説明

乾式洗浄方法および装置

【課題】洗浄対象物に固着した付着物を効率よく洗浄できる洗浄方法、装置、洗浄媒体を提供する。
【解決手段】少なくとも片方の面に研磨砥粒が配置された可撓性を有する薄片状の洗浄媒体を洗浄対象物方向に移動させて洗浄対象物に接触させ、研磨砥粒が配置された面が洗浄対象物に接触したときのすべり動作により洗浄対象物に付着した付着物を除去するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄対象物に付着した膜状付着物のような固着物の除去、または洗浄対象物表面の研磨を洗浄媒体を用いて行なう洗浄方法、洗浄装置および洗浄媒体に関するもので、例えば、電子写真装置(複写機やレーザプリンタ等)をリユース、リサイクルする場合においてその部品に熱で固着したトナーや、高速機に用いられた金属製のギアに生じた錆などを除去するのに適した洗浄方法、洗浄装置および洗浄媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、ファクシミリ、プリンタ等については、資源循環型社会実現のため、使用済みの製品またはユニットをユーザから回収後に分解・清掃・再組立して、部品として再使用したり、材料に加工して再利用したりするリユース、リサイクルが積極的に行われている。
製品のリユースにおいては、トナーや紙粉などの粉体が付着して汚れている部品に加え、熱により粉体が厚く固着した部品や、錆が発生した部品等付着物が付着した部品が存在する。
このような部品を再使用するためには単純な洗浄方法では困難であり、従来においては剥離洗浄処理や、ブラスト処理、研磨処理等により付着物の除去を行って再使用していた。
【0003】
剥離洗浄処理は、剥離液を用いて固着物を膨潤させ除去するものである。
【0004】
ブラスト処理は、 研磨砥粒を圧縮空気等の圧縮気体と共に被処理製品の表面に噴射するものであり,研磨紙・研磨布,砥石等による研磨に比較して複雑な形状の被加工物等に対しても比較的容易に適用することができることから,表面のクリーニング,さびの除去、各種製品のバリ取り等,各種の用途に広く利用されている。
さらに、加工後の被処理製品の表面を梨地化することなく鏡面や平滑面に加工するために,弾性研磨砥粒を被処理製品の表面に対して傾斜した入射角で投射するブラスト処理も提案されており,弾性研磨砥粒が衝突後に被処理製品の表面を滑動することから、これにより被処理製品の表面を平坦面や鏡面に加工することができる。
【0005】
研磨処理は、研磨紙や砥石等を用いて洗浄対象物を研磨して付着物の除去を行うものである。
研磨紙としては、研磨砥粒を結合材によって紙またはプラスチックフィルムのような基材に固着したものがあり、従来からサンドペーパーまたはラッピングテープとしてよく使用されている。
このラッピングテープを用いる場合に、特許文献1に示されるように、ラッピングテープの背後から圧縮空気を吹き付けてラッピング効果を向上させる技術がある。
【0006】
更に、特許文献2から4に示すように、本出願人は、洗浄媒体として可撓性の薄片状のものを用い、この洗浄媒体を気体流により洗浄対象物方向へ移動させて洗浄対象物に付着している付着物を洗浄媒体の接触により除去する洗浄技術を提案している。
この技術においては可撓性の薄片状洗浄媒体を用いることで、洗浄媒体を気体流により洗浄対象物方向へ移動させることができ、洗浄対象物の広い面積にわたる範囲に、高速に作用して洗浄できるとともに洗浄対象物の凹凸にも入り込んでこれを洗浄することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−212856号公報
【特許文献2】特開2007−245079号公報
【特許文献3】特開2008−149253号公報
【特許文献4】特開2009−45613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、剥離液を用いる剥離洗浄処理においては、乾燥や廃液処理の手間が生じ、再生コストを低くおさえることは困難であった。
【0009】
また、ブラスト処理では処理後のブラスト材や砥粒の洗浄と乾燥工程が必要となり、洗浄廃液の処理および洗浄後の乾燥処理のエネルギー消費や環境負荷が大きく再生コストを低くおさえることは困難であった。
弾性体研磨砥粒を用いるブラスト処理においては更に、微細な凹凸に対応するために粒子を小さくする必要があり、小さい粒子は再利用が困難でありランニングコストが増大するという課題もあった。
【0010】
研磨紙や砥石を用いた研磨処理では、研磨部材はある程度の大きさのものであってこれを所定位置に配置して用いるものであり、また研磨部材の研磨面の形状の変化にも限度があり、したがって洗浄対象物として単純な形状のものについてしか対応できず、たとえばギアなど凹凸を持つ部品に生じた錆などを除去するのは困難であった。
なお、特許文献1に示される技術は単にラッピング効果を向上させるためのものであり、上記のような研磨処理の課題はこの技術おいても依然として存在しているものである。
【0011】
特許文献2から4に示される薄片状の洗浄媒体を用いた洗浄技術においては、洗浄対象物の付着物の除去は主には洗浄媒体によるそぎ落としまたははたき落とし等によるものであり、洗浄対象物に強固に固着した固着物の除去については限界があるものであった。
【0012】
本発明は、このような従来の技術における課題を解決するためのもので、洗浄対象物表面に強固に固着した固着物または錆のような表面に形成された物質に対して、効率よく洗浄でき、かつ洗浄対象物が複雑な形状の部品であっても、対応できる洗浄方法、装置、媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための手段である本発明の特徴は次の通りである。
本発明の洗浄方法は、複数の可撓性を有する薄片状の洗浄媒体を気体流により洗浄対象物方向へ移動させ、洗浄媒体を洗浄対象物に接触させて洗浄対象物に付着した付着物を除去するとともに、この洗浄対象物から除去された付着物を回収する洗浄方法であって、
洗浄媒体の少なくとも片方の面には研磨砥粒が配置され、この研磨砥粒が配置された面が前記洗浄対象物に接触したときにすべり動作が行われて前記洗浄対象物に付着した付着物が除去されることを特徴する。
【0014】
本発明の洗浄方法は、複数の可撓性を有する薄片状の洗浄媒体を気体流により洗浄対象物方向へ移動させ、洗浄媒体を洗浄対象物に接触させて洗浄対象物に付着した付着物を除去するとともに、この洗浄対象物から除去された付着物を回収する洗浄方法であって、
洗浄媒体の少なくとも片方の面には研磨砥粒が配置され、前記洗浄媒体が前記洗浄対象物に衝突して前記洗浄対象物に付着した付着物が除去されるとともに、前記研磨砥粒が配置された面が前記洗浄対象物に接触したときにすべり動作が行われて前期洗浄対象物に付着した付着物が除去されることを特徴する。
【0015】
本発明の洗浄装置は、複数の可撓性を有する薄片状の洗浄媒体を収容する空間を形成する洗浄槽と、洗浄対象物を前記洗浄槽内において保持する洗浄対象物保持手段と前記洗浄槽内において前記洗浄媒体を気体流により前記洗浄対象物方向へ移動させ、前記洗浄媒体を前記洗浄対象物に接触させる気体流発生手段と、前記洗浄対象物から除去された付着物を気体の移動により回収する付着物回収手段を有する洗浄装置であって、
前記洗浄媒体の少なくとも片方の面には研磨砥粒が配置され、この研磨砥粒が配置された面が前記洗浄対象物に接触したときにすべり動作が行われて前記洗浄対象物に付着した付着物が除去されることを特徴する。
【0016】
本発明の洗浄装置は、複数の可撓性を有する薄片状の洗浄媒体を収容する空間を形成する洗浄槽と、洗浄対象物を前記洗浄槽内において保持する洗浄対象物保持手段と
前記洗浄槽内において前記洗浄媒体を気体流により前記洗浄対象物方向へ移動させ、前記洗浄媒体を前記洗浄対象物に接触させる気体流発生手段と、前記洗浄対象物から除去された付着物を気体の移動により回収する付着物回収手段を有する洗浄装置であって、
前記洗浄媒体の少なくとも片方の面には研磨砥粒が配置され、前記洗浄媒体が前記洗浄対象物に衝突して前記洗浄対象物に付着した付着物が除去されるとともに、前記研磨砥粒が配置された面が前記洗浄対象物に接触したときにすべり動作が行われて前記洗浄対象物に付着した付着物が除去されることを特徴する。
【0017】
本発明の洗浄方法は、複数の可撓性を有する薄片状の洗浄媒体を洗浄対象物方向へ移動させ、洗浄媒体を洗浄対象物に接触させて洗浄対象物に付着した付着物を除去するとともに、この洗浄対象物から除去された付着物を回収する洗浄方法であって、
