説明

乳濁物中の架橋ヒアルロン酸

本発明は、架橋ヒアルロン酸微小ビーズの生産、及びその生産された微小ビーズに関し、該方法は:(a)ヒアルロン酸又はその塩を含むアルカリ水溶液を、架橋剤を含む溶液と混合し、(b)有機相又は油相中で前記工程(a)の混合した溶液から所望のサイズを有する微小液滴を形成して、有機中水又は油中水(W/O)乳濁物を形成し、(c)該W/O乳濁物を継続的に攪拌することにより、ヒアルロン酸とジビニルスルホンとの反応を引き起こし、架橋ヒアルロン酸微小ビーズを生じさせ、そして(d)該架橋ヒアルロン酸微小ビーズを精製する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋ヒアルロン酸微小ビーズの生産、及びその生産された微小ビーズに関し、該方法は:
(a)ヒアルロン酸又はその塩を含むアルカリ水溶液を、架橋剤を含む溶液と混合し、
(b)有機相又は油相中で前記工程(a)の混合した溶液から所望のサイズを有する微小液滴を形成して、有機中水又は油中水(W/O)乳濁物を形成し、
(c)該W/O乳濁物を継続的に攪拌することにより、ヒアルロン酸とジビニルスルホンとの反応を引き起こし、架橋ヒアルロン酸微小ビーズを生じさせ、そして
(d)該架橋ヒアルロン酸微小ビーズを精製する
工程を含む。
【背景技術】
【0002】
本発明は、生物医学、及び薬理的用途に使用される、乳濁物中の改変ヒアルロン酸(HA)、特に架橋HAを調製するプロセスに関する。
【0003】
ヒアルロン酸(HA)は、非硫酸化グリコサミノグリカンのクラスに属する、天然の、直鎖糖質ポリマーである。ヒアルロン酸は、ベータ−1,3−N−アセチルグルコサミン及びベータ−1,4−グルクロン酸の二種類の糖の単位の繰り返しから構成され、分子量(MW)が6MDaに上る。ヒアルロン酸は、硝子軟骨、滑膜関節体液、及び真皮及び表皮両方の皮膚組織に存在する。HAは、脊椎動物の結合組織を含む天然の組織から、ヒト臍帯から、そしてニワトリの鶏冠から抽出され得る。しかしながら、今日では、感染性の因子を担持する潜在的リスクを最小化し、生産物の均一性、水準及び入手可能性を増大させるために、微生物学的手法によりヒアルロン酸を調製するのが好ましい(WO 03/0175902, Novozymes)。
【0004】
生体における、HAの多くの機能が知られている。HAは、生体器官における、皮膚、腱、筋肉及び軟骨等の多くの組織の細胞の機械的支持において重要な役割を果たす。HAは、組織の保湿、及び滑潤等の重要な生物学的プロセスに関与する。また、HAは、接着、発生、細胞運動、癌、血管真性、及び創傷治癒等の、様々な生理学的機能に一定の役割を果たすとも考えられている。特異な物理的及び生物学的特性(粘弾性、生体適合性、生分解性を含む)により、HAは、眼科学、リューマチ学、薬物送達、創傷治癒及び組織工学の分野の、様々な、既存の及び開発中の用途において採用されている。これらの用途の幾つかにおけるHAの使用は、HAが室温、即ち約20℃で水に溶け、体内のヒアルロニダーゼにより迅速に分解し、そして生体材料への加工が困難であるという事実により、制限される。故に、HAの物理的及び機械的特性、並びにインビボでの存在期間を改善するために、HAの架橋が導入されていた。
【0005】
米国特許第4,582,865号(Biomatrix Inc.)は、架橋剤としてジビニルスルホン(DVS)を使用する、単独、又は多の親水性ポリマーと混合した、HAの架橋ゲルの調製を記載している。多官能性エポキシ化合物を使用する、架橋HA又はその塩の調製は、EP 0 161 887 B1に開示されている。共有結合を通じてHAを架橋するのに採用されている他の二官能性又は多官能性薬剤は、ホルムアルデヒド(U.S. 4,713,448、Biomatrix Inc.)、ポリアジリジン(WO 03/089476 A1、Genzyme Corp.)、L−アミノ酸若しくはL−アミノエステル(WO 2004/067575, Biosphere S.P.A.)を含む。カルボジイミドも、HAの架橋剤として報告されている(U.S. 5,017,229、Genzyme Corp.; U.S. 6,013,679、Anika Research, Inc)。脂肪族アルコールとHAとの全体的又は部分的架橋エステル、及びそのような部分的エステルと無機又は有機塩基との塩は、US 4,957,744に開示されている。水/アセトン混合物中の、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロライド(「EDAC」)、及びアジピン酸ジヒドラジドを用いたHAの架橋は、US 2006/0040892(University of North Texas)に開示された。また、WO 2006/56204(Novozymes A/S)は、架橋剤として字ビニルスルホン(DVS)を使用するHAの架橋ゲルを調製する方法も開示している。
【0006】
WO 2008/100044は、本出願の優先年に公開されたもので、ヒアルロン酸を架橋することによるヒアルロンヒドロゲルナノ粒子を調製する方法を記載し、この方法は、i)界面活性剤が溶解した油相と、ii)ヒアルロン酸及び水溶性架橋剤が溶解した塩基性水溶液の水相とを混合する工程を含むが、ここに、W/O乳濁物を形成するためのジビニルスルホン、該W/O乳濁物中でのヒアルロン酸の架橋、該油相がドデカン、ヘプタン、又はセチルエチルヘキサノエートを含むことは、言及されていない。
【0007】
EP O 830 416(US 6,214,331に対応する)は、架橋水溶性ポリマー粒子調製物の調製を記載し、該粒子は、直径212μm未満で、該粒子の少なくとも80%が球形で、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、セルロース、キチン、キトサン、アガロース、カラギーナン、カードラン、デキストラン、アマルサン、ゲラン、キサンタン、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(N−ビニルピロリドン)、タンパク質、糖タンパク質、ペプチドグリカン、プロテオグリカン、リポ多糖類、又はそれらの組合せから選択される水溶性ポリマーを含むポリマー水溶液を、油中水乳化剤を含む油性基材に添加して、該混合物を混合して、ポリマー液滴を含む乳濁物を形成して、そのまま、架橋剤を添加することにより該ポリマー液滴を架橋して、こうして架橋ポリマー粒子を形成させることにより収得が可能である。前記架橋剤は、最初に、水溶液のpHを11に調製することにより不活性化され、そしてpHを7〜8に下げることにより活性化される。トルエン、o−キシレン、又はイソオクタンが、油相として好ましい。水相と油相との重量の比率は、約1:1である。
【0008】
Nurettin Sahiner及びXinqiao Jai(Turk J Chem, 32 (2008), 397−409)は、油相としてイソオクタンを使用する、ヒアルロン酸を基礎とするミクロン未満のヒドロゲル粒子の調製を記載している。0.54mlのヒアルロン酸水溶液を、15mlのイソオクタンに添加して調製され、得られた水相と油相との重量比は10:1を超える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上により、架橋HAゲルの調製に適した幾つかの架橋剤が公知であることは明らかである。しかしながら、様々な用途に特に適したHAの新たな製剤の提供には、なおも商業的関心が存在する。例えば、ナノからマイクロメートルの範囲の断面を有する所望のサイズのゲル様架橋AH微小ビーズを提供する新たな方法は、商業的関心が高い。そのような架橋HAの微小ビーズは、例えば、薬理的薬物の送達用ビヒクルとして、それ自体が生物活性物質として、組成物、及びあらゆる生物医学的用途における構成成分として、多くの用途に使用され得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、第一の側面において、本発明は、架橋ヒアルロン酸微小ビーズを生産する方法を提供し、該方法は:
(a)ヒアルロン酸又はその塩を含むアルカリ水溶液と架橋剤を含む溶液を混合し;
(b)有機相又は油相中で前記工程(a)の混合した溶液から所望のサイズを有する微小液滴を形成して、有機中水又は油中水(W/O)乳濁物を形成し、
(c)該W/O乳濁物を継続的に攪拌することにより、ヒアルロン酸とジビニルスルホンとの反応を引き起こし、架橋ヒアルロン酸微小ビーズを生じさせ、そして
(d)該架橋ヒアルロン酸微小ビーズを精製する
工程を含む。
【0011】
第二の側面において、本発明は、ヒアルロン酸又はその塩を含み、ジビニルスルホンで架橋され;好ましくは前記第一の速年の方法により作製される、微小ビーズに関する。
【0012】
