説明

乾燥処理装置及びそれに使用する撹拌体

【課題】頭部等の太く強い骨格を有する豚も細かく均一な粉化処理を行うことができ、口蹄疫などの伝染病に感染して殺処分された豚の処理を当該患畜が発生した豚舎毎に独自に行うことが可能になる乾燥処理装置を提供する。
【解決手段】乾燥処理装置は、両端側に端壁を有し投入部と排出部を有する処理室(3)、処理室(3)内に設けられた撹拌体(4)、処理室(3)を加熱する加熱室、加熱室に加熱空気を送り処理室(3)を加熱すると共に処理室(3)の処理ガスを導入し二次的に燃焼させて消臭する燃焼室を備え、撹拌体(4)は正逆回転方向に駆動される回転軸(40)、被処理物を撹拌しながら処理室(3)内の一方側へ送る送り撹拌部(43,44)、被処理物が逆方向へ戻りにくいようにする戻り止め部(45)を備えており、戻り止め部(45)の外周部には被処理物を切断又は破砕する刃部(450)が形成され、刃部(450)には所要数の切込部(451)が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥処理装置及びそれに使用する撹拌体に関するものである。更に詳しくは、例えば飼育途中において伝染病で殺処分された豚などを高温・高圧下で処理して滅菌し、短時間で粉化することができる乾燥処理装置及びそれに使用する撹拌体に関する。
【背景技術】
【0002】
豚や牛などの鯨偶蹄目(蹄が偶数に割れている動物)の飼育を行う畜産においては、特に口蹄疫などの伝染病の発生の予防及び発生したときの迅速で綿密な対応が重要である。仮に、ある豚舎の豚が口蹄疫に感染した患畜と確認されると、その豚舎のすべての豚はもちろん、その豚舎近隣の法律で定められた一定の範囲内の豚舎や牛舎の家畜のすべてが殺処分され、決められた用地に埋められる。
【0003】
しかし、口蹄疫ウィルスの特に豚に対する感染力は極めて強く、感染の広がりを止めるのは容易ではない。つまり、前記のような殺処分を行うためには、どうしても多くの人間や自動車、作業車の移動が伴うこともあって、移動途中で消毒を施したとしても、感染を確実に止めることは事実上困難であり、対応は後手、後手となりやすい。
【0004】
また、口蹄疫は、例えば鳥やネズミなどによる伝播や空気による伝播も当然考えられるが、口蹄疫の感染の広がりを止めるには、各豚舎や牛舎間の人間や自動車、作業車の移動を極力行わないようにして、患畜が発生した豚舎や牛舎毎に独自に殺処分を行い、更にそれを用地への埋却又は専用の装置による焼却などの手段で処分し、口蹄疫の感染の経路を断ち切るのが最も現実的で効果的な手段である。
【0005】
ところで、飼育途中で死んだ家畜を処分する装置は、特許文献1において本発明者がすでに提案している。特許文献1記載の乾燥処理装置は、養鶏場で死んだ、いわゆる斃死鶏を丸のまま投入して高温・高圧下で処理するもので、処理室、撹拌体及び加熱室を備え、撹拌体は、外周部の刃部が処理室内において内面に近接して回転移動し、被処理物が処理室の一端側へ送られて被処理物の圧力が高くなったときに逆方向へ戻りにくいようにする戻り止め板を備えており、斃死鶏に含まれる油が多くて処理室内が滑りやすくても効率的な撹拌を行い、処理物に大きな骨片が含まれない粉化処理を行うことができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−43790
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記従来の乾燥処理装置は、斃死鶏の粉化処理を高効率で行うことができるので、比較的規模が大きい養鶏場における斃死鶏の処理対策としては十分に有用である。しかしながら、仮にこの装置を使用して、口蹄疫などの伝染病に感染して殺処分された豚の処理を行おうとしても、豚は鶏と比較して頭部等の太く強い骨格を有しているために、前記撹拌体の構造では骨を細かく破砕することができず、処理物に大きい骨片が混じるおそれがあり、均一に粉化することができない。
【0008】
(本発明の目的)
