説明

乳化型毛髪化粧料

【課題】 アミノ含量の高いアミノ変性シリコーンを配合しつつ、ダメージ度合いの大きな毛髪であっても、やわらかさを良好に付与でき、かつ経時的な黄変を抑制し得る乳化型毛髪化粧料を提供する。
【解決手段】 少なくとも、(a)炭素数が12〜22のアルコール、(b)カチオン性界面活性剤、(c)ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、(d)ポリオキシエチレンアルキルエーテル、および(e)アミノ含量が0.5〜3.0%であるアミノ変性シリコーンが配合されており、(b)カチオン性界面活性剤の配合量が、(c)ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルの配合量と(d)ポリオキシエチレンアルキルエーテルの配合量との和よりも少なく、pHが3〜5であることを特徴とする乳化型毛髪化粧料により、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアリンス、パーマネントウェーブ処理の前処理剤または後処理剤、ストレートパーマ処理の前処理剤または後処理剤、染毛用前処理剤または後処理剤などに好適な乳化型の毛髪化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、毛髪に対し、熱を用いたパーマ処理や縮毛矯正処理、染毛処理などの化学処理を施すことが盛んであるが、こうした処理を繰り返すことによって毛髪にはダメージが蓄積される一方で、毛髪をより美しく保ちたいとする消費者の要望が高まっている。
【0003】
こうした事情の下、前記のような処理による毛髪のダメージを抑制したり、ダメージを受けた毛髪を補修したりすることを目的として、毛髪に対する吸着力が大きく、コンディショニング作用が良好であるカチオン性界面活性剤やアミノ変性シリコーンを配合した毛髪保護剤が種々開発されている(例えば、特許文献1、2)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−332216号公報
【特許文献2】特開2003−342135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2に開示の毛髪保護剤は、配合されたカチオン性界面活性剤やアミノ変性シリコーンの機能を有効に引き出して、毛髪を良好に処理し得るものであるが、その一方で、下記の点において改善の余地を残している。
【0006】
前記のような毛髪保護剤をダメージの大きな毛髪に塗布した場合、特にアミノ含量の高いアミノ変性シリコーンは、毛髪に過剰に吸着する傾向にあることから、却って毛髪が硬く感じられるようになったり、毛髪にベタつきが生じる虞がある。
【0007】
また、アミノ含量の高いアミノ変性シリコーンを配合した化粧料では、経時的に黄変してしまう傾向にある。黄変した化粧料自体は、毒性がある訳でも、また、格別の作用の低下が生じる訳でもないが、その外観が経時的に変色するという理由で商品価値が著しく低下することがある。
【0008】
アミノ変性シリコーンを配合した化粧料が経時的に黄変する現象については、その発生メカニズム自体が解明されていないために効果的な防止策が見出されておらず、通常は、アミノ変性シリコーンの配合量を少なくしたり、着色料を配合するといった対策がとられている程度である。
【0009】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、アミノ含量の高いアミノ変性シリコーンを配合しつつ、ダメージ度合いの大きな毛髪であっても、やわらかさを良好に付与でき、かつ経時的な黄変を抑制し得る乳化型毛髪化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成し得た本発明の乳化型毛髪化粧料は、少なくとも、(a)炭素数が12〜22のアルコール、(b)カチオン性界面活性剤、(c)ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、(d)ポリオキシエチレンアルキルエーテル、および(e)アミノ含量が0.5〜3.0%であるアミノ変性シリコーンが配合されており、(b)カチオン性界面活性剤の配合量が、(c)ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルの配合量と(d)ポリオキシエチレンアルキルエーテルの配合量との和よりも少なく、pHが3〜5であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アミノ含量の高いアミノ変性シリコーンを配合しつつ、ダメージ度合いの大きな毛髪であっても、やわらかさを良好に付与でき、また、経時的な黄変を抑制し得る乳化型毛髪化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の乳化型毛髪化粧料に係る(a)成分の、炭素数が12〜22である1級アルコールには、飽和アルコールおよび不飽和アルコールが含まれるが、乳化型毛髪化粧料の粘度調節や毛髪への塗布がより容易となることから、飽和アルコールが好ましい。具体的には、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコールなどの直鎖1級アルコール;オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、ヘキシルデカノールなどの、分岐鎖を含む1級アルコール;などの飽和アルコールなどが挙げられる。乳化型毛髪化粧料においては、前記例示のアルコールの1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよいが、黄変の抑制と毛髪へのやわらかさ付与とが、より両立させやすくなることから、直鎖1級アルコールと分岐鎖を含む1級アルコールとを併用することが、より好ましい。