第三の側面において、本発明は、前記第二の側面において定義される微小ビーズ、および好ましくは薬理的活性物質である有効成分を含む組成物に関する。
【0013】
本発明の第四の側面は、前記第二の側面において定義される有効な量の微小ビーズを、医薬として許容される担体、賦形剤又は希釈剤と共に含む、医薬組成物に関する。
【0014】
第五の側面は、前記第二の側面において定義される有効な量の微小ビーズをビヒクルとして、薬理的活性物質と共に含み、好ましくは該薬理活性物質が、該微小ビーズ中に分散物又は溶液として封入される、医薬組成物に関する。
【0015】
第六の側面において、本発明は、前記第二の側面において定義される微小ビーズ、又は前記第三、第四、又は第五の側面のいずれかにおいて定義される組成物を含む、衛生、医療、又は手術用品であり、好ましくは該用品は、おむつ、生理用ナプキン、手術用スポンジ、創傷治癒用スポンジ、若しくは絆創膏の一部、又は他の創傷包帯材料である。
【0016】
重要な側面は、前記第二の側面において定義される微小ビーズ、又は前記第三、第四、又は第五の側面のいずれかにおいて定義される組成物を含む、カプセル又は微小カプセルに関する。
【0017】
多くの側面は、変形性関節症、癌の治療用医薬を生産するための、眼科的処置用の医薬を生産するための、創傷治療用の医薬を生産するための、血管真性用の医薬を生産するための、脱毛若しくは禿の治療用の医薬を生産するための、保湿剤を生産するための、皮膚充填剤(dermal filler)、薬物送達系/ビヒクルもしくは組織増加(tissue augmentation)用のデバイスを生産するための、前記第二の側面において定義される微小ビーズ、又は前記第三、第四、又は第五の側面のいずれかにおいて定義される組成物の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】直径22マイクロメートルの粒子の球形のプロフィールを呈する、単離された架橋ヒアルロン酸ゲル粒子の顕微鏡写真を示す。
【0019】
【図2】着色料としてpH表示薬を含む乳濁物の顕微鏡写真を示す。この写真は、より大きな粒子に囲まれた、小さな粒子(1〜5マイクロメートル)の貢献を示す。
【0020】
【図3】最大で直径1mmのゲル粒子を呈する、単離された架橋ヒアルロン酸ゲル粒子(x80)の顕微鏡写真を示す。
【0021】
【図4】直径500〜1000マイクロメートルの範囲の様々なサイズの粒子の球形のプロフィールを呈する、単離された微小ビーズ粒子の顕微鏡写真を示す。
【0022】
【図5】洗浄手順の後の粒子の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
「ヒアルロン酸」という用語は、文中では、異なる分子量を有し、D−グルクロン酸及びN−アセチル−D−グルコサミン酸の残基により構成され、天然に細胞表面に存在し、脊椎動物の結合組織の基本的な細胞外物質中に、関節の滑膜体液中に、眼球内液中に、ヒト臍帯組織中に、及びニワトリの鶏冠中に存在する、酸性多糖類を意味する。
【0024】
「ヒアルロン酸」という用語は、実際は、通常、分子量が様々なD−グルクロン酸及びN−アセチル−D−グルコサミン酸の交互の残基を有する全ての型の多糖類、又はその分解フラクションさえ意味するものとして使用されるので、「ヒアルロン酸」は、複数形として用いるのがより妥当と考えられる。しかしながら、本明細書中の全てにおいて、単数形が使用されており;加えて、「HA」という略語は、この総称に代えて頻繁に使用され得る。
【0025】
「ヒアルロン酸」は、本明細書中では、D−グルクロン酸及びN−アセチル−D−グルコサミン酸がベータ−1,4及びベータ−1,3−グリコシド結合により交互に連結され、二糖が反復することにより構成される、非硫酸化グリコサミノグリカンとして定義される。ヒアルロン酸は、ヒアルロナン、ヒアルロネート、又はHAとしても知られる。ヒアルロナン及びヒアルロン酸という用語は、本明細書中で、相互に置換可能なものとして使用される。
【0026】
ニワトリの鶏冠は、ヒアルロナンの重要な商業的供給源である。微生物は、代替的な供給源である。米国特許第4,801 ,539号は、ストレプトコッカス・ズウエピデミクス(Streptococcus zooepidemicus)の株を利用するヒアルロン酸を調製するための発酵方法を開示しており、1リットルあたり約3.6gのヒアルロン酸が収得されたことを報告している。欧州特許第EP0694616号は、ストレプトコッカス・ズウエピデミクス(Streptococcus zooepidemicus)の改良した株を利用する発酵プロセスを開示しており、約3.5gのヒアルロン酸が取得されたことを報告している。本明細書中に全てが援用されるWO 03/054163(Novozymes)に開示されているように、ヒアルロン酸又はその塩は、例えばグラム陽性バチルス(Bacillus)宿主中で、組換え的に生産され得る。
【0027】
ヒアルロナンシンターゼは、脊椎動物、細菌性病原体、及び藻類ウイルス由来のものが記載されている(DeAngelis, P. L., 1999, Cell. MoI. Life Sci. 56: 670−682)。WO 99/23227はストレプトコッカス・エキシミリス(Streptococcus equisimilis)由来のグループIヒアルロネートシンターゼを開示している。WO 99/51265 and WO 00/27437は、パスツレラ・ムルトシダ(Pasturella multocida)由来のグループIIヒアルロネートシンターゼを開示している。Ferrettiらは、ストレプトッコッカス・ピオゲンス(Streptococcus pyogenes)のヒアルロナンシンターゼオペロンを開示し、該オペロンは、hasA、hasB、及びhasCの2つの遺伝子を有し、それぞれヒアルロネートシンターゼ、UDPグルコースデヒドロゲナーゼ、及びUDP−グルコースピロホスホリラーゼをコードする(Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 98, 4658−4663, 2001)。WO 99/51265は、ストレプトコッカス・エキシミリス(Streptococcus equisimilis)ヒアルロナンシンターゼのコード領域を有する、核酸断片を記載する。
【0028】
組換えバチルス(Bacillus)細胞のヒアルロン酸は培養培地に直接発現されるため、培地からヒアルロナンを単離するのに単純なプロセスが使用され得る。第一に、バチルス細胞及び細胞デブリが培養培地から物理的に除去される。この培養培地を必要に応じて希釈して、培地の粘性を低下させる。遠心分離又は精密濾過等、培養培地から細胞を除去する多くの方法は、当業者に知られている。必要に応じて、残った上澄を超遠心等により濾過して、ヒアルロナンを濃縮し、小分子のコンタミネーションを除去する。細胞及び細胞デブリの除去後、既知のメカニズムのよりヒアルロナンを培地から沈殿させる。前記濾過物からヒアルロナンを沈殿させるのに、塩、アルコール、又は塩とアルコールの組合せが使用され得る。沈殿物に変えた後、ヒアルロナンは、物理的な手段により、溶液から容易に単離され得る。凍結乾燥又は噴霧乾燥等の当業者に知られる蒸発技術を使用することにより、ヒアルロナンは、乾燥され、又は濾過溶液から濃縮される。
【0029】
本明細書中で、「微小ビーズ」という用語は、微小滴、微小液滴、微小粒子、微小球、ナノビーズ、ナノ滴、ナノ液滴、ナノ粒子、ナノ球等の用語と相互に置換可能なものとして使用される。典型的な微小ビーズは、概ね球形で、断面の直径が約1ナノメートルカラ1ミリメートルの範囲内である。しかし、通常、本発明の発明に係る微小ビーズは、更により狭い範囲で所望のサイズとなるように、即ち殆ど均一となるように作製し得る。好ましくは、該微小ビーズの直径は、約100〜1000ナノメートルの範囲内;又は1000ナノメートル〜1000マイクロメートルの範囲内である。該微小ビーズのサイズ分布は小さく、多分散度(polydispersibility)は狭い。
【0030】
宿主細胞
好ましい態様は、前記ヒアルロン酸又はその塩が、組換え的に生産され、好ましくはグラム陽性細菌、又は宿主細胞により、より好ましくはバチルス(Bacillus)属の細菌により生産される、前記第一の側面の方法に関する。
【0031】
