説明

乳化剤、エマルジョン組成物、カプセル化トナー組成物、画像形成方法、プロセスカートリッジおよび電子写真装置

【課題】 小粒径かつ均一なエマルジョン粒子を含有するエマルジョン組成物、小粒径かつ帯電安定性に優れたカプセル化トナー組成物を提供する。
【解決手段】 主鎖構造がポリアルケニルエーテル構造の親水性ブロックセグメントと、疎水性ブロックセグメントとを有するブロックポリマーを含有する乳化剤の存在下で、重合性不飽和モノマーを乳化重合して得られた重合体を含有するエマルジョン組成物。前記エマルジョン組成物と顔料を含有し、前記エマルジョン組成物によって顔料が被覆されているカプセル化トナー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化重合用乳化剤、エマルジョン組成物、マイクロカプセル化トナー組成物、画像形成方法、プロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の液体中に、これと溶け合わない別の液体を細粒として分散するにあたり、安定したマルジョンを得るために、系内に、所定の乳化剤を添加することが従来から行われている。そのような乳化剤は、通常、分子内に親水性基と疎水性基の両方を含んだ構造をしている、所謂、表面活性な物質として認識され、洗剤、染色助剤、分散染料用分散剤、脱インキ剤、撥水柔軟材、農薬、沈降凝集剤、感光乳剤等の工業的な用途の他、医薬用の乳化製剤等に広く用いられてきている。
【0003】
それら各種の用途に用いられる乳化剤としては、一般に、界面活性剤の中から適宜に選択され、例えば、アルカリ石鹸、有機アミン石鹸、高級アルコールの硫酸エステル非イオン活性剤、タンパク質、植物ゴム、アルギン酸塩、カルボキシメチルセルロース、脂肪酸モノグリセリド類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ショ糖の脂肪酸エステル類等の低分子界面活性剤を挙げられる。
【0004】
そのような乳化剤の工業的用途の一つとして、乳化重合における使用を挙げることが出来る。具体的には、水に不溶性の不飽和モノマーの重合に際して、上記乳化剤等を用いて、不飽和モノマー等を水中に均一に分散せしめて、水溶性の重合触媒を用いて重合せしめるものであって、重合後においても、生成重合体は水に分散したエマルジョン組成物で得られ、通常はそのようなエマルジョン組成物のまま、あるいは水溶液による洗浄が行われる事で使用されている。
【0005】
しかしながら、これら低分子量の乳化剤自体、生成重合体に対して不純物となることに加え、得られる重合体の分子量が、乳化剤の分子量に比べて遥かに大きく、それら両者間に親和性あるいは相溶性が殆ど存在しない。従って、上記低分子量の乳化剤により形成されるエマルジョン組成物を各種用途に使用した場合、乳化剤の存在によって物性的な悪影響を受ける場合がある。例えば、高画質化を目的として乳化重合トナー(特許文献1および2、非特許文献1参照)を、電子写真用現像剤として用いるケースが多くなってきているが、乳化剤の残存により帯電性の均一化が十分でない場合や、エマルジョン粒子の安定性等の問題によって均一な小粒径が得られない場合があり、トナーの帯電安定性や小粒径化および均一粒径化に対して更なる改善が求められている。
【特許文献1】特開平7−146585公報
【特許文献1】特開平7−261453公報
【非特許文献1】“富士ゼロックステクニカルレポート”No.14、2002年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、主鎖構造がポリアルケニルエーテル構造であるブロックポリマーで、少なくとも親水性ブロックセグメントと疎水性ブロックセグメントの両方を有する乳化剤を用いて、乳化重合を行う事で、小粒径かつ均一なエマルジョン粒子を含有するエマルジョン組成物を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、該エマルジョン組成物を用いて、小粒径かつ帯電安定性に優れたカプセル化トナー組成物を提供するものである。
また、本発明は、該カプセル化トナー組成物を使用することで高い画像濃度と高精細な画質を安定して得ることができる画像形成方法および電子写真装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記背景技術および課題について鋭意検討した結果、本発明者らは下記に示す本発明を完成するに至った。
本発明の第一は、主鎖構造がポリアルケニルエーテル構造の親水性ブロックセグメントと、疎水性ブロックセグメントとを有するブロックポリマーを含有することを特徴とする乳化剤である。
【0009】
本発明の第二は、前記乳化剤の存在下で、重合性不飽和モノマーを乳化重合して得られた重合体を含有することを特徴とするエマルジョン組成物である。
本発明の第三は、前記エマルジョン組成物と顔料を含有し、前記エマルジョン組成物によって顔料が被覆されていることを特徴とするカプセル化トナー組成物である。
【0010】
また、前記エマルジョン組成物がトナー母体粒子表面に吸着しているカプセル化トナー前駆体を得る工程、前記カプセル化トナー前駆体を前記エマルジョン組成物に含まれる乳化剤のガラス転移温度以上に加熱する工程を有することを特徴とするカプセル化トナー組成物の製造方法である。
【0011】
本発明の第四は、外部より帯電部材に電圧を印加して潜像担持体に帯電を行う帯電工程と、帯電された潜像担持体に電荷像を形成する工程と、該電荷像を電荷像現像トナーにより現像してトナー像を電潜像担持体上に形成する現像工程と、潜像担持体上のトナー像を被記録材へ転写する転写工程と、被記録材上のトナー像を加熱定着する定着工程とを少なくとも有する画像形成方法において、少なくとも請求項4記載のカプセル化トナー組成物を使用することを特徴とする画像形成方法である。
【0012】
本発明の第五は、電子写真感光体、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段、帯電した電子写真感光体に対し露光を行い潜像を形成する露光手段、潜像の形成された電子写真感光体を請求項4記載のカプセル化トナー組成物で現像する現像手段、及び転写工程後の電子写真感光体上に残余する請求項4記載のトナーを回収するクリーニング手段からなる群より選ばれた少なくとも1つの手段と共に一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0013】