【0013】
乳化型毛髪化粧料における(a)成分の配合量としては、処理後の毛髪に求められる感触や、乳化型毛髪化粧料の粘度、(a)成分以外の成分との組み合わせなどに応じて適宜調節すればよいが、例えば、2〜20質量%であることが好ましい。
【0014】
また、直鎖1級アルコールと分岐鎖を含む1級アルコールとを併用する場合、乳化型毛髪化粧料における配合量は、直鎖1級アルコールを1質量%以上15質量%以下とし、分岐鎖を含む1級アルコールを1質量%以上5質量%以下とすることが好ましい。なお、直鎖1級アルコールと分岐鎖を含む1級アルコールとを併用する場合、乳化型毛髪化粧料の乳化状態を経時的により安定化し、また、乳化型毛髪化粧料による毛髪へのやわらかさ付与効果をより良好に確保する観点からは、分岐鎖を含む1級アルコールの量を調整することがより好ましく、その乳化型毛髪化粧料における配合量を、2質量%以上4質量%以下とすることが特に好ましい。
【0015】
乳化型毛髪化粧料に係る(b)成分のカチオン性界面活性剤としては、例えば、塩化アルキルトリメチルアンモニウム(塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウムなど)、臭化アルキルトリメチルアンモニウム(臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウムなど)などのモノアルキル型4級アンモニウム塩;塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウムなどのジアルキル型4級アンモニウム塩;塩化ベンザルコニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウムなどのベンザルコニウム型4級アンモニウムなどが挙げられ、これらのうちの1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。前記例示のカチオン性界面活性剤の中でも、毛髪にやわらかさを付与する作用が特に良好である点で、前記のモノアルキル型4級アンモニウム塩がより好ましい。
【0016】
乳化型毛髪化粧料における(b)成分の配合量としては、特に毛髪のダメージを受けている箇所への吸着をより良好とし、また、乳化型毛髪化粧料の乳化安定性をより高める観点から、0.5質量%以上であることが好ましく、1.4質量%以上であることがより好ましい。ただし、乳化型毛髪化粧料において(b)成分が多すぎると、乳化型毛髪化粧料の粘度が高くなりすぎて、毛髪に塗布しにくくなる虞があり、また、処理後の毛髪の感触が軽くなりすぎる虞があることから、5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましい。
【0017】
乳化型毛髪化粧料に係る(c)成分のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルとしては、例えば、モノラウリン酸POE(6)ソルビット、テトラステアリン酸POE(60)ソルビット、テトラオレイン酸POE(6)ソルビット、テトラオレイン酸POE(30)ソルビット、テトラオレイン酸POE(40)ソルビット、テトラオレイン酸POE(60)ソルビットなどが挙げられる[前記の各化合物中、「POE」は「ポリオキシエチレン」の略であり、その後の括弧内の数値は、エチレンオキサイドの付加モル数を意味している]。ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルは、前記例示のもののうち1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、乳化型毛髪化粧料による前記の効果(毛髪にやわらかさを付与し、また、黄変を抑制する効果)をより良好に確保する観点からは、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルにおけるエチレンオキサイドの付加モル数は、10モル以上であることが好ましく、また、60モル以下であることが好ましい。
【0018】
乳化型毛髪化粧料における(c)成分の配合量としては、他に使用される非イオン性界面活性剤の量や種類などに応じて適宜調節すればよいが、処理後の毛髪のやわらかさをより向上させ得るようになることから、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。ただし、乳化型毛髪化粧料において(c)成分が多すぎると、乳化型毛髪化粧料が硬くなる傾向にあり、これにより毛髪へ塗布しにくくなることがあるため、その配合量は、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。
【0019】
