説明

乾燥装置及び乾燥方法

【課題】密閉処理室の密閉性を損なうことなく、乾燥力を高めた乾燥装置を提供する。
【解決手段】チャンバ20の貫通孔29には、処理室21内のファン51とチャンバ20外の動力源に連結された動力伝達軸53が挿通されている。圧力調整手段は、処理室21内を常圧以上の第1の圧力状態と、常圧よりも低い第2の圧力状態とに切り替える。状態切替手段は、チャンバ20と動力伝達軸53との間を気密に固定する気密状態と、気密を解いて動力伝達軸53を回転可能とする回転可能状態と、を切り替える。制御手段は、処理室21内を第1の圧力状態とし、チャンバ20と動力伝達軸53との間の気密を解いて、ファン51を高速回転させて被乾燥体を高速流動気体により急速加熱する。また、処理室21内を第2の圧力状態とし、チャンバ20と動力伝達軸53との間を気密とすることにより、被乾燥体を真空乾燥する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥装置及び乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
密閉処理室内を真空状態にした後不活性ガスを導入し、ファンを回転させて加熱した不活性ガスを循環させて被乾燥物を加熱し、その後、密閉処理室内を真空にすることにより収容された被乾燥物を乾燥させる乾燥装置がある。
【0003】
上述の乾燥装置には、密閉処理室の密閉性を損なうことなく、密閉処理室内に設けられたファンを回転させるために、磁気継手機構が用いられている。磁気継手機構は、先端に永久磁石を有する一対の円柱状の動力伝達軸を備えている。そして、その一対の動力伝達軸は、隔壁を挟んだ状態で、密閉処理室の内側及び外側に、永久磁石の極性が互いに逆になるように配設されている。そして、磁気継手機構は、外側の動力伝達軸が回転すると、磁力により内側の動力伝達軸が回転するように構成されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
また、密閉処理室の密閉性を損なうことなく、密閉処理室内に設けられたファンを回転させる他の構造として、上述の乾燥装置には、オイルシール構造が用いられている。オイルシール構造では、密閉処理室に形成された貫通孔と、該貫通孔に挿通された動力伝達軸との間に、オイルシールが配設されている(例えば、特許文献2を参照)。
【0005】
また、密閉処理室の密閉性を損なうことなく、密閉処理室内に設けられたファンを回転させる他の構造として、上述の乾燥装置には、メカニカルシール構造が用いられている。メカニカルシール構造は、動力伝達軸に動力伝達軸と直角な円盤部を設け、この円盤部を、両側から、押圧部で挟むように構成されている(例えば、特許文献3)。
【0006】
また、密閉処理室の密閉性を損なうことなく、密閉処理室内に設けられたファンを回転させる他の構造として、上述の乾燥装置には、磁性流体シール構造が用いられている。磁性流体シール構造では、密閉処理室に形成された貫通孔と、該貫通孔に挿通された動力伝達軸との間に磁性流体が配設されている(例えば、特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−231338号公報
【特許文献2】特開2011−117550号公報
【特許文献3】特開平7−208612号公報
【特許文献4】特開2008−38988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の磁気継手機構では、外側の動力伝達軸の回転速度を所定の回転速度以上にすると、内側の動力伝達軸がその回転速度に追従できず、内側の動力伝達軸にいわゆる「すべり」が生じてしまう。そのため、上記の磁気継手機構では、内側の動力伝達軸を所定の回転速度以上に上げることができない。従って、上記の磁気継手機構では、ファンを高速に回転させることができず、密閉処理室内の気体の循環速度を上げることができず、ひいては、大きな乾燥力を得ることができない。
【0009】
また、特許文献2に記載のオイルシール構造では、動力伝達軸が回動できるように、貫通孔と動力伝達軸との間が強固に固定されていない。そのため、密閉処理室の圧力が高真空、例えば1Pa程度の場合、密閉処理室の密閉性を保つことができない。
【0010】
また、特許文献3に記載のメカニカルシール構造では、円盤部と押圧部とが常に当接しているので、動力伝達軸の回転速度を上げると、円盤部は押圧部から大きな摩擦抵抗を受ける。そのため、動力伝達軸を所定の回転速度以上に上げることができない。従って、特許文献3に記載の構造では、ファンを高速に回転させることができず、密閉処理室内の気体の循環速度を上げることができず、ひいては、大きな乾燥力を得ることができない。
【0011】
また、特許文献4に記載の構造では、動力伝達軸の回転速度を上げると、磁性流体が遠心力で飛散してしまう。そのため、動力伝達軸を所定の回転速度以上に上げることができない。従って、特許文献4に記載の構造では、ファンを高速で回転させることができず、密閉処理室内の気体の循環速度を上げることができず、ひいては、大きな乾燥力を得ることができない。
【0012】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、密閉処理室の密閉性を損なうことなく、乾燥力を高めた乾燥装置及び乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る乾燥装置は、
被乾燥体を収容する処理室を有するチャンバと、
前記処理室内に配置されたファンと、
前記チャンバに形成された貫通孔に挿通され、前記チャンバ内で前記ファンに連結され、前記チャンバ外で動力源に連結された動力伝達軸と、
前記処理室内を常圧又はそれ以上の圧力にある第1の圧力状態と、常圧よりも低い第2の圧力状態とに切り替える圧力調整手段と、
前記チャンバと前記動力伝達軸との間を気密に固定する気密状態と、前記チャンバと前記動力伝達軸との間の気密を解いて、前記動力伝達軸を回転可能とする回転可能状態と、を切り替える状態切替手段と、
前記処理室内に配設され、前記処理室内の気体を加熱する加熱装置と、
前記圧力調整手段により前記処理室内を前記第1の圧力状態とし、前記切替手段により、前記チャンバと前記動力伝達軸との間の気密を解いて、前記動力伝達軸を回転可能とし、前記動力源により前記動力伝達軸を介してファンを回転させて被乾燥体を流動気体により加熱し、前記圧力調整手段により前記処理室内を前記第2の圧力状態とし、前記切替手段により、前記チャンバと前記動力伝達軸との間を気密とすることにより、被乾燥体を真空乾燥する制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0014】
前記状態切替手段は、前記動力伝達軸の一端と他端との間に設けられて前記動力伝達軸と共に回転する板状の回転体と、前記回転体の板面と対向する位置に形成されている非回転部と、前記動力伝達軸を挿通させていると共に前記回転体と前記非回転部との間に配設されている弾性体からなる環状部材と、前記環状部材が気密的に前記回転体と前記非回転部との間で挟圧されている挟圧状態又は前記環状部材が挟圧状態から解除されている挟圧解除状態となるように、前記回転体又は前記非回転部を前記動力伝達軸の軸方向に移動させる移動機構と、
を備えていてもよい。
【0015】
前記非回転部は、前記チャンバに形成されていてもよい。
【0016】
さらに、前記動力伝達軸を挿通させている円筒部材を備え、
前記非回転部は、前記円筒部材に形成されていてもよい。
【0017】
前記円筒部材は、前記円筒部材の一部が前記チャンバの貫通孔に嵌入された状態で、前記動力伝達軸の軸方向に移動可能に配設されていてもよい。
【0018】
前記円筒部材のうち前記チャンバの貫通孔に嵌入された部位の外周面と前記チャンバの貫通孔の内周面との間には、弾性部材が配設されていてもよい。
【0019】
前記回転体は、中心軸線が前記動力伝達軸の中心軸線と略同一であって、前記動力伝達軸の軸方向に垂直に形成された円盤部であってもよい。
【0020】
前記環状部材は、前記回転体の板面に形成された溝に配設されていてもよい。
【0021】
前記環状部材は、前記非回転部に形成された溝に配設されていてもよい。
【0022】
前記環状部材は、中心軸線が前記動力伝達軸の中心軸線と略同一に配設されていてもよい。
【0023】
前記動力伝達軸は軟質片を有するVリングを備え、前記Vリングは前記軟質片が常に前記非回転部と接するように配設されていてもよい。
【0024】
前記非回転部は軟質片を有するVリングを備え、前記Vリングは前記軟質片が常に前記回転体又は前記動力伝達軸と接するように配設されていてもよい。
