説明

乳剤の飛散防止装置

【課題】アスファルト乳剤が外部に飛散するのを十分に防止することができて周囲環境への配慮が十分な乳剤の飛散防止装置を提供する。
【解決手段】タックペーバ又は乳剤散布車に設けられたスプレーバー8を囲むように配設され、スプレーバー8から散布されるアスファルト乳剤の外部への飛散を防止するための飛散防止カバー10と、飛散防止カバー10内に飛散したアスファルト乳剤を空気と共に吸い上げる吸上げ手段12と、吸上げ手段12で空気と共に吸い上げられたアスファルト乳剤を空気から分離して捕集するフィルタ14とを具備させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳剤散布装置を設けたアスファルトフィニッシャ又は、乳剤散布車の乳剤の飛散防止装置に関するものであり、特に、周囲環境への配慮が十分な乳剤の飛散防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
乳剤の飛散防止装置に関連する従来技術として、例えば、次のような舗装機械における乳剤散布装置が知られている。この従来技術は、アスファルト乳剤を基盤上に散布するスプレー部の下方をカバー体でカバーして、前記スプレー部から散布されたアスファルト乳剤が周辺に飛散するのを防止するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−40615号公報(第3〜4頁、図1、図3)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の従来技術においては、アスファルト乳剤を散布するスプレー部の下方をカバー体でカバーしているのみである。このため、アスファルト舗装工事の進行に伴ってスプレー部からのアスファルト乳剤の散布量が増えると、アスファルト乳剤の飛散量も増し、臭気を伴うアスファルト乳剤がカバー体から外部に漏れ出て周囲環境に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0004】
そこで、アスファルト乳剤が外部に飛散するのを十分に防止することができて周囲環境への配慮が十分な乳剤の飛散防止装置を提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、タックペーバ又は乳剤散布車に設けられたスプレーバーを囲むように配設され、該スプレーバーから散布されるアスファルト乳剤の外部への飛散を防止するための飛散防止カバーと、該飛散防止カバーの内側に連通され、該飛散防止カバー内に飛散して空気中内に浮遊するアスファルト乳剤を空気と共に吸い上げる吸上げ手段と、前記飛散防止カバーの内側と前記吸上げ手段との連通路上に設けられ、前記吸上げ手段で空気と共に吸い上げられたアスファルト乳剤を当該空気から分離して捕集するフィルタとを有する乳剤の飛散防止装置を提供する。
【0006】
この構成によれば、タックペーバ又は乳剤散布車に設けられたスプレーバーによるアスファルト乳剤の散布時に、飛散防止カバーの内側に飛散して空気中内に浮遊するアスファルト乳剤が吸上げ手段で空気と共に吸い上げられ、そのアスファルト乳剤がフィルタで空気と分離して捕集される。この結果、外部へは無害な空気が吐き出される。
【0007】
請求項2記載の発明は、タックペーバ又は乳剤散布車に設けられたスプレーバーを囲むように配設され、該スプレーバーから散布されるアスファルト乳剤の外部への飛散を防止するための飛散防止カバーと、該飛散防止カバーの内側と散布用のアスファルト乳剤を貯溜する乳剤タンク内上部の空間部とを連通するダクトと、前記乳剤タンク内上部の空間部に連通され、前記飛散防止カバー内に飛散して空気中内に浮遊するアスファルト乳剤を前記ダクトを介して空気と共に吸い上げる吸上げ手段と、前記乳剤タンク内上部の空間部と前記吸上げ手段との間に設けられ、前記吸上げ手段で空気と共に吸い上げられたアスファルト乳剤を当該空気から分離するとともに該分離したアスファルト乳剤を前記乳剤タンク内に滴下させるフィルタとを有する乳剤の飛散防止装置を提供する。
【0008】
この構成によれば、タックペーバ又は乳剤散布車に設けられたスプレーバーによるアスファルト乳剤の散布時に、飛散防止カバーの内側に飛散して空気中内に浮遊するアスファルト乳剤が、吸上げ手段でダクト及び乳剤タンク内上部の空間部を介して空気と共に吸い上げられる。そして、吸い上げられたアスファルト乳剤はフィルタで空気から分離されて乳剤タンク内に滴下して戻り、外部へは無害な空気が吐き出される。
