説明

乳酸菌及びこれを用いた発酵乳製品、医薬又は飲食品

【課題】
免疫バランスの正常化のために、IL‐17の分泌を抑制する方向で作用するとともに予期しない副次作用を惹起することなくアレルギー症状、アレルギー疾患乃至炎症性疾患の予防又は改善効果を有する乳酸菌及びこれを用いた発酵乳製品、医薬又は飲食品を提供する。
【解決手段】
マウス脾臓細胞のTGF−β+IL−6刺激による試験と評価方法に従って試験を繰り返してIL−17の蛍光強度値が極めて低く、IFN−γ/IL−4が大きな乳酸菌Streptococcus thermophilusを見出した。アレルギー症状、アレルギー疾患乃至炎症性疾患の治療及び改善を期待する上で、Th17を誘導することなく免疫バランスを適正の状態に改善することが期待される。乳酸菌として発酵乳製品に使用できるとともに該乳酸菌を含有することによって医薬品や飲食品に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫バランスを正常化する機能を有することによって、アレルギー症状、アレルギー疾患乃至炎症性疾患の予防又は改善効果を有する乳酸菌及びこれを用いた発酵乳製品、医薬又は飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の乳酸菌Streptococcus thermophilusは、例えば発酵乳製造に際してそのスターターとして使用することが一般に知られているが、下記特許文献1によれば、Streptococcus thermophilus OH1(AHU1838)と命名された乳酸菌が、免疫バランスを正常化する機能を有して、アレルギー患者のTh2側に偏向した免疫バランスを適正状態に改善することによって、アレルギー疾患の治療及び改善効果が期待されるとする。
【0003】
即ち特許文献1は、多数の文献を引用し、ヘルパーT細胞はタイプ1ヘルパーT細胞(Th1)及びタイプ2ヘルパーT細胞(Th2)の2つのサブタイプに分かれていること、これらが種々の免疫反応に関わる疾病をコントロールしていると考えられてきたこと、Th1とTh2は、相互機能的にバランスをとっており、このバランスが保たれていれば健康な状態にあるが、バランスが崩れると種々の疾患の発症及び進展につながると推測されていること、即ち、適正な状態のTh1/Th2バランスよりもTh1側に偏向すると、糖尿病、肝障害、気道炎症、宿主対移植片反応、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、動脈硬化、乾癬、腎炎等が発症し、Th2側に偏向すると、がん、免疫不全、喘息、皮膚炎、アレルギー疾患、腎炎、感染症等が発症するものと考えられてきたことを示して、アレルギー患者のTh2側に偏向した免疫バランスを適正の状態に改善してくれることが示唆され、これらアレルギー疾患の治療及び改善について効果が期待される乳酸菌として、上記命名のものが有用であるとし、該乳酸菌乃至これを有効成分として用いた飲食物を提案している。
【0004】
一方、本発明者らは、非特許文献1において、ビフィズス菌Bifidobacterium infantis JCM 1222が、Th−17抑制効果を呈することを報告している。これによれば、乳酸菌Lactobacillusについて2菌種及び上記ビフィズス菌3菌種のテスト結果では、2菌種の乳酸菌にはTh−17抑制効果が認められなかったが、上記ビフィズス菌に特にその抑制効果が認められたとする。
【0005】
【特許文献1】特開2008−61512号公報
【非特許文献1】日本農芸化学会2008年度大会講演要旨集 絹田ゆき他「乳酸菌によるIL−17産生抑制」(平成20年3月5日発行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の上記Streptococcus thermophilus OH1(AHU1838)と命名された乳酸菌は、一応、免疫バランスを正常化し、Th2側に偏向した免疫バランスを適正状態に改善することによって、上記アレルギー疾患の治療及び改善効果を呈する可能性が認められるが、しかし近年、Th1に分類されてきた細胞に働きの違う細胞が含まれていることが明らかとなり、タイプ17ヘルパーT細胞(Th17)と命名されるに至っており、このTh17が分泌するインターロイキン17、即ちIL‐17は、激しい炎症を引きおこすサイトカインであり、炎症性腸疾患患者の腸組織や血清中で濃度が高まっていることが報告されており、従って、アレルギー症状、アレルギー疾患乃至炎症性疾患の治療及び改善を期待する上で、Th17を誘導することなく免疫バランスを適正の状態に改善する必要があるところ、上記乳酸菌にこのIL−17の産生抑制効果があるか否かが明らかではない。
【0007】