前記宿主細胞は、ヒアルロン酸の組換え生産に適した任意のバチルス(Bacillus)細胞であってもよい。該バチルス(Bacillus)宿主細胞は、野生型バチルス(Bacillus)細胞又はその突然変異体であってもよい。本発明の実施に有用なバチルス(Bacillus)細胞は、限定されないが、バチルス・アガラデレンス(Bacillus agaraderhens)、バチルス・アルカロフィルス(Bacillus alkalophilus)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・シルクランス(Bacillus circulans)、バチルス・クラウジイ(Bacillus clausii)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・フィルムス(Bacillus firmus)、バチルス・ラウツス(Bacillus lautus)、バチルス・レンツス(Bacillus lentus)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、及びバチルス・ツリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)細胞を含む。WO 98/22598において、組換え発現に特に適応した突然変異バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)細胞が記載されている。無鞘(Non− encapsulating)バチルス(Bacillus)細胞は、本発明において特に有用である。
【0032】
好ましい態様において、前記バチルス(Bacillus)宿主細胞は、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・クラウジイ(Bacillus clausii)、バチルス・レンツス(Bacillus lentus)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・ステアロテルモフィルス(Bacillus stearothermophilus)又はバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis細胞である。好ましい態様において、前記バチルス(Bacillus)細胞は、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)細胞である。他のより好ましい態様において、前記バチルス(Bacillus)細胞は、バチルス・クラウジイ(Bacillus clausii)細胞である。他のより好ましい態様において、前記バチルス(Bacillus)細胞は、バチルス・レンツス(Bacillus lentus)細胞である。他のより好ましい態様において、前記バチルス(Bacillus)細胞は、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)細胞である。他のより好ましい態様において、前記バチルス(Bacillus)細胞は、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis細胞である。最も好ましい態様において、前記バチルス(Bacillus)宿主細胞は、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)A164Δ5(米国特許第5,891 ,701号を参照されたい)又はバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)168Δ4である。
【0033】
分子量
ヒアルロン酸の構成は、改変カルバゾール法に従い決定され得る(Bitter and Muir, 1962, Anal Biochem. 4: 330−334)。更に、ヒアルロン酸の平均分子量の値は、Ueno et al., 1988, Chem. Pharm. Bull. 36, 4971−4975、Wyatt, 1993, Anal. Chim. Acta 272: 1−40、並びにWyatt Technologies, 1999, “Light Scattering University DAWN Course Manual”及び“DAWN EOS Manual” Wyatt Technology Corporation, Santa Barbara, California等に記載の、当該技術分野の標準的な手法を使用して決定され得る。
【0034】
好ましい態様において、本発明のヒアルロン酸又はその塩の分子量は、約10,000〜10,000,000Daである。より好ましい態様において、本発明のヒアルロン酸又はその塩の分子量は、約25,000〜約5,000,000Daである。最も好ましい態様において、前記ヒアルロン酸の分子量は、約50,000〜約3,000,000Daである。
【0035】
好ましい態様において、前記ヒアルロン酸又はその塩の分子量は300,000〜3,000,000の範囲内;好ましくは400,000〜2,500,000の範囲内;より好ましくは500,000〜2,000,000の範囲内;そして最も好ましくは600,000〜1,800,000の範囲内である。
【0036】
なおももう一つの好ましい態様において、前記ヒアルロン酸又はその塩の平均分子量が小さいもので、10,000〜800,000Daの範囲内;好ましくは20,000〜600,000Daの範囲内;より好ましくは30,000〜500,000Daの範囲内;なおもより好ましくは40,000〜400,000Daの範囲内; そして最も好ましくは50,000〜300,000Daの範囲内である。
【0037】
塩及び架橋HA
好ましい態様は、ヒアルロン酸の無機塩、好ましくはヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸アンモニウム、ヒアルロン酸カルシウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸亜鉛、又はヒアルロン酸コバルト等を含む、前記第一の側面の方法に関する。
【0038】
他の成分
好ましい態様において、本発明の方法により生産される生産物は、他の成分、好ましくは1つ以上の有効成分、好ましくは1つ以上の医薬活性物質、また好ましくは水溶性賦形剤、ラクトース又は非生物由来の糖類等も含む。
【0039】
本発明に使用され得る有効成分又は1つ以上の医薬活性物質の例には、ビタミン、抗炎症薬、抗生物質、静菌剤、一般的な麻酔薬、リドカイン、モルヒネ、並びにタンパク質及び/又はペプチド薬、ヒト成長ホルモン、ウシ成長ホルモン、ブタ成長ホルモン、ホルモン/ペプチド関連成長ホルモン、顆粒球コロニー刺激因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、エリスロポエチン、骨形成タンパク質、インターフェロン若しくはその誘導体、インスリン若しくはその誘導体、心房性ナトリウム利尿ペプチドIII、モノクローナル抗体、腫瘍壊死因子、マクロファージ活性化因子、インターロイキン、腫瘍分解因子、インスリン様増殖因子、上皮細胞増殖因子、組織プラスミノゲン活性化因子、因子IIV、因子IIIV、並びにウロキナーゼ等が含まれる。
【0040】
水溶性賦形剤は、前記有効成分を安定化する目的で加えられる場合があり、そのような賦形剤は、例えばアルブミン又はゼラチン等のタンパク質;グリシン、アラニン、グルタミン酸、アルギニン、リシン等のアミノ酸及びそれらの塩;グルコース、ラクトース、キシロース、ガラクトース、フルクトース、マルトース、サッカロース、デキストラン、マンニトール、ソルビトール、トレハロース及びコンドロイチン硫酸等の糖質;リン酸塩等の無機酸塩;TWEEN(登録商標)(ICI)等の界面活性剤、ポリエチレングリコール、並びにそれらの混合物を含む。前記賦形剤又は安定化剤は、生産物の重量の0.001〜99%の範囲を占める量が使用され得る。
【0041】
本発明の幾つかの側面は、とりわけ、有効な量の架橋HA生産物、好ましくは該有効成分が医薬活性物質である有効成分;医薬として許容される担体、賦形剤又は希釈剤、好ましくは水溶性賦形剤、及び最も好ましくはラクトースを含む、様々な組成物及び医薬に関する。
【0042】
本発明の複数の側面は、前記第一の側面において定義される生産物又は前記複数の側面及び上記態様において定義される組成物を含む物品に関し、例えば衛生用品、医療用品又は手術用品が挙げられる。最後の態様において、本発明は、前記第一の側面において定義される生産物、又は他の側面及び本発明の態様において定義される組成物を含む、医薬カプセル又は微小カプセルに関する。
【0043】
発明の詳細な説明
本発明の第一の側面は、架橋ヒアルロン酸微小ビーズを生産する方法であり、該方法は、以下の;
(a)ヒアルロン酸又はその塩を含むアルカリ水溶液を、架橋剤を含む溶液と混合し、
(b)有機相又は油相中で前記工程(a)の混合した溶液から所望のサイズを有する微小液滴を形成して、有機中水又は油中水(W/O)乳濁物を形成し、
(c)該W/O乳濁物を継続的に攪拌することにより、ヒアルロン酸とジビニルスルホンとの反応を引き起こし、架橋ヒアルロン酸微小ビーズを生じさせ、そして
(d)該架橋ヒアルロン酸微小ビーズを精製する
工程を含む。
【0044】