【0009】
請求項3記載の発明は、上記フィルタは、交換可能である乳剤の飛散防止装置を提供する。
【0010】
この構成によれば、フィルタへのアスファルト乳剤の捕集量が一定量に達する毎に、該フィルタを新たなフィルタと交換することで、フィルタによるアスファルト乳剤の捕集機能が常時正常に行われる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明は、タックペーバ又は乳剤散布車に設けられたスプレーバーを囲むように配設され、該スプレーバーから散布されるアスファルト乳剤の外部への飛散を防止するための飛散防止カバーと、該飛散防止カバーの内側に連通され、該飛散防止カバー内に飛散して空気中内に浮遊するアスファルト乳剤を空気と共に吸い上げる吸上げ手段と、前記飛散防止カバーの内側と前記吸上げ手段との連通路上に設けられ、前記吸上げ手段で空気と共に吸い上げられたアスファルト乳剤を当該空気から分離して捕集するフィルタとを具備させたので、飛散防止カバーの内側に飛散したアスファルト乳剤がフィルタで空気と分離して捕集され、外部へは無害な空気が吐き出されることで、臭気を伴うアスファルト乳剤が外部に飛散するのを十分に防止することができて周囲環境への配慮が十分な乳剤の飛散防止装置を提供することができるという利点がある。
【0012】
請求項2記載の発明は、タックペーバ又は乳剤散布車に設けられたスプレーバーを囲むように配設され、該スプレーバーから散布されるアスファルト乳剤の外部への飛散を防止するための飛散防止カバーと、該飛散防止カバーの内側と散布用のアスファルト乳剤を貯溜する乳剤タンク内上部の空間部とを連通するダクトと、前記乳剤タンク内上部の空間部に連通され、前記飛散防止カバー内に飛散して空気中内に浮遊するアスファルト乳剤を前記ダクトを介して空気と共に吸い上げる吸上げ手段と、前記乳剤タンク内上部の空間部と前記吸上げ手段との間に設けられ、前記吸上げ手段で空気と共に吸い上げられたアスファルト乳剤を当該空気から分離するとともに該分離したアスファルト乳剤を前記乳剤タンク内に滴下させるフィルタとを具備させたので、飛散防止カバーの内側に飛散したアスファルト乳剤がフィルタで空気から分離されて乳剤タンク内に戻り、外部へは無害な空気が吐き出されることで、上記請求項1記載の発明の効果に加えてさらに、空気から分離したアスファルト乳剤を再利用することができて、メンテナンス性が良好になるという利点がある。
【0013】
請求項3記載の発明は、上記フィルタは、交換可能としたので、アスファルト乳剤の捕集機能を常時正常に行わせることができて、臭気を伴うアスファルト乳剤が外部に飛散するのを常時十分に防止することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
アスファルト乳剤が外部に飛散するのを十分に防止することができて周囲環境への配慮が十分な乳剤の飛散防止装置を提供するという目的を、タックペーバ又は乳剤散布車に設けられたスプレーバーを囲むように配設され、該スプレーバーから散布されるアスファルト乳剤の外部への飛散を防止するための飛散防止カバーと、該飛散防止カバーの内側に連通され、該飛散防止カバー内に飛散して空気中内に浮遊するアスファルト乳剤を空気と共に吸い上げる吸上げ手段と、前記飛散防止カバーの内側と前記吸上げ手段との連通路上に交換可能に設けられ、前記吸上げ手段で空気と共に吸い上げられたアスファルト乳剤を当該空気から分離して捕集するフィルタとを具備させた。
【0015】
また、前記飛散防止カバーの内側に連通する部分以降は、以下のようにも構成し得る。即ち、飛散防止カバーの内側と散布用のアスファルト乳剤を貯溜する乳剤タンク内上部の空間部とを連通するダクトと、前記乳剤タンク内上部の空間部に連通され、前記飛散防止カバー内に飛散して空気中内に浮遊するアスファルト乳剤を前記ダクトを介して空気と共に吸い上げる吸上げ手段と、前記乳剤タンク内上部の空間部と前記吸上げ手段との間に設けられ、前記吸上げ手段で空気と共に吸い上げられたアスファルト乳剤を当該空気から分離するとともに該分離したアスファルト乳剤を前記乳剤タンク内に滴下させるフィルタとを具備させることにより実現した。