乳化型毛髪化粧料に係る(d)成分のポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、アルキル部分の炭素数が12〜22のものが好ましく、具体的には、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテルなどが挙げられ、これらのうちの1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。なお、ポリオキシエチレンアルキルエーテルにおけるエチレンオキサイドの付加モル数は、2〜50モルであることが好ましく、なかでも、エチレンオキサイドの付加モル数が10モル以下の場合には、乳化型毛髪化粧料による前記の効果をより良好に確保できることから、特に好ましい。
【0020】
乳化型毛髪化粧料における(d)成分の配合量としては、他に使用される非イオン性界面活性剤の量や種類などに応じて適宜調節すればよいが、処理後の毛髪のやわらかさをより向上させ得るようになることから、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。ただし、乳化型毛髪化粧料において(d)成分が多すぎると、乳化型毛髪化粧料が硬くなる傾向にあり、これにより毛髪へ塗布しにくくなることがあるため、その配合量は、10質量%以下であることが好ましく、7質量%以下であることがより好ましい。
【0021】
乳化型毛髪化粧料に係る(e)成分のアミノ変性シリコーンは、アミノ含量が、0.5%以上3.0%以下のものである。
【0022】
アミノ変性シリコーンのアミノ含量は、シリコーンメーカー各社からアミノ変性シリコーンの物性値の一つとして示されており、具体的には、アミノ変性シリコーン中のN(窒素)含有量(質量基準)で、例えば、0.1%以上のアミノ含量のアミノ変性シリコーンが知られている。また、一般に、アミノ含量の高いアミノ変性シリコーンは、アミノ基を多く含んでおり、例えば毛髪への吸着がより良好であることが知られている。本発明の乳化型毛髪化粧料では、前記の通り、アミノ含量が0.5%以上と高く、毛髪への吸着性に優れたアミノ変性シリコーンを使用することで、処理後の毛髪にやわらかさを付与する作用を高めている。アミノ変性シリコーンのアミノ含量は、0.7%以上であることが好ましい。
【0023】
なお、アミノ変性シリコーンのアミノ含量が高すぎると、毛髪に硬さやベタつきを生じさせやすくなる傾向にあることから、本発明の乳化型毛髪化粧料で使用するアミノ変性シリコーンのアミノ含量は、3.0%以下であり、2.2%以下であることが好ましい。
【0024】
アミノ変性シリコーンとは、アミノ基を含有するシリコーンをいい、例えば、化粧品の表示名称で、アモジメチコン、(アミノエチルアミノプロピルメチコン/ジメチコン)コポリマー、アミノプロピルジメチコンなどが知られており、本発明の乳化型毛髪化粧料では、これらのうち、前記のアミノ含量を満たすものを、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
なお、アモジメチコンの市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製の「KF8004」、「KF−867S」、「KF−880」;東レ・ダウコーニング株式会社製の「BY−22−079」;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「XF42−C0345」;などが挙げられる。また、(アミノエチルアミノプロピルメチコン/ジメチコン)コポリマーの市販品としては、例えば、東レ・ダウコーニング株式会社製の「FZ4671」、「FZ4672」;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「XF42−B1989」;などが挙げられる。
【0026】
乳化型毛髪化粧料における(e)成分の配合量としては、例えば、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上であって、好ましくは6質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。
【0027】
本発明の乳化型毛髪化粧料においては、(b)成分であるカチオン性界面活性剤の配合量を、(c)成分であるポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルの配合量と(d)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルの配合量との和よりも少なくする。前記の通り、本発明では、(e)成分のアミノ変性シリコーンとして、ダメージ度合いの大きな毛髪に特に過剰に付着しやすく、また、配合された化粧料に経時的な黄変を特に生じさせやすいアミノ含量の高いものを使用する。しかし、乳化型毛髪化粧料を前記のような構成とすることで、その理由は定かではないが、ダメージ度合いの大きな毛髪であっても、(e)成分であるアミノ変性シリコーンの付着量が適度になるように調整して、やわらかさを良好に付与し得るようにでき、また、乳化型毛髪化粧料の経時的な黄変を抑制できる。
【0028】