バチルス(Bacillus)宿主細胞中で組換え的にヒアルロン酸を生産する方法は、WO 2003/054163, Novozymes A/S(全て本明細書中に参照により援用される)に既に記載されている。
【0045】
従って、好ましい態様において、本発明は、前記第一の側面に関し、前記ヒアルロン酸又はその塩は、バチルス(Bacillus)宿主細胞中で組換え的に生産される。
【0046】
ヒアルロン酸の様々な分子量フラクションは、特定の目的に有利なものとして記載されている。
【0047】
本発明の好ましい態様は、前記第一の側面の方法に関し、前記ヒアルロン酸又はその塩の平均分子量の値は、100〜3000kDa、好ましくは500〜2000kDa、そして最も好ましくは700〜1800kDaである。
【0048】
ヒアルロン酸又はその塩の最初の濃度は、本発明の方法において、得られる架橋微小ビーズの特性に影響する。従って、本発明の好ましい態様は、前記第一の側面の方法に関し、前記アルカリ溶液に溶解したヒアルロン酸又はその塩の濃度が、0.1%〜40%(w/v)である。
【0049】
また、架橋反応中のpH値も結果に影響するため、好ましい態様において、本発明は、前記第一の側面の方法に関し、前記アルカリ溶液に溶解した水酸化ナトリウムの濃度が、0.001〜2.0Mである。
【0050】
また、架橋剤の濃度も、得られる微小ビーズに重大な影響を与えることも注目に値する。
【0051】
従って、本発明の好ましい態様は、前記第一の側面の方法に関し、前記架橋剤がジビニルスルホン(DVS)であり;好ましくはDVSは、前記工程(a)の混合溶液と、HA/DVSの重量比が1:1〜100:1(乾燥重量)となるように、好ましくはHA/DVSの重量比が2:1〜50:1となるように含まれる。
【0052】
ビセポキシド架橋技術に基づく架橋剤:GDE=グリセロールジグリシジルエーテル及びBDE:1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル等の他の架橋剤も、本発明の方法に適したものとして想定される。
【0053】
本発明の方法に適した架橋剤は、例えば、多官能性(>=2)OH−反応性化合物である。適切な架橋剤の例は、ジビニルスルホン(DVS)又はビセポキシド架橋技術に基づく架橋剤、例えばGDE=グリセロールジグリシジルエーテル及びBDE:1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルである。前記架橋剤は、好ましくは、ジビニルスルホン、グリセロールジグリシジルエーテル又は1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルから選択される。本発明の最も好ましい架橋剤は、好ましくは上記重量比率で使用されるジビニルスルホンである。
【0054】
本発明は、架橋剤とHA溶液を含む溶液を混合している間に、及び/又はその直後に、最初の攪拌をすることが、十分なゲル化を達成するのに望ましいことを見出した。
【0055】
従って、本発明の好ましい態様は、前記第一の側面の方法に関し、前記ヒアルロン酸とジビニルスルホンとの反応が、5℃〜100℃の温度範囲内で、好ましくは15℃〜50℃の範囲内で、より好ましくは20℃〜30℃の範囲内で行われる。
【0056】
前記第一の側面の方法の他の好ましい態様において、工程(c)の攪拌は、1〜180分間継続される。
【0057】
本発明は、前記溶液を混合した後の加熱工程が有益であることを決定した。
【0058】
従って、本発明の好ましい態様は、前記第一の側面の方法に関し、前記混合した溶液を、20℃〜100℃の温度範囲内で、好ましくは25℃〜80℃の範囲内で、より好ましくは30℃〜60℃の範囲内で、そして最も好ましくは35℃〜55℃の範囲内で加熱し、該温度を、該溶液を混合後少なくとも5分、好ましくは少なくとも10分、20分、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、又は最も好ましくは180分維持し、このとき好ましくは攪拌しない。
【0059】
架橋反応後短い時間、前記反応混合物を、攪拌を続けつつ室温に移すのが有利である。
【0060】
前記第一の側面の方法の好ましい態様において、前記反応混合物は、前記反応が行われた後、少なくとも5分、好ましくは少なくとも10分、20分、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、又は最も好ましくは180分、0℃〜40℃の温度範囲内で、好ましくは10℃〜30℃の範囲内で維持される。
【0061】
工程(b)の微小液滴の平均の直径の値は、約1ナノメートル〜1ミリメートルの範囲内であるのが有利である。工程(b)の微小液滴の粒子サイズ分布の最大値は、好ましくは約0.1〜100μmの範囲内で、より好ましくは0.5〜10μmであり、そして最も好ましくは1〜2μmである。前記液滴のサイズは、使用される乳化剤及び攪拌の強さの選択により調整され得る。所望のサイズの液滴を取得するのに必要な使用される乳化剤の組み合わせおよび攪拌の強さは、一連の単純な試験により決定され得る。前記液滴又は微小ビーズのサイズは、Accusizer (Accusizer 780 Optical Particle Sizer, PSS NICOMP, Santa Barbara, CAL, USA with Accusizer 780AD CW788−Nicomp software, V 1.68 (2000))を用いて決定され得る。
【0062】
好ましい態様において、本発明は、前記第一の側面の方法に関し、前記工程(b)の微小液滴の直径の平均値が、約1ナノメートル〜1ミリメートルの範囲内である。また、前記第二の側面の架橋微小ビーズの直径の平均値が、約1ナノメートル〜1ミリメートルの範囲内であることも好ましい。
【0063】
工程(c)における分散物を取得するのに、未反応の架橋剤を殆ど含まないのが有利であり得る。好ましくは、前記分散物、より好ましくは微小ビーズの含有量は、10重量ppm(wppm)、より好ましくは5wppmである。前記分散物中の遊離架橋剤の濃度は、該分散物が医薬又は生化学の用途/デバイス組成物に直接使用されるとしたら、低くあるべきである。なぜなら、未反応の架橋剤は、毒性を有する恐れがあるからである。従って、分散物に含まれる未反応の架橋剤の濃度が上記の値になるまで、工程(c)の反応を続行するのが好ましい。
【0064】
以下の:8〜22個のC原子を有する直鎖脂肪アルコール上の、12〜22個のC原子を有する脂肪酸上の、そしてアルキル基が8〜15個のC原子を有するアルキルフェノール上の2〜100molのエチレンオキシド及び/又は0〜5molのプロピレンオキシドの付加生成物(addition product)、6〜22個の炭素原子を有する飽和及び不飽和脂肪酸の、グリセロール、グリセロールモノ−及びジエステル並びにソルビタンモノ−及びジエステル上の、1〜100molのエチレンオキシドの付加生成物のC12/18脂肪酸モノ−及びジエステル、並びにそのエチレンオキシド付加生成物、アルキルラジカル中に8〜22個の炭素原子を有するアルキルモノ−及びオリゴグリコシド、並びにそのエチレンオキシド付加生成物、ヒマシ油及び/又は水素化ヒマシ油、直鎖、分岐、不飽和又は飽和C6〜C22脂肪酸、レチノレイン酸及び12−ヒドロキシステアリン酸、並びにグリセロール、ポリグリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、糖アルコール(例えばソルビトール)、アルキルグルコシド(例えばセルロース)、モノ−、ジ−及びトリアルキルリン酸塩、並びにモノ−、ジ−及びトリ−PEG−アルキルリン酸塩、並びにその塩、ポリシロキサン/ポリエーテルコポリマー(ジメチコンコポリオール)、例えばPEG/PPG−20/6ジメチコン、PEG/PPG−20/20ジメチコン、ビス−PEG/PPG−20/20ジメチコン、PEG−12又はPEG−14ジメチコン、PEG/PPG−14/4又は4/12又は20/20又は18/18又は17/18又は15/15、ポリシロキサン/ポリアルキルポリエーテルコポリマー及び対応する誘導体、例えばラウリル又はセチルジメチコンコポリオール、特にセチルPEG/PPG−10/1ジメチコン(ABIL(登録商標)EM90(Evonik Degussa))、DE11 65 574に従うペンタエリスリトール、脂肪酸、クエン酸及び脂肪アルコールの混合したエステル及び/又は6〜22個の炭素原子を有する脂肪酸の混合したエステル、メチルグルコース、並びにポリオール、例えばグリセロール又はポリグリセロール、クエン酸エステル、例えばグリセリルステアレートシトレート、グリセリルオレエートシトレート及びジラウリルシトレートに基づく部分エステル上の2〜200molの付加生成物の群の少なくとも1つの化合物が、非イオン性乳化剤又は界面活性剤として採用され得る。
