説明

予備混合即時使用製薬製剤

ニカルジピンの予備混合即時使用医薬組成物または薬学的に許容できる塩、ならびに心血管および脳血管の病態の処置における使用方法が、本明細書に提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、35U.S.C.§119(e)の下、参照としてその内容が本明細書に援用されている、2006年4月18日出願の米国仮出願第60/793,074号に対する利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
塩酸ニカルジピン((±)−2−(ベンジル−メチルアミノ)エチルメチル1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチル−4−(m−ニトロフェニル)−3,5−ピリジンジカルボキシレートモノハイドロクロリド)は、心血管および脳血管の障害の処置に有用なカルシウムイオン流入阻害剤である(例えば、米国特許第3,985,758号を参照)。塩酸ニカルジピンは現在、カプセル形態および静脈内注射用形態で販売されている。該カプセル形態は、CARDENE(登録商標)として市販されており、即時放出経口カプセルならびに長時間放出経口カプセルとして入手できる。CARDENE(登録商標)の静脈内注射用形態は、デキストロースまたは塩化ナトリウムなどの適合性の静脈内用液体中で希釈後、静脈内投与に好適なガラスアンプルにおいて市販されている(CARDENE(登録商標)I.V.)。CARDENE(登録商標)I.V.アンプルの各ミリリットルは、水中2.5mgの塩酸ニカルジピン、48.0mgのソルビトールを含有し、0.525mgのクエン酸一水和物および0.09mgの水酸化ナトリウムによりpH3.5に緩衝化されている。注入には、希釈製剤の各ミリリットルは、0.1mgの塩酸ニカルジピンを含有し、最終使用者により選択された希釈剤に依存してpHは変化する。米国再発行特許RE.34,618号(米国特許第4,880,823号の再発行)は、耐光性褐色アンプル内に保存されている塩酸ニカルジピンの注射用組成物が記載している。米国特許第5,164,405号は、やはりアンプルに保存されている、非経口投与用に設計されたニカルジピンを含有する緩衝化医薬組成物を記載している。
【0003】
CARDENE(登録商標)I.V.を使用前に希釈する必要条件は、多数の不利益に関連している。1つの不利益は、該希釈溶液は、室温で24時間のみ安定であることである。他の不利益は、該希釈製剤のpHは、希釈剤の選択に依存して変化することである。CARDENE(登録商標)I.V.は、血圧制御するための緊急な状態の下で使用され得るため、濃縮アンプル製剤の希釈は、患者の処置に用い得る貴重な時間を費やす。希釈段階に関連した他の不利益としては、汚染、用量過誤、およびガラスアンプルの使用に関連した安全上の問題の可能性が挙げられる。
【特許文献1】米国仮出願第60/793,074号
【特許文献2】米国特許第3,985,758号
【特許文献3】米国再発行特許RE.34,618号(米国特許第4,880,823号の再発行)
【特許文献4】米国特許第5,164,405号
【特許文献5】米国特許第3,985,758号
【特許文献6】米国特許第5,079,237号
【特許文献7】米国特許第5,519,012号
【特許文献8】米国特許第5,904,929号
【特許文献9】米国特許第5,376,645号
【特許文献10】米国仮特許出願第60/793,084号
【非特許文献1】「Guidance for Industry for the Submission Documentation for Sterilization Process Validation in Applications for Human and Veterinary Drug Products」(1994年11月)
【非特許文献2】Avramovら、J.Clinical Anesthesia、10:394〜400頁
【非特許文献3】Dormanら、2001年、J.Clinical Anesthesia、13:16〜19頁
【非特許文献4】Songら、2001年、Anesth Analg.、85:1247〜51頁
【非特許文献5】Connors,K.A.ら、Chemical Stability of Pharmaceuticals、A Handbook for Pharmacists, John Wiley & Sons、第2版編集、1986年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書に記載された医薬組成物および方法はこれらの不利益を克服する。特に、本明細書に記載された即時使用注射用製剤は、安定であり、医療従事者が、さらなる調製なしで市販の注射用製剤を含有する調製容器を使用することを可能にし、汚染可能性の問題が避けられ、用量過誤が除かれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
連続的静脈内注入に好適な、ニカルジピンまたは薬学的に許容できるその塩の即時使用予備混合医薬組成物が、本明細書に記載されている。pHを緩衝化した即時使用予備混合医薬組成物を提供することにより、これらの医薬組成物は、室温で、少なくとも1年間安定である。室温で保存された場合、該医薬組成物は、18カ月から24カ月にわたって、0%と約15%との間の薬物損失、および0%(w/w)と約3%(w/w)との間の総不純物形成を示す。
【0006】
予備混合即時使用注射用医薬組成物のさらなる利点としては、アンプル製剤に比較して、簡便さおよび使用しやすさ、用量過誤および溶液汚染の除去による患者に対する安全性の向上、医療費の減少、および救急状況における投与のしやすさが挙げられる。
【0007】
本開示は、ニカルジピンまたは薬学的に許容できるその塩、1つまたは複数の等張化剤、および緩衝剤を含む予備混合医薬組成物に関する。いくつかの実施形態において、該組成物は、場合によっては1つまたは複数の補助溶媒を含む。塩酸ニカルジピンは、約0.05mg/mlと約15mg/mlとの間の濃度で存在し得る。典型的には、塩酸ニカルジピンの濃度範囲は、約0.1mg/mlと約0.2mg/mlとの間である。場合によっては、該医薬組成物は酸および塩基を含み得る。
【0008】
本明細書に記載された医薬組成物は、投与前に希釈を必要とせず、典型的には、約3.6から約4.7の範囲内のpHを有する。該組成物は、患者に対し、皮下、筋肉内、静脈内、心房内、動脈内の連続注入など、非経口経路によって投与できる。該組成物は、経口療法が実行できないか、または望ましくない場合、高血圧の短期処置に好適である。
【0009】
静脈内投与に好適な予備混合塩酸ニカルジピン製剤を作製する方法は、1つまたは複数の等張化剤、緩衝剤、および場合によっては、1つまたは複数の補助溶媒を含む溶液中に有効量の塩酸ニカルジピンを提供するステップを含む。最終容量を構成するために、十分な水を加える。必要な場合は、好適なpH調整剤を用いて該溶液のpHを調整することができる。該組成物は、保存および患者への直接的投与のために、薬学的に許容できる容器内に計量分配される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本明細書に記載された予備混合医薬組成物は、活性成分としてニカルジピンまたは薬学的に許容できるその塩、少なくとも1つの等張化剤および緩衝剤を含む。本明細書に用いられる用語「予備混合」は、患者への投与前に再構成または希釈を必要としない医薬組成物を称する。使用前に希釈剤中に希釈する必要のある塩酸ニカルジピン、および病院職員によって選択される容器を含むアンプル製剤とは対照的に、本明細書に提供される予備混合医薬組成物は、典型的には3.6と約4.7との間の最適pH範囲内に該pHを維持する能力のある緩衝剤を含めることにより、室温で6カ月間以上安定である。いくつかの実施形態において、好適なpH調整剤および/または補助溶媒が該医薬組成物に加えられる。
【0011】
5.2 予備混合医薬組成物
活性成分としてニカルジピンおよび/または薬学的に許容できるその塩を含む、安定な即時使用予備混合医薬組成物の製造は、CARDENE(登録商標)I.V.として市販されている濃縮アンプル製品の開発とは異なる開発上の困難を呈する。図1に示されるとおり、溶液中に残存するニカルジピンのパーセントは、24時間にわたり、pHの関数として低下する。ニカルジピンのパーセント低下は、病院スタッフによって選択される希釈剤および容器によって変化する。
【0012】
実施例に記載されるように、pH(例えば、図2A、2B、3Aおよび3Bも参照)、活性成分の濃度(例えば、図4Aおよび4Bも参照)、および容器材料の組成(例えば、図5Aおよび5Bも参照)は、該活性成分の安定性および不純物形成に影響を及ぼす。したがって、安定な即時使用予備混合医薬組成物の開発には、pHおよび塩酸ニカルジピン濃度の同時最適化、ならびに薬学的に適合性の容器の選択が必要である。本明細書に記載された即時使用医薬組成物は、室温で6カ月から少なくとも24カ月保持した場合、薬物濃度の0%から15%の低下ならびに不純物の0%から3%の形成を示す。該医薬組成物は典型的に、室温で、少なくとも6カ月間、少なくとも12カ月間、少なくとも18カ月間、および少なくとも24カ月間保持した場合に安定である。また該組成物は、約2℃から8℃の温度で保持された場合、長期間にわたって安定である。本明細書に用いられる用語「安定」とは、患者への投与に好適な状態または条件に留まることを意味する。
【0013】
1つまたは複数の非対称中心を含有し得る、本明細書に記載された組成物および方法に従って使用される化合物は、ラセミ体、ラセミ混合物、および単一の鏡像体として生じ得る。したがって、本明細書に記載された組成物および方法は、このような化合物のすべての異性体を包含することが意図されている。
【0014】
本明細書に記載された予備混合医薬組成物は、ニカルジピンおよび/または薬学的に許容できるその塩を含む。ニカルジピン、薬学的に許容できるその塩、調製、および使用は、当技術分野で知られている(例えば、参照としてその全体が本明細書に援用されている米国特許第3,985,758号を参照)。ニカルジピンの薬学的に許容できる塩の例としては、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩および酒石酸塩が挙げられる。
【0015】
該予備混合医薬組成物は典型的に、0.05〜15mg/mlのニカルジピンまたは薬学的に許容できるその塩を含む。例えば、ニカルジピンまたは薬学的に許容できるその塩の好適な濃度としては、限定はしないが、0.05〜0.1mg/ml、0.1〜15mg/ml、0.1〜10mg/ml、0.1〜5mg/ml、0.1〜3.0mg/ml、0.1〜2.0mg/ml、0.1〜1.0mg/ml、0.9mg/ml、0.8mg/ml、0.7mg/ml、0.6mg/ml、0.5mg/ml、0.4mg/ml、0.3mg/ml、0.2mg/mlまたは0.1mg/mlが挙げられる。
【0016】
いくつかの実施形態において、該予備混合医薬組成物は、0.1mg/mlから0.2mg/mlの間の濃度での静脈内投与を可能にする上で十分な濃度で活性成分としての塩酸ニカルジピンを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載された組成物および方法における使用に好適な塩酸ニカルジピンの濃度としては、限定はしないが、少なくとも約0.1mg/mlである。他の実施形態において、本明細書に記載された組成物および方法における使用に好適な塩酸ニカルジピンの濃度としては、限定はしないが、少なくとも約0.2mg/mlである。
【0017】
いくつかの実施形態において、該予備混合製剤は、ニカルジピンおよび/または薬学的に許容できるその塩に加えて、該製品の使用期限を通して所望のpH範囲を維持する十分な緩衝能力を有する緩衝剤を含む。図2Aおよび2Bに示されるように、pHは、該予備混合医薬組成物におけるニカルジピンの長期安定性にとって重要である。該予備混合医薬組成物のpHは、約3.0から約7.0の間の範囲であり得るが、約3.6から約4.7の範囲内のpHを有する医薬組成物は薬物分解および総不純物のより低いパーセンテージを示す(図2A、2B、3Aおよび3Bを参照)。したがって、該予備混合医薬組成物に用いられる好適なpH範囲としては、限定はしないが、少なくとも約3.0、少なくとも約3.1、少なくとも約3.2、少なくとも約3.3、少なくとも約3.4、少なくとも約3.5、少なくとも約3.6、少なくとも約3.7、少なくとも約3.8、少なくとも約3.9、少なくとも約4.0、少なくとも約4.1、少なくとも約4.2、少なくとも約4.3、少なくとも約4.4、少なくとも約4.5、少なくとも約4.6、少なくとも約4.7、少なくとも約4.8、少なくとも約4.9、少なくとも約5.0、少なくとも約5.2、少なくとも約5.5、少なくとも約6.0、少なくとも約6.5、少なくとも約7.0のpH範囲が挙げられる。