洗浄媒体に面と平行な方向に回転力を加えて飛翔させることにより、この洗浄媒体を洗浄対象物方向へ移動させるものであり、前記洗浄媒体の少なくとも片方の面には研磨砥粒が配置され、この研磨砥粒が配置された面が前記洗浄対象物に接触したときにすべり動作が行われて前記洗浄対象物に付着した付着物が除去されるものであることを特徴とする。
【0018】
本発明の洗浄装置は、複数の可撓性を有する薄片状の洗浄媒体を収容する空間を形成する洗浄槽と、洗浄対象物を前記洗浄槽内において保持する洗浄対象物保持手段と
前記洗浄槽内において前記洗浄媒体に面と平行な方向に回転力を加えて飛翔させることにより、前記洗浄媒体を前記洗浄対象物方向へ移動させ、前記洗浄媒体を前記洗浄対象物に接触させる洗浄媒体投射手段と、前記洗浄対象物から除去された付着物を気体の移動により回収する付着物回収手段を有する洗浄装置であって、
前記洗浄媒体の少なくとも片方の面には研磨砥粒が配置され、この研磨砥粒が配置された面が前記洗浄対象物に接触したときにすべり動作が行われて前記洗浄対象物に付着した付着物が除去されることを特徴する。
【0019】
本発明の洗浄装置は、複数の可撓性を有する薄片状の洗浄媒体を収容する空間を形成する洗浄槽と、洗浄対象物を前記洗浄槽内において保持する洗浄対象物保持手段と
前記洗浄槽内において前記洗浄媒体に面と平行な方向に回転力を加えて飛翔させることにより、前記洗浄媒体を洗浄対象物方向へ移動させ、前記洗浄媒体を前記洗浄対象物に接触させる洗浄媒体投射手段と、前記洗浄対象物から除去された付着物を気体の移動により回収する付着物回収手段を有する洗浄装置であって、
前記洗浄媒体の少なくとも片方の面には研磨砥粒が配置され、前記洗浄媒体が前記洗浄対象物に衝突して前記洗浄対象物に付着した付着物が除去されるとともに、前記研磨砥粒が配置された面が前記洗浄対象物に接触したときにすべり動作が行われて前期洗浄対象物に付着した付着物が除去されることを特徴する。
【0020】
本発明の洗浄装置は更に、洗浄媒体を、気体流により洗浄対象物方向へ移動させた後に、洗浄槽内の移動の開始位置に戻す循環手段を有することを特徴とする。
本発明の洗浄装置は更に、循環手段が、気体流発生手段からの気体流の方向が洗浄槽の内壁により反転されることにより構成されることを特徴とする。
本発明の洗浄装置は更に、回収手段が、洗浄媒体を気体流により洗浄対象物方向へ移動させた後に洗浄槽内の移動の開始位置に戻す経路の途中に設けられていることを特徴とする。
【0021】
本発明の洗浄媒体は、可撓性を有する薄片状に形成され、空間内において移動し、空間内に配置された洗浄対象物に接触して洗浄対象物に付着した付着物を除去する洗浄媒体であって、少なくとも片方の面に研磨砥粒が配置されたことを特徴とする。
本発明の洗浄媒体は更に、少なくとも片方の面に結合材層が設けられ、研磨砥粒がこの結合材層に固定されていることを特徴とする。
本発明の洗浄媒体は更に、脆性破壊する素材であることを特徴とする。
本発明の洗浄媒体は更に、結合材層と結合材層が設けられている基材の接合力が、結合材。
層の凝集力より強いことを特徴とする。
本発明の洗浄媒体は更に、結合材層に切断部が形成されていることを特徴とする。
本発明の洗浄媒体は更に、蛇腹状であることを特徴とする。
本発明の洗浄媒体は更に、立体形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、少なくとも片方の面に研磨砥粒が配置された可撓性を有する薄片状の洗浄媒体を洗浄対象物に接触させて、洗浄対象物に付着した付着物を削り取るようにしたので、洗浄対象物表面に強固に固着した固着物または錆のような表面に形成された物質に対して、効率よく洗浄でき、かつ洗浄対象物が複雑な形状の部品であっても対応ができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】洗浄装置の実施形態を示す構成図
【図2】洗浄媒体の実施形態を示す構成図
【図3】洗浄媒体の動きの説明図
【図4】洗浄対象物の段差部分における洗浄媒体の動きの説明図
【図5】実験結果を示す図
【図6】洗浄媒体の他の実施形態(第2の実施形態)を示す構成図
【図7】従来の洗浄媒体の課題を示す構成図
【図8】洗浄媒体の他の実施形態(第3の実施形態)を示す構成図
【図9】従来の洗浄媒体の課題を示す構成図
【図10】洗浄媒体の他の実施形態(第4の実施形態)を示す構成図
【図11】他の実施形態(第4の実施形態)の洗浄媒体の動きの説明図
【図12】洗浄装置の他の実施形態(第2の実施形態)を示す構成図
【図13】洗浄媒体の他の実施形態(第5の実施形態)を示す構成図
【図14】洗浄媒体の他の実施形態(第6の実施形態)を示す構成図
【図15】洗浄媒体の他の実施形態(第7の実施形態)を示す構成図
【図16】洗浄媒体の他の実施形態(第8の実施形態)を示す構成図
【図17】洗浄媒体の他の実施形態(第9の実施形態)を示す構成図
【図18】洗浄装置の他の実施形態(第3の実施形態)における洗浄媒体に回転力を与えた場合の飛翔についての説明図
【図19】洗浄媒体を回転させながら飛翔させる方法の説明図
【図20】洗浄媒体を回転させながら飛翔させる投射装置の構成図
【図21】洗浄装置の他の実施形態(第3の実施形態)を示す構成図
【図22】洗浄装置の他の実施形態(第4の実施形態)を示す構成図
【図23】洗浄装置の他の実施形態(第4の実施形態)における投射装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態について説明する。
図1は洗浄装置の構成図であり、(A)は正面断面図、(B)は側面断面図を示している。図2は洗浄媒体の構成図である。
【0025】
図1において、1は洗浄媒体、2は洗浄対象物であり、3は洗浄槽、4は洗浄対象物保持手段、5は洗浄媒体加速手段、6は付着物回収手段である。
また、破線矢印は空気流を示している。
【0026】
洗浄槽3は横向き円筒状のものであり、内部に洗浄媒体1が飛翔する空間が形成されている。
洗浄槽3には、一方の円状側面の中央部分に洗浄対象物2を洗浄槽3内に出し入れする開口部31が形成され、下端に洗浄媒体加速手段5からの空気流を入れる開口部32が形成されている。周側面の下側左右には付着物を回収する分離部材61が形成されている。
【0027】
洗浄対象物保持手段4は、円柱状のアーム41とアーム41の先端に設けられた保持部材42を有しており、保持部材42に洗浄対象物2の端部が上下左右方向から挟まれて洗浄対象物2が洗浄槽3内に開口部31から出し入れされ、洗浄槽3内の中央位置にセットされる。
アーム41の外径は開口部31に内接する大きさであり、洗浄対象物2を保持して洗浄槽3内にセットしたときにアーム41により開口部31が閉じられて、洗浄槽3内の洗浄媒体1および空気流が開口部31から外部に漏れない構造となっている。
また、アーム41は開口部41に内接して回転できるように構成されており、これにより洗浄対象物2のセット角度を調整したり変更することができる。
【0028】
洗浄媒体加速手段5は、加速ノズル51と、これに接続されたコンプレッサ、制御弁及び送気管を備えた圧縮空気供給装置(図示せず)を有している。
加速ノズル51は、上向きの複数の噴出口が一列に設けられたもので、洗浄槽3の下端の開口部32にはめ込まれている。
この加速ノズル51に圧縮空気供給装置から圧縮空気が供給され噴出口から噴射されて、洗浄槽3内に洗浄媒体1を移動させる空気流が形成される。
【0029】
付着物回収手段6は、分離部材61、分離部材61の外側に配置された吸引ダクト62と、吸引ダクトに接続されたブロアーを備えた吸引装置(図示せず)を有している。
分離部材61は、気体、洗浄対象物2に付着していて除去された粉塵、粉体、膜状に固着した汚れ、錆等の付着物、または除去の際に生じる研磨粉は通過させるが、洗浄媒体1は通り抜けられない構造のものであり、小孔やスリットを多数有する例えば金網、プラスチック網、メッシュ、パンチメタルまたはスリット板等の多孔性部材が用いられる。
なお、洗浄媒体1については、付着物除去に寄与する大きさのものは分離部材61を通り抜けられないが、使用により破損して分離したものや小さくなったものは通り抜けることができる。
分離部材61は、洗浄槽3の周側面の下側左右に形成され、洗浄槽3の周側面の一部を構成している。
【0030】
吸引装置は吸引ダクト62を通じて、洗浄槽3内の空気、洗浄対象物2から除去されて飛散した付着物、洗浄媒体1に付着した付着物等を分離部材61で分離して吸引する。
分離したものや小さくなった洗浄媒体1についても同様に分離して吸引する。
加速ノズル51の噴出口から噴射された空気流は、洗浄槽3内を、洗浄対象物2がセットされた中央に向けて移動した後にこの吸引装置により吸収され、洗浄槽3内に空気流の経路が形成される。
【0031】
洗浄媒体の実施形態について説明する。