【0065】
本発明において使用される好ましい乳化剤は、HLB値が3〜9、好ましくは4〜6、そしてより好ましくは約5であるものから選択される。好ましい乳化剤は、ポリセリル−4−ジイソステアラット/ポリヒドロキシステアラット/セバカット(ISOLAN(登録商標)GPS)、PEG/PPG−10/1ジメチコン(ABIL(登録商標)EM90)、ポリグリセリル−4イソステアレート(ISOLAN(登録商標)Gl34)、ポリグリセリル−3オレエート(ISOLAN(登録商標)GO33)、メリルグルコースイソステアレート(ISOLAN(登録商標)IS)、ジイソステアロイルポリグリセリル−3ダイマージリノレエート(ISOLAN(登録商標)PDI)、グリセリルオレエート(TEGIN(登録商標)OV)、ソルビタンラウレート(TEGO(登録商標)SML)、ソルビタンオレエート(TEGO(登録商標)SMOV)、及びソルビタンステアレート(TEGO(登録商標)SMS)から選択される。
【0066】
アニオン性乳化剤又は界面活性剤は、水溶性を付与する基を含み得て、例えばカルボキシル基、硫酸基、スルホン酸基又はリン酸基、並びに親油性ラジカルが挙げられる。皮膚が耐えられるアニオン性界面活性剤は、当業者に多く知られており、市販されている。本明細書中で、これらは、アルカリ金属、アンモニウム、又はアルカノルアンモニウム塩の形態の、アルキルスルフェート、又はアルキルリン酸塩、アルカリ金属又はアンモニウム塩の形態のアルキルエーテルスルフェート、アルキルエーテルカルボキシレート、アシルサルコシネート、及びスルホスクシネート、及びアシルグルタメートであってもよい。
【0067】
カチオン性乳化剤及び界面活性剤も添加される場合がある。第四級アンモニウム化合物、特に8〜22個の炭素原子を有する少なくとも1つの直鎖及び/又は分岐鎖、飽和又は不飽和アルキル鎖を有するものが、特に、例えばアルキルトリメチルアンモニウムハライド、例えばセチルトリメチルアンモニクムクロライド又はブロマイド又はべヘニルトリメチルアンモニウムクロライドに採用され得て、ジアルキルジメチルアンモニウムハライド、例えばジステアリルジメチルアンモニウムクロライドであってもよい。
【0068】
モノアルキルアミドカット例えばパルミタミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、又は対応するジアルキルアミドカットは、更に採用され得る。モノ−、ジ−又はトリエタノールアミンに基づく四級化された脂肪酸エステルであり得る容易に生分解する第四級エステル化合物は、更に採用され得る。アルキルグアニジニウム塩は、更にカチオン性乳化剤として混合され得る。
【0069】
穏和な界面活性剤、即ち皮膚が特に耐えられる界面活性剤の典型的な例として、脂肪アルコールポリグリコールエーテルスルフェート、モノグリセリドスルフェート、モノ−及び/又はジアルキルスルホスクシネート、脂肪酸イセチオネート、脂肪酸サルコシネート、脂肪酸タウリド、脂肪酸グルタメート、エーテル−カルボン酸、アルキルオリゴグルコシド、シボウサングルカミド、アルキルアミドベタイン及び/又はタンパク質−脂肪酸濃縮物、後者は例えば小麦タンパク質に基づくものが挙げられる。
【0070】
更に、両性海面活性剤、例えばベタイン、アンフォアセテート又はアンフォフォプロピオネート、故に例えばN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムグリシネート、例えばココ−アルキルジメチルアンモニウムグリシネート、N−アシルアミノプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムグリシネート、例えばココ−アシルアミノプロピルジメチルアンモニウムグリシネート、及び2−アルキル−3−カルボキシメチル−3−ヒドロキシエチルイミダゾリンであり、それぞれのケースにおいて、アルキル又はアシル基中に8〜18個のC原子を有し、並びにココ−アシルアミノエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルグリシネートを採用し得る。
【0071】
前記両性界面活性剤において、C8/18−アルキル又はアシル基から離れて、少なくとも1個の遊離アミノ基及び少なくとも1個の−COOH、又はSO3H基を分子中に含み、内塩(inner salt)の形成が可能な表面活性化合物が採用され得る。適切な両性界面活性剤の例として、N−アルキルグリシネート、N−アルキルプロピオン酸、N−アルキルアミノ酪酸、N−アルキルイミノジブロピオン酸、N−ヒドロキシエチル−N−アルキルアミドプロピルグリシン、N−アルキルタウリン、N−アルキルサルコシン、2−アルキルアミノプロピオン酸、ヲヨ帯アルキルアミノ酢酸であり、各ケースにおいて、アルキル基中に約8〜18個のC原子を有するものが挙げられる。更に、両性界面活性剤の例として、N−ココ−アルキルアミノプロピオネート、ココ−アシルアミノエチルアミノプロピオネート、及びC12/18−アクリルサルコシンが挙げられる。
【0072】
前記組成物を製剤化するのに使用される好ましい乳化剤又は界面活性剤は、前記微小ビーズの生産において使用されるものと同一である。
【0073】
当業者に周知なように、多くの種類の緩衝剤が、本発明の微小ビーズの膨潤及び中和に適したものとして想定されている。好ましい態様において、前記緩衝剤のpH値は2.0〜8.0の範囲内であり、好ましくは5.0〜7.5の範囲内である。
【0074】
最適な場合、適切な緩衝剤は、pH値を考慮して選択され、その結果、架橋微小ビーズのpHは、可能な限り中性に近い値となる。好ましい態様において、前記緩衝剤は、前記架橋微小ビーズのpHの値を5.0〜7.5にするpHの値を示す緩衝剤を含む。
【0075】
前記第一の側面の方法における緩衝剤は、リン酸緩衝剤及び/又は生理食塩水緩衝剤を含むのが好ましい。
【0076】
また、前記架橋微小ビーズは、pH値が2.0〜8.0の範囲内、好ましくは5.0〜7.5の範囲内である、水、水及び酸、水及びリン酸緩衝剤、水及び生理食塩水緩衝剤、又は水及びリン酸緩衝剤及び生理食塩水緩衝剤で、少なくとも1回洗浄されるのも好ましい。
【0077】
前記精製工程は、例えば濾過、デキャンテーション、遠心分離等の、当業者に知られる任意の分離技術を含み得る。1つ以上の精製工程と1つ以上の中和工程を組み合わせるのが有利であり得る。
【0078】
前記第一の側面の好ましい態様は、前記方法に関し、前記精製工程は、13,000ダルトン未満のサイズの分子が自由に拡散する透析膜を使用して、脱イオン水に対して前記架橋微小ビーズを透析することを含む。
【0079】
油相として、美容用又は個人治療用製剤において使用される、標準的な皮膚軟化剤を使用するのが好ましい。そのような標準的な皮膚軟化剤は、炭化水素又は芳香族炭化水素ではなく、特にトルエン、o−キシレン、ドデカン、ヘプタン、イソオクタン又はセチルエチルヘキサノエートではない。本発明において使用される好ましい皮膚柔軟化剤は、1〜22個のC原子を有する直鎖及び/又は分岐飽和又は不飽和アルコールのモノ−又はジエステル、1〜22個のC原子を有する単官能性脂肪族カルボン酸と2〜36個のC原子を有する脂肪属二官能性アルコールのエステル化生産物、長鎖アリール酸エステル、例えば直鎖及び/又は分岐鎖C6〜C22アルコールとベンズ酸、あるいはベンズ酸イソステアリルエステル、ベンズ酸ブチルオクチルエステル、又はベンズ酸オクチルドデシルエステル、カルボネート、好ましくは直鎖C6〜C22脂肪族アルコールカルボネート、ゲルベカルボネート(Guerbet carbonate)、例えばジカプリリルカルボネート、ジエチルヘキシルカルボネート、長鎖トリグリセリド、即ち3個の酸分子を有し、それらの少なくとも1つが脂肪族アルコールであるグリセロールの三重エステル、C6〜C10脂肪酸に基づくトリグリセリド、直鎖又は分岐鎖脂肪族アルコール、例えばオレイルアルコール又はオクチルドデカノール、及び脂肪族アルコールエステル、例えばジアルキルエーテル、例えばジカプリリルエーテル、シリコーンオイル及び蝋、例えばポリジメチルシロキサン、シクロメチルシロキサン、及びアリール−又はアルキル−又はアルコキシ−置換されたポリメチルシロキサン又はシクロメチルシロキサン、6〜18個、好ましくは8〜10個の炭素原子を有する脂肪族アルコールに基づくゲルベアルコール、直鎖C6〜C22脂肪族アルコールと直鎖C6〜C22脂肪酸のエステル、直鎖C6〜C22脂肪族アルコール、特に2−エチルへキサノール又はイソノナノールと分岐C6〜C13カルボン酸のエステル、C8〜C18と直鎖C6〜C22脂肪酸のエステル、分岐アルコール、特に2−エチルへキサノール又はイソノナノールと分岐鎖C6〜C13カルボン酸のエステル、多価アルコール(例えばプロピレングリコール、ダイマージオール又はトリマートリオール)及び/又はゲルベアルコールと直鎖及び/又は分岐鎖脂肪酸のエステル、C6〜C18脂肪酸に基づく液体モノ−/ジ−/トリグリセリド混合物、芳香族カルボン酸とC6〜C22脂肪族アルコール及び/又はゲルベアルコールのエステル、植物油、分岐第一級アルコール、置換シクロヘキサン、ポリオール及び/又はシリコーンオイルとエポキシ化脂肪酸エステルの開環生産物、あるいは2つ以上のこれらの化合物の混合物から選択される。使用される皮膚軟化剤は、相分離無くして水に混ざらないのが好ましい。
