に製剤化される(Brekke,O.H.およびSandlie,I.(2003)Nat.Rev.Drug Discov.2:52〜62)。ある特定のタンパク質投与様式では、高度に濃縮されたタンパク質製剤が一般に必要とされる。例えば、治療抗体の皮下投与は、約100mg/ml超の濃度で処方されることが多い。これらの濃縮タンパク質製剤の一部は、高濃度で乳白色外観、すなわち、多くの場合乳光と呼ばれる性質を持つようになる(Schellekens,H.(2002)Nat.Rev.Drug Discov.1:457〜462)。
【0004】
濃縮タンパク質溶液における乳白色外観は、とりわけ、タンパク質濃度、レイリー散乱におけるその効果、温度、溶質−溶質相互作用の性質を含めた、様々な要因から生じ得る。タンパク質が乳光の影響を受けやすい場合、乳白色外観は、タンパク質濃度が増加するにつれて、通常増大する。乳白色溶液の凝集タンパク質溶液との類似性により、医薬製剤において、タンパク質活性、および免疫原性をもたらす潜在性を喪失することに関する懸念が生じている(Pinckardら(1967)Clin Exp.Immunol.2:331〜340;Robbinsら(1987)Diabetes 36:838〜845;Clelandら(1993)Crit.Rev.Therapeutic Drug Carrier Systems 10:307〜377)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【特許文献1】Brekke,O.H.ら、Nat.Rev.Drug Discov.2:52〜62(2003)
【特許文献2】Schellekens,H.、Nat.Rev.Drug Discov.1:457〜462(2002)
【特許文献3】Pinckardら、Clin Exp.Immunol.2:331〜340(1967)
【特許文献4】Robbinsら、Diabetes 36:838〜845(1987)
【特許文献5】Clelandら、Crit.Rev.Therapeutic Drug Carrier Systems 10:307〜377(1993)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、乳光が低減した、高度に濃縮された治療タンパク質、例えば、治療抗体の製剤を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、抗体製剤中の塩、例えば、塩化ナトリウムの濃度を低減することにより、製剤の乳白色外観および/または製剤中の高分子量種の形成が低減するという発見に、少なくともある程度基づく。したがって、タンパク質、例えば抗体の製剤の乳白色外観を、例えば、製剤のイオン強度を修飾することによって低減する方法、ならびに乳光が減少した濃縮タンパク質の組成物、例えば、医薬組成物が開示されている。精製プロセスにおいて選択された工程で、塩濃度(複数も)をモニターおよび/または低減する精製方法も開示されている。
【0008】
したがって、一態様では、本発明は、タンパク質製剤、例えば、抗体製剤(例えば、タンパク質、例えば抗体を含む溶液)の乳光を減少させ、またはこの製剤中の高分子量種の量を低減する方法を特徴とする。この方法は、タンパク質製剤の乳白色外観、および/またはこの製剤中の高分子量種の量が低減および/または排除されるように、製剤のイオン強度を修飾する工程、例えば、減少または増大させる工程を含む。実施形態では、タンパク質製剤の乳白色外観、および/またはこの製剤中の高分子量種の量が低減および/または排除されるように、タンパク質製剤中のイオン強度とタンパク質濃度、例えば抗体濃度の比を修飾しまたは変化させ、例えば、減少または増大させる。実施形態では、タンパク質製剤は、医薬として有効な濃度、例えば、抗体製剤について、約5、10、25、50、75、100、125、150mg/mlで、イオン強度を低減する前に、望まれない乳光および/または高分子量種を示す(例えば、約1、2、3、4もしくは5、もしくはそれ以上の欧州薬局方基準を超える濁度、および/または約2%、3%、5%、10%、15%、20%、30%、もしくはそれ以上のタンパク質製剤の質量百分率に相当する高分子量種の割合)。
【0009】
実施形態では、製剤中のタンパク質は、本明細書で以下により詳細に説明するように、分泌タンパク質、例えば、抗体、抗体の抗原結合性断片、結合ドメイン−免疫グロブリン融合物(例えば、SMIP(商標))、可溶性受容体、受容体融合物、サイトカイン、成長因子、酵素、または凝固因子である。タンパク質が抗体である実施形態では、抗体は、少なくとも1本、好ましくは2本の全長重鎖、および少なくとも1本、好ましくは2本の軽鎖を含むことができる。本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、抗原結合性断片などの抗体断片または変異体分子(例えば、Fab、F(ab’)2、Fv、単鎖Fv断片、および重鎖断片(例えば、ラクダVHH))を含む。抗体は、モノクローナルまたは単一特異性抗体とすることができる。抗体は、ヒト、ヒト化、キメラ、CDR移植、またはin vitro生成抗体とすることもできる。さらに他の実施形態では、抗体は、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4から選択される重鎖定常領域を有する。別の実施形態では、抗体は、例えば、κまたはλから選択される軽鎖を有する。一実施形態では、定常領域を変化させ、例えば突然変異させて抗体の性質を修飾する(例えば、Fc受容体結合性、抗体のグリコシル化、システイン残基数、エフェクター細胞機能、または補体機能のうちの1つまたは複数を増大または減少させる)。一般に、抗体は、所定の抗原、例えば、障害、例えば、神経変性障害、代謝性障害、炎症性障害、自己免疫障害および/または悪性障害と関連する抗原に特異的に結合する。本発明の方法において使用することができる例示的な抗体として、それだけに限らないが、Aβペプチド、インターロイキン−12(IL−12)、インターロイキン−13(IL−13)、インターロイキン−22(IL−22)、5T4、ならびに成長および分化因子−8(GDF−8)に対する抗体が挙げられる。実施形態では、抗体は、抗GDF−8抗体、例えば、Myo−029である。
【0010】
実施形態では、タンパク質は、より高いタンパク質および/または塩の濃度で自己凝集し、例えば、高塩製剤(例えば、約50から200mMの塩濃度(例えば、約100から150mMの塩)を有する製剤)において、負の第2ビリアル係数を有する。例えば、タンパク質は、例えば、150mMの塩化ナトリウムを含有する製剤において、約−1×10−1から−1、約−1×10−2から−10×10−2、約−1×10−3から−10×10−3、約−1×10−4から−10×10−4、約−1×10−5から−10×10−5mol−mg/g2の第2ビリアル係数を有する。他の実施形態では、タンパク質は、例えば、150mMの塩化ナトリウムを含有する製剤において、正のビリアル係数、例えば、約1×10−5から10×10−5、約1×10−4から10×10−4、約1×10−3から10×10−3、約1×10−2から10×10−2mol−mg/g2を有する。タンパク質が抗体またはその断片である実施形態では、抗体は、本発明の方法を実行する前および/または実行した後に、約0.1から約1,000mg/ml、一般に、約0.5から約500、約1から400、約5から300、約10から250、約15から200、約20から150、約50から100mg/mlの濃度で存在する。
【0011】
実施形態では、タンパク質製剤のイオン強度は修飾される、例えば、製剤中に存在する塩の濃度を減少させる、および/または製剤中に使用された塩を、より少ない乳光しか誘発しない塩と置換することによって低減される。製剤中の塩は、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムまたはリン酸ナトリウムのうちの1つまたは複数から選択することができる。製剤中の塩濃度は、より低濃度、例えば、乳白色製剤中の濃度の約2、3、5、10、または100分の1にすることができる。例えば、タンパク質製剤中の塩(例えば、塩化ナトリウム)濃度は、約300mM未満、一般に、約200、150、100、75、50、40、30、25、20、15、10、5、4、3、2、1mM未満、または0mMに低減することができる。タンパク質製剤中の塩濃度は、例えば、限外濾過または透析のうちの1つまたは複数から選択される、1つまたは複数の濾過方法を適用することによって修飾する、例えば低減することができる。あるいは、またはさらに、タンパク質製剤中のイオン強度は、例えば、1つまたは複数の第1の塩、例えば、高い乳光誘発物質を、1つまたは複数の第2の塩、例えば、より低い乳光誘発物質と置換することによって修飾され、例えば、減少または増大される。高乳光誘発物質から低乳光誘発物質の以下の順序で、抗体製剤中の乳光誘発のレベルによって、以下の例示的な塩が位置づけられた:塩化ナトリウム(NaCl)、リン酸ナトリウム(NaHPO4)、塩化マグネシウム(MgCl2)および塩化カルシウム(CaCl2)。したがって、実施形態では、第1の塩はNaClであり、例えば、NaHPO4、MgCl2、またはCaCl2のうちの1つまたは複数から選択される第2の塩と置換され、第1の塩はNaHPO4であり、例えば、MgCl2またはCaCl2のうちの1つまたは複数から選択される第2の塩と置換され、第1の塩はMgCl2であり、第2の塩であるCaCl2と置換される。実施形態では、例えば、透析または限外濾過によって第1の塩を除去し、タンパク質製剤に第2の塩を加えることによって、第1の塩が、タンパク質製剤中で第2の塩によって置換される。実施形態では、第2の塩の濃度は、第1の塩の濃度より高い。実施形態では、第2の塩の濃度は、第1の塩の濃度に等しい。他の実施形態では、第2の塩の濃度は、第1の塩の濃度より低い。
【0012】
他の実施形態では、タンパク質製剤のイオン強度は、例えば、使用された高乳光誘発物質塩の濃度を減少させることによって、タンパク質の製造および/または精製プロセス中に修飾され、例えば、減少または増大される。本実施形態は、(i)(所望により)タンパク質製剤が、1つまたは複数のタンパク質濃度および/または塩濃度で、乳白色溶液を形成するかどうかを評価する工程;(ii)(所望により)タンパク質製剤に塩濃度を提供する工程;および/または(iii)タンパク質製剤のイオン強度を修飾し、例えば低減する工程(例えば、タンパク質製剤中のイオン強度とタンパク質濃度の比を修飾する工程)を含む。工程(ii)および/または(iii)は、必要な場合、任意の順序で繰り返す、および/または実施することができる。工程(i)は、例えば、本明細書の実施例に記載されているように、様々な濃度のタンパク質および/または塩を含有する1つまたは複数の試料中の乳光および/または高分子量種の存在を検出することによって実施することができる。タンパク質製剤のイオン強度は、例えば、本明細書に記載される1つまたは複数の濾過方法を適用することによって修飾し、例えば低減することができる。あるいは、またはさらに、タンパク質製剤のイオン強度は、タンパク質の製造および/または精製プロセスにおける、1つまたは複数の工程のイオン強度、例えば塩濃度を低減することによって減少させることができる。タンパク質の製造および/または精製プロセスにおけるイオン強度のそのような低減は、1つまたは複数の工程で使用された塩濃度を減少させることによって行うことができる。他の実施形態では、イオン強度は、1つまたは複数の工程で使用された塩を、低乳光誘発物質と置換することによって修飾される。ある特定の実施形態では、製剤中のタンパク質は、例えば、細胞結合タンパク質、可溶性タンパク質、または分泌タンパク質として組換えで作製される、例えば、組換え技術を使用して発現される。そのような実施形態では、タンパク質は、組換え宿主から発現され、分離される(例えば、培地中に分泌され、例えば、遠心分離または濾過によって分離される)。分離されたタンパク質は、それだけに限らないが、プロテインAクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ダイアフィルトレーション、限外濾過、ウイルス除去濾過(viral removal filtration)、陰イオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよび/または陽イオン交換クロマトグラフィーを含めた、当技術分野で既知の方法によってさらに精製される。タンパク質は、さらに凍結乾燥し、および/または緩衝溶液中で復元することができる。本発明の方法は、前述の工程の1つまたは複数において使用される溶液(例えば、洗浄、添加、溶出、復元溶液)のイオン強度、例えば塩濃度を修飾し、例えば低減する工程を含む。
【0013】
理論によって束縛されることなく、限外濾過および透析などの濾過方法を適用した後でも、残留量の塩がタンパク質製剤中に存在する場合があると考えられる。そのような残留塩量は、「ドナン効果」として当技術分野で特徴づけられている(Miro,Mら(2004)Analytica Chimica Acta 512(2):311〜317)。そのような残留塩量は、特に製剤中のタンパク質が自己凝集する傾向を有する、例えば、負のビリアル係数を有する場合、乳白色外観を有するタンパク質製剤に至る場合があるであろう。したがって、本明細書に開示される方法を使用してイオン濃度を修飾する工程は、タンパク質精製技法に対して広い適応性を有することができる。
【0014】
実施形態では、タンパク質製剤の乳光の低減は、溶液の濁度を評価することによって検出される。例えば、タンパク質製剤の濁度は、約5、4、3、2、1またはそれ未満の欧州薬局方基準に低減される。
【0015】
他の実施形態では、タンパク質製剤の乳光の低減は、タンパク質の第2ビリアル係数の変化を評価することによって判定される。例えば、タンパク質の第2ビリアル係数の、2、3、5、10または100倍の変化、例えば、増加または減少が、タンパク質製剤のイオン強度を修飾し、例えば低減した後に検出される。例えば、ビリアル係数は、約1×10−2と1×10−3の間の任意の値から、約1×10−3と1×10−4の間の任意の値に変化し、例えば減少する。
【0016】
さらに他の実施形態では、タンパク質製剤の乳光の低減は、高分子量種の量を求めることによって検出される。高分子量種は、一般に約104、より一般には、約105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、またはそれ以上の分子量を有する。製剤中のタンパク質種の重量平均分子量は、例えば、以下の実施例に記載されるような、光散乱法、例えば、静的および動的光散乱、非対称フローフィールドフローフラクショネーション、またはSEC−HPLCのうちの1つまたは複数を使用して検出することができる。実施形態では、2、3、4、5、6、7、8、9、10、50、または100分の1になる高分子量種は、タンパク質製剤中の乳光の低減を示す。例えば、非凝集タンパク質の質量百分率が、全タンパク質質量の約60〜70%から約95%以上に増加すると同時に、高分子量種の質量百分率が、全タンパク質質量の約30〜40%から約5%未満に減少した(動的光散乱によって検出した場合)。
【0017】
別の態様では、本発明は、タンパク質、例えば抗体の製剤(例えば、本明細書に記載されるような、タンパク質、例えば抗体の製剤)中の高分子量種の形成を減少させる、および/または高分子量種の量を低減する方法を特徴とする。この方法は、タンパク質製剤中の高分子量種の量が低減および/または排除されるように、製剤のイオン強度を修飾する、例えば減少または増加させる工程(例えば、タンパク質製剤中のイオン強度とタンパク質濃度の比を修飾する工程)を含む。
【0018】
実施形態では、高分子量種は、タンパク質凝集体であり、これは、タンパク質および/または塩濃度を低減すると、実質的に可逆的に解離することができる。高分子量種は、一般に約104kDa、より一般には、約105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013kDa、またはそれ以上の分子量を有する。製剤中のタンパク質種の重量平均分子量は、例えば、以下の実施例に記載されるような、光散乱法、例えば、静的および動的光散乱、非対称フローフィールドフローフラクショネーション、またはSEC−HPLCのうちの1つまたは複数を使用して検出することができる。実施形態では、2、3、4、5、6、7、8、9、10、50、または100分の1になる高分子量種は、タンパク質製剤中の乳光の低減を示す。例えば、非凝集タンパク質の質量百分率が、全タンパク質質量の約60〜70%から約95%以上に増加すると同時に、高分子量種の質量百分率が、全タンパク質質量の約30〜40%から約5%未満に減少する(動的光散乱によって検出した場合)。
【0019】
実施形態では、製剤のイオン強度の減少は、本明細書に開示される方法によって行われる。
【0020】
別の態様では、本発明は、タンパク質、例えば抗体の製剤(例えば、本明細書に記載されるような、タンパク質、例えば抗体の製剤)の製造および/または精製プロセスの効率を改善する方法を特徴とする。この方法は、(i)(所望により)タンパク質製剤が、1つまたは複数のタンパク質濃度および/または塩濃度で、乳白色溶液を形成するかどうかを評価する工程;(ii)タンパク質製剤中の高分子量種の量が低減および/または排除されるように、製剤のイオン強度を修飾する、例えば減少させる工程を含む。工程(i)は、例えば、本明細書の実施例に記載されているように、様々な濃度のタンパク質および/または塩を含有する1つまたは複数の試料中の乳光および/または高分子量種の存在を検出することによって実施することができる。タンパク質製剤のイオン強度は、例えば、本明細書に記載される1つまたは複数の濾過方法を適用する、例えば、本明細書に記載されるように、タンパク質製剤中に使用された塩を、低乳光誘発物質と置換する、および/または例えば、本明細書に記載されるように、タンパク質の製造および/もしくは精製プロセスにおける、1つまたは複数の工程のイオン強度を低減することによって修飾し、例えば低減することができる。
【0021】
さらに別の態様では、本発明は、例えば、抗体を作製するプロセスにおいて使用するための塩または塩濃度を選択して、抗体の作製を改善する方法を特徴とする。この方法は、(i)抗体溶液を回収する工程(例えば、マトリックスから抗体を溶出する工程、透析された溶液または他の濾液を回収する工程、および/または乾燥製剤、例えば、凍結乾燥または乾燥した製剤を、第1のイオン強度、例えば第1の塩濃度を有する第1の溶液で可溶化する工程)、(ii)抗体溶液中の乳光および/または高分子量種の存在のレベルを評価する工程であって、(a)乳光および/もしくは高分子量種のレベルが、所定レベル以下である場合、抗体製品、例えば、抗体溶液を含む医薬組成物において使用するために、前記抗体溶液を選択し、または(b)乳光および/もしくは高分子量種のレベルが、所定レベルより高い場合、第2の、例えば、より低いイオン強度(例えば、第2の、例えば、より低い塩濃度)を有する第2の溶液を選択する工程を含む。抗体を含有する第2の溶液中の乳光および/または高分子量種の存在のレベルは、必要な場合評価することができ、乳光のレベルが所定レベル(または所定レベル未満)に到達するまで、追加の溶液を加えることができる。
【0022】
実施形態では、抗体溶液は、それだけに限らないが、プロテインAクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ダイアフィルトレーション、限外濾過、ウイルス除去濾過、陰イオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよび/または陽イオン交換クロマトグラフィーを含めた、当技術分野で既知の1つまたは複数のタンパク質精製方法から回収される。タンパク質は、さらに凍結乾燥し、および/または緩衝溶液中で復元することができる。
【0023】
