説明

乾燥状態コーティングプロセス

本発明は基質をコーティングするための乾燥状態プロセスであって、該プロセスが以下の工程:(A)以下の成分:(i)コーティング物質の粒子;及び、(ii)基質の粒子;を含む混合物を形成すること;ここで、基質又は少なくともその一部分;及び/又は、コーティング物質又は少なくともその一部分;はガラス転移を起こすことができるものであること;及び、(B)工程(A)で形成された混合物を、ガラス転移を起こすことができる基質又はその部分、又はコーティング物質、又はその部分のガラス転移点以上の温度で焼結することによりコーティングされた基質を形成すること;を含む上記プロセスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は基質をカプセル化するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
フィルムコーティングは基質又はコア上に物質の薄層を付着させるプロセスである。プロセスは一般的には固体剤型(例えば錠剤、カプセル)、食料成分、農産品(例えば種子、果実)等をカプセル化するために使用される。
【0003】
フィルムコーティングは周囲からの機能的障壁を与え、これにより、例えば大気中の酸素、熱、光、水分又はpHによる基質に対する有害作用を回避する。機能的障壁を与えることは更に、コーティングされた物質の遅延、制御及び/又は持続放出を可能にする。
【0004】
剤型においては、フィルムコーティングは活性成分の制御された送達を可能にし、例えば胃液の酸度に対して耐性であるコーティング物質は基質コア形態を不活性化から保護することができる。頻繁には、これ等の「腸溶性」コーティングはまた腸管のような塩基性の環境において分解する性質を有する。
【0005】
食品技術において、フィルムコーティングは典型的には、例えばフレーバーの損失を防止すること、又は水分の浸透を最小限にすることにより保護機能を与えている。更に又フィルムコーティングは製品の美的外観を向上させる場合が多い。マイクロカプセル化もまた、特定の成分の不快な味をマスキングするため、及び/又は、カプセル化された成分の放出を正しい場所及び正しい時間に制御するためにも使用されている。成分の制御放出は食品添加物の有効性を向上させ、食品成分の応用範囲を広範化し、そして最適用量を確保することができる。
【0006】
通常は、フィルムコーティングのプロセスはベーカリー内で基質粒子を回転させること、又は、空気クッション上に基質粒子を浮遊させること、及び粒子上へのコーティング懸濁液の霧状化された液滴の微細ミストを連続的に噴霧させて液滴を粒子表面上に癒着させてフィルムコーティングを形成することを包含する。溶媒の蒸発の後に、基質表面上に密着したフィルムが残存する。
【0007】
文献記載の多くのカプセル化のプロセスが存在するが、大多数はプロセスの実施において、例えば噴霧乾燥、流動床コーティング又は界面重合において、溶媒の使用を必要とする。
【0008】
有機溶媒系のコーティング懸濁液は通常はその望ましくない毒性及び炎症性の観点から回避される。更に又、排気管系統から噴霧中に発生する有機溶媒の排ガスを再生することは高経費を要する場合が多く、一部の場合においては法的必要事項となる。結果的に、不良な接着特性を伴っている場合が多いにも関わらず、水系のコーティング懸濁液が一般的にはより望ましいものとなる。一般的に水系コーティング組成物は基質粒子上に噴霧されるヒドロコロイド又はセルロースのような重合体の水溶液を基本としている。
【0009】
例えば、特許文献1(Chr.Hansen,Inc.)は医薬品の錠剤、食品及び菓子製品をコーティングする場合に使用するための乾燥粉末フィルムコーティング組成物を開示しており、それは粉末セルロース性重合体(例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース)、アカシアガム及び粉末食用可塑剤を包含する膜形成剤を含んでいる。アカシアガムはヒドロキシプロピルメチルセルロースの廉価代替品として使用されている。使用前にコーティング組成物を水と混合し、その後基質に噴霧する。得られるフィルムコーティングは透明で、光沢があり、耐久性に優れており、そして非常に経済的である。
【0010】
文献に記載されている多くのカプセル化プロセスのうち、大多数はプロセスの実施(例えば噴霧乾燥、流動床コーティング、界面重合)において溶媒の使用を必要とする。少量の溶媒のみを使用する(例えばGlatt粉末コーター顆粒化装置プロセス)か使用しない乾燥コーティングプロセスの報告は遥かに少数である。
【0011】
好都合なことに、乾燥コーティング技術は最小限の溶媒(又は溶媒を全く使用しない)及びそれに伴う廃棄物で異なる粒径の粒子を直接結合することができる。原理は微細及び粗放な粒子の混合物に機械的な力を適用することにより、コーティング粒子がファンデルワールス力で表面に保持される程度に十分小型であるオーダードミクスチュアを形成することに基づいている。追加的な機械的作用によりこれ等の粒子に非多孔性フィルム又は多孔性層の形態の連続コーティングを形成させることができる。
【0012】
一部の乾燥コーティングプロセスはコーティング物質を分散させるか、又は、コーティング粒子をコア物質中に包埋するかの何れかの為に多大な機械的剪断を使用する(例えばHowokawaのMechanofusion(登録商標)、Nara MachineryのHybridizer(登録商標)、後述)のに対し、他のものはコア粒子をコーティングするために磁力を使用している(Aveka,Incの磁気支援衝撃コーティングMAIC)。他のものは遠心力を使用している(例えばNew Jersey Institute of Technologyの回転流動床コーターRFBC)。これ等の方法はコーティングとコア物質をどのように接触させるかにおいては異なっているが、大部分はオーダードミクスチュアから(ルーズ表面コーティング)、又は、コア表面上へのコーティング粒子の包埋から形成されたコーティングをもたらす。
【0013】
上記した通り、乾燥コーティングプロセスの一例は「Mechanofusion(登録商標)」である(非特許文献1)。この手法は粒子上で作用する高剪断及び圧縮の力の組合せを介して表面融合を形成する。このプロセスではチャンバー内にある量のコア及び粉末形態のコーティング物質を測り入れる。ボウルが回転しながら粉末を強制的に循環させ、固定圧縮ヘッドと側壁との間で圧縮されるようにする。強力な力が十分な局所的熱を発生させ極めて強力な物理的及び化学的結合で物質を1つに融合させる。
【0014】