【0080】
皮膚軟化剤及び油性成分に適したものエステルは、例えば12〜22個のC原子を有する脂肪酸のメチルエステル及びイソプロピルエステル、例えばメチルラウレート、メチルステアレート、メチルオレエート、メチルエルケート、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、イソプロピルステアレート、イソプロピルオレエート等である。他の適切なモノエステルは、例えば、n−ブチルステアレート、n−ヘキシルラウレート、n−デシルオレエート、イソオクチルステアレート、イソノニルパルミテート、イソノニルイソノナノエート、2−エチルヘキシルラウレート、2−エチルヘキシルパルミテート、2−エチルヘキシルステアレート、2−ヘキシルデシルステアレート、2−オクチルドデシルパルミテート、オレイルオレエート、オレイルエルケート、エルシルオレエート、及びテクニカルグレート脂肪族アルコールカット及びテクニカルグレート脂肪族カルボン酸混合物から取得できるエステル、例えば12〜22個のC原子を有する不飽和脂肪族アルコールと12〜22個のC原子を有する飽和及び不飽和脂肪酸のエステル、例えば動物及び植物脂肪から採取できるものである。しかしながら、天然に存在するモノエステル及び蝋エステル混合物、例えばホホバ油又はマッコウクジラ油中に存在するものも適切である。適切なジカルボン酸エステルは、例えば、ジ−n−ブチルアジペート、ジ−n−ブチルセバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジ−(2−ヘキシルデシル)スクシネート、ジ−イソトリデシルアゼレートである。適切なジオールエステルは、例えば、エチレングリコールジオレエート、エチレングリコールジ−イソトリデカノエート、プロピレングリコールジ−(2−エチルヘキサノエート)、ブタンジオールジ−イソステアレート、ブタンジオールジ−カプリレート/カプレート及びネオペニルグリコールジ−カプリレエートである。
【0081】
本明細書中で、脂肪酸トリグリセリドの例として;例えば天然植物油、例えばオリーブ油、ヒマワリ油、ダイズ油、ラッカセイ油、ナタネ油、アーモンド油、ゴマ油、アボカド油、ヒマシ油、カカオバター、パーム油、並びにココナッツ油又はパーム核油等の液体成分、並びに動物油、例えばサメ肝臓油、タラ肝臓油、クジラ油、牛肉獣脂、バター脂肪分、蝋、例えば蜜蝋、カルナバヤシ蝋、羊毛及び牛脚油、牛肉の液体成分、あるいはカプリル酸/カプリン酸混合物の合成トリグリセリド、テクニカルグレードのオレイン酸由来のトリグリセリド、イソステアリン酸との、あるいはパルミチン酸/オレイン酸混合物由来のトリグリセリド、が、皮膚軟化剤(油相)として採用され得る。
【0082】
前記第一の側面の他の好ましい態様において、有機又は油相は、ミネラルオイル又はTEGOSOFT(登録商標)Mを含む。
【0083】
好ましくは、前記皮膚柔軟化剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、スクロース脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、レシチン、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、トコフェロール、トコフェリルポリエチレングリコールスクシネート、トコフェロールパルミテート及びトコフェロールアセテート、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマー、又はそれらの混合物から選択される。
【0084】
本発明の微小ビーズは、これらの微小ビーズを含む本発明の組成物へのアクセスを可能とする。本発明の組成物は、皮膚軟化剤、乳化剤及び界面活性剤/粘度調整剤/安定化剤、UV光保護フィルター、抗酸化剤、水刺激剤(hydrotropic agent)(又はポリオール)、固体及び充填剤、フィルム形成剤、防虫剤、保存料、品質調整剤、香料、染料、生物活性物質、保湿剤及び溶媒の群から選択される少なくとも1つの追加的な成分を含む。好ましくは、前記追加的な成分は、本発明の組成物中で、微小ビーズの外側又は内側に存在する。
【0085】
好ましい態様において、本発明の組成物は、乳濁物、懸濁物、溶液、クリーム、軟膏、ペースト、ゲル、油、粉末、エアロゾル、棒又はスプレーであってもよい。
【0086】
本発明の微小ビーズ又は組成物は、経皮薬物送達系/ビヒクルとして使用され得る。局所的に適用されると、該微小ビーズは、皮膚のしわ(wrinkle)及びたるみ(fold)に集合する(データ未公開)。
【実施例】
【0087】
実施例1.乳濁物中のDVS架橋微小顆粒の調製
この実施例は、DVS架橋微小顆粒の調製を例証するものである。
【0088】
室温で3時間、激しく攪拌して、ヒアルロン酸ナトリウム(HA、580kDa、1.90g)をNaOH水溶液(0.2M、37.5ml)中に溶解して、均一な溶液を得た。塩化ナトリウム(0.29g)を添加して、短時間混合した。
【0089】
ミネラルオイル(10.0g)及びABIL(登録商標)EM90界面活性剤(セチルPEG/PPG−10/1 ジメチコン、1.0g)を、攪拌により混合した。
【0090】
前記アルカリHA水溶液にジビニルスルホン(DVS、320マイクロリットル)を添加して、水相中に均一に分布するように1分間混合した。該水相を2分間以内に前記油相に添加して、低速のメカニカルスターラーで攪拌した。即座に乳濁物が形成され、室温で30分間攪拌が続行された。該乳濁物を、室温で一晩放置した。
【0091】
HCl水溶液(4M、約2.0ml)を添加することにより前記乳濁物を中和し、約40分間攪拌した。
【0092】
実施例2.pH表示薬を使用して中和した乳濁物中のDVS架橋微小粒子の調製
この実施例は、pH表示薬を使用して中和したDVS架橋微小粒子の調製を例証する。
【0093】
室温で2時間、激しく攪拌して、ヒアルロン酸ナトリウム(HA、580kDa、1.88g)をNaOH水溶液(0.2M、37.5ml)中に溶解して、均一な溶液を得た。プロモチモールブルーpH表示薬(等価範囲pH6.6〜6.8)を添加した(15滴、溶液中の青色)。塩化ナトリウム(0.25g)を添加して、短時間混合した。
【0094】
ミネラルオイル(10.0g)及びABIL(登録商標)EM90界面活性剤(セチルPEG/PPG−10/1 ジメチコン、1.0g)を、攪拌により混合した。
【0095】
前記アルカリHA水溶液にジビニルスルホン(DVS、320マイクロリットル)を添加して、水相中に均一に分布するように30〜60秒間激しく混合した。該水相を30秒以内に前記油相に添加して、400RPMのメカニカルスターラーで攪拌した。即座に乳濁物が形成され、室温で30分間攪拌が続行された。該乳濁物を、HCl水溶液(4M、約1.6ml)を添加することにより中和し、マグネチックスターラーで攪拌しながら室温で4時間放置した。ゲル粒子中に存在するpH表示薬は、緑色に変色した。pHスティックによる測定では、該乳濁物のpHは3〜4であった。該乳濁物を、冷蔵庫中に一晩放置した。ゲル粒子中に存在するpH表示薬は、黄色に変色した。
【0096】
実施例3.乳濁物の文離、微小粒子の膨潤及び単離
この実施例は、W/O乳濁物の破壊、そしてその後の相分離及び透析を例証する。有機溶媒抽出により、架橋HA微小粒子をW/O乳濁物から分離した。
【0097】
前記W/O乳濁物(5g)とn−ブタノール/クロロホルム混合物(1/1v%、4.5ml)とを混合して、室温で、試験管中で、回転混合により激しく攪拌した。過剰のmQ−水(20ml)を添加して、相分離を生じさせた。該試験管を遠心分離し、有機相の下相、ゲル粒子の中相、及び透明な水溶液の上相の3つの相を生じさせた。上相及び下相を捨て、ゲル粒子の中相を透析チューブ(MWCO 12−14,000、直径29mm、容積/長さ 6.4ml/cm)に移した。
【0098】
前記試料を、室温で一晩、MilliQ(登録商標)水中で透析した。更に2回透析液を交換して、一晩放置した。得られたゲルは、厚く、粘性が高く、体積が約50mlに膨潤しており、これが0.004gHA/cmに相当する。
【0099】
実施例4.乳濁物中のDVS架橋微小粒子の調製及び微小粒子の分離
この実施例は、DVS架橋HA微小粒子の調製を例示する。