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の実施例1を図面に従って詳述する。図1は、本実施例及び後述の実施例2の適用例としての乳剤散布装置を設けたアスファルトフィニッシャ(以下、タックペーバという)の側面図、図2は、本実施例の構成図である。まず、図1を用いてタックペーバから説明する。タックペーバ1は、車体の前部にアスファルト合材を投入するホッパ2が配置され、車体の後部には、前記ホッパ2に投入されてバーコンベヤ(図示せず)で後方に搬送されたアスファルト合材を路面上に拡げるスプレッディングスクリュー3及び該拡げられたアスファルト合材を均一な厚さに敷き均すスクリード4が配置されている。
【0017】
そして、前記スプレッディングスクリュー3の直ぐ前方に、前記アスファルト合材が敷き均される下層路面にアスファルト乳剤を散布するための乳剤散布機構5が配設されている。車体の前後方向ほぼ中央の上部には、散布用のアスファルト乳剤を貯溜する乳剤タンク6が搭載されている。該乳剤タンク6の前方には、エンジン7が搭載されている。
【0018】
次いで、図2を用いて、本実施例に係る乳剤の飛散防止装置の構成を説明する。図2において、前記乳剤散布機構5を構成するスプレーバー8にアスファルト乳剤の散布口となる複数個の散布ノズル9,…が適宜間隔をおいて設けられている。スプレーバー8の配設部位には、該スプレーバー8を囲むように、散布されるアスファルト乳剤が外部へ飛散するのを防止するための飛散防止カバー10が取り付けられている。該飛散防止カバー10は、ラバー等で作製されている。
【0019】
飛散防止カバー10の上部には、該飛散防止カバー10の内側に臨むように集塵部11が配設されている。該集塵部11は、飛散防止カバー10内に飛散したアスファルト乳剤を空気と共に収集する際の収集口となる。
【0020】
前記集塵部11には、前記飛散防止カバー10内に飛散したアスファルト乳剤を空気と共に吸い上げる吸上げ手段としてのブロワ12が、ダクト13を介して連通されている。該ダクト13、即ち、前記集塵部11と前記ブロワ12との連通路上には、該ブロワ12で空気と共に吸い上げられたアスファルト乳剤を当該空気から分離して捕集するためのフィルタ14が交換可能に配設されている。
【0021】
次に、上述のように構成された本実施例に係る乳剤の飛散防止装置の作用を説明する。スプレーバー8による各散布ノズル9,…部分からのアスファルト乳剤の散布時に飛散防止カバー10の内側に飛散したアスファルト乳剤が、ブロワ12で集塵部11及びダクト13を介して空気と共に吸い上げられる。
【0022】
この吸い上げ過程において、フィルタ14によりアスファルト乳剤が空気と分離して捕集される。この結果、前記ブロワ12から外部へは、アスファルト乳剤が除去された無害な空気が吐き出される。
【0023】
前記フィルタ14は、アスファルト乳剤の捕集量が一定量に達する毎に、新たなフィルタ14と交換される。これにより、フィルタ14によるアスファルト乳剤の捕集機能が常時正常に行われる。
【0024】
上述したように、本実施例に係る乳剤の飛散防止装置においては、ブロワ12から外部へは、アスファルト乳剤が除去された無害な空気が吐き出されることで、臭気を伴うアスファルト乳剤が外部に飛散するのを十分に防止することができて周囲環境への配慮が十分な乳剤の飛散防止装置を提供することができる。
【0025】
前記フィルタ14を交換可能としたことで、アスファルト乳剤の捕集機能を常時正常に行わせることができて、臭気を伴うアスファルト乳剤が外部に飛散するのを常時十分に防止することができる。
【実施例2】
【0026】
本発明の実施例2を、図3を用いて説明する。図3は、本実施例の構成図である。本実施例も前記図1に示すタックペーバ(舗装機械)に適用されている。なお、図3において前記図1及び図2における構成要素と同一ないし均等のものは、前記と同一符号を以って示し、重複した説明を省略する。
【0027】
本実施例では、飛散防止カバー10の内側が、乳剤タンク6内上部の空間部6aにダクト15を介して連通されている。乳剤タンク6の上方には、前記飛散防止カバー10内に飛散したアスファルト乳剤を前記ダクト15及び乳剤タンク6内上部の空間部6aを介して空気と共に吸い上げる吸上げ手段としてのブロワ16が、前記乳剤タンク6内上部の空間部6aに連通して配設されている。