別の乾燥コーティングプロセスはHonda等により記載されている(非特許文献2)。この方法では機械化学的処理を利用した乾燥衝撃ブレンドプロセスを行う。この方法ではコア粉末表面上の微細粒子のランダムな配列をオーダード状態に変化させることができる。更に又、コア粉末表面上の重合体又は金属の微細粒子が機械化学的作用により部分的に溶融し、軟化したワックス様粒子が衝撃回数に相応して各コア粉末表面上に形成する。この方法では相互作用混合物を形成するためにコアと壁面物質を機械的にブレンドする第1の工程を行う。典型的には、これは遠心回転型のバッチミキサー(例えばMechanomill MM−10型、Okadaseiko Co.Ltd,Tokyo)を用いて達成される。第2の工程ではコンポジット粒子又はカプセル化粒子を製造するためにオーダードミクスチュアの機械的衝撃ブレンドを行う。典型的には、ジャケット付の衝撃型ハイブリダイゼーション機械を用いる(例えばHybridizer(登録商標)0型、Nara Machinery Co.,Ltd.Tokyo)。この機械においては、粉末(オーダードミクスチュア)を機械の中心部内にシュートを経由して供給し、そしてローターの高速により発生した遠心力により周囲方向に噴射する。分散した粉末粒子が10000rpm超で回転している回転打撃ピンを殴打する。その結果、粉末はその表面上で機械的衝撃を受けてブレンドされ、周囲に到達した粉末は循環経路に再進入し、そして機械の中心に戻る。このサイクルを連続反復する。
【0015】
上記した通り、一部の乾燥コーティングの手法はコア粒子をコーティングするために磁力を使用し、その例は磁気支援衝撃コーティング「MAIC」である(非特許文献3)。この手法は「よりソフト」であり、そしてコア及びシェルの粒子と共に混入されているより大型の磁性粒子を加速して回転させるために外部からの振動磁場を使用し、これにより粒子間及び装置壁面との衝突を促進する。これにより極めて良好な混合が起こり、そしてコア粒子表面上へのシェル粒子の接着コーティングを促進するために十分大きい機械的応力が発生する。好都合にも、この手法は無視できる程度の熱の発生及び物質の形状及び大きさの最小限の変化を与えるのみである。
【0016】
当該分野で知られた他の乾燥コーティング手法は回転流動床コーティング(RFBC)(Pfefferら、前出)である。この手法ではホスト及びゲストの粉末混合物を回転床内に入れ、そして円筒状のディストリビューターの多孔性壁面を通過する気体の放射状の流動により流動化する。高速の回転により、極めて高い遠心力及び剪断力が流動化気体−粉末系内に発生し、ゲスト粒子の凝集塊の破壊をもたらす。
【特許文献1】国際公開第02/19987号パンフレット
【非特許文献1】Dry Coating o Powder Materials;Vol.15,No.2,March/April 2003,p132−134
【非特許文献2】Chimicaoggi,June1991,p21−26;Colloids and Surfaces A:Physicochemical and Engineering Aspects,82(1994),117−128
【非特許文献3】Pfefferら、Synthesis of Engineered Particulates with Tailored Properties Using Dry Particle Coating;Powder Technology,Vol.117,Issue 1−2,June 4,2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は基質をコーティングするための代替となる乾燥状態カプセル化プロセスを提供することを目的としている。特に本発明は有意な機械的、衝撃性、摩擦性又は圧縮性の力を必要としない乾燥コーティングプロセスを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(発明の陳述)
本発明の特徴を以下に、そして添付請求項に記載する。
【0019】
本発明の第1の特徴は基質をコーティングするための乾燥状態プロセスに関し、該プロセスは下記工程:
(A)下記成分:
(i)コーティング物質の粒子;及び、
(ii)基質の粒子;
を含む混合物を形成すること;
ここで、
基質又は少なくともその一部分;及び/又は、
コーティング物質又は少なくともその一部分;
はガラス転移を起こすことができるものであること;及び、
(B)工程(A)で形成された混合物を、ガラス転移を起こすことができる基質又はその部分、又はコーティング物質、又はその部分のガラス転移点以上の温度で焼結することによりコーティングされた基質を形成すること;
を含む。
【0020】
第2の特徴は本発明のプロセスにより得ることができるコーティングされた基質に関する。
【0021】
第3の特徴は本発明のプロセスにより得られたコーティングされた基質に関する。
【0022】
第4の特徴は本発明によるコーティングされた基質を含む食料品に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(発明の詳細な説明)
上記した通り、本発明の第1の特徴は基質をコーティング又はカプセル化するための乾燥状態プロセスに関し、該プロセスは上記した工程を含む。
【0024】
好都合にも、そして従来技術の乾燥コーティングプロセスとは対照的に、本発明は如何なる有意な機械的、衝撃性、摩擦性又は圧縮性の力も存在しない状態で進行される乾燥状態カプセル化プロセスを提供する。これにより、カプセル化物質がより容易に、そしてより高い経費効率で製造できるようになり、そして特殊な装置及び長時間のプロセス実施時間の必要性が回避される。現プロセスは機械的な力の非存在下で起こるため、穏やかに取り扱う必要性があるコア物質、例えば崩壊し易い、又は、脆いもの、容易に変形するもの、又は、上昇した温度で溶融又は軟化する恐れのあるものと共に使用する場合に特に適している。プロセスはカプセル化される物質の形状又は大きさを有意に改変しない。更にまた、場合により酸化、光及び水分の移行に対抗して保護を行うことがわかっている数種の食品等級の重合体コーティング物質の特徴を利用している。
【0025】
本明細書においては、「乾燥状態」という用語は溶媒の最小限の量の存在下でプロセスが起こることを意味する。好ましくは、プロセスは溶媒の全くの非存在下に起こる。
【0026】
本明細書においては、「焼結」という用語は成分の融点未満の温度まで成分を加熱することにより、即ち溶融させること無く加熱することにより、粒子間の接着を増大させることにより、粒子混合物を密着した塊とするプロセスを指す。
【0027】
