説明

乳液状整髪用組成物

【課題】容易に内容物を取り出すことができるとともに、自由に何度もヘアアレンジできるといったヘアワックス特有の整髪特性を兼ね備える乳液状整髪用組成物の提供。
【解決手段】(A)室温で固形のロウ類および/又は室温で固形の炭化水素類、(B)非イオン性界面活性剤、(C)水および(D)ポリアクリル酸の未中和物、好ましくは、平均分子量が、10万〜1,000万のポリアクリル酸の未中和物を含有してなる乳液状整髪用組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳液状整髪用組成物に関する。更に詳しくは、該組成物にずり応力をかけることにより、流動性のない性状へと変化する性質を有する乳液状整髪用組成物に関する。尚、本発明における室温とは、1〜30℃の温度範囲を表す。
【背景技術】
【0002】
近年、整髪剤としては、何度も自由にヘアアレンジできるという特性のある、ロウ類や炭化水素類と水とを乳化した、流動性のない性状を呈しているヘアワックスが主流となってきている。また、これらヘアワックスは、整髪性および再整髪性の観点から、ロウ類や炭化水素類を多量に配合される傾向にある。
【0003】
上記したロウ類や炭化水素類を多量に配合したヘアワックスを広口容器などに充填した場合、内容物の表面は硬いロウ状となることから、指先で内容物を取り出すときに表面が「ボロボロ」としたロウ片となり、容易に適量取り出すことができないといった問題がある。加えて、毎日の使用により、内容物表面のロウ片が広がり、更に適量を取り出し難くなるといった問題もある。
【0004】
このような問題点を解決するために、容器から取り易くする試みがなされている。具体的には、例えば、融点の異なる直鎖状炭化水素ワックス、分岐鎖状炭化水素ワックス、直鎖アルキル基を含有する界面活性剤、水を含有し、硬度が5g以上である乳化整髪料(例えば、特許文献1を参照)などが提案されている。しかしながら、これら試みに拠って、ある程度は容器からの取り易さを改善することはできるものの、自由に何度もヘアアレンジできるといったヘアワックス特有の整髪特性が得られ難いといった問題がある。
【0005】
一方、内容物を取り出し易くするための解決策としては、ロウ類や炭化水素類の配合量を低減させること、また、液状又は乳液状などの流動性のある剤型で調製することなどの試みが挙げられるが、これら対策ではヘアワックス特有の整髪特性を損なうといった問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開2007−70233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、容易に内容物を取り出すことができるとともに、自由に何度もヘアアレンジできるといったヘアワックス特有の整髪特性を兼ね備える乳液状整髪用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、
〔1〕(A)室温で固形のロウ類および/又は室温で固形の炭化水素類、(B)非イオン性界面活性剤、(C)水および(D)ポリアクリル酸の未中和物を含有してなる乳液状整髪用組成物、
〔2〕(D)成分の平均分子量が、10万〜1,000万であることを特徴とする前記〔1〕に記載の乳液状整髪用組成物、並びに
〔3〕ずり応力をかけることにより流動性のない性状へと変化する物性を有することを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の乳液状整髪用組成物
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の乳液状整髪用組成物は、乳液状であることから、ポンプ容器、チューブ容器、スクイズ容器などの種々の容器から内容物を容易に取り出すことができるという効果を奏する。また、ずり応力をかけることにより流動性のない性状へと変化する物性(ダイラタンシー様物性)を示すことから、ヘアワックスと同様の使用感および整髪特性を有するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の乳液状整髪用組成物は、(A)室温で固形のロウ類および/又は室温で固形の炭化水素類、(B)非イオン性界面活性剤、(C)水および(D)ポリアクリル酸の未中和物を含有する。
【0011】
(A)成分の室温で固形のロウ類の具体例としては、例えば、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、コメヌカロウ、セラックロウ、鯨ロウ、ラノリンなどを例示することができる。また、室温で固形の炭化水素類の具体例としては、例えば、セレシン、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレン末、ポリエチレンワックス、ワセリンなどを例示することができる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。
【0012】
(A)成分の含有量は、所望の効果が充分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、整髪特性の観点から、組成物中、0.1重量%以上が好ましく、より好ましくは0.5重量%以上である。また、乳液状とする観点から、40重量%以下が好ましく、より好ましくは30重量%以下である。これらの観点から、(A)成分の含有量は、0.1〜40重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜30重量%である。
【0013】
(B)成分の非イオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物などの脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤の他、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリンなどが挙げられる。これら成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組合せて用いることもできる。
【0014】