また非特許文献1の上記Bifidobacterium infantis JCM 1222は、ビフィズス菌であるところ、ビフィズス菌は、一般に酵母エキスなどの栄養素を添加しないと乳を発酵することができず、また酸素がある条件下では死滅していくため発酵乳や発酵乳を含有する飲食品等の製品製造に用いるには障害が多いという問題点が残されている。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、その解決課題とするところは、Th17が分泌するIL−17の産生抑制効果を有することにより、予期しない副次作用を惹起することなく、アレルギー症状、アレルギー疾患乃至炎症性疾患の予防又は改善効果を与えることのできる乳酸菌を提供するにあり、また該乳酸菌を用いた発酵乳及びこれを用いた発酵乳製品、医薬又は飲食品を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明者らは、上記課題に沿って鋭意研究したところ、ストレプトコッカス サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)種の各種菌株を、身体全体の免疫バランスを正常化する作用について詳細に検討し、免疫バランスの改善に関してより効果の高い乳酸菌を選択することによって、ある種の乳酸菌Streptococcus thermophilusが、マウス脾臓細胞を、1×10個/mLで1×10CFU/mLの濃度の乳酸菌を熱殺菌した乳酸菌試料と1mLの培地中で72時間共培養し、上清中のIL‐17、インターフェロンγ(IFN‐γ)及びインターロイキン4(IL‐4)の産生量について、IL−17の産生抑制効果を呈するとともにIL−4に対して大きなIFN−γの産生促進効果を呈することから、該乳酸菌Streptococcus thermophilusが、IFN−γ増強による抗アレルギー作用を発揮し得るとともにIL−17を抑制することで副次作用を惹起する可能性が極めて少なく、アレルギー症状、アレルギー疾患乃至炎症性疾患の予防乃至改善効果を期待し得る事実を見出して本発明をするに至ったものであって、即ち請求項1に記載の発明を、マウス脾臓細胞を、1×10個/mLで1×10CFU/mLの濃度の乳酸菌を熱殺菌した乳酸菌試料と1mLの培地中で72時間共培養し、上清中のインターロイキン17(IL‐17)、インターフェロンγ(IFN‐γ)及びインターロイキン4(IL‐4)の産生量を測定した場合、IL‐17の産生量が少ない乳酸菌Streptococcus thermophilusとしたものである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、出願人は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託予定の、出願人においてStreptococcus thermophilus NO.28と命名した乳酸菌が、特に上記IL‐17、IL−4の産生抑制効果を顕著に呈するとともにIFN−γの産生促進効果を顕著に呈することから、これを、上記Streptococcus thermophilusがStreptococcus thermophilus NO.28(出願人命名)であることを特徴とする請求項1に記載の乳酸菌Streptococcus thermophilusとしたものである。
【0011】
請求項3に記載の発明は、該乳酸菌を、常法に従って発酵乳製品のスターターとして使用することによって、上記アレルギー症状、アレルギー疾患乃至炎症性疾患の予防乃至改善効果を期待し得るヨーグルト等の発酵乳製品とすることが可能となるから、該乳酸菌を用いた発酵乳製品を提供するように、これを、請求項1又は2に記載の乳酸菌Streptococcus thermophilusによって発酵した発酵乳製品としたものである。
【0012】
請求項4に記載の発明は、該乳酸菌を含有することによって、同じく上記アレルギー症状、アレルギー疾患乃至炎症性疾患の予防乃至改善効果を期待し得る医薬又は飲食品とすることが可能となるから、該乳酸菌を用いた医薬又は飲食品を提供するように、これを、請求項1又は2に記載の乳酸菌Streptococcus thermophilusを、IL−17産生抑制の有効成分として含有する医薬又は飲食品としたものである。
【0013】
請求項5に記載の発明は、上記発酵乳製品を含有することによって、同じく上記アレルギー症状、アレルギー疾患乃至炎症性疾患の予防乃至改善効果を期待し得る医薬又は飲食品とすることが可能となるから、該発酵乳を用いた医薬又は飲食品を提供するように、これを、請求項3に記載の発酵乳製品を、IL−17産生抑制の有効成分として含有する医薬又は飲食品としたものである。
【0014】