【0100】
ヒアルロン酸ナトリウム(HA、580kDa、1.89g)をNaOH水溶液(0.2M、37.5ml)中に溶解した。塩化ナトリウム(0.25g)を添加して、均一な溶液が得られるように、これを室温で1時間、マグネチックスターラーで攪拌した。
【0101】
TEGOSOFT(登録商標)M(10.0g)油及びABIL(登録商標)EM90界面活性剤(セチルPEG/PPG−10/1ジメチコン、1.0g)を、攪拌により混合した。
【0102】
前記アルカリHA水溶液にジビニルスルホン(DVS、320マイクロリットル)を添加して、1分間混合した。該水相を2分以内に前記油相に添加して、メカニカルスターラーで攪拌した(300RPM)。即座に乳濁物が形成され、室温で30分間攪拌が続行された。
【0103】
化学量論的量のHCl(4M、1.8ml)を添加することにより前記乳濁物を中和し、約40分間攪拌した。該乳濁物を、n−ブタノール/クロロホルム混合物(1:1v%、90ml)及び過剰のMilliQ(登録商標)水(100ml)を添加することにより破壊し、そしてマグネチックスターラーにより攪拌した。約175mlの体積の上相が分離された。最後の洗浄において、有機相を30mlのmQ水で洗浄した。前記組み合わせられた水/ゲル相(205ml)を透析チューブ(MWCO 12−14,000、直径29mm、容積/長さ 6.4ml/cm)に移し、室温で一晩、MilliQ(登録商標)水に対して透析した。水を交換(3回)し、透析(二晩)した後の時点で、伝導性は0.67マイクロシーベルト/cmにまで低下した。得られた微小粒子を、顕微鏡(DIC 200x)により評価した。図1を参照されたい。1つの微小粒子の断面が示され、「21,578.92nm」と標識されている。
【0104】
実施例5.乳濁物の相分離及び微小粒子の単離
この実施例は、W/O乳濁物の破壊及びゲル微小粒子の単離を例証する。
【0105】
有機抽出により、ゲル微小粒子をW/O乳濁物から分離した。抽出に使用される有機溶媒は、例えばブタノール/クロロホルムの75:20〜20:80の比率(v%)の混合物であった。W/O乳濁物と有機溶媒の重量比(w%)は、約1:1であった。
【0106】
小スケールの分離:W/O乳濁物(5g)を遠心チューブ(50ml)中に量り取った。ブタノール/クロロホルムの混合物を調製(1:1v%)して、この混合物を前記試験管に4.5ml添加した。全ての乳濁物が溶解するように、試験管を慎重に混合した。該試験管を回転混合により混合し、室温で放置して相分離させた。相分離において、通常、上方の水相と下方の有機相との間に、白色の乳濁物の相が観察される。更に水および有機相を加えることにより、分離が促進した。デカンテーションにより水相を捨て、更に精製及び特定を行った。
【0107】
実施例6.油中水乳濁物の調製
この実施例は、HA微小粒子が形成される組成物を例証する。
【0108】
製造時間を短縮するために、温めた油相に冷やした水相を加える手順を使用する場合がある。以下に、非限定的な製剤の一例を示す。
【0109】
相A:
・2.0%ABIL(登録商標)EM90(セチルPEG/PPG−10/1ジメチコン)
・20.0%ミネラルオイル(又はTEGESOFT(登録商標)M)
【0110】
相B:
・0.5%塩化ナトリウム
・3.8%ヒアルロン酸
・0.2MNaOH(aq) 100%迄
【0111】
相C:
・約0.6%ジビニルスルホン
【0112】
調製
1.室温で相Aを混合する。
2.NaOH水溶液中にヒアルロン酸(Hyacare(登録商標))を攪拌して溶解し、そしてNaClを添加して攪拌して、これを相Bとする。
3.相BにDVSを添加して、1分間攪拌する。
4.攪拌しながら相Aに相Bを添加する。
5.短時間ホモジナイズ又は攪拌して、反応をとめる。
6.攪拌及び膨潤させる。
7.30℃未満で攪拌を続行する。
8.中和する。
【0113】
実施例7.DVS架橋微小粒子の調製及び分離
NaOH(0.2M、37.5ml)中に、ヒアルロン酸ナトリウム(HA、580kDa、1.88g)を溶解した。塩化ナトリウム(0.25g)を添加して、均一な溶液を得るために、該溶液を、室温で1時間、マグネチックスターラーにより攪拌した。
【0114】
油:TEGOSOFT(登録商標)M(10.0g)、及び界面活性剤ABIL(登録商標)EM90(セチルPEG/PPG−10/1ジメチコン、1.0g)を、攪拌により混合した。前記アルカリHA水溶液にジビニルスルホン(DVS、320マイクロリットル)を添加し、水相中に均一に分布するように、1時間混合した。そして水相を2分以内に前記油相に添加して、メカニカルスターラー(300RPM)により攪拌した。直ちに乳濁物が形成され、攪拌は、室温で30分間続行された。
【0115】
化学量論的量のHCl(4M、1.8ml)を添加することにより前記乳濁物を中和し、約40分間攪拌した。該乳濁物を分離じょうご(separation funnel)に移し、n−ブタノール/クロロホルム混合物(1:1v%、90ml)及び過剰のMilliQ(登録商標)水(100ml)を添加することにより破壊し、そして激しく攪拌した。約175mlの体積の上相が分離された。最後の洗浄において、有機相を100mlのMilliQ(登録商標)水で洗浄した。前記組み合わせられた水/ゲル相(205ml)を透析チューブ(MWCO 12−14,000、直径29mm、容積/長さ 6.4ml/cm)に移し、室温で一晩、MilliQ(登録商標)水に対して透析した。水を交換(3回)し、透析(二晩)した後の時点で、伝導性は10マイクロシーベルト/cmにまで低下した。得られた微小粒子を、顕微鏡により評価した(図4)。
【0116】
実施例8.微小粒子を精製する洗浄手順
この実施例は、微小粒子の最終的な単離及び精製を例示する。
【0117】
予め単離した粒子100mlを、NaHPO/ NaHPO緩衝剤(0.15M、400ml)で再懸濁し、1/2時間穏やかに攪拌した。該懸濁物を5℃で2時間立てて置き、固形化した油滴を抜き取った。そして溶液をメッシュでろ過し、更に50mlの緩衝剤で2回洗浄した。ドリップ乾燥の後、粒子を特定した(図5)。
【0118】
実施例9.微小粒子の流動学的特性の調査
この実施例は、粒子の流動学的研究の実行を例示する。粒子試料を、50mm2°コーン/プレートジオメトリーの使用により、Anton Paar rheometer (Anton Paar GmbH, Graz, Austria, Physica MCR 301 , Software: Rheoplus)上で解析した。第一に、材料の粘弾特性G’(貯蔵モジュール)及びG’’(損失モジュール)の線形範囲を、可変ひずみ(variable strain)γを用いた振幅掃引により決定される。第二に、周波数掃引が作成され、前記粘弾性値、G’及びG’’の値に基づいて、tanδが、弱/強ゲル挙動における値として計算され得る。
【0119】
実施例10.Texture Analyzerによる注射針通過可能性(syringeability)実験の調査
この実施例は、所定の速度で注入するのに掛かる力の、前記試料の均一性の関数としての調査の実行を例証する。粒子試料を、27Gx1/2、30Gx1/2のいずれかの針を取り付けたシリンジに移し、これをテクスチャーアナライザー(Stable Micro Systems, Surrey, UK, TA.XT Plus, Software: Texture Component 32)の試料リグにセットする。該試験は、12.5mm/minの速度で所定の距離を通して実行される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋ヒアルロン酸微小ビーズを生産する方法であり、以下の;
(a)ヒアルロン酸又はその塩を含むアルカリ水溶液を、架橋剤を含む溶液と混合し、
(b)有機相又は油相中で前記工程(a)の混合した溶液から所望のサイズを有する微小液滴を形成して、有機中水又は油中水(W/O)乳濁物を形成し、
(c)該W/O乳濁物を継続的に攪拌することにより、ヒアルロン酸とジビニルスルホンとの反応を引き起こし、架橋ヒアルロン酸微小ビーズを生じさせ、そして
(d)該架橋ヒアルロン酸微小ビーズを精製する
工程を含む、前記方法。
【請求項2】
前記ヒアルロン酸又はその塩が、バチルス(Bacillus)宿主細胞中で組換え的に生産される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒアルロン酸又はその塩の平均分子量の値が100〜3000kDaであり、好ましくは500〜2000kDaであり、そして最も好ましくは700〜1800kDaである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アルカリ溶液が、溶解したヒアルロン酸又はその塩を、0.1%〜40%(w/v)の濃度で含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記アルカリ溶液が、溶解した水酸化ナトリウムを、0.001〜2.0Mの濃度で含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記架橋剤がジビニルスルホン(DVS)である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