【0018】
いくつかの実施形態において、該予備混合医薬組成物のpHは、約3.0から約5.0の間である。他の実施形態において、該予備混合医薬組成物のpHは、約3.6から約4.7の間である。他の実施形態において、該予備混合医薬組成物のpHは、約4.0から約4.4の間である。さらに他の実施形態において、該予備混合医薬組成物のpHは、4.2である。
【0019】
本明細書に記載された医薬組成物に使用するための好適な緩衝剤としては、限定はしないが、酢酸、グルタミン酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、乳酸、ヒスチジンまたは他のアミノ酸、グルコン酸、リン酸、リンゴ酸、コハク酸、ギ酸、プロピオン酸、および炭酸の薬学的に許容できる塩または酸が挙げられる。本明細書において、「薬学的に許容できる」は、該製剤の他の成分に適合性であり、そのレシピエントに有害でないという意味で用いられる。したがって、用語「薬学的に許容できる塩」とは、使用条件下で非毒性であり、安定な製剤に適合性である対イオンによって調製される活性化合物の塩形態を称する。該製剤における緩衝剤の濃度は、mg/ml、g/Lまたはモル濃度で表すことができる。典型的な実施形態において、約0.0001mg/mlから約100mg/mlの好適な緩衝剤が該医薬組成物中に存在する。したがって、該予備混合医薬組成物は、約0.0001mg/mlから約0.001mg/mlの好適な緩衝剤、約0.001mg/mlから約0.01mg/mlの好適な緩衝剤、約0.01mg/mlから約0.1mg/mlの好適な緩衝剤、約0.1mg/mlから約1mg/mlの好適な緩衝剤、約1mg/mlから約5mg/mlの好適な緩衝剤、約5mg/mlから約10mg/mlの好適な緩衝剤、約10mg/mlから約15mg/mlの好適な緩衝剤、約15mg/mlから約20mg/mlの好適な緩衝剤、約20mg/mlから約25mg/mlの好適な緩衝剤、約25mg/mlから約50mg/mlの好適な緩衝剤、約50mg/mlから約75mg/mlの好適な緩衝剤、および約75mg/mlから約100mg/mlの好適な緩衝剤を含み得る。
【0020】
あるいは、該緩衝剤の濃度は、モル濃度として表すことができる。典型的な実施形態において、該医薬組成物中に約0.1mMから100mMの好適な緩衝剤が存在する。したがって、該予備混合医薬組成物は、約0.1mMから約100mM、約0.1mMから約0.5mM、約0.5mMから約1.0mM、約1.0mMから約5mM、約5mMから約10mM、約10mMから約15mM、約15mMから約25mM、約25mMから約50mM、約50mMから約75mM、および約75mMから約100mMの濃度を有する好適な緩衝剤を含み得る。
【0021】
いくつかの実施形態において、該予備混合医薬組成物は、pH調整剤をさらに含む。好適なpH調整剤は典型的に、少なくとも酸またはその塩、および/または塩基またはその塩を含む。所望のpHを得るために、酸および塩基を必要なベースで加えることができる。例えば、該pHが所望のpHより高い場合、そのpHを所望のpHへと低下させるために酸を用いることができる。予備混合医薬組成物における使用に好適な酸としては、限定はしないが、塩酸、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、酢酸、硫酸、カルボン酸および硝酸が挙げられる。いくつかの実施形態において、該pHを調整するために塩酸が用いられる。他の例としては、該pHが所望のpH未満の場合、そのpHを所望のpHへと調整するために塩基を用いることができる。予備混合医薬組成物における使用に好適な塩基としては、限定はしないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、および水酸化マグネシウムが挙げられる。いくつかの実施形態において、該pHを調整するために水酸化ナトリウムが用いられる。
【0022】
いくつかの実施形態において、該予備混合医薬組成物は、1つまたは複数の等張化剤をさらに含む。等張化剤は典型的に、該予備混合医薬組成物のモル浸透圧濃度を調整して、血液または血漿などの体液の浸透圧に近づけるために用いられる。いくつかの実施形態において、該予備混合製剤の張性は、緩衝剤および/または該予備混合製剤中に存在する他の成分の濃度を調製することによって改変することができる。
【0023】
該組成物が生理的に適合性であるならば、該組成物は特定のモル浸透圧濃度を必要としない。したがって、該組成物は、低張性であっても、等張性であっても、高張性であってもよい。該予備混合医薬組成物は典型的に、約250mOsm/kgから約350mOsm/kgの間の張性を有する。
【0024】
該予備混合医薬組成物に使用される好適な等張化剤としては、限定はしないが、塩化ナトリウム、デキストロース、スクロース、キシリトール、フルクトース、グリセロール、ソルビトール、マンニトール、塩化カリウム、マンノース、塩化カルシウム、塩化マグネシウムおよび他の無機塩の無水形態または含水形態が挙げられる。該製剤中の等張化剤の量は、mg/mlまたはg/Lで表すことができる。典型的な実施形態において、該等張化剤は、約1mg/mlから約90mg/ml存在する。したがって、該予備混合医薬組成物は、約1〜5mg/ml、約5〜10mg/ml、約10〜15mg/ml、約15〜25mg/ml、約25〜50mg/ml、約50〜60mg/ml、約60〜70mg/ml、約70〜80mg/ml、および約80〜90mg/ml、ならびに上記範囲の組合せでの1つまたは複数の等張化剤を含むことができる。
【0025】
あるいは、該等張化剤の濃度は、重量/容量パーセントで測定される。典型的実施形態において、該等張化剤は、約0.1%から約10%存在する。例えば、好適な等張化剤の濃度としては、限定はしないが、約0.1%から約0.2%、約0.2%から約0.3%、約0.3%から約0.4%、約0.4%から約0.5%、約0.5%から約0.6%、約0.6%から約0.7%、約0.7%から約0.8%、約0.8%から約0.9%、約0.9%から約1%、約1%から約2%、約2%から約3%、約3%から約4%、約4%から約5%、約5%から約6%、約6%から約7%、約7%から約8%、約8%から約9%、約9%から約10%、ならびに上記範囲の組合せが挙げられる。
【0026】
いくつかの実施形態において、該等張化剤はデキストロースである。該予備混合医薬組成物における使用に好適なデキストロースの濃度は、典型的に、約2.5%(w/v)から約7.5%(w/v)の間である。例えば、好適なデキストロースの濃度としては、限定はしないが、約2.5%から約3%、約3%から約3.5%、約3.5%から約4%(約40mg/mlと等価)、約4%から約4.5%、約4.5%から約5%(約50mg/mlと等価)、約5%から約5.5%、約5.5%から約6%(約60mg/mlと等価)、約6%から約6.5%、約6.5%から約7%、ならびに上記範囲の組合せが挙げられる。
【0027】
いくつかの実施形態において、該等張化剤は、塩化ナトリウムである。該予備混合医薬組成物における使用に好適な塩化ナトリウムの濃度は、典型的に、約0.1%(w/v)から約1.8%(w/v)の間である。例えば、好適な塩化ナトリウムの濃度としては、限定はしないが、約0.1%から約0.2%、約0.2%から約0.3%、約0.3%から約0.4%、約0.4%から約0.5%、約0.5%から約0.6%、約0.6%から約0.7%、約0.7%から約0.8%(8mg/mlに等価)、約0.8%から約0.9%(9mg/mlに等価)、約0.9%から約1.0%、約1%から約1.2%、1.2%(12mg/mlに等価)から約1.4%、約1.4%から約1.6%、約1.6%から約1.8%が挙げられる。
【0028】
いくつかの実施形態において、該予備混合医薬組成物は、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上の等張化剤を含む。これらの実施形態において、各等張化剤の濃度は典型的には、該予備混合製剤中に単一の作用物質のみが存在している場合に用いられる濃度未満である。例えば、該予備混合製剤が1.92mg/mlのソルビトールを含む場合、塩化ナトリウムの好適な濃度は8.6mg/mlである。他の例としては、該予備混合製剤が1.92mg/mlのソルビトールを含む場合、デキストロースの好適な濃度は48mg/mlである。
【0029】
いくつかの実施形態において、該予備混合医薬組成物は、1つまたは複数の補助溶媒をさらに含む。「補助溶媒」は、水の重量未満の重量で水性製剤に加えられ、ニカルジピンおよび/または薬学的に許容できるその塩の可溶化を助け、該予備混合製剤の安定性を高め、および/または該予備混合医薬組成物のモル浸透圧濃度を調製する溶媒である。該予備混合医薬組成物における使用に好適な補助溶媒としては、限定はしないが、グリコール類(例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール)、エタノール、および多価アルコール(例えば、ソルビトール、マンニトール、キシリトール)が挙げられる。
【0030】
該製剤に用いられる補助溶媒の量は、mg/mlまたはg/Lで表すことができる。典型的な実施形態において、該補助溶媒は、約1mg/mlから約100mg/ml存在する。したがって、該予備混合医薬組成物は、約1mg/mlから約2mg/ml、約2mg/mlから約3mg/ml、約3mg/mlから約4mg/ml、約4mg/mlから約5mg/ml、約5mg/mlから約10mg/ml、約10mg/mlから約15mg/ml、約15mg/mlから約25mg/ml、約25mg/mlから約50mg/ml、約50mg/mlから約60mg/ml、約60mg/mlから約70mg/ml、約70mg/mlから約80mg/ml、約80mg/mlから90mg/ml、約90mg/mlから100mg/ml、ならびに上記範囲の組合せでの1つまたは複数の補助溶媒を含むことができる。
【0031】
あるいは、該補助溶媒の濃度は、重量/容量パーセントで測定される。典型的な実施形態において、該補助溶媒は、約0.1%から約25%存在する。例えば、好適な補助溶媒濃度としては、限定はしないが、少なくとも約0.1%から0.3%、約0.3%から約0.5%、約0.5%から約0.7%、約0.7%から約0.9%、約0.9%から約1%、約1%から約3%、約3%から約5%、約5%から約7%、約7%から約9%、約9%から約11%、約11%から約13%、約13%から約15%、約15%から約20%、約20%から約25%、ならびに上記範囲の組合せが挙げられる。
【0032】
いくつかの実施形態において、該予備混合医薬組成物は、1つまたは複数のシクロデキストリンをさらに含む。シクロデキストリンは、それらの構造により、種々の有機および無機分子と錯体、または包接錯体を形成する能力を有する。ニカルジピンとシクロデキストリンとの錯体が記載されている(例えば、ニカルジピンまたはその塩酸塩とアルファ−シクロデキストリン、ベータ−シクロデキストリンまたはガンマ−シクロデキストリンとの包接錯体を記載している米国特許第5,079,237号;ニカルジピンなどのジヒドロピリジンとヒドロキシ−アルキル化−β−シクロデキストリンとの包接錯体を記載している米国特許第5,519,012号;およびペルC2〜C18アシル化シクロデキストリンによる医薬組成物における多数の薬物を記載している米国特許第5,904,929号を参照)。上記文献で、硫酸基を含むシクロデキストリンと組み合わせたジヒドロピリジンを開示しているものはない。市販入手できる硫酸シクロデキストリンの例は、CAPTISOL(登録商標)である。CAPTISOL(登録商標)は、ブチルエーテルスペーサー基またはスルホブチルエーテルによって親油性の空隙から分離されている、硫酸ナトリウム塩によるポリアニオン性β−シクロデキストリン誘導体である。スルホアルキルエーテルシクロデキストリン誘導体を作製する方法は、当技術分野でよく知られており、米国特許第5,376,645号に教示されている。薬物と誘導体との錯体を形成する方法もまた、米国特許第5,376,645号に開示されているとおり、当技術分野でよく知られている。