本発明はこれらをそれぞれ発明の要旨として上記課題解決の手段としたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は以上のとおりに構成したから、請求項1に記載の発明は、IL−17の産生抑制効果を呈するとともにIL−4に対して大きなIFN−γの産生促進効果を呈することから、IFN−γ増強による抗アレルギー作用を発揮し得るとともにIL−17を抑制することで副次作用を惹起する可能性が極めて少なく、アレルギー症状、アレルギー疾患乃至炎症性疾患の予防乃至改善効果を期待し得る乳酸菌Streptococcus thermophilusを提供できる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、特にIL‐17の産生抑制効果を顕著に呈するとともにIFN−γの産生促進効果を顕著に呈する乳酸菌として、出願人命名にして寄託予定の乳酸菌Streptococcus thermophilus NO.28を提供することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、該乳酸菌を、常法に従って発酵乳製品のスターターとして用いて、上記アレルギー症状、アレルギー疾患乃至炎症性疾患の予防乃至改善効果を期待し得るヨーグルト等の発酵乳製品を提供することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、該乳酸菌を用いて、これを含有することによって、同じくアレルギー症状、アレルギー疾患乃至炎症性疾患の予防乃至改善効果を期待し得る医薬又は飲食品を提供することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、上記発酵乳製品を用いて、これを含有することによって、同じくアレルギー症状、アレルギー疾患乃至炎症性疾患の予防乃至改善効果を期待し得る医薬又は飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下本発明を更に具体的に説明すれば、本発明の乳酸菌は、Streptococcus thermophilusであり、該乳酸菌Streptococcus thermophilusは、マウス脾臓細胞を、1×10個/mLで1×10CFU/mLの濃度の乳酸菌を熱殺菌した乳酸菌試料と1mLの培地中で72時間共培養し、上清中のインターロイキン17(IL‐17)、インターフェロンγ(IFN‐γ)及びインターロイキン4(IL‐4)の産生量を測定した場合、IL‐17の産生量が少ない、即ちIL−17産生抑制効果を備えたものであり、上記寄託予定のStreptococcus thermophilus No.28を、特に好適とするものである。
【0021】
これら乳酸菌Streptococcus thermophilus 乃至同N0.28は、例えば栃木県那須地区採取の生乳から常法に従って分離した菌株中から、後述のマウス脾臓細胞刺激試験と評価方法に従って発明者らが見出した乳酸菌であり、該乳酸菌は、IL−17の産生抑制効果を呈するとともにIL−4に対して大きなIFN−γの産生促進効果を呈し、IFN−γ増強による抗アレルギー作用を発揮し得るものとして、Th17を誘導することなく免疫バランスを適正の状態に改善することが可能となり、特にStreptococcus thermophilus NO.28は、上記ビフィズス菌Bifidobacterium infantis JCM 1222より更に高いIL−17の産生抑制効果を呈して、好ましい免疫バランスを得ることが可能となる。
【0022】
該乳酸菌Streptococcus thermophilusを得ることは、下記の方法に準じて行うことによって可能となるところ、本発明者らは、乳酸菌Streptococcus thermophilus200株について、以下のマウス脾臓細胞刺激試験と評価方法に従って試験を繰り返して上記活性を有するStreptococcus thermophilusを選択したので、これを示すと次の通りである。
【0023】
菌株は、グリコ乳業株式会社保有のStreptococcus thermophilusを用いた。すべての菌株を、M17培地(Becton, Dickinson Co, Sparks, Md, USA)を用いて37℃で17〜65時間静置培養した。これらの培養物は、3,000×g、10分、4℃の遠心分離によって回収し、蒸留水で3回洗浄した。菌体は、100℃、50分間の熱処理によって殺菌し、凍結乾燥して保存した。
【0024】
マウス脾臓細胞刺激試験は、6週齢雌性BALB/cマウスの脾臓細胞を10%(V/V)熱不活性化ウシ胎児血清(FBS)、10μM 2‐メルカプトエタノール、10mM HEPES、ペニシリン及びストレプトマイシンを加えた1mlのRPMI‐1640培地に懸濁し、該培地を適宜希釈し10個/mlとした脾臓細胞懸濁液に、2ngのTGF‐β、20ngのIL‐6及び加熱殺菌した乳酸菌(加熱殺菌前の菌数10CFU)を培地に加え、37℃で72時間培養した。