乾燥コーティング(又は乾燥カプセル化)プロセスは、固体「コア」物質の粒子(本明細書においては「基質粒子」とも称する)のオーダード配列と好ましくはコア粒子よりも少なくとも1桁小さい粒径を有する固体コーティング物質の粒子との間に起こる。次にコア物質を包囲するコーティング粒子のオーダードミクスチュアを、例えば、コーティング(又はコア)のガラス転移を達成可能とする加熱様式に付すことによりコーティング(又はコア)物質のガラス転移を利用することを介して、永久的なものとする。
【0028】
混合物の温度がコーティング(又は基質)物質のガラス転移点を超過するに従い、物質はガラス状からゴム状の状態に転換する。この時点において、物質は粘着性となり、そして隣接する粒子が接触点において融合する。例えば、これは相互に、およびコアに融合するコーティング粒子、又は、隣接するコーティング粒子に融合するコア粒子であることができる。
【0029】
好ましくは、本発明のプロセスはコーティング物質の連続シェルによりカプセル化された基質をもたらす。
【0030】
「カプセル化」又は「カプセル化する」という用語は当該分野で良く知られている。カプセル化は基質(固体、液体、気体)を別の物質中に封入する技術として定義される。カプセル化物においては、捕獲されている物質はコア物質又は内相と称され、一方カプセル化している物質はコーティング又はシェル物質又は担体と称される。このようなカプセル化された物質は又一般的にはコア/シェル物質とも称される。
【0031】
本発明の1つの好ましい実施形態においては、混合物を振蘯する(agitate)。好都合には、ある程度の振蘯によりコーティングされた粒子がガラス転移到達時に相互に接着することが防止できる。
【0032】
1つの好ましい実施形態においては、混合物は攪拌により振蘯される。好ましくは、プロセスはプロセス中に粒子を運動状態に維持するための5パドルブレートを装着した例えばLodigeM5型のようなジャケット付ミキサー中で実施する。コーティング粒子及び基質粒子を閉鎖された容器中で組合せることによりオーダードミクスチュアを形成し、その後ミキサーのバレル中に投入する。混合物は同時にコーティング(又はコア)物質のガラス転移点以上の温度まで加熱され、そして振蘯されることによりコーティングされた粒子が相互に粘着することを防止する。プロセス実施時間は分単位であり、粒子を吐出して冷却することにより最終生成物を得る。
【0033】
別の好ましい実施形態においては、混合物を振動装置を用いて振蘯する。例えば、プロセスはコーティング物質及び基質物質のオーダードミクスチュアを密封容器に投入し、次にこれを振動装置、例えばJanke&Kunkel VF2ミキサーに連結することにより実施される。次にセットアップ全体を温度制御された環境、例えば対流式オーブン内に入れる。このセットアップにより、連続カプセル化層を形成するために必要なコーティング(又はコア)物質のガラス転移点以上の温度まで混合物が上昇し、そしてガラス転移点を超過するに従いコーティングされた粒子が凝集するのを防止するために十分な振蘯がもたらされる。
【0034】
別の好ましい実施形態においては、流動床を用いて混合物を振蘯、即ち、混合物を流動化する。
【0035】
気体−固体流動化系においては、流動化気流の表面速度(単位面積当たりの速度)が固体粒子の見かけの重量を超過した時点において粒子は流動化空気により自由に支持されるようになり、そして床は流動化されたといえる。個々の粒子が相互から分離される点は最小流動化速度(umf)として知られており、そしてこの点において、床は流動化開始したといえる。流動化空気の表面速度が増大すれば、固体粒子の間の距離も又、固体粒子が床外に輸送(いわゆる圧気輸送)されるまで増大する。小型及び大型の粒子が同様の粒子密度を有する系においては、小型粒子が最初に床外に輸送されることになる。
【0036】
好ましくは、適当な運転温度はコア物質の最小流動化速度より高値のものとなる。大部分の流動床は床外に輸送される微細粒子をリサイクルする為の機構を装着できる。
【0037】
より好ましくは、系はumfとコーティング粒子の圧気輸送開始の間の範囲で運転される。
【0038】
数種の変形が可能であり、例えば、1つの好ましい実施形態においては、流動床に基質物質及びコーティング物質を投入することができる。
【0039】
代替となる好ましい実施形態においては、2成分を混合した後に投入することにより、オーダードミクスチュアを形成させた後に、流動床に進入することができる。
【0040】
別の代替となる好ましい実施形態においては、これ等の2つの方策の組合せを用い、その場合、第1のコーティング物質をコア物質と組み合わせることによりオーダードミクスチュアを形成し、そして内容物が流動化されている時点で次に第2のコーティング物質を床に添加する。この方法の利点は流動床(例えばTiO)の篩底を通過する非常に微細なコーティング粒子の損失を最小限にする点である。1つの好ましい実施形態においては、第2のコーティング物質はTiO又はSiOである。
【0041】
好ましくは、加熱された湿潤した空気を流動化ガスとして使用する。好ましくは、プロセス実施時間は分単位である。加熱の後、冷却する必要はなく、最終生成物は即座に流動床から吐出させることができる。
【0042】
1つの好ましい実施形態においては、プロセスは如何なる実質的な機械的な力も存在しない状態で実施する。例えば、従来技術のプロセスとは対照的に、請求項記載のプロセスは急速に運動するインペラーブレードと容器壁面の間の空間に発生してコア物質の変形をもたらす場合がある有意な剪断力の非存在下において実施する。このような機械的な力は、粒子が強力な剪断及び圧縮の力に付される回転容器壁面と固定圧縮ヘッド(スクレーパー)の間の狭小な空隙に粒子が強制的に挟まれるため、Mechanofusion(登録商標)装置の運転と一体となるものである。これらの剪断及び圧縮の力がコア物質上にコーティング粒子を「融合」させるために必要な熱エネルギーを発生させる。
【0043】
別の好ましい実施形態においては、プロセスを如何なる実質的な衝撃力も存在しない状態で実施する。例えば、プロセスの好ましい実施形態ではパドルブレートミキサーの使用を行うが、緩徐なブレート回転を唯一使用することにより系を混合状態に維持するが、それはコーティング物質が融合してカプセル化粒子が形成される機序に寄与しない。このことは従来技術に記載したNara Hybridizer(登録商標)の機能に一体となっており、6ブレード高速ローターにより供給される「衝撃型ハイブリダイゼーション」(Honda,Kimura,Matsuno,Koishi,Preparation of composite and encapsulated powder particles by dry impact blending,ChimiaOggi,June1991,p21−26)とは有意に異なる。