実施形態では、抗体(第1、第2および追加の)溶液の所定レベルは、医薬として有効な濃度、例えば、抗体製剤について約5、10、25、50、75、100、125、または150mg/mlで、約1、2、3、4、5もしくはそれ以上の欧州薬局方基準よりほぼ大きい、一般に約3の濁度値、および/または1%、2%、3%、5%、10%、15%、20%、30%もしくはそれ以上のタンパク質製剤の質量百分率、一般に約2%への高分子量種の増加である。
【0024】
別の態様では、本発明は、抗体に結合した残留塩濃度の量が、抗体が徹底的に透析された後、例えば、0mMの塩で透析された後に見られる量未満である、抗体精製方法または抗体製剤を特徴とする。
【0025】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載されるようなタンパク質、例えば、抗体製剤が乳白色外観を有する性向を判定する方法を特徴とする。この方法は、(i)(所望により)例えば、表面タンパク質電荷および/もしくは第2ビリアル係数を求めることによって、タンパク質を自己凝集する傾向を有すると認定する工程、ならびに/または(ii)溶液中にタンパク質を含有する1つもしくは複数の試料中の、タンパク質濃度および/もしくは塩濃度を増加および/もしくは減少させた後の、それぞれ高分子量種の形成および/もしくは消失を検出する工程を含む。塩濃度および/またはタンパク質濃度を増加させた後の、負のビリアル係数および/または高分子量種の増加により、製剤中のタンパク質が乳白色外観を有する性向の増大が示される。
【0026】
さらに別の態様では、本発明は、タンパク質、例えば抗体の試料の乳光を評価する方法を特徴とする。この方法は、タンパク質、例えば抗体の試料を提供する工程;1つまたは複数(例えば、少なくとも2つ、3つまたはそれ以上)の塩、例えばNaClの濃度で、濁度および/または高分子量種の存在を求める工程;1つまたは複数の塩、例えばNaClの濃度での濁度および/または高分子量種の存在の関数として、タンパク質、例えば抗体の試料中の乳光レベルについて報告する工程を含む。
【0027】
他の態様では、乳光が低減した、タンパク質、例えば抗体の製剤(ならびに本明細書に開示されるタンパク質製剤を含む、医薬組成物および/または製剤)も、本発明の範囲内である。実施形態では、タンパク質製剤は、本明細書で説明される方法によって作製される。
【0028】
他の実施形態では、タンパク質製剤は、1つまたは複数の高分子量種の除去、例えば、濾過または遠心分離工程の前に、高分子量種と比較して、少なくとも、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の質量百分率の非凝集種を含む(例えば、動的光散乱によって検出される場合)。実施形態では、タンパク質製剤のイオン強度の修飾し、例えば減少により、高分子量種と比較して、2、3、4、5、6、7、8、9、10、50または100倍、非凝集タンパク質の割合が増加する。
【0029】
さらに別の態様では、本発明は、約50、40、30、20、10、5、または1mM未満の塩、例えばNaClにおいて、少なくとも約50、75、100、125、または150mg/mlの濃度で、抗体、例えば、ヒトまたはヒト化抗体を含む、医薬上許容される抗体製剤を特徴とする。
【0030】
別の態様では、本発明は、抗体製剤を提供する方法であって、(i)1つまたは複数の高分子量種の除去、例えば、濾過または遠心分離工程の前に、少なくとも、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の質量百分率の非凝集種を有する、例えばヒトまたはヒト化抗体の抗体溶液を提供する工程、(ii)1つまたは複数の精製工程を実施することによって、中間体抗体溶液を提供する工程、および(iii)この中間体溶液を処理することによって、少なくとも約50から150mg/mlの濃度、および約5、4、3、2、1未満、またはそれ未満の欧州薬局方基準の濁度を有する抗体製剤を提供する工程を含む方法を特徴とする。
【0031】
他の態様、特徴、および利点は、それらの好ましい実施の説明および特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】漸増NaCl濃度に曝された抗体M1(本明細書では「Myo−029」とも呼ばれる)溶液の画像である(視覚的に認知できる乳光の増大を示している)。
【図2】0mMのNaClおよび100mMのNaCl中の抗体M1溶液についての、動的光散乱のプロットを示すグラフである。
【図3】100mMのNaCl中の抗体M1溶液についての、非対称フローフィールドフローフラクショネーションのプロットを示すグラフである。
【図4】100mMのNaCl中の抗体M1溶液についてのSEC−HPLCクロマトグラフを示すグラフである。
【図5】0mMのNaClから100mMのNaClまで、および0mMのNaClに戻って透析された抗体M1溶液の画像である(塩濃度の変化とともに、明白に可逆的な乳光を示している)。
【図6】乳白色種の可逆的形成を示す、抗体M1溶液の動的光散乱のプロットを示すグラフである:(a)0mMのNaClから透析された、100mMのNaCl、および(b)100mMのNaClから透析された0mMのNaCl。
【図7】漸増NaCl濃度での抗体M2溶液の画像である(視覚的に認知できる乳光の増大がないことを示している)。
【図8】0mMのNaClおよび150mMのNaCl中の抗体M2溶液についての、動的光散乱のプロットを示すグラフである。
【図9】0mMのNaClおよび150mMのNaCl中の抗体M3溶液についての動的光散乱のプロットを示すグラフである。
【図10】100mMのNaClでの、抗体M1についての第2ビリアル係数のプロットを示すグラフである。
【図11】100mMのNaClでの、抗体M2についての第2ビリアル係数のプロットを示すグラフである。
【図12】1時間後の乳光を示す、様々な塩を含有する抗体M1溶液の画像である。
【図13】2週間後の乳光を示す、様々な塩を含有する抗体M1溶液の画像である。
【図14】様々な塩を含有する抗体M1溶液についての、OD400nm対温度サイクル数のプロットを示すグラフである。
【図15】様々な塩を含有する抗体M1溶液についての、高分子量の百分率対塩濃度のプロットを示すグラフである。
【図16】様々な塩を含有する抗体M1溶液についての、OD400nm対塩濃度のプロットを示すグラフである。
【図17】図16に示したプロットを拡大した領域を示すグラフである。
【図18】OD400nm対20mMのCaCl2中の抗体M1濃度のプロットを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本願は、製剤のイオン強度を修飾することによって、タンパク質製剤の乳白色外観を低減する方法、ならびに乳光が減少した濃縮タンパク質の組成物、例えば医薬組成物を開示する。選択された工程で塩濃度をモニターおよび/または低減する精製方法も開示されている。
【0034】
一実施形態では、3つの抗体、すなわち、抗体M1(本明細書では「Myo−029」とも呼ばれる)、抗体M2、および抗体M3について、塩濃度、すなわちイオン強度の、濃縮抗体製剤の乳白色外観への影響が評価された。添付した実施例により詳細に説明されるように、すべての3つの抗体は、pH6.0のちょうど10mMのヒスチジン中で、極端に大きな種を比較的少量しか含有していないことが判明した。この大きな種は、大きすぎてSEC−HPLCカラムを使用して分離することができなかった。抗体M1について、抗体製剤中の塩化ナトリウム量を増加させることによってイオン強度を増大させることにより、乳光、ならびに液液相分離の出現が増大する(例えば、図1〜4を参照されたい)。抗体M1について図5〜6で示したように、この乳白色外観は、塩を除去すると可逆的になる。非対称フローフィールドフローフラクショネーション(aFFFF)を使用して、抗体M1について大きな種が観察され、これは、後に動的光散乱法を使用して確認された(図2を参照されたい)。抗体M1と比較して、抗体M2とM3は、目視検査によって検出可能な乳光の著しい増大を示さなかったが(例えば、図7を参照されたい)、光散乱法を使用して、両方の抗体について高分子量種が検出された(図8および9に示した)。
【0035】
抗体M1について計算された負のビリアル係数は、抗体M3と抗体M2(両方とも正のビリアル係数を有する)と比較して、抗体M1の凝集/会合傾向と一致する(図10を図11と比較されたい)。
【0036】
本明細書に示される結果は、研究した抗体の乳白色外観は、主に可逆的自己会合によるものであることを示し、これは、イオン強度を増大させることによってさらに誘発される。したがって、本発明によって開示されるように、濃縮抗体製剤(特に、凝集する傾向を有するもの)の乳白色外観を低減するためには、抗体製剤のイオン強度は、製剤から減少され、および/または処理方法において制限されるべきである。
【0037】
本発明をより容易に理解することができるように、ある特定の用語を最初に定義する。追加の定義は、詳細な説明の全体にわたって示される。
【0038】
用語「乳光」または「乳白色外観」は、溶液、例えばタンパク質製剤中で検出される濁度の、この溶液中の1つまたは複数の成分の濃度、例えば、タンパク質濃度および/または塩濃度の関数としての程度を指す。濁度の程度は、既知の濁度の懸濁液を使用して作成される標準曲線を参照して計算することができる。医薬組成物についての濁度の程度を求めるための参照基準は、欧州薬局方基準(European Pharmacopoeia、4版、Directorate for the Quality of Medicine of the Council of Europe(EDQM)、Strasbourg、France)に基づくことができる。欧州薬局方基準によれば、透明溶液は、欧州薬局方基準による約3の濁度を有する参照懸濁液未満またはこれに等しい濁度を有するものとして定義される。比濁分析の濁度測定により、レイリー散乱を検出することができ、これは一般に、会合または非理想効果のない状態で、濃度とともに直線的に変化する。
【0039】
例えば、理想的な溶液は、以下の式と一致して挙動する:
【0040】
【数1】
(式中、Mは分子量であり、Kは定数であり、Rθはレイリー比(いくつかの実験的パラメーターを合わせる)であり、Cは濃度である)。一方、非理想的な溶液は、以下の式を使用して記述することができる:
【0041】
【数2】
(式中、Bは第2ビリアル係数である)。Mを得るために、KC/Rθをゼロ角度およびゼロ濃度に外挿する。ジムプロットにより、KC/Rθを縦軸に配置し、sin2(θ/2)+kC(式中、kは、任意定数である)を横軸に配置する。したがって、ジムプロットにより、KC/Rθのゼロ角度とゼロ濃度の両方の外挿を同じグラフ上に作成することが可能になる。このジムプロットで、MとBはそれぞれ、ゼロ角度の線の切片と傾きである。
【0042】
用語「第2ビリアル係数」は、排除体積効果と分子間相互作用の尺度を指すことが当技術分野で認知されている(Tessier,P.M.ら(2003)Current Opinion in Biotechnology 14(5):512〜516)。正の第2ビリアル係数は、排除体積効果と分子間反発的相互作用の両方を一般に示す。対照的に、負の第2ビリアル係数は、誘引性分子間相互作用を一般に示す。これらの分子内および分子間相互作用の平衡により、第2ビリアル係数の符号と大きさが決まる。
【0043】
用語「イオン強度」は、溶液中のイオン濃度を指す。「I」をイオン強度とすると
【0044】
【数3】
(式中、ciはイオンiのモル濃度であり、ziはそのイオンの電荷であり、和は、溶液中のすべてのイオンにわたってとられる)である。(IUPAC Compendium of Chemical Terminology、2版(1997)。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「タンパク質」は、ユニットとして機能することができる1つまたは複数のポリペプチドを指す。本明細書で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、ペプチド結合によって一緒に連結した、アミノ酸の連続鎖を指す。この用語「ポリペプチド」は、任意の長さのアミノ酸鎖を指すのに使用されるが、当業者は、この用語は、非常に長い鎖に制限されず、ペプチド結合によって一緒に連結した2個のアミノ酸を含む、最小の鎖も指すことができることを理解するであろう。単一のポリペプチドがユニットとして機能することができる場合、用語「ポリペプチド」と「タンパク質」は、互換的に使用することができる。このタンパク質とポリペプチドという用語には、以下により詳細に説明されるように、抗体、受容体融合物、SMIP(商標)、成長因子、サイトカイン、凝固因子および酵素が含まれる。
【0046】
用語「抗体」は、任意の免疫グロブリンまたはその断片を指し、抗原結合部位を含む任意のペプチドまたはポリペプチドを包含する。この用語には、それだけに限らないが、ポリクローナル、モノクローナル、単一特異性、多特異性、二重特異性、ヒト化、脱免疫化、ヒト、ラクダ、げっ歯類、単鎖、キメラ、合成、組換え、ハイブリッド、突然変異、移植、およびin vitro生成抗体が含まれる。この用語「抗体」には、抗体断片および変異体分子、例えば、Fab、F(ab’)2、Fv、scFv、Fd、dAb、VHHなど、ならびに抗体結合機能を保持する他の抗体断片および変異体分子も含まれる。一般に、そのような断片は、抗原結合ドメインを含む。
【0047】
用語「タンパク質製剤」は、製剤のイオン強度を増大させると高分子量種を形成することができる、溶液中に少なくとも1つのタンパク質、例えば抗体を含有する任意の組成物を指す。タンパク質製剤は、同じ、または異なるタンパク質、例えば異なる結合特異性を有する抗体を含有することができる。
【0048】
用語「高分子量種」は、少なくとも2つのタンパク質、例えば抗体の会合物を指す。実施形態では、タンパク質会合により、単量体タンパク質の高次の凝集物が形成される。この会合は、非共有結合性(例えば、静電気的、ファンデルワールス)タンパク質−タンパク質相互作用の結果として生じ得る。この会合は、タンパク質製剤のイオン強度を低減すると、一般に可逆的になる。タンパク質は、同じ、または異なる、例えば異なる結合特異性を有する抗体とすることができる。高分子量種は、一般に約104、より一般には約105、106、107、108、109、1010、1011、1012、1013、またはそれ以上の分子量を有する。
【0049】
高分子量種を形成するためのタンパク質の凝集は、それだけに限らないが、本明細書でより詳細に説明される、光学濃度、非対称フローフィールドフローフラクショネーション、SEC−HPLC、静的光散乱、および動的光散乱を含めた、いくつかの分析技法を使用してモニターすることができる。
【0050】
タンパク質試料の濁度は、光学濃度(特定波長での光の吸光度)として測定することができる。光学濃度測定は、分光光度法を使用して(例えば、400nmの波長でSpectraMax UV−Visを使用して)行うことができる。光学濃度の測定方法のより詳細な説明については、例えば、Eckhardt BM(1994)J Pharm Sci Technol.48(2):64〜70を参照されたい。
【0051】
非対称フローフィールドフローフラクショネーション(AF4)は、非対称フィールドフローフラクショネーションの種類である。AF4は、生体分子を含めた様々な粒子の高速分別と高分解能の特徴づけができる方法である(Giddings,J.C.;Yang,F.J.;Myers,M.N.、Flow−field−flow fractionation:a versatile new separation method、193 Science 1244〜1245(1976);Giddings,J.C.;Yang,F.J.;Myers,M.N.、Theoretical and experimental characterization of flow field−flow fractionation、48 Anal.Chem.1126〜1132(1976))。AF4は、数ナノメートルから数マイクロメートルの範囲の粒子を分離することができる。フィールドフローフラクショネーション分離は、薄いフローチャネル(クロマトグラフィー分離カラムに相当する)中で起こる。水性または有機溶媒により、試料がこのチャネルを通って搬送される。試料に作用する第1の力である、チャネルを通るこの流れは、チャネルの高さが低いため層流である。第2の力は、チャネル流に垂直に生じる。AF4では、フローチャネルの一面は膜であり、第2の力は、この膜を通ってチャネルを横切る流体の流れである。粒子の分離は、これら2つの力の結果として、この系内で起こる。第1に、チャネル内の層流による速度勾配により、チャネルの中心にある粒子が、チャネルに沿ってより急速に移動し、チャネルの両側に近い粒子から分離される。第2に、第2の力により、試料が膜に向かわされる。サイズの分離が起こるが、これは、チャネルの中心に向かうより急速な溶媒の流れのために、小さな分子が、大きな粒子より急速にチャネルの中心に向かって拡散して戻り、したがって、大きな粒子から分離されるためである。
【0052】
頭字語SEC−HPLCは、サイズ排除クロマトグラフィー−高速液体クロマトグラフィーを表す。SECおよびHPLCは、組合せのSEC−HPLC分析技法と同様に、個々に周知の分析技法である(Garnick,R.L.、Ross,M.J.、Du Mee,C.P.、Encyclopedia of Pharmaceutical Technology、J.Swarbrick、J.C.,Boylan編、1巻:253(Marcel Dekker,Inc.、New York、1988))。各技法の背景にある理論を掘り下げることなく、ゲル浸透クロマトグラフィーとしても知られるSECでは、ゲルマトリックスを通って移動する分子の能力によって、サイズに基づいて分子が分離され、HPLCでは、分子が高圧下で固定媒質を通過して移動する場合の拡散係数に基づいて、分子が分離される。
【0053】
静的および動的光散乱は、溶媒/溶質系から散乱される光のパターンを測定するための、2つの異なる実験方法である(Berne,B.およびPecora,R.Dynamic Light Scattering with Applications to Chemistry、Biology and Physics(Wiley、New York、1976))。静的および動的光散乱により、情報の相補的な断片が得られ、この理由で、これらは、溶液の特徴づけのために一般に相前後して使用される。
【0054】
静的光散乱では、溶液中の粒子によって散乱されるレーザー光の時間平均強度の角度依存性を測定する。粒子のサイズと構造は、検出器の角度の関数として、光散乱強度に影響する。低散乱ベクトルと低濃度の限界では、散乱強度の角度分布は、粒子の形状に無関係になることが十分に確立している(Zimm、B.、The scattering of light and the radial distribution function of high polymer solutions、16 J.Chem.Phys.1093〜9(1948))。上記に考察したように、(Kc/Rθ)をゼロ角度とゼロ濃度に外挿することによって、平均分子量、回転運動半径、および第2ビリアル定数を含めたいくつかの因子を推定することができる。
【0055】
動的光散乱では、溶液中の粒子が、この場合タンパク質であるが、ランダムブラウン運動を起こすために起こる、散乱光強度の時間依存変動を測定する。こうした強度変動を分析することによって、粒子の拡散係数の分布を求めることができる。次いで、この拡散係数の分布は、周知の理論を使用してサイズ分布に変換することができる。動的光散乱に対するサイズの上限は、試料の密度に依存し、すなわち、粒子は移動することができなければならず、したがって上限は、多くの場合、粒子の沈降が拡散プロセスより優位になる点である。下限は、懸濁媒質と比較して、試料が生成する過剰の散乱光、ならびに試料濃度、相対屈折率、レーザーパワー、レーザー波長、検出器感度などを含めた他の要因に依存することになる。