本発明は、従来の乾燥処理装置より更に破砕能力が高く、斃死鶏だけでなく、鶏と比較して頭部等の太く強い骨格を有する豚でも、鶏と同様に細かく均一な粉化処理を行うことができ、例えば口蹄疫などの伝染病に感染して殺処分された豚のその後の処理を、当該患畜が発生した豚舎毎に独自に行うことが可能になる乾燥処理装置及びそれに使用する撹拌体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
【0010】
(1)本発明は、
被処理物を乾燥し粉化する乾燥処理装置であって、
両端側に端壁を有し投入部と排出部を有する処理室と、
該処理室内に設けられた撹拌体と、
前記処理室を加熱する加熱室と、
該加熱室に加熱空気を送る燃焼室と、
を備えており、
前記撹拌体は、
駆動系によって正逆回転方向に駆動される回転軸と、
該回転軸に所要数設けられ、前記処理室内面に沿うように回転移動し被処理物を撹拌しながら処理室内において回転軸の軸線方向に送る送り撹拌部と、
前記回転軸に所要数設けられ、回転に伴い一部又は外周部が前記処理室内面に近接して移動し、被処理物が前記送り撹拌部によって処理室の一方の端壁側へ送られて圧力が高くなったときに被処理物が逆方向へ戻りにくいようにする戻り止め部と、
を備えており、
前記戻り止め部の外周部には被処理物を切断又は破砕する刃部が形成されており、該刃部には刃部を刃渡り方向において寸断する所要数の切込部が形成されている、
乾燥処理装置である。
【0011】
(2)本発明は、
被処理物を乾燥し粉化する乾燥処理装置であって、
両端側に端壁を有し投入部と排出部を有する処理室と、
該処理室内に設けられた撹拌体と、
前記処理室を加熱する加熱室と、
該加熱室に加熱空気を送り、前記処理室を加熱すると共に処理室の排気部から排出される処理ガスを導入し二次的に燃焼させて消臭する燃焼室と、
を備えており、
前記撹拌体は、
駆動系によって正逆回転方向に駆動される回転軸と、
該回転軸に所要数設けられ、前記処理室内面に沿うように回転移動し被処理物を撹拌しながら処理室内において回転軸の軸線方向に送る送り撹拌部と、
前記回転軸に所要数設けられ、回転に伴い外周部の先端が前記処理室内面に近接して移動し、被処理物が前記送り撹拌部によって処理室の一方の端壁側へ送られて圧力が高くなったときに被処理物が逆方向へ戻りにくいようにする戻り止め部と、
を備えており、
前記戻り止め部の先部側の外周部には被処理物を切断又は破砕する縁部形状が円弧状の刃部が形成され、該刃部と前記回転軸の間の部分の幅は円弧部の直径より狭く又は回転軸方向へ窄まるように形成されており、
前記刃部には、刃部を刃渡り方向において寸断する所要数の切込部が形成されており、刃部両側には処理室内面との間に塊状物を咬み込む空間が設けられている、
乾燥処理装置である。
【0012】
(3)本発明は、
送り撹拌部と戻り止め部を一体的に形成し、送り撹拌部と、戻り止め部の刃部が回転軸の軸周方向において回転軸を挟んで反対側に設けられている、
前記(1)又は(2)の乾燥処理装置である。
【0013】
(4)本発明は、
乾燥処理装置に使用される撹拌体であって、
駆動系によって正逆回転方向に駆動される回転軸と、
該回転軸に所要数設けられ、前記処理室内面に沿うように回転移動し被処理物を撹拌しながら処理室内において回転軸の軸線方向に送る送り撹拌部と、
前記回転軸に所要数設けられ、回転に伴い一部又は外周部が前記処理室内面に近接して移動し、被処理物が前記送り撹拌部によって処理室の一方の端壁側へ送られて圧力が高くなったときに被処理物が逆方向へ戻りにくいようにする戻り止め部と、
を備えており、
前記戻り止め部の外周部には被処理物を切断又は破砕する刃部が形成されており、該刃部には刃部を刃渡り方向において寸断する所要数の切込部が形成されている、
撹拌体である。
【0014】
(作用)
本発明に係る乾燥処理装置の作用を説明する。なお、ここでは、説明で使用する各構成要件に、後述する実施の形態において各部に付与した符号を対応させて付与するが、この符号は、特許請求の範囲の各請求項に記載した符号と同様に、あくまで内容の理解を容易にするためであって、各構成要件の意味を上記各部に限定するものではない。
【0015】
被処理物が殺処分された豚である場合を例にとり説明する。