【0033】
該シクロデキストリンの濃度は、重量/容量パーセントで測定することができる。典型的な実施形態において、シクロデキストリンは、約0.1%から約25%存在する。例えば、好適なシクロデキストリンの濃度としては、限定はしないが、少なくとも約0.1%から0.3%、約0.3から約0.5%、約0.5%から約0.7%、約0.7%から約0.9%、約0.9%から約1%、約1%から約3%、約3%から約5%、約5%から約7%、約7%から約9%、約9%から約11%、約11%から約13%、約13%から約15%、約15%から約20%、約20%から約25%が挙げられる。
【0034】
活性成分、等張化剤、緩衝剤および場合によっては補助溶媒を含む、安定な予備混合医薬組成物の例を表1に示す。
【表1】

【0035】
いくつかの実施形態において、該医薬組成物は、本明細書に参照として援用されている、2006年4月18日に出願された米国仮特許出願第60/793,084号に記載されている任意のものである。
【0036】
5.3 方法
該緩衝溶液に該組成物を含む種々の成分を加える順序は、得られる組成物が安定であり、連続的静脈内注入に好適であるならば、重要ではない。したがって、本明細書に記載される組成物は、多数の異なる方法で調製することにより作製できる。例えば、いくつかの実施形態において、水に緩衝剤、等張化剤および/または補助溶媒を加え;緩衝化水溶液にニカルジピンを加え;所望のpHを得るためにpH調製剤を加え;次いで、最終容量を構成するために、十分な水を加えることによって、該組成物を調製することができる。必要ならば、所望のpHを得るためにpHを再調整することができる。他の例としては、水に緩衝剤およびニカルジピンまたは薬学的に許容できるその塩を加え;等張化剤および/または補助溶媒を加えて、所望のpH範囲を得るためにpHを調整し;次いで、最終容量を構成するために十分な水を加えることによって、該組成物を調製することができる。他の例としては、ニカルジピンまたは薬学的に許容できるその塩を加える前に、補助溶媒を加えることができ、ニカルジピンまたは薬学的に許容できるその塩を加えた後に、等張化剤を加えることができる。他の例としては、ニカルジピンまたは薬学的に許容できるその塩を加える前に、等張化剤を加えることができ、ニカルジピンまたは薬学的に許容できるその塩を加えた後に、補助溶媒を加えることができる。他の例としては、水に緩衝剤、等張化剤および/または補助溶媒を加え;ニカルジピンの溶解に好適な第1のpH範囲(例えば、pH3.6未満)へと該pHを調整し;ニカルジピンまたは薬学的に許容できるその塩を加え;所望の最終pH範囲を得るために該pHを調整し;次いで、最終容量を構成するために十分な水を加えることによって、該組成物を調製することができる。
【0037】
いくつかの実施形態において、水にクエン酸を加え、該緩衝水にデキストロースを加え、該緩衝水溶液に塩酸ニカルジピンを加え、必要ならば、該pHを3.6〜4.7の範囲に調整し、最終容量を構成するために十分な水を加えることによって、pH3.6〜4.7で塩酸ニカルジピン、デキストロース、およびクエン酸緩衝剤を含む医薬組成物を調製することができる。必要ならば、該pHは、約3.6から約4.7の間に再調整することができる。
【0038】
いくつかの実施形態において、水にクエン酸を加え、該緩衝水溶液にニカルジピンを加え、該緩衝水溶液に塩化ナトリウムを加え、該pHを約3.6から約4.7の間に調整し、最終容量を構成するために十分な水を加えることによって、pH3.6から約4.7で塩酸ニカルジピン、塩化ナトリウム、およびクエン酸緩衝剤を含む医薬組成物を調製することができる。該製剤にソルビトールが含まれる場合、ソルビトールはクエン酸と同時に加えられる。
【0039】
いくつかの実施形態において、5.0未満のpHを有する酸性溶液に、ニカルジピンまたは薬学的に許容できるその塩を加えることによって、該医薬組成物を調製することができる。例えば、該酸性溶液は、緩衝系の酸性成分を加えることによって調製することができる。ニカルジピンを溶解させる前または後に、該酸性溶液に、緩衝剤、1つまたは複数の等張化剤、および/または補助溶媒を加えることができる。次いで、最終容量を構成するために十分な水を加える。必要ならば、該組成物のpHを、約3.6から約4.7の間に調整することができる。
【0040】
いくつかの実施形態において、35℃超の温度に加熱した溶液にニカルジピンまたは薬学的に許容できるその塩を加え;該酸性溶液に緩衝剤、1つまたは複数の等張化剤および/または補助溶媒を加え;最終容量を構成するために十分な水を加えることによって、該医薬組成物を作製することができる。必要ならば、該組成物のpHを、約3.6から約4.7の間に調整することができる。
【0041】
該医薬組成物は、種々の容器内での使用のためにパッケージすることができる。該組成物は、静脈内用のバッグまたはボトルなどの薬学的に許容できる容器内にパッケージされることが好ましい。ニカルジピンの光感受性により、該組成物に到達し得る光の量を減少させるパッケージを使用することができる。例えば、いくつかの実施形態において、該容器は、場合によっては、アルミニウムオーバーパウチまたはカートンなどの光遮断剤をさらに含むことができる。
【0042】
いくつかの実施形態において、該予備混合医薬組成物は、予備混合バッグおよび混合バッグなどの静脈内用バッグに計量分配される。静脈内用バッグは当技術分野でよく知られており、市販品が入手できる。静脈内用バッグの例としては、限定はしないが、GALAXY(登録商標)、INTRAVIA(登録商標)、SOLOMIX(登録商標)、STEDIM(登録商標)71、STEDIM(登録商標)100、VIAFLEX(登録商標)、EXCEL(登録商標)、VISIV(登録商標)、VIAFLO(商標)、ADDEASE(登録商標)、ADD−VANTAGE(登録商標)、DUPLEX(商標)、FIRST CHOICE(商標)、PROPYFLEX(商標)およびBFS(商標)が挙げられる。
【0043】
いくつかの実施形態において、該医薬組成物と接触する該バッグの成分は、ポリ塩化ビニル(PVC)およびエチレンビニルアセテート(EVA)などの極性ポリマーを含有すべきではない。極性ポリマーを含有せず、したがって、これらの実施形態における使用に好適なバッグの例としては、限定はしないが、GALAXY(登録商標)、EXCEL(登録商標)、VISIV(登録商標)、およびVIAFLO(商標)が挙げられる。
【0044】
医薬組成物を薬学的に許容できる容器に充填するための操作およびそれに続く処理は当技術分野で知られている。これらの操作は、衛生管理に必要とされることの多い滅菌製薬製品を製造するために用いることができる。例えば、Center for Drug Evaluation and Research(CDER)およびCenter for Veterinary Medicine(CVM)、「Guidance for Industry for the Submission Documentation for Sterilization Process Validation in Applications for Human and Veterinary Drug Products」(1994年11月)を参照されたい。滅菌製薬製品を製造するための好適な操作の例としては、限定はしないが、終末湿熱滅菌、エチレンオキシド、放射線照射(すなわち、ガンマ線および電子線)、および無菌処理技術が挙げられる。これらの滅菌操作の任意の1つを用いて、本明細書に記載された滅菌医薬組成物を製造することができる。
【0045】
いくつかの実施形態において、滅菌医薬組成物は、無菌処理技術を用いて調製することができる。滅菌は、滅菌材料の使用および作業環境の管理によって維持される。すべての容器および器具を、充填前に、好ましくは熱滅菌によって滅菌する。次いで、フィルターに該組成物を通して装置に充填するなどの無菌条件下で、該容器に充填する。したがって、該組成物は、容器内に滅菌充填して、終末滅菌の熱ストレスを避けることができる。
【0046】
いくつかの実施形態において、該組成物は、湿熱を用いて終末滅菌される。終末滅菌は、該医薬組成物を含有する最終密封容器内のすべての生存微生物を破壊するために用いることができる。最終パッケージング内の薬剤製品の終末熱滅菌を達成するために、典型的にはオートクレーブが用いられる。最終製品の終末滅菌を達成するための製薬業界における典型的なオートクレーブサイクルは、121℃で少なくとも10分間である。
【0047】
血圧の急性上昇の予防または処置を必要とするヒト患者における、血圧の急性上昇の予防または処置のために、本明細書に記載された医薬組成物を用いることができる。いくつかの実施形態において、処置されている患者は、共存する医学的病態により容量制限されている場合が考えられ、したがって、より高濃度で低液体容量のニカルジピン投与から利益を得ることができる。低容量製剤の投与が有利であると考えられる医学的状態の例としては、腎不全、腹水、脳浮腫、うっ血性心不全、肝不全、またはCNS傷害が挙げられる。用量は、高血圧の重症度および投与中の個々の患者の応答に依存して個別化することができる。典型的に該容量は、予備混合製品の連続注入として投与することができる。いくつかの実施形態において、該患者は、150mmHg以上の収縮期血圧の上昇を有する。他の実施形態において、対象は、90mmHg以上の拡張期値での血圧上昇を有する。
【0048】
いくつかの実施形態において、該医薬組成物は、種々の医学的操作に関連する急性血圧上昇を予防するために使用することができる。急性血圧上昇に関連する医学的操作の例としては、限定はしないが、電気痙攣療法(例えば、Avramovら、1998年、J.Clinical Anesthesia、10:394〜400頁を参照)、頚動脈動脈内膜切除術(例えば、Dormanら、2001年、J.Clinical Anesthesia、13:16〜19頁を参照)、気管挿管(Songら、2001年、Anesth Analg.、85:1247〜51頁)および皮膚切開(Songら、2001年、Anesth Analg.、85:1247〜51頁)が挙げられる。
【0049】
いくつかの実施形態において、該医薬組成物は、一定の心血管病態および脳血管病態による急性血圧上昇を処置するために使用することができる。急性血圧上昇に関連する心血管病態の例としては、限定はしないが、本態性高血圧、狭心症、急性虚血、全身性動脈高血圧、うっ血性心不全、冠動脈疾患、心筋梗塞、心不整脈、心筋症および動脈硬化症が挙げられる。急性血圧上昇に関連する脳血管病態の例としては、限定はしないが、肺性高血圧、脳不全および偏頭痛が挙げられる。
【0050】
いくつかの実施形態において、限定はしないが、腎障害(例えば、腎実質障害または腎血管障害)、大動脈の縮窄症、クロム親和性細胞腫、甲状腺機能亢進症、代謝性症候群、固体臓器移植および薬物関連高血圧などの、高血圧を引き起こす他の病態を処置するために、該医薬組成物を用いることができる。
【0051】
いくつかの実施形態において、該医薬組成物は、限定はしないが、心胸手術、脊髄手術ならびに頭部および頚部手術などの手術操作中に低血圧を誘導するために使用することができる。
【0052】
6.代替の態様
代替の態様において、本発明は、心臓薬または薬学的に許容できるその塩、ならびに補助溶媒と錯化剤の少なくとも1つ、および緩衝剤を含む予備混合された即時使用注射用医薬組成物に関する。該組成物は等張化剤をさらに含み得る。該組成物は等張であることが好ましい。該組成物のpHは3と7との間であることが好ましい。該組成物は、静脈内用バッグ、注射器またはバイアルなどの薬学的に許容できる容器内にパッケージされていることが好ましい。該組成物は、心血管および脳血管の病態の処置に使用されることが好ましい。本発明はまた、このような組成物を調製する方法に関する。この他の態様において、本明細書に用いられる用語「予備混合された」とは、製造の時点ですでに混合されており、投与前に希釈またはさらなる処理を必要としない医薬組成物を意味する。用語「予備混合された」はまた、該液体溶液および活性製薬成分が製造時点から分離されており、該溶液が静脈内用バッグに保存される場合、活性製薬成分が凍結乾燥され、患者への投与直前まで、該バッグに接続はしているが、該溶液との液体接触はしていないバイアル内に保存されるなどして保存される医薬組成物を意味する。該医薬組成物は、注射により投与される水溶液であることが好ましい。あるいは、該医薬組成物を凍結乾燥し、次いで、例えば静脈内投与の前に、等張性の生理食塩水中で再構成することができる。