本発明の第六は、電子写真感光体、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段、帯電した電子写真感光体に対し露光を行い潜像を形成する露光手段、潜像の形成された電子写真感光体に請求項4記載のカプセル化トナー組成物で現像する現像手段、及び電子写真感光体上のトナー像を転写材上に転写する転写手段を備えることを特徴とする電子写真装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、主鎖構造がポリアルケニルエーテル構造であるブロックポリマーで、少なくとも親水性ブロックセグメントと疎水性ブロックセグメントの両方を有する乳化剤を用いて、乳化重合を行う事で、小粒径かつ均一なエマルジョン粒子を含有するエマルジョン組成物を提供することができる。
【0015】
また、本発明は、該エマルジョン組成物を用いて、小粒径かつ帯電安定性に優れたカプセル化トナー組成物を提供することができる。
また、本発明は、該カプセル化トナー組成物を使用することで高い画像濃度と高精細な画質を安定して得ることができる画像形成方法および電子写真装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の第一は、主鎖構造がポリアルケニルエーテル構造であるブロックポリマーで、少なくとも親水性ブロックセグメントと疎水性ブロックセグメントの両方を有することを特徴とする乳化重合用乳化剤で、前記ブロックポリマーを形成するブロックセグメント数が3以上であることが好ましい。
【0017】
なお、本発明における疎水性ブロックセグメントとは水分子と調和しないブロックセグメントを意味し、親水性ブロックセグメントとは水分子との調和するブロックセグメントを意味する。疎水性セグメントの側鎖としてはフェニル基、メチルフェニル基、ビフェニル基等の芳香族環を含有する事が好ましい。親水性セグメントとしては、アルキレンオキシド鎖、カルボン酸基、水酸基、カルボン酸塩等が挙げられる。
【0018】
具体的な疎水性ブロックを有するブロックセグメントの繰り返し単位の具体的な例としては、以下の構造が挙げられるが、本発明はこれらの構造に限定されるものではない。
【0019】
【化1】

【0020】
(Rは水素原子またはアルキル基を示す。)
具体的な親水性ブロックを有するブロックセグメントの繰り返し単位の具体的な例としては、以下の構造が挙げられるが、本発明はこれらの構造に限定されるものではない。
【0021】
【化2】

【0022】
(Rは水素原子またはアルキル基を示す。)
なお、本発明におけるブロックポリマーとは、2つ以上の異なる構造を有すブロックセグメントによって構成される、ポリマー化合物を意味する。
【0023】
また、本発明に用いられるブロックポリマーの最も好ましい構造は、ブロックセグメント数が3以上で、前記疎水性セグメントの側鎖として芳香族炭化水素を有し、前記親水性セグメントの側鎖として、アルキレンオキシド鎖、カルボン酸またはカルボン酸塩を有する構造である。なお、置換基としてカルボン酸塩を有する場合、対カチオンを有することになる。本発明に用いられる対カチオンは、カルボン酸アニオンと電荷対を形成可能であれば問題なく、具体的にはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、ルビジウムイオンが挙げられる。
【0024】
次に本発明に好ましく製造されるポリアルケニルエーテル構造を含むブロックポリマーのリビング重合方法について説明する。ポリビニルエーテル構造を含むポリマーの合成法は多数報告されているが(例えば特開平11−080221号公報)、青島らによる方法(Polymer Bulletin、15、417〜423(1986)、特開平11−322942号公報、特開平11−322866号公報)が代表的である。青島らの方法により高分子化合物の合成を行うことにより、ホモポリマーや2成分以上のモノマーからなる共重合体、さらにはブロックポリマー、グラフトポリマー等の様々なポリマーを、長さ(分子量)を正確に揃えて合成することができる。
【0025】
本発明の第二は、前記乳化剤存在下でモノマー類を乳化重合することで、得られることを特徴とするエマルジョン組成物である。
本発明に用いられるモノマー類は、アクリル酸、メタクリル酸エステル類、スチレン、脂肪酸のビニルエステル類、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸2−カルボキシエチル(βCEA)等のエチレン性不飽和カルボン酸類、既知の架橋剤などがあるが、本発明はこれらに限るものではない。
【0026】
一般的な乳化方法としては、水溶液中、モノマー類を乳化剤の存在下で、強攪拌を行うことが望ましい。本発明におけるエマルジョン組成物の製造方法としては、有機溶媒中、前記乳化剤の存在下でモノマー類の強攪拌を行った後、好ましくは有機溶媒10質量部に対して好ましくは1質量部以上の水または水溶液を加え、強攪拌を行う製造方法、あるいは前記乳化剤のない状態でモノマー類を水または水溶液中で分散した後、少量の有機溶媒に溶解した前記乳化剤を加え、更に強攪拌を行う製造方法が好ましい。なお、本発明における強攪拌とは、コロイドミルあるいはホモジナイザー等を用いて周速度が15m/秒以上、望ましくは60m/秒以上で攪拌する事を意味する。ただし、十分長く攪拌を続けるならば、攪拌速度は15m/秒以下であっても良い。
【0027】
本発明に用いられる有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、キシレン等が挙げられるが本発明はこれらに限定されるものではない。なお、水は有機溶剤に溶解している場合や分散または乳化している場合であっても良いものとする。また、前記乳化に使用された有機溶剤は、減圧蒸留、透析、限外濾過等によって除去してもよい。
【0028】
乳化は一般に、約5〜約40℃の温度で行うが、より高い温度でもエマルションは生成する。