【0025】
前記圧力調整手段は、真空ポンプ又はガス供給装置であってもよい。
【0026】
前記目的を達成するために、本発明の第2の観点に係る乾燥方法は、
処理室内に被乾燥体を載置する工程と、
前記処理室内を常圧又はそれ以上の圧力にある第1の圧力状態とする工程と、
前記チャンバと該チャンバを貫通する動力伝達軸との間の気密状態を解いて、前記チャンバの外部より前記動力伝達軸を回転して、前記動力伝達軸に連結されているファンを回して、前記処理室内の加熱された気体を流動させて被乾燥体を加熱する工程と、
前記処理室内を常圧よりも低い第2の圧力状態とする工程と、
前記チャンバと該チャンバを貫通する前記動力伝達軸との間を気密に固定し、気密状態を維持して、被乾燥体を真空乾燥する工程と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、密閉処理室の密閉性を損なうことなく、乾燥力を高めた乾燥装置及び乾燥方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る真空乾燥処理装置を模式的に示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る真空乾燥処理装置の要部である図1のA部を拡大して示す図であり、(a)は、チャンバを処理室側に移動させた状態を示す図であり、(b)は、チャンバを処理室とは反対側に移動させた状態を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る真空乾燥処理装置を用いてワークを乾燥させる工程を示すグラフである。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る真空乾燥処理装置の要部を示す図であり、(a)は、封止環を処理室側に移動させた状態を示す図であり、(b)は、封止環を処理室とは反対側に移動させた状態を示す図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る真空乾燥処理装置の要部を示す図であり、(a)は、封止環を処理室側に移動させた状態を示す図であり、(b)は、封止環を処理室とは反対側に移動させた状態を示す図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る真空乾燥処理装置の要部を示す図であり、(a)は、封止環を処理室側に移動させた状態を示す図であり、(b)は、封止環を処理室とは反対側に移動させた状態を示す図である。
【図7】本発明の第5の実施形態に係る真空乾燥処理装置の要部を示す図であり、(a)は、封止環を処理室側に移動させた状態を示す図であり、(b)は、封止環を処理室とは反対側に移動させた状態を示す図である。
【図8】本発明の第6の実施形態に係る真空乾燥処理装置の要部を示す図であり、(a)は、封止環を処理室側に移動させた状態を示す図であり、(b)は、封止環を処理室とは反対側に移動させた状態を示す図であり、(c)は、(b)のB部を拡大して示す図である。
【図9】本発明の第7の実施形態に係る真空乾燥処理装置の要部を示す図であり、(a)は、封止環を処理室側に移動させた状態を示す図であり、(b)は、封止環を処理室とは反対側に移動させた状態を示す図である。
【図10】本発明の第8の実施形態に係る真空乾燥処理装置の要部を示す図であり、(a)は、封止環を処理室側に移動させた状態を示す図であり、(b)は、封止環を処理室とは反対側に移動させた状態を示す図である。
【図11】本発明の第9の実施形態に係る真空乾燥処理装置の要部を示す図であり、(a)は、封止環を処理室側に移動させた状態を示す図であり、(b)は、封止環を処理室とは反対側に移動させた状態を示す図であり、(c)は(b)のC部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は、下記の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、下記の実施形態及び図面に変更を加えることが出来るのはもちろんである。
【0030】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る真空乾燥処理装置について説明する。
【0031】
図1に示すように、真空乾燥処理装置10は、チャンバ20と、真空装置40と、ファンユニット50と、制御部100と、を備えている。尚、図1に示す真空乾燥処理装置10の、図面上側を「上側」、図面下側を「下側」、図面左側を「左側」、図面右側を「右側」、として以下説明する。
【0032】
チャンバ20は、左側に密閉扉20aを有し、略直方体の箱状に形成されている。また、チャンバ20の内部には、ワークWを乾燥させるための処理室21が形成されている。
【0033】
処理室21には、ワークWを載置するためのワーク載置台24が設けられている。処理室21の右側壁近傍には、ファンユニット50のファン51が配設されている。ファン51は、多数の羽を有する円筒部51aと、底部51bと、を有する有底円筒状のシロッコファンである。
【0034】
ファン51の円筒部51aの外周近傍には、円筒部51aから吐出された気体を加熱するための、コイル状に形成されたヒータ22が設けられている。尚、ヒータ22は、プレート状のものであってもよい。
【0035】
ファン51とワーク載置台24との間には、隔板23が設けられている。隔板23は、ファン51の円筒部51aの外径よりやや小さな径を有する小径円筒部23aと、その小径円筒部23aより大径の大径円筒部23bとを有し、軸方向の中途部に段差を有する段付円筒状に形成された部材である。隔板23は、壁面の近傍と、その間の中間領域とを隔てる板である。
【0036】
処理室21では、ファン51が回転すると、図1の破線矢印に示すように、処理室21内の中間領域の気体は、円筒部51aの中心から吸い込まれ、円筒部51aの外周方向に吐出される。そして、ファン51から吐出された気体は、密閉扉20aに対して垂直な壁面の近傍を通って、密閉扉20a近傍に到達する。そして、気体はワークWの近傍を通って、再び、ファン51の円筒部51aの中心から吸い込まれる。以上のように、処理室21内の気体は、処理室21内を循環する。
【0037】
チャンバ20の上壁には、処理室21とチャンバ20の外部とを連通するガス導入口31が形成されている。ガス導入口31には導管32が接続されている。導管32には、ガス導入弁33が接続されている。また、ガス導入弁33には、ガス供給装置34が接続されている。処理室21とガス供給装置34とが連通するようにガス導入弁33を開くことにより、処理室21は、ガス供給装置34から窒素などの不活性ガスや乾燥空気を導入することができる。
【0038】
また、チャンバ20の右側壁には、処理室21とチャンバ20の外部とを連通する排気口36が形成されている。排気口36には導管37が接続されている。導管37には、ガス排気弁38が接続されている。ガス排気弁38は、外気方向にも切り替え可能な3方弁で形成されている。また、ガス排気弁38には、真空装置40が接続されている。
【0039】
真空装置40は、例えばロータリーポンプにより構成されている。尚、ガス排気弁38と真空装置40の間に、気体に含まれている水分を取り除くためのコールドトラップを設けてもよい。
【0040】
処理室21と真空装置40とが連通するようにガス排気弁38を開いた状態で真空装置40を作動させると、処理室21内の気体は、真空装置40に吸引されて、ガス排気弁38を通過し、真空装置40から排気される。これにより、処理室21内は真空状態となる。
【0041】
また、チャンバ20の右側壁には、処理室21とチャンバ20の外部とを連通する貫通孔29が形成されている。貫通孔29は、チャンバ20にファンユニット50を配設するための孔である。ファンユニット50は、処理室21内の気体を循環させるためのものである。ファンユニット50は、上述した処理室21内に配置されるファン51と、チャンバ20の外部に配置されるファンモータ52と、一端がファン51に連結され他端がファンモータ52に連結されると共に貫通孔29内に挿通されて右側壁と当接することなく回転する動力伝達軸53と、から構成されている。
【0042】
また、動力伝達軸53を所定の位置で安定して回転させるため、チャンバ20の外部には、動力伝達軸53の外周と当接する軸受59が設けられている。尚、図示していないが、動力伝達軸53をより一層安定して回転させるため、処理室21内にも、動力伝達軸53の外周と当接する軸受が設けられている。
【0043】