【0053】
この代替態様において、本発明の医薬組成物は、心臓薬または薬学的に許容できるその塩を含む。心臓薬のクラス例としては、ベータブロッカー、カルシウムチャネル拮抗薬、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、利尿薬、血管拡張薬、ニトロ化合物、抗血小板薬および抗凝固薬が挙げられる。該心臓薬は、カルシウムチャネル拮抗薬または薬学的に許容できるその塩であることが好ましい。該心臓薬は、ジヒドロピリジン誘導体または薬学的に許容できるその塩であることがより好ましい。該心臓薬は、ニカルジピンまたは薬学的に許容できるその塩であることが最も好ましい。ニカルジピンの薬学的に許容できる塩の例は、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩および酒石酸塩である。ニカルジピンの薬学的に許容できる好ましい塩は、塩酸ニカルジピンである。該医薬組成物は、0.05〜1.5mg/mlのニカルジピンまたは薬学的に許容できるその塩を含むことができる。該医薬組成物は、0.15〜0.35mg/mlのニカルジピンまたは薬学的に許容できるその塩を含むことが好ましい。該組成物は、0.2〜0.3mg/mlのニカルジピンまたは薬学的に許容できるその塩を含むことがより好ましい。ニカルジピンおよび薬学的に許容できるその塩、それらの調製、およびそれらの使用は当技術分野で知られている。例えば、それらは、他にも文献はあるが中でも、参照としてその全体が本明細書に援用されている米国特許第3,985,758号に開示されている。
【0054】
いくつかの実施形態において、該医薬組成物は、0.1〜15mg/mlのニカルジピンまたは薬学的に許容できるその塩を含む。例えば、ニカルジピンまたは薬学的に許容できるその塩の好適な濃度としては、限定はしないが、0.1〜15mg/ml、0.1〜10mg/ml、0.1〜5mg/ml、0.1〜3.0mg/ml、0.1〜2.0mg/ml、0.1〜1.0mg/ml、0.9mg/ml、0.8mg/ml、0.7mg/ml、0.6mg/ml、0.5mg/ml、0.4mg/ml、0.3mg/ml、0.2mg/mlまたは0.1mg/mlが挙げられる。
【0055】
この代替態様において、心臓病態を処置するために該医薬組成物を使用することができる。心血管および脳血管の病態など、カルシウムチャネル拮抗薬の投与によって緩和する病態を処置するために、該組成物を用いられることが好ましい。本発明の医薬組成物によって処置することのできる心血管病態としては、狭心症、虚血、全身性動脈高血圧、うっ血性心不全、冠動脈疾患、心筋梗塞、心不整脈、心筋症および動脈硬化症が挙げられる。本発明の医薬組成物によって処置することのできる脳血管病態としては、肺性高血圧、脳不全および偏頭痛が挙げられる。該組成物は、高血圧の処置に用いられることが好ましい。
【0056】
この代替態様において、本発明の医薬組成物はまた、補助溶媒および錯化剤の少なくとも1つを含む。したがって、該組成物は、1つの補助溶媒、1つの錯化剤、複数の補助溶媒、複数の錯化剤、1つの補助溶媒と1つの錯化剤、1つの補助溶媒と複数の錯化剤、1つの錯化剤と複数の補助溶媒、または複数の補助溶媒と複数の錯化剤を含み得る。
【0057】
この代替態様において、ニカルジピンおよび薬学的に許容できるその塩は、水にわずかにしか溶解しない。補助溶媒および錯化剤は、該医薬組成物の水溶液にニカルジピンを可溶化するのを助ける。補助溶媒および錯化剤は、本発明の組成物中など、高濃度のニカルジピンが存在する場合に特に有利である。本発明の組成物の利点は、該組成物が、低容量の静脈内用液体を用いて該組成物を投与することを可能にする高濃度のニカルジピンを有することである。このような組成物は、多数の患者、特に容量制限された患者に対する処置の選択肢となり得る。
【0058】
この代替態様において、高濃度で低容量のニカルジピンから利益を得ることのできる患者および医学的病態としては、限定はしないが、以下のものが挙げられる:急性うっ血性心不全;小児科;体液の過負荷が大きな問題である高齢患者における高血圧急性発症;血圧を制御するために、AIS、ICHおよびSAHなどのすべての急性発作領域;心胸手術(CABG、大動脈の縮窄など)、脊髄手術、ならびに頭部および頚部手術などの手術操作中の低血圧制御;および頚動脈内膜切除術、外傷性脳傷害ならびに高血圧および血管痙攣の可能性のある処置の後のブレイクスルー高血圧制御のための神経手術。
【0059】
この代替態様において、補助溶媒および錯化剤は、溶解性の増大に加えて、該医薬組成物の安定性を高める。さらに、該医薬組成物の張性を調整するために、該医薬組成物中の補助溶媒および錯化剤の濃度の変更を行うことができる。薬学的に許容できる補助溶媒は当技術分野で知られており、市販品を入手できる。典型的な補助溶媒としては、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール(PG)、エタノールおよびソルビトールが挙げられる。該補助溶媒の濃度は、0.1〜10%重量/容量パーセントであることが好ましく、これは該組成物のpHに依存する。該補助溶媒の濃度は、0.1〜5%であることがより好ましい。該補助溶媒の濃度は、0.1〜2%であることが最も好ましい。該医薬組成物にとって好ましい補助溶媒は、プロピレングリコールおよびソルビトールである。プロピレングリコールの濃度は、0.1〜2%であることが好ましい。プロピレングリコールの濃度は、0.1〜1%であることがより好ましい。プロピレングリコールの濃度は、0.3%であることが最も好ましい。ソルビトールの好ましい濃度は、0.1〜2%である。ソルビトールのさらに好ましい濃度は、0.1〜1%である。ソルビトールの最も好ましい濃度は、0.5%である。
【0060】
この代替態様において、薬学的に許容できる錯化剤は当技術分野で知られており、市販品を入手できる。典型的な錯化剤としては、天然のシクロデキストリンおよび化学修飾されたシクロデキストリンなどのシクロデキストリン類が挙げられる。該錯化剤はベータシクロデキストリンであることが好ましい。該医薬組成物にとって好ましい錯化剤は、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(2HPBCD)およびスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン(SBEBCD)である。該錯化剤の濃度は、0.1〜25%重量/容量パーセントであることが好ましい。該複合化剤の濃度は、0.1〜10%であることがより好ましい。該錯化剤の濃度は、0.1〜5%であることが最も好ましい。2HPBCDの濃度は、15〜25%であることが好ましい。2HPBCDの濃度は、20〜25%であることがより好ましい。SBEBCDの好ましい濃度は、0.1〜10%である。SBEBCDのさらに好ましい濃度は、0.1〜5%である。SBEBCDの最も好ましい濃度は、0.75〜1%である。
【0061】
さらに、この代替態様における医薬組成物は、緩衝剤を含むことができる。しかし、該組成物は複数の緩衝剤を含むことができる。本発明の医薬組成物は、投与の際の静脈炎の発生を最少化するために、生理的pHに近いことが好ましい。しかし、該医薬組成物のpHは、該組成物中のニカルジピンの溶解性および安定性にも影響を及ぼす。一般に、該医薬組成物のpHが増加するにつれて、ニカルジピンの水溶性は低下する。その結果、生理的pHに近いニカルジピンを可溶化することは難しい。さらに、該組成物は、該溶液が投与された時、血液による希釈の際に沈殿しないように十分な緩衝能力を有することが望ましい。
【0062】
この代替態様において、典型的な緩衝剤としては、酢酸、グルタミン酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、乳酸、ヒスチジンまたは他のアミノ酸、グルコン酸、リン酸およびコハク酸が挙げられる。好ましい緩衝剤は、酢酸およびコハク酸である。好ましい緩衝剤の濃度は、1〜100mMである。より好ましい緩衝剤の濃度は、1〜50mMである。さらに好ましい緩衝剤の濃度は、25〜35mMである。
【0063】
この代替態様において、本発明の医薬組成物は等張性、すなわち、270〜328mOsm/kgの範囲であることが好ましい。しかし、該組成物は、250〜350mOsm/kgの範囲の張性を有し得る。したがって、該組成物は、わずかに低張性である250〜269mOsm/kgであっても、わずかに高張性である329〜350mOsm/kgであってもよい。該医薬組成物の張性は、該溶液中の補助溶媒、錯化剤および緩衝剤のいずれか1つまたは複数の濃度を調整することによって等張性にすることが好ましい。
【0064】
この代替態様において、本発明の医薬組成物は等張化剤をさらに含み得る。しかし該組成物は、複数の等張化剤をさらに含み得る。等張化剤は当技術分野でよく知られており、市販品が入手できる。典型的な等張化剤としては、塩化ナトリウムおよびデキストロースが挙げられる。好ましい等張化剤は塩化ナトリウムである。好ましい等張化剤の濃度は1〜200mMである。より好ましい等張化剤の濃度は75〜125mMである。さらに好ましい等張化剤の濃度は90〜110mMである。
【0065】
この代替態様において、本発明の医薬組成物は、薬学的に許容できる容器内にパッケージされることが好ましい。薬学的に許容できる容器としては、静脈内用バッグ、ボトル、バイアル、および注射器が挙げられる。好ましい容器としては、好ましくはポリマーベースの静脈内用バッグおよび注射器、ならびに、好ましくはガラス製のバイアルおよび静脈内用ボトルが挙げられる。また、該医薬組成物に接触する該容器の成分は、ポリ塩化ビニル(PVC)を含有しないことが好ましい。最も好ましい容器は、該医薬組成物に接触するPVC含有成分を有さない静脈内用バッグである。また、該医薬組成物を遮光することも望ましい。したがって、該容器は場合によっては、光遮断剤をさらに含み得る。好ましい光遮断剤はアルミニウムオーバーパウチである。
【0066】
また、この代替態様によって、滅菌の医薬組成物を調製するための上記の方法も提供される。
【0067】
(実施例)
実施例1から6は、例示として意図されており、一般的な開示に関して限定するものではない。実施例7から12は、本明細書に開示された代替の態様を主として例示する医薬組成物の特定の実施形態を開示している。
【0068】
(実施例1から6)
(実施例1)
濃縮CARDENE(登録商標)I.V.の安定性に対する種々の希釈剤の効果
IV型バッグ中に一般的に使用される種々の静脈内注入液により0.1mg/mlに希釈された濃縮アンプル製品に関する安定性結果を図1に示す。混合後のpHを測定し、X軸上に記載する。24時間後に残存する薬物%をRP−HPLCによりモニタリングすることにより製品安定性を測定し、Y軸上に示す。
【0069】
図1に示されるように、塩酸ニカルジピンの安定性は、注入液の初発pHおよび混合後の溶液の最終pHに関連する。希釈後の薬物損失量は、混合後の溶液の最終pHが増加するにつれて増大し、例えば、pHが4.5超の場合には極めて著しい薬物減少に達する。これらの知見に基づいて、市販のアンプル製品に関する製品添付文書には、製品の希釈が特定の注入液を用いて実施されることが必要である。さらに、希釈された製品は、24時間以内に使用しなければならない。
【0070】
(実施例2)
安定性に対するpHの効果
GALAXY(登録商標)バッグに計量分配された0.1mg/mLのニカルジピンHCl、0.1mMのクエン酸、および5%のデキストロース製剤に関する安定性結果を、図2Aおよび2Bに示す。GALAXY(登録商標)バッグに計量分配された0.1mg/mLのニカルジピンHCl、0.1mMのクエン酸、0.9%の生理食塩水製剤に関する安定性結果を、図3Aおよび3Bに示す。安定性評価は、RP−HPLCを用いて、時間の関数としての残存薬物%および総不純物形成を測定することによって実施する。
【0071】
安定性試験は、40℃の加速温度で実施された。公表文献に基づくと、薬物分解に関する活性化エネルギーは、通常12Kcal/molから24Kcal/molの範囲に入り、典型的には19〜20Kcal/molである。これらの条件下(Ea=19.4Kcal/molと仮定)、40℃で15週間の保存は、25℃で凡そ18カ月の使用期限を有する製品に相当する(例えば、Connors,K.A.ら、Chemical Stability of Pharmaceuticals、A Handbook for Pharmacists、John Wiley & Sons、第2版編集、1986年を参照)。