【0056】
タンパク質
ある特定の実施形態では、タンパク質製剤中のタンパク質は、組換えで作製される。本明細書で使用される場合、用語「組換えで発現されたタンパク質」、および「組換えタンパク質」は、宿主細胞から発現されるポリペプチドを指し、この宿主細胞は、そのポリペプチドを発現するように人手によって操作されたものである。ある特定の実施形態では、宿主細胞は哺乳動物細胞である。ある特定の実施形態では、この操作は、1つまたは複数の遺伝的修飾を含むことができる。例えば、宿主細胞は、発現されるポリペプチドをコードする、1つまたは複数の異種遺伝子を導入することによって、遺伝的に修飾することができる。異種の組換えで発現されたポリペプチドは、宿主細胞中で正常に発現されるポリペプチドと同一となり得るか、類似し得る。異種の組換えで発現されたポリペプチドは、宿主細胞に対して異質、例えば、宿主細胞中で正常に発現されるポリペプチドに対して異種にもなり得る。ある特定の実施形態では、異種の組換えで発現されたポリペプチドは、キメラである。例えば、ポリペプチドの一部は、宿主細胞中で正常に発現されるポリペプチドと同一であるか、類似するアミノ酸配列を含有することができ、一方他の部分は、宿主細胞と異質であるアミノ酸配列を含有する。さらに、またはあるいは、ポリペプチドは、両方とも宿主細胞中で正常に発現される、2つ以上の異なるポリペプチドに由来するアミノ酸配列を含有することができる。さらに、ポリペプチドは、両方とも宿主細胞に対して異質である、2つ以上のポリペプチドに由来するアミノ酸配列を含有することができる。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、1つまたは複数の内在性遺伝子を活性化、または上方制御することによって、遺伝的に修飾される。
【0057】
望ましくない程度の乳光を示し、および/または高分子量種を形成する任意のタンパク質を、本発明によって使用することができる。例えば、本発明を使用することによって、とりわけ、任意の医薬的、または商業的に関連した抗体、受容体、サイトカイン、成長因子、酵素、凝固因子、ホルモン、制御因子、抗原、結合剤の乳光を低減することができる。本発明によって分離することができるタンパク質の以下のリストは、本来単に例示的であり、限定する列挙であることを意図していない。当業者は、任意のタンパク質を、本発明によって発現することができることを理解し、必要に応じて、作製される特定のタンパク質を選択することができるであろう。
【0058】
抗体および結合性断片
免疫グロブリンとしても知られる抗体は、一般に、それぞれ約25kDaの2本の軽(L)鎖と、それぞれ約50kDaの2本の重(H)鎖からなる、四量体のグリコシル化タンパク質である。λとκと呼ばれる2種類の軽鎖を、抗体中に見出すことができる。重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、5つの主分類、すなわちA、D、E、G、およびMに割り当てることができ、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分けることができる。それぞれの軽鎖は、N末端可変(V)ドメイン(VL)と定常(C)ドメイン(CL)を含む。それぞれの重鎖は、N末端Vドメイン(VH)、3つまたは4つのCドメイン(CH)、およびヒンジ領域を含む。VHに最も近位のCHドメインは、CH1と呼ばれる。VHとVLドメインは、フレームワーク領域(FR1、FR2、FR3、およびFR4)と呼ばれる比較的保存された配列の4つの領域からなり、このフレームワーク領域は、高頻度可変配列(相補性決定領域、CDR)の3つの領域の骨格を形成する。CDRは、抗体の抗原との特異的相互作用に関与する残基の大部分を含有する。CDRは、CDR1、CDR2、およびCDR3と呼ばれる。したがって、重鎖上のCDR成分は、H1、H2、およびH3と呼ばれ、一方、軽鎖上のCDR成分は、L1、L2、およびL3と呼ばれる。CDR3は、一般に、抗体結合部位内で、最も大きな分子多様性の供給源である。例えば、H3は、2個のアミノ酸残基と短い場合もあり、または26アミノ酸より大きい場合もある。免疫グロブリンの異なる分類のサブユニット構造と3次元配置は、当技術分野で周知である。抗体構造の総説については、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、Harlowら編、1988を参照されたい。当業者は、それぞれのサブユニット構造、例えば、CH、VH、CL、VL、CDR、FR構造は、活性断片、例えば、抗原に結合するVH、VL、もしくはCDRサブユニットの一部、すなわち、抗原結合性断片、または例えば、Fc受容体および/もしくは補体に結合し、および/またはこれらを活性化するCHサブユニットの一部を含むことを認識するであろう。CDRは、Sequences of Proteins of Immunological Interest、US Department of Health and Human Services(1991)、Kabatら編に記載されているように、Kabat CDRを一般に指す。抗原結合部位を特徴づけるための別の基準は、Chothiaによって説明されているような高頻度可変ループを参照することである。例えば、Chothia,D.ら(1992)J.Mol.Biol.227:799〜817;およびTomlinsonら(1995)EMBO J.14:4628〜4638を参照されたい。さらに別の基準は、Oxford Molecular’s AbM抗体モデル化ソフトウェアで使用されるAbM定義である。一般に例えば、Antibody Engineering Lab Manual(Duebel,S.およびKontermann,R.編、Springer−Verlag、Heidelberg)中のProtein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains.を参照されたい。Kabat CDRに関して説明した実施形態は、Chothiaの高頻度可変ループまたはAbMで定義されるループに関する、同様の説明した関係を使用して、もう1つの選択肢として実行することができる。
【0059】
用語、抗体の「抗原結合性断片」の中に包含される結合性断片の例として、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片である、Fab断片、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片である、F(ab’)2断片、(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の1本のアームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片、(vi)ラクダまたはラクダ化可変ドメイン、例えば、VHHドメイン、(vii)単鎖Fv(scFv)、ならびに(viii)二重特異性抗体が挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVLとVHは、別々の遺伝子によってコードされるが、合成リンカーによって、組換え法を使用してこれらを結合することができ、この合成リンカーは、VL領域とVH領域が対を形成することによって一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖(単鎖Fv(scFv)として知られる、例えば、Birdら(1988)Science 242:423〜26;Hustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:5879〜83)を参照されたい)になることを可能にする。そのような単鎖抗体も、用語、抗体の「抗原結合性断片」の範囲内に包含されることが意図されている。これらの抗体断片は、当業者に既知の従来の技法を使用して得られ、これらの断片は、インタクトな抗体と同じ様式で機能を評価される。
【0060】
「二重特異性」または「二機能性」抗体以外、抗体は、それぞれのその結合部位は同一であると理解される。「二重特異性」または「二機能性抗体」は、2つの異なる重鎖/軽鎖対と2つの異なる結合部位を有する人工ハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、ハイブリドーマの融合、またはFab’断片の連結を含めた、様々な方法によって作製することができる。例えば、Songsivilai&Lachmann、Clin.Exp.Immunol.79:315〜321(1990);Kostelnyら、J.Immunol.148、1547〜1553(1992)を参照されたい。
【0061】
抗体を得るために、当業者に既知の多数の方法が利用可能である。例えば、モノクローナル抗体は、既知の方法によってハイブリドーマを生成することにより、作製することができる。次いでこの様式で形成されたハイブリドーマは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)および表面プラズモン共鳴(BIACORE(商標))分析などの標準的な方法を使用してスクリーニングされることによって、特定の抗原に特異的に結合する抗体を産生する、1つまたは複数のハイブリドーマが同定される。任意の形態の特定の抗原、例えば、組換え抗原、自然発生形態、それらの任意の変異体または断片、ならびにそれらの抗原ペプチドを免疫原として使用することができる。
【0062】
抗体を作製する一例示的方法は、タンパク質発現ライブラリー、例えば、ファージまたはリボソームディスプレイライブラリーをスクリーニングすることを含む。ファージディスプレイは、例えば、Ladnerら、米国特許第5,223,409号;Smith(1985)Science 228:1315〜1317;WO92/18619;WO91/17271;WO92/20791;WO92/15679;WO93/01288;WO92/01047;WO92/09690;およびWO90/02809に記載されている。
【0063】
ディスプレイライブラリーの使用に加えて、特定の抗原は、非ヒト動物、例えば、げっ歯類、例えば、マウス、ハムスター、またはラットを免疫するのに使用することができる。一実施形態では、非ヒト動物は、ヒト免疫グロブリン遺伝子の少なくとも一部を含む。例えば、マウス抗体産生が欠損しているマウス系統を、ヒトIg遺伝子座の大きな断片を用いて操作することが可能である。ハイブリドーマ技術を使用して、所望の特異性を有する遺伝子に由来する抗原特異的モノクローナル抗体を作製し、選択することができる。例えば、XENOMOUSE(商標)、Greenら(1994)Nature Genetics 7:13〜21、US2003−0070185、1996年10月31日に公開されたWO96/34096、および1996年4月29日に出願されたPCT出願第PCT/US96/05928号を参照されたい。
【0064】
別の実施形態では、モノクローナル抗体は非ヒト動物から得られ、次いで修飾、例えば、ヒト化、脱免疫化され、キメラは、当技術分野で既知の組換えDNA技法を使用して作製することができる。キメラ抗体を作製するための様々な手法が記載されている。例えば、Morrisonら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81:6851、1985;Takedaら、Nature 314:452、1985、Cabillyら、米国特許第4,816,567号;Bossら、米国特許第4,816,397号;Tanaguchiら、欧州特許公開第EP171496号;欧州特許公開第0173494号、英国特許第GB2177096B号を参照されたい。ヒト化抗体は、例えば、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子を発現するが、内在性マウス免疫グロブリン重鎖および軽鎖遺伝子を発現することができないトランスジェニックマウスを使用しても作製することができる。Winterは、本明細書に記載されるヒト化抗体を調製するのに使用することができる、例示的なCDR移植法を記述している(米国特許第5,225,539号)。特定のヒト抗体のCDRのすべては、非ヒトCDRの少なくとも一部と置換することができ、またはこのCDRの一部のみを、非ヒトCDRと置換することができる。ヒト化抗体を所定の抗原に結合するのに必要なCDRの数を置換するだけでよい。
【0065】
ヒト化抗体は、抗原結合に直接関与していないFv可変ドメインの配列を、ヒトFv可変ドメインに由来する等価な配列と置換することによって生成することができる。ヒト化抗体またはその断片を生成するための例示的な方法は、Morrison(1985)Science 229:1202〜1207によって;Oiら(1986)BioTechniques 4:214によって;ならびにUS5,585,089;US5,693,761;US5,693,762;US5,859,205;およびUS6,407,213によって提供されている。これらの方法は、重鎖または軽鎖のうちの少なくとも1つから、免疫グロブリンFv可変ドメインのすべてまたは一部をコードする核酸配列を単離、操作し、発現させる工程を含む。そのような核酸は、上述したように、所定の標的に対する抗体を産生するハイブリドーマ、ならびに他の供給源から得ることができる。次いで、ヒト化抗体分子をコードする組換えDNAは、適切な発現ベクター中にクローン化することができる。
【0066】
ある特定の実施形態では、ヒト化抗体は、同類置換、コンセンサス配列置換、生殖系列置換および/または逆突然変異の導入によって最適化される。そのような変化した免疫グロブリン分子は、当技術分野で既知のいくつかの技法のいずれによっても作製することができ(例えば、Tengら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、80:7308〜7312、1983;Kozborら、Immunology Today、4:7279、1983;Olssonら、Meth.Enzymol.、92:3〜16、1982)、PCT公開第WO92/06193号またはEP0239400の教示によって作製することができる。
【0067】
抗体は、ヒトT細胞エピトープの特異的欠失、またはWO98/52976およびWO00/34317に開示されている方法による「脱免疫化」によって修飾することもできる。簡単に言えば、抗体の重鎖および軽鎖可変ドメインは、MHCクラスIIに結合するペプチドについて分析することができ、これらのペプチドは、潜在的T細胞エピトープを表す(WO98/52976およびWO00/34317に定義されているように)。潜在的T細胞エピトープの検出のために、「ペプチドスレッディング(peptide threading)」と呼ばれるコンピューターモデル化手法を適用することができ、さらに、WO98/52976およびWO00/34317に記載されているように、VHおよびVL配列中に存在するモチーフについて、ヒトMHCクラスII結合ペプチドのデータベースを探索することができる。これらのモチーフは、18の主要MHCクラスII DRアロタイプのいずれにも結合し、したがって、潜在的T細胞エピトープを構成する。検出される潜在的T細胞エピトープは、可変ドメイン中の少数のアミノ酸残基を置換することによって、または好ましくは、1個のアミノ酸を置換することによって排除することができる。一般に、同類置換が行われる。多くの場合、しかしもっぱらではなく、ヒト生殖系列の抗体配列中の1つの位置に共通なアミノ酸を使用することができる。ヒト生殖系列配列は、例えば、Tomlinsonら(1992)J.Mol.Biol.227:776〜798;Cook,G.P.ら(1995)Immunol.Today 16巻(5):237〜242;Chothia,D.ら(1992)J.Mol.Biol.227:799〜817;およびTomlinsonら(1995)EMBO J.14:4628〜4638に開示されている。V BASEディレクトリーは、ヒト免疫グロブリン可変領域配列の包括的ディレクトリーを提供する(Tomlinson,I.A.ら(MRC Centre for Protein Engineering、Cambridge、UK)によって編集された)。これらの配列は、例えば、フレームワーク領域およびCDRのためのヒト配列の供給源として使用することができる。U.S.6,300,064に記載されているように、コンセンサスヒトフレームワーク領域も使用することができる。
【0068】
ある特定の実施形態では、抗体は、変化した免疫グロブリンの定常領域またはFc領域を含有することができる。例えば、本明細書の教示によって作製される抗体は、補体および/もしくはFc受容体などのエフェクター分子に、より強く、またはより特異性を伴って結合することができ、これは、抗体のいくつかの免疫機能、例えば、エフェクター細胞活性、溶解、補体媒介性活性、抗体クリアランス、および抗体半減期などを制御することができる。抗体(例えば、IgG抗体)のFc領域に結合する一般的なFc受容体には、それだけに限らないが、対立遺伝子変異体を含めた、FcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIおよびFcRnサブクラスの受容体、ならびにこれらの受容体の選択的にスプライスされた形態が含まれる。Fc受容体は、RavetchおよびKinet、Annu.Rev.Immunol 9:457〜92、1991;Capelら、Immunomethods 4:25〜34、1994;ならびにde Haasら、J.Lab.Clin.Med.126:330〜41、1995に総説されている。
【0069】
本発明の方法によって分離することができる抗体の非限定的な例として、それだけに限らないが、Aβ、IL−13、IL−22、GDF8および5T4に対する抗体が挙げられる。これらの抗体のそれぞれは、以下および添付した実施例により詳細に説明される。
【0070】
抗GDF8抗体
本発明の方法に使用することができる例示的な抗体は、抗GDF8抗体である。用語「GDF−8」は、成長および分化因子−8、および適切な場合、構造的または機能的にGDF−8に関係する因子、例えば、BMP−11、およびTGF−βスーパーファミリーに属する他の因子を指す。この用語は、GDF−8の全長の未処理前駆体形態、ならびに翻訳後切断から生じる成熟形態およびプロペプチド形態を指す。この用語は、修飾された配列を含む、成熟GDF−8に関連する、少なくともいくつかの生物活性を維持する、GDF−8の任意の断片および変異体も指す。アミノ酸配列ヒトGDF−8、ならびに多くの他の脊椎動物種(マウス、ヒヒ、ウシ、ニワトリを含む)は、例えば、U.S.04/0142382、US02/0157125、およびMcPherronら(1997)Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.、94:12457〜12461)に開示されている。GDF−8に対する中和抗体の例、例えばMyo−029は、例えば、U.S.2004/0142382に開示されており、本明細書に添付した実施例全体にわたって参照されている。例示的な疾患および障害として、筋肉障害および神経筋障害、例えば、筋ジストロフィー(デュシェンヌ型筋ジストロフィーを含む)など;筋萎縮性側索硬化症;筋萎縮;臓器萎縮;虚弱;管症候群;うっ血性閉塞性肺疾患;筋肉減少症、カヘキシー、および他の筋肉消耗症候群;脂肪組織障害(例えば、肥満症);2型糖尿病;耐糖能障害;代謝症候群(例えば、シンドロームX);やけどまたは窒素不均衡(nitrogen imbalance)などの外傷によって誘発されたインスリン抵抗性;ならびに骨変性疾患(例えば、骨関節炎および骨粗鬆症)が挙げられる。
【0071】
抗Aβ抗体