図2は洗浄媒体1の構成図である。この洗浄媒体1は図1に示した洗浄装置に用いられる場合には、洗浄槽3内に封入され、加速ノズル51の噴出口から噴射された空気流により洗浄槽3内を移動して洗浄対象物2に接触するもので、これにより洗浄対象物2の洗浄が行われる。なお、この洗浄媒体1は図1に示した洗浄装置に限らず用いることができる。
【0032】
図2において洗浄媒体1は、シート状の基材11の片面に結合材層12を設け、この結合材層12に、除去する固着物を研磨できる硬度の研磨砥粒13を埋め込んで固定して構成されたものを切断して薄片状に形成したものである。
基材11は、可撓性を有するもので、例えば、セラミック、布、紙、樹脂などの柔軟かつ衝撃に対して耐久性のある素材が用いられる。
結合材層12の素材としては、例えば樹脂製の接着剤などが用いられる。
研磨砥粒13の素材としては、例えばアルミナ製研磨材などが用いられる。
洗浄媒体1の外形の一例は、厚さがおよそ0.05〜0.2mmで、面積がおよそ100mm2以下の薄片で、重量は30mg以下である。
【0033】
また、研磨砥粒13を基材11の片面ではなく両側に設けることもできる。
このような洗浄媒体1の構造、特性は、洗浄装置の構成、洗浄対象物2の大きさ、形状、付着物の性質等によってそれらに適したものを選択する。
例えば、洗浄媒体1の面積については、洗浄装置と関係するが、面積が大きくなると洗浄槽内での滞留がしやすくなり、あまり小さいと洗浄対象物から除去されて飛散した研磨粉等の付着物とのふるい分けが困難になるのでふるい分けができる大きさとする必要がある。
また、厚さについては、0.2mm以上だと可撓性が失われる可能性が高く衝突時に点接触になって洗浄速度が低下し、0.05mm以下だと洗浄対象物に張り付いて除去し難くなる。
また、研磨砥粒13を設ける面が片面と両面の違いについては、両面だと洗浄媒体の面と洗浄対象面の接触確率が倍になるので研磨速度が倍になるが、コストも高くなるのでコストと性能の使用により選定することになる。
【0034】
この洗浄媒体1の飛翔について説明する。
洗浄媒体1に気体流があてられると、洗浄媒体1は気体流に乗って飛翔する。
気体流があてられる際の洗浄媒体1の姿勢はその状況によりさまざまであり、例えば洗浄媒体1の投影面積が大きい方向(図2の上方向又は下方向のように洗浄媒体1の面に直交する方向)に気体流の力が作用した場合、気体流の圧力に対する質量が非常に小さいため洗浄媒体1は容易に加速されて気体流に乗って飛翔する。
この場合、投影面積が大きい方向すなわち洗浄媒体1の面に直交する方向の移動に対しては気体抵抗が大きいため、飛翔しながら、気体抵抗が少ない投影面積が小さい方向(図2の右方向又は左方向のように面と平行な方向)に、洗浄媒体1の姿勢は変化する。
【0035】
気体流の力が最初から洗浄媒体1の投影面積が小さい方向に作用した場合には、洗浄媒体1は気体抵抗が小さいので気体流に乗ってそのままの姿勢で飛翔するか、または投影面積が大きい方向に気体流の力が作用するように一旦姿勢が変化してその姿勢で気体流を受け飛翔し、上記のように飛翔しながら気体抵抗が少ない方向に洗浄媒体1の姿勢は変化して飛翔する。
洗浄媒体1は薄片状であり投影面積が小さい方向に対しては気体抵抗が小さいので、気体抵抗が少ない方向へ飛翔した場合、高速運動が長距離維持される。
このような動きにより、洗浄媒体1は洗浄対象物の位置に到達し、洗浄対象物に接触して、洗浄対象物に付着した付着物が除去される。
なお、上記したように洗浄媒体1が、投影面積が小さい方向すなわち面方向に飛翔して、高速運動が長距離維持されると、洗浄媒体1の持つエネルギーが大きく、洗浄対象物に接触したときに作用する力が大きいため、洗浄が有効に行われる。
この除去について、具体的には後述する。
【0036】
本実施形態における装置と洗浄媒体1の動きについて説明する。
洗浄装置の洗浄槽3には洗浄媒体1が入れられ洗浄槽3の底面に堆積している。
作業者はまず洗浄対象物保持手段4の保持部材42により洗浄対象物2を挟んで固定し、開口部31を通して洗浄槽3内にセットする。
開口部31がアーム41により閉じられたら、付着物回収手段6の吸引装置を動作させて洗浄槽3内の空気の吸引を行い、洗浄槽3内を負圧にする。
次に洗浄媒体加速手段5を動作させて加速ノズル51から、垂直上向きに圧縮空気を噴射する。
【0037】
この圧縮空気は洗浄対象物2方向へ流れて洗浄対象物2にぶつかるか、または洗浄槽3の天井面にぶつかって洗浄槽3の左右内側面に移動し、付着物回収手段6の吸引気流とあわせて洗浄槽3の内側面に沿って下降して底面まで流れる空気流が洗浄槽3内に生成される。
【0038】
図3を参照して、洗浄槽3内の洗浄媒体1の動きについて説明する。
図3において、破線矢印は空気流を示している。なお、図3においては説明に直接関係しない構成は図示を省略している。
【0039】
洗浄槽3の底面に堆積していた洗浄媒体1は、上記した空気流に乗って飛翔する。
すなわち、洗浄媒体1は洗浄槽3の底面に堆積しているので、洗浄媒体の投影面積が大きい面に空気流があたり、重量が30mg以下と非常に小さいため急加速されて上方の洗浄対象物2へ向けて飛翔する(aの状態)。
この実施形態においては、流速20m/s以上の空気流を加えており、洗浄媒体1は空気流の流速と略同じ速度に加速される。
【0040】
洗浄媒体1の面と直交する方向に飛翔する場合には空気抵抗が大きいため、洗浄媒体1の姿勢は、飛翔しながら、空気抵抗が少ない洗浄媒体1の面と平行な方向に変化する(bの状態)。
洗浄媒体1はこの姿勢のまま空気流に乗って飛翔し、空気流と略同じ速度で洗浄対象物2方向へ移動し、洗浄対象物2まで到達し接触する(cおよびdの状態)。
【0041】
このような動きにより、まず洗浄媒体1のエッジが洗浄対象物2に衝突する。
この実施形態においては、衝突の入射角はおよそ45°以上90°以下であり、この角度で洗浄媒体1は洗浄対象物2の表面(洗浄対象面)に衝突する。
【0042】
洗浄媒体1は可撓性を有しているので、洗浄媒体1のエッジが衝突した後に、洗浄媒体1は撓んで、その面が洗浄対象面に密接するように姿勢が変化するとともに、移動方向が洗浄対象面に沿った洗浄対象物2の端部方向に方向転換し、この状態で洗浄対象面に沿って移動するすべり動作が行われる(eおよびfの状態)。
この洗浄媒体1の衝突により、洗浄対象物2に付着した付着物(粉塵又は粉体)のそぎ落としまたははたき落としが行われる。また、衝突時には洗浄媒体1のエッジ付近の研磨砥粒13により洗浄対象物2の研磨が行われる。
そして、衝突後のすべり動作により、洗浄媒体1表面の研磨砥粒13による研磨によって洗浄対象面の固着物の削り取りが行われる。
【0043】
また、洗浄媒体1は可撓性を有するために、洗浄対象物2の段差や凹凸などの入り組んだ箇所にもその形状に合わせて撓んで、洗浄媒体1の段差部分の奥にエッジが入り込んだり、凹凸面にエッジが接触するので、このような箇所においても、エッジ付近に固定された研磨砥粒13で洗浄対象面が研磨される。
図4は、洗浄対象物2の段差部分2aに洗浄媒体1のエッジが入り込んだ状態を示している。図4において、洗浄媒体1は、洗浄対象物2の段差部分2aの端部に衝突した後にそのエッジが段差部分2aの奥にすべり入り込んでいる。
【0044】
洗浄媒体1が洗浄対象面に沿って移動するすべり動作は、洗浄媒体1が衝突時に有しているエネルギーおよび洗浄対象物2にぶつかった後の空気流の圧力により行われる。
このように、洗浄対象物2に衝突して方向転換した洗浄媒体1は、空気流に押されて洗浄対象面に密接しすべり動作を行ないながら洗浄対象物2の端部方向へ移動するが。このときには、洗浄媒体1のエッジのみでなく面の広い範囲が密接し研磨に用いられるため、洗浄対象面の広い面積の研磨が行われる。
【0045】
また空気流は常に一定というわけではなく変化があるものであり、一方、洗浄媒体1は薄片状であるためその姿勢によって空気抵抗が大きく変化するので、どの方向から空気流があてられるかによって、洗浄媒体1の姿勢、動きが変化する。
したがって、空気流が変化した場合には、洗浄媒体1は空気流に沿って動くだけでなく、急に方向を変えるなど複雑な運動をする。
特に洗浄対象物2付近ではこのような運動が多く発生し、その結果、洗浄対象物2から離れかけていた洗浄媒体1が、再び洗浄対象物2方向へ動いて洗浄対象物2に繰り返し接触したり、洗浄対象物2に対して、空気流に乗った状態である投影面積が小さい方向の角度のみでなく、それ以外のさまざまな角度で接触することも生じる。
【0046】
洗浄媒体1は、洗浄対象物2に接触してすべり動作等の洗浄動作を行った後に、空気流により洗浄対象面から吹き払われ、放射状に飛翔して最終的には洗浄槽3の左右の内側面に到達する。