なお、乳化型毛髪化粧料における(c)成分であるポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルの配合量と(d)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルの配合量との和は、(b)成分であるカチオン性界面活性剤の配合量の、1.2倍以上であることがより好ましく、また、3倍以下であることがより好ましい。
【0029】
更に、乳化型毛髪化粧料による前記の効果をより良好に確保する観点からは、(c)成分であるポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルの配合量を、(d)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルの配合量よりも少なくすることが好ましい。
【0030】
また、部分ごとにダメージ度合いの異なる毛髪に対しても、より均一なやわらかさを付与しやすくなる点で、乳化型毛髪化粧料における(c)成分であるポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルの配合量と(d)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルの配合量との和と、(e)成分であるアミノ変性シリコーンの配合量との比を、1:1〜3:1にすることが好ましい。
【0031】
本発明の乳化型毛髪化粧料は、pHが3〜5である。乳化型毛髪化粧料のpHをこのように調整することで、処理後の毛髪のやわらかさを、より良好にすることができる。ただし、乳化型毛髪化粧料のpHが低い場合には、アミノ変性シリコーンによる経時的な黄変が生じやすいが、本発明の乳化型毛髪化粧料では、前記の構成の採用によって経時的な黄変を抑制できる。
【0032】
乳化型毛髪化粧料のpHは、必要に応じてpH調整剤を配合して調整することができる。pH調整剤については特に制限はなく、通常の化粧料に使用されている各種pH調整剤が適用可能である。なお、本発明の乳化型毛髪化粧料は、前記の通りpHが低いため、pH調整剤としては、公知の有機酸または無機酸を好ましく用いることができ、処理後の毛髪の感触がより良好となる点で、有機酸がより好ましく、クエン酸、グリコール酸、酒石酸、乳酸などのα−ヒドロキシ酸が特に好ましい。また、無機酸としては、リン酸などが好ましい。
【0033】
また、本発明の乳化型毛髪化粧料には、(f)グリセリン脂肪酸エステルを配合することが好ましく、この場合には、乳化型毛髪化粧料の乳化状態の安定性を高めることができる。(f)成分であるグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ミリスチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、イソステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリルなどが挙げられ、これらのうちの1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
乳化型毛髪化粧料における(f)成分の配合量としては、他に使用される非イオン性界面活性剤の量や種類などに応じて適宜調節すればよいが、例えば、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であって、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下である。
【0035】
本発明の乳化型毛髪化粧料は、乳化物であり、主たる分散媒として水を使用する。分散媒には、水のみを使用してもよく、必要に応じて、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール(炭素数が6以下のアルコール)などの有機溶媒を、分散媒全量中5質量%以下程度の量で水と併用してもよい。なお、乳化型毛髪化粧料の構成成分の一部は、分散媒に溶解していてもよい。乳化型毛髪化粧料における分散媒の配合量は、例えば、50〜80質量%とすることが好ましい。
【0036】
本発明の乳化型毛髪化粧料は、クリーム状、乳液状、ゲル状などの形態とすることができるが、操作性がより良好となる点で、クリーム状とすることが好ましい。
【0037】
本発明の乳化型毛髪化粧料は、本発明の効果を損なわない範囲で、通常の化粧料に配合されている各種成分を配合することができる。このような成分としては、例えば、動物油や植物油などの油脂、ロウ、炭化水素、脂肪酸、多価アルコール、エーテル、エステル、非イオン性界面活性剤[(c)成分、(d)成分および(f)成分を除く]、水溶性高分子、(e)成分以外のシリコーン、植物海藻エキス、アミノ酸およびその誘導体、タンパク質およびその誘導体、ビタミンおよびその誘導体、紫外線吸収剤、防腐剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、香料などが挙げられ、このような成分の中から好ましいものを、適宜選択して配合することができる。
【0038】
なお、(e)成分以外のシリコーンとしては、例えば、アミノ含量が0.5%未満のアミノ変性シリコーン、ジメチルシロキサン、ジメチコノール、ポリエーテル変性シリコーン、フェニル変性シリコーンなどが挙げられる。
【0039】