動力伝達軸53の一端は、後述するように、動力伝達軸53を貫通孔29へ挿通するために、ファン51の底部51bに着脱可能に接続されている。また、動力伝達軸53の他端には、回転軸の周方向にギアが形成されている。動力伝達軸53は、ギアがファンモータ52に設けられたギアと噛み合うように配設されている。また、動力伝達軸53のギアとファンモータ52のギアとの噛み合いを解除するため、ファンモータ52は、動力伝達軸53の軸方向に対して垂直な方向に移動可能に形成されている。
【0044】
また、動力伝達軸53を軸方向に移動させるため、チャンバ20の外部には、例えばリニアガイドのようなスライド機構(図示せず)が配設されている。スライド機構は、動力伝達軸53に連結することができる。これにより、ファンモータ52のギアとの噛み合いが解除された動力伝達軸53とファン51とを、動力伝達軸53の軸方向に移動させることができる。
【0045】
また、動力伝達軸53の軸方向の中途部、すなわち、一端と他端との間には、動力伝達軸53と共通の中心軸線を有する円盤状の円盤部55が形成されている。動力伝達軸53は、円盤部55がチャンバ20の右側壁の外側近傍に位置するように、チャンバ20の貫通孔29に挿通されている。尚、上述のとおり、ファン51は、動力伝達軸53と着脱可能に接続されている。そのため、動力伝達軸53をチャンバ20の貫通孔29に挿通させた後、処理室21の内側から、ファン51を動力伝達軸53に接続することができる。
【0046】
図2(a)に示すように、円盤部55のチャンバ20側の面には、チャンバ20側から見て動力伝達軸53と共通の中心軸線を有する円形状の、溝55aが形成されている。溝55aには、弾性部材から形成されたOリング56が配設されている。
【0047】
以上のように構成されたファン51及び動力伝達軸53の動作と作用について説明する。図2(a)に示すように、円盤部55に配設されたOリング56がチャンバ20の右側壁に圧接するまで、すなわち、Oリング56が円盤部55とチャンバ20との間で中心軸線方向に挟圧されるまで、ファン51及び動力伝達軸53を、処理室21方向(図1の左側)に移動させる。これにより、チャンバ20と動力伝達軸53との間が気密に固定され、処理室21は密閉状態となる。尚、ファン51及び動力伝達軸53の移動には、例えばリニアモータ(図示せず)などの駆動手段を用いることができる。
【0048】
また、図2(b)に示すように、円盤部55に配設されたOリング56がチャンバ20の右側壁から離間するように、すなわち、Oリング56が挟圧状態から解除されるように、ファン51及び動力伝達軸53を、処理室21から離間する方向(図1の右側)に移動させる。このとき、チャンバ20と動力伝達軸53との間の気密が解かれると共に、Oリング56はチャンバ20の右側壁から離間しているので、動力伝達軸53は、チャンバ20から摩擦抵抗を受けることなく、回転することができる。尚、このとき、円盤部55とチャンバ20との間には僅かな隙間が形成されているので、処理室21は密閉状態が解除されている。すなわち、処理室21はチャンバ20の外部と連通状態になっている。
【0049】
図1に戻り、制御部100は、コンピュータから構成され、真空乾燥処理装置10の動作を制御する。具体的には、制御部100は、制御部100内の記憶部に記憶された制御プログラムにしたがって、ヒータ22の加熱、ガス導入弁33及びガス排気弁38の開閉、ガス供給装置34、真空装置40、ファンモータ52の作動、等を制御するための制御信号を各部に供給することにより、図示しないドライバ駆動回路等を介して真空乾燥処理装置10の動作を制御する。
【0050】
また、処理室21には処理室内の圧力を計測する圧力センサ(図示せず)、及び処理室内の温度を検知する温度センサ(図示せず)が備えられている。
【0051】
次に、以上のように構成された本実施形態に係る真空乾燥処理装置10を用いたワークWの乾燥方法について、図1乃至図3を用いて説明する。
【0052】
(窒素置換工程)
まず、処理室21にワークWを導入する。そして、真空乾燥処理装置10の電源を投入する。制御部100は、処理室21を密閉状態にするために、円盤部55に配設されたOリング56がチャンバ20の右側壁に圧接するまで、ファン51及び動力伝達軸53を処理室21方向(図1の左側)に移動させる。(図2(a)参照)。次に、制御部100は、ガス排気弁38を開かせ、真空装置40を作動させる。これにより、図3の(a)に示すように、処理室21は減圧される。制御部100は、処理室21の真空度が所定の真空度、例えば10Paに達したら、真空装置40を停止させ、ガス排気弁38を閉じさせる。
【0053】
次に、制御部100は、ガス導入弁33を開かせ、ガス供給装置34を作動させる。これにより、図3の(b)に示すように、処理室21に窒素ガスが供給される。制御部100は、処理室21の気圧が大気圧とほぼ同じか、大気圧より僅かに高くなったら、ガス供給装置34を停止させ、ガス導入弁33を閉じさせる。
【0054】
(循環昇温工程)
次に、制御部100は、円盤部55に配設されたOリング56がチャンバ20の右側壁から離間するように(図2(b)参照)、ファン51及び動力伝達軸53を、処理室21から離間する方向(図1の右側)に移動させる。
【0055】
その後、制御部100は、ヒータ22のスイッチをオンさせると共に、ファン51を回転させるために、ファンモータ52を作動させる。これにより、ヒータ22により加熱させられた窒素ガスが、図1の破線矢印のように、処理室21内を循環する。循環した気体がさらにヒータ22より加熱させられるので、図3の(c)に示すように、処理室21の温度は上昇する。
【0056】
尚、このとき、上述のとおり、円盤部55に配設されたOリング56は、チャンバ20と当接していない(図2(b)参照)。そのため、動力伝達軸53が回転するとき、ファンモータ52に、摩擦抵抗による回転負荷がかからない。これにより、動力伝達軸53に接続されたファン51は、高速、例えば、1000(回転/分)で回転することができる。ファン51が高速で回転することにより、処理室21内の窒素ガスの循環速度が大きくなる。そして、ワークWには大きな循環速度を有する加熱された窒素ガスが衝突するので、ワークWの加熱速度が大きくなる。尚、制御部100は、窒素ガスが例えば200℃に加熱されるように、ヒータ22を制御している。
【0057】
尚、この工程において、円盤部55に配設されたOリング56がチャンバ20の右側壁から離間するように、ファン51及び動力伝達軸53を、処理室21から離間する方向(図1の右側)に移動させているので、処理室21はチャンバ20の外部と連通状態になっている。しかし、上述のとおり、処理室21の気圧は大気圧とほぼ同じか、大気圧より僅かに高いので、チャンバ20の外部の気体は処理室21に進入しない。
【0058】
(真空乾燥工程)
次に、制御部100は、ファン51の回転を停止させるためにファンモータ52を停止させる。尚、処理室21の温度を所定の高温に維持するため、ヒータ22のスイッチはオンの状態のままとする。次に、制御部100は、処理室21を密閉状態にするために、円盤部55に配設されたOリング56がチャンバ20の右側壁に圧接するまで(図2(a)参照)、ファン51及び動力伝達軸53を、処理室21方向(図1の左側)に移動させる。その後、制御部100は、ガス排気弁38を開かせ、真空装置40を作動させる。これにより、図3の(d)に示すように、処理室21が減圧される。このとき、処理室21の圧力を、例えば1.0×10−1Paまで下げる。その後、真空装置40を停止させて、ガス排気弁38を閉じさせる。この状態を所定の時間維持することにより、ワークWは乾燥させられる。
【0059】
尚、上述のとおり、処理室21の高温の気体は、真空装置40によって、チャンバ20の外へ排気されるが、ヒータ22は作動したままなので、処理室21の温度は所定の高温に維持される。
【0060】
(開放冷却工程)
次に、制御部100は、ヒータ22のスイッチをオフにして、ガス排気弁38を外気側に切り替える。そして、制御部100は、ガス導入弁33を開かせ、ガス供給装置34を作動させる。これにより、図3の(e)に示すように、処理室21に窒素ガスが供給される。尚、このとき、制御部100は、処理室21の気圧を大気圧とほぼ同じか、大気圧より僅かに高くなるように制御する。
【0061】
次に、制御部100は、円盤部55に配設されたOリング56がチャンバ20の右側壁から離間するように(図2(b)参照)、ファン51及び動力伝達軸53を、処理室21から離間する方向(図1の右側)に移動させる。そして、制御部100は、ファン51を回転させるために、ファンモータ52を作動させる。上述のとおり、ファン51が高速で回転することにより、処理室21内の窒素ガスの循環速度が大きくなる。そして、ワークWには大きな循環速度を有する窒素ガスが衝突するので、ワークWの冷却速度が大きくなる。