まず、燃焼室(6)から燃焼ガスなどの加熱空気を加熱室(2)に送ることによって処理室(3)を加熱すると共に撹拌体(4)をモーターなどを含む駆動系(5)によって回転させる。そして、被処理物である豚を丸のまま、投入部(11)から処理室(3)内に投入する。
【0016】
投入された豚は、撹拌体(4)の回転軸(40)に所要数設けられている戻り止め部(45)の刃部(450)によって骨ごと順次切断され、細かくなる。この切断は、被処理物の重さにより主に処理室(3)内の底部において行われ、このとき豚の頭部等の太く強い骨は、空間部(39)において、切込部(451)を形成することによって掛かりが強くなった刃部(450)によって、より細かく切断、破砕される。
【0017】
また、戻り止め部(45)の刃部(450)による被処理物の切断、破砕と並行して、切断、破砕された被処理物が送り撹拌部(43,44,46,48)によって撹拌されながら、処理室(3)内において回転軸(40)の軸線方向の一方向へ送られる。なお、被処理物である豚は脂肪率が高く、処理室(3)内は油で滑りやすくなるが、被処理物は骨まで切断、破砕されることによって細かくなっており、撹拌の際に一塊にはなりにくく、効率的に撹拌される。
【0018】
送られた被処理物は、後続して送られてくる被処理物によって押され、処理室(3)の一端部において圧力が高まり、さらに一端部近傍に位置する送り撹拌部(43,44,46,47)によって高温・高圧下で所要時間混練され、被処理物は更に細かく摩砕される。また、この際には、被処理物は圧力が開放される方向、すなわち前記送り方向とは逆方向へ戻ろうとするが、回転移動している各戻り止め部(45,48)によってその大部分が止められるので、被処理物の高い圧力は維持される。
【0019】
このような高温・高圧下での処理が所要時間行われると、制御部によって撹拌体(4)の回転方向が切り替えられ、撹拌体(4)は前記と逆方向に回転する。これにより、被処理物は処理室(3)内において前記とは逆方向に送られ、処理室(3)内の他方側の端部(31,32)において前記と同様に高温・高圧下での処理が所要時間行われる。なお、前記処理中、処理室(3)において内部に被処理物がない側は、いわゆる空焚き状態で温度がより高温になっており、被処理物が移動してきたときも十分に高い温度で効率的な処理を行うことができる。
【0020】
そして、前記処理を繰り返すことにより、被処理物に含まれる水分も少なくなって乾燥が進み、次第に粉化する。処理時間がある時間を超えると、最後には、理由は定かではないが残っていた骨片までが一気に粉化する。粉化した処理物は、処理中の高温・高圧によって十分に殺菌されている。処理物は、処理室(3)の排出部から排出され、必要に応じて飼料などとして利用することができる。また、処理室(3)内における処理で発生した水分を含むガスは、加熱室(2)に送られて二次的に燃焼し、消臭されて外気へ放出される。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、戻り止め部の外周部に刃部を設け、刃部に切込部を設けることによって、従来の乾燥処理装置より更に破砕能力が高くなっており、被処理物が鶏と比較して頭部等の太く強い骨格を有する豚であっても、鶏と同様に細かく均一な粉化処理を行うことができる。したがって、本発明に係る乾燥処理装置は、例えば口蹄疫などの伝染病に感染して殺処分された豚のその後の処理を、当該患畜が発生した豚舎毎に独自に行うことが可能になり、各豚舎間の人間や自動車、作業車の移動を極力行わないようにすることで、口蹄疫の感染の経路を断ち切るための有効な手段となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る乾燥処理装置の一実施の形態を示す正面視説明図。
【図2】図1に示す乾燥処理装置の側面視説明図。
【図3】撹拌体の構造を示す側面視説明図。
【図4】撹拌体を構成する破砕パドルの構造を示し、(a)は要部側面図、(b)は断面説明図。
【図5】破砕パドルの構造を示す斜視図。
【図6】撹拌体を構成する撹拌パドルの構造を示し、(a)は要部側面図、(b)は断面説明図。
【図7】撹拌パドルの構造を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を図面に示した実施の形態に基づき詳細に説明する。