【0044】
別の好ましい実施形態においては、プロセスは如何なる実質的な摩擦力も存在しない状態で実施する。例えば、従来技術のプロセスとは対照的に、請求項記載のプロセスは高剪断インペラーにより促進される高衝撃粒子−粒子衝突の非存在下(Nara Hybridizer(登録商標))において、又は、狭小空隙を通過する粒子の加速(Mechanofusion(登録商標))を介して、実施される。特に流動床を使用する好ましい実施形態においては現在のプロセスの間に一部の粒子−粒子の接触が存在するが、流動床は低い摩滅特性を有すると考えられており(無摩擦とモデル化される場合もある)、これ等の接触は空気上の粒子の懸垂により生じ、そして高速インペラー作用による粒子の加速により生じるものではない。
【0045】
別の好ましい実施形態においては、プロセスは如何なる実質的な圧縮力も存在しない状態で実施する。例えば、従来技術のプロセスとは対照的に、請求項記載のプロセスはコア粒子にコーティングを融合させるために必要な熱エネルギーを発生させる上気したMechanofusion(登録商標)装置において使用されているもののような強力な圧縮力の非存在下で実施される。
【0046】
本発明の乾燥状態カプセル化プロセスはガラス転移を起こすことができる全ての物質又は物質の混合物に適用できる。コーティングのためにはガラス転移を呈さない物質も使用可能であるが、ただしそれらは実際にガラス転移点を示す物質と組み合わせた混合物として、又は、ガラス転移点を呈する基質物質をコーティングするための何れかにおいて使用される。好都合なことに、コーティング物質の組合せを使用することはカプセル化の性質を大きく変更できるが自身はガラス転移を起こさない疎水性のTiO又はSiOのような添加物の配合を可能にする。
【0047】
無定形(amorphous)(ガラス転移を呈する)コーティング物質を使用する場合、この方法のための適当な基質(コア)物質は何れかの固体粒子(例えば栄養物、ミネラル、保存料)である。コーティング物質(又は混合物)がガラス転移を呈することができない場合は、基質(コア)物質はヒドロコロイド及び噴霧乾燥粉末(例えばフレーバー)のようなガラス転移を起こすことができるものに限定される。
【0048】
1つの好ましい実施形態においては、コーティング物質又は少なくともその一部分はガラス転移を起こすことができる。好ましくは、この実施形態のためには、焼結温度はコーティング物質の隣接粒子を相互に融合させるために十分である。代替の好ましい実施形態においては、焼結温度は基質にコーティング物質の粒子を融合するために十分である。代替の好ましい実施形態においては、焼結温度は基質にコーティング物質の隣接粒子を相互に、又はそして基質に融合するために十分である。
【0049】
本発明の別の好ましい実施形態においては、基質又は少なくともその一部分はガラス転移を起こすことができる。好ましくは、この実施形態のためには、焼結温度は基質をコーティング物質の粒子に融合させるために十分である。
【0050】
本発明の更に別の好ましい実施形態においては、コーティング物質又は少なくともその一部分及び基質又は少なくともその一部分はガラス転移を起こすことができる。好ましくは、この実施形態のためには、焼結温度は基質をコーティング物質の粒子に融合させるため、及び、コーティング物質の隣接粒子を相互に融合させるために十分である。
【0051】
プロセスを奏功させるためには、工程(A)で形成される混合物が、コーティング物質粒子がより大型の基質粒子に接着しているオーダードミクスチュアを形成できることが必須である。
【0052】
「オーダードミクスチュア」という用語は密着性の粒子を混合する際に観察される自己組立系を記載するために最初にHersey(1975,Orderd Mixtures−A New Concept in Powder Mixing Practices,Powder Technology,11(1),41−44)により造語され、そしてより粗放な粒子の表面に接着している微細粒子の重量が一定である秩序を有する単位を指すために使用されている。場合により相互作用混合物(Egermann,H.&Orr,N.A.,1983、Ordered Mixtures & Interactive Mixtures,Powder Technology,36(1),117)とも称されるオーダードミクスチュアは大型及び小型の粒子よりなる系を指し、この場合、小型粒子は自発的に自身をより大型のものの周囲に配列させ、そしてより大型の粒子の表面に接着する。これ等の密着性粒子の混合物は自由流動粒子により形成されるランダムな混合物よりも高度に均質である(Honda,H.;Kimura,M.;Honda,F.;Matsuno,T.;Koishi,M.,1994,Preparation of Monolayer Particle Coated Powder by the Dry Impact Blending Process Utilizing Mechanochemical Treatment,Colloids and Surfaces:A Physicochemical and Engineering Aspects,82,117−128)。微細コーティング粒子とより粗放なコア物質との間の接着は主にファンデルワールス力により駆動されていると考えられている(Youles,J.,2003,Engineered Particles through Mechano Chemical Action,Powder Technology,15(2),132−134)。
【0053】
従って理想的にはコーティング物質の粒子は基質の大きさよりも有意に小さいことが必要であり、好ましくは少なくとも1桁の大きさの相違を有する。
【0054】
即ち、好ましくは、基質の平均粒子サイズはコーティング物質の平均粒子サイズよりも少なくとも約1桁大きい。
【0055】
本発明の別の好ましい実施形態においては、基質の平均粒子サイズはコーティング物質の平均粒子サイズよりも約1〜約2桁大きい。
【0056】
1つの好ましい実施形態においては、基質の平均粒子サイズはコーティング物質の平均粒子サイズよりも約2桁超大きい。
【0057】