本発明の乳化型毛髪化粧料は、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアリンス、パーマネントウェーブ処理の前処理剤または後処理剤、ストレートパーマ処理の前処理剤または後処理剤、染毛用前処理剤または後処理剤などとして好適に用いることができる。
【0040】
すなわち、本発明の乳化型毛髪化粧料により毛髪を処理する際には、例えば、通常のシャンプーなどを用いて洗浄した後の毛髪に、本発明の乳化型毛髪化粧料を適量塗布し、好ましくは毛髪を揉み込むようにして、乳化型毛髪化粧料を毛髪全体に馴染ませた後、水ですすぎ、乾燥すればよい。また、パーマネントウェーブ処理の前処理剤、ストレートパーマ処理の前処理剤、または染毛用前処理剤の前処理剤として、本発明の乳化型毛髪化粧料を使用する場合には、例えば、本発明の乳化型毛髪化粧料によって前記と同様の方法で毛髪を処理した後、または前記と同様の方法で乳化型毛髪化粧料を毛髪全体に馴染ませた後(水ですすぐことなく)、常法に従い、パーマネントウェーブ処理、ストレートパーマ処理または染毛処理を毛髪に施せばよい。更に、パーマネントウェーブ処理の後処理剤、ストレートパーマ処理の後処理剤、または染毛用前処理剤の後処理剤として、本発明の乳化型毛髪化粧料を使用する場合には、常法に従い、パーマネントウェーブ処理、ストレートパーマ処理または染毛処理を施した後の毛髪を、本発明の乳化型毛髪化粧料によって前記と同様の方法で処理すればよい。
【0041】
また、本発明の乳化型毛髪化粧料は、他の毛髪化粧料と組み合わせた多段階式の毛髪処理剤の一部として利用することも可能である。
【実施例】
【0042】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではない。なお、後記の表1および表2では乳化型毛髪化粧料全体で100%となるように、それぞれ各成分の配合量を%で示すが、その%はいずれも質量%であり、また、これらの表中ではその%の表示を省略し、配合量を表す数値のみで表示する。
【0043】
実施例1〜9および比較例1〜4
実施例1〜9および比較例1〜4の乳化型毛髪化粧料を、表1および表2に示す組成で調製した。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
なお、表1および表2において、水の欄の「計100とする」とは、乳化型毛髪化粧料を構成する水以外の各成分の合計量に、水の量を加えて100%となるようにしたことを意味している。また、「セトステアリルアルコール」は、セチルアルコールとステアリルアルコールとの混合物である。更に、「POE」はポリオキシエチレンの意味であり、その後の括弧内の数値は、エチレンオキサイドの付加モル数を意味している。
【0047】
また、実施例および比較例で使用した原材料は、以下の通りである。
(1)アミノ変性シリコーン(A):モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製「XF42−C0345」(アミノ含量:0.9%)。
(2)アミノ変性シリコーン(B):モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社「XF42−C0330」(アミノ含量:0.3%)。
(3)テトラオレイン酸POE(60)ソルビット:日光ケミカル社製「NIKKOL GO−460V」。
(4)POE(2)ステアリルエーテル:日光ケミカル社製「NIKKOL BS−2」。
(5)ステアリン酸グリセリル:日光ケミカル社製「NIKKOL MGS−BSE」。
【0048】
実施例1〜9および比較例1〜4の乳化型毛髪化粧料について、経時安定性(黄変の有無)および毛髪の処理効果を評価した。これらの結果を表3に示す。
【0049】
<経時安定性>
アミノ変性シリコーンを含む組成物は、高温環境下に置かれると、より黄変しやすい。そこで、実施例1〜9および比較例1〜4の乳化型毛髪化粧料を、低温環境下および高温環境下でそれぞれ同期間放置し、低温環境下で放置した乳化型毛髪化粧料の状態を基準として、高温環境下で放置した乳化型毛髪化粧料の黄変の様子を評価した。
【0050】
具体的には、実施例1〜9および比較例1〜4の乳化型毛髪化粧料を、30mlのスクリュー管に入れたものを2本ずつ用意し、一方を−2℃に保った恒温機に入れ、他方を50℃に保った恒温機に入れて、それぞれ2週間放置し、−2℃で放置したものを基準として、50℃で放置した乳化型毛髪化粧料の黄変の様子を目視により評価した。評価基準は以下の通りであり、◎および○の評価のものが合格である。
◎:変化していない。○:黄変が弱い。△:黄変が強い。×:黄変が極めて強い。
【0051】
<毛髪の処理効果>
まず、下記方法により評価用毛束を作製した。長さ20cmの毛髪:2.5gを纏めて1つの毛束とし、これを複数用意した。なお、毛束に用いた毛髪は同一人のものであるが、その化学処理の履歴を問わずに集めたため、毛束中の毛髪それぞれの部分ごとや、毛束中の毛髪ごとに、化学処理によるダメージ度合いが異なっていると考えられる。
【0052】
毛髪は、ヘアカラーおよびパーマを施した場合に最も化学的損傷を受ける。そこで、前記の各毛束には、更にブリーチ処理およびパーマネントウェーブ処理を施した。
【0053】