図1乃至図7を参照する。
乾燥処理装置Aは、伝染病で殺処分された豚などの被処理物を処理室に投入し高温・高圧下で処理して粉化するものである。乾燥処理装置Aは、前記のような豚だけでなく、斃死鶏などの他の家畜類或いは畜糞や焼酎の搾り滓、余剰汚泥などの乾燥処理を行うこともできる。
【0024】
乾燥処理装置Aは、ケーシング1と、ケーシング1の内部に設けられている加熱室2と、加熱室2の内部に設けられている処理室3と、処理室3の内部に設けられている撹拌体4と、撹拌体4を回転駆動する駆動系である駆動装置5及び加熱室2に加熱空気を送り処理室3を加熱する燃焼室6を備えている。
以下、前記各部について説明するが、撹拌体4以外の部分の構造は公知であるので、これらの部分については簡単に説明するに止める。なお、以下の説明において、方向や位置の説明をする際に使用する「前部」は図1において右側を、「後部」は左側を意味する。
【0025】
前記ケーシング1は、前後端部が封鎖されたほぼ円筒形状を有しており、中心軸線を前後方向に水平にしてフレーム10で支持されている。ケーシング1の内部には、ケーシング1と同様に円筒形状で、ケーシング1よりやや径小で同じ長さの加熱室2が、中心軸線を水平にして固定されている。加熱室2の内部には、前記処理室3が固定されている。
【0026】
処理室3は、円筒形状の胴部30と、その長さ方向の両端部に設けられた円形の端壁31、32を備えている。処理室3は、処理室3よりやや大きくほぼ同様の形状を有する加熱室2の内部に中心軸線を水平方向とし、長さ方向の両端部の一部を加熱室2及びケーシング1の前後端部から外部に出して固定されている。処理室3と加熱室2内面との間には空隙部20が設けられ、この空隙部20には加熱空気が通るようになっている。
【0027】
加熱室2の前部寄りの上部には、前記空隙部20を通った加熱空気を装置外部へ排出する排気口21が設けられている。
また、加熱室2の後部側の下部には、壁部に耐火煉瓦を使用した熱風路22の上端部が接続されており、熱風路22の下端部は後述する燃焼室6に接続されている。
処理室3において、胴部30の後部側の熱風路22の上部開口部の上方の外面には、胴部30が加熱空気によって過剰に熱せられることによる劣化を軽減するための熱保護板38が張設されている。
【0028】
また、処理室3の後部側の端壁31には、処理室3内部を密閉することができる蓋装置34が設けられている。蓋装置34は、上下方向に回動できるように軸着されたアーム340の先端に、端壁31に設けられている排出部(符号省略)を開閉する蓋板341を固定した構造であり、ハンドル35を回転操作することにより蓋板341の開閉動作を行うことができる。なお、符号36は、処理物を排出する際の案内部となるシュートである。
【0029】
ケーシング1の後部側の上部には、加熱室2の上壁と処理室3の胴部30の上部を貫通し、処理室3の内部に連通した四角形の筒状の投入部11が設けられている。
投入部11の上部には、処理室3の内部を密閉することができる蓋装置12が設けられている。蓋装置12は、上部側が回動自在に軸支された蓋板120を有し、蓋板120に取り付けられたハンドルバー121の上下方向の操作によって蓋板120を動かして投入部11を開閉することができる。
【0030】
また、前記投入部11には、その縦壁部(符号省略)を貫通して処理ガス送気管7の一端が接続されている。処理ガス送気管7の他端は、後述する燃焼室6に壁部を貫通して接続されている。処理ガス送気管7の経路中(図1で上端部)には、循環用のファン70が設けられている。これにより、処理室3内で発生する臭気成分などを含む処理ガスは、燃焼室6に送られて二次的に燃焼し、臭気成分などが消臭されるので、前記排気口21から排出される排気をほぼ無臭化することができる。
【0031】
燃焼室6は、前記加熱室2の下方に設けられており、前記したように熱風路22によって加熱室2と接続されている。燃焼室6は、壁部に耐火煉瓦を使用した中空形状に形成されており、前部側の端壁60には、バーナー61が取り付けられている。バーナー61によって加熱された加熱空気は、前記処理ガス送気管7から送られてくる処理ガスを燃焼させながら、前記熱風路22を通り加熱室2の内部に送給され、処理室3を加熱した後、排気口21から大気中へ排出される。