通常は粒子混合物において大きさが有意に異なることは分離をもたらすが、より小型の粒子が1又は2桁小さい場合は、オーダードミクスチュアが頻繁には自発的に形成され、その場合、小型粒子がより大型のものに接着する。上記した通り、オーダードミクスチュアは1つの成分粉末上の微細粒子の第2の系のより粗放な「担体」粒子への結合として定義(Hersey,1975,Ordered mixing−a new concept in powder mixing practice,Powder Technology,11,41)され、そして粒子が粒子間の相互作用、例えば吸着、化学吸着、静電気力、ファンデルワールス力又は摩擦力(多くの場合これらの力の組み合わせ)により配列しているため、ランダム混合物のものとは異なっている。これ等の粒子間相互作用の結果として、オーダードミクスチュアは通常の混合物よりも分離に対してより安定である(Hersey,1975,Ordered mixing−a new concept in powder mixing practice,Powder Technology,11(1),41.;Egermann&Orr,1983,Ordered Mixtures & Interactive Mixtures,Powder Technology,36(1),117)。
【0058】
1つの好ましい実施形態においては、基質対コーティング物質の比は約85〜95%対約5〜約15%である。
【0059】
1つの高度に好ましい実施形態においては、基質対コーティング物質の比は約90%対約10%である。
【0060】
理想的にはコーティング物質は狭小な粒径分布を有さなければならない。即ち、好ましくはコーティング物質は約1.2未満のSpan値を有する粒径分布を有し、ここでSpanは(D90−D10)/D50として計算される。
【0061】
理想的には基質は狭小な粒径分布を有さなければならない。即ち、好ましくは基質は約1.2未満のSpan値を有する粒径分布を有し、ここでSpanは(D90−D10)/D50として計算される。
【0062】
本明細書においては、「D90」という用語は粒子の90%が粒径においてそれ未満となる閾値であり、即ち、粒子の90%がD90値未満の直径を有する。
【0063】
本明細書においては、「D10」という用語は粒子の10%が粒径においてそれ未満となる閾値であり、即ち、粒子の10%がD10値未満の直径を有する。
【0064】
本明細書においては、「D50」という用語は粒子の50%が粒径においてそれ未満となる閾値であり、即ち、粒子の50%がD50値未満の直径を有し、そして、粒子の50%がD50値超の直径を有する。
【0065】
1つの特に好ましい実施形態においては、基質の平均粒子サイズ(d32)は約100〜約1000μm、より好ましくは約200〜約900μm、更により好ましくは約300〜約800μm、なお好ましくは約300〜約500μmである。基質がスクロースである場合は、平均粒子サイズは好ましくは約300〜約500μmである。
【0066】
1つの特に好ましい実施形態においては、コーティング基質の平均粒子サイズ(d32)は約5〜約150μmm、より好ましくは約50〜約150μmm、さらに好ましくは約100〜約150μmmである。好ましくは、基質が糖である場合は、コーティング物質の平均粒子サイズは約100〜約150μmmである。
【0067】
上記した通り、コーティング物質及び/又は基質、又はそれぞれのその一部分はガラス転移を起こすことができなければならない。
【0068】
本明細書においては、「ガラス転移」という用語は無定形の固体においてそれが特定の温度範囲にまで加熱される場合に起こる可逆的な変化を指す。
【0069】
無定形固体は原子の位置にもはや長距離に亘る秩序が無くなった固体である。無定形固体は2つの異なる状態、即ち「ゴム状の」状態及び「ガラス状の」状態で存在できる。それらがガラス状及びゴム状の状態の間で転移する温度をそれらのガラス転移点、即ちTgと称する。ガラス転移は、むしろ、堅固でガラス状又は脆い状態から可撓性又はエラストマー性の状態への突然の転移を特徴としている。転移は、ガラス転移の範囲より低温では固体で通常はコイル状、交絡した、そして不動である重合体分子鎖が、自由に回転して相互に通り過ぎることができるようになる場合に起こる。ガラス転移点は重合体間で広範に変動し、そしてその範囲は大部分の重合体において比較的小さい。ガラス転移はまた「ガンマ転移」又は「2次転移」としても知られている。
【0070】
1つの好ましい実施形態においては、コーティング物質又は少なくともその一部分はガラス転移を起こすことができる。好ましくは、この実施形態のためには、基質は何れかの基質、例えば何れかの固体粒子であることができる。適当な基質は、例えば食料基質、食品添加物、栄養物、ミネラル、保存料、鋳造物、医薬品、例えば錠剤又はカプセル、結晶及び農業用産品、例えば植物種子又は果実を包含する。
【0071】
好ましくは、基質は食料基質である。より好ましくは、基質は結晶糖、キシリトール及びヒドロコロイド(例えばペクチン、カラギーナン、アルギネート)から選択される。1つの高度に好ましい実施形態においては、基質は装飾用の糖、例えばPearl Maxi(Danisco,300〜500μm)である。
【0072】
1つの好ましい実施形態においては、基質は食料基質又は食品添加物である。
【0073】
コーティング物質又は少なくともその一部分がガラス転移を起こすことができる場合、好ましくはコーティング物質は重合体コーティング物質を含む。
【0074】
1つの特に好ましい実施形態においては、コーティング物質はセルロース重合体又はその誘導体を含む。より好ましくは、セルロース重合体又はその誘導体はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)から選択される。
【0075】
他の適当な重合体は食品等級の重合体、例えばガム類(アラビア、カラヤ、トラガカント、タラ、グア、ガッティー、ジェラン、キサンタン)及び多糖類(寒天、ローカストビーンガム、コンニャク、アルギネート、カラギーナン、ペクチン、プルラン、カードラン)を包含する。
【0076】
別の好ましい実施形態においては、コーティング物質はデキストリン、ゼラチン化澱粉、変性澱粉、加水分解澱粉、ポリデキストロース(例えばLitesse(登録商標))、単糖類又は2糖類を含み、その少なくとも一部分は無定形の形態である。
【0077】
1つの好ましい実施形態においては、コーティング物質は全体、又は実質的に全体が無定形の形態である。
【0078】
1つの好ましい実施形態においては、コーティング物質は2種以上の物質の混合物である。例えば、コーティング物質は上記した物質1つ以上と他の成分1つ以上、例えば疎水性因子1つ以上との組合せを含んでよい。
【0079】
他の適当な別の成分は例えば顔料1つ以上である。
【0080】