グリセリン肪酸エステルとしては、本発明においては、グリセリン脂肪酸エステルおよびポリグリセリン脂肪酸エステルのいずれをも意味し、具体的には、モノカプリル酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノエルカ酸グリセリル、セスキオレイン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、ジアラキン酸グリセリルなどのグリセリン脂肪酸エステル;モノカプリル酸ジグリセリル、モノカプリル酸デカグリセリル、モノカプリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸テトラグリセリル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノラウリン酸ポリ(4〜10)グリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸ポリ(2〜10)グリセリル、モノオレイン酸ジグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、セスキオレイン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ポリ(2〜10)グリセリル、ジステアリン酸ポリ(6〜10)グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリステアリン酸ポリ(10)グリセリルなどの上記したグリセリン脂肪酸エステルの重合度2〜10のポリグリセリン脂肪酸エステルを例示することができる。また、グリセリン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物としては、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリルなどを例示することができる。
【0015】
ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルとしては、例えば、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル;モノステアリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコールなどのプロピレングリコール脂肪酸エステルなどを例示することができる。
【0016】
ソルビタン脂肪酸エステルとしては、例えば、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、ヤシ油脂肪酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステルを例示することができる。また、ソルビタン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物としては、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノヤシ油脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどを例示することができる。
【0017】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルの具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシプロピレンイソセチルエーテル、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシプロピレンオレイルエーテルなどを例示することができる。
【0018】
好適な(B)成分としては、乳液状とする観点から、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物およびポリオキシアルキレンアルキルエーテルの群から選ばれる少なくとも1種を用いるのが好ましい。
【0019】
(B)成分の含有量は、所望の効果が充分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、乳液状とする観点から、組成物中、0.01重量%以上が好ましく、より好ましくは0.1重量%以上である。また、使用感の観点から、30重量%以下が好ましく、より好ましくは20重量%以下である。これらの観点から、(B)成分の含有量は、好ましくは0.01〜30重量%、より好ましくは0.1〜20重量%である。
【0020】
(C)成分の水は、化粧料原料として使用できるものであれば特に限定はされないが、通常、精製水が用いられる。本発明における水の含有量は、整髪特性の観点から、組成物中、95重量%以下である。また、使用感の観点から、10重量%以上で調製される。これらの観点から、(C)成分の含有量は、10〜90重量%である。
【0021】
(D)成分のポリアクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸の重合体のことを言う。ポリアクリル酸は、通常、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基により中和されたポリアクリル酸塩などの中和物として組成物に配合される。しかしながら、本発明においては、上記した無機塩により中和されていないポリアクリル酸の未中和物が用いられる。このようなポリアクリル酸の未中和物を用いることで、本発明の特有の効果である、ずり応力をかけることにより瞬時に流動性のない性状へと変化するという現象、所謂、ダイラタンシー様物性を引き起こすことができる。
【0022】
また、(D)成分の平均分子量は、ダイラタンシー様物性を引き起こすことができれば特に限定されないが、10万〜1,000万のポリアクリル酸を用いることが好ましく、より好ましくは50万〜700万、更に好ましくは100万〜500万である。その理由としては、平均分子量が10万未満では流動性のない性状となり難く、また、平均分子量が1,000万より大きいと剤が硬くなりすぎるため、ヘアワックスと同様の使用感および整髪特性を発揮させ難くなることから好ましくない。
【0023】