更に、生成するポリマーの分子量を調整するため、モノマーエマルションに連鎖移動剤を加えることが望ましい。連鎖移動剤としては具体的には、ドデカンチオール、ブタンチオール、3−メルカプトプロピオン酸イソオクチル(IOMP)、2−メチル−5−tert−ブチルチオフェノール、四塩化炭素、四臭化炭素等が挙げられるが、本発明に用いられる連鎖移動剤はこれらに限るものではない。連鎖移動剤は効果的な量、例えばモノマーエマルション中のモノマーの約0.1〜約10質量%を用いる。このモノマーエマルションを、エマルジョンポリマーの生成に用いる。
【0029】
本発明のエマルジョン製造工程で用いられる開始剤の具体例としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過亜硫酸アンモニウム、過亜硫酸カリウム、過亜硫酸ナトリウム、重硫酸アンモニウム、重硫酸ナトリウム、1,1’−アゾビス(1−メチルブチロニトリル−3−スルホン酸ナトリウム)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)などが挙げられるが、これらに限るものではない。望ましい開始剤は、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の、過硫酸開始剤である。
【0030】
開始剤は通常、水溶液として加える。エマルジョンポリマーの生成に用いる開始剤の量は通常、重合すべきモノマー約0.1〜約10質量%である。エマルジョンポリマーの調製に用いる開始剤の全量の5〜100質量%、望ましくは30〜100質量%を、種重合段階で加える。
【0031】
種ポリマーの生成では、通常約35〜約125℃の温度で乳化重合を行う。
系の安定性を保つため、開始剤は一般に、ごくゆっくりとエマルションに加える。例えば、望ましくは5分以上、更に望ましくは10分以上かけて開始剤を加える。次に、種ポリマーにモノマーを追加して重合を完了する。この乳化重合は通常約35〜約125℃の温度で行う。追加のモノマーは一般に、効果的な時間、例えば0.5〜10時間、望ましくは2〜6時間かけてこの組成物に加える。追加モノマーはモノマーエマルションの形状でも良い。つまり、このモノマーは、種ポリマーの生成に一部を使用した、モノマーエマルションの残りである。更に、種重合の後に、追加の開始剤を加えても良い。この反応段階で開始剤を追加する場合、開始剤は、種ポリマーの生成に用いたのと同じ種類でも、あるいはそうでなくても良い。しかしいずれも、開始剤は遊離基開始剤であることが望ましい。
【0032】
この工程で有用な開始剤は、前述の開始剤類の他、過酸化水素、tert−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、p−メタンヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルペルオキシド、クミルペルオキシド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビスイソブチルアミド二水和物、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩などが挙げられるが、これらに限るものではない。
【0033】
本発明の製法で生成されるエマルジョンポリマーの具体例としては、スチレン−ブタジエン共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合体、メタクリル酸エチル−ブタジエン共重合体、メタクリル酸プロピル−ブタジエン共重合体、メタクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体、アクリル酸メチル−ブタジエン共重合体、アクリル酸エチル−ブタジエン共重合体、アクリル酸プロピル−ブタジエン共重合体、アクリル酸ブチル−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、メチルスチレン−イソプレン共重合体、メタクリル酸メチル−イソプレン共重合体、メタクリル酸エチル−イソプレン共重合体、メタクリル酸プロピル−イソプレン共重合体、メタクリル酸ブチル−イソプレン共重合体、アクリル酸メチル−イソプレン共重合体、アクリル酸エチル−イソプレン共重合体、アクリル酸プロピル−イソプレン共重合体、アクリル酸ブチル−イソプレン共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル−アクリル酸共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリル酸共重合体、スチレン−イソプレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸ブチル−アクリル酸ブチル共重合体、メタクリル酸ブチル−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル−アクリロニトリル−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸ブチル−アクリル酸共重合体等の既知のポリマー類が挙げられるが、これらに限るものではない。
【0034】
前記エマルジョン組成物には、少なくともエマルジョンポリマー、乳化剤、水が含有される。エマルジョンポリマーの含有量は、1〜99質量%、好ましくは10〜90質量%であり、乳化剤の含有量は、1〜99質量%、好ましくは10〜90質量%である。
【0035】
本発明の第三は、前記エマルジョン組成物によって顔料が被覆されていることを特徴とする、カプセル化トナー組成物であり、前記エマルジョン組成物が重合体被覆層としてトナー母体粒子表面に吸着しているカプセル化トナー前駆体を、前記乳化剤のガラス転移温度以上に加熱する事で得られるカプセル化トナーを含有することを特徴とするカプセル化トナー組成物の製造方法である。
【0036】