【0032】
処理室3の内部には、撹拌体4が回転できるように軸支されている。撹拌体4は、円管状の回転軸40を有している。回転軸40は管体の内部に冷却水を通す構造としてもよいし、管体でなく中実体で形成してもよい。回転軸40は、処理室3の両端壁31、32の外側にブラケット33及びモーター台37により固定された軸受49によって両端側が軸支されている。回転軸40の軸の中心は、胴部30が円筒形状である処理室3の中心と共通である。回転軸40は、処理室3の両端壁31、32を、処理室3内の気密が保てるように、かつ回転できるように貫通させてある。
【0033】
撹拌体4は、駆動装置5によって駆動される。駆動装置5は、前記モーター台37の上部に固定されているモーター50と、スプロケットやチェーンからなりモーター50の動力を回転軸40に伝える伝達系51を備えている。駆動装置5は、制御部(符号省略)によって、撹拌体4の回転方向を所定時間ごとに正逆方向に切り替えるように制御される。
【0034】
回転軸40において、処理室3の内部にある部分には、四本の破砕パドル41と五本の撹拌パドル42が回転軸40の軸線方向に所要の間隔で交互に取り付けられている。破砕パドル41と撹拌パドル42の数はこれに限定されず、装置の能力や規模に合わせるように適宜設定することができる。
各破砕パドル41は、送り撹拌部と戻り止め部が一体的に形成されている。また、各撹拌パドル42は、送り撹拌部を有し、戻り止め部は設けられていない。
【0035】
図3乃至図5を参照して破砕パドル41の構造を説明する。
破砕パドル41は、回転軸40の外周部を貫通し回転軸40の直径線方向に延長して固定された円管状の桿体43を有している。桿体43の先端には、羽根板44が固定されている。羽根板44は、回転軸40の軸線方向に対し所要角度で傾斜させて固定されており、その先端縁部は、処理室3の胴部30の内周面の形状に沿うように緩やかな円弧状に形成されている。桿体43と羽根板44は、送り撹拌部を構成するものである。
【0036】
後述する撹拌パドル42の羽根板47を含め、各羽根板44は全部が被処理物を同じ方向へ送ることができるように同じ方向へ傾斜させてある。なお、各羽根板44の傾斜角度は、本実施の形態では回転軸40の軸線方向に対し30°に設定されているが、これに限定されるものではなく、適宜設定することができる。
【0037】
前記桿体43と回転軸40には、戻り止め板45が一体的に固定されている。図4、図5に示すように、戻り止め板45は、外縁形状が涙滴形様(涙滴形の尖った部分を除去したような形状)又は洋梨型様の形状を有する板体であり、幅がやや狭く窄まった基部側(符号省略)と、幅が広く円弧形状に形成された先部側(符号省略)により構成されている。戻り止め板45は、基部側が桿体43に固定されており、基部側と先部側のほぼ中間部が回転軸40を貫通させて回転軸40に固定されている。
【0038】
戻り止め板45の先部側は、桿体43とは反対側に延出されており、円弧形状の外縁部には、円弧部分の全長にわたり両刃の刃部450が形成されている。刃部450には、先端側を除く両側部のそれぞれ複数箇所(本実施の形態では三箇所)にほぼV字形に切り込んで刃部450を寸断する切込部451が形成されている。また、戻り止め板45の先部側の中心部には、回転軸40の外径とほぼ同じ内径を有する円形の圧抜き穴452が表裏面を貫通して形成されている。
【0039】
戻り止め板45の形状について、さらに具体的には、本実施の形態では、刃部450の円弧部の最大幅(直径)は、処理室3の胴部30の内径の略1/2の長さである。なお、この長さは、これに限定されず、40〜60%の長さの範囲で設定することもできる。また、回転軸40の位置における両側の側縁の位置は、回転軸40の中心と胴部30内面との距離の略1/2又は1/2以下である。これらの値が1/2をはるかに超えると、後述する塊状物を咬み込む空間、具体的には豚の頭を咬み込ませる空間部39が狭くなり、豚の頭の処理ができないか、又はできにくくなる。
【0040】