【0072】
図2Aおよび3Aに示されるように、分解およびバッグ表面への吸着による製品効力の損失(残存薬物%の低下)は、製剤のpHが増加するにつれて増大した。例えば、デキストロース製剤では40℃で6カ月後の保存後、pH4.4と4.7での製剤に関して、薬物損失の増加を示す傾向を明らかに観察することができる。pH3.3では、残存薬物%の低下は、吸着による薬物損失よりも総不純物の増加に起因すると考えられる(図2Bおよび3B)。観察された薬物損失に加えて、ニカルジピン関連不純物の形成(図2Bおよび3B)が、pHに強く依存することも判明した。しかしながらこの場合、逆の傾向が見られた。すなわち、pHが低下するにつれて総不純物は増加した。
【0073】
本試験からの結果により、製剤のpHは、即時使用の希釈製品の安定性に対して著しい効果を及ぼすことが示されている。本試験の知見により、最適な製剤のpH範囲は、約3.6から約4.7の間であることが示されている。しかしながら、許容できる薬物分解および/または総不純物形成の程度に依って、他のpH範囲を選択することができる。
【0074】
(実施例3)
不純物形成に対するニカルジピン濃度の効果
0.1mg/mLおよび0.2mg/mlのソルビトールなしのデキストロース製剤を含む即時使用予備混合組成物中の不純物形成に対して、40℃で6カ月にわたるニカルジピン濃度の効果を図4Aに示す。0.1mg/mLおよび0.2mg/mlのソルビトールなしの生理食塩水製剤を含む即時使用予備混合組成物中の不純物形成に対して、40℃で3カ月にわたるニカルジピン濃度の効果を図4Bに示す。該製剤はGALAXY(登録商標)バッグに計量分配される。安定性評価を、実施例2に記載されたとおりに実施する。
【0075】
図4Aおよび4Bに示されるように、pHに加えて、製品濃度は、製品の安定性、特にニカルジピン関連不純物の形成に影響を与える別の因子である。総不純物形成に関して観察された濃度依存は、製剤のpHが増加するにつれて最小化する。例えば、図4Aおよび4Bにおいて、濃度の効果は、pH3.3で著しく、pHが4.7に近づくにつれて最小化する。
【0076】
これらの結果は、デキストロースおよび生理食塩水双方の製剤に関して0.2mg/ml製剤に比較して0.1mg/ml製剤では、不純物形成が多くなることを示している。実行可能な製剤のpH範囲と共に薬物濃度の同時最適化が、即時使用予備混合薬物製剤の開発において重要である。
【0077】
(実施例4)
ソルビトール製剤およびソルビトールなしの製剤の安定性比較
ソルビトール製剤およびソルビトールなしの製剤の安定性比較を、0.1mg/mLのニカルジピンHCl、1.92mg/mLのソルビトール、48mg/mLのデキストロース、0.0192mg/mLのクエン酸、pH4.2、および0.1mg/mLのニカルジピンHCl、50mg/mLのデキストロース、0.0192mg/mLのクエン酸、pH4.0を用いて、加速条件下(40℃で4週間)で実施した。両製剤をGALAXY(登録商標)バッグに計量分配した。安定性評価は、RP−HPLCを用いて時間の関数としての残存薬物%および総不純物形成を測定することによって実施した。その結果を表2および3に示す。
【表2】

【表3】

【0078】
表2および3に示されるように、2つの製剤間での測定されたパラメータにおいて見られた差異は最小であった。これらの結果ならびに実施例1および2に示された結果に基づいて、ソルビトールの有無は、ニカルジピンHClおよびデキストロースまたは塩化ナトリウムを含む予備混合医薬組成物の安定性に対する製剤のpHおよび薬物濃度の影響を変えるとは予測されない。
【0079】
(実施例5)
安定性に対するプラスチックフィルム組成物の効果
「不適合」バッグおよび「適合」バッグに関して、0.2mg/mLのニカルジピンHCl、0.2mMのクエン酸塩、5%のデキストロース、pH4.0〜4.2を含む、即時使用予備混合組成物の安定性に対するプラスチックフィルム組成物の効果を、それぞれ図5Aおよび5Bに示す。「不適合」バッグは、塩化ポリビニル(PVC)およびエチレンビニルアセテート(EVA)など、極性ポリマー類を含有する。「適合」バッグは、極性ポリマー類を含有しない。
【0080】
安定性評価は、種々の市販のIV型注入用バッグシステム中、0.2mg/mLのソルビトールなしのデキストロース製剤に関して実施した。EXCEL(登録商標)、VIAFLEX(登録商標)、VIAFLO(商標)、INTRAVIA(登録商標)、およびVISIV(登録商標)バッグを、水中ですすぎ、ポーチをアルミニウムフォイルで覆った。このバッグに上記製剤を充填し、105℃で21分間加圧滅菌した。STEDIM(登録商標)71およびGALAXY(登録商標)バッグに、上記製剤を無菌的に充填した。40℃で24週間までインキュベートしたサンプルに対する安定性評価は、RP−HPLCを用い、時間の関数としての残存薬物%および総不純物形成を測定することによって実施した(データは示していない)。タンク中の混合後に測定された濃度と比較した残存薬物%を算出した。
【0081】
図5Aに示されるように、種々の市販のIV型バッグは、ニカルジピンHClに適合性ではなかった。ポリマーPVC(例えば、VIAFLEX(登録商標)およびINTRAVIA(登録商標))を含有したバッグ中では、保存の際に、主として製品吸着による製品効力の著しい損失が見られた。ニカルジピンは、接触層にポリマーのエチレンビニルアセテート(EVA)を含有するバッグ(例えば、STEDIM(登録商標)71)にも不適合性であった。PVCおよびEVAは、ニカルジピンHClと不適合性である極性プラスチック材料の例である。ニカルジピンHClはpKa約7.2を有する弱塩基であるので、該製剤のpHが増加するにつれて疎水性が増大し、したがって、ポリマー接触面との適合性は、表面の電荷に関連した性質に依存する。
【0082】
図5Bに示されるとおり、製品効力の最少の減少は、コポリマー(例えば、EXCEL(登録商標))、ポリエチレン(例えば、GALAXY(登録商標))、およびポリオレフィン混合物(例えば、VISIV(登録商標)およびVIAFLO(商標))を含む市販バッグで見られた。
【0083】
(実施例6)
製品安定性に対するCAPTISOL(登録商標)の効果
100mlのGALAXY(登録商標)バッグ中に分散させた、0.3mg/mlのニカルジピン、30mMの酢酸Na、1.8%のCaptisol、112mMのNaCl、pH4.5、または0.3mg/mlのニカルジピン、30mMの酢酸Na、1.8%のCaptisol、3.7%のデキストロース、pH4.5を含む即時使用予備混合組成物の安定性に対するCAPTISOL(登録商標)の効果を、5℃、25℃および40℃において、12週間モニターした(例えば表4を参照)。該薬物は5℃では安定であったため、データは示していない。また、該製剤を、2mLのガラスバイアル中、45℃でモニターした(例えば表5を参照)。製剤はすべて、該溶液を0.22μmのフィルターを通してろ過することにより、無菌的にバイアルおよびバッグ内に充填した。
【表4】

【表5】

【0084】
CAPTISOL(登録商標)を含む医薬組成物は、時間および温度の関数として、最少の薬物損失および不純物形成(データは示していない)を示した。40℃および45℃での加速安定性データに基づくと、CAPTISOL(登録商標)、デキストロースまたはNaClを含む製剤は、室温で少なくとも12カ月間安定なはずである。
【0085】
(実施例7から12)
実施例7〜12は、特定の実施形態を用いて実施された実験を示している。実施例7〜12における実験は、比較的短期間に十分な製品の分解を引き起こすストレス条件をシミュレートするために、45℃で実施した。分解プロファイルにおける相対的な違いを評価するために、対照製剤(CF)および/または市販製品製剤(CPF)に対して安定性の比較を行った。CPFは市販の薬物製品であり、したがって、該分子の分解挙動は、温度および時間の関数として十分に認識されている。室温、22℃〜27℃、および40℃で、36カ月までの該市販製品に関する安定性データが入手できる。
【0086】
この予備スクリーニング評価に用いられた原理は、評価された製剤のプロトタイプの分解動態学が、ストレス温度でのCPFと同等であったならば、薬物製品の安定性は、室温では同等か、またはより良好であろうというものである。現在のプロトタイプ製剤は、25℃少なくとも18カ月間安定であり、したがって、評価された製剤プロトタイプは、同等か、またはより良好な安定性を有し得ることが予測される。
【0087】
(実施例7)
製剤の調製および分析
ソルビトールまたはプロピレングリコールなどの所望の補助溶媒、および/またはSBEBCDまたは2HPBCDなどの錯化剤を含有する酢酸塩またはコハク酸塩などの適切な緩衝剤を調製した。塩化ナトリウムなどの適切な等張化剤を調製し、いくつかの該医薬組成物に加えた。最終製剤容量および目標の薬物濃度、通常0.2〜0.3mg/mLに基づき、ニカルジピンを、適切なガラス容器に量り入れ、調製した緩衝剤を加えて該薬物を溶解させた。次いで、適宜等張化剤を加えた。次いで、薬物溶解を促進するために、該溶液を45分間まで超音波処理した。薬物溶解後、0.45μmのシリンジフィルター(Life SciencesからのAcrodisc LC13mmSyringe filter、PVDF Membrane、PN4452T)を通して該溶液をろ過した。ろ過の際、最初の数滴を捨て、残りの溶液を回収して別のガラス容器に入れた。調製した製剤を引き続き、バイアルまたは静脈内用バッグに分け入れた。
【0088】
上記のプロトコルに従って、以下の等張性医薬組成物を作製した:
医薬組成物1(PC1):0.2〜0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、3.7%のソルビトール、および50mMの酢酸Na、該組成物のpHは5.0
医薬組成物2(PC2):0.2〜0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、1.7%のプロピレングリコール、および50mMの酢酸Na、該組成物のpHは5.0
医薬組成物3(PC3):0.2〜0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、2.8%のソルビトール、および50mMのコハク酸Na、該組成物のpHは5.5
医薬組成物4(PC4):0.2〜0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、1.1%のプロピレングリコール、および50mMのコハク酸Na、該組成物のpHは5.5
医薬組成物5(PC5):0.2〜0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、4.1%のソルビトール、および50mMの酢酸Na、該組成物のpHは3.5
医薬組成物6(PC6):0.2〜0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、1.9%のプロピレングリコール、および50mMの酢酸Na、該組成物のpHは3.5
医薬組成物7(PC7):0.2〜0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、4.1%のソルビトール、および50mMの酢酸Na、該組成物のpHは4.5
医薬組成物8(PC8):0.2〜0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、1.8%のプロピレングリコール、および50mMの酢酸Na、該組成物のpHは4.5
医薬組成物9(PC9):0.2〜0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、6.5%のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、および50mMのコハク酸Na、該組成物のpHは5.5
医薬組成物10(PC10):0.2〜0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、6.5%のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、および50mMのコハク酸Na、該組成物のpHは6.0