抗Aβ抗体製剤の乳光の低減は、本発明の教示に従って実行することができる。用語「AB抗体」、「Aβ抗体」、「抗Aβ抗体」、および「抗Aβ」は、APP、Aβタンパク質、またはその両方の1つまたは複数のエピトープまたは抗原決定基に結合する抗体を指すために、本明細書で互換的に使用される。例示的なエピトープまたは抗原決定基は、ヒトアミロイド前駆体タンパク質(APP)内に見出すことができるが、APPのAβペプチド内に見出されることが好ましい。APPの多数のイソ型、例えば、APP695、APP751、およびAPP770が存在する。APP内のアミノ酸は、APP770イソ型の配列による、割り当てられた数である(例えば、GenBankアクセション番号P05067を参照されたい)。Aβ(本明細書では、ベータアミロイドペプチドおよびAベータとも呼ばれる)ペプチドは、APP(Aβ39、Aβ40、Aβ41、Aβ42、およびAβ43)の39〜43アミノ酸の約4kDaの内部断片である。例えば、Aβ40は、APPの残基672〜711からなり、Aβ42は、APPの残基672〜713からなる。iv vivoまたはin situでの異なるセクレターゼ酵素によるAPPのタンパク質分解プロセシングの結果として、Aβは、長さで40個のアミノ酸の「短形態」、および長さで42〜43個のアミノ酸の範囲の「長形態」の両方で見出される。エピトープまたは抗原決定基は、AβペプチドのN末端内に位置し、Aβのアミノ酸1〜10内、好ましくはAβ42の残基1〜3、1〜4、1〜5、1〜6、1〜7、2〜7、3〜6、もしくは3〜7から、あるいはAβの残基2〜4、5、6、7、もしくは8、Aβの残基3〜5、6、7、8、もしくは9、またはAβ42の残基4〜7、8、9、もしくは10内の残基を含むことができる。「中央」エピトープまたは抗原決定基は、Aβペプチドの中央または中間部分内に位置し、Aβのアミノ酸16〜24、16〜23、16〜22、16〜21、19〜21、19〜22、19〜23、または19〜24内の残基を含む。「C末端」エピトープまたは抗原決定基は、AβペプチドのC末端内に位置し、Aβのアミノ酸33〜40、33〜41、または33〜42内の残基を含む。
【0072】
様々な実施形態では、Aβ抗体は末端特異的である。本明細書で使用される場合、用語「末端特異的」は、AβペプチドのN末端またはC末端残基に特異的に結合するが、この残基を含むより長いAβ種またはAPP内に存在する場合、同じ残基を認識しない抗体を指す。
【0073】
様々な実施形態では、Aβ抗体は「C末端特異的」である。本明細書で使用される場合、用語「C末端特異的」は、抗体が、Aβペプチドの遊離C末端を特異的に認識することを意味する。C末端特異的Aβ抗体の例には、残基40で終わるAβペプチドを認識するが、残基41、42、および/または43で終わるAβペプチドを認識しないもの、残基42で終わるAβペプチドを認識するが、残基40、41、および/または43で終わるAβペプチドを認識しないものなどが含まれる。
【0074】
一実施形態では、抗体は、3D6抗体もしくはその変異体、または10D5抗体もしくはその変異体とすることができ、その両方は、米国特許公開第2003/0165496A1号、米国特許公開第2004/0087777A1号、国際特許公開第WO02/46237A3号に記載されている。3D6および10D5の記述は、例えば、国際特許公開WO02/088306A2号および国際特許公開第WO02/088307A2号にも見出すことができる。3D6は、ヒトβ−アミロイドペプチド内に位置するN末端エピトープ、特に残基1〜5に特異的に結合するモノクローナル抗体(mAb)である。比較して、10D5は、ヒトβ−アミロイドペプチド内に位置するN末端エピトープ、特に残基3〜6に特異的に結合するmAbである。別の実施形態では、抗体は、米国特許公開第20040082762A1号、および国際特許公開第WO03/077858A2号に記載されているような、12B4抗体またはその変異体とすることができる。12B4は、ヒトβ−アミロイドペプチド内に位置するN末端エピトープ、特に残基3〜7に特異的に結合するmAbである。さらに別の実施形態では、抗体は、米国特許出願第10/858,855号、および国際特許出願第PCT/US04/17514号に記載されているような、12A11抗体またはその変異体とすることができる。12A11は、ヒトβ−アミロイドペプチド内に位置するN末端エピトープ、特に残基3〜7に特異的に結合するmAbである。さらに別の実施形態では、抗体は、米国特許出願第10/789,273号、および国際特許出願第WO01/62801A2号に記載されているような、266抗体とすることができる。本発明で使用するための、ヒトβ−アミロイドペプチド内に位置するC末端エピトープに特異的に結合するように設計された抗体には、それだけに限らないが、米国特許第5,786,160号に記載されているような、369.2Bが含まれる。
【0075】
例示的な実施形態では、抗体は、Aβペプチドを選択的に結合するヒト化抗Aβペプチド3D6抗体である。より具体的には、ヒト化抗Aβペプチド3D6抗体は、脳内(例えば、アルツハイマー病に罹患している患者中の)のプラーク沈着物中に見出される、ヒトβ−アミロイドの1〜40または1〜42ペプチド内に位置するNH2末端エピトープに特異的に結合するように設計される。
【0076】
抗Aβ抗体は、アミロイド形成疾患、特にアルツハイマー病を治療するのに使用することができる。用語「アミロイド形成疾患」は、不溶性のアミロイド原線維の形成または沈着に関連する(またはこれによって引き起こされる)任意の疾患を含む。例示的なアミロイド形成疾患として、それだけに限らないが、全身性アミロイド症、アルツハイマー病、成人発症型糖尿病(mature onset diabetes)、パーキンソン病、ハンチントン病、前頭側頭認知症、およびプリオン関連(prion−related)伝染性海綿状脳症(ヒトにおけるクールー病およびクロイツフェルト−ヤコブ病、ならびにそれぞれヒツジおよびウシにおける、スクレイピーおよびBSE)が挙げられる。沈着した原線維のポリペプチド成分の性質によって、様々なアミロイド形成疾患が定義され、または特徴づけられている。例えば、アルツハイマー病を有する対象または患者において、β−アミロイドタンパク質(例えば、野生型、変異体、または切断されたβ−アミロイドタンパク質)は、アミロイド沈着物の特徴ポリペプチド成分である。したがって、アルツハイマー病は、例えば、対象または患者の脳内における、「Aβの沈着物によって特徴づけられる疾患」、または「Aβの沈着物に関連する疾患」の一例である。用語「β−アミロイドタンパク質」、「β−アミロイドペプチド」、「β−アミロイド」、「Aβ」、および「Aβペプチド」は、本明細書で互換的に使用される。
【0077】
抗5T4抗体
5T4抗原は、以前に特徴づけられている(例えば、WO89/07947を参照されたい)。ヒト5T4の全核酸配列は知られている(Myersら(1994)J Biol Chem 169:9319〜24およびアクセション番号Z29083のGenBank)。他の種に由来する5T4抗原の配列も知られており、例えば、マウス5T4(WO00/29428)、イヌ5T4(WO01/36486)、またはネコ5T4(US05/0100958)が知られている。
【0078】
ヒト5T4は、癌において広く発現されるが、正常な成人組織において高度に制限された発現パターンを有する、約72kDaの糖タンパク質である。これは、直腸結腸癌および胃癌における転移に強く相関すると思われる。5T4抗原の発現は、乳癌および卵巣癌においても高頻度で見出される(Starzynskaら(1998)Eur.J.Gastroenterol.Hepatol.10:479〜84;Starzynskaら(1994)Br.J.Cancer 69:899〜902;Starzynskaら(1992)Br.J.Cancer 66:867〜9)。5T4は、腫瘍進行および転移の可能性に関して、機構的関与の可能性を有するマーカーとして提案された(Carsbergら(1996)Int J Cancer 68:84〜92)。5T4は、免疫療法剤として使用することも提案された(WO00/29428を参照されたい)。5T4の抗原ペプチドも、例えば、US05/0100958に開示されており、この内容は参照により組み込まれている。
【0079】
いくつかの係属中の出願、例えば、米国出願公開第2003/0018004号および同第2005/0032216号は、一般に、抗5T4モノクローナル抗体をコードする核酸、そのベクターおよび宿主細胞に関する。一般に、ヒト化抗5T4 H8モノクローナル抗体、およびそのカリケアマイシンコンジュゲート、ならびにこれらのカリケアマイシンコンジュゲートを使用する治療方法に関係する仮特許出願が出願された(米国出願公開第2006/0088522号)。これらすべての出願の内容は、その全体が本明細書に参照により組み込まれている。
【0080】
抗IL13抗体
インターロイキン−13(IL−13)は、Tリンパ球およびマスト細胞によって分泌される、以前に特徴づけられたサイトカインである(McKenzieら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:3735〜39;Bostら(1996)Immunology 87:663〜41)。用語「IL−13」は、IL−13の全長の未処理前駆体形態、ならびに翻訳後切断から生じる成熟形態を含めたインターロイキン−13を指す。この用語は、修飾された配列を含む、成熟IL−13に関連する、少なくともいくつかの生物活性を維持する、IL−13の任意の断片および変異体も指す。用語「IL−13」は、ヒトIL−13、ならびに他の脊椎動物種を含む。いくつかの係属中の出願、例えば、米国出願公開第2006/0063228A号および同第2006/0073148号には、ヒトおよびサルIL−13、IL−13ペプチド、これらを産生するベクターおよび宿主細胞が開示されている。これらすべての刊行物の内容は、その全体が本明細書に参照により組み込まれている。
【0081】
IL−13は、IL−4といくつかの生物活性を共有する。例えば、IL−4またはIL−13のいずれも、B細胞中でIgEアイソタイプ転換を引き起こす(Tomkinsonら(2001)J.Immunol.166:5792〜5800)。さらに、細胞表面CD23と血清CD23(sCD23)のレベルの増大が、喘息患者において報告されている(Sanchez−Guererroら(1994)Allergy 49:587〜92;DiLorenzoら(1999)Allergy Asthma Proc.20:119〜25)。さらに、IL−4またはIL−13のいずれも、B細胞および単球上でのMHCクラスIIおよび低親和性IgE受容体(CD23)の発現を上方制御することができ、これにより、抗原提示が増強され、マクロファージ機能が制御される(Tomkinsonら、上記を参照されたい)。これらの観察結果は、IL−13が、気道好酸球増加症および気道過敏症(AHR)の発症において重要なプレイヤーとなり得ることを示す(Tomkinsonら、上記を参照されたい;Wills−Karpら(1998)Science 282:2258〜61)。したがって、IL−13の阻害は、それだけに限らないが、呼吸器障害、例えば、喘息;慢性閉塞性肺疾患(COPD);気道炎症、好酸球増加症、線維症および粘液過剰産生を伴う他の状態、例えば、嚢胞性線維症および肺線維症;アトピー性障害、例えば、アトピー性皮膚炎、じん麻疹、湿疹、アレルギー性鼻炎;皮膚(例えば、アトピー性皮膚炎)、消化管臓器(例えば、潰瘍性大腸炎および/またはクローン病などの炎症性腸疾患(IBD))、肝臓(例えば、肝硬変、肝細胞癌)の炎症および/または自己免疫状態;強皮症;腫瘍または癌(例えば、軟部組織腫瘍または固形腫瘍)、例えば、白血病、グリア芽細胞腫、およびリンパ腫、例えば、ホジキンリンパ腫など;ウイルス感染症(例えば、HTLV−1由来);他の臓器の線維症、例えば、肝臓の線維症、(例えば、B型肝炎ウイルスおよび/またはC型肝炎ウイルスによって生じる線維症)を含めた、いくつかの炎症および/またはアレルギー状態の病状を回復させるのに有用となり得る。
【0082】
抗IL−22抗体
インターロイキン−22(IL−22)は、IL−10と配列相同性を示す、以前に特徴づけられたクラスIIサイトカインである。その発現は、IL−9またはConAによってT細胞中で上方制御される(Dumoutier L.ら(2000)Proc Natl Acad Sci USA 97(18):10144〜9)。研究により、IL−22 mRNAの発現は、LPS投与に応答してin vivoで誘発され、IL−22は、急性期応答を示すパラメーターを調節し(Dumoutier L.ら(2000)上記を参照されたい;Pittman D.ら(2001)Genes and Immunity 2:172)、中和抗IL−22抗体を使用することによってIL−22抗体の活性を低減することにより、マウスコラーゲン誘発関節炎(CIA)モデルにおいて炎症症状が回復することが示された。したがって、IL−22アンタゴニスト、例えば、中和抗IL−22抗体およびその断片は、例えば、自己免疫障害(例えば、関節リウマチなどの関節炎障害);呼吸器障害(例えば、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD));例えば、皮膚(例えば、乾癬)、心血管系(例えば、アテローム性動脈硬化症)、神経系(例えば、アルツハイマー病)、腎臓(例えば、腎炎)、肝臓(例えば、肝炎)および膵臓(例えば、膵炎)の炎症状態を治療するための、in vivoでの免疫抑制を誘発するのに使用することができる。
【0083】
用語「IL−22」は、IL−22の全長の未処理前駆体形態、ならびに翻訳後切断から生じる成熟形態を含めたインターロイキン−22を指す。この用語は、修飾された配列を含む、成熟IL−22に関連する、少なくともいくつかの生物活性を維持する、IL−22の任意の断片および変異体も指す。用語「IL−22」は、ヒトIL−22、ならびに他の脊椎動物種も含む。ヒトおよびげっ歯類IL−22、ならびにIL−22に対する抗体のアミノ酸ならびにヌクレオチド配列は、例えば、米国出願公開第2005−0042220号および同第2005−0158760号、ならびに米国特許第6,939,545号に開示されている。これらすべての刊行物の内容は、その全体が本明細書に参照により組み込まれている。
【0084】
小モジュール免疫薬剤(Small Modular ImmunoPharmaceuticals)(SMIP(商標))
本発明は、小モジュール免疫薬剤(SMIP(商標))にも適用することができる。これは、免疫グロブリンヒンジまたはヒンジ作用領域(hinge−acting region)ポリペプチドに融合または別の方法で接続された結合ドメインポリペプチドを含む結合ドメイン融合タンパク質を一般に指し、この結合ドメインポリペプチドは、さらにはCH1以外の免疫グロブリン重鎖由来の、1つまたは複数の天然または操作された定常領域、例えば、IgGおよびIgAのCH2およびCH3領域、またはIgEのCH3およびCH4領域を含む領域に、融合または別の方法で接続されている(より完全な説明については、例えば、Ledbetter,J.らによるU.S.05/0136049を参照されたい)。結合ドメイン−免疫グロブリン融合タンパク質は、ヒンジ領域ポリペプチドと、CH2定常領域ポリペプチド(またはIgEに全体的または部分的に由来するコンストラクトの場合、CH3)に融合または別の方法で接続されている、天然または操作された免疫グロブリン重鎖CH3定常領域ポリペプチド(またはIgEに全体的または部分的に由来するコンストラクトの場合、CH4)とに融合または別の方法で接続されている、天然または操作された免疫グロブリン重鎖CH2定常領域ポリペプチド(またはIgEに全体的または部分的に由来するコンストラクトの場合、CH3)を含む領域をさらに含むことができる。一般に、そのような結合ドメイン−免疫グロブリン融合タンパク質は、抗体依存性細胞媒介性細胞障害、補体結合、および/または標的、例えば標的抗原への結合からなる群から選択される、少なくとも1つの免疫学的活性の能力がある。
【0085】
可溶性受容体および受容体融合物
本発明は、可溶性受容体またはその断片にも適用することができる。可溶性受容体の例には、受容体の細胞外ドメイン、例えば、可溶性腫瘍壊死因子αおよびβ受容体(TNFR−1;1991年3月20日に公開されたEP417,563;TNFR−2;1991年3月20日に公開されたEP417,014;ならびにNaismithおよびSprang、J Inflamm.47(1〜2):1〜7、1995〜96の総説であり、そのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている)などが含まれる。他の実施形態では、可溶性受容体には、例えばUS2003−0108549(その内容も、参照により組み込まれている)に記載されているような、インターロイキン−21受容体(IL−21R)の細胞外ドメインが含まれる。
【0086】
融合タンパク質は、標的化部分、例えば、可溶性受容体断片またはリガンド、ならびに免疫グロブリン鎖、Fc断片、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、およびIgEを含めた様々なアイソタイプの重鎖定常領域を含むことができる。例えば、融合タンパク質は、受容体の細胞外ドメインを含むことができ、例えば、ヒト免疫グロブリンFc鎖(例えば、ヒトIgG、例えば、ヒトIgG1またはヒトIgG4、またはそれらの突然変異形態)に融合することができる。一実施形態では、ヒトFc配列は、1つまたは複数のアミノ酸で突然変異している、例えば、野生型配列からの残基254と257で突然変異していることによって、Fc受容体結合性を低減している。融合タンパク質は、第1部分を第2部分、例えば免疫グロブリン断片に結合するリンカー配列をさらに含むことができる。例えば、融合タンパク質は、ペプチドリンカー、例えば、長さがアミノ酸の個数で約4から20個、より好ましくは5から10個のペプチドリンカーを含むことができ、ペプチドリンカーは、長さがアミノ酸の個数で8個である。例えば、融合タンパク質は、式(Ser−Gly−Gly−Gly−Gly)y(式中、yは、1、2、3、4、5、6、7、または8である)を有するペプチドリンカーを含むことができる。他の実施形態では、追加のアミノ酸配列を、融合タンパク質のNまたはC末端に添加することによって、発現、立体的柔軟性、検出および/または単離もしくは精製を促進することができる。
【0087】
ある特定の実施形態では、可溶性受容体融合物は、可溶性TNFR−Ig(例えば、TNF受容体、例えば、p55もしくはp75ヒトTNF受容体、またはそれらの誘導体の可溶性断片、例えば、75kdのTNFR−IgG(例えば、ヒトIgG1の235アミノ酸Fc部分に融合した、75kDのTNF受容体))を含む。
【0088】
本発明のキメラまたは融合タンパク質は、標準的な組換えDNA技法によって作製することができる。例えば、様々なポリペプチド配列をコードするDNA断片は、従来の技法によって、例えば、連結用の平滑末端またはジグザグ末端(stagger−ended termini)、適切な末端を提供するための制限酵素消化、適切な場合、付着末端の補充、望ましくない結合を回避するためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素的連結を使用することによって、インフレームで一緒に連結される。別の実施形態では、融合遺伝子は、自動化DNA合成機を含めた従来の技法によって合成することができる。あるいは、遺伝子断片のPCR増幅は、2つの連続した遺伝子断片の間に相補的なオーバーハングを生じさせるアンカープライマーを使用して実施することができ、これは引き続いてアニールし、再増幅することによってキメラ遺伝子配列を生成することができる(例えば、Ausubelら(編)Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、1992を参照されたい)。さらに、融合部分(例えば、免疫グロブリン重鎖のFc領域)をコードする多くの発現ベクターは、市販されている。免疫グロブリン融合ポリペプチドは、当技術分野で知られており、例えば、米国特許第5,516,964号;同第5,225,538号;同第5,428,130号;同第5,514,582号;同第5,714,147号;および同第5,455,165号に記載されている。