まず、35質量%濃度の過酸化水素水を6.0質量%を含み、精製水によって全量を100質量%にしたものと、25質量%のアンモニア水を8.5質量%含み、精製水によって全量を100質量%にしたものとを等量混合して、ブリーチ処理のためのブリーチ剤を調製した。
【0054】
また、パーマネントウェーブ用剤の第1剤として、DL−システイン塩酸塩5.5質量%と、アセチルシステイン0.5質量%と、50質量%濃度のチオグリコール酸アンモニウム液1.8質量%と、80質量%濃度のモノエタノールアミン液4.7質量%とを含み、アンモニア水(25質量%)でpHを9.3に調整し、精製水で全量を100質量%にしたものを用意した。更に、パーマネントウェーブ用剤の第2剤として、臭素酸ナトリウム6.5質量%と、クエン酸0.1質量%と、リン酸0.05質量%と、リン酸水素一水素ナトリウム0.5質量%とを含み、精製水で全量を100質量%にしたものを用意した。
【0055】
始めに、前記の各毛束を前記のブリーチ剤100ml中に浸漬し、35℃恒温振とう器中で30分振とうすることで、各毛束をブリーチ処理し、精製水で洗浄した。次に、洗浄後の各毛束を直径10mmのロッドに巻き付け、これら全体を前記パーマネントウェーブ用第1剤100ml中に浸漬し、35℃恒温振とう器中で30分振とうし、精製水で洗浄した後自然乾燥し、更に前記パーマネントウェーブ用第2剤100ml中に浸漬し、35℃恒温振とう器中で30分振とうし、精製水で洗浄した後自然乾燥して、パーマネントウェーブ処理を行うことによって各毛束に化学処理による損傷を受けさせた。
【0056】
前記の化学処理を行った各毛束を、27質量%濃度のラウレス硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、水ですすぎ流して乾燥させて、評価用毛束とした。
【0057】
次に、実施例1〜9および比較例1〜4の乳化型毛髪化粧料を、それぞれ異なる評価用毛束に0.5g塗布し、揉み込むようにして毛束全体に乳化型毛髪化粧料を馴染ませた後、水ですすぎ乾燥させて、処理を行った。そして、処理後の各毛束のやわらかさと均一感について、下記の官能評価を行った。
【0058】
官能評価は、専門のパネラー5名によって、乳化型毛髪化粧料による処理後の毛束に係る毛髪のやわらかさ、および均一感について、下記基準に従って点数付けを行う方法で実施した。なお、「均一感」に関しては、処理後の毛髪におけるやわらかな感触が毛束全体で均一であるか否かについて、評価した。
5点:非常によい。4点:よい。3点:普通。2点:悪い。1点:非常に悪い。
【0059】
そして、各パネラーの付けた点数を合計して、下記基準に従って総合的に評価した。◎および○の評価のものが合格である。
【0060】
<総合評価基準>
評価◎:点数の合計が20点以上。
評価○:点数の合計が15点以上20点未満。
評価△:点数の合計が10点以上15点未満。
評価×:点数の合計が10点未満。
【0061】
【表3】

【0062】
表3から明らかなように、実施例1〜9の乳化型毛髪化粧料は、経時安定性が良好であり、黄変が抑制されている。また、実施例1〜9の乳化型毛髪化粧料は、処理後の毛髪のやわらかさ、および均一感が良好であり、ダメージ度合いの大きな毛髪であっても、やわらかさを良好に付与できるものであることが分かる。
【0063】
これに対し、比較例1〜4の乳化型毛髪化粧料は、処理後の毛髪のやわらかさ、および均一感が劣っており、ダメージ度合いの大きな毛髪に良好なやわらかさを付与する作用が、実施例1〜9の乳化型毛髪化粧料に比べて低い。また、(b)成分であるカチオン性界面活性剤の配合量が、(c)成分であるポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルの配合量と(d)成分であるポリオキシエチレンアルキルエーテルの配合量との和より多い比較例2の乳化型毛髪化粧料は、黄変が生じており、経時安定性も劣っている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
(a)炭素数が12〜22のアルコール、
(b)カチオン性界面活性剤、
(c)ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、
(d)ポリオキシエチレンアルキルエーテル、および
(e)アミノ含量が0.5〜3.0%であるアミノ変性シリコーン
が配合されており、
(b)カチオン性界面活性剤の配合量が、(c)ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルの配合量と(d)ポリオキシエチレンアルキルエーテルの配合量との和よりも少なく、
pHが3〜5であることを特徴とする乳化型毛髪化粧料。
【請求項2】
(a)炭素数が12〜22のアルコールとして、直鎖1級アルコールと、分岐鎖を含む1級アルコールとが配合されている請求項1に記載の乳化型毛髪化粧料。
【請求項3】
更に、(f)グリセリン脂肪酸エステルが配合されている請求項1または2に記載の乳化型毛髪化粧料。

【公開番号】特開2009−292733(P2009−292733A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136165(P2008−136165)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(592255176)株式会社ミルボン (138)
【Fターム(参考)】