医薬組成物11(PC11):0.2〜0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、8.5%のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、および50mMのコハク酸Na、該組成物のpHは5.5
医薬組成物12(PC12):0.2〜0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、8.5%のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、および50mMのコハク酸Na、該組成物のpHは6.0
医薬組成物13(PC13):0.2〜0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、8.5%のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、および50mMの酢酸Na、該組成物のpHは5.0
医薬組成物14(PC14):0.2〜0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、8.5%のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、および50mMのクエン酸Na、該組成物のpHは5.5
医薬組成物15(PC15):0.2〜0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、22.5%の2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、および50mMの酢酸Na、該組成物のpHは5.0
医薬組成物16(PC16):0.2〜0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、22.5%の2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、および50mMのコハク酸Na、該組成物のpHは5.5
医薬組成物17(PC17):0.2〜0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、17.5%の2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、および50mMの酢酸Na、該組成物のpHは5.0
医薬組成物18(PC18):0.2〜0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、17.5%の2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、および50mMのコハク酸Na、該組成物のpHは5.5
市販製品(アンプル)製剤(CPF):2.5mg/mlの塩酸ニカルジピン、2.5mMのクエン酸塩、および5%のソルビトール、該組成物のpHは3.5
対照製剤(CF):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、2.5mMのクエン酸塩、および5%のソルビトール、該組成物のpHは3.5
医薬組成物19(PC19):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、50mMの酢酸ナトリウム、50mMのクエン酸ナトリウム、および50mMのコハク酸二ナトリウム、該組成物のpHは3.5
医薬組成物20(PC20):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、50mMの酢酸ナトリウム、50mMのクエン酸ナトリウム、および50mMのコハク酸二ナトリウム、該組成物のpHは4.5
医薬組成物21(PC21):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、50mMの酢酸ナトリウム、50mMのクエン酸ナトリウム、および50mMのコハク酸二ナトリウム、該組成物のpHは5.0
医薬組成物22(PC22):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、50mMの酢酸ナトリウム、50mMのクエン酸ナトリウム、および25mMのコハク酸二ナトリウム、該組成物のpHは5.5
医薬組成物23(PC23):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、4.1%のソルビトール、および50mMの酢酸ナトリウム、該組成物のpHは3.5
医薬組成物24(PC24):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、4.1%のソルビトール、および50mMの酢酸ナトリウム、該組成物のpHは4.5
医薬組成物25(PC25):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、3.7%のソルビトール、および50mMの酢酸ナトリウム、該組成物のpHは5.0
医薬組成物26(PC26):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、2.8%のソルビトール、および50mMの酢酸ナトリウム、該組成物のpHは5.5
医薬組成物27(PC27):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、1.9%のプロピレングリコール、および50mMの酢酸ナトリウム、該組成物のpHは4.5
医薬組成物28(PC28):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、1.8%のプロピレングリコール、および50mMの酢酸ナトリウム、該組成物のpHは4.5
医薬組成物29(PC29):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、1.7%のプロピレングリコール、および50mMの酢酸ナトリウム、該組成物のpHは5.0
医薬組成物30(PC30):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、1.1%のプロピレングリコール、および50mMのコハク酸ナトリウム、該組成物のpHは5.5
医薬組成物31(PC31):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、6.5%のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、および50mMのコハク酸ナトリウム、該組成物のpHは5.5
医薬組成物32(PC32):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、6.5%のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、および50mMのコハク酸ナトリウム、該組成物のpHは6.0
医薬組成物33(PC33):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、22.5%の2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、および50mMの酢酸ナトリウム、該組成物のpHは5.0
医薬組成物34(PC34):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、17%の2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、および50mMのコハク酸二ナトリウム、該組成物のpHは5.5
医薬組成物35(PC35):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、0.3%のプロピレングリコール、0.5%のソルビトール、30mMの酢酸ナトリウムおよび90mMのNaCl、該組成物のpHは5.2
医薬組成物36(PC36):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、0.3%のプロピレングリコール、2.0%のソルビトール、30mMの酢酸ナトリウムおよび45mMのNaCl、該組成物のpHは5.2
医薬組成物37(PC37):1.5mg/mlの塩酸ニカルジピン、9%のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、および30mMの酢酸ナトリウム、該組成物のpHは4.5
医薬組成物38(PC38):1.5mg/mlの塩酸ニカルジピン、9%のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、および30mMの酢酸ナトリウム、該組成物のpHは5.0
医薬組成物39(PC39):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、および30mMの酢酸ナトリウム、該組成物のpHは3.5
医薬組成物40(PC40):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、および30mMの酢酸ナトリウム、該組成物のpHは4.0
医薬組成物41(PC41):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、および30mMの酢酸ナトリウム、該組成物のpHは4.5
医薬組成物42(PC42):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、1.8%のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、30mMの酢酸ナトリウム、および110mMのNaCl、該組成物のpHは5.0
医薬組成物43(PC43):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、1.8%のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、0.3%のプロピレングリコール、30mMの酢酸ナトリウム、および85mMのNaCl、該組成物のpHは5.0
医薬組成物44(PC44):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、1.8%のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、30mMの酢酸ナトリウム、および110mMのNaCl、該組成物のpHは4.5
医薬組成物45(PC45):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、1.8%のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、30mMの酢酸ナトリウム、および200mMのデキストロース、該組成物のpHは4.5
医薬組成物46(PC46):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、0.75%のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、30mMの酢酸ナトリウム、および125mMのNaCl、該組成物のpHは4.5
医薬組成物47(PC47):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、1.0%のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、30mMの酢酸ナトリウム、および125mMのNaCl、該組成物のpHは4.5
医薬組成物48(PC48):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、3.4%のソルビトール、および50mMのコハク酸ナトリウム、該組成物のpHは5.6
医薬組成物49(PC49):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、1.3%のプロピレングリコール、および50mMの酢酸ナトリウム、該組成物のpHは5.6