1つの高度に好ましい実施形態においては、コーティング物質はTiO及び/又はSiOを含む。
【0081】
1つの極めて好ましい実施形態において、基質は糖であり、そしてコーティング物質はカルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)を含む。
【0082】
別の特に好ましい実施形態において、基質は糖であり、そしてコーティング物質はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HMPC)を含む。
【0083】
別の特に好ましい実施形態において、基質は糖であり、そしてコーティング物質はカルボキシメチルセルロースナトリウム/TiOの混合物を含む。好ましくは、カルボキシメチルセルロースナトリウム:TiOの比は約95:5〜80:20、より好ましくは約90:10である。
【0084】
更に別の好ましい実施形態において、基質は糖であり、そしてコーティング物質はカルボキシメチルセルロースナトリウム/SiOの混合物を含む。好ましくは、カルボキシメチルセルロースナトリウム:SiOの比は約95:5〜80:20、より好ましくは約90:10である。
【0085】
好ましくは、コーティング物質がHMPC、NaCMC又はHMPC及びNaCMCを含有する混合物を含む場合、工程(B)では少なくとも80℃の温度(即ち最小作用が観察される温度)において混合物を焼結する。より好ましくは、工程(B)では少なくとも約100℃の温度において混合物を焼結する。なお更に好ましくは、工程(B)では少なくとも約120℃の温度において混合物を焼結する。
【0086】
1つの高度に好ましい実施形態においては、混合物は約120℃の温度で焼結する。
【0087】
上記した通り、本発明の1つの目的は分解又は不活性化から保護された形態の基質を提供することである。しかしながら、基質は当然ながら必要時に放出されなければならない。
【0088】
好ましくは、コーティングは酸化、水分取り込み及び光による分解の1つ以上から基質を保護することができる。
【0089】
本発明の1つの実施形態において、コーティングは基質の変性又は不活性化を防止、低減又は抑制するために選択される。好ましくは防止すべき変性は熱分解、pH誘導分解、プロテアーゼ分解及びグルタチオン付加物形成から選択される要因1つ以上によるものである。
【0090】
本発明の別の特徴は本発明のプロセスにより得ることができるコーティングされた基質に関する。
【0091】
本発明の更に別の特徴は本発明のプロセスにより製造されたコーティングされた基質に関する。
【0092】
本発明の別の特徴は本発明によりコーティングされた基質を含む食料品に関する。
【0093】
好ましくは、食料品はベーカリー、ファインベーカリー(fine bakery)、乳製品、畜肉又は菓子製品である。
【0094】
本発明は更に、実施例により、そして以下の図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0095】
全試料は、カプセル化試料と同じ条件下に処理されている未コーティングのスクロースの試料である「プロセス対照」の基準に従って評価している。
【0096】
増大した水分耐性のためのデコレーションシュガーのコーティング
実施例1
コア材料:デコレーションシュガー(Pearl Maxi,Danisco,300〜500μm)
コーティング物質:カルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)[高粘度等級、CalBioChem]
コーティング物質は平均粒子サイズ(d32)77μmを有する極めて高粘度のNaCMCを選択した。示差操作熱量分析(DSC)試験(加熱範囲25〜200℃;加熱速度20℃/分;中点T測定)を用いてTを測定し、60℃の値を得た。Tを測定するためのDSCの使用は当該分野で知られており、そして何れかの適当なDSC装置(例えばPerkin Elmer DSC装置、又はSetarim DSC France)を用いて測定できる。手法に関するより詳細な説明はHatley,R.H.(Dev Biol Stand.1992;74:105−19;discussion119−22)に記載されている。Tの文献記載値はRoos,Y.およびKarel,M.(Differential Scanning Calorimetry Study of Phase Transitions Affecting the Quality of Dehydrated Materials,Biotechnology Progress,6(2):159−163,1990)に記載されている。
【0097】
コーティング物質120g(10:90のコーティング:コア比に合致し、圧気輸送を通じて可能性のある損失に対応するために、必要量より10%多い)及びコア物質1kgをAeromatic−Fielder AG,EX型流動床の生成物チャンバー内に添加した。混合物を微細コーティング粒子が床から圧気送出されないように40m/hrの低気流において流動化した。全試行につき、コーティング物質のガラス転移に到達するために必要な温度を下げるために流動化空気は湿潤化した。3試行において、流動化空気はそれぞれ80℃、100℃又は120℃に設定した。流動化を6分間継続した後に流動化空気流を停止し、生成物チャンバーを空にした。
【0098】
生成物は80%相対湿度(RH)に維持した湿度チャンバー内で試験した。2gの試料をガラスペトリ皿に入れ、計量し、次に24時間曝露し、その後取り出して再度計量した。全試験を2連で実施した。試行はプロセス対照を用いながら実施することにより結果を評価した。
【0099】
図2に示す通り、プロセス実施温度120℃を用いた場合に、プロセス対照と比較して水分取り込みのほぼ50%の低下が達成された。
【0100】
実施例2
コア材料:デコレーションシュガー(Pearl Maxi,Danisco,300〜500μm)
コーティング物質:90gNaCMC、10gTiO[AFDC−300、Kemira]又は10gSiO[SipernateS22、Degussa]
試行に用いたNaCMCは実施例1と同じ等級とした。SiOの平均粒子サイズ(d32)は7μmであった。TiOの平均粒子サイズ(d32)は270nmであった。コーティング物質は9:1の重合体:SiOのブレンド物とすることにより、コア物質周囲に連続したコーティングが形成されるようにした。
【0101】
コーティング物質を閉鎖された容器内で混合した後に、コア物質を添加した。コア物質を添加した後、オーダードミクスチュアをAeromatic−Fielder AG,EX型流動床の生成物チャンバーに添加した。混合物は6分間、湿潤化された導入空気及び120℃に6分間維持された温度を用いて、40m/hrの低空気流において流動化し、その後、生成物チャンバーを空にした。