【0089】
成長因子およびサイトカイン
医薬剤および/または市販薬剤として有効であることが示され、望ましくは、本発明の教示によって作製することができる別の分類のポリペプチドには、成長因子、およびサイトカインなどの他のシグナル分子が含まれる。
【0090】
成長因子は、一般に、細胞によって分泌され、他の細胞上の受容体に結合し、これを活性化させ、受容体細胞中で代謝的または発生的変化を開始する糖タンパク質である。哺乳動物成長因子および他のシグナル分子の非限定的な例として、サイトカイン;上皮細胞成長因子(EGF);血小板由来成長因子(PDGF);線維芽細胞成長因子(FGF)、例えば、aFGFおよびbFGFなど;トランスフォーミング成長因子(TGF)、例えば、TGF−α、およびTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4、もしくはTGF−β5を含めたTGF−βなど;インスリン様成長因子−Iおよび−II(IGF−IおよびIGF−II);des(1−3)−IGF−I(脳IGF−I)、インスリン様成長因子結合タンパク質;CDタンパク質、例えば、CD−3、CD−4、CD−8、CD−19など;エリスロポエチン;骨誘導因子;免疫毒素;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン、例えば、インターフェロン−α、−β、および−γなど;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M−CSF、GM−CSF、およびG−CSF;インターロイキン(TLs)、例えば、IL−1からIL−13(例えば、IL−11);腫瘍壊死因子(TNF)αおよびβ;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;凝固因子、例えば、第VIIIC因子、第IX因子、組織因子、およびフォンウィルブランド因子など;プロテインCなどの抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺表面活性剤;プラスミノーゲンアクチベーター、例えば、ウロキナーゼもしくはヒト尿もしくは組織型プラスミノーゲンアクチベーター(t−PA)など;ボンベシン;トロンビン、造血成長因子;エンケファリナーゼ;RANTES(regulated on activation normally T−cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP−1−α);ミュラー管阻害物質;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;プロリラキシン(prorelaxin);マウスゴナドトロピン関連ペプチド;神経栄養因子、例えば、骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、−4、−5、もしくは−6(NT−3、NT−4、NT−5、もしくはNT−6)など、またはNGF−βなどの神経成長因子が挙げられる。当業者は、本発明の方法および組成物によって発現することができる、他の成長因子またはシグナル分子を認識するであろう。
【0091】
成長因子または他のシグナル分子のグリコシル化パターンにおける特定の変化は、その治療特性に劇的な効果があることが示された。一例として、慢性貧血に罹患している患者に対する治療の一般的な方法は、その患者に組換えエリトロポピエチン(erythropopietin)(rHuEPO)を頻繁に注射することによって、患者の赤血球の産生を増強することである。rHuEPOの類似体であるダルベポエチンα(ARANESP(登録商標))は、通常のrHuEPOよりも長い持続期間を有するように開発された。ダルベポエチンαとrHuEPOの間の主な差異は、2本の追加のシアル酸含有N結合型オリゴ糖鎖の存在である。ダルベポエチンαの作製は、in vitro糖鎖工学を使用して達成された(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Elliottら、Nature Biotechnology 21(4):414〜21、2003を参照されたい)。Elliottらは、in vitro変異誘発を使用することによって、rHuEPOポリペプチド主鎖中に追加のグリコシル化部位を組み込み、ダルベポエチンα類似体の発現をもたらした。追加のオリゴ糖鎖は、EPO受容体結合部位の遠位に位置し、見かけ上受容体結合を妨害しない。しかし、ダルベポエチンαの半減期は、rHuEPOよりも最大3倍長く、はるかに有効な治療剤になっている。
【0092】
凝固因子
凝固因子は、医薬剤および/または市販薬剤として有効であることが示されている。血友病Bは、患者の血液が凝固することができない障害である。したがって、出血をもたらすどんな小さな創傷も、潜在的に生命を脅かす事象である。例えば、凝固第IX因子(第IX因子または「FIX」)は単鎖糖タンパク質であり、これが欠乏すると血友病Bになる。FIXは、活性化ペプチドを放出することによって、活性化されて2本鎖のセリンプロテアーゼ(第IXa因子)になることができる、単鎖酵素原として合成される。第IXa因子の触媒ドメインは、重鎖中に位置する(その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Changら、J.Clin.Invest.、100:4、1997を参照されたい)。FIXは、N結合型およびO結合型炭水化物の両方を含む、多数のグリコシル化部位を有する。セリン61での一特定のO結合型構造(Sia−α2、3−Gal−β1、4−GlcNAc−β1、3−Fuc−α1−O−Ser)は、FIXに特有であると以前に考えられたが、それ以来、哺乳動物およびショウジョウバエ(Drosophila)中のノッチタンパク質を含む、いくつかの他の分子上で見出されてきた(Maloneyら、Journal of Biol.Chem.、275(13)、2000)。細胞培養で、チャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞によって産生されるFIXは、セリン61オリゴ糖鎖中でいくつかの変異性を示す。これらの異なる糖型、および他の潜在的な糖型は、ヒトまたは動物に投与される場合、凝固を誘発するための異なる能力を有することができ、および/または血液中で異なる安定性を有し、効果の弱い凝固をもたらす場合がある。
【0093】
血友病Bと臨床的に識別不能な血友病Aは、単鎖として合成され、次いで処理されて2本鎖の活性形態になる別の糖タンパク質である、ヒト凝固第VIII因子の欠損によって引き起こされる。本発明を使用して、凝固第VIII因子のグリコシル化パターンを制御しまたは変化させることによって、その凝固活性を調節することもできる。本発明によって作製することができる他の凝固因子には、組織因子およびフォンウィルブランド因子が含まれる。
【0094】
酵素
医薬剤および/または市販薬剤として有効であることが示され、望ましくは、本発明の教示によって作製することができる別の分類のポリペプチドには、酵素が含まれる。酵素は、糖タンパク質とすることができ、そのグリコシル化パターンが酵素活性に影響する。したがって、本発明は、細胞培養で酵素を作製するのに使用することもでき、作製された酵素は、より広範な、またはさもなければより望ましいグリコシル化パターンを有する。
【0095】
1つの非限定的な例として、グルコセレブロシダーゼ(GCR)の欠乏により、ゴーシェ病として知られる状態がもたらされ、これは、ある特定の細胞のリソソーム中にグルコセレブロシダーゼが蓄積することによって引き起こされる。ゴーシェ病を有する対象は、脾腫、肝腫、骨障害、血小板減少症および貧血を含めた、一連の症状を示す。FriedmanとHayesは、一次アミノ酸配列中に1個の置換を含む組換えGCR(rGCR)は、自然に存在するGCRと比較して、変化したグリコシル化パターン、特に、フコースおよびN−アセチルグルコサミン残基の増加を示すことを示した(米国特許第5,549,892号を参照されたい)。
【0096】
FriedmanとHayesは、このrGCRは、自然に存在するrGCRと比較して、改善された薬物動態学的性質を示すことも実証した。例えば、自然に存在するGCRが標的にするよりも、約2倍のrGCRが、肝臓クッパー細胞を標的にした。この2つのタンパク質の一次アミノ酸配列は、1個の残基で異なるが、FriedmanとHayesは、rGCRの変化したグリコシル化パターンも、クッパー細胞への標的化に影響し得ると仮定した。当業者は、酵素のグリコシル化パターンの変化から生じる、変化した酵素的、薬物動態学的、および/または薬力学的性質を示す酵素の他の既知の例を認識するであろう。
【0097】
タンパク質作製
本発明によってタンパク質を作製する組換え方法は、当技術分野で知られている。タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、所望量の修飾抗体を作製するのに使用することができる宿主細胞中に導入するために、発現ベクター中に一般に挿入され、これはさらには、ポリペプチドを提供する。用語「ベクター」は、核酸、例えば遺伝子を多くの場合含み、核酸複製、転写、安定性、および/または宿主細胞からのタンパク質発現もしくは分泌に必要な最低限のエレメントを含む、核酸コンストラクトを含む。そのようなコンストラクトは、染色体外エレメントとして存在することができ、または宿主細胞のゲノム中に組み込むことができる。
【0098】
用語「発現ベクター」は、核酸コンストラクトが、所望のタンパク質産物の高レベルな発現のために最適化された、特定の種類のベクターを含む。発現ベクターは、特定の細胞型中での高レベルな転写のために最適化され、および/または発現が、特定の誘発剤の使用に基づいて恒常的であるように最適化された、転写調節剤、例えば、プロモーターおよびエンハンサーエレメントなどを多くの場合有する。発現ベクターは、タンパク質の適切および/または増強された翻訳を提供する配列をさらに有する。当業者に知られているように、そのようなベクターは、プラスミド、ファージ、ウイルス、およびレトロウイルスからなる群から容易に選択することができる。用語「発現カセット」は、遺伝子を含み、遺伝子に加えて、宿主細胞中でのその遺伝子の適切および/または増強された発現を可能にするエレメントを有する核酸コンストラクトを含む。抗体を作製するために、軽鎖および重鎖をコードする核酸を、発現ベクター中に挿入することができる。そのような配列は、同じ核酸分子(例えば、同じ発現ベクター)中に存在することができ、あるいは別々の核酸分子(例えば、別々の発現ベクター)から発現することができる。
【0099】
用語「作動可能に連結した」は、成分が、それらの意図した様式で機能することを可能にする関係にある(例えば、機能的に連結した)近位を含む。例として、対象とするポリヌクレオチドに作動可能に連結したプロモーター/エンハンサーは、プロモーター/エンハンサーによって誘導される発現を活性化する条件下で、対象とするポリヌクレオチドの発現が達成されるように、前記ポリヌクレオチドに連結される。
【0100】
発現ベクターは、エピソームまたは宿主染色体DNAの必須部分のいずれかとして、宿主生物体中で一般に複製可能である。一般に、発現ベクターは、選択マーカー(例えば、アンピシリン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、カナマイシン耐性またはネオマイシン耐性)を含有することによって、所望のDNA配列で形質転換された細胞の検出を可能にする(例えば、Itakuraら、米国特許第4,704,362号を参照されたい)。免疫グロブリンDNAカセット配列、挿入配列、および制御配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、追加の配列、例えば、宿主細胞中のベクターの複製を制御する配列(例えば、複製開始点)および選択可能マーカー遺伝子などを担持することができる。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞の選択を促進する(例えば、すべてAxelらによる、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号、および同第5,179,017号を参照されたい)。例えば、一般に、選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入された宿主細胞に、薬物、例えば、G418、ハイグロマイシン、またはメトトレキセートなどに対する耐性を与える。好ましい選択可能マーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子(メトトレキセート選択/増幅を伴うdhfr−宿主細胞中で使用するため)、およびネオ遺伝子(G418選択のため)が含まれる。
【0101】
ベクターが適切な宿主細胞中に組み込まれた場合、この宿主細胞は、ヌクレオチド配列の高レベル発現、ならびに所望の抗体の採取および精製に適した条件下で維持される。細胞培養、およびタンパク質またはポリペプチドの発現が可能な任意の宿主細胞を、本発明によって利用することができる。ある特定の実施形態では、宿主細胞は哺乳動物である。本発明によって使用することができる哺乳動物細胞の非限定的な例として、BALB/cマウス骨髄腫系統(NSO/l、ECACC番号:85110503);ヒト網膜芽細胞(PER.C6、CruCell、Leiden、The Netherlands);SV40(COS−7、ATCC CRL 1651)によって形質転換されたサル腎臓CV1系統;ヒト胚腎臓系統(293細胞、または、懸濁培養で成長させるためにサブクローニングされた293細胞、Grahamら、J.GenVirol.、36:59、1977);新生仔ハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞+/−DHFR(CHO、UrlaubおよびChasin、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、77:4216、1980);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather、Biol.Reprod.、23:243〜251、1980);サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1 587);ヒト子宮頚癌細胞(HeLa、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Matherら、Annals N.Y.Acad.Sci.、383:44〜68、1982);MRC5細胞;FS4細胞;およびヒト肝細胞腫系統(Hep G2)が挙げられる。
【0102】
さらに、ポリペプチドまたはタンパク質を発現する、いくつもの市販の、および市販されていないハイブリドーマ細胞系統を、本発明によって利用することができる。当業者は、ハイブリドーマ細胞系統は、最適な成長およびポリペプチドまたはタンパク質発現のために、様々な栄養必要量を有し、および/または様々な培養条件を必要とする場合があり、必要に応じて条件を修飾することができることを理解するであろう。
【0103】
これらの細胞のための発現ベクターは、発現制御配列、例えば、複製開始点、プロモーター、およびエンハンサー、(Queenら、Immunol.Rev.89:49(1986))など、ならびに必要なプロセシング情報部位、例えば、リボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写ターミネーター配列などを含むことができる。好ましい発現調節配列は、免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、サイトメガロウイルスなどに由来するプロモーターである(例えば、Coら、(1992)J.Immunol.148:1149を参照されたい)。哺乳動物宿主細胞発現に好ましい制御配列には、哺乳動物細胞中での高レベルのタンパク質発現を誘導するウイルスエレメント、例えば、FF−1aプロモーターおよびBGHポリA、サイトメガロウイルス(CMV)(CMVプロモーター/エンハンサーなど)、シミアンウイルス40(SV40)(SV40プロモーター/エンハンサーなど)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、およびポリオーマに由来するプロモーターおよび/またはエンハンサーなどが含まれる。ウイルス制御エレメント、およびその配列のさらなる記述については、例えば、Stinskiによる米国特許第5,168,062号、Bellらによる米国特許第4,510,245号、およびSchaffnerらによる米国特許第4,968,615号を参照されたい。例示的な実施形態では、抗体の重鎖および軽鎖遺伝子は、エンハンサー/プロモーター制御エレメント(例えば、CMVエンハンサー/AdMLPプロモーター制御エレメント、またはSV40エンハンサー/AdMLPプロモーター制御エレメントなどの、SV40、CMV、アデノウイルスなどに由来した)に作動可能に連結することによって、遺伝子の高レベルの転写を推進する。本発明の例示的な実施形態では、コンストラクトは、配列内リボソーム進入部位(IRES)を含むことによって、真核宿主細胞中で比較的高レベルの本発明のポリペプチドを提供する。適合性のIRES配列は、米国特許第6,193,980号に開示されており、これも本明細書に組み込まれている。
【0104】
あるいは、コード配列は、導入遺伝子中に組み込んで、トランスジェニック動物のゲノム中に導入し、引き続いてこのトランスジェニック動物の乳中で発現させることができる(例えば、Deboerら、US5,741,957、Rosen、US5,304,489、およびMeadeら、US5,849,992を参照されたい)。適当な導入遺伝子は、カゼインまたはβラクトグロブリンなどの、乳腺特異的遺伝子由来のプロモーターおよびエンハンサーと作動可能に連結した軽鎖および/または重鎖のコード配列を含む。
【0105】
原核宿主細胞も、本発明の抗体を作製するのに適当となり得る。イー・コリは、本発明のポリヌクレオチド(例えば、DNA配列)をクローン化するのに特に有用な一原核宿主である。使用するのに適した他の微生物宿主として、バシルス・スブチリスなどのバシリ、エンテロバクテリアセアエ、例えば、エスケリキア、サルモネラ、およびセラチアなど、ならびに様々なシュードモナス種が挙げられる。これらの原核宿主中で、発現ベクターも作製することができ、これは、宿主細胞と適合した発現制御配列(例えば、複製開始点)を一般に含有する。さらに、いくつもの様々な周知のプロモーター、例えば、ラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、β−ラクタマーゼプロモーター系、またはλファージ由来のプロモーター系などが存在する。プロモーターは、転写および翻訳を開始し、完了するために、所望によりオペレーター配列とともに発現を一般に制御し、リボソーム結合部位配列などを有する。
【0106】
原核生物中でのタンパク質の発現は、融合または非融合タンパク質のいずれかの発現を誘導する、構成的または誘導的プロモーターを含有するベクターを含むイー・コリ中で実施されることが最も多い。融合ベクターは、その中でコードされた抗体、多くの場合、組換え抗体の定常領域に、この抗体の特異性または抗原認識に影響することなく、いくつかのアミノ酸を添加する。融合ペプチドのアミノ酸の添加により、例えばマーカー(例えば、mycまたはフラッグなどのエピトープタグ)としての抗体に、追加の機能を加えることができる。
【0107】
