説明

乳房カップ部の間の距離が調節可能なブラジャー

【課題】構造が比較的に簡単な、乳房カップ部の間の距離が調節可能な前開きタイプのブラジャーを提供する。
【解決手段】一対の乳房カップ部2の間で前開きタイプのブラジャーである。一対の乳房カップ部2のそれぞれの末端から対向して設けられた2本のテープ41,51と、それぞれのテープに設けられた雌雄部材4,5からなるアジャスターとからなる。雌部材4は、一方のテープ41上に固定されている。雄部材5は、他方のテープ51を構成するガイドレールと、このガイドレール上をスライド可能及び特定位置で固定可能なスライダー6からなる。スライダー6は雌部材4と係合可能なホック61を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳房カップ部の間の距離が調節可能な前開きタイプのブラジャーに関する。
【背景技術】
【0002】
バスト体型及び左右のバスト間距離は個人差が大きく、また同じ人でも授乳の前後の乳房の大きさには変化がある。しかし、バスト間距離が固定された汎用のブラジャーではこの問題に十分対処することはできない。
【0003】
そこで、左右のバスト間距離を調節する発明考案が幾つか提案されている。例えば、特許第2992479号、特許第3226813号、特開2001−295106号である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術は概して、部品数が多く、製造コストがかさむことが欠点である。本発明は、構造が比較的に簡単な、乳房カップ部の間の距離が調節可能な前開きタイプのブラジャーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明請求項1は、一対の乳房カップ部の間で前開きタイプのブラジャーであって、前記一対の乳房カップ部のそれぞれの末端から対向して設けられた2本のテープと、それぞれのテープに設けられた雌雄部材からなるアジャスターとからなり、前記雌部材は、一方のテープ上に固定され、前記雄部材は、他方のテープを構成するガイドレールと、このガイドレール上をスライド可能及び特定位置で固定可能なスライダーからなり、前記スライダーは前記雌部材と係合可能なホックを有するものであることを特徴とする。
【0006】
本発明請求項2は、一対の乳房カップ部の間で前開きタイプのブラジャーであって、前記一対の乳房カップ部のそれぞれの末端から対向して設けられた少なくとも1本のテープと、それぞれのテープに設けられた雌雄部材からなるアジャスターとからなり、前記雌部材は、一方の乳房カップ部端部または隣接するテープ上に固定されたスライダーであり、前記雄部材は、他方のテープを構成するガイドレールであり、前記スライダーは前記ガイドレール上をスライド可能及び特定位置で固定可能であることを特徴とする。
【0007】
本発明請求項3は、請求項1又は2のブラジャーにおいて、前記スライダーの外方側に装飾物を固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、前開きタイプであって、乳房カップ部の間の距離が調節可能であり、しかも部品数が比較的に少なく、構造が簡単なブラジャーが得られる。
【0009】
請求項2の発明によれば、ホックやバーが不要となるので、さらに部品点数を減らすことができる。
【0010】
請求項3の発明によれば、異物のようにも見られるスライダーを装飾物により覆い隠し、さらに美的効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施例に係る、乳房カップ部の間の距離が調節可能な前開きタイプのブラジャーの斜視図である。
【図2】第1実施例に係る、アジャスターの拡大斜視図である。
【図3】ブラジャー着用者側から見たアジャスター雄部材正面図と雌部材平面図である。
【図4】アジャスターの雌雄部材を組み合わせた状態の(a)正面図と(b)断面図である。
【図5】アジャスターの雌雄部材を組み合わせた状態であって、位置調節状態を説明する(a)正面図と(b)断面図である。
【図6】アジャスター雄部材の(a)左側面図、(b)正面図、(c)右側面図、(d)背面図、(e)平面図である。
【図7】第2実施例に係る、乳房カップ部の間の距離が調節可能な前開きタイプのブラジャーの斜視図である。
【図8】第3実施例に係る、乳房カップ部の間の距離が調節可能な前開きタイプのブラジャーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面に基づき、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0013】
図1に示すように、このブラジャー1は前開きタイプであると共に、乳房カップ部2の間の距離を調節可能とするアジャスター3が左右乳房カップ部の間に設けられている。このアジャスター3の構造及び作用を図2−6により説明する。
【0014】
図1,図2に示すように、アジャスター3は雌雄部材4,5からなる。それぞれの部材は、左右乳房カップ端部に向かい合って取り付けられた短いテープ41,51の上に設けられている。
【0015】
雌部材4は、ホック・アンド・バー(カギホック)で多用される「コ」の字型のバー42であり、一方のテープ41に固定されている。
【0016】
図3に示すように、雄部材5のテープはガイドレール51であり、このガイドレール51上をスライダー6がスライド可能であると共に、特定位置で固定可能でもある。このスライダー6の着用者側には、図6に示すように、2本のホック61が固定されている。図3の矢印で示すように、このホック61は雌部材のバー42と係合可能である。この係合を外すと、ブラジャーは前開きとなり、授乳が容易となる。この実施例でホック61が2本であるのは、デザイン的なものであり、幅広のホックを使用すれば1本でもよい。
【0017】
図4及び図5により、さらに詳細にアジャスターを説明する。
【0018】
ガイドレール51は、合成樹脂製の細長い基板で、片面の長手方向中央に四角柱の浅い係止歯52が断続的に一列に設けられている。ガイドレール51の長手方向両脇は肉厚部53となってガイドレール基板の強度を高めている。ガイドレール基板の遊端側にはストッパ54が設けられていて、スライダー6が抜け出ないようにしている。