【0028】
該乳剤タンク6内上部の空間部6aと前記ブロワ16との間には、該ブロワ16で空気と共に吸い上げられたアスファルト乳剤を当該空気から分離するとともに、その分離したアスファルト乳剤を前記乳剤タンク6内に滴下させるフィルタ17が配設されている。
【0029】
次に、上述の構成された本実施例に係る乳剤の飛散防止装置の作用を説明する。前記スプレーバー8による各散布ノズル9,…部分からのアスファルト乳剤の散布時に飛散防止カバー10の内側に飛散したアスファルト乳剤が、ブロワ16でダクト15及び乳剤タンク6内上部の空間部6aを介して空気と共に吸い上げられる。
【0030】
この吸い上げ過程において、フィルタ17によりアスファルト乳剤が空気から分離されて乳剤タンク6内に滴下して戻る。この結果、前記ブロワ16から外部へは、アスファルト乳剤が除去された無害な空気が吐き出される。
【0031】
上述したように、本実施例に係る乳剤の飛散防止装置においては、飛散防止カバー10の内側に飛散したアスファルト乳剤がフィルタ17で空気から分離されて乳剤タンク6内に戻り、ブロワ16から外部へは、アスファルト乳剤が除去された無害な空気が吐き出されることで、上記実施例1の効果と同様の効果に加えてさらに、空気から分離したアスファルト乳剤を再利用することができて、メンテナンス性が良好になる。
【0032】
また、フィルタ17を頻繁に新たなものと交換することなしに、該フィルタ17によるアスファルト乳剤の分離機能を常時正常に行わせることができる。
【0033】
なお、上記実施例1,2は、タックペーバ(舗装機械)以外の乳剤散布車等にも適用することができる。
【0034】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図は、本発明の実施例に係る乳剤の飛散防止装置を示すものである。
【図1】実施例1,2の適用例であるタックペーバの側面図。
【図2】実施例1の構成図。
【図3】実施例2の構成図。
【符号の説明】
【0036】
6 乳剤タンク
6a 空間部
8 スプレーバー
10 飛散防止カバー
12,16 ブロワ(吸上げ手段)
14,17 フィルタ
15 ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タックペーバ又は乳剤散布車に設けられたスプレーバーを囲むように配設され、該スプレーバーから散布されるアスファルト乳剤の外部への飛散を防止するための飛散防止カバーと、該飛散防止カバーの内側に連通され、該飛散防止カバー内に飛散して空気中内に浮遊するアスファルト乳剤を空気と共に吸い上げる吸上げ手段と、前記飛散防止カバーの内側と前記吸上げ手段との連通路上に設けられ、前記吸上げ手段で空気と共に吸い上げられたアスファルト乳剤を当該空気から分離して捕集するフィルタとを有することを特徴とする乳剤の飛散防止装置。
【請求項2】
タックペーバ又は乳剤散布車に設けられたスプレーバーを囲むように配設され、該スプレーバーから散布されるアスファルト乳剤の外部への飛散を防止するための飛散防止カバーと、該飛散防止カバーの内側と散布用のアスファルト乳剤を貯溜する乳剤タンク内上部の空間部とを連通するダクトと、前記乳剤タンク内上部の空間部に連通され、前記飛散防止カバー内に飛散して空気中内に浮遊するアスファルト乳剤を前記ダクトを介して空気と共に吸い上げる吸上げ手段と、前記乳剤タンク内上部の空間部と前記吸上げ手段との間に設けられ、前記吸上げ手段で空気と共に吸い上げられたアスファルト乳剤を当該空気から分離するとともに該分離したアスファルト乳剤を前記乳剤タンク内に滴下させるフィルタとを有することを特徴とする乳剤の飛散防止装置。
【請求項3】
上記フィルタは、交換可能であることを特徴とする請求項1または2記載の乳剤の飛散防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−113234(P2007−113234A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304399(P2005−304399)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(501132804)住友建機製造株式会社 (271)
【Fターム(参考)】