医薬組成物50(PC50):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、1.8%のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、30mMの酢酸ナトリウム、および110mMのNaCl、該組成物のpHは5.0
医薬組成物51(PC51):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、0.75%のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、30mMの酢酸ナトリウム、および125mMのNaCl、該組成物のpHは4.5
医薬組成物52(PC52):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、1.0%のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、30mMの酢酸ナトリウム、および125mMのNaCl、該組成物のpHは4.5
医薬組成物53(PC53):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、0.5%のソルビトール、0.3%のプロピレングリコール、30mMの酢酸ナトリウムおよび90mMのNaCl、該組成物のpHは5.2
医薬組成物54(PC54):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、1.0%のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、30mMの酢酸ナトリウム、および125mMのNaCl、該組成物のpHは4.5
医薬組成物55(PC55):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、0.75%のスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、30mMの酢酸ナトリウム、および125mMのNaCl、該組成物のpHは4.5
医薬組成物56(PC56):0.3mg/mlの塩酸ニカルジピン、0.5%のソルビトール、0.3%のプロピレングリコール、50mMの酢酸ナトリウムおよび90mMのNaCl、該組成物のpHは5.2
【0089】
対照製剤(CF)中の賦形剤濃度は、市販製品製剤(CPF)、Cardene(登録商標)I.V(アンプル)と等しい。しかし、活性成分の濃度は、市販製剤と対照製剤とで異なる。市販製品製剤(CPF)では、アンプル中の塩酸ニカルジピンの濃度は、希釈前に2.5mg/mLであり、投与前に適切なIV液による希釈後は0.1mg/mlである。静脈内用液体によるさらなる希釈が必要とされないように予備混合即時使用静脈内用バッグのために設計されている対照製剤(CF)は、0.3mg/mLの塩酸ニカルジピン濃度を有する。対照製剤の目的は、評価される製剤の分解性向の評価を助けることである。ストレス条件における同等の分解プロファイルは、同等の製剤安定性を示す。
【0090】
(実施例8)
ソルビトールおよびプロピレングリコール製剤によるバイアル安定性データ
補助溶媒および緩衝剤を含む本発明の医薬組成物のバイアル中での安定性を、対照製剤および市販製品製剤と比較した。下記組成物に関する経時的薬物濃度を比較することにより、安定性を判定した。具体的に下記組成物は、実施例7の方法に従って調製した:
50mMの酢酸Na、pH3.5、4.1%のソルビトール(PC5)
50mMの酢酸Na、pH3.5、1.9%のプロピレングリコール(PC6)
50mMの酢酸Na、pH4.5、4.1%のソルビトール(PC7)
50mMの酢酸Na、pH4.5、1.8%のプロピレングリコール(PC8)
50mMの酢酸Na、pH5.0、3.7%のソルビトール(PC1)
50mMの酢酸Na、pH5.0、1.7%のプロピレングリコール(PC2)
対照製剤:0.3mg/mL、2.5mMのクエン酸塩、5%のソルビトール、pH3.5(CF)、および
市販製品製剤:2.5mg/ml、2.5mMのクエン酸塩、5%のソルビトール、pH3.5(CPF)
【0091】
これらの安定性試験は、2mlのガラスバイアル中、高温条件、この場合45℃で実施した。製剤の安定性は、標準曲線に対してRP−HPLCによる薬物濃度を測定することによってモニターした。薬物濃度の測定は、実験開始時および46日目に測定を行った市販製品製剤を除いては、実験開始時、7日目および21日目に行った。次いで、ある期間後に残存する薬物のパーセンテージを示すために、これらの測定値をパーセンテージに変換した。
【表6】

【表7】

【0092】
このデータは、補助溶媒を含有する本発明の医薬組成物のバイアル中の安定性、経時的薬物濃度が、対照製剤(CF)および現在の製品製剤(CPF)の双方と同等であることを示している。また、該組成物は、対照製剤に比較してさらなる分解産物はなかった(データは示していない)。
【0093】
(実施例9)
SBEBCD製剤によるバイアル安定性データ
錯化剤および緩衝剤を含む本発明の医薬組成物のバイアル中の安定性を、対照製剤および市販の製品製剤と比較した。安定性は、下記の組成物に関して経時的に薬物濃度を比較することによって判定された。具体的に、下記の組成物が、実施例7の方法に従って調製された:
50mMの酢酸Na、8.5%のSBE−ベータシクロデキストリン、pH5.0(PC13)、
50mMの酢酸Na、8.5%のSBE−ベータシクロデキストリン、pH5.5(PC14)、
50mMのコハク酸Na、8.5%のSBE−ベータシクロデキストリン、pH5.5(PC11)、
50mMのコハク酸Na、8.5%のSBE−ベータシクロデキストリン、pH6.0(PC12)、
対照製剤:0.3mg/mL、2.5mMのクエン酸塩、5%のソルビトール、pH3.5(CF)、および市販製品製剤:2.5mg/mL、2.5mMのクエン酸塩、5%のソルビトール、pH3.5(CPF)。
【0094】
これらの安定性試験は、2mlのガラスバイアル中、高温条件、この場合は45℃で実施した。製剤の安定性は、標準曲線に対しRP−HPLCによる薬物濃度を測定することによってモニターされた。実験開始時および46日目に測定が行われた市販製品製剤を除いて、薬物濃度の測定は、実験開始時、6日目、13日目および30日目に行われた。次いで、ある期間後の残存薬物のパーセンテージを示すために、これらの測定値をパーセンテージに変換した。
【0095】
これらの安定性試験からのデータを下表に示す。
【表8】

【表9】

【0096】
このデータは、SBEBCDを含有する本発明の医薬組成物のバイアル中の安定性、経時的薬物濃度が、対照製剤(CF)および現在の製品製剤(CPF)の双方と同等であることを示している。また、該組成物は、対照製剤に比較してさらなる分解産物はなかった(データは示していない)。また、0.2〜0.3mg/mLの目標の濃度は、スルホブチルエーテルβ−シクロデキストリンの存在下で容易に達成し得ることも、注目に値する。
【0097】
(実施例10)
ソルビトールおよびプロピレングリコール製剤による静脈内用バッグの安定性データ
補助溶媒および緩衝剤を含む本発明の医薬組成物の静脈内用バッグ中の安定性を、対照製剤と比較した。安定性は、下記の組成物に関して経時的に薬物濃度を比較することによって判定された。具体的に、下記の組成物が、実施例7の方法に従って調製された:
50mMの酢酸Na、pH3.5、4.1%のソルビトール(PC5)、
50mMの酢酸Na、pH3.5、1.9%のプロピレングリコール(PC6)、および
対照製剤:0.3mg/mL、2.5mMクエン酸塩、5%のソルビトール、pH3.5(CF)。
【0098】
これらの安定性試験は、50mlの静脈内用バッグ中、高温条件、この場合45℃で実施された。製剤の安定性は、標準曲線に対しRP−HPLCによる薬物濃度を測定することによってモニターされた。薬物濃度の測定は、実験開始時、7日目および21日目に行われた。次に、ある期間後の残存薬物のパーセンテージを示すために、これらの測定値をパーセンテージに変換した。
【0099】
これらの安定性試験からのデータを下表に示す。
【表10】

【0100】
このデータは、補助溶媒を含有する本発明の医薬組成物の静脈内バッグ中の安定性、経時的薬物濃度が、対照製剤と同等であることを示している。さらに、該組成物は、対照製剤に比較してさらなる分解産物はなかった(データは示していない)。最終的に、該バッグ表面上の薬物吸着はpH3.5で最少であった。
【0101】
(実施例11)
HPCD製剤による静脈内用バッグの安定性データ
錯化剤および緩衝剤を含む本発明の医薬組成物の安定性を、バイアルおよび静脈内用バッグの双方において評価した。安定性は、下記の組成物に関して経時的に薬物濃度を比較することによって判定された。具体的に、下記の組成物が、実施例7の方法に従って調製された:
50mMの酢酸Na、pH5.0、22.5%のHPCD(PC15)。
【0102】
これらの安定性試験は、50mlの静脈内用バッグ中、高温条件、この場合45℃で実施された。この安定性評価は、直立型および倒立型双方のバッグ配置において10mLの充填容量で実施された。これらの評価は、対照として2mlのガラスバイアル中、同じ製剤に関して実施された。製剤の安定性は、標準曲線に対しRP−HPLCによる薬物濃度を測定することによってモニターされた。薬物濃度の測定は、実験開始時、1日目、2日目、6日目、9日目および16日目に行われた。
【0103】
これらの安定性試験からのデータを下表に示す。
【表11】

【0104】
このデータは、錯化剤を含有する本発明の医薬組成物の安定性、経時的薬物濃度が、バッグの直立型配置においてより有望であることを示している。またこのデータは、薬物製品の回収が倒立型バッグの配置においてより不良であることを示している。
【0105】
該組成物が、倒立型静脈内バッグと比較して、直立型静脈内バッグ中でより安定であるのはなぜかを判定するために、さらなる実験が実施された。薬物濃度の低下は、いずれの新たな分解産物によるものではなかった(データは示していない)。薬物濃度の低下はバッグ表面上の薬物吸着によるものであったと、我々は考えている。多数の疎水性薬物に関して、PVC表面上の吸着については、一般に懸念が報告されている。したがって、我々が認めた、倒立型配置における有意な吸着は、該薬物がPVC表面と接触することによる可能性が高い。これらの結果により、薬物製品の十分な回収のために、薬物吸着を最少にする実行可能なオプションとして非PVCバッグの使用および/またはバッグサイズ(溶液容量)の慎重な評価が示唆される。
(実施例12)
ソルビトール製剤による静脈内用バッグの安定性データ
補助溶媒および緩衝剤を含む本発明の医薬組成物の安定性を、バイアルおよび静脈内用バッグの双方において評価した。安定性は、下記の組成物に関して経時的に薬物濃度を比較することによって判定された。具体的に、下記の組成物が、実施例7の方法に従って調製された:
50mMの酢酸Na、pH5.0、3.7%のソルビトール(PC1)。
【0106】
これらの安定性試験は、50mlの静脈内用バッグ中、高温条件、この場合45℃で実施された。この安定性評価は、直立型および倒立型双方のバッグ配置において10mLおよび50mL双方の充填容量で実施された。これらの評価は、対照として2mLのガラスバイアル中、同じ製剤に関して実施された。製剤の安定性は、標準曲線に対しRP−HPLCによる薬物濃度を測定することによってモニターされた。薬物濃度の測定は、実験開始時、1日目、2日目、5日目、9日目および16日目に行われた。
【0107】
これらの安定性試験からのデータを下表に示す。
【表12】

【0108】
このデータは、補助溶媒を含有する本発明の医薬組成物の安定性、経時的薬物濃度が、バッグの直立型配置においてより有望であることを示している。またこのデータは、薬物製品の回収が倒立型バッグの配置においてより不良であることを示している。
【0109】
該組成物が、倒立型静脈内バッグと比較して、直立型静脈内バッグ中でより安定であるのはなぜかを判定するために、さらなる実験が実施された。薬物濃度の低下は、新たな分解産物によるものではなかった(データは示していない)。薬物濃度の低下はバッグ表面上の薬物吸着によるものであったと、我々は考えている。多数の疎水性薬物に関して、PVC表面上の吸着については、一般に懸念が報告されている。したがって、我々が認めた、倒立型配置における有意な吸着は、該薬物がPVC表面と接触することによる可能性が高い。この考えは、50mLの充填形態に比較して10mLの充填形態で薬物の回収がより不良であったことを認めた事実によりさらに裏付けされるが、この回収不良は、10mL充填形態が、容量に対してより高い表面積比を有し、このことが薬物吸着および回収に悪影響を与えるという事実にある程度よるものと思われる。結論として、これらの結果により、薬物製品の十分な回収のために、薬物吸着を最少にする実行可能なオプションとして非PVCバッグの使用および/またはバッグサイズ(溶媒容量)の慎重な評価が示唆される。