【0062】
図3の(f)に示すように、ワークWの温度が室温と同等の温度まで下がったら、ワークWを取り出す。
【0063】
以上で、真空乾燥処理装置10を用いたワークWの乾燥処理は終了する。尚、上記工程のうち、窒素置換工程を省略して、循環昇温工程から開始してもよい。また、上記のワークWの乾燥方法では、制御部100が真空乾燥処理装置10の動作を制御するようにしたが、上記工程のうちの一部を手動で行うようにしてもよい。
【0064】
以上説明したように、本実施形態の真空乾燥処理装置10によれば、円盤部55に配設されたOリング56がチャンバ20の右側壁に圧接するまで、ファン51及び動力伝達軸53を、処理室21方向に移動させるので、処理室21を密閉状態にすることができる。
【0065】
また、円盤部55に配設されたOリング56がチャンバ20の右側壁から離間するように、ファン51及び動力伝達軸53を、処理室21から離間する方向に移動させるので、チャンバ20から摩擦抵抗を受けることなく動力伝達軸53を回転させることができる。そして、ファン51を、高速で回転させることができるので、処理室21内の不活性ガスの循環速度を大きくすることができる。これにより、ワークWの加熱速度を大きくすることができるので、ワークWの乾燥時間を短縮することができる。
【0066】
尚、上記実施形態では、動力伝達軸53の円盤部55が、処理室21の外部に位置するように形成されていたが、処理室21の内部に形成されていてもよい。
【0067】
また、ファン51及び動力伝達軸53を、上述のリニアモータや回転式モータなどの駆動手段を用いて動力伝達軸53の軸方向へ移動させてもよいし、レバーなどを設けて手動で移動させてもよい。
【0068】
また、本実施形態では、動力伝達軸53とファンモータ52とがギアにより連結されているが、動力伝達軸53とファンモータ52とがベルトで連結されていてもよい。また、動力伝達軸53とファンモータ52のローターとが、直接接続されていてもよい。また、本実施形態では、ファン51はシロッコファンであったが、ターボファンであってもよい。
【0069】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る真空乾燥処理装置10について説明する。尚、本実施形態に係る真空乾燥処理装置10は、第1実施形態の真空乾燥処理装置10と、基本的な構成は同一であり、図1のA部のみが相違する。
【0070】
図4(a)に示すように、第1の実施形態と同様に、動力伝達軸53の軸方向の中途部には、動力伝達軸53と共通の中心軸線を有する円盤状の円盤部55が形成されている。
【0071】
また、処理室21の密閉性を高めるため、動力伝達軸53には、動力伝達軸53を巻回すると共に円盤部55のチャンバ20側の面と当接するように、Vリング57が取り付けられている。Vリング57は、ニトリルゴム、EPDM(エチレンプロピレンゴム)、フッ素ゴムなどの表面の摩擦係数が小さな弾性材料から形成されている。Vリング57は、薄板状に形成されたリップ部57aを有している。また、Vリング57は、動力伝達軸53と共に回転する。
【0072】
さらに、本実施形態では、動力伝達軸53と、チャンバ20の貫通孔29と間に生じた隙間を封じるための封止環60が設けられている。
【0073】
図4(a)に示すように、封止環60は、円筒部61と底部62とを有する略有底円筒状に形成された部材である。円筒部61のチャンバ20側の端面には、チャンバ20側から見て円形状の、溝61aが形成されている。溝61aには弾性部材からなるOリング65が配設されている。
【0074】
封止環60の底部62には、動力伝達軸53の直径より大きな直径の貫通孔62aが形成されている。また、底部62の円盤部55側の面には、円盤部55側から見て円形状の、溝62bが形成されている。また、溝62bには弾性部材からなるOリング66が配設されている。
【0075】
次に、封止環60及び動力伝達軸53のチャンバ20への取付方法について説明する。
まず、ファン51を取り外した動力伝達軸53を、チャンバ20の外部から貫通孔29に挿通する。そして、円盤部55がチャンバ20の右側壁の外側近傍に位置し、Vリング57のリップ部57aがチャンバ20の右側壁の外面と軽く当接するように、動力伝達軸53をチャンバ20に配設する。
【0076】
次に、封止環60の貫通孔62aを、チャンバ20の外部から動力伝達軸53に挿通させて、封止環60をチャンバ20の右側壁の近傍に配設する。その後、動力伝達軸53の処理室21内に位置する端部にファン51を連結し、チャンバ20の外部に位置する端部にファンモータ52を連結する。以上で、封止環60及び動力伝達軸53は、チャンバ20に取り付けられる。
【0077】
また、封止環60を動力伝達軸53の軸方向に移動させるため、チャンバ20の外部には、例えばリニアガイドのようなスライド機構(図示せず)が配設されている。スライド機構は、封止環60に連結することができる。これにより、封止環60を、動力伝達軸53の軸方向に移動させることができる。
【0078】
以上のように構成された封止環60の動作と作用について説明する。図4(a)に示すように、封止環60の円筒部61に配設されたOリング65が、チャンバ20の側壁に圧接するまで、また、封止環60の底部62に配設されたOリング66が、円盤部55に圧接するまで、封止環60を、処理室21方向(図1の左側)に移動させる。これにより、チャンバ20と動力伝達軸53との間が気密に固定され、処理室21は密閉状態となる。尚、封止環60の移動には、例えばリニアモータ(図示せず)などの駆動手段を用いることができる。
【0079】
また、図4(b)に示すように、円筒部61に配設されたOリング65がチャンバ20の側壁から離間するように、また、底部62に配設されたOリング66も円盤部55から離間するように、封止環60を処理室21から離間する方向(図1の右側)に移動させる。このとき、チャンバ20と動力伝達軸53との間の気密が解かれると共に、Oリング66は円盤部55から離間しているので、動力伝達軸53は、チャンバ20及び封止環60から摩擦抵抗を受けることなく、回転することができる。
【0080】
尚、本実施形態において、Vリング57は動力伝達軸53の軸方向に移動しない。また、上述のとおり、処理室21の最大圧力は、大気圧とほぼ同等である。そのため、Vリング57のリップ部57aは、処理室21の気体の圧力によって、外部方向に撓むことはなく、チャンバ20の側壁の外面に常時軽く接している。これにより、封止環60が処理室21から離間する方向(図1の右側)に移動しても、処理室21の密閉性は、ほぼ維持されている。また、Vリング57は、表面の摩擦係数が小さい弾性部材から形成されているため、動力伝達軸53は、Vリング57のリップ部57aとチャンバ20の右側壁とが摺接することによる抵抗をほとんど受けることなく回転することができる。
【0081】
尚、封止環60を、上述のリニアモータや回転式モータなどの駆動手段を用いて動力伝達軸53の軸方向へ移動させてもよいし、レバーなどを設けて手動で移動させてもよい。
【0082】
以上説明したように、本実施形態の真空乾燥処理装置10によれば、Vリング57を備え、常時、Vリング57のリップ部57aがチャンバ20の右側壁の外面と軽く当接するようにしたので、第1の実施形態より処理室21の密閉性を高めることができる。
【0083】
また、本実施形態の封止環60は、動力伝達軸53と別部品であるので、第1の実施形態のように、ファン及び動力伝達軸を移動させる必要がなく、封止環60のみを移動させればよい。
【0084】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る真空乾燥処理装置10について説明する。尚、上記の実施形態の真空乾燥処理装置10と共通する構成については、同一又は対応する符号を付す。
【0085】
図5(a)及び(b)に示すように、動力伝達軸53の軸方向の中途部には、動力伝達軸53と共通の中心軸線を有する円盤状の円盤部55が形成されている。また、処理室21の密閉性を高めるため、動力伝達軸53には、動力伝達軸53を巻回すると共に円盤部55のチャンバ20側の面と当接するように、Vリング57が取り付けられている。
【0086】
図5(a)及び(b)に示すように、封止環70は、小径円筒部71と、大径円筒部72と、底部73と、小径円筒部71と大径円筒部72とを接続する段差部79と、を有する有底の段付円筒状に形成された部材である。
【0087】
小径円筒部71は、外径がチャンバ20の貫通孔29の直径より僅かに小さく形成され、内径が動力伝達軸53の外径より僅かに大きく形成されている。また、小径円筒部71の外周面には、周方向に溝71aが形成されている。溝71aには、弾性部材から形成されるOリング75が配設されている。