DVSが、工程(a)の混合溶液中に、HA/DVS(乾燥重量)の重量比が1:1〜100:1の比率となるように、好ましくはHA/DVS(乾燥重量)が2:1〜50:1となるように含まれる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ヒアルロン酸及びジビニルスルホンの反応が、5℃〜100℃の温度範囲内で、好ましくは15℃〜50℃の範囲内で、より好ましくは20℃〜30℃の範囲内で行われる、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記工程(c)における攪拌が、1〜180分間継続される、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記工程(b)の微小液滴の平均直径が、約1ナノメートル〜1ミリメートルの範囲内である、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記精製工程が、13,000ダルトン未満のサイズの分子が自由に拡散する透析膜を使用して、脱イオン水に対して前記架橋微小ビーズを透析することを含む、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記精製工程が、前記架橋ビーズのpHを、緩衝剤又は酸を用いて中和することを含む、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記緩衝剤のpHの値が2.0〜8.0の範囲内、好ましくは5.0〜7.5の範囲内である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記緩衝剤が、精製工程の後に、前記架橋微小ビーズのpHの値を5.0〜7.5にするpHの値を示す緩衝剤を含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記緩衝剤が、リン酸緩衝剤及び/又は生理食塩水緩衝剤を含む、請求項12〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記架橋微小ビーズが、水、並びに/又は、pHの値が2.0〜8.0の範囲内、好ましくは5.0〜7.5の範囲内であるリン酸及び/若しくは食塩水緩衝剤で少なくとも1回洗浄される、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記架橋反応の前又は後のいずれかに、前記架橋微小ビーズに、1つの成分として、保存料が添加される、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
ジビニルスルホンにより架橋された、ヒアルロン酸、又はその塩を含む微小ビーズ。
【請求項19】
平均の直径の値が1ナノメートル〜1ミリメートルの範囲内である、前記微小ビーズ。
【請求項20】
前記ヒアルロン酸又はその塩が、
300,000〜3,000,000の範囲内;好ましくは400,000〜2,500,000の範囲内;より好ましくは500,000〜2,000,000の範囲内;そして最も好ましくは600,000〜1,800,000の範囲内の分子量である、請求項18又は19に記載の微小ビーズ。
【請求項21】
前記ヒアルロン酸又はその塩が、平均分子量が小さいもので、10,000〜800,000Daの範囲内;好ましくは20,000〜600,000Daの範囲内;より好ましくは30,000〜500,000Daの範囲内;なおもより好ましくは40,000〜400,000Daの範囲内;そして最も好ましくは50,000〜300,000Daの範囲内である、請求項18又は19に記載の微小ビーズ。
【請求項22】
ヒアルロン酸の無機塩、好ましくはヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸アンモニウム、ヒアルロン酸カルシウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸亜鉛、又はヒアルロン酸コバルトである、請求項18〜21のいずれかに記載の微小ビーズ。
【請求項23】
有効成分も含む、請求項18〜22のいずれかに記載の微小ビーズ。
【請求項24】
前記有効成分が、薬理的活性物質である、請求項23に記載の微小ビーズ。
【請求項25】
水溶性賦形剤、好ましくはラクトースも含む、請求項18〜24のいずれかに記載の微小ビーズ。
【請求項26】
保存料も含む、請求項18〜25のいずれかに記載の微小ビーズ。
【請求項27】
請求項18〜26のいずれかにおいて定義される微小ビーズ、及び好ましくは薬理的活性物質である有効成分を含む組成物。
【請求項28】
水溶性賦形剤、好ましくはラクトースも含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
医薬として許容される担体、賦形剤又は希釈剤と共に、有効な量の請求項18〜26のいずれかにおいて定義される微小ビーズを含む医薬組成物。
【請求項30】
薬理的有効成分と共に、有効な量の請求項18〜26のいずれかにおいて定義される微小ビーズを含む医薬組成物。
【請求項31】
請求項18〜26のいずれかにおいて定義される微小ビーズ、又は請求項27〜30のいずれかにおいて定義される組成物を含む、衛生、医療、又は手術用品であり;好ましくはおむつ、生理用ナプキン、手術用スポンジ、創傷治癒用スポンジ、若しくは絆創膏の一部、又は他の創傷包帯材料である、前記用品。
【請求項32】
請求項18〜26のいずれかに定義される微小ビーズ、又は請求項27〜30のいずれかに定義される組成物を含む、薬剤カプセル又は微小カプセル。
【請求項33】
請求項18〜26のいずれかに定義される微小ビーズ、又は請求項27〜30のいずれかに定義される組成物の、変形性関節症治療用の薬剤を生産するための使用。
【請求項34】
請求項18〜26のいずれかに定義される微小ビーズ、又は請求項27〜30のいずれかに定義される組成物の、眼科的処置用の薬剤を生産するための使用。
【請求項35】
請求項18〜26のいずれかに定義される微小ビーズ、又は請求項27〜30のいずれかに定義される組成物の、癌の治療用の薬剤を生産するための使用。
【請求項36】
請求項18〜26のいずれかに定義される微小ビーズ、又は請求項27〜30のいずれかに定義される組成物の、創傷治療用の薬剤を生産するための使用。
【請求項37】
請求項18〜26のいずれかに定義される微小ビーズ、又は請求項27〜30のいずれかに定義される組成物の、血管新生用の薬剤を生産するための使用。
【請求項38】
請求項18〜26のいずれかに定義される微小ビーズ、又は請求項27〜30のいずれかに定義される組成物の、保湿剤を生産するための使用。
【請求項39】
請求項18〜26のいずれかに定義される微小ビーズ、又は請求項27〜30のいずれかに定義される組成物の、脱毛又は禿治療用の薬剤を生産するための使用。
【請求項40】
請求項18〜26のいずれかに定義される微小ビーズ、又は請求項27〜30のいずれかに定義される組成物の、皮膚充填剤(dermal filler)を生産するための使用。
【請求項41】
請求項18〜26のいずれかに定義される微小ビーズ、又は請求項27〜30のいずれかに定義される組成物の、組織増加(tissue augmentation)用の薬剤を生産するための使用。
【請求項42】
請求項18〜26のいずれかに定義される微小ビーズ、又は請求項27〜30のいずれかに定義される組成物の、薬物送達ビヒクルを生産するための使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−506734(P2011−506734A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538766(P2010−538766)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/068050
【国際公開番号】WO2009/077620
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(509198343)ノボザイムス バイオファーマ デーコー アクティーゼルスカブ (11)
【Fターム(参考)】