【0019】
スライダー6は、中空の四角い箱62であり、図6に示すように、左右側部及び上部にそれぞれ開口63,64がある。左右側部の開口63はガイドレール51の通路であって、ここを通じてスライダー6の中をガイドレール51が貫通している。上部の開口64からは、押動片65のプレス用頭部66と頸部67が突出している。押動片65本体は、スライダー箱62の中に収容され、プレス用頭部66の押圧により上下動が可能である。押動片65本体の下部は折り曲げられて段部68を形成している。押動片65本体の最下部とスライダー箱底部の間に設けられた二脚バネ69により、常態では上方に付勢されている(図4の状態)が、プレス用頭部66が押し下げられたとき、押動片65本体は、バネ69の力に抗して下方に移動する(図5の状態)。
【0020】
常態では、押動片65本体の段部68は、スライダー箱62の中で、ガイドレールの係止歯52と接触し、それによりスライダー6がガイドレール51の特定位置で固定されている(図4(a)参照)。この位置を変更するには、プレス用頭部66を押し下げて、押動片65本体の段部68と係止歯52の接触を解除すればよい(図5(a)参照)。そうすることにより、スライダー6は再びガイドレール51に沿って移動可能となる。適当な位置を選択してプレス用頭部66への押圧を止めれば、その位置で再びスライダー6がガイドレール51に固定される。
【0021】
このように、本実施例では、プレス用頭部66を押し下げて、スライダー6をスライドさせるだけで、乳房カップ部2,2の間の距離が調節可能となる。
【実施例2】
【0022】
この実施例では、スライダーの外方側に装飾用の花飾り7を固定している。花飾り7の固定方法は、スライダー又はその近辺のガイドレールに対して、縫付けや接着により固定的に取り付けたり、安全ピンや引っかけ具などによって取り外し自在に取り付けたりすることができる。このようにすることにより、異物のようにも見られるスライダーを花飾り7により覆い隠し、さらに美的効果を高めることができる。
【実施例3】
【0023】
図8は、本発明の実施例3に係るブラジャーの斜視図である。この実施例では、雌部材4Bとして、前記実施例で使用したスライダー6Bを、雄部材5Bとして、前記実施例1、2で使用したガイドレール51Bを使用する。使用するときには、スライダー6Bのプレス用頭部を押し下げながら、ガイドレール51Bを指で持ち、スライダー6Bの中の通路に挿入する。適当な位置でプレス用頭部から指を話すとその位置で固定される。(この実施例では、スライダー6Bはスライドしないので、もはや「スライダー」とは呼べないが、前記実施例1、2と用語を統一するために「スライダー」ということにする。)
【0024】
スライダー6Bは、一方の乳房カップ部2Bの端部に直接または短いテープ41Bを介して取り付けられる。直接取り付けるときには、例えば、金属の箱体に穴を開けその穴に貫通する糸で乳房カップ部2Bの端部と縫い合わせる。
【0025】
ガイドレール51Bは一端を他方の一方の乳房カップ部2Bに縫い付けて固定する。前記実施例1、2と異なり、遊端側末端にストッパを設けてはならない。ストッパがあると、ガイドレール51Bをスライダー4Bの中に挿入できないからである。
【0026】
図示しないが、実施例3についても、スライダーを装飾物で飾ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特許第2992479号
【特許文献2】特許第3226813号
【特許文献3】特開2001−295106号
【符号の説明】
【0028】
1,1A,1B ブラジャー
2,2A,2B 乳房カップ部
3,3A,3B アジャスター
4,4A,4B 雌部材
41 テープ
42 バー
5,5A,5B 雄部材
51,51A,51B テープ(ガイドレール)
52 係止歯
53 肉厚部
54 ストッパ
6 スライダー
61 ホック
62 スライダー箱
63 側部開口
64 上部開口
65 押動片
66 プレス用頭部
67 頸部
68 段部
69 二脚バネ
7 装飾物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の乳房カップ部(2,2)の間で前開きタイプのブラジャー(1)であって、
前記一対の乳房カップ部(2,2)のそれぞれの末端から対向して設けられた2本のテープ(41,51)と、それぞれのテープに設けられた雌雄部材(4,5)からなるアジャスター(3)とからなり、
前記雌部材(4)は、一方のテープ(41)上に固定され、
前記雄部材(5)は、他方のテープ(51)を構成するガイドレールと、このガイドレール上をスライド可能及び特定位置で固定可能なスライダー(6)からなり、
前記スライダー(6)は前記雌部材(4)と係合可能なホック(61)を有するものであることを特徴とする、
乳房カップ部の間の距離が調節可能なブラジャー。
【請求項2】
一対の乳房カップ部(2B,2B)の間で前開きタイプのブラジャー(1B)であって、
前記一対の乳房カップ部(2B,2B)のそれぞれの末端から対向して設けられた少なくとも1本のテープ(41B,51B)と、このテープ又は乳房カップ部(2B)端部に設けられた雌雄部材(4B,5B)からなるアジャスター(3B)とからなり、
前記雌部材(4B)は、一方の乳房カップ部(2B)端部または隣接するテープ(41B)上に固定されたスライダー(6B)であり、
前記雄部材(5B)は、他方のテープ(51B)を構成するガイドレールであり、
前記スライダー(6B)は前記ガイドレール上をスライド可能及び特定位置で固定可能である、
ことを特徴とする乳房カップ部の間の距離が調節可能なブラジャー(1B)。
【請求項3】
前記スライダー(6,6B)の外方側に装飾物(7)を固定したことを特徴とする請求項1又は2のブラジャー(1A)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−236105(P2010−236105A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82231(P2009−82231)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000114606)モリト株式会社 (198)
【Fターム(参考)】