洗浄対象物2に衝突しなかった洗浄媒体1は、そのまま直進して洗浄槽3の天井に衝突し、洗浄槽3内の気流に沿って洗浄槽3の左右の内側面に到達する。
【0047】
洗浄槽3の左右の内側面に到達した洗浄媒体1は、更に空気流と重力の作用により落下し、分離部材61上を通って加速ノズル51の近傍に滑り落ちる。
このときには、洗浄媒体1は分離部材61上を吸引されながら、加速ノズル51の近傍に滑り落ちるので、洗浄媒体1が分離部材61上を通過するときに洗浄媒体1から付着物や研磨粉が分離され吸引されて、付着物回収手段6に回収される。
また、洗浄対象物2から除去された付着物や研磨粉で洗浄媒体1に付着せずに飛散したものも、吸引により付着物回収手段6に回収される。
【0048】
加速ノズル51の近傍に達した洗浄媒体1は、再び加速ノズル51から噴射される空気流に押されて垂直上方向に飛翔し、洗浄対象物2に接触する。この洗浄動作を繰り返すことにより、洗浄対象物2の表面に固着した固着物が除去される。
【0049】
この飛翔する洗浄媒体1により洗浄対象物2を洗浄しているときに、洗浄対象物保持手段4のアーム41を回転して洗浄対象物2を回転させると、洗浄対象物2の全面を洗浄することができる。
【0050】
なお、発生する付着物が粉塵等のように粘着性が低く分離が容易なものである場合には、吸引装置を接続せず、洗浄槽内の陽圧により生まれる気流を用いて付着物を回収するようにしてもよい。
【0051】
図5は上記の実施形態において洗浄実験を行った結果を示している。
この実験は、洗浄媒体1の番手が異なるものを用いて本実施形態による洗浄を行ない、洗浄対象物2に残留した固着物の量を比較したものである。
図5は、このようにして行った洗浄について、洗浄時間と残留固着物の重さの関係を示したもので、aは粒度#300の砥粒を使用した紙やすり(sia社製)、bは#1000の研磨テープ(コンバック社製)、cは#4000の研磨テープ(3M社製)を用いた結果を示している。
なお、研磨砥粒の粒度はJIS R6001に準拠している。
【0052】
この実験における洗浄対象物の残留固着物は、ガラスエポキシ製の板にフラックスを膜状に50×50mmの正方形の面積に固着したもので、フラックスの硬さは鉛筆硬度Bであった。
フラックスの固着方法としては液状のフラックスをガラスエポキシ板に塗布して乾燥させたあと、250℃で加熱して固着させる手法を用いた。
なお、フラックスは短時間で研磨結果の差がつく適当な硬さを持つ固着物として選定したものであり、また鉛筆硬度はJIS K5600 5-4に準拠したものである。
【0053】
加速ノズル51には0.35Mpaの圧縮空気を供給して空気流を発生させ、洗浄槽1内洗浄媒体1を飛翔させ、洗浄対象物2に接触させた。
洗浄媒体1は上記の各研磨シートまたは研磨テープを5mm角の小片に加工して使用した。
洗浄槽1内の洗浄媒体1の空間密度は3000枚/リットルとした。
これは、洗浄媒体1が上記サイズの場合2000〜5000枚/リットルが適当であり、この範囲より少ないと飛翔して洗浄対象物に接触する洗浄媒体1の数が少なく効率が悪く、また、これより多いと洗浄媒体1がすべては飛翔しきれずに滞留するため、効率が悪くなるためである。
本実験に用いた装置(容量約2リットル)では5000枚/リットル以上だと洗浄媒体1の滞留が目視され、2000枚/リットル以下だと洗浄対象物2への衝突回数が急激に少なくなることが目視された。ただしこの値は本実験装置特有の値であり、洗浄装置のサイズ、ノズルの配置、およびエア流量等の条件によって変動するものである。
【0054】
この実験の結果、図5に示したように、♯4000の場合ではフラックスの除去に時間が掛かるが、♯1000 以下の場合、60秒で約8割の残留固着物を除去することができた。
【0055】
洗浄媒体は繰り返し使用することにより、物理的なダメージを受けて消耗する。特に洗浄対象物に繰り返し衝突することにより、洗浄媒体の一部が破損して分離する。この分離の仕方によっては、洗浄媒体の洗浄能力が低下してしまう。
【0056】
図6および図8はこのような洗浄媒体の洗浄能力低下を少なくするようにした実施形態(第2の実施形態および第3の実施形態)を示している。
図6および図8に示す洗浄媒体110、120においては、洗浄媒体に脆性をもたせたものである。
【0057】
図6において洗浄媒体1の基材111が脆性材料であり、かつ結合材層112の鉛筆硬度が基材111の鉛筆硬度よりも強い材料のものを用いている。
この実施形態では脆性素材として、基材111の材質にポリイミドもしくはトリアセチルセルロースを用いている。ポリイミドもしくはトリアセチルセルロースは、厚みが0.2mm以下のフィルムであり、耐折性が65回以下である特性を備えるものとする。耐折性が低いと、外力によって変形する前に脆性破壊される。
【0058】
また、結合材層としては樹脂製の接着剤を用いている。
ここでいう脆性とは「物体が外力による塑性変形を起こさないうちに、またはわずかに塑性変形しただけで破壊されてしまう性質」を意味している。
鉛筆硬度は一例として、結合材層112の鉛筆硬度は4Hのものでを用い基材111の鉛筆硬度はHのものを用いる。
なお、上記の鉛筆硬度はJIS K5600 5-4、耐折性はJIS P8115に準拠した数値である。
【0059】
図6に示す洗浄媒体110においては、ダメージを受けた端部が破壊されて、その端部が基材111と結合材層112が一体となって洗浄媒体110の同じ位置から分離する。
そして端部が欠けた後のあたらしい端部には、研磨砥粒113を備えた新たなエッジが形成される。
このような特性を備えた洗浄媒体110を用いると、洗浄媒体の研磨性能の低下を少なくでき、長時間研磨性能を維持することができる。
【0060】
一方、基材が脆性材料でなく耐久性がある場合、あるいは結合材層の鉛筆硬度が基材の鉛筆硬度よりも弱い場合は、結合材層の接合力が弱いため、図7に示すように、衝撃によって洗浄媒体130の結合材層132のみが先に剥落して基材131のみが残り、エッジ部分の研磨作用が低下する。
【0061】
図8には洗浄媒体120の基材121が脆性材料であり、かつ結合材層122に切断部122aを形成したものを示している。
【0062】
図9には、洗浄媒体140の結合材層142が連続した膜状のものである場合において、結合材層142とこの結合材層142が設けられている基材141の接合力が、結合材層142の凝集力より弱い場合を示している。
このような構造においては、基材141が脆性破壊される際に、分離する結合材層142が、凝集力によって基材141の破壊位置より内側の結合材層142を剥がして持っていってしまう恐れがある。
その結果、洗浄媒体140の新しい端部には基材141のみが残り洗浄媒体140の機能が低下して、洗浄性能が低下することになる。
これに対処するためには、結合材層142とこの結合材層142が設けられている基材141の接合力を、結合材層142の凝集力より強くすることにより防ぐことができる。
このようにすると、図6に示すものと同様に基材141と結合材層142が一体となって洗浄媒体140の同じ位置から分離することになる。
【0063】
また、図8に示すように結合材層122に切断部122aを形成した場合には、このようなことを防ぐことができる。
結合材層122の切断部122aは、洗浄媒体120の一部が破損して分離するときに、その位置に合わせて結合材層122も容易に分離するように形成された部分をいうものであり、具体的には、結合材層122の所定位置を切断に対して弱い構造にしている。
この方法として、例えば結合材層122を均一な厚さの連続した膜状でなく、切断部122aの厚さを薄くしたり、切断部142aに結合材層122を形成しないやり方がある。
【0064】
図8(A)においては、結合材をスポット的に塗布して、結合材層122を不連続に形成している。
このような構成においては、結合材層122が形成されない箇所である切断部122aにおいては基材121が脆性破壊されやすくなり、洗浄媒体120の端部が欠けて分離した後には図8(B)に示すように洗浄媒体120の新しいエッジに結合材層122および研磨砥粒123が残留し、研磨性能が維持される。
切断部122aのピッチは、洗浄槽3の分離部材61に開けられた排出用の開口孔より小さいサイズのものである。このようなピッチのサイズであれば、洗浄媒体120の端部から分離した後に速やかに洗浄槽3外に排出されて洗浄に影響しない。本実施形態では分離部材61の開口孔として1mm径の孔を多数設け、切断部142aのピッチは少なくとも1mm未満とし、よりスムーズに排出されやすくするためには径の大きさから一般的にみて0.2mm以下とすることが望ましい。