【0088】
大径円筒部72は、内径が円盤部55の直径よりも大きく形成されている。また、大径円筒部72は、内周面の動力伝達軸53の軸方向の長さが、動力伝達軸53に形成された円盤部55の軸方向の厚さより大きく形成されている。
【0089】
底部73には、動力伝達軸53の直径より僅かに大きな直径の貫通孔73aが形成されている。また、底部73の大径円筒部72側の面には、大径円筒部72側から見て円形状の、溝73bが形成されている。また、溝73bにはOリング76が配設されている。尚、底部73は、大径円筒部72に、例えばねじ等を用いて着脱することができる。
【0090】
次に、封止環70及び動力伝達軸53のチャンバ20への取付方法について説明する。まず、封止環70の小径円筒部71をチャンバ20の貫通孔29に挿入する。そして、封止環70を、小径円筒部71のOリング75を貫通孔29の内周面に圧接させた状態で、チャンバ20に配設する。これにより、貫通孔29の内周面と封止環70の小径円筒部71の外周面との間の気密性が保たれる。
【0091】
次に、封止環70の底部73を、大径円筒部72から外す。その後、ファン51を取り外した動力伝達軸53を、チャンバ20の外部から小径円筒部71に挿通し、円盤部55が大径円筒部72に収容されるように封止環70に配設する。そして、底部73の貫通孔73aを、チャンバ20の外部から動力伝達軸53に挿通させて、底部73を大径円筒部72に取り付ける。その後、動力伝達軸53の処理室21内に位置する端部にファン51を連結し、チャンバ20の外部に位置する端部にファンモータ52を連結する。以上で、封止環70及び動力伝達軸53は、チャンバ20に取り付けられる。
【0092】
尚、このとき、動力伝達軸53に取り付けられたVリング57のリップ部57aは、封止環70の小径円筒部71又は段差部79の内面と当接している。
【0093】
また、封止環70を動力伝達軸53の軸方向に移動させるため、チャンバ20の外部には、例えばリニアガイドのようなスライド機構(図示せず)が配設されている。スライド機構は、封止環70に連結することができる。これにより、封止環70を、動力伝達軸53の軸方向に移動させることができる。
【0094】
以上のように構成された封止環70の動作及び作用について説明する。図5(a)に示すように、封止環70の底部73に配設されたOリング76が、円盤部55に圧接するまで、すなわち、Oリング76が円盤部55と封止環70との間で中心軸線方向に挟圧されるまで、封止環70を、処理室21方向(図1の左側)に移動させる。これにより、チャンバ20と動力伝達軸53との間が気密に固定され、処理室21は密閉状態となる。尚、封止環70の移動には、例えばリニアモータ(図示せず)などの駆動手段を用いることができる。
【0095】
また、図5(b)に示すように、封止環70の底部73に配設されたOリング76が、円盤部55から離間するように、すなわち、Oリング76が挟圧状態から解除されるように、封止環70を処理室21から離間する方向(図1の右側)に移動させる。このとき、チャンバ20と動力伝達軸53との間の気密が解かれると共に、Oリング76は円盤部55から離間しているので、動力伝達軸53は、封止環70から摩擦抵抗を受けることなく、回転することができる。
【0096】
尚、上述のとおり、本実施形態において、処理室21の最大圧力は、大気圧とほぼ同等である。これにより、Vリング57のリップ部57aは、処理室21の圧力によって外部方向に撓むことはなく、常時、封止環70の小径円筒部71又は段差部79の内面と当接している。そのため、封止環70の底部73に配設されたOリング76が円盤部55から離間するように、封止環70が処理室21から離間する方向(図1の右側)に移動しても、処理室21の密閉性は、ほぼ維持されている。また、Vリング57は、表面の摩擦係数が小さい弾性部材から形成されているため、動力伝達軸53は、Vリング57のリップ部57aと封止環70の小径円筒部71又は段差部79の内面とが摺接することによる抵抗をほとんど受けることなく回転することができる。
【0097】
尚、封止環70を、上述のリニアモータや回転式モータなどの駆動手段を用いて動力伝達軸53の軸方向へ移動させてもよいし、レバーなどを設けて手動で移動させてもよい。
【0098】
以上説明したように、本実施形態の真空乾燥処理装置10によれば、Vリング57を備え、さらにチャンバ20の貫通孔29に封止環70の一部を挿入することによりチャンバ20と封止環70との間の気密性が保たれているので、第1及び第2の実施形態より、処理室21の密閉性を高めることができる。
【0099】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る真空乾燥処理装置10について説明する。尚、上記の実施形態の真空乾燥処理装置10と共通する構成については、特に説明する場合を除き、同一又は対応する符号を付す。
【0100】
本実施形態は、上述の第3の実施形態を変形した実施形態である。上述の第3の実施形態ではVリングが動力伝達軸に配設されていたが、これに限定されるものではない。処理室21の密閉性を高めることができるのであれば、本実施形態のように、Vリングが、封止環に配設されていてもよい。
【0101】
図6(a)及び(b)に示すように、封止環70Aは、小径円筒部71と、大径円筒部72と、底部73と、小径円筒部71を底部73側に延説させた延設部74と、小径円筒部71と大径円筒部72とを接続する段差部79と、を有する有底の段付円筒状に形成された部材である。
【0102】
延設部74には、延設部74を巻回するVリング77が取り付けられている。上記の第3の実施形態と同様にして、動力伝達軸53が封止環70に取り付けられたとき、延設部74に取り付けられたVリング77のリップ部77aは、円盤部55と当接する。
【0103】
また、封止環70Aを動力伝達軸53の軸方向に移動させるため、チャンバ20の外部には、例えばリニアガイドのようなスライド機構(図示せず)が配設されている。スライド機構は、動力伝達軸53に連結することができる。これにより、封止環70Aを、動力伝達軸53の軸方向に移動させることができる。
【0104】
以上のように構成された封止環70Aの動作について説明する。図6(a)に示すように、封止環70Aの底部73に配設されたOリング76が、円盤部55に圧接するまで、すなわち、Oリング76が円盤部55と封止環70Aとの間で中心軸線方向に挟圧されるまで、封止環70Aを、処理室21方向(図1の左側)に移動させる。これにより、チャンバ20と動力伝達軸53との間が気密に固定され、処理室21は密閉状態となる。尚、封止環70Aの移動には、例えばリニアモータ(図示せず)などの駆動手段を用いることができる。
【0105】
また、図6(b)に示すように、封止環70Aの底部73に配設されたOリング76が、円盤部55から離間するように、すなわち、Oリング76が挟圧状態から解除されるように、封止環70Aを処理室21から離間する方向(図1の右側)に移動させる。このとき、チャンバ20と動力伝達軸53との間の気密が解かれると共に、Oリング76が円盤部55から離間しているので、動力伝達軸53は、封止環70Aから摩擦抵抗を受けることなく回転することができる。
【0106】
尚、上述のとおり、本実施形態において、処理室21の最大圧力は、大気圧とほぼ同等である。これにより、Vリング77のリップ部77aは、処理室21の圧力によって外部方向に撓むことはなく、常時、円盤部55と当接している。そのため、封止環70Aがチャンバ20から離間する方向(図1の右側)に移動しても、処理室21の密閉性は、ほぼ維持されている。
【0107】
以上説明したように、本実施形態の真空乾燥処理装置10によれば、第3の実施形態と同様に、Vリング57を備え、さらにチャンバ20の貫通孔29に封止環70の一部を挿入することによりチャンバ20と封止環70との間の気密性が保たれているので、第1及び第2の実施形態より、処理室21の密閉性を高めることができる。
【0108】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態に係る真空乾燥処理装置10について説明する。尚、上記の実施形態の真空乾燥処理装置10と共通する構成については同一又は対応する符号を付す。
【0109】
本実施形態は、上述の第4の実施形態を変形した実施形態である。
【0110】
本実施形態に係る真空乾燥処理装置10の封止環70Aは、上述の第4の実施形態の封止環70Aと同一である。
【0111】