本発明におけるカプセル化トナー組成物の製造方法としては、着色料、望ましくは着色料分散液、更に望ましくはカーボンブラック、フタロシアニン、キナクリドン、又はローダミン(RHODAMINE)B(登録商標)などの顔料を含む組成物を、前記エマルジョン組成物と、必要に応じて凝集剤及び/又は電荷添加剤と混合する工程と、得られた混合物を前記乳化剤のガラス転移点より低い温度、望ましくは前記乳化剤のTgより約25〜約1℃低い温度で加熱してトナー大の凝集体を生成する工程、エマルジョンポリマーのTg又はそれより高い温度で加熱して合体又は融合させ、トナー粒子を得る工程と、ろ過などによりトナー生成物を取り出し、次に必要に応じてトナー粒子を洗浄し、更にオーブン、流動床乾燥器、凍結乾燥器、スプレー乾燥器などで乾燥する工程を含有することが好ましいが、本発明はこの方法に限定されるものではない。
【0037】
本発明の製法に適したエマルジョン組成物の平均粒径・分散度指数は、20℃、0.01質量%のポリマー濃度で条件下、動的光散乱(DLS)を用いて測定した値を用いているが、他の測定方法、具体的には、レーザー回折法、レーザードップラー法、遠心沈降法、field−flow fractionation法、電気的検知体法等、いずれの測定方法であっても、DLS法で測定された値へと補正されていれば良い。
【0038】
前記エマルジョン組成物中のエマルジョンポリマーの平均粒径は10〜500nm、好ましくは20〜300nmが望ましい。また、分散度指数は0.05〜0.30、好ましくは0.08〜0.20が望ましい。
【0039】
本発明に使用される前記着色料は、顔料、染料、顔料と染料との混合物などが挙げられる。本発明の顔料に色材が用いられたトナー組成物は、トナー組成物として好ましく用いられる。以下にトナー組成物に用いられる有機顔料および無機顔料の具体例を示す。
【0040】
また、インクに用いられる顔料は、好ましくは黒色顔料と、シアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料を用いる。なお、上記以外の色顔料、無色、白色または淡色の顔料、赤外波長あるいは紫外波長領域に吸収スペクトルを有する顔料、金属光沢顔料等を使用してもよい。また、本発明において、市販の顔料を用いても良いし、あるいは新規に合成した顔料を用いてもよい。
【0041】
以下に、黒、シアン、マゼンタ、イエローにおいて、市販されている顔料を例示する。
黒色の顔料としては、Raven1060(商品名、コロンビアン・カーボン社製)、MOGUL−L(商品名、キャボット社製)、Color Black FW1(商品名、デグッサ社製)、MA100(商品名、三菱化学社製)等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0042】
シアン色の顔料としては、C.I.Pigment Blue−15:3、C.I.Pigment Blue−15:4、C.I.Pigment Blue−16、等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
マゼンタ色の顔料としては、C.I.Pigment Red−122、C.I.Pigment Red−123、C.I.Pigment Red−146、等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
イエローの顔料としては、C.I.Pigment Yellow−74、C.I.Pigment Yellow−128、C.I.Pigment Yellow−129、等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
上記したような染料及び顔料は、単独で使用してもよく、所望とするトナーの色調を得るために任意に混合して使用してもよい。
上記した着色剤のトナー中の含有量は、所望とする着色効果などに応じて広く変更することが可能である。通常、最も良好なトナー特性を得るため、すなわち、印字の着色力、トナーの形状安定性、トナーの飛散などを考慮した場合、これらの着色剤は、通常、上記エマルジョン組成物100質量部に対して、0.1〜60質量部好ましくは0.5〜20質量部程度の割合で使用される。
【0046】
本発明記載のカプセル化トナーの作成、具体的には色材の分散工程の際にカチオン性界面活性剤を用いても良い。本発明のトナー及び製法に選択されるカチオン性界面活性剤の例には、例えば、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロライド、カプリルアミン(1−オクチルアミン)、カプリルアミン(1−デシルアミン)、ラウリルアミン(1−ドデシルアミン)、ミリスチルアミン(1−テトラデシルアミン)、パルミチルアミン(セチルアミン又は1−ヘキサデシルアミン)、ステアリルアミン(1−オクタデシルアミン)、オレイルアミン(1−オクタデセニルアミン)、アラキジルアミン(1−エイコシルアミン)、ベヘニルアミン(1−ドコシルアミン)、ジラウリルアミン(ジ−n−ドデシルアミン)、ラウリルジメチルアミン(n−ドデシルジメチルアミン)、ジオクタデシルアミン、ジテトラデシルアミン、トリオクタデシルアミン、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロライド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロマイド、ベンズアルコニウムクロライド、C12、C15及びC17トリメチルアンモニウムブロマイド類、ラウリルピリジニウムクロライド、ラウリルピリジニウムブロマイド、ラウリルピリジニウムバイサルフェート、ラルリルピリジニウム−5−クロロ−2−メルカプトベンゾチアゾール、ラウリルピコリニウム−p−トルエンスルホネート、テトラデシルピリジニウムブロマイド、セチルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムブロマイド、4−アルキルメルカプトピリジン、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(ビニルメチルピリジニウムブロマイド)、ポリ(ビニルピリジン)−ドデシルブロマイド、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、Alkaril Chemical Companyから得られるMIRAPOL及びALKAQUAT(商品名)、Kaoから得られるSANIZOL(ベンズアルコニウムクロライド)等並びにこれらの混合物がある。
【0047】