尚、上記(D)成分は、市販品をそのまま使用することができる。具体的には、例えば、ジュリマーAC−10SH(商品名,平均分子量:125万、日本純薬社製)などを例示することができる。
【0024】
(D)成分の含有量は、所望の効果が充分に付与されるのであれば特に限定されないが、通常、ダイラタンシー様物性の観点から、組成物中、0.01重量%以上が好ましく、より好ましくは0.1重量%以上である。また、使用感の観点から、15重量%以下が好ましく、より好ましくは10重量%以下である。これらの観点から、(D)成分の含有量は、好ましくは0.01〜15重量%、より好ましくは0.1〜10重量%である。
【0025】
本発明の乳液状整髪用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記した成分の他に通常化粧品に用いられる成分、例えば、室温で液状の炭化水素油、エステル油、シリコーン油、脂肪酸、多価アルコール、高級アルコール、皮膜形成剤、低級アルコール、紫外線吸収剤、香料、酸化防止剤、保湿剤、清涼剤、ビタミン類、植物抽出物などを目的に応じて適宜配合することができる。
【0026】
室温で液状の炭化水素油の具体例としては、例えば、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、合成スクワラン、植物性スクワラン、スクワラン、流動パラフィン、流動イソパラフィンなどを例示することができる。
【0027】
エステル油としては、炭素数6〜22の脂肪酸と炭素数2〜22のアルコールとのエステル化合物が挙げられる。その具体例としては、例えば、パルミチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、2−エチルヘキサン酸セチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸2−ヘキシルデシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、リノール酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、ラノリン酸イソプロピル、ラノリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、オレイン酸デシル、パルミチン酸セチル、トリミリスチン酸グリセリン、ジオレイン酸プロピレングリコール、トリイソステアリン酸グリセリン、トリイソオクタン酸グリセリン、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリン、ステアリン酸コレステリルなどを例示することができる。
【0028】
シリコーン油の具体例としては、例えば、メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチコノールなどの鎖状シリコーン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどの環状シリコーン;アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体などのアミノ変性シリコーン;カルボキシ変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、脂肪族アルコール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキル変性シリコーンなどを例示することができる。
【0029】
脂肪酸の具体例としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸などを例示することができる。
【0030】
多価アルコールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、イソプレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオールなどを例示することができる。
【0031】
高級アルコールの具体例としては、例えば、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコールなどを例示することができる。
【0032】
皮膜形成剤の具体例としては、例えば、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体、ビニルピロリドン・N,N−ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体ジエチル硫酸塩、ビニルピロリドン・メタクリルアミド・ビニルイミダゾール共重合体、N−メタクリロイルオキシエチルN,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカル・ボキシベタイン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体、アクリル樹脂アルカノールアミン、ビニルメチルエーテル・マレイン酸ブチル共重合体などを例示することができる。
【0033】
尚、本発明の乳液状整髪用組成物は、前記各構成成分を混合し、公知の方法、例えばホモミキサーを用いた転相乳化法などにより乳化することにより製造することができる。また、混合と乳化は別々に行っても同時に行ってもよい。
【0034】
本発明の乳液状整髪用組成物が充填される容器は、乳液状で吐出できるものであれば特に限定されないが、例えば、ポンプ容器、チューブ容器、スクイズ容器などの容器を例示することができる。これら容器に該組成物を充填することにより、ジャー容器に充填されてなるヘアワックスの指取れ難さと比べ、容易に内容物を手の平上に取り出すことができる。そして、吐出された該組成物を手の平と平で擦り合わせ、ずり応力をかけることで、流動性のない性状とすることができ、ヘアワックスと同様の使用感をもたらすことができる。
【0035】