図7(a)及び(b)に示すように、本実施形態では、円盤状の円盤部55の外周部分に、円筒状の立ち上げ部55aが形成されている。
【0112】
図7(a)及び(b)に示すように、立ち上げ部55aとVリング77との間に、空間S1が形成されている。そして、空間S1に所定の量のオイルを充填して、リップ部77aと円盤部55との間にオイルを浸透させている。
【0113】
以上説明したように、本実施形態の真空乾燥処理装置10によれば、オイルをリップ部77aと円盤部55との間に浸透させているので、第4の実施形態より、処理室21の密閉性を高めることができる。また、オイルをリップ部77aと円盤部55との間に浸透させることにより、リップ部77aと円盤部55とが摺接するときの摩擦抵抗を減少させるので、第4の実施形態より、リップ部77aが摩耗することを防ぐことができる。
【0114】
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態に係る真空乾燥処理装置10について説明する。尚、上記の実施形態の真空乾燥処理装置10と共通する構成については、同一又は対応する符号を付す。
【0115】
本実施形態は、上述の第3の実施形態を変形した実施形態である。
【0116】
図8(a)及び(b)に示すように、動力伝達軸53の円盤部55のチャンバ20側の面には、動力伝達軸53の中心軸線を中心とする4重の円筒部55a〜55dが形成されている。また、封止環70Bの段差部79の底部73側の面には、小径円筒部71の中心軸線を中心とする4重の円筒部78a〜78dが形成されている。
【0117】
動力伝達軸53は、チャンバ20に取り付けられた封止環70Bの小径円筒部71に挿通されている。そして、動力伝達軸53は、円盤部55の円筒部55a〜55dが封止環70Bの円筒部78a〜78dとそれぞれ所定の間隔を開けて相互に噛み合うように、チャンバ20に配設されている。これにより、図8(c)に示すように、封止環70Bの円筒部78a〜78dと、円盤部55の円筒部55a〜55dとの間に、迷路状のラビリンス間隙S2が形成されている。
【0118】
また、ラビリンス間隙S2には、オイルが注入されている。
【0119】
また、封止環70Bを動力伝達軸53の軸方向に移動させるため、チャンバ20の外部には、例えばリニアガイドのようなスライド機構(図示せず)が配設されている。スライド機構は、封止環70Bに連結することができる。これにより、封止環70Bを、動力伝達軸53の軸方向に移動させることができる。
【0120】
以上のように構成された封止環70Bの動作及び作用について説明する。図8(a)に示すように、封止環70Bの底部73に配設されたOリング76が円盤部55に圧接するまで、すなわち、Oリング76が円盤部55と封止環70Bとの間で中心軸線方向に挟圧されるまで、封止環70Bを処理室21方向(図1の左側)に移動させる。これにより、チャンバ20と動力伝達軸53との間が気密に固定され、処理室21は密閉状態となる。尚、封止環70Bの移動には、例えばリニアモータ(図示せず)などの駆動手段を用いることができる。
【0121】
また、図8(b)に示すように、封止環70Bの底部73に配設されたOリング76が、円盤部55から離間するように、すなわち、Oリング76が挟圧状態から解除されるように、封止環70Bを処理室21から離間する方向(図1の右側)に移動させる。このとき、チャンバ20と動力伝達軸53との間の気密が解かれると共に、Oリング76が円盤部55から離間しているので、動力伝達軸53は、封止環70Bから摩擦抵抗を受けることなく回転することができる。
【0122】
以上説明したように、本実施形態の真空乾燥処理装置10によれば、円盤部55と封止環70Bとに複数の円筒部を設け、それらの円筒部が相互に噛み合うように、すなわちラビリンス構造が形成されるように円盤部55と封止環70Bとを配設したので、第3の実施形態より、処理室21の密閉性を高めることができる。また、ラビリンス間隙にオイルを注入したので、処理室21の密閉性を一層高めることができる。
【0123】
(第7の実施形態)
次に、本発明の第7の実施形態に係る真空乾燥処理装置10について説明する。尚、上記の実施形態の真空乾燥処理装置10と共通する構成については、同一又は対応する符号を付す。
【0124】
図9(a)及び(b)に示すように、動力伝達軸53の軸方向の中途部には、動力伝達軸53と共通の中心軸線を有する円盤状の円盤部55が形成されている。
【0125】
また、図9(a)及び(b)に示すように、チャンバ20の右側壁には、処理室21とチャンバ20の外部とを連通する貫通孔129が形成されている。貫通孔129のチャンバ20の外部には、チャンバ20の右側壁に対し垂直に延出する円筒状の延出部129Aが形成されている。
【0126】
貫通孔129の内周面及び延出部129Aの内周面には、周方向に溝129a〜129cが形成されている。溝129a及び129cには、後述する封止環80の外周面と当接して封止環80を支持する支持環126が配設されている。支持環126は、フッ化樹脂などの表面の摩擦係数が小さい樹脂から形成されている。
【0127】
溝129bには、弾性部材から形成されたOリング127が配設されている。
【0128】
図9(a)に示すように、貫通孔129及び円筒状の延出部129Aには、封止環80が挿通されている。
【0129】
封止環80は、円筒部81と、円筒部81の一端から円筒部81の中心軸線に対して垂直に延出する環状のフランジ部82と、を備える略円筒状に形成された部材である。円筒部81は、外径が貫通孔129及び延出部129Aの直径より僅かに小さく形成され、内径が動力伝達軸53の直径より大きく形成されている。フランジ部82は、外径が貫通孔129の直径より僅かに大きく形成されている。封止環80は、フランジ部82が処理室21の右側壁の内側近傍に位置するように、配設されている。
【0130】
円筒部81の処理室21の内部に位置する端面には、処理室21の内部から見て円形状の、溝81aが形成されている。溝81aには弾性部材からなるOリング85が配設されている。
【0131】
封止環80の円筒部81の内周面には、周方向に溝81b、81cが形成されている。溝81b、81cには、表面の摩擦係数が小さな弾性材料から形成されたVリング86、87が配設されている。
【0132】
また、円筒部81の溝81bと81cとの間には、円筒部81の外周面と内周面とを径方向に連通するオイル注入用の貫通孔81dが形成されている。
【0133】
次に、封止環80及び動力伝達軸53のチャンバ20への取付方法について説明する。まず、処理室21の内部から、封止環80の円筒部81を貫通孔129及び延出部129Aに挿入する。そして、円筒部81の外周面を貫通孔129及び延出部129AのOリング127に圧接させた状態で、チャンバ20に配設する。これにより、封止環80の外周面と貫通孔129及び延出部129Aの内周面との間の気密性が保たれる。
【0134】
次に、処理室21の内部から、動力伝達軸53を封止環80の円筒部81に挿通する。そして、円盤部55が、円筒部81の端面近傍に位置するように、動力伝達軸53をチャンバ20に配設する。その後、動力伝達軸53の処理室21内に位置する端部にファン51を連結し、チャンバ20の外部に位置する端部にファンモータ52を連結する。以上で、動力伝達軸53は、チャンバ20に取り付けられる。尚、このとき、封止環80に取り付けられたVリング86、87のリップ部86a、87aは、動力伝達軸53の外周面と当接している。
【0135】
動力伝達軸53がチャンバ20に取り付けられた後、処理室21の密閉性を高めるため、また、リップ部86a、87aの摩耗を防ぐため、貫通孔81dにオイルを注入して、リップ部86a、87aと動力伝達軸53との間にオイルを浸透させている。
【0136】
また、封止環80を軸方向に移動させるため、チャンバ20の外部には、例えばリニアガイドのようなスライド機構(図示せず)が配設されている。スライド機構は、封止環80に連結することができる。これにより、封止環80を、動力伝達軸53の軸方向に移動させることができる。
【0137】
以上のように構成された封止環80の動作及び作用について説明する。図9(a)に示すように、封止環80の円筒部81に配設されたOリング85が円盤部55に圧接するまで、すなわち、Oリング85が円盤部55と封止環80との間で中心軸線方向に挟圧されるまで、封止環80を処理室21方向(図1の左側)に移動させる。これにより、チャンバ20と動力伝達軸53との間が気密に固定され、処理室21は密閉状態となる。尚、封止環80の移動には、例えばリニアモータ(図示せず)などの駆動手段を用いることができる。
【0138】