イーストなどの他の微生物も発現に有用である。サッカロミセスは好ましいイースト宿主であり、適当なベクターは、望まれる通りに、発現制御配列(例えば、プロモーター)、複製開始点、終止配列などを有する。典型的なプロモーターには、3−ホスホグリセリン酸キナーゼおよび他の糖分解酵素が含まれる。誘導的イーストプロモーターには、とりわけ、アルコール脱水素酵素、イソチトクロームC、ならびにマルトースおよびガラクトースの利用に関与する酵素に由来するプロモーターが含まれる。
【0108】
対象とするポリヌクレオチド配列(例えば、重鎖および軽鎖をコードする配列、ならびに発現制御配列)を含むベクターは、周知の方法によって宿主細胞中に移すことができ、この方法は、細胞宿主の種類に応じて変化する。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションは、原核細胞に対して一般に利用され、一方、リン酸カルシウム処理、電気穿孔、リポフェクション、微粒子銃またはウイルスベースのトランスフェクションは、他の細胞宿主に対して使用することができる。(一般に、すべての目的に対してその全体が本明細書に参照により組み込まれている、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press、2版、1989)を参照されたい)。哺乳動物細胞を形質転換するのに使用される他の方法には、ポリブレン、プロトプラスト融合、リポソーム、電気穿孔、および微量注入の使用が含まれる(一般に、Sambrookら、上記を参照されたい)。トランスジェニック動物を作製するために、導入遺伝子を、受精卵母細胞中に微量注入することができ、または胚幹細胞のゲノム、および除核卵母細胞中に移されたそのような細胞の核中に組み込むことができる。
【0109】
重鎖および軽鎖が別々の発現ベクターでクローン化される場合、ベクターは、同時形質移入されることによって、インタクトな免疫グロブリンを発現し、構築する。発現されると、抗体全体、その二量体、個々の軽鎖および重鎖、または本発明の他の免疫グロブリン形態は、本明細書で説明したように分離し、および/または硫安塩析、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、HPLC精製、ゲル電気泳動などを含めた、当技術分野で既知の手順によってさらに精製することができる(一般に、Scopes、Protein Purification(Springer−Verlag、N.Y.、(1982)を参照されたい)。医薬品用途のためには、少なくとも約90から95%の均一性の実質的に純粋な免疫グロブリンが好ましく、98から99%またはそれ以上の均一性が最も好ましい。
【0110】
タンパク質精製
本発明によって発現されたタンパク質を単離および/または精製することが望ましい。ある特定の実施形態では、発現されたタンパク質は、培地中に分泌され、したがって、精製プロセスの第1工程として、例えば遠心分離またはフィルタリングによって、細胞および他の固形物を除去することができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、発現されたタンパク質は、宿主細胞の表面に結合される。そのような実施形態では、精製プロセスの第1工程として、培地は除去され、ポリペプチドまたはタンパク質を発現する宿主細胞は溶解される。哺乳動物宿主細胞の溶解は、ガラスビーズによる物理的破壊および高pH状態への暴露を含む、当業者に既知のいくつもの手段によって達成することができる。
【0112】
タンパク質は、それだけに限らないが、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、サイズ排除、およびヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー)、ゲル濾過、遠心分離、または示差溶解度(differential solubility)、エタノール沈殿、またはタンパク質精製のための任意の他の利用可能な技法を含めた、標準的な方法によって単離し、精製することができる(例えば、そのそれぞれは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Scopes、Protein Purification Principles and Practice 2版、Springer−Verlag、New York、1987; Higgins,S.J.およびHames,B.D.(編)、Protein Expression:A Practical Approach、Oxford Univ Press、1999;ならびにDeutscher,M.P.、Simon,M.I.、Abelson,J.N.(編)、Guide to Protein Purification:Methods in Enzymology(Methods in Enzymology Series、182巻)、Academic Press、1997を参照されたい)。特に免疫アフィニティークロマトグラフィーについては、タンパク質は、そのタンパク質に対して産生され、固定支持体に固定された抗体を含むアフィニティーカラムにこれを結合することによって、単離することができる。アフィニティータグ、例えば、インフルエンザコート配列、ポリヒスチジン、またはグルタチオンSトランスフェラーゼなどを、標準的な組換え技術によりタンパク質に結合させることによって、適切なアフィニティーカラムを通過させることによる容易な精製を可能にすることができる。精製プロセスの間のポリペプチドまたはタンパク質の分解を低減または排除するために、プロテアーゼ阻害剤、例えば、フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)、ロイペプチン、ペプスタチンまたはアプロチニンなどを、任意のまたはすべての段階で加えることができる。プロテアーゼ阻害剤は、発現されたポリペプチドまたはタンパク質を単離し、精製するために、細胞を溶解しなければならない場合、特に有利である。
【0113】
本発明のある特定の方法によって発現されるタンパク質は、本発明ではない細胞培養条件下で生じた場合に有するよりも、広範な、および/または修飾されたグリコシル化パターンを有することができる。したがって、精製工程で利用することができる本発明の1つの実用的な利点は、ある特定の本発明の方法および/または組成物によって生じさせた糖タンパク質上に存在する追加の、および/または修飾された糖残基により、その糖タンパク質をより容易に精製するため、または本発明ではない方法および/もしくは組成物によって生じさせた糖タンパク質について可能であるよりも高く精製するために専門家が使用することができる、異なる生化学的性質を糖タンパク質に与えることができることである。
【0114】
当業者は、正確な精製技法が、精製されるポリペプチドもしくはタンパク質の特性、ポリペプチドもしくはタンパク質が発現される細胞の特性、および/または細胞が成長した培地の組成物に応じて様々となり得ることを理解するであろう。
【0115】
医薬製剤
本発明のタンパク質製剤は、医薬上許容される担体または賦形剤の存在下で医薬組成物として製剤化することができる。本明細書で説明されるような、タンパク質製剤を含有する組成物は、対象に投与することができ、またはそれだけに限らないが、非経口、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、経口、頬側、舌下、経鼻、気管支、眼(opthalmic)、経皮(局所的)、経粘膜、直腸、および膣の経路を含めた任意の利用可能な経路によるデリバリーのために最初に製剤化することができる。本発明の医薬組成物は、哺乳動物細胞系統から発現された、精製されたポリペプチドまたはタンパク質、医薬上許容される担体と組み合わせたデリバリー剤(すなわち、上述したような、陽イオンポリマー、ペプチド分子トランスポーター、界面活性剤など)を一般に含む。本明細書で使用される場合、用語「医薬上許容される担体」として、医薬投与に適合した、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが挙げられる。補助的な活性化合物も、本発明の組成物中に組み込むことができる。例えば、本発明によって作製されたタンパク質またはポリペプチドは、全身性薬物療法用薬物、例えば、トキシン、低分子量細胞毒性薬、生物学的応答調節物質、および放射性核種にコンジュゲートすることができる(例えば、Kunzら、Calicheamicin derivative−carrier conjugates、US04/0082764A1を参照されたい)。本発明による医薬組成物を調製するのに有用な追加の成分として、例えば、香味剤、滑剤、可溶化剤、懸濁剤、増量剤、流動促進剤、圧縮助剤、結合剤、錠剤崩壊剤、封入材料、乳化剤、緩衝液、保存剤、甘味料、増粘剤、着色剤、粘性調節剤、安定剤もしくは浸透圧調節剤、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0116】
あるいは、またはさらに、本発明によって作製されたタンパク質またはポリペプチドは、1つまたは複数の追加の医薬として活性な薬剤と組み合わせて(同時にでも、経時的にでも)投与することができる。これらの医薬として活性な薬剤の例示的なリストは、参照により本明細書に組み込まれている、Medical Economics Co.、Inc.、Montvale、NJ、2001によって出版された医師用卓上参考書、55版に見出すことができる。これらのリストされた薬剤の多くについては、医薬として有効な投与量およびレジメンは、当技術分野で知られており、多くは、医師用卓上参考書自体に示されている。
【0117】
固体の医薬組成物は、1つまたは複数の固体担体、および所望により1つまたは複数の他の添加剤、例えば、香味剤、滑剤、可溶化剤、懸濁剤、増量剤、流動促進剤、圧縮助剤、結合剤または錠剤崩壊剤または封入材料などを含有することができる。適当な固体担体として、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリジン、低融点ワックスもしくはイオン交換樹脂、またはこれらの組合せが挙げられる。粉末医薬組成物では、担体は、微粉化した固体とすることができ、これは、微粉化した活性成分と混合されている。錠剤では、活性成分は、適当な比率で必要な圧縮特性を有する担体、および所望により他の添加剤と一般に混合され、圧縮されて所望の形状およびサイズにされる。
【0118】
液体医薬組成物は、本発明によって発現されたポリペプチドまたはタンパク質、および1つまたは複数の液体担体を含有することによって、溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エリキシル剤、または加圧組成物を形成することができる。医薬上許容される液体担体として、例えば、水、有機溶媒、医薬上許容される油もしくは脂肪、またはこれらの組合せが挙げられる。液体担体は、他の適当な医薬添加剤、例えば、可溶化剤、乳化剤、緩衝液、保存剤、甘味料、香味剤、懸濁剤、増粘剤、染料、粘性調節剤、安定剤もしくは浸透圧調節剤、またはこれらの組合せを含有することができる。液体製剤が、小児科での使用のために意図されている場合、アルコールを含めることを回避するか、アルコールの量を制限することが一般に望ましい。
【0119】
経口または非経口投与に適した液体担体の例として、水(所望により、ナトリウムカルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体などの添加剤を含有する)、アルコールもしくはその誘導体(一価アルコールもしくはグリコールなどの多価アルコールを含む)、または油(例えば、ヤシ油およびラッカセイ油)が挙げられる。非経口投与については、担体は、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルなどの油性エステルとすることもできる。加圧組成物用の液体担体は、ハロゲン化炭化水素、または他の医薬上許容される噴霧剤とすることができる。
【0120】
滅菌溶液または懸濁液である液体医薬組成物は、例えば、筋肉内、腹腔内、硬膜外、くも膜下腔内、静脈内または皮下の注射によって、非経口的に投与することができる。経口または経粘膜投与用の医薬組成物は、液体または固体の組成物形態のいずれであってもよい。
【0121】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、その投与の意図した経路と適合するように製剤化される。非経口、皮内、または皮下用途に使用される溶液または懸濁液は、以下の成分を含むことができる:滅菌希釈剤、例えば、注射用水、食塩液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒など;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなど;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなど;エチレンジアミン四酢酸などのキレート化剤;緩衝液、例えば、酢酸、クエン酸またはリン酸など、および張性を調節するための作用剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロースなど。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基を用いて調節することができる。非経口製剤は、アンプル、使い捨てシリンジ、またはガラスもしくはプラスチック製の多回用量バイアル中に封入することができる。
【0122】
注射可能用途に適した医薬組成物は、滅菌水溶液(水溶性である場合)または分散系、および滅菌注射溶液または分散系の即時調製用の滅菌粉末を一般に含む。静脈内投与については、適当な担体として、生理食塩水、静菌水、CREMOPHOR EL(商標)(BASF、Parsippany、NJ)、またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。すべての場合において、組成物は無菌的であるべきであり、容易に注射ができる程度まで流動性であるべきである。有利には、ある特定の医薬製剤は、製造および貯蔵条件下で安定であり、細菌および菌類等の微生物の汚染作用から保護されていなければならない。一般に、関連する担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレン(polyetheylene)グリコールなど)、およびこれらの適当な混合物を含有する溶媒または分散系媒質とすることができる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散系の場合、要求される粒径の維持、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。ある特定の場合では、組成物中に等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えば、マンニトール(manitol)、ソルビトールなど、または塩化ナトリウムを含めることが有用になる。注射可能組成物の吸収の延長は、吸収を遅延させる作用剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンをこの組成物中に含めることによってもたらすことができる。
【0123】
滅菌注射溶液は、必要に応じて上記に列挙した成分の1つまたは組合せとともに、適切な溶媒中に必要量の精製されたポリペプチドまたはタンパク質を組み込み、その後に濾過滅菌を行うことによって調製することができる。一般に、分散系は、哺乳動物細胞系統から発現された、精製されたポリペプチドまたはタンパク質を、基本分散媒質と上記に列挙したものからの必要とされる他の成分とを含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことによって調製される。滅菌注射溶液調製用の滅菌粉末の場合、有利な調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、これらにより、あらかじめ滅菌濾過された、活性成分と任意の追加の所望の成分との溶液から、これらの成分の粉末が得られる。
【0124】
経口組成物は、不活性な希釈剤と食用の担体を一般に含む。経口治療投与の目的のために、精製されたポリペプチドまたはタンパク質を、賦形剤とともに組み込み、錠剤、トローチ、またはカプセル、例えば、ゼラチンカプセルの形態で使用することができる。経口組成物は、例えば、口内洗剤として使用するために、流体担体を使用して調製することもできる。医薬として適合した結合剤、および/またはアジュバント物質を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、ピル、カプセル、トローチなどは、以下の成分、または類似した性質の化合物のいずれも含有することができる:結合剤、例えば、微結晶性セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチンなど;賦形剤、例えば、デンプンもしくはラクトースなど、崩壊剤、例えば、アルギン酸、プリモゲル(Primogel)、もしくはコーンスターチなど;滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムもしくはステロテス(Sterotes)など;コロイド状二酸化ケイ素などの流動促進剤;甘味剤、例えば、スクロースもしくはサッカリンなど;または香味剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ香料など。そのような製剤は、望ましい場合、例えば、小児、錠剤を嚥下する能力が損なわれた個体、または動物への投与を促進するため、混合された咀しゃく製剤もしくは液体製剤、または食品材料もしくは食品液体とすることができる。経口デリバリー用製剤は、消化管内での安定性を改善し、および/または吸収を高めるための作用剤を有利に組み込むことができる。
【0125】
吸入による投与については、哺乳動物細胞系統から発現されたタンパク質製剤とデリバリー剤を含む本発明の組成物は、鼻腔内、または吸入によっても投与することができ、乾燥粉末吸入器、または適当な噴霧剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、ヒドロフルオロアルカン、例えば、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFA 134A(商標))、もしくは1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFA 227EA(商標))など、二酸化炭素もしくは他の適当なガスを使用する、しないにかかわらず、加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザーもしくはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示の形態で送達されることが好都合である。加圧エアロゾルの場合、投与量単位は、計量された、例えば、治療有効量を送達するためのバルブを提供することによって決定することができる。本発明は、経鼻スプレー、吸入器、または上気道および/もしくは下気道への他の直接デリバリーを使用する、本発明の組成物のデリバリーを特に企図している。インフルエンザウイルスに向けられたDNAワクチンの鼻腔内投与により、CD8 T細胞応答が誘発されることが示され、この経路によって送達される場合、呼吸器内の少なくとも一部の細胞は、DNAを取り込むことができ、本発明のデリバリー剤により、細胞取り込みが増強されることを示している。ある特定の実施形態によれば、哺乳動物細胞系統から発現された、精製されたポリペプチドとデリバリー剤を含む組成物は、エアロゾル投与用の大きな多孔質粒子として製剤化される。
【0126】