【0102】
試料は実施例1と同様に湿度チャンバー内で試験した。結果を図3に示す。
【0103】
実施例3
コア材料:デコレーションシュガー(Pearl Maxi,Danisco,300〜500μm)
コーティング物質:90gNaCMC、10gTiO[AFDC−300、Kemira]
TiOの平均粒子サイズ(d32)は270nmであった。コーティング物質は9:1の重合体:TiOのブレンド物とすることにより、コア物質周囲に連続したコーティングが形成されるようにした。オーダードミクスチュアは閉鎖された容器内でNaCMC及びコア物質を混合することにより形成した。次に混合物をAeromatic−Fielder AG,EX型流動床の生成物チャンバーに移した。二次コーティング物質(TiO)は生成物チャンバーの直下で流動床に進入する可撓性パイプを介して流動床に添加した。二次コーティング物質は篩底を通過させて流動化空気上の生成物チャンバー内に送り込み、そこでオーダードミクスチュアと組み合わせた。二次コーティング物質を添加した後、(湿潤化)流動化空気の温度を120℃に設定し、床内容物を6分間流動化した。その後、流動化を停止し、そして生成物チャンバーを空にした。
【0104】
試料は実施例1と同様に湿度チャンバー内で試験した。
【0105】
実施例4
コア材料:デコレーションシュガー(Pearl Maxi,Danisco,300〜500μm)
コーティング物質:120gHPMC[Methocel E4M、Dow Corning]
コーティング物質は平均粒子サイズ(d32)77μmを有するHPMCを選択した。DSC試験(加熱範囲25〜200℃;加熱速度20℃/分;中点T測定)を用いてTを測定し、108℃の値を得た。
【0106】
HPMC及びコア物質を閉鎖された容器中で混合することによりオーダードミクスチュアを形成した。次に混合物をAeromatic−Fielder AG,EX型流動床の生成物チャンバーに移した。二次コーティング物質を添加した後、(湿潤化)流動化空気の温度を120℃に設定し、床内容物を6分間流動化した。その後、流動化を停止し、そして生成物チャンバーを空にした。
【0107】
試料は実施例1と同様に湿度チャンバー内で試験した。結果を図4に示す。
【0108】
総括すれば、本発明は有意な機械的、衝撃性、摩擦性又は圧縮性の力の非存在下で進行される乾燥状態カプセル化プロセスを提供する。
【0109】
カプセル化プロセスは固体コア物質粒子のオーダード配列と、自身の粒径がコアより少なくとも1桁小さい固体コーティング物質の粒子との間に起こる。コア物質を包囲するコーティング粒子のオーダードミクスチュアは、例えば一方又は他方のガラス転移を到達可能とする加熱様式に付すことにより、コーティング(又はコア)物質のガラス転移の利用を介して永久的なものとなる。
【0110】
本発明の種々の変更及び変形が本発明の範囲及び精神を外れることなく当業者の知利得るものとなる。本発明は特定の好ましい実施形態に関連して説明しているが、請求項記載の本発明はそのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないと理解すべきである。実際、関連分野の当業者に明白である本発明を実施するための記載した様式の種々の変更は本発明に包含されることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1は本発明の乾燥コーティングプロセスの模式図である。
【図2】図2はプロセス対照、及びそれぞれ80℃、100℃及び120℃で焼結したNaCMCでコーティングした糖に関する規格化された水分の取り込み(%増大/%対照増大)を示す。
【図3】図3はプロセス対照、120℃で焼結し3:1の割合のNaCMC:TiOの混合物でコーティングした糖、及び120℃で焼結し3:1の割合のNaCMC:SiOの混合物でコーティングした糖に関する規格化された水分の取り込み(%増大/%対照増大)を示す。
【図4】図4はプロセス対照、120℃で焼結しNaCMCでコーティングした糖、及び120℃で焼結しHPMCでコーティングした糖に関する規格化された水分の取り込み(%増大/%対照増大)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基質をコーティングするための乾燥状態プロセスであって、該プロセスが下記工程:
(A)下記成分:
(i)コーティング物質の粒子;及び、
(ii)基質の粒子;
を含む混合物を形成すること;
ここで、
該基質もしくは少なくともその一部分;及び/又は、
該コーティング物質もしくは少なくともその一部分;
は、ガラス転移を起こすことができるものであること;及び、
(B)工程(A)で形成された混合物を、ガラス転移を起こすことができる基質もしくはその部分、又はコーティング物質もしくはその部分のガラス転移点以上の温度で焼結することによりコーティングされた基質を形成すること;
を含む上記プロセス。
【請求項2】
前記混合物が振蘯される、請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
前記混合物が攪拌により振蘯される、請求項2記載のプロセス。
【請求項4】
前記混合物が振動装置を用いて振蘯される、請求項2記載のプロセス。
【請求項5】
前記混合物が流動床を用いて振蘯される、請求項2記載のプロセス。
【請求項6】
前記混合物が流動化される、前記請求項の何れかに記載のプロセス。
【請求項7】
機械的、衝撃性、摩擦性又は圧縮性の力の非存在下で実施される、前記請求項の何れかに記載のプロセス。
【請求項8】
前記コーティング物質もしくは少なくともその一部分が、ガラス転移を起こすことができる、前記請求項の何れかに記載のプロセス。
【請求項9】
前記焼結温度が、前記コーティング物質の隣接粒子を相互に融合させるために十分である、請求項8記載のプロセス。
【請求項10】
前記焼結温度が、前記コーティング物質の粒子を前記基質に融合させるために十分である、請求項8記載のプロセス。
【請求項11】
前記焼結温度が、前記コーティング物質の隣接粒子を相互に、そして前記基質に融合させるために十分である、請求項8記載のプロセス。
【請求項12】
前記基質もしくは少なくともその一部分がガラス転移を起こすことができる、前記請求項の何れかに記載のプロセス。
【請求項13】
前記焼結温度が、前記基質を前記コーティング物質の粒子に融合させるために十分である、請求項12記載のプロセス。