この界面活性剤は種々の有効量、例えば、水1.0質量部に対して約0.01から約5質量部で利用される。好ましくは、凝集に使用されるカチオン性界面活性剤対エマルジョンの製造に使用されるアニオン性界面活性剤のモル比は約0.5から約4、好ましくは約0.5から約2の範囲である。
【0048】
本発明におけるカプセル化トナー中には、上記したバインダー樹脂及び着色剤成分の他に、本発明の効果に悪影響を与えない範囲で、以下の化合物をワックス類として含有させてもよい。例えば、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、低分子量ポリエチレンまたは低分子量ポリプロピレンの如き脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、及び、塩素化パラフィン、パラフィンワックス等である。これらの中でも好ましく用いられるワックス類としては、具体的には、低分子量ポリプロピレン及びこの副生成物、低分子量ポリエステル及びエステル系ワックス、脂肪族の誘導体が挙げられる。これらのワックスから、種々の方法によりワックスを分子量により分別したワックスも本発明に好ましく用いられる。また、分別後に酸価やブロック共重合、グラフト変性を行ってもよい。なお本発明に含有されるワックス類はこれら化合物に限定されるものではない。
【0049】
本発明のカプセル化トナーには、荷電制御剤として、例えば、アゾ染料金属錯体、芳香族ジカルボン酸の金属錯体、サリチル酸誘導体等の負電荷制御剤、あるいは正荷電制御剤として、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、各種4級アンモニウム塩ジブチル錫オキサイド等の有機スズ化合物等を含有しても良い。なお本発明に含有される荷電制御剤はこれら化合物に限定されるものではない。
【0050】
本発明のカプセル化トナー組成物中のカプセル化トナーの平均粒径は10μm以下、好ましくは5μm以下が望ましい。
本発明のカプセル化トナー組成物は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRTプリンター、LEDプリンター、液晶プリンター、レーザー製版及びファクシミリ等の電子写真応用分野にも広く利用することができる。
【0051】
本発明に用いられる画像形成方法としては、少なくとも、外部より帯電部材に電圧を印加して、静電潜像担持体に帯電を行なう帯電工程と、帯電された静電潜像担持体に静電荷像を形成する工程と、該静電荷像をトナーにより現像してトナー像を静電潜像担持体上に形成する現像工程と、静電潜像担持体上のトナー像を被記録材へ転写する転写工程と、被記録材上のトナー像を加熱定着する加熱定着工程とを有する画像形成方法、或いは、転写工程が、静電潜像担持体上のトナー像を中間の転写体に転写する第1の転写工程と、該中間の転写体上のトナー像を被記録材に転写する第2の転写工程とからなる画像形成方法に適用することが特に好ましい。
【0052】
次に、本発明のプロセスカートリッジ並びに電子写真装置について説明する。図1に本発明の電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成を示す。図においては、1はドラム状の本発明の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。感光体1は回転過程において、一次帯電手段3によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光等の露光手段(不図示)からの露光光4を受ける。こうして感光体1の周面に静電潜像が順次形成されていく。形成された静電潜像は、次いで現像手段5によりトナー現像され、現像されたトナー現像像は、不図示の給紙部から感光体1と転写手段6との間に感光体1の回転と同期取りされて給送された転写材7に、転写手段6により順次転写されていく。像転写を受けた転写材7は感光体面から分離されて像定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより複写物(コピー)として装置外へプリントアウトされる。像転写後の感光体1の表面は、クリーニング手段9によって転写残りトナーの除去を受けて清浄面化され、更に前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理がされた後、繰り返し画像形成に使用される。なお、図のように一次帯電手段3が帯電ローラーを用いた接触帯電手段であるので、前露光は必ずしも必要ではない。
【0053】
本発明においては、上述の感光体1、一次帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9等の構成要素のうち、複数のものをプロセスカートリッジとして一体に支持して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンター等の電子写真装置本体に対して着脱可能に構成してもよい。たとえば一次帯電手段3、現像手段5及びクリーニング手段9の少なくとも1つを感光体1と共に一体に支持してカートリッジ化し、装置本体のレール等の案内手段12を用いて装置本体に着脱可能なプロセスカートリッジ11とすることができる。
【0054】
また、露光光4は、電子写真装置が複写機やプリンターである場合には、原稿 からの反射光や透過光を用いる、あるいはセンサーで原稿を読み取り、信号化し、この信号に従って行われるレーザービームの走査、LEDアレイの駆動及び液晶シャッターアレイの駆動等により照射される光である。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。まず、ブロックポリマーの一例として、合成例を示す。なお、以下に示す「%」および「部」は、それぞれ「質量%」および「質量部」を意味する。
【0056】
合成例1
トリブロック高分子化合物からなる乳化剤の合成例
<イソブチルビニルエーテルとCH2 =CHOCH2 CH2 OPhPh:(IBVE−r−BPhOVE:Aブロック)と、2−メトキシエチルビニルエーテル(MOVE:Bブロック)と、4−(2−ビニルオキシ)安息香酸(BBVE:Cブロック)からなるトリブロック高分子化合物・ポリ[(IBVE−r−BPhOVE)−b−(MOVE)−b―(EBVE)]の合成>(ここで、rはランダムポリマー、bはブロック高分子化合物、である事をそれぞれ示す記号である)