なお、洗浄媒体120の表面の結合材層122を不連続にするかまたは薄くする等して、結合材層122の表面を凹凸状に形成することにより、洗浄媒体120の周囲を気流が通過しやすくなり、洗浄対象面や洗浄媒体表面、洗浄装置の分離部材内側面に滞留することを少なくすることができる。
【0065】
次に、洗浄媒体の他の実施形態(第4の実施形態)について説明する。
研磨処理を行うためには洗浄媒体の面が洗浄対象物の洗浄対象面に対して、すべり動作を行うことが必要であるが、この第4の実施形態においては洗浄媒体が気流によって押されて圧縮したりその後復元する動作を行うときにすべり動作が行われる。
【0066】
図10(A)は、この実施形態における洗浄媒体の斜視図、(B)は側面図を示しており、洗浄媒体150は、基材151の両面に結合材層152を設け、それぞれの結合材層152に研磨砥粒153を固定したものを、折り部分に平坦部150aを有する台形波形に屈曲させ、伸縮可能なかつ復元力を有する蛇腹状に形成したものである。
このように、蛇腹状に形成したことにより面方向に伸縮可能で弾性を有し、力を加えられると力の方向に応じて圧縮または伸展し、力が除かれると復元する。
【0067】
これらの材料としては、第1または第2の実施形態と同じものが用いられるが、平面方向に圧縮、伸展し、復元することに適するように靭性が高い樹脂フィルムや、コシの強い紙などを使用することが望ましい。
【0068】
この実施形態の洗浄媒体150の挙動について説明する。
図11は、この実施形態の洗浄媒体150が空気流(破線矢印で示す)を受けて洗浄対象物201に接触してから離れるまでの状態を示している。
図11において、201aは洗浄対象物201に固着した付着物である。
【0069】
この洗浄媒体150の挙動について説明する。
図11(A)に示すように、洗浄媒体150は高速の空気流を受けて洗浄対象物201に向かい飛翔する。
【0070】
つぎに(B)に示すように、洗浄媒体150のエッジ部分が洗浄対象物201の洗浄対象面に衝突する。洗浄媒体150は面方向に弾性を有しているため、先端部分が洗浄対象面に倣う方向に変形し姿勢が変化する。
さらに気流によって背後から押されると、(C)に示すように洗浄媒体150は面と平行方向に方向転換するとともに、伸縮可能な蛇腹状に形成されているので、空気流を面に受けて洗浄対象面に沿って伸びる。
この伸びる動作により、洗浄媒体150が洗浄対象面に沿って移動するすべり動作が行われ、洗浄媒体150の面に固定された研磨砥粒153が洗浄対象面上を接触移動して研磨が行われる。
【0071】
さらに時間が経過すると、(D)に示すように洗浄媒体150はすべりにより移動して、空気流の押し付けが弱い領域に押し出される。空気流の押し付け力が弱まると、洗浄媒体150は蛇腹状で復元力を備えているので、ふたたび元の台形波形状に復帰する。この過程においても洗浄対象面の研磨が行われる。
台形波形状に復帰した洗浄媒体150は、気流500が洗浄媒体160と洗浄対象物201との間に入り込みやすくなるため、(E)に示すように洗浄対象物201から分離して落下する。
【0072】
なお、洗浄媒体150の蛇腹の復元力は滑り方向に作用するため、洗浄対象物201の表面の摩擦係数がある程度高くても、すべり動作により研磨することが行われる。また、復元時には空気流によって洗浄対象物201と分離しやすくなるため、洗浄対象物201や表面の固着物に粘着性があっても洗浄媒体150がその位置に滞留しにくく、洗浄媒体150の循環が行われるので、洗浄媒体150を繰り返し使用できる。
【0073】
洗浄媒体150のコシを示す特性値としては、クラーク剛度がおよそ110cm3/100以上であれば、空気流によって洗浄対象物201に押し付けられても洗浄媒体150の形状を維持し、前記した洗浄媒体160の挙動を実現できる。また、クラーク剛度がおよそ230cm3/100以下であれば、洗浄対象物201に衝突した後に変形して洗浄対象面に倣いやすく、凹凸のある洗浄対象物201に対して研磨効果が得られる。
なお、クラーク剛度はJIS-P8143に準拠した数値である。
【0074】
図10(C)を参照して、本実施形態の洗浄媒体150の消耗について説明する。
洗浄媒体150のエッジは頻繁に、強い力で洗浄対象物201に接触するため、エッジの研磨砥粒が徐々に取れていき研磨性能が低下する。
一方、洗浄媒体150のエッジが繰り返し衝突することにより、エッジに近い折れ目が疲労破壊を起こして切断しエッジ150bが分離することが生じる。
分離後の新たなエッジ150cは、洗浄媒体150のエッジの内側にあったために接触回数は、エッジ150bの場合よりも少ないため、エッジ150bに比べて研磨性能は維持されている。
このような機能により、洗浄媒体150の研磨性能が長時間維持される。
また、分離したエッジ150bは、研磨粉といっしょに分離手段から洗浄槽外に排出され、不要な異物は洗浄槽に残留しない。
【0075】
図12に、洗浄装置の他の実施形態(第2の実施形態)として、この洗浄媒体160を用いた洗浄装置を示す構成図であり、(A)は正面断面図、(B)は側面断面図を示している。
なお、この洗浄装置はこの実施形態以外の洗浄媒体についても使用可能である。
図12に示す装置において、洗浄槽310は洗浄対象物210を保持する保持部311と洗浄媒体160を移動させて洗浄を行う洗浄部312を有している。
保持部311は、上面を有しない箱状のもので、その底面中央部に底面を短手方向に横切るように長方形の開口部311aが形成され、その開口部311aの下方に、上部が開口された半円筒形の空間である洗浄部312が形成されている。
【0076】
保持部311には洗浄対象物210を下面中央部に保持する保持手段311bが配置されている。保持手段311bは長方形のもので、その底面中央部に洗浄対象物210が埋め込まれて保持される。
洗浄対象物210は洗浄対象面を洗浄部312に向けて下向きに保持されており、洗浄対象面は保持手段311bの底面と同じ高さにセットされている。
洗浄部312の上部の開口はこの保持手段311bの底面により覆われるような配置となっている。
【0077】
保持手段311bは、両側面を保持部311の側面ガイド311cにより挟まれ、洗浄対象物210を保持した状態で保持部311の長手方向を矢印で示すように往復移動できるように支持されており、往復移動することにより洗浄対象面の全面を洗浄部312からの空気流にあてて洗浄できる構成となっている。
また、保持手段311bは、保持部311の底面のスペーサ311d上に置かれてわずかな隙間を保持部311の外縁との間に確保しており、保持手段311bのスムーズな移動を確保するとともに、洗浄部312内が吸引されたときには、この隙間に洗浄槽310の外からの流入空気流が発生し、洗浄媒体160や研磨粉などが洗浄部312から外部へ漏れることを防いでいる。
【0078】
なお、この実施形態で使用する図10に示す台形波形状の洗浄媒体150は、立体形状であるので垂直方向に幅があり、かつ空気流の影響を受けやすいため、薄片状の洗浄媒体よりも外部へ漏れにくい。
【0079】
洗浄部312の内側には、洗浄部312と同じ半円状に形成された分離部材611が設けられている。
分離部材611は、図1に示すものと同様に洗浄媒体160は通過させないが研磨粉は吸引除去される大きさの開口孔を多数設けたパンチングメタルにより構成されている。
【0080】
洗浄部312には最下端面には加速ノズル511が配置されている。
加速ノズル511は図1に示したものと同じように噴出し口が一列に設けられたものであり、圧縮された空気流を上方の開口に向けて噴射する。
噴出し口は、洗浄部312の内側の分離部材611の最下端面の母線に沿って配置されている。加速ノズル511には、制御弁512、コンプレッサ513が接続されている。
【0081】
洗浄部312の外周には、吸引装置613に接続された吸引ダクト612が配置されており、洗浄対象物210から除去された研磨粉などを分離部材611を介して吸引除去する。
【0082】
このような洗浄装置の洗浄部312内において、図10に示す台形波形状の洗浄媒体150を飛翔させ、洗浄対象物210に衝突させる。
洗浄媒体150は図11に示した挙動を示しながら洗浄対象物210の洗浄対象面を研磨し、洗浄対象物210から離れる。
洗浄対象物210から離れた洗浄媒体150は、洗浄部312の内側の分離部材611の内面上をすべりながら、分離部材611下端まで落下する。このときに洗浄媒体150は、表面に付着した研磨粉などの粉体が吸引分離されて、再生される
また、洗浄対象物210から除去された付着物や研磨粉で洗浄媒体150に付着せずに飛散したものも、吸引除去される。
【0083】
なお、本実施形態において用いる洗浄媒体150は、台形波形状の立体形状であるので面に垂直な方向の気流についても、面の端部を通って反対の面に至る経路を通ることができる等、気流の通りがよいため、分離部材611の開口孔を目詰まりさせにくい。