また、戻り止め板45は、回転軸40の位置から胴部30の内面に向けて両側縁が広がる(末広がりになる)方向に形成され、回転軸40と胴部30の内面との距離の略1/2の位置から先は半円弧状又は略半円弧状に形成されており、縁部が略半円弧状の刃部450外周縁と胴部30内面との間に塊状物を咬み込む空間部、具体的には豚の頭を咬み込ませる空間部39が形成されている。前記刃部450に設けられた切込部451は、処理する塊状物を咬み込みやすくするものである。
【0041】
前記桿体43に固定されている羽根板44は、その先端部を処理室3の胴部30の内面との間に若干の隙間を設けた状態で回転移動する。また、前記戻り止め板45は、その先端部を処理室3の胴部30の内面との間に若干の隙間を設けた状態で回転移動する(図4(b)参照)。なお、各破砕パドル41は、それぞれの桿体43が交互に回転軸40の軸周方向において反対方向(180°を成す方向)を向くように設けられている。
【0042】
図3、図6、図7を参照して撹拌パドル42の構造を説明する。
撹拌パドル42は、回転軸40の外周部を貫通し回転軸40の直径線方向に延長して固定された円管状の桿体46を有している。桿体46の先端には、羽根板47が固定されている。羽根板47は、回転軸40の軸線方向に対し所要角度で傾斜させて固定されており、その先端縁部は、処理室3の胴部30の内周面の形状に沿うように緩やかな円弧状に形成されている。桿体46と羽根板47は、送り撹拌部を構成するものである。
【0043】
前記羽根板47は全部が被処理物を同じ方向へ送ることができるように同じ方向へ傾斜させてある。なお、各羽根板47の傾斜角度は、本実施の形態では前記破砕パドル41の羽根板44と同様に回転軸40の軸線方向に対し30°に設定されているが、これに限定されるものではなく、適宜設定することができる。
【0044】
前記桿体46と回転軸40には、戻り止め板48が一体的に固定されている。図6、図7に示すように、戻り止め板48は、外縁形状が涙滴形様の形状を有する板体であり、幅が広く円弧形状に形成された基部側(符号省略)と、幅がやや狭く窄まった先部側(符号省略)により構成されている。戻り止め板48は、基部側の中心部が回転軸40を貫通させて回転軸40に固定され、先部側が桿体46に固定されている。戻り止め板48の外形は、前記破砕パドル41の戻り止め板45よりやや小さく形成されており、圧抜き穴は設けられていない。
【0045】
前記桿体46に固定されている羽根板47は、その先端部を処理室3の胴部30の内面との間に若干の隙間を設けた状態で回転移動する(図6(b)参照)。なお、各撹拌パドル42は、それぞれの桿体46が交互に回転軸40の軸周方向において反対方向(180°を成す方向)を向くように、なおかつ各破砕パドル41の桿体43とは、直角方向(90°を成す方向)向くように設けられている。
【0046】
(作用)
図1ないし図7を参照して、本実施の形態に係る乾燥処理装置Aの作用を被処理物が豚である場合を例にとり説明する。
まず、燃焼室6のバーナー61に点火して加熱室2に加熱空気を送り、処理室3を加熱し、撹拌体4を駆動装置5によって回転させる。そして、ケーシング1の上部の蓋装置12の蓋板120を開け、投入部11から被処理物である豚を丸のままの状態で所要頭数を処理室3内に投入する。その後、蓋板120は閉じる。
【0047】
投入された各豚は、撹拌体4の回転軸40に設けられている各破砕パドル41と各撹拌パドル42で撹拌されながら、主に各破砕パドル41の戻り止め板45の刃部450によって骨ごと順次切断される。この切断及び破砕は、被処理物の重さにより主に処理室3内の底部において行われ、戻り止め板45の刃部450が処理室3の胴部30の内面に近接して回転移動するのに伴い、胴部30の内面と刃部450で被処理物を挟み切るようにして行われる。また、このとき空間部39において、刃部450に形成されている各切込部451によって、例えば頭部等の太い骨がより確実に切断され、或いは砕かれて肉と共に小片化され細かくなる。
【0048】