調節放出およびパルス放出経口剤形は、放出速度調節物質として作用する賦形剤を含有することができ、これらは、デバイスの本体上にコーティングされており、および/または本体中に含まれている。放出速度調節物質として、まったくそれだけに限るものではないが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、ポリエチレンオキシド、キサンタンガム、カルボマー、アンモニオメタクリレートコポリマー、硬化ヒマシ油、カルナウバワックス、パラフィンワックス、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸コポリマー、およびこれらの混合物が挙げられる。調節放出およびパルス放出経口剤形は、放出速度調節賦形剤の1つまたは組合せを含有することができる。放出速度調節賦形剤は、剤形内、すなわちマトリックス内、および/または剤形上、すなわち表面もしくはコーティング上の両方に存在してもよい。
【0127】
全身投与は、経粘膜または経皮手段によるものとすることもできる。経粘膜または経皮投与については、浸透されるバリアーに適切な浸透剤が、製剤中に使用される。そのような浸透剤は当技術分野で一般に知られており、これには、例えば、経粘膜投与について、界面活性剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、経鼻スプレーまたは坐剤の使用により達成することができる。経皮投与については、精製されたポリペプチドまたはタンパク質とデリバリー剤は、例えば、以下のうちの1つまたは複数の混合物中に懸濁または溶解した活性化合物を含有する適当な軟膏剤として製剤化することができる:鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス、および水。あるいは、これらは、例えば、以下のうちの1つまたは複数の混合物中に懸濁または溶解した、適当なローション剤またはクリームとして製剤化することができる:鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水。
【0128】
あるいは、化合物は、坐剤もしくはペッサリーの形態で投与することができ、またはこれらは、ゲル、ヒドロゲル、ローション剤もしくは他のグリセリド、溶液、クリーム、軟膏剤もしくは散粉剤の形態で局所的に適用することができる。
【0129】
いくつかの実施形態では、組成物は、インプラントおよびマイクロカプセル化デリバリーシステムを含めた制御放出製剤など、タンパク質を身体からの急速な排出から保護する担体ともに調製される。一般に、本発明の組成物は、即時放出、遅延放出、調節放出、徐放、パルス放出、または制御放出デリバリー用に製剤化することができる。エチレンビニルアセテート、ポリアンヒドリド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの、生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。そのような製剤の調製方法は、当業者に明白となるであろう。適当な材料は、Alza Corporation and Nova Pharmaceuticals,Incから市販で得ることもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体に感染した細胞を標的にしたリポソームを含む)も医薬上許容される担体として使用することができる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されているように、当業者に既知の方法によって調製することができる。
【0130】
本発明によって作製されたタンパク質は、シクロデキストリンと組み合わせて使用することもできる。シクロデキストリンは、ある特定の分子と包接および非包接錯体を形成することが知られている。シクロデキストリン錯体の形成により、タンパク質またはポリペプチドの溶解度、溶解速度、バイオアベイラビリティーおよび/または安定性を修飾することができる。シクロデキストリン錯体は、ほとんどの剤形および投与経路に対して一般に有用である。タンパク質またはポリペプチドとの直接錯体形成の代替として、シクロデキストリンは、補助添加剤、例えば、担体、希釈剤、または可溶化剤として使用することができる。α−、β−、およびγ−シクロデキストリンが最も一般に使用され、適当な例は、公開国際特許出願第WO91/11172号、同第WO94/02518号および同第WO98/55148号に記載されている。
【0131】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、錠剤またはカプセルなどの単位剤形で提供される。投与の容易さと投与量の均一性のために、経口または非経口組成物を単位剤形で製剤化することが有利となり得る。そのような形態では、組成物は、適切な量のポリペプチドまたはタンパク質を含有する単位用量にさらに分割される。単位剤形は、梱包された組成物、例えば、小包にした粉末、バイアル、アンプル、液体を含むプレフィルドシリンジまたはサシェとすることができる。単位剤形は、例えば、カプセルまたは錠剤自体とすることができ、またはこれは、梱包形態での適切な数の任意のそのような組成物とすることができる。当業者が認識するように、治療上有効な単位投与量は、例えば、投与方法、ポリペプチドもしくはタンパク質の効力、および/またはレシピエントの体重、および医薬組成物中の他の成分の素性を含めたいくつかの要因に依存することになる。
【0132】
タンパク質製剤、例えばタンパク質製剤を含有する医薬組成物は、必要に応じて様々な間隔で、異なる時間の期間にわたって、例えば、約1から10週間の間、2から8週間の間、約3から7週間の間、約4、5、または6週間などに、1週間当たり1回投与することができる。当業者は、それだけに限らないが、疾患または障害の重症度、以前の治療、対象の一般的な健康状態および/または年齢、ならびに存在する他の疾患を含む、ある特定の要因が、対象を有効に治療するのに要求される投与量およびタイミングに影響し得ることを理解するであろう。本明細書に記載されるようなポリペプチドまたはタンパク質を用いた対象の治療は、単回の治療または一連の治療を含むことができる。適切な用量は、ポリペプチドまたはタンパク質の効力に依存する場合があり、例えば、あらかじめ選択された所望の応答が達成されるまで、漸増用量を投与することによって、特定のレシピエントに所望により適応させることができることがさらに理解される。任意の特定の動物対象についての具体的な用量レベルは、使用される特定のポリペプチドまたはタンパク質の活性、対象の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、および食餌、投与時間、投与経路、排泄速度、任意の薬物の組合せ、ならびに調節される発現または活性の程度を含む、様々な要因に依存し得ることが理解される。
【0133】
本発明は、非ヒト動物の治療のための、本明細書に記載される組成物の使用を包含する。したがって、用量および投与方法は、獣医薬理学および獣医医薬の既知の原則によって選択することができる。ガイダンスは、例えば、Adams,R.(編)、Veterinary Pharmacology and Therapeutics、8版、Iowa State University Press;ISBN:0813817439;2001に見出すことができる。
【0134】
医薬組成物は、投与指示書と一緒に容器、パック、またはディスペンサー中に含めることができる。
【0135】
以下の実施例は例示的であり、限定的なものではない。
【実施例】
【0136】
抗体M1〜M3の溶液を、様々な塩濃度、すなわち、様々なイオン強度で、静的光散乱、動的光散乱、および非対称フローフィールドフローフラクショネーションによって評価した。
【0137】
抗体溶液の調製
すべての溶液は、適切な塩含有緩衝溶液中に、室温で、緩衝液を2回交換して一晩透析することによって調製した。
【0138】
機器による方法
静的光散乱
静的光散乱(SEC−MALS)を使用することによって、抗体溶液の重量平均分子量を測定した。静的光散乱実験のために、抗体溶液を4mg/mLに希釈し、複数の試料を計測器中に手作業で注入した。この抗体溶液を、Wyatt TechnologyからのMini Dawn計測器を使用して、複数の角度(45、90および135)での静的光散乱を利用して20℃で測定した。90°の散乱データを使用することによって、重量平均分子量を計算した。全データセット(複数の角度)を使用することによってジムプロットを作成し、これを使用して分子量および第2ビリアル係数を計算した。
【0139】
動的光散乱
動的光散乱を使用することによって、溶液中の抗体の粒径を測定した。抗体溶液は、Wyatt TechnologyからのDynaPro計測器を使用して、25℃で90°の角度で測定した。
【0140】
非対称フローフィールドフローフラクショネーション
溶液中の抗体の粒径を測定するために、非対称フローフィールドフローフラクショネーション(AF4)も使用した。AF4測定は、Wyatt TechnologyからのEclipse計測器で実施した。AF4分析パラメーターは以下の通りであった:温度20℃、透析緩衝液と同じ実行緩衝液、10KDaのカットオフ膜。
【0141】
光学濃度
タンパク質試料の濁度は、400nmの波長でSpectraMax UV−Visを使用して、見かけの光学濃度(特定波長の光の吸光度)として測定した。
【実施例1】
【0142】
IgG1抗体M1(Myo−029)の分析
抗体M1溶液は、塩濃度、すなわちイオン強度に応じて大きな乳光効果を示した。図1は、約20mg/mLのタンパク質で、濃度が0mMのNaClから150mMのNaClまで増加する場合の、視覚的に認知できる乳光の変化を示す。0mMのNaClから100mMのNaClの範囲の抗体M1溶液は、動的光散乱によっても分析し、試料は、約5mg/mLに希釈した。収集したデータを表1に示す。図1は、漸増NaCl濃度に曝された抗体M1(本明細書では、「Myo−029」とも呼ばれる)溶液の画像を示す(視覚的に認知できる乳光の増大を示している)。
【0143】
図2は、0mMのNaCl溶液と100mMのNaClの抗体M1溶液についての動的光散乱のプロットを示し、そのデータは表1に含まれている。
【0144】
表1:抗体M1についての動的光散乱データ
【0145】
【表1】
【0146】
ピーク2とピーク3の種の%質量の増加は、図1で視覚的に認知できる乳光の増大と相関する。0mMのNaCl溶液中のピーク3の存在は、抗体M1については、低塩濃度でも少量の乳白色種が存在することを示す。
【0147】
抗体M1(20mg/mLのタンパク質で)の100mMのNaCl溶液の非対称フローフィールドフローフラクショネーションにより、図3に示すように大きな種が示された。SEC−HPLC(3mg/mLに希釈された試料)では、図4に示すように、同様の抗体M1の100mMのNaCl溶液について、いかなる大きな種も識別することができなかった。
【0148】
抗体M1についての乳光効果の可逆性も検査した。抗体M1溶液を、0mMのNaClから100mMのNaClまで、次いで0mMのNaClに戻して透析した。抗体M1を100mMのNaCl溶液(最初は塩を含まない溶液中)中に一晩透析し、次いで100mMのNaClでの少量のこの物質を、塩を含まない溶液中に戻して一晩透析した。図5は、これら3つの抗体M1溶液についての、視覚的に認知できる乳光の変化を示す。図6は、乳白色の100mMのNaClの中間透析溶液、およびまた0mMのNaClの最終透析溶液についての動的光散乱のプロットを示す。
【0149】
これらのデータは、抗体M1は、極端に大きな種を含有するが、この種は、0mMのNaClで比較的少量で存在するだけであり、この大きな種の濃度は、塩濃度が増加すると増加することを示す。これらのデータは、大きな種は、非対称フローフィールドフローフラクショネーションを使用して識別することができるが、大きすぎてSEC−HPLCカラム上で実行することができず、ベッディング(bedding)によって破壊され、または希釈すると破壊されることも示す。幸いにも、この大きな種は、示したように動的光散乱を使用して分解し、分析することができる。
【実施例2】
【0150】
IgG1抗体M2の分析
抗体M2溶液は、皮下抗体投与に関連した濃度範囲にわたって、大きな乳光効果を示さない。図7は、約20mg/mLのタンパク質で、濃度が0mMのNaClから150mMのNaClまで増加する場合に、視覚的に認知できる乳光の変化がないことを示す。0mMのNaClと150mMのNaClの抗体M2溶液は、約5mg/mLのタンパク質で動的光散乱によっても分析した。収集した動的光散乱データを表2に示す。図8は、0mMのNaCl溶液と150mMのNaClの抗体M2溶液についての動的光散乱のプロットを示し、そのデータは表2に含まれている。
【0151】
表2:抗体M2についての動的光散乱データ
【0152】
【表2】
a「ピーク2」は、表1との比較目的のためだけに含まれている。
【0153】
これらのデータは、抗体M2は、皮下投与に関連する濃度範囲で、容易に認知できるほどの量の乳白色種を有していないことを示す。実際には、ピーク3の質量百分率は、150mMのNaClレベルで、0mMのNaClでの抗体Mについての質量百分率レベルに達するだけである。
【実施例3】
【0154】
抗体M3の分析
抗体M3溶液は、評価した濃度範囲にわたって大きな乳光効果を示さない。0mMのNaClと150mMのNaClの抗体M3溶液を、約5mg/mLで動的光散乱によって分析した。収集した動的光散乱データを表3に示す。
【0155】
図9は、0mMのNaCl溶液と150mMのNaClの抗体M3溶液についての動的光散乱のプロットを示し、そのデータは表3に含まれている。
【0156】
表3:抗体M3についての動的光散乱データ
【0157】
【表3】
a「ピーク2」は、表1との比較目的のために単に含まれている。
【0158】
これらのデータは、抗体M3は、評価した濃度範囲で、容易に認知できるほどの量の乳白色種を有していないことを示す。実際には、ピーク3の質量百分率は、150mMのNaClレベルで、0mMのNaClでの抗体M1についての質量百分率レベルよりもわずかに高い質量百分率レベルに達するだけである。
【実施例4】
【0159】
第2ビリアル係数の評価
静的光散乱を使用することによって、実施例1〜3で分析した抗体(抗体M1、抗体M2、および抗体M3)についての分子量と第2ビリアル係数(A2)を求めた。第2ビリアル係数測定は、静的光散乱とジム分析を使用して求めることができる。実験は、複数の希薄なタンパク質試料を手作業で光散乱システム中に注入することによって行う。これらの複数の測定と正確な濃度を使用して、ジムプロットを構築することができる。これらのデータを表4に示す。
【0160】
表4:静的光散乱データから計算した分子量と第2ビリアル係数のデータ
【0161】
【表4】
【0162】
第2ビリアル係数のデータは、正のビリアル係数を有する抗体M2および抗体M3と比較した場合、抗体M1の凝集/会合傾向、すなわち、負の第2ビリアル係数を示す。図10は、100mMのNaClでの抗体M1についての第2ビリアル係数のプロットを示し、図11は、0.1から1.1mg/mLのタンパク質濃度範囲の、150mMのNaClでの抗体M2についての第2ビリアル係数のプロットを示す。これらのデータは、第2ビリアル係数は、特定の抗体についての乳光の予測変数として使用することができることを示す。
【実施例5】
【0163】
抗体M1における乳光への塩の素性および塩濃度の効果
抗体M1の乳光への塩の素性の効果を評価するために、いくつかの実験を行った。
【0164】
時間に対する塩の素性による乳光の変化
4つの63mg/mLの抗体M1溶液、すなわち、塩をまったく含まない対照溶液、100mMのNaHPO4を含む溶液、100mMのNaClを含む溶液、および100mMのCaCl2を含む溶液を調製した。次いでこれらの溶液を、室温で1時間静置させた。1時間後のこれらの溶液の画像を図12に示す。図12で分かるように、1時間後の乳光の順序は、NaCl>NaHPO4>CaCl2である。この画像は、乳光は、塩素イオンの存在にもっぱら関係するのではない、すなわち、NaHPO4溶液も乳光を増大させることを示す。
【0165】
次いでこれらの同じ溶液を、2〜8℃に2週間維持した。2週間後のこれらの溶液の画像を図13に示す。図13に示したこれらの溶液のそれぞれは、2〜8℃で2週間後にゲル化することを示し、乳光を増大させた。しかし、ゲル化および乳光の程度は、塩の種類および濃度に依存した。乳光の順序は、1時間後と同じ、すなわちNaCl>NaHPO4>CaCl2であった。今回は示していないが、塩MgCl2も試験し、これは、以下のようなスキーム、すなわち、NaCl>NaHPO4>MgCl2>CaCl2にあてはまった。
【0166】
塩の素性および温度サイクリングによる乳光の変化
400nmでの光学濃度の変化を使用することによって、温度サイクリングの間の乳光への塩の素性の効果をモニターした。この実験のために、4つの40mg/mLの抗体M1溶液、すなわち、塩をまったく含まない対照溶液、100mMのNaHPO4を含む溶液、100mMのNaClを含む溶液、および100mMのCaCl2を含む溶液を調製した。これらの溶液を、2〜8℃から室温まで3サイクル繰り返した。2〜8℃から室温までと2〜8℃に戻すまでの各サイクルは、24時間かけた。OD400nm対サイクル数のプロットを図14に示す。NaCl溶液についての増加しているOD400nm値は、例えば、二次構造の形成の増大を示す。したがって、図14のデータは、液体とゲルの間のサイクリングにより、乳光が増大する可能性があることを示す。
【0167】
塩の素性および塩濃度による乳光の変化
塩濃度の変化に対する高分子量の百分率を、SEC−HPLCによってモニターした。この実験のために、CaCl2、NaCl、MgCl2、およびNaHPO4の溶液を、0、5、10、および20mMの濃度で調製した。高分子量物質の百分率を各試料について測定した。高分子量の百分率対濃度のプロットを図15に示す。高分子量種の百分率は、CaCl2を除く各塩で増加する。
【0168】
塩の素性および塩濃度による光学濃度の変化
400nmでの光学濃度の変化を使用することによって、乳光への塩の素性および塩濃度の効果をモニターした。この実験のために、MgCl2、CaCl2およびNaClの塩を使用して一連の抗体M1溶液を調製した。OD400nm対塩濃度のプロットを図16に示す。図17は、図16のデータの拡大した領域を示す。これらのデータは、高分子量種は、NaClの濃度が増加すると増加するが、CaCl2とMgCl2についてはわずかに増加するだけであることを示す。
【0169】
20mMのCaCl2中の抗体M1濃度に対する光学濃度の変化
最後に、400nmでの光学濃度の変化を使用することによって、20mMのCaCl2溶液中で抗体M1の濃度を変化させることの効果をモニターした。この実験のために、10、20、50、60、および75mg/mLの抗体M1の溶液を、20mMのCaCl2中で調製した。OD400nm対抗体M1の濃度のプロットを図18に示す。これらのデータは、抗体M1の濃度が増加するとともに高次構造が増加することを示す。
【0170】
実施例5についてのすべてのデータに関して、いくつかの知見を得ることができる。乳光効果は、以下の様式、すなわち、NaCl>Na2PO4>MgCl2>CaCl2で塩に依存する。所与のタンパク質濃度については、乳光は、塩濃度が増加するにつれて最初は増大し、次いで横ばい状態になるか、低下する。乳光は、タンパク質濃度とともに増大する。評価したすべての塩により、2〜8℃で抗体M1はゲル化し、ゲル化のタイミングは塩に依存し、乳光のレベルに関係するように思われる。
【0171】
本発明で使用される抗体は、抗体M1(本明細書では「Myo−029」とも呼ばれる)、抗体M2、および抗体M3であることが好ましい。抗体製剤(抗体M1、抗体M2、または抗体M3を含有していることが好ましい)のイオン強度が、本発明によって低減または減少する場合、イオン強度の低減または減少は、イオン強度と抗体濃度の比が低減するように通常実施される。