【0084】
分離部材611下端に移動した洗浄媒体150は、加速ノズル511の空気流により再び飛翔し、同様の動きを繰り返し、洗浄対象物210の洗浄が行われる。
洗浄が行われる間、保持手段311bは洗浄対象物210を保持した状態で保持部311の長手方向を往復移動する。これにより洗浄対象面の全面が洗浄部312からの空気流にあてられて洗浄が行われる。
このように洗浄媒体150が洗浄部312内で滞留することなく循環することで、効率よく固着物を研磨して洗浄することができる。
【0085】
次に、洗浄媒体の他の実施形態として、立体形状にした第5の実施形態から第9の実施形態を、図13から図17を参照して説明する。
なお、図13および図14は正面図と側面断面図を示しており、図15から図17は斜視図を示している。
【0086】
図13は第5の実施形態を示すもので、研磨砥粒163を結合材層162で固定した薄片状の洗浄媒体160を折って立体化した形状の実施形態の例である。
図13の(A)は洗浄媒体160の中央部分160aを折って立体化した形状の例、(B)は洗浄媒体160の対向する2つの角の端部160bを上方向に折り曲げて立体化した形状の例、(C)は(B)の実施形態の折り曲げ方向を1つは上方に、他の1つは下方として立体化した形状の例、(D)は(B)の実施形態の4つの角の端部160cを上方に折り曲げて立体化した形状の例、(E)は(B)の実施形態の2つの角の端部160dを上方に折り曲げ、他の2つの角の端部160eを下方に折り曲げて立体化した形状の例である。
なお、(C)と(E)については洗浄媒体160の両面に研磨砥粒を配置している。
【0087】
図14は第6の実施形態を示すもので、研磨砥粒173を結合材層172で固定した薄片状の洗浄媒体170を、円弧状にカールさせた形状の例である。
【0088】
図15は第7の実施形態を示すもので、研磨砥粒183を結合材層182で固定した薄片状の洗浄媒体180の一部に穴をあけ、この穴をあけたときに生じるバリによって面に対して小さな突起180aを設けた形状の例である。
【0089】
図16は第8の実施形態を示すもので、研磨砥粒193を結合材層192で固定した薄片状の洗浄媒体190を、チューブ形状にした例であり、(A)は円筒状にしたもの、(B)は三角筒状にしたもの、(C)は四角筒状にしたものである。
【0090】
図17は第9の実施形態を示すもので、研磨砥粒197を結合材層196で固定した薄片状の洗浄媒体195を、錐形状にした例であり、(A)は円錐状にしたもの、(B)は三角錐状にしたもの、(C)は四角錐状にしたもの、(D)は五角錐状にしたものである。
なお、研磨砥粒193、197が固定された結合材層192、196は外側の面に形成されている。
なお、図13から図17においては研磨砥粒は、説明のために一部のみを図示している。
【0091】
これらの実施形態のいずれの形状においても洗浄媒体は、軽量で飛翔しやすいという薄片状の洗浄媒体の特徴を備えており、かつ立体形状を一部もしくは全体に備えることにより、空気流の影響を受けやすく滞留しにくい。
また、これらの洗浄媒体は空気流によって洗浄対象物に押し当てられたとき、平面形状の洗浄媒体に比較して洗浄対象面への接触面積が小さくなるため、研磨圧力が増し、強く固着した汚れでも研磨除去できる。
【0092】
これらの洗浄媒体および上記した洗浄媒体は、複数形態のものを同時に用いることができる。洗浄媒体の形態が異なるとその挙動もことなった動きとなるため、ひとつの形態のものではカバーできなかった付着物に対しても対応することができ、洗浄の効果が向上する。
【0093】
次に洗浄装置の他の実施形態(第3の実施形態)を示す。
この実施形態は、洗浄媒体に、面に平行な方向の回転力を与えて飛翔させるようにしたものである。
図18は、洗浄媒体に回転力を与えた場合の飛翔について説明するための図である。
この実施形態では、洗浄媒体としては、これまで説明したものを用いることができるが、図2に示すような薄片状の形状のもので説明する。
【0094】
図18に示すように、洗浄媒体1の面に対して垂直な軸aを中心として、洗浄媒体1を矢印b方向に回転させて飛翔させた場合には、この回転の回転慣性力により洗浄媒体1の姿勢が安定し、また洗浄媒体1が受ける空気抵抗が小さい状態で飛翔するため、洗浄媒体1の速度の減少が少ない。
したがって、洗浄媒体1は長距離を飛翔することができる。このような効果に加えて、洗浄媒体1の面上に研磨砥粒が固定されている場合、この面が回転しながら洗浄対象物に接触することにより、すべり速度およびすべり距離が増し、より大きな研磨作用を洗浄対象物表面に与えることができる。
【0095】
図19は、洗浄媒体を回転させながら投射させるための方法を説明するための図であり、洗浄媒体1を上方から見た場合を示している。
洗浄媒体1を回転しながら投射させるためには、洗浄媒体1の面の2つの点1a、1bに対して、異なる速度α(高速)、β(低速)となるような同一方向の押し出し力を加える。
点1aと1bは、洗浄媒体1の中心部分を挟んで対向する位置である。
与える速度α、βは、理論的にはその間に速度差があればよく、βはゼロでもαとは逆方向の速度でもよい。すなわち点1bには理論的には投射方向Xと逆方向の押し出し力を加えても良い。
しかしながら、洗浄媒体1を投射させるためには押し出すことが必要なので、実際には同一方向とする方がよい。
このようにすると、洗浄媒体1に加えられる押し出し力が、洗浄媒体1の中心部分を挟んだ位置によって異なってくるので、洗浄媒体1に矢印b方向の回転が生じ、洗浄媒体1は回転しながらX方向へ投射される。
【0096】
次に、洗浄媒体に図19に示すような回転力を与えて飛翔させる投射手段について説明する。
図20に投射装置7の構成を示す。
投射装置7は、回転体部71と駆動部72を有している。
回転体部71には、駆動部72から伸びる高速回転軸721と低速回転軸722に、高速、低速の2種類の速度の回転体711、712が取り付けられている。
駆動部72は高速回転軸721と低速回転軸722のそれぞれに矢印方向の回転力を与えるものである。
高速回転体711には高速駆動回転体711aと高速従動回転体711bの対が設けられており、本実施形態においてはこれが4対設けられている。
【0097】
高速駆動回転体711aは高速回転軸721に固定して取り付けられ、高速従動回転体711bは、低速回転軸722の高速駆動回転体721に対向する位置に回転自在に取り付けられている。
これにより高速回転軸721が回転したときに高速駆動回転体711aが回転し、後述するように洗浄媒体1が高速駆動回転体711aと高速従動回転体711bの間に挟まれたときに、高速従動回転体711bは高速で連れ回りする。
【0098】
同様に低速回転体712は1対の低速駆動回転体712aと低速従動回転体712bの対が設けられており、これが4対設けられている。
低速駆動回転体712aは低速回転軸722に固定して取り付けられ、低速従動回転体712bは高速回転軸721の低速駆動回転体712aに対向する位置に回転自在に取り付けられている。
これにより低速回転軸722が回転したときに低速駆動回転体712aが回転し、後述するように洗浄媒体1が低速駆動回転体712aと低速従動回転体712bの間に挟まれたときに低速従動回転体712bは低速で連れ回りする。
【0099】
高速回転軸721と低速回転軸722の間隔は、1対の高速駆動回転体711aと高速従動回転体711bの間、および1対の低速駆動回転体712aと低速従動回転体712bの間に、洗浄媒体1が挟まれて、洗浄媒体1にそれぞれの回転体の回転力が伝達され、押し出し力を加えられるような間隔となっている。
【0100】
高速回転軸721および低速回転軸722には、1対の高速駆動回転体711aおよび高速従動回転体711bと、1対の低速駆動回転体712aおよび低速従動回転体712bとが交互に配置されている。
【0101】
また、1対の高速駆動回転体711aと高速従動回転体711bの幅と1対の低速駆動回転体712aと低速従動回転体712bの幅の合計の長さは、洗浄媒体1が挟まれたときに、同時に高速、低速二つの異なる速度の回転力が加えられるように、洗浄媒体1の辺の長さと同じかまたはそれより若干長い程度となっている。
なお、洗浄媒体1は同時に3つの回転体に挟まれることがありうるが、このような場合では、通常は両端の回転体で挟まれる面積が同面積ということはなく差があるため、極めて高い確率で一方向に回転力が偏ることとなる。
【0102】
このような構成により、投射装置7に供給された洗浄媒体1は、図19に示すように、2つの点に高速、低速の異なる速度の同一方向の押し出し力を加えられて、回転しながら飛翔する。
【0103】