また、図9(b)に示すように、円筒部81に配設されたOリング85が円盤部55から離間するように、すなわち、Oリング85が挟圧状態から解除されるように、封止環80を処理室21から離間する方向(図1の右側)に移動させる。このとき、チャンバ20と動力伝達軸53との間の気密が解かれると共に、Oリング85が円盤部55から離間しているので、動力伝達軸53は、封止環80から摩擦抵抗を受けることなく回転することができる。
【0139】
尚、上述の通り、本実施形態において、処理室21の最大圧力は、大気圧とほぼ同等である。これにより、Vリング86、87のリップ部86a、87aは、処理室21の圧力によって撓むことはなく、常時、動力伝達軸53の外周面と当接している。そのため、円筒部81に配設されたOリング85が円盤部55から離間するように、封止環80が処理室21から離間する方向(図1の右側)に移動しても、処理室21の密閉性は、ほぼ維持されている。また、Vリング86、87は、表面の摩擦係数が小さい弾性部材から形成されているため、動力伝達軸53は、Vリング86、87のリップ部86a、87aと動力伝達軸53の外周面とが摺接することによる抵抗をほとんど受けることなく回転することができる。
【0140】
尚、封止環80を、上述のリニアモータや回転式モータなどの駆動手段を用いて動力伝達軸53の中心軸線方向へ移動させてもよいし、レバーなどを設けて手動で移動させてもよい。
【0141】
以上説明したように、本実施形態の真空乾燥処理装置10によれば、チャンバ20の貫通孔129に封止環80の一部を挿入することによりチャンバ20と封止環80との間の気密性が保たれているので、第1及び第2の実施形態より、処理室21の密閉性を高めることができる。また、Vリングのリップ部と動力伝達軸53との間にオイルを浸透させているので、処理室21の密閉性を一層高めることができる。
【0142】
(第8の実施形態)
次に、本発明の第8の実施形態に係る真空乾燥処理装置10について説明する。尚、上記の実施形態の真空乾燥処理装置10と共通する構成については、同一又は対応する符号を付す。
【0143】
本実施形態は、上述の第7の実施形態を変形した実施形態である。上述の第7の実施形態ではVリングが封止環に配設されていたが、これに限定されるものではない。処理室21の密閉性を高めることができるのであれば、本実施形態のように、Vリングが動力伝達軸に配設されていてもよい。
【0144】
図10(a)及び(b)に示すように、封止環80Aは、円筒部81と、円筒部81の一端から円筒部81の中心軸線に対して垂直に延出する環状のフランジ部82と、円筒部81と着脱できる環状の端部部材83と、を有する略円筒状に形成された部材である。
【0145】
封止環80Aの円筒部81の内周面には、周方向に段差部81eが形成されている。また、円筒部81には、円筒部81の外周面と、内周面に形成された段差部81eとを径方向に連通するオイル注入用の貫通孔81dが形成されている。
【0146】
また、動力伝達軸53には、動力伝達軸53を巻回するVリング88、89が取り付けられている。
【0147】
次に、封止環80A及び動力伝達軸53のチャンバ20への取付方法について説明する。まず、処理室21の内部から、平板部83を取り外した封止環80Aの円筒部81を貫通孔129及び延出部129Aに挿入する。そして、円筒部81の外周面を貫通孔129及び延出部129AのOリング127に圧接させた状態で、チャンバ20に配設する。これにより、封止環80の外周面と貫通孔129及び延出部129Aの内周面との間の気密性が保たれる。
【0148】
次に、処理室21の内部から、動力伝達軸53を封止環80の円筒部81に挿通する。そして、円盤部55が、円筒部81の端面近傍に位置するように、動力伝達軸53をチャンバ20に配設する。その後、チャンバ20の外部からVリング88、89を動力伝達軸53に挿通させる。尚、Vリング88、89は、封止環80Aの段差部81e内に対応する位置に配設される。その後、チャンバ20の外部から、端部部材83を円筒部81に取り付ける。その後、動力伝達軸53の処理室21内に位置する端部にファン51を連結し、チャンバ20の外部に位置する端部にファンモータ52を連結する。以上で、動力伝達軸53は、チャンバ20に取り付けられる。尚、このとき、動力伝達軸53に取り付けられたVリング88のリップ部88aは段差部81eに、Vリング89のリップ部89aは端部部材83に、それぞれ当接している。
【0149】
動力伝達軸53がチャンバ20に取り付けられた後、処理室21の密閉性を高めるため、また、リップ部88a、89aの摩耗を防ぐため、貫通孔81dにオイルを注入して、リップ部88aと段差部81eとの間、及び、リップ部89aと端部部材83との間にオイルを浸透させている。
【0150】
以上説明したように、本実施形態の真空乾燥処理装置10によれば、第7の実施形態と同様に、チャンバ20の貫通孔129に封止環80Aの一部を挿入することによりチャンバ20と封止環80Aとの間の気密性が保たれているので、第1及び第2の実施形態より、処理室21の密閉性を高めることができる。また、Vリングのリップ部と、封止環80Aの内周面に形成された段差部及び端部部材と、の間にオイルを浸透させているので、一層処理室21の密閉性を高めることができる。
【0151】
(第9の実施形態)
次に、本発明の第9の実施形態に係る真空乾燥処理装置10について説明する。尚、上記の実施形態の真空乾燥処理装置10と共通する構成については、同一又は対応する符号を付す。
【0152】
図11(a)及び(b)に示すように、動力伝達軸53の軸方向の中途部には、動力伝達軸53と共通の中心軸線を有する円盤状の円盤部55が形成されている。
【0153】
図11(a)及び(b)に示すように、封止環90は、回転部91と、軸受部92と、支持部93と、を備えている。
【0154】
回転部91は、略円筒状に形成されている。回転部91には、動力伝達軸53の直径より大きな直径の貫通孔91aが形成されている。さらに、貫通孔91aの内周面には、周方向に溝91bが形成されている。溝91bには、弾性部材から形成されたOリング95が配設されている。
【0155】
また、回転部91のチャンバ20側の面には、チャンバ20側から見て円形状の、溝91cが形成されている。溝91cには、Oリング96が配設されている。さらに、回転部91のチャンバ20側の面には、段差部91dが形成されている。段差部91dには、Vリング97が固定されている(図11(c)参照)。また、回転部91の外周面は、軸受部92に固定されている。
【0156】
軸受部92は、リング状に形成された内輪部92aと、複数のボール92bと、リング状に形成された外輪部92cと、から構成されている。内輪部92aの内周面は、回転部91の外周面に固定されている。また、外輪部92cの外周面は、支持部93に固定されている。
【0157】
支持部93は、リング状に形成されている。支持部93は、軸受部92を支持しており、また、軸受部92を介して回転部91を支持している。
【0158】
封止環90は、以上のように構成されているので、支持部93が回転しないように固定された状態で、回転部91に回転部91の中心軸線まわりの力が加えられると、回転部91は、その中心軸線まわりに回転する。
【0159】
次に、封止環90及び動力伝達軸53のチャンバ20への取付方法について説明する。まず、ファン51を取り外した動力伝達軸53を、封止環90の貫通孔91aに挿通し、円盤部55が所定の位置に位置するまで押し込む。これにより、動力伝達軸53は、貫通孔91aの内周面に配設されたOリング95を動力伝達軸53の外周面で押圧した状態で、封止環90に取り付けられる。次に、封止環90に挿通した動力伝達軸53を、チャンバ20の外部から貫通孔21に挿通する。そして、封止環90のVリング97のリップ部97aが、チャンバ20の右側壁の外面と軽く当接するように、動力伝達軸53及び封止環90を、処理室21の右側壁の近傍に配設する。その後、動力伝達軸53の処理室21内に位置する端部にファン51を連結し、チャンバ20の外部に位置する端部にファンモータ52を連結する。以上で、動力伝達軸53は、チャンバ20に取り付けられる。尚、このとき、図11(c)に示すように、Vリング97は、動力伝達軸53とは僅かに離間している。
【0160】
上述のとおり、動力伝達軸53は、貫通孔91aの内周面に配設されたOリング95を外周面で押圧している。そのため、動力伝達軸53が回転すると、動力伝達軸53の外周面とOリング95との間に、摩擦抵抗が発生するので、回転部91は動力伝達軸53と共に回転する。
【0161】