【0025】
培養後、上清中のIFN‐γ、IL‐4、IL‐17をBio‐Plex Suspension Array System(BioRad Laboratories社製)を用いたマイクロビーズ法によって検出し、蛍光強度値を決定した。TGF‐β、IL‐6及び乳酸菌を加えなかったものを無刺激対照、TGF‐β及びIL‐6は加えるが乳酸菌を加えなかったものを陰性対照とした。
【0026】
その評価方法は、上記の試験の結果に基づいて、免疫系の細胞に対してIL‐17産生を抑制する性質が高いこと及びIFNγ産生を誘導する性質が高く且つIL‐4産生が低く保たれるものであることに着目し、IL−17のサイトカイン濃度、IFN−γ、IL−4の蛍光強度値を測定し、Th1サイトカインのIFN−γとTh2サイトカインのIL−4の比率を算出した。
【0027】
本発明者らが行った乳酸菌Streptococcus thermophilus200株についての結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
このうちIL−17レベル(IL−17蛍光強度値が10,500以下)が小さいもの、INF‐γの蛍光強度値/IL‐4の蛍光強度値の比(INF‐γ/IL‐4が350以上)が大きいものをスクリーニングしてそれぞれ上位10株を選択した。上位10株のIL−17レベルを示すと、No.8は2548.0、No.10は6879.0、No.11は10477.5、No.15は3877.0、No.18は4118.0、No.19は4486.0、No.27は10206.0、No.28は1298.5、No.29は7808.0、No.31は10445.0であり、上位10株のINF‐γ/IL‐4を示すと、No.8は525.6、No.10は480.5、No.11は538.4、No.15は353.1、No.16は473.9、No.18は496.0、No.19は599.3、No.28は644.0、No.29は529.8、No.35は354.4であった。なお無刺激対照のIL‐17の蛍光強度値及びIFN‐γ/IL‐4は、それぞれ1427、10.5であった。また、陰性対照のIL‐17の蛍光強度値及びIFN‐γ/IL‐4は、それぞれ32706、14.7であった。各上位10株のIL‐17の蛍光強度値のグラフ(コントロールと対比)を図1に、INF‐γ/IL‐4のグラフ(同)を図2に示す。
【0030】
IL−17の蛍光強度値及びIFN‐γ/IL‐4が共に上位10株に入った乳酸菌Streptococcus thermophilusは、8、10、11、15、18、19、29の7株であり、これら7株は、IL−17の蛍光強度値が低いことによって、IL−17の産生抑制効果が顕著に認められるとともにINF‐γ/IL‐4を大きく亢進することによって、IFN−γの産生促進効果が顕著に認められるものであった。これらの中でも、乳酸菌Streptococcus thermophilus No.28の蛍光強度値は1298.0、蛍光強度比は644.0であり、該乳酸菌Streptococcus thermophilusのIL−17の産生抑制、INF‐γの産生促進効果は、無刺激対照と同程度に格別顕著であった。
【0031】
上記結果に基づき、乳酸菌Streptococcus thermophilus NO.28について、更にIL−17の産生抑制効果、即ちTh17分化抑制活性の再現性を確認するために、ELISAで再アッセイを行った。その際、同じくTh17分化抑制活性が確認されているビフィズス菌Bifidobacterium infantis JCM 1222とともにアッセイを行った。
【0032】
その結果を図3に示す。乳酸菌Streptococcus thermophilus NO.28及びビフィズス菌Bifidobacterium infantis JCM 1222はともにIL−17の産生を抑制するものであったが、乳酸菌Streptococcus thermophilus No.28は、ビフィズス菌Bifidobacterium infantis JCM 1222より、更に強力なTh17分化抑制活性があることが認められた。
【0033】