なお、高速駆動回転体711a、高速従動回転体711b、低速駆動回転体712aおよび低速従動回転体712bは洗浄媒体1を挟んで回転力を与えるため、適度の圧接状態が確保されるように、また挟まれる洗浄媒体1の数が変動した場合でもそれを吸収できるように適度の弾性を持たせることが望ましい。
また、すべての回転体ではなく、高速駆動回転体711aと高速従動回転体711bのいずれか、または低速駆動回転体722aと低速従動回転体722bのいずれかに弾性を持たせるようにしてもよい。
【0104】
また、高速回転軸721と低速回転軸712に取り付けられた高速駆動回転体711aと高速従動回転体711b、または低速駆動回転体712aと低速従動回転体712bがそれぞれ弾性的に圧接するように、高速回転軸721と低速回転軸722の双方またはいずれか一方の軸に可撓性を持たせたり、弾性部材を用いてこれらの両軸の間に弾性的な付勢力を与えるようにしてもよい。
【0105】
次に、洗浄装置の他の実施形態(第3の実施形態)である洗浄媒体に回転力を与えて飛翔させる洗浄装置について説明する。
図21は洗浄装置の構成図であり、(A)は側面断面図、(B)は正面断面図を示している。
洗浄槽320は、横向き円筒状の外筒321と、その内部に外筒321より小さい内筒322が配置された構造となっている。
【0106】
(A)に示すように、内筒322の一方の円状側面の中央部には内筒回転軸322aが設けられているとともに、同じ側の外筒321の円状側面の中央部にはこの内筒回転軸322aを貫通させる貫通孔321aが形成され、内筒回転軸322aはこの貫通孔321aに回転可能に支持されている。
また、内筒322の他方の円状側面((A)では右側の側面)には円形の開口部322bが形成され、外筒321の同じ側の円状側面には内側に向けた円形の凸面321bが形成されており、この凸面321bが内筒322の開口部322bに、回転可能な状態で嵌め込まれている。
内筒322の開口部322bと外筒321の凸面321bとの間には、この間隙から洗浄媒体1が漏れないように、ブラシ等の摺動可能なシール部材323が設けられている。
このように、内筒322は外筒321の内部に回転可能に支持されており、内筒回転軸322aを介して回転駆動手段(図示せず)により図22(B)の矢印方向(反時計方向)に回転駆動される。
【0107】
内筒322の周面全面にはメッシュ状の分離部材322cおよび搬送板322dが形成されている。
この分離部材322cは、他の実施形態のものと同様に多数の小穴を有し、除去された付着物のほか、体積が小さくなった洗浄媒体1を分離して内筒322の外側へ通過させ排出させる。
搬送板322dは内筒322の内面に、リブ状に等間隔に形成されたもので、内筒322が回転するときに洗浄媒体1を搬送する。
【0108】
外筒321の上部斜めの位置には空気流の流入口321cが設けられ、これと対向する下部斜めの位置には空気流の吸引口321dが設けられている。
流入口321cには圧縮空気供給装置(図示せず)が接続され。吸引口321dには吸引装置(図示せず)が接続される。これにより内筒322内に上部から下方に向かう空気流が形成されるとともに、付着物等が分離部材322cを通り回収される空気流が形成される。
【0109】
内筒322の内部には、投射装置7の回転体部71、洗浄対象物1の保持治具411、および滑り板412が配置されている。これらは外筒321の凸面321bの内側に取り付けられている。
【0110】
投射装置7は図20に示したものであり、回転体部71が内筒322の内部に配置され、凸面321bの外側には駆動部72が配置されている。
保持治具411は洗浄対象物210を挟んだり内部から圧接する等の方法により保持するもので、回転軸411aが設けられており、この回転軸411aは凸面321bの外側に配置された洗浄対象物回転手段411bに接続されている。
【0111】
滑り板412は、落ちてきた洗浄媒体1を、投射装置7の回転体部71方向へ滑らせてガイドするもので、凸面321bの内側上方に配置されている
滑り板412、回転体部71、保持治具411は、斜めの略同一線上に配置されている。保持治具411は吸引口321d寄りに配置されている。
この洗浄装置においては、洗浄媒体1は分離部材322cの底面近傍の搬送板322dにより形成される位置に堆積しているが、内筒322の回転により搬送板322cにより上方に運ばれる。
そして、洗浄媒体1がある程度上方の位置(例えばγの位置)までくると、重力、空気流またはこれらのいずれかの作用により下方へ移動する。移動した洗浄媒体1の一部は滑り板412上に落下し、滑り板412上を滑り落ちて投射装置7の回転体部71へ供給され、投射装置7により洗浄対象物210に向けて回転しながら投射されて、洗浄が行われる。
下方へ移動した洗浄媒体1の一部は空気流に乗って直接洗浄対象物210に接触し、洗浄が行われる。
洗浄対象物210から除去された付着物は、吸引口321dより吸引手段により吸引され回収される。
洗浄するときには、洗浄対象物210は、洗浄対象物回転手段411bにより回転させられており、全体的な洗浄が行われる。
【0112】
次に、洗浄媒体に回転力を与えて投射する洗浄装置の他の実施形態(第4の実施形態)について説明する。
図22は洗浄装置の構成図であり、(A)は側面断面図、(B)は正面断面図を示している。
この実施形態は、図21の実施形態とは、投射装置8の構成、ガイド手段415の構成、洗浄媒体送りローラ416が設けられている点が異なる。
その他の構成については図21に示すものと同じであるので説明は省略する。
【0113】
本実施形態における投射装置8について説明する。
この実施形態においては投射装置8の回転体として、円錐形状のものが用いられる。
図23に投射装置8の回転体部81の構成を示している。
図23において、駆動回転体81aと従動回転体81bは対のもので、これが4対用いられている。
駆動回転体81aは、上方から下に伸びる回転軸82aに下向きに固定されている。回転軸82aには駆動部82から駆動力伝達手段82cを介して駆動力が伝達され、駆動回転体81aは駆動される。
従動回転体81bは、回転軸82aと直交する横向きの固定軸82bに、その側面が駆動回転体81aの側面と対向する位置となるような横向きに、回転自在に取り付けられている。
したがって、回転軸82aが回転したときに駆動回転体81aが回転し、洗浄媒体1が駆動回転体81aの側面と従動回転体81bの側面の間に挟まれたときに従動回転体81bは連れ回りする。
【0114】
このような構成においては、駆動回転体81aの円錐の母線上の位置によって回転半径が異なるため、駆動回転体81aが回転したときの周速は母線上の位置によって異なってくる。
したがって、洗浄媒体1が駆動回転体81aの側面と従動回転体81bの側面に挟まれたときには、洗浄媒体1に加えられる回転速度は位置によって異なり速度差が生じるため、図19に示すように洗浄媒体1に回転力が生じ回転しながら投射される。
【0115】
本実施形態におけるガイド手段415は、滑り板412に加えて滑り板412の前方に、落下する洗浄媒体1を受ける受け板415aを設け、滑り板412と受け板413の下端を狭めた供給口415bを設けてホッパーとして形成したものである。
この供給口415bから投射装置8の回転体部81へ洗浄媒体1が供給される。
【0116】
また本実施形態においては、洗浄媒体送りローラ416を設けている。
この洗浄媒体送りローラ416は、上記の供給口415bに設けられており、装置の動作中回転させることによりホッパー内の洗浄媒体1が投射装置8の回転体部81へ円滑に供給される。
そして、投射装置8により洗浄対象物210に向けて回転しながら投射されて、洗浄が行われる。
【0117】
なお、図23に示す投射装置8においても、図20に示した投射装置7の場合と同様に、洗浄媒体が挟まれる面に適度の弾性を持たせたり、回転軸に可撓性を持たせたり、回転軸の間に弾性的な付勢力を与えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0118】
1 洗浄媒体
11 基材
12 結合材層
13 研磨砥粒
110 洗浄媒体
111 基材
112 結合材層
113 研磨砥粒
120 洗浄媒体
121 基材
122 結合材層
122a 切断部
123 研磨砥粒
130 洗浄媒体
131 基材
132 結合材層
140 洗浄媒体
141 基材
142 結合材層
150 洗浄媒体
150a 平坦部
150b 150c エッジ
151 基材
152 結合材層
153 研磨砥粒
160 洗浄媒体
160a 中央部分
160b、160c、160d、160e 端部
162 結合材層
163 研磨砥粒
170 洗浄媒体
172 結合材層
173 研磨砥粒
180 洗浄媒体