【0057】
三方活栓を取り付けたガラス容器内を窒素置換した後、窒素ガス気流下250℃に加熱し吸着水を除去した。系を室温に戻した後、IBVE6mmol(ミリモル)、BPhOVEを6mmol、酢酸エチル16mmol、1−イソブトキシエチルアセテート0.1mmol、及びトルエン11mlを加え、攪拌しながら反応系を冷却した。系内温度が0℃に達したところでエチルアルミニウムセスキクロリド(ジエチルアルミニウムクロリドとエチルアルミニウムジクロリドとの等モル混合物)を0.2mmol加え重合を開始した。分子量を時分割に分子ふるいカラムクロマトグラフィー(GPC)を用いてモニタリングし、Aブロックの重合の完了を確認した。
【0058】
次いで、Bブロック成分としてMOVE12mmolを添加、GPCを用いてモニタリングし、Bブロックの重合の完了を確認した。
Bブロックの重合終了後、EBVE3.6mmolのトルエン溶液を添加、24時間後、0.3質量%のアンモニア/メタノール水溶液を加える事で重合反応の停止を行い、ブロックポリマー前駆体のトルエン溶液を得た。トルエン溶液を0.6mol/lの希塩酸と純水で洗浄を行った後、エバポレーターでトルエンを除去、メタノールを用いて再沈殿を行う事で精製を行い、ブロックポリマー前駆体を得た。次いで、ブロックポリマー前駆体をジメチルホルムアミドに溶解させた後、18.0mmolの水酸化ナトリウムを加え、室温で72時間の攪拌を行い、Cブロックのエチル安息香酸の脱保護を行った。反応終了後、エバポレーターでジメチルホルムアミドを除去し得られた固形物をクロロホルムに溶解した後、クロロホルム溶液を0.6mol/lの希塩酸と水により洗浄を行った。洗浄後、クロロホルムをエバポレーターで除去することで、目的とするトリブロック高分子化合物を得た。化合物の同定は、 1H−NMRおよびGPCを用いて行った。Mn=23000、Mw/Mn=1.44であった。重合比はA:B:C=100:100:30であり、Aブロック内の2種のモノマーの重合比は1:1であった。
【0059】
実施例1
エマルジョン組成物(1)の作製
スチレン 74部
アクリル酸ブチル 26部
アクリル酸 1部
ドデシルメルカプタン 1.2部
(以上和光純薬社製)
乳化剤 50部
を溶解して油層とし、イオン交換水120部に水酸化ナトリウムを溶解してpHを12に調整した70℃の水酸化ナトリウム水溶液に添加、分散して10分間ゆっくりと混合しながら、過硫酸アンモニウム(和光純薬社製)1.0部を溶解したイオン交換水50部を投入し、窒素置換を行なった後、フラスコ内を攪拌しながら内容物が70℃になるまでオイルバスで加熱し、6時間そのまま乳化重合を継続した。その後、この反応液を室温まで冷却し、平均粒径が0.49μm、分散度指数が0.097のエマルジョン組成物(1)を得た。なお平均粒径の測定は、DLS―7000(大塚電子社製)を用いた。次いで、このエマルジョン組成物(1)の一部を80℃のオーブン上に放置して水分を除去し、残留物である樹脂の特性を測定したところ、Tgが51℃であった。
【0060】
実施例2
エマルジョン組成物(2)の作製
スチレン 75部
アクリル酸ブチル 25部
アクリル酸 1部
ドデシルメルカプタン 2.2部
(以上和光純薬社製)
デカンジオールジアクリレート 0.3部
(新中村化学社製)
乳化剤 50部
を溶解して油層とし、イオン交換水120部に水酸化ナトリウムを溶解してpHを12に調整した70℃の水酸化ナトリウム水溶液に添加、分散して10分間ゆっくりと混合しながら、過硫酸アンモニウム(和光純薬社製)1.0部を溶解したイオン交換水50部を投入し、窒素置換を行なった後、フラスコ内を攪拌しながら内容物が70℃になるまでオイルバスで加熱し、6時間そのまま乳化重合を継続した。その後、この反応液を室温まで冷却し、平均粒径が0.52μm、分散度指数が0.098のエマルジョン組成物(2)を得た。次いで、このエマルジョン組成物(2)の一部を80℃のオーブン上に放置して水分を除去し、残留物である樹脂の特性を測定したところ、Mwが30000、Tgが49℃であった。
【0061】
実施例3
エマルジョン組成物(3)の作製
スチレン 75部
アクリル酸ブチル 25部
アクリル酸 1部
ドデシルメルカプタン 1.0部
ジビニルベンゼン 0.2部
(以上和光純薬社製)
乳化剤 50部
を溶解して油層とし、イオン交換水120部に水酸化ナトリウムを溶解し、pHを12に調整した70℃の水酸化ナトリウム水溶液に、フラスコに収容した前記油層を添加、分散して10分間ゆっくりと混合しながら、過硫酸アンモニウム(和光純薬社製)1.0部を溶解したイオン交換水50部を投入し、窒素置換を行なった後、フラスコ内を攪拌しながら内容物が70℃になるまでオイルバスで加熱し、6時間そのまま乳化重合を継続した。その後、この反応液を室温まで冷却し、平均粒径が0.55μm、分散度指数が0.096のエマルジョン組成物(3)を得た。次いで、このエマルジョン組成物(3)の一部を80℃のオーブン上に放置して水分を除去し、残留物である樹脂の特性を測定したところ、Mwが63000、Tgが53℃であった。
【0062】
実施例4
エマルジョン組成物(4)の作製
スチレン 77部
アクリル酸ブチル 23部
アクリル酸 1部
ドデシルメルカプタン 1.5部
アジピン酸ジビニル 0.3部
過酸化ベンゾイル 0.1部
(以上和光純薬社製)
乳化剤 50部
を溶解して油層とし、イオン交換水120部に水酸化ナトリウムを溶解してpHを12に調整した70℃の水酸化ナトリウム水溶液に添加、分散して10分間ゆっくりと混合しながら、過硫酸アンモニウム(和光純薬社製)1.0部を溶解したイオン交換水50部を投入し、窒素置換を行なった後、フラスコ内を攪拌しながら内容物が70℃になるまでオイルバスで加熱し、6時間そのまま乳化重合を継続した。その後この反応液を室温まで冷却し、平均粒径が0.55μm、分散度指数が0.101のエマルジョン組成物(4)を得た。次いで、このエマルジョン組成物(4)の一部を80℃のオーブン上に放置して水分を除去し、残留物である樹脂の特性を測定したところ、Mwが42000、Tgが52℃であった。
【0063】
実施例5
エマルジョン組成物(5)の作製
スチレン 72部