戻り止め板45による被処理物の切断及び破砕と並行して、被処理物は各破砕パドル41と撹拌パドル42の桿体43、46及び羽根板44、47によって撹拌されながら、処理室3内において回転軸40の軸線方向の一方向へ送られる。なお、被処理物である豚は脂肪率が高く、処理室3内は油で滑りやすくなるが、被処理物は骨まで切断及び破砕されることによって細かくなっており、撹拌の際に一塊にはなりにくく、効率的に撹拌される。一方向へ送られた被処理物は、処理室3の端壁31又は端壁32で止まり、後続して送られてくる被処理物によって押されて端部において圧力が高まる。
【0049】
さらに端部近傍に位置する破砕パドル41及び撹拌パドル42の桿体43、46及び羽根板44、47によって高温・高圧下で一定時間強く摩砕されながら混練される。この際には、被処理物は、自身が高圧になることで、圧力が開放される方向、すなわち前記送り方向とは逆方向へ戻ろうとする。しかし、回転移動している破砕パドル41及び撹拌パドル42の戻り止め板45、48によってその戻りが一部止められるので、被処理物の高い圧力は維持される。なお、圧力が高まった被処理物は、一部が破砕パドル41の戻り止め板45の圧抜き穴452を通り抜けて戻ることができるようにしてあり、被処理物の圧力が過剰に高まることを防止している。
【0050】
このような高温・高圧下での処理が所定時間行われると、制御部によって撹拌体4の回転方向が切り替えられ、撹拌体4は前記とは逆方向に回転する。これにより、被処理物は処理室3内において前記とは逆方向に送られ、処理室3内の端部において前記と同様に高温・高圧下での処理が所定時間行われる。なお、前記処理中、処理室3において内部に被処理物がない側は、温度がより高温になっており、撹拌体4の回転方向が切り替えられて被処理物が移動してきたときも十分に高い温度で効率的な処理を行うことができる。
【0051】
撹拌体4の回転方向は、一定時間毎に切り替わるように制御されており、前記処理を繰り返すことにより、被処理物は加熱されて乾燥が進み、次第に粉化する。この処理に伴って処理室3の内部で発生する処理ガス(臭気成分や可燃成分が残存しているガス)は、前記処理ガス送気管7を通り、燃焼室6へ送られて燃焼室6の内部で加熱空気によって二次燃焼して消臭が行われる。そして、消臭された処理ガスは加熱空気と共に前記熱風路22を通り加熱室2の内部に送給され、処理室3を加熱した後、排気口21から大気中へ排出される。
【0052】
そして、処理時間がある時間を超えると、最後には、理由は定かではないが、骨片がやや大きいまま残っていたとしても、それを含め被処理物全体が一気に粉化する。なお、粉化した処理物は、いうまでもなく処理中の高温・高圧によって十分に滅菌(殺菌)されている。最後に、処理室3内の処理物は、蓋装置34の蓋板341を開けてシュート36を通し外部へ排出されて、必要に応じて飼料などとして利用される。
【0053】
なお、本明細書で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0054】
A 乾燥処理装置
1 ケーシング
10 フレーム
11 投入部
12 蓋装置
120 蓋板
121 ハンドルバー
2 加熱室
20 空隙部
21 排気口
22 熱風路
3 処理室
30 胴部
31、32 端壁
33 ブラケット
34 蓋装置
340 アーム
341 蓋板
35 ハンドル
36 シュート
37 モーター台
38 熱保護板
39 空間部
4 撹拌体
40 回転軸
41 破砕パドル
42 撹拌パドル
43 桿体
44 羽根板
45 戻り止め板
450 刃部
451 切込部
452 圧抜き穴
46 桿体
47 羽根板
48 戻り止め板
49 軸受
5 駆動装置
50 モーター
51 伝達系
6 燃焼室
60 端壁
61 バーナー
7 処理ガス送気管
70 ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を乾燥し粉化する乾燥処理装置であって、
両端側に端壁(31,32)を有し投入部(11)と排出部を有する処理室(3)と、
該処理室(3)内に設けられた撹拌体(4)と、
前記処理室(3)を加熱する加熱室(2)と、
該加熱室(2)に加熱空気を送る燃焼室(6)と、
を備えており、
前記撹拌体(4)は、
駆動系によって正逆回転方向に駆動される回転軸(40)と、