180a 突起
182 結合材層
183 研磨砥粒
190 洗浄媒体
192 結合材層
193 研磨砥粒
195 洗浄媒体
197 結合材層
198 研磨砥粒
2 洗浄対象物
2a 段差部分
201 洗浄対象物
201a 付着物
210 洗浄対象物
3 洗浄槽
31、32 開口部
310 洗浄槽
311 保持部
311a 開口部
311b 保持手段
311c 側面ガイド
311d スペーサ
312 洗浄部
320 洗浄槽
321 外筒
321a 貫通孔
321b 凸面
321c 流入口
321d 吸引口
322 内筒
322a 内筒回転軸
322b 開口部
322c 分離部材
322d 搬送板
323 シール部材
4 洗浄対象物保持手段
41 アーム
42 保持部材
411 保持冶具
411a 回転軸
411b 洗浄対象物回転手段
412 滑り板
415 ガイド手段
415a 受け板
415b 供給口
416 洗浄媒体送りローラ
5 洗浄媒体加速手段
51 加速ノズル
511 加速ノズル
512 制御弁
513 コンプレッサ
6 付着物回収手段
61 分離部材
62 吸引ダクト
611 分離部材
612 吸引装置
613 ダクト
7 投射装置
71 回転体部
711 高速回転体
711a 高速駆動回転体
711b 高速従動回転体
712 低速回転体
712a 低速駆動回転体
712b 低速従動回転体
72 駆動部
721 高速回転軸
722 低速回転軸
8 投射装置
81 回転体部
81a 駆動回転体
81b 従動回転体
82 駆動部
82a 回転軸
82b 固定軸
82c 駆動力伝達手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の可撓性を有する薄片状の洗浄媒体を気体流により洗浄対象物方向へ移動させ、洗浄媒体を洗浄対象物に接触させて洗浄対象物に付着した付着物を除去するとともに、この洗浄対象物から除去された付着物を回収する洗浄方法であって、
洗浄媒体の少なくとも片方の面には研磨砥粒が配置され、この研磨砥粒が配置された面が前記洗浄対象物に接触したときにすべり動作が行われて前記洗浄対象物に付着した付着物が除去されることを特徴する洗浄方法。
【請求項2】
複数の可撓性を有する薄片状の洗浄媒体を気体流により洗浄対象物方向へ移動させ、洗浄媒体を洗浄対象物に接触させて洗浄対象物に付着した付着物を除去するとともに、この洗浄対象物から除去された付着物を回収する洗浄方法であって、
洗浄媒体の少なくとも片方の面には研磨砥粒が配置され、この洗浄媒体が前記洗浄対象物に衝突して前記洗浄対象物に付着した付着物が除去されるとともに、前記研磨砥粒が配置された面が前記洗浄対象物に接触したときにすべり動作が行われて前記洗浄対象物に付着した付着物が除去されることを特徴する洗浄方法。
【請求項3】
複数の可撓性を有する薄片状の洗浄媒体を収容する空間を形成する洗浄槽と、
洗浄対象物を前記洗浄槽内において保持する洗浄対象物保持手段と
前記洗浄槽内において前記洗浄媒体を気体流により前記洗浄対象物方向へ移動させ、前記洗浄媒体を前記洗浄対象物に接触させる気体流発生手段と、
前記洗浄対象物から除去された付着物を気体の移動により回収する付着物回収手段を有する洗浄装置であって、
前記洗浄媒体の少なくとも片方の面には研磨砥粒が配置され、この研磨砥粒が配置された面が前記洗浄対象物に接触したときにすべり動作が行われて前記洗浄対象物に付着した付着物が除去されることを特徴する洗浄装置。
【請求項4】
複数の可撓性を有する薄片状の洗浄媒体を収容する空間を形成する洗浄槽と、
洗浄対象物を前記洗浄槽内において保持する洗浄対象物保持手段と
前記洗浄槽内において前記洗浄媒体を気体流により前記洗浄対象物方向へ移動させ、前記洗浄媒体を前記洗浄対象物に接触させる気体流発生手段と、
前記洗浄対象物から除去された付着物を気体の移動により回収する付着物回収手段を有する洗浄装置であって、
前記洗浄媒体の少なくとも片方の面には研磨砥粒が配置され、前記洗浄媒体が前記洗浄対象物に衝突して前記洗浄対象物に付着した付着物が除去されるとともに、前記研磨砥粒が配置された面が前記洗浄対象物に接触したときにすべり動作が行われて前記洗浄対象物に付着した付着物が除去されることを特徴する洗浄装置。
【請求項5】
複数の可撓性を有する薄片状の洗浄媒体を洗浄対象物方向へ移動させ、洗浄媒体を洗浄対象物に接触させて洗浄対象物に付着した付着物を除去するとともに、この洗浄対象物から除去された付着物を回収する洗浄方法であって、
洗浄媒体に面と平行な方向に回転力を加えて飛翔させることにより、この洗浄媒体を洗浄対象物方向へ移動させるものであり、
前記洗浄媒体の少なくとも片方の面には研磨砥粒が配置され、この研磨砥粒が配置された面が前記洗浄対象物に接触したときにすべり動作が行われて前記洗浄対象物に付着した付着物が除去されるものであることを特徴とする洗浄方法。
【請求項6】
複数の可撓性を有する薄片状の洗浄媒体を収容する空間を形成する洗浄槽と、
洗浄対象物を前記洗浄槽内において保持する洗浄対象物保持手段と
前記洗浄槽内において前記洗浄媒体に面と平行な方向に回転力を加えて飛翔させることにより、前記洗浄媒体を前記洗浄対象物方向へ移動させ、前記洗浄媒体を前記洗浄対象物に接触させる洗浄媒体投射手段と、
前記洗浄対象物から除去された付着物を気体の移動により回収する付着物回収手段を有する洗浄装置であって、
前記洗浄媒体の少なくとも片方の面には研磨砥粒が配置され、この研磨砥粒が配置された面が前記洗浄対象物に接触したときにすべり動作が行われて前記洗浄対象物に付着した付着物が除去されることを特徴する洗浄装置。
【請求項7】
複数の可撓性を有する薄片状の洗浄媒体を収容する空間を形成する洗浄槽と、
洗浄対象物を前記洗浄槽内において保持する洗浄対象物保持手段と
前記洗浄槽内において前記洗浄媒体に面と平行な方向に回転力を加えて飛翔させることにより、前記洗浄媒体を洗浄対象物方向へ移動させ、前記洗浄媒体を前記洗浄対象物に接触させる洗浄媒体投射手段と、
前記洗浄対象物から除去された付着物を気体の移動により回収する付着物回収手段を有する洗浄装置であって、
前記洗浄媒体の少なくとも片方の面には研磨砥粒が配置され、前記洗浄媒体が前記洗浄対象物に衝突して前記洗浄対象物に付着した付着物が除去されるとともに、前記研磨砥粒が配置された面が前記洗浄対象物に接触したときにすべり動作が行われて前期洗浄対象物に付着した付着物が除去されることを特徴する洗浄装置。
【請求項8】
請求項3または請求項4に記載の洗浄装置において、
洗浄媒体を、気体流により洗浄対象物方向へ移動させた後に、洗浄槽内の移動の開始位置に戻す循環手段を有することを特徴とする洗浄装置。
【請求項9】
請求項8に記載の洗浄装置において、
循環手段が、気体流発生手段からの気体流の方向が洗浄槽の内壁により反転されることにより構成されることを特徴とする洗浄装置。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の洗浄装置において、
回収手段が、洗浄媒体を気体流により洗浄対象物方向へ移動させた後に洗浄槽内の移動の開始位置に戻す経路の途中に設けられていることを特徴とする洗浄装置。
【請求項11】
可撓性を有する薄片状に形成され、空間内において移動し、空間内に配置された洗浄対象物に接触して洗浄対象物に付着した付着物を除去する洗浄媒体であって、少なくとも片方の面に研磨砥粒が配置されたことを特徴とする洗浄媒体。
【請求項12】
請求項11に記載の洗浄媒体において、
少なくとも片方の面に結合材層が設けられ、研磨砥粒がこの結合材層に固定されていることを特徴とする洗浄媒体。
【請求項13】
請求項11または12記載の洗浄媒体が、脆性破壊する素材であることを特徴とする洗浄媒体。
【請求項14】
請求項12または13に記載の洗浄媒体において、結合材層と結合材層が設けられている基材の接合力が、結合材層の凝集力より強いことを特徴とする洗浄媒体。
【請求項15】
請求項11から14のいずれかに記載の洗浄媒体において、結合材層に切断部が形成されていることを特徴とする洗浄媒体。
【請求項16】
請求項11から15のいずれかに記載の洗浄媒体が蛇腹状であることを特徴とする洗浄媒体。
【請求項17】
請求項11から15のいずれかに記載の洗浄媒体が立体形状であることを特徴とする洗浄媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−101853(P2011−101853A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257958(P2009−257958)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】