パラスチレンスルホン酸ナトリウム 3部
アクリル酸ブチル 25部
アクリル酸 1部
ドデシルメルカプタン 1.2部
ピロール 0.2部
(以上和光純薬社製)
乳化剤 50部
を溶解して油層とし、イオン交換水120部に水酸化ナトリウムを溶解してpHを12に調整した70℃の水酸化ナトリウム水溶液に添加、分散して10分間ゆっくりと混合しながら、過硫酸アンモニウム(和光純薬社製)1.0部を溶解したイオン交換水50部を投入し、窒素置換を行なった後、フラスコ内を攪拌しながら内容物が70℃になるまでオイルバスで加熱し、6時間そのまま乳化重合を継続した。その後、この反応液を室温まで冷却し、平均粒径が0.49μm、分散度指数が0.100のエマルジョン組成物(5)を得た。次いで、このエマルジョン組成物(5)の一部を80℃のオーブン上に放置して水分を除去し、残留物である樹脂の特性を測定したところ、Mwが46000、Tgが55℃であった。
【0064】
比較例1
エマルジョン組成物(6)の作製
合成例1で重合された乳化剤の代わりにアビエチン酸1.3部を加えた以外は、実施例1と同様な方法で、平均粒径が8.92μm、分散度指数が0.117、Tgが52℃のエマルジョン組成物を得た。
【0065】
比較例2
エマルジョン組成物(7)の作製
合成例1で重合された乳化剤の代わりにカリウム塩を含む乳化剤混合物(荒川化学社製:ロンジスK−25)10部を加えた以外は、実施例1と同様な方法で、平均粒径が8.73μm、分散度指数が0.124のTgが52℃のエマルジョン組成物を得た。
【0066】
比較例3
エマルジョン組成物(8)の作製
合成例1で重合された乳化剤の代わりに非イオン性界面活性剤(日本油脂社製、ノニオンP−213)1部を加えた以外は、実施例1と同様な方法で平均粒径が8.44μm、分散度指数が0.125のTgが52℃のエマルジョン組成物を得た。
【0067】
実施例6
トナー母体粒子の作製
カーボンブラック 25部
(キャボット社製、リーガル330)
アニオン性界面活性剤 12部
(日本油脂社製、ダイヤポンS)
pH12の水酸化ナトリウム水溶液 150部
以上の成分を混合して溶解した後、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックス)を用いて分散し、着色剤(カーボンブラック)を分散させてなる着色剤分散液(5)を調製した。
【0068】
離型剤粒子分散液の調製
ポリエチレンワックス 50部
(東洋ペトロライト社製、ポリワックス725)
アニオン性界面活性剤 25部
(SLS、ニッコーケミカルズ社製)
pH12の水酸化ナトリウム水溶液 250部
以上の成分を混合して溶解した後、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックス)を用いて分散し、さらに、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、離型剤粒子(ポリエチレンワックス)を分散させてなる離型剤粒子分散液を調製した。
【0069】
カプセル化トナー組成物(1)の作製
エマルジョン組成物(1) 145部
トナー母体粒子 42部
離型剤粒子分散液 36部
イオン交換水 300部
以上の成分を丸型ステンレス製フラスコ中に収容させ、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散させた後、容器内のpHを11.5に調整し加熱用オイルバス中で攪拌しながら45℃まで加熱した。45℃で5分間保持した後、0.1N塩酸(和光純薬社製)を加えて容器内のpHを7.5に調整した後、エマルジョン組成物(1)を緩やかに30部追加し、さらに、pHを7.4に調整し48℃で20分間加熱攪拌を継続した。次に、水酸化ナトリウムを0.5質量%に希釈した水溶液を上記の付着粒子分散液に穏やかに添加し、pHを10.6に調整し添加した後、攪拌を継続しながら93℃まで加熱し、6時間保持した。その後、容器内のpHを7.1に調整し、反応生成物をろ過し、500部のイオン交換水で4回洗浄した後、真空乾燥機を用いて乾燥し平均粒径が3.6μmのカプセル化トナー粒子を得た。
【0070】
また2成分現像剤を作成し、画像評価を行いトナーの帯電性についての結果を得た。キャリアとしては、シリコーン樹脂をキャリア芯材に対し0.5質量部コートしたフェライトキャリア(平均粒径39μm)を使用し、現像剤中のトナー濃度が6%となるよう混合して現像剤を作製し、電子写真用複写機CLC−700(キヤノン製)を使用して、温度30℃/湿度90%RHの環境下において、画像面積比率20%のオリジナル原稿を用い、10000枚の耐刷試験を行った。この結果、初期から耐刷試験終了までカプセル化トナーの帯電量はほぼ一定の値を示し、高い画像濃度と高精細な画質が安定して得られた。
【0071】
実施例7
カプセル化トナー組成物(2)の作製
エマルジョン組成物(1)の代わりにエマルジョン組成物(2)を用いた以外は、実施例6と同様の方法で平均粒径が3.8μmのカプセル化トナー組成物を作成した。また2成分現像剤を実施例6と同様の方法で作成し、実施例6と同様な画像評価を行いカプセル化トナーの帯電性についての結果を得た。この結果、初期から耐刷試験終了までカプセル化トナーの帯電量はほぼ一定の値を示し、高い画像濃度と高精細な画質が安定して得られた。
【0072】
実施例8
カプセル化トナー組成物(3)の作製
エマルジョン組成物(1)の代わりにエマルジョン組成物(3)を用いた以外は、実施例6と同様の方法で平均粒径が3.4μmのカプセル化トナー組成物を作成した。また2成分現像剤を実施例6と同様の方法で作成し、実施例6と同様な画像評価を行いカプセル化トナーの帯電性についての結果を得た。この結果、初期から耐刷試験終了までカプセル化トナーの帯電量はほぼ一定の値を示し、高い画像濃度と高精細な画質が安定して得られた。
【0073】
実施例9
カプセル化トナー組成物(4)の作製
エマルジョン組成物(1)の代わりにエマルジョン組成物(4)を用いた以外は、実施例6と同様の方法で平均粒径が3.6μmのカプセル化トナー組成物を作成した。また2成分現像剤を実施例6と同様の方法で作成し、実施例6と同様な画像評価を行いカプセル化トナーの帯電性についての結果を得た。この結果、初期から耐刷試験終了までカプセル化トナーの帯電量はほぼ一定の値を示し、高い画像濃度と高精細な画質が安定して得られた。