【請求項14】
前記コーティング物質もしくは少なくともその一部分及び前記基質もしくは少なくともその一部分が、ガラス転移を起こすことができる、前記請求項の何れかに記載のプロセス。
【請求項15】
前記焼結温度が、前記基質をコーティング物質の粒子に融合させるため、及び、前記コーティング物質の隣接粒子を相互に融合させるために十分である、請求項14記載のプロセス。
【請求項16】
前記基質の平均粒子サイズが、コーティング物質の平均粒子サイズよりも少なくとも1桁大きい、前記請求項の何れかに記載のプロセス。
【請求項17】
前記基質の平均粒子サイズが、コーティング物質の平均粒子サイズよりも大きさにおいて1〜2桁大きい、前記請求項の何れかに記載のプロセス。
【請求項18】
前記基質の平均粒子サイズが、コーティング物質の平均粒子サイズよりも大きさにおいて2桁超大きい、前記請求項の何れかに記載のプロセス。
【請求項19】
基質対コーティング物質の比が、約85〜95%対約5〜約15%である、前記請求項の何れかに記載のプロセス。
【請求項20】
基質対コーティング物質の比が、約90%対約10%である、前記請求項の何れかに記載のプロセス。
【請求項21】
前記コーティング物質が、約1.2未満のSpan値を有する粒径分布を有し、ここでSpanは(D90−D10)/D50として計算される、前記請求項の何れかに記載のプロセス。
【請求項22】
前記基質が、約1.2未満のSpan値を有する粒径分布を有し、ここでSpanは(D90−D10)/D50として計算される、前記請求項の何れかに記載のプロセス。
【請求項23】
前記コーティング物質が重合体コーティング物質を含む、前記請求項の何れかに記載のプロセス。
【請求項24】
前記コーティング物質がセルロース重合体又はその誘導体を含む、前記請求項の何れかに記載のプロセス。
【請求項25】
前記セルロース重合体又はその誘導体が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)から選択される、前記請求項の何れかに記載のプロセス。
【請求項26】
前記コーティング物質が、デキストリン、ゼラチン化澱粉、変性澱粉、単糖類又は2糖類を含み、その少なくとも一部分が無定形である、請求項1〜22の何れか1項に記載のプロセス。
【請求項27】
前記コーティング物質が無定形である、請求項26記載のプロセス。
【請求項28】
前記コーティング物質が疎水性因子を更に含む、前記請求項の何れかに記載のプロセス。
【請求項29】
前記コーティング物質がTiO及びSiOから選択される疎水性因子を更に含む請求項28記載のプロセス。
【請求項30】
前記コーティング物質もしくは少なくともその一部分が、ガラス転移を起こすことができ、そして、基質が何れかの固体粒子である、前記請求項の何れかに記載のプロセス。
【請求項31】
前記基質が、食品基質、食品添加物、栄養物、ミネラル及び保存料から選択される、請求項30記載のプロセス。
【請求項32】
前記基質が食品基質である、請求項31記載のプロセス。
【請求項33】
前記基質が、結晶糖、キシリトール及びヒドロコロイドから選択される、請求項31記載のプロセス。
【請求項34】
前記基質が糖であり、そしてコーティング物質がカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む、請求項31記載のプロセス。
【請求項35】
前記基質が糖であり、そしてコーティング物質がヒドロキシプロピルメチルセルロース(HMPC)を含む、請求項31記載のプロセス。
【請求項36】
前記基質が糖であり、そしてコーティング物質がカルボキシメチルセルロースナトリウム/TiOの混合物を含む、請求項31記載のプロセス。
【請求項37】
前記カルボキシメチルセルロースナトリウム:TiOの比が約3:1である、請求項36記載のプロセス。
【請求項38】
前記基質が糖であり、そしてコーティング物質がカルボキシメチルセルロースナトリウム/SiOの混合物を含む、請求項31記載のプロセス。
【請求項39】
前記カルボキシメチルセルロースナトリウム:SiOの比が約3:1である、請求項38記載のプロセス。
【請求項40】
工程(B)が、少なくとも80℃の温度において混合物を焼結することを包含する、請求項31〜39の何れか1項に記載のプロセス。
【請求項41】
工程(B)が、少なくとも100℃の温度において混合物を焼結することを包含する、請求項31〜40の何れか1項に記載のプロセス。
【請求項42】
工程(B)が、少なくとも120℃の温度において混合物を焼結することを包含する、請求項31〜41の何れか1項に記載のプロセス。
【請求項43】
前記基質の平均粒子サイズ(d32)が、約100〜約1000μmである、前記請求項の何れかに記載のプロセス。
【請求項44】
前記基質の平均粒子サイズ(d32)が、約300〜約500μmである、前記請求項の何れかに記載のプロセス。
【請求項45】
前記コーティング物質の平均粒子サイズ(d32)が、約5〜約150μmである、前記請求項の何れかに記載のプロセス。
【請求項46】
前記コーティング物質の平均粒子サイズ(d32)が、約100〜約150μmである、前記請求項の何れかに記載のプロセス。
【請求項47】
請求項1〜46の何れか1項のプロセスにより得ることができるコーティングされた基質。
【請求項48】
請求項1〜46の何れか1項のプロセスにより製造されたコーティングされた基質。
【請求項49】
請求項47又は請求項48に記載のコーティングされた基質を含む食料品。
【請求項50】
ベーカリー、ファインベーカリー、乳製品、畜肉又は菓子製品である、請求項49記載の食料品。
【請求項51】
添付する実施例の何れか1つを参照しながら本明細書において実質的に説明される基質をコーティングするための乾燥状態プロセス。
【請求項52】
添付する実施例の何れか1つを参照しながら本明細書において実質的に説明されるコーティングされた基質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−501629(P2009−501629A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522094(P2008−522094)
【出願日】平成18年7月17日(2006.7.17)
【国際出願番号】PCT/IB2006/002437
【国際公開番号】WO2007/010396
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(397060588)ダニスコ エイ/エス (67)
【Fターム(参考)】