乳酸菌Streptococcus thermophilusによるIL−17の蛍光強度値が小さいことは、IL−17の産生抑制効果が大きい、即ちTh17分化抑制活性が強力であること、INF‐γ/IL‐4が大きいことは、該INF‐γの産生促進効果が大きい、即ち同じくTh17分化抑制活性が強力であること、IL−17の産生抑制効果が大きく、従ってTh17分化抑制活性が強力であることは、Th17を誘導することなく免疫バランスを適正の状態に改善するに有効であり、またINF−γの産生促進効果が大きいことは、その抗アレルギー作用が認められ、従って該乳酸菌Streptococcus thermophilusは、アレルギー症状、アレルギー疾患乃至炎症性疾患の予防又は改善効果を与えると認められる。このときIL−17の蛍光強度値は上記10500以下、概ね10000程度、INF‐γ/IL‐4は350以上のものについては、これらアレルギー症状、アレルギー疾患乃至炎症性疾患の予防又は改善効果を期待することができるから、上記スクリーニングにより双方をクリヤーした上記7株が、上記課題に沿う有効な乳酸菌Streptococcus thermophilusであるとすることができる。またこれら乳酸菌Streptococcus thermophilusは、そのNo.28を含めて、発酵乳のスターターとして用いられてきた実績があり、またIFN−γ増強による抗アレルギー作用を発揮し、IL−17を抑制することで副次作用を惹起するものとは認められず、またビフィズス菌のように、例えば乳発酵に酵母エキスなどの栄養素を添加する必要がなく、発酵乳や発酵乳を含有する飲食品等の製品製造に用いるに好適であると認められる。
【0034】
これら乳酸菌Streptococcus thermophilusは、その菌株として、これを冷凍乾燥した乳酸菌粉末乃至その抽出物、破砕物等の加工品として市場に供給すること、該乳酸菌Streptococcus thermophilusによって発酵した発酵乳製品とすること、該Streptococcus thermophilusを、IL−17産生抑制の有効成分として含有する医薬又は飲食品とすること、上記発酵乳製品を、IL−17産生抑制の有効成分として含有する医薬又は飲食品とすることが可能である。このように発酵乳製品とし、医薬又は飲食品とすることによって、簡易に摂取してアレルギー症状、アレルギー疾患乃至炎症性疾患の予防又は改善効果を期待し得る商品とすることができる。
【0035】
発酵乳製品は、上記乳酸菌Streptococcus thermophilusをスターターとして、常法に従って乳等を発酵してその製造を行えばよく、このとき発酵乳製品は、ヨーグルト、ヨーグルト飲料、発酵乳を加工した乳酸菌飲料等とすることができる。
【0036】
医薬又は飲食品は、上記乳酸菌Streptococcus thermophilusを、常法に従って医薬ベース、飲食品ベースに添加して、その製造を行えばよく、このとき医薬は、単独の有効成分又は他の有効成分と同時の有効成分とすること、錠剤、液剤、粉剤乃至カプセル等の形態のものとすることができ、また飲食品は、ジュース、茶等の清涼飲料、ゲル化乃至固形の菓子、レトルト食品等の如くに各種の飲料乃至食品として、各種の形態のものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】IL−17の蛍光強度値を示すグラフである。
【図2】IFN−γ/IL−4を示すグラフである。
【図3】ELISA結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウス脾臓細胞を、1×10個/mLで1×10CFU/mLの濃度の乳酸菌を熱殺菌した乳酸菌試料と1mLの培地中で72時間共培養し、上清中のインターロイキン17(IL‐17)、インターフェロンγ(IFN‐γ)及びインターロイキン4(IL‐4)の産生量を測定した場合、IL‐17の産生量が少ない乳酸菌Streptococcus thermophilus。
【請求項2】
上記Streptococcus thermophilusがStreptococcus thermophilus No.28(出願人命名)であることを特徴とする請求項1に記載の乳酸菌Streptococcus thermophilus。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の乳酸菌Streptococcus thermophilusによって発酵した発酵乳製品。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の乳酸菌Streptococcus thermophilusを、IL−17産生抑制の有効成分として含有する医薬又は飲食品。
【請求項5】
請求項3に記載の発酵乳製品を、IL−17産生抑制の有効成分として含有する医薬又は飲食品。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−115126(P2010−115126A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289284(P2008−289284)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(390001270)グリコ乳業株式会社 (29)
【Fターム(参考)】