【0074】
実施例10
カプセル化トナー組成物(5)の作製
エマルジョン組成物(1)の代わりにエマルジョン組成物(5)を用いた以外は、実施例6と同様の方法で平均粒径が3.8μmのカプセル化トナー組成物を作成した。また2成分現像剤を実施例6と同様の方法で作成し、実施例6と同様な画像評価を行いカプセル化トナーの帯電性についての結果を得た。この結果、初期から耐刷試験終了までカプセル化トナーの帯電量はほぼ一定の値を示し、高い画像濃度と高精細な画質が安定して得られた。
【0075】
比較例4
カプセル化トナー組成物(6)の作製
エマルジョン組成物(1)の代わりにエマルジョン組成物(6)を用いた以外は、実施例6と同様の方法で平均粒径が5.2μmのカプセル化トナー組成物を作成した。また2成分現像剤を実施例6と同様の方法で作成し、実施例6と同様な画像評価を行いカプセル化トナーの帯電性についての結果を得た。この結果、初期から耐刷試験終了までカプセル化トナーの帯電量は、不安定で、耐刷試験後半で帯電量の低下が見られた。このため、高い画像濃度と高精細な画質が安定して得られなかった。
【0076】
比較例5
カプセル化トナー組成物(7)の作製
エマルジョン組成物(1)の代わりにエマルジョン組成物(7)を用いた以外は、実施例6と同様の方法で平均粒径が5.4μmのカプセル化トナー組成物を作成した。また2成分現像剤を実施例6と同様の方法で作成し、実施例6と同様な画像評価を行いカプセル化トナーの帯電性についての結果を得た。この結果、初期から耐刷試験終了までカプセル化トナーの帯電量は、不安定で、耐刷試験後半に行くに従って帯電量の低下が見られた。このため、高い画像濃度と高精細な画質が安定して得られなかった。
【0077】
比較例6
カプセル化トナー組成物(8)の作製
エマルジョン組成物(1)の代わりにエマルジョン組成物(8)を用いた以外は、実施例6と同様の方法で平均粒径が5.3μmのカプセル化トナー組成物を作成した。また2成分現像剤を実施例6と同様の方法で作成し、実施例6と同様な画像評価を行いカプセル化トナーの帯電性についての結果を得た。この結果、初期から耐刷試験終了までカプセル化トナーの帯電量は、不安定で、耐刷試験後半で帯電量の低下が見られた。このため、高い画像濃度と高精細な画質が安定して得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の乳化剤を用いて乳化重合を行う事で、小粒径かつ均一なエマルジョン粒子を含有するエマルジョン組成物を得ることができ、該エマルジョン組成物から小粒径かつ帯電安定性に優れたカプセル化トナー組成物が得られ、該カプセル化トナー組成物は、高い画像濃度と高精細な画質を安定して得ることができる画像形成方法および電子写真装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の画像記録装置の概略の機構を示す図である。
【符号の説明】
【0080】
1 電子写真感光体
2 軸
3 一次帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 像定着手段
9 クリーニング手段
10 前露光光
11 プロセスカートリッジ
12 案内手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主鎖構造がポリアルケニルエーテル構造の親水性ブロックセグメントと、疎水性ブロックセグメントとを有するブロックポリマーを含有することを特徴とする乳化剤。
【請求項2】
前記ブロックポリマーのブロックセグメント数が3以上であることを特徴とする請求項1記載の乳化剤。
【請求項3】
請求項1または2記載の乳化剤の存在下で、重合性不飽和モノマーを乳化重合して得られた重合体を含有することを特徴とするエマルジョン組成物。
【請求項4】
請求項3記載のエマルジョン組成物と顔料を含有し、前記エマルジョン組成物によって顔料が被覆されていることを特徴とするカプセル化トナー組成物。
【請求項5】
請求項3記載のエマルジョン組成物がトナー母体粒子表面に吸着しているカプセル化トナー前駆体を得る工程、前記カプセル化トナー前駆体を前記エマルジョン組成物に含まれる乳化剤のガラス転移温度以上に加熱する工程を有することを特徴とするカプセル化トナー組成物の製造方法。
【請求項6】
外部より帯電部材に電圧を印加して潜像担持体に帯電を行う帯電工程と、帯電された潜像担持体に電荷像を形成する工程と、該電荷像を電荷像現像トナーにより現像してトナー像を電潜像担持体上に形成する現像工程と、潜像担持体上のトナー像を被記録材へ転写する転写工程と、被記録材上のトナー像を加熱定着する定着工程とを少なくとも有する画像形成方法において、少なくとも請求項4記載のカプセル化トナー組成物を使用することを特徴とする画像形成方法。
【請求項7】
電子写真感光体、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段、帯電した電子写真感光体に対し露光を行い潜像を形成する露光手段、潜像の形成された電子写真感光体を請求項4記載のカプセル化トナー組成物で現像する現像手段、及び転写工程後の電子写真感光体上に残余する請求項4記載のトナーを回収するクリーニング手段からなる群より選ばれた少なくとも1つの手段と共に一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項8】
電子写真感光体、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段、帯電した電子写真感光体に対し露光を行い潜像を形成する露光手段、潜像の形成された電子写真感光体に請求項4記載のカプセル化トナー組成物で現像する現像手段、及び電子写真感光体上のトナー像を転写材上に転写する転写手段を備えることを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−55781(P2006−55781A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241592(P2004−241592)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】