【0110】
本明細書に引用したすべての出版物、特許、特許出願および他の文書は、個々の各出版物、特許、特許出願または他の文書が、すべての目的で参照として援用されていることが個々に指示されると同程度に、すべての目的でそれらの全体が参照として本明細書に援用されている。
【0111】
種々の特定の実施形態を例示し記載したが、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく種々の変更がなし得ることは認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】室温で24時間にわたる、希釈後のアンプル製剤のpHおよび安定性に対する種々の希釈効果の図示を提供する図である。
【図2A】40℃で、0.1mg/mlの塩酸ニカルジピン、0.1mMのクエン酸および5%のデキストロースを含む予備混合無ソルビトール製剤中の薬物損失に対するpH効果の図示を提供する図である。
【図2B】40℃で、0.1mg/mlの塩酸ニカルジピン、0.1mMのクエン酸および5%のデキストロースを含む予備混合無ソルビトール製剤中の総不純物形成に対するpH効果の図示を提供する図である。
【図3A】40℃で、0.1mg/mlの塩酸ニカルジピン、0.1mMのクエン酸および0.9%の生理食塩水を含む予備混合無ソルビトール製剤中の薬物損失に対するpH効果の図示を提供する図である。
【図3B】40℃で、0.1mg/mlの塩酸ニカルジピン、0.1mMのクエン酸および0.9%の生理食塩水を含む予備混合無ソルビトール製剤中の総不純物形成に対するpH効果の図示を提供する図である。
【図4A】40℃で6カ月後、0.1mg/mlの塩酸ニカルジピン、0.1mMのクエン酸、5%のデキストロース、または0.2mg/mlの塩酸ニカルジピン、0.2mMのクエン酸および5%のデキストロースを含む無ソルビトールデキストロース製剤中の不純物形成に対するニカルジピン濃度効果の図示を提供する図である。
【図4B】40℃で3カ月後、0.1mg/mlの塩酸ニカルジピン、0.1mMのクエン酸、0.9%の生理食塩水、または0.2mg/mlの塩酸ニカルジピン、0.2mMのクエン酸および0.9%の生理食塩水を含む無ソルビトール生理食塩水製剤中の不純物形成に対するニカルジピン濃度効果の図示を提供する図である。
【図5A】4.0から4.2のpHで、0.2mg/mlのニカルジピンHCl、0.2mMのクエン酸、5%のデキストロースを含む予備混合無ソルビトール製剤における40℃での製品安定性に対する非適合性プラスチックフィルム組成物の効果の図示を提供する図である。
【図5B】4.0から4.2のpHで、0.2mg/mlのニカルジピンHCl、0.2mMのクエン酸、5%のデキストロースを含む予備混合無ソルビトール製剤における40℃での製品安定性に対する適合性プラスチックフィルム組成物の効果の図示を提供する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニカルジピンまたは薬学的に許容できるその塩;
等張化剤;および
緩衝剤
からなる非経口投与用医薬組成物であって、投与前の希釈を必要とせず、約3.6から約4.7のpHを有する医薬組成物。
【請求項2】
前記薬学的に許容できる塩が塩酸ニカルジピンである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記塩酸ニカルジピンの量が、約0.1mg/mlから約0.2mg/mlの範囲である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記等張化剤が、デキストロースおよび塩化ナトリウムからなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記等張化剤がデキストロースである、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記等張化剤が塩化ナトリウムである、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記緩衝剤が、クエン酸または薬学的に許容できるその塩である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
さらに補助溶媒からなる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記補助溶媒がソルビトールである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記薬学的に許容できる塩が、約0.1mg/mlから約0.2mg/mlの範囲の量の塩酸ニカルジピンであり、前記等張化剤が、約46mg/mlから約50mg/mlの範囲の量のデキストロースであり、前記緩衝剤が、約0.0192mg/mlから約0.0384mg/mlの範囲の量のクエン酸である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
さらに約1.92mg/mlから約3.84mg/mlの範囲の量のソルビトールからなる、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記薬学的に許容できる塩が、約0.1mg/mlから約0.2mg/mlの範囲の量の塩酸ニカルジピンであり、前記等張化剤が、約8.3mg/mlから約9mg/mlの範囲の量の塩化ナトリウムであり、前記緩衝剤が、約0.0192mg/mlから約0.0384mg/mlの範囲の量のクエン酸である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
さらに約1.92mg/mlから約3.84mg/mlの範囲の量のソルビトールからなる、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
さらに酸および塩基からなる群から選択されるpH調整剤からなる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項15】
モル浸透圧濃度が、約250mOsm/kgから350mOsm/kgの範囲である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
さらに静脈内用のバッグおよびボトルからなる群から選択される薬学的に許容できる容器からなる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項17】
ニカルジピンまたは薬学的に許容できるその塩;
等張化剤;および
緩衝剤
からなる非経口投与用医薬組成物であって、投与前の希釈を必要とせず、約3.6から約4.7のpHを有し、室温で少なくとも1年間ニカルジピンまたは薬学的に許容できるその塩の10%未満の濃度減少を有する医薬組成物。
【請求項18】
前記薬学的に許容できる塩が、約0.1mg/mlから約0.2mg/mlの範囲の量の塩酸ニカルジピンである、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記等張化剤がデキストロースである、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記等張化剤が塩化ナトリウムである、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記緩衝剤が、クエン酸または薬学的に許容できるその塩である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項22】
さらに少なくとも1種の補助溶媒からなる、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記補助溶媒がソルビトールである、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
ニカルジピンまたは薬学的に許容できるその塩;
等張化剤;および
緩衝剤
からなる非経口投与用医薬組成物であって、投与前の希釈を必要とせず、約3.6から約4.7のpHを有し、室温で少なくとも1年間、約3%未満の総不純物形成を有する医薬組成物。
【請求項25】
前記薬学的に許容できる塩が、約0.1mg/mlから約0.2mg/mlの範囲の量の塩酸ニカルジピンである、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記等張化剤がデキストロースである、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記等張化剤が塩化ナトリウムである、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記緩衝剤が、クエン酸または薬学的に許容できるその塩である、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項29】
さらに少なくとも1種の補助溶媒からなる、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記補助溶媒がソルビトールである、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
血圧の急性上昇の予防を必要とするヒト対象において血圧の急性上昇を予防する方法であって、請求項1に記載の組成物を非経口的に投与することからなる方法。
【請求項32】
血圧の急性上昇の処置を必要とするヒト対象において血圧の急性上昇を処置する方法であって、請求項1に記載の組成物を非経口的に投与することからなる方法。
【請求項33】
低血圧の誘導を必要とするヒト対象において低血圧を誘導する方法であって、請求項1に記載の組成物を非経口的に投与することからなる方法。
【請求項34】
等張化剤、緩衝剤、およびニカルジピンおよび/または薬学的に許容できるその塩類からなる群から選択される少なくとも1つの活性成分からなる溶液を提供すること;
約3.6から4.7の範囲内のpHを達成するのに必要な場合は、組成物のpHを調整すること;
最終の活性成分濃度に組成物をさらに希釈すること;および
薬学的に許容できる容器に組成物を充填すること
からなる、静脈内投与用医薬組成物を作製する方法。
【請求項35】
前記等張化剤が、デキストロースおよび塩化ナトリウムからなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
さらに少なくとも1つの補助溶媒を前記緩衝液に添加することからなる、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記補助溶媒がソルビトールである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
溶液の提供が、約5.0未満のpHで、水および少なくとも1種の緩衝剤からなる最初の溶液を提供するステップと、その後、最初の溶液に少なくとも1つの活性成分を添加するステップとからなる、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記最初の溶液が、約3.6未満のpHを有する、請求項38に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2009−534388(P2009−534388A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−506575(P2009−506575)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/009549
【国際公開番号】WO2007/123984
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(309009708)イーケーアール セラピューティクス, インク. (2)
【Fターム(参考)】