該回転軸(40)に所要数設けられ、前記処理室(3)内面に沿うように回転移動し被処理物を撹拌しながら処理室(3)内において回転軸(40)の軸線方向に送る送り撹拌部(43,46,44,47)と、
前記回転軸(40)に所要数設けられ、回転に伴い一部又は外周部が前記処理室(30)内面に近接して移動し、被処理物が前記送り撹拌部(43,46,44,47)によって処理室(30)の一方の端壁(31,32)側へ送られて圧力が高くなったときに被処理物が逆方向へ戻りにくいようにする戻り止め部(45,48)と、
を備えており、
前記戻り止め部(45,48)の外周部には被処理物を切断又は破砕する刃部(450)が形成されており、該刃部(450)には刃部(450)を刃渡り方向において寸断する所要数の切込部(451)が形成されている、
乾燥処理装置。
【請求項2】
被処理物を乾燥し粉化する乾燥処理装置であって、
両端側に端壁(31,32)を有し投入部(11)と排出部を有する処理室(3)と、
該処理室(3)内に設けられた撹拌体(4)と、
前記処理室(3)を加熱する加熱室(2)と、
該加熱室(2)に加熱空気を送り、前記処理室(3)を加熱すると共に処理室(3)の排気部(11,7)から排出される処理ガスを導入し二次的に燃焼させて消臭する燃焼室(6)と、
を備えており、
前記撹拌体(4)は、
駆動系(5)によって正逆回転方向に駆動される回転軸(40)と、
該回転軸(40)に所要数設けられ、前記処理室(3)内面に沿うように回転移動し被処理物を撹拌しながら処理室(3)内において回転軸(40)の軸線方向に送る送り撹拌部(43,46,44,47)と、
前記回転軸(40)に所要数設けられ、回転に伴い外周部の先端が前記処理室(3)内面に近接して移動し、被処理物が前記送り撹拌部(43,46,44,47)によって処理室(3)の一方の端壁(31,32)側へ送られて圧力が高くなったときに被処理物が逆方向へ戻りにくいようにする戻り止め部(45,48)と、
を備えており、
前記戻り止め部(45)の先部側の外周部には被処理物を切断又は破砕する縁部形状が円弧状の刃部(450)が形成され、該刃部(450)と前記回転軸(40)の間の部分の幅は円弧部の直径より狭く又は回転軸(40)方向へ窄まるように形成されており、
前記刃部(450)には、刃部(450)を刃渡り方向において寸断する所要数の切込部(451)が形成されており、刃部(450)両側には処理室(3)内面との間に塊状物を咬み込む空間(39)が設けられている、
乾燥処理装置。
【請求項3】
送り撹拌部(43,46,44,47)と戻り止め部(45,48)を一体的に形成し、送り撹拌部(43,46,44,47)と、戻り止め部(45,48)の刃部(450)が回転軸(40)の軸周方向において回転軸(40)を挟んで反対側に設けられている、
請求項1又は2記載の乾燥処理装置。
【請求項4】
乾燥処理装置に使用される撹拌体であって、
駆動系によって正逆回転方向に駆動される回転軸(40)と、
該回転軸(40)に所要数設けられ、前記処理室(3)内面に沿うように回転移動し被処理物を撹拌しながら処理室(3)内において回転軸(40)の軸線方向に送る送り撹拌部(43,46,44,47)と、
前記回転軸(40)に所要数設けられ、回転に伴い一部又は外周部が前記処理室(30)内面に近接して移動し、被処理物が前記送り撹拌部(43,46,44,47)によって処理室(30)の一方の端壁(31,32)側へ送られて圧力が高くなったときに被処理物が逆方向へ戻りにくいようにする戻り止め部(45,48)と、
を備えており、
前記戻り止め部(45,48)の外周部には被処理物を切断又は破砕する刃部(450)が形成されており、該刃部(450)には刃部(450)を刃渡り方向において寸断する所要数の切込部(451)が形成されている、
撹拌体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−102930(P2012−102930A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251108(P2010−251108)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(592120036)
【Fターム(参考)】