また、封止環90を動力伝達軸53の軸方向に移動させるため、チャンバ20の外部には、例えばリニアガイドのようなスライド機構(図示せず)が配設されている。スライド機構は、封止環90に連結することができる。これにより、封止環90を、動力伝達軸53の軸方向に移動させることができる。
【0162】
以上のように構成された封止環90の、動力伝達軸53の軸方向の動作及び作用について説明する。図11(a)に示すように、封止環90のチャンバ20側の面に配設されたOリング96がチャンバ20に圧接するまで、すなわち、Oリング96が封止環90とチャンバ20の右側壁との間で中心軸線方向に挟圧されるまで、封止環90を処理室21方向(図1の左側)に移動させる。これにより、チャンバ20と動力伝達軸53との間が気密に固定され、処理室21は密閉状態となる。尚、封止環90の移動には、例えばリニアモータ(図示せず)などの駆動手段を用いることができる。
【0163】
また、図11(b)に示すように、封止環90に配設されたOリング96が、チャンバ20と離間するように、すなわち、Oリング96が挟圧状態から解除されるように、封止環90を処理室21から離間する方向(図1の右側)に移動させる。このとき、チャンバ20と動力伝達軸53との間の気密が解かれると共に、Oリング96はチャンバ20から離間しているので、動力伝達軸53は、チャンバ20から摩擦抵抗を受けることなく回転することができる。
【0164】
尚、上述のとおり、本実施形態において、処理室21の最大圧力は、大気圧とほぼ同等である。これにより、Vリング97のリップ部97aは、処理室21の圧力によって外部方向に撓むことはなく、常時、チャンバ20と当接している。そのため、封止環90のOリング96がチャンバ20から離間するように、封止環90が処理室21から離間する方向(図1の右側)に移動しても、処理室21の密閉性は、ほぼ維持されている。
【0165】
尚、封止環90を、上述のリニアモータや回転式モータなどの駆動手段を用いて動力伝達軸53の中心軸線方向に移動させてもよいし、レバーなどを設けて手動で移動させてもよい。
【0166】
以上説明したように、本実施形態の真空乾燥処理装置10によれば、Vリング97を備え、常時、Vリング97のリップ部97aがチャンバ20の右側壁の外面と軽く当接するようにしたので、第1の実施形態より処理室21の密閉性を高めることができる。
【符号の説明】
【0167】
10 真空乾燥処理装置
20 チャンバ
20a 密閉扉
21 処理室
22 ヒータ
23 隔板
24 ワーク載置台
29 貫通孔
31 ガス導入口
32 導管
33 ガス導入弁
34 ガス供給装置
36 排気口
37 導管
38 ガス排気弁
40 真空装置
50 ファンユニット
51 ファン
52 ファンモータ
53 動力伝達軸
55 円盤部
55a、55b、55c、55d 円筒部
56 Oリング
57 Vリング
59 軸受
60 封止環
61 円筒部
62 底部
65 Oリング
66 Oリング
70 封止環
71 小径円筒部
72 大径円筒部
73 底部
74 延設部
75 Oリング
76 Oリング
77 Vリング
78a、78b、78c、78d 円筒部
80 封止環
81 円筒部
82 フランジ部
85 Oリング
87 Vリング
88 Vリング
89 Vリング
90 封止環
91 回転部
92 軸受部
93 固定部
95 Oリング
96 Oリング
97 Vリング
100 制御部
120 チャンバ
121 処理室
125 貫通部
126 支持環
127 Oリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被乾燥体を収容する処理室を有するチャンバと、
前記処理室内に配置されたファンと、
前記チャンバに形成された貫通孔に挿通され、前記チャンバ内で前記ファンに連結され、前記チャンバ外で動力源に連結された動力伝達軸と、
前記処理室内を常圧又はそれ以上の圧力にある第1の圧力状態と、常圧よりも低い第2の圧力状態とに切り替える圧力調整手段と、
前記チャンバと前記動力伝達軸との間を気密に固定する気密状態と、前記チャンバと前記動力伝達軸との間の気密を解いて、前記動力伝達軸を回転可能とする回転可能状態と、を切り替える状態切替手段と、
前記処理室内に配設され、前記処理室内の気体を加熱する加熱装置と、
前記圧力調整手段により前記処理室内を前記第1の圧力状態とし、前記切替手段により、前記チャンバと前記動力伝達軸との間の気密を解いて、前記動力伝達軸を回転可能とし、前記動力源により前記動力伝達軸を介してファンを回転させて被乾燥体を流動気体により加熱し、前記圧力調整手段により前記処理室内を前記第2の圧力状態とし、前記切替手段により、前記チャンバと前記動力伝達軸との間を気密とすることにより、被乾燥体を真空乾燥する制御手段と、
を備えることを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
前記状態切替手段は、前記動力伝達軸の一端と他端との間に設けられて前記動力伝達軸と共に回転する板状の回転体と、前記回転体の板面と対向する位置に形成されている非回転部と、前記動力伝達軸を挿通させていると共に前記回転体と前記非回転部との間に配設されている弾性体からなる環状部材と、前記環状部材が気密的に前記回転体と前記非回転部との間で挟圧されている挟圧状態又は前記環状部材が挟圧状態から解除されている挟圧解除状態となるように、前記回転体又は前記非回転部を前記動力伝達軸の軸方向に移動させる移動機構と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記非回転部は、前記チャンバに形成されていることを特徴とする請求項2に記載の乾燥装置。
【請求項4】
さらに、前記動力伝達軸を挿通させている円筒部材を備え、
前記非回転部は、前記円筒部材に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記円筒部材は、前記円筒部材の一部が前記チャンバの貫通孔に嵌入された状態で、前記動力伝達軸の軸方向に移動可能に配設されていることを特徴とする請求項4に記載の乾燥装置。
【請求項6】
前記円筒部材のうち前記チャンバの貫通孔に嵌入された部位の外周面と前記チャンバの貫通孔の内周面との間には、弾性部材が配設されていることを特徴とする請求項5に記載の乾燥装置。
【請求項7】
前記回転体は、中心軸線が前記動力伝達軸の中心軸線と略同一であって、前記動力伝達軸の軸方向に垂直に形成された円盤部であることを特徴とする請求項2乃至6の何れか1項に記載の乾燥装置。
【請求項8】
前記環状部材は、前記回転体の板面に形成された溝に配設されていることを特徴とする請求項2乃至7の何れか1項に記載の乾燥装置。
【請求項9】
前記環状部材は、前記非回転部に形成された溝に配設されていることを特徴とする請求項2乃至7の何れか1項に記載の乾燥装置。
【請求項10】
前記環状部材は、中心軸線が前記動力伝達軸の中心軸線と略同一に配設されていることを特徴とする請求項2乃至9の何れか1項に記載の乾燥装置。
【請求項11】
前記動力伝達軸は軟質片を有するVリングを備え、前記Vリングは前記軟質片が常に前記非回転部と接するように配設されていることを特徴とする請求項2乃至10の何れか1項に記載の乾燥装置。
【請求項12】
前記非回転部は軟質片を有するVリングを備え、前記Vリングは前記軟質片が常に前記回転体又は前記動力伝達軸と接するように配設されていることを特徴とする請求項2乃至10の何れか1項に記載の乾燥装置。
【請求項13】
前記圧力調整手段は、真空ポンプ又はガス供給装置であることを特徴とする請求項1乃至12の何れか1項に記載の乾燥装置。
【請求項14】
処理室内に被乾燥体を載置する工程と、
前記処理室内を常圧又はそれ以上の圧力にある第1の圧力状態とする工程と、
前記チャンバと該チャンバを貫通する動力伝達軸との間の気密状態を解いて、前記チャンバの外部より前記動力伝達軸を回転して、前記動力伝達軸に連結されているファンを回して、前記処理室内の加熱された気体を流動させて被乾燥体を加熱する工程と、
前記処理室内を常圧よりも低い第2の圧力状態とする工程と、
前記チャンバと該チャンバを貫通する前記動力伝達軸との間を気密に固定し、気密状態を維持して、被乾燥体を真空乾燥する工程と、
を備えることを特徴とする乾燥方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−53825(P2013−53825A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193406(P2011−193406)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(593139695)株式会社協真エンジニアリング (14)
【Fターム(参考)】