また、本発明の乳液状整髪用組成物は、ヘアワックスで汎用されているジャー容器に充填したものを用いることもできる。その場合、ジャー容器内に充填されている該組成物を指又は攪拌棒を用いて攪拌し、ずり応力をかけることで流動性のない性状とすることができる。また、該組成物は、上述した如く、ダイラタンシー様物性を起こすダイラタンシー様流体であることから、ジャー容器に充填した場合、ずり応力をかけることを止めることで元の乳液状へと性状が戻るという物性を示す。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。尚、配合量は、特記しない限り「重量%」を表す。
【0037】
(試料の調製1)
表1および表2に記した組成に従い、実施例1〜4および比較例1〜4の各整髪用組成物を常法に準じて調製し、ポンプ容器に充填し下記評価に供した。結果をそれぞれ表1および表2に併記する。尚、評価はすべて、23℃、湿度60%の恒温恒湿の一定条件下で実施した。
【0038】
(試験例1:取り出し易さの評価)
官能評価パネル20名により、実施例および比較例で得られた各試料をポンプ容器からプッシュして手の平に0.5g取り出してもらい、そのときの取り出し易さを下記の評価基準に従って官能評価した。
【0039】
<取り出し易さの評価基準>
○:20名中16名以上が適量を容易に取り出すことができると回答
△:20名中10〜15名が適量を容易に取り出すことができると回答
×:20名中9名以下が適量を容易に取り出すことができると回答
【0040】
(試験例2:ダイラタンシー様物性の評価)
同評価パネルにより、試験例1の評価後、手の平と平を5秒間円を描くように擦り合わせ、ずり応力をかけた後の各試料物性を下記の評価基準に従って評価した。
【0041】
<ダイラタンシー様物性の評価基準>
○:20名中16名以上が流動性のない性状へと変化し、手の平を90°に1分間傾けても試料が垂れ落ちないと回答
△:20名中16名以上が僅かに流動性があり、手の平を90°に1分間傾けると試料が垂れ落ちると回答
×:20名中16名以上が性状(乳液状)に変化が認められないと回答
【0042】
(試験例3:使用感および再整髪性の評価)
同評価パネルにより、試験例2の評価後、実際にウィッグ(レッスンマネキン:ユーカリジャパン社製)を用いて整髪してもらい、整髪時の「使用感」、並びに、1時間後再度整髪し直したときの「再整髪性」を下記評価基準に従って官能評価した。
【0043】
尚、再整髪性の評価は、整髪した毛髪を一度崩し、改めて毛先の方からにぎる操作を10回行い、形成されたスタイルに、にぎった形がくっきりと保持されているものを再整髪性が良いとして評価を行った。
【0044】
<使用感の評価基準>
○:20名中16名以上がヘアワックスと同様の使用感であると回答
△:20名中10〜15名がヘアワックスと同様の使用感であると回答
×:20名中9名以下がヘアワックスと同様の使用感であると回答
【0045】
<再整髪性の評価基準>
○:20名中16名以上が再整髪性に優れると回答
△:20名中10〜15名が再整髪性に優れると回答
×:20名中9名以下が再整髪性に優れると回答
【0046】
【表1】

【0047】
【表2】

【0048】
表1および2に示された結果から、実施例1の(B)成分を含有しない比較例1は、乳液状の剤型とならず製剤として成り立たない。実施例2の(D)成分を含有しない比較例2は、乳液状とすることはできるものの、本発明の特有の物性(ダイラタンシー様物性)を示さず、ヘアワックスと同様の使用感が得られない。実施例3の(D)成分を(D)成分のナトリウム中和物に置き換えた比較例3では、通常のヘアワックスの形態となり、ポンプ容器から取り出し難く、本発明の特有の物性(ダイラタンシー様物性)を示さない。実施例4の(A)成分を含有しない比較例4は、容器からの取り出しに優れるものの、ヘアワックスと同様の使用感、並びに再整髪性は得られない。
【0049】
これに対し、各実施例の乳液状整髪用組成物は、容器から内容物を容易に取り出せること分かる。また、ずり応力をかけることにより流動性のない性状へと変化する物性(ダイラタンシー様物性)を示し、ヘアワックスと同様の使用感、並びに再整髪性を有していることが分かる。
【0050】
以下、本発明に係る乳液状整髪用組成物の処方例を示す。尚、含有量は重量%である。
【0051】
(処方例1)
キャンデリラロウ 8.0
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
モノステアリン酸ソルビタン 1.5
ポリアクリル酸(平均分子量;125万) 3.0
流動パラフィン 5.0
精製水 残 部
合 計 100.0
【0052】
(処方例2)
カルナウバウロウ 15.0
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 3.0
モノステアリン酸ソルビタン 3.0
ポリアクリル酸(平均分子量;125万) 5.0
グリセリン 8.0
精製水 残 部
合 計 100.0
【0053】
(処方例3)
ポリエチレンワックス 3.0
キャンデリラロウ 5.0
ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.) 3.0
モノステアリン酸ソルビタン 1.5
ポリアクリル酸(平均分子量;125万) 7.0
2−エチルへキサン酸セチル 5.0
精製水 残 部
合 計 100.0

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)室温で固形のロウ類および/又は室温で固形の炭化水素類、(B)非イオン性界面活性剤、(C)水および(D)ポリアクリル酸の未中和物を含有してなる乳液状整髪用組成物。
【請求項2】
(D)成分の平均分子量が、10万〜1,000万であることを特徴とする請求項1に記載の乳液状整髪用組成物。
【請求項3】
ずり応力をかけることにより流動性のない性状へと変化する物性を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の乳液状整髪用組成物。

【公開番号】特開2010−143886(P2010−143886A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325410(P2008−325410)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(390011442)株式会社マンダム (305)
【Fターム(参考)】