【0172】
本明細書で述べたすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が本明細書に参照により組み込まれている。
【0173】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内にある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体製剤の乳光を減少させる方法であって、抗体製剤の乳白色外観が低減するように、抗体製剤中のイオン強度と抗体濃度の比を修飾する工程を含み、イオン強度を修飾する前の抗体製剤が、約100mg/mlの医薬として有効な濃度で、約2の欧州薬局方基準を超える乳光を示す、方法。
【請求項2】
抗体製剤中の高分子量種の形成を低減する方法であって、タンパク質製剤中の高分子量種が低減するように、抗体製剤中のイオン強度と抗体濃度の比を修飾する工程を含む、方法。
【請求項3】
抗体製剤が、ヒト、ヒト化、キメラ、CDR移植、もしくはin vitro生成抗体、またはこれらの抗原結合性断片を含む、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
抗体製剤がIgG1またはIgG4重鎖定常領域を含む、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
抗体製剤が抗GDF8抗体を含む、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
抗体製剤の抗体が、約50から200mMの範囲の塩濃度中で負の第2ビリアル係数を有する、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
抗体の第2ビリアル係数が、100mMの塩化ナトリウムを含有する抗体製剤中で、約−1から−10×10−3、または約−1から−10×10−4mol−mg/g2である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
抗体製剤の抗体が、約50から200mMの範囲の塩濃度中で正のビリアル係数を有する、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
抗体の第2ビリアル係数が、100mMの塩化ナトリウムを含有する抗体製剤中で、約1から10×10−4、または約1から10×10−3mol−mg/g2である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
方法を実行する前および/または実行した後に、抗体が抗体製剤中に約5から300mg/mlの濃度で存在する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
抗体製剤のイオン強度が、製剤中に存在する塩の濃度を減少させることによって低減する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
抗体製剤のイオン強度が、製剤中に存在する塩の濃度を減少させることによって低減し、製剤中に存在する塩は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムおよびリン酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
抗体製剤のイオン強度が、製剤中に存在する塩の濃度を減少させることによって低減し、塩の濃度が乳白色製剤中の濃度の約2、3、5、10、または100分の1以下になる、請求項11記載の方法。
【請求項14】
抗体製剤のイオン強度が、第1の塩を第2の塩と置換することによって修飾され、第1の塩はNaClであり、第2の塩は、NaHPO4、MgCl2、およびCaCl2からなる群から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項15】
抗体製剤のイオン強度が、第1の塩を第2の塩と置換することによって修飾され、第1の塩はNaHPO4であり、第2の塩は、MgCl2およびCaCl2からなる群から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項16】
抗体製剤のイオン強度が、限外濾過または透析によって修飾される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
抗体製剤の乳光を評価する工程、または
抗体製剤中の塩濃度を求める工程をさらに含み、抗体製剤中のイオン強度が、1つもしくは複数の濾過方法を適用する工程、または抗体を精製するプロセス中の1つもしくは複数の工程の塩濃度を低減する工程のうちの1つまたは複数を含むプロセスによって修飾される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
抗体を精製するプロセスが、遠心分離、濾過、クロマトグラフィー、凍結乾燥または復元のうちの1つまたは複数を含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
抗体製剤の乳光を評価する工程をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
抗体製剤の乳光が、溶液の濁度を評価する、第2ビリアル係数の変化を評価する、または高分子量種の形成の変化を評価することによって検出される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
乳光が、約2または1の欧州薬局方基準またはそれ未満に低減する、請求項20記載の方法。
【請求項22】
第2ビリアル係数が、約−1〜−10×10−3から約−1〜−10×10−4に変化する、請求項20記載の方法。
【請求項23】
高分子量種の量が、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、50または100分の1になる、請求項20記載の方法。
【請求項24】
抗体製剤中の高分子量種の形成を減少させる方法であって、タンパク質製剤中の高分子量種の形成が低減するように、抗体製剤中のイオン強度と抗体濃度の比を修飾する工程を含み、製剤中の抗体は、100mMの塩化ナトリウム溶液中で負のビリアル係数を有する、方法。
【請求項25】
抗体製剤の精製プロセスの効率を改善する方法であって、
1つまたは複数の塩濃度で、タンパク質製剤が乳白色溶液を形成するかどうかを(適宜)評価する工程と、
抗体製剤中の高分子量種が低減するように、製剤中のイオン強度と抗体濃度の比を修飾し、それによって抗体製剤の精製プロセスの効率を改善する工程と
を含み、
溶液のイオン強度は、1つもしくは複数の濾過方法を適用する工程、タンパク質製剤中に使用された塩を、より低い乳光誘発物質と置換する工程、または精製プロセス中の1つもしくは複数の工程のイオン強度を低減する工程のうちの1つまたは複数によって修飾される、方法。
【請求項26】
抗体の作製を改善する方法であって、
第1の抗体溶液を回収する工程と、
第1の抗体溶液中の乳光または高分子量種の存在のレベルを評価する工程と
を含み、
(a)乳光もしくは高分子量種のレベルが所定レベル以下である場合、抗体製品での使用に前記第1の抗体溶液を選択し、または(b)乳光もしくは高分子量種のレベルが所定レベルより高い場合、第2のイオン強度を有する第2の抗体溶液を選択する、方法。
【請求項27】
溶液中の乳光レベルが、所定レベル以下になるまで評価工程を繰り返す工程をさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
抗体溶液が、マトリックスからの抗体溶出、透析された溶液もしくは他の濾液の回収、乾燥製剤の可溶化、またはクロマトグラフィー法のうちの1つまたは複数から選択されるタンパク質精製方法によって回収される、請求項26または27記載の方法。
【請求項29】
抗体溶液が、クロマトグラフィー法によって回収され、クロマトグラフィー法は、プロテインAクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ダイアフィルトレーション、限外濾過、ウイルス除去濾過、陰イオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよび陽イオン交換クロマトグラフィーからなる群から選択される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
所定レベルの抗体溶液が約2の濁度値を有する、請求項26から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
抗体製剤の乳白色外観を有する性向を判定する方法であって、
抗体を自己凝集する傾向を有すると(適宜)認定する工程と、
抗体製剤の1つまたは複数の試料を提供する工程と、
1つまたは複数の試料中の塩濃度を増加させた後の高分子量種の形成を検出する工程とを含み、塩濃度を増加させた後の高分子量種の形成の増大により、製剤中の抗体の乳白色外観を有する性向の増大が示される、方法。
【請求項32】
抗体試料の乳光を評価する方法であって、
抗体試料を提供する工程と、
1つまたは複数の塩濃度で、濁度または高分子量種の存在を判定する工程と、
1つまたは複数の塩濃度での濁度または高分子量種の存在の関数として、抗体試料中の乳光レベルについて報告する工程と
を含む、方法。
【請求項33】
請求項1、2、25または26のいずれかに記載の方法によって作製される抗体製剤。
【請求項34】
約50mM未満のNaCl中に少なくとも約50mg/mlの濃度で抗体を含む、医薬上許容される抗体製剤。
【請求項1】
抗体製剤の乳光を減少させる方法であって、抗体製剤の乳白色外観が低減するように、抗体製剤中のイオン強度と抗体濃度の比を修飾する工程を含み、イオン強度を修飾する前の抗体製剤が、約100mg/mlの医薬として有効な濃度で、約2の欧州薬局方基準を超える乳光を示す、方法。
【請求項2】
抗体製剤中の高分子量種の形成を低減する方法であって、タンパク質製剤中の高分子量種が低減するように、抗体製剤中のイオン強度と抗体濃度の比を修飾する工程を含む、方法。
【請求項3】
抗体製剤が、ヒト、ヒト化、キメラ、CDR移植、もしくはin vitro生成抗体、またはこれらの抗原結合性断片を含む、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
抗体製剤がIgG1またはIgG4重鎖定常領域を含む、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
抗体製剤が抗GDF8抗体を含む、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
抗体製剤の抗体が、約50から200mMの範囲の塩濃度中で負の第2ビリアル係数を有する、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
抗体の第2ビリアル係数が、100mMの塩化ナトリウムを含有する抗体製剤中で、約−1から−10×10−3、または約−1から−10×10−4mol−mg/g2である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
抗体製剤の抗体が、約50から200mMの範囲の塩濃度中で正のビリアル係数を有する、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
抗体の第2ビリアル係数が、100mMの塩化ナトリウムを含有する抗体製剤中で、約1から10×10−4、または約1から10×10−3mol−mg/g2である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
方法を実行する前および/または実行した後に、抗体が抗体製剤中に約5から300mg/mlの濃度で存在する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
抗体製剤のイオン強度が、製剤中に存在する塩の濃度を減少させることによって低減する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
抗体製剤のイオン強度が、製剤中に存在する塩の濃度を減少させることによって低減し、製剤中に存在する塩は、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムおよびリン酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
抗体製剤のイオン強度が、製剤中に存在する塩の濃度を減少させることによって低減し、塩の濃度が乳白色製剤中の濃度の約2、3、5、10、または100分の1以下になる、請求項11記載の方法。
【請求項14】
抗体製剤のイオン強度が、第1の塩を第2の塩と置換することによって修飾され、第1の塩はNaClであり、第2の塩は、NaHPO4、MgCl2、およびCaCl2からなる群から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項15】
抗体製剤のイオン強度が、第1の塩を第2の塩と置換することによって修飾され、第1の塩はNaHPO4であり、第2の塩は、MgCl2およびCaCl2からなる群から選択される、請求項11記載の方法。
【請求項16】
抗体製剤のイオン強度が、限外濾過または透析によって修飾される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
抗体製剤の乳光を評価する工程、または
抗体製剤中の塩濃度を求める工程をさらに含み、抗体製剤中のイオン強度が、1つもしくは複数の濾過方法を適用する工程、または抗体を精製するプロセス中の1つもしくは複数の工程の塩濃度を低減する工程のうちの1つまたは複数を含むプロセスによって修飾される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
抗体を精製するプロセスが、遠心分離、濾過、クロマトグラフィー、凍結乾燥または復元のうちの1つまたは複数を含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
抗体製剤の乳光を評価する工程をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
抗体製剤の乳光が、溶液の濁度を評価する、第2ビリアル係数の変化を評価する、または高分子量種の形成の変化を評価することによって検出される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
乳光が、約2または1の欧州薬局方基準またはそれ未満に低減する、請求項20記載の方法。
【請求項22】
第2ビリアル係数が、約−1〜−10×10−3から約−1〜−10×10−4に変化する、請求項20記載の方法。
【請求項23】
高分子量種の量が、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、50または100分の1になる、請求項20記載の方法。
【請求項24】
抗体製剤中の高分子量種の形成を減少させる方法であって、タンパク質製剤中の高分子量種の形成が低減するように、抗体製剤中のイオン強度と抗体濃度の比を修飾する工程を含み、製剤中の抗体は、100mMの塩化ナトリウム溶液中で負のビリアル係数を有する、方法。
【請求項25】
抗体製剤の精製プロセスの効率を改善する方法であって、
1つまたは複数の塩濃度で、タンパク質製剤が乳白色溶液を形成するかどうかを(適宜)評価する工程と、
抗体製剤中の高分子量種が低減するように、製剤中のイオン強度と抗体濃度の比を修飾し、それによって抗体製剤の精製プロセスの効率を改善する工程と
を含み、
溶液のイオン強度は、1つもしくは複数の濾過方法を適用する工程、タンパク質製剤中に使用された塩を、より低い乳光誘発物質と置換する工程、または精製プロセス中の1つもしくは複数の工程のイオン強度を低減する工程のうちの1つまたは複数によって修飾される、方法。
【請求項26】
抗体の作製を改善する方法であって、
第1の抗体溶液を回収する工程と、
第1の抗体溶液中の乳光または高分子量種の存在のレベルを評価する工程と
を含み、
(a)乳光もしくは高分子量種のレベルが所定レベル以下である場合、抗体製品での使用に前記第1の抗体溶液を選択し、または(b)乳光もしくは高分子量種のレベルが所定レベルより高い場合、第2のイオン強度を有する第2の抗体溶液を選択する、方法。
【請求項27】
溶液中の乳光レベルが、所定レベル以下になるまで評価工程を繰り返す工程をさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
抗体溶液が、マトリックスからの抗体溶出、透析された溶液もしくは他の濾液の回収、乾燥製剤の可溶化、またはクロマトグラフィー法のうちの1つまたは複数から選択されるタンパク質精製方法によって回収される、請求項26または27記載の方法。
【請求項29】
抗体溶液が、クロマトグラフィー法によって回収され、クロマトグラフィー法は、プロテインAクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ダイアフィルトレーション、限外濾過、ウイルス除去濾過、陰イオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよび陽イオン交換クロマトグラフィーからなる群から選択される、請求項28記載の方法。
【請求項30】
所定レベルの抗体溶液が約2の濁度値を有する、請求項26から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
抗体製剤の乳白色外観を有する性向を判定する方法であって、
抗体を自己凝集する傾向を有すると(適宜)認定する工程と、
抗体製剤の1つまたは複数の試料を提供する工程と、
1つまたは複数の試料中の塩濃度を増加させた後の高分子量種の形成を検出する工程とを含み、塩濃度を増加させた後の高分子量種の形成の増大により、製剤中の抗体の乳白色外観を有する性向の増大が示される、方法。
【請求項32】
抗体試料の乳光を評価する方法であって、
抗体試料を提供する工程と、
1つまたは複数の塩濃度で、濁度または高分子量種の存在を判定する工程と、
1つまたは複数の塩濃度での濁度または高分子量種の存在の関数として、抗体試料中の乳光レベルについて報告する工程と
を含む、方法。
【請求項33】
請求項1、2、25または26のいずれかに記載の方法によって作製される抗体製剤。
【請求項34】
約50mM未満のNaCl中に少なくとも約50mg/mlの濃度で抗体を含む、医薬上許容される抗体製剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2010−506839(P2010−506839A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532451(P2009−532451)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/021904
【国際公開番号】WO2008/045563
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(591011502)ワイス エルエルシー (573)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/021904
【国際公開番号】WO2008/045563
【国際公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(591011502)ワイス エルエルシー (573)
【Fターム(参考)】
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