説明

予備発泡装置およびそれを用いた予備発泡方法

【課題】予備発泡粒子の粒子径のばらつきを小さく抑えることができる予備発泡装置およびそれを用いた予備発泡方法を提供すること。
【解決手段】発泡性樹脂粒子が投入される発泡室10と、この発泡室10内に重力に沿った方向に加熱媒体を噴出して前記発泡性樹脂粒子を予備発泡させる加熱媒体噴出部20とを備え、前記加熱媒体噴出部20は、重力に沿った方向から見た前記発泡室10内の外周領域R3への単位容積当たりの加熱媒体による供給熱量が中央領域R1への単位容積当たりの加熱媒体による供給熱量よりも多くなるよう加熱媒体を噴出する構成を有することを特徴とする予備発泡装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予備発泡装置およびそれを用いた予備発泡方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、より均一な粒子径の予備発泡粒子を得ることができる予備発泡装置およびそれを用いた予備発泡方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡性樹脂粒子(例えば、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子)を蒸気によって予備発泡させる従来の予備発泡装置は、発泡性樹脂粒子が投入される発泡室と、この発泡室内の底部に設けられて上方へ向かって蒸気を噴出する蒸気室と、蒸気室内に回転可能に設けられた攪拌羽根とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
この予備発泡装置において、蒸気室は、外部の蒸気供給源からの蒸気が配管を介して供給される。また、蒸気室は、発泡室内に面する位置に複数の蒸気孔を有しており、各蒸気孔から内部の蒸気が発泡室内へ噴出するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−188448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の予備発泡装置において、予備発泡中に発泡装置内では攪拌により発泡性樹脂粒子が外周方向に押し出され、中央領域より外周領域に多く集まるが、中央領域の蒸気孔と外周領域の蒸気孔から同じ蒸気供給量で蒸気を噴出していたため、発泡性樹脂粒子1個当たりに与える熱量は、実質的には外周領域の方が中央領域よりも少なくなっていた。そのため、従来の予備発泡装置では、予備発泡粒子の粒子径がばらつき易く、特に、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子よりも発泡速度が比較的速い発泡性樹脂粒子を予備発泡する場合は、予備発泡粒子の粒子径のばらつきを小さく抑えることが困難であった。
例えば、特許文献1では、容器本体の側壁を加熱する事で、側壁の内面に付着した発泡性粒子の熱量を補う方法が提案されているが、中央領域と外周領域の発泡性樹脂粒子を均一に加熱するには不十分であった。
【0005】
本発明は前記課題を鑑みてなされたものであり、予備発泡粒子の粒子径のばらつきを小さく抑えることができる予備発泡装置およびそれを用いた予備発泡方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かくして本発明によれば、発泡性樹脂粒子が投入される発泡室と、この発泡室内に重力に沿った方向に加熱媒体を噴出して前記発泡性樹脂粒子を予備発泡させる加熱媒体噴出部とを備え、前記加熱媒体噴出部は、重力に沿った方向から見た前記発泡室内の外周領域への単位容積当たりの加熱媒体による供給熱量が中央領域への単位容積当たりの加熱媒体による供給熱量よりも多くなるよう加熱媒体を噴出する構成を有する予備発泡装置が提供される。
また、本発明の別の観点によれば、前記予備発泡装置の前記発泡室内に発泡性樹脂粒子を投入し、前記加熱媒体噴出部にて前記発泡室内の前記外周領域への単位容積当たりの加熱媒体による供給熱量が中央領域への単位容積当たりの加熱媒体による供給熱量よりも多くなるように加熱媒体を噴出させて発泡性樹脂粒子を予備発泡させる予備発泡方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の予備発泡装置によれば、加熱媒体噴出部は、発泡室内の外周領域への単位容積当たりの加熱媒体による供給熱量が中央領域への単位容積当たりの加熱媒体による供給熱量よりも多くなるよう加熱媒体を噴出することができる。換言すると、発泡室内において、外周領域の単位容積当たりの熱量が中央領域の単位容積当たりの熱量よりも多くなるように熱勾配を形成しながら発泡性樹脂粒子の予備発泡を行うことができる。
そのため、攪拌によって発泡室内の外周領域に多くの発泡性樹脂粒子が集まっても、発泡室内の全領域に亘って、発泡性樹脂粒子1個当たりに与える熱量を均等にすることができ、また外周領域の雰囲気温度が外気によって冷え易い場合においても、中央領域の雰囲気温度と同程度に維持することができる。
したがって、本発明の予備発泡装置によれば、粒子径のばらつきを小さく抑えた予備発泡粒子を形成することができ、特に、発泡速度が比較的速い発泡性樹脂粒子を予備発泡させる場合にこの効果が顕著となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は本発明の予備発泡装置の実施形態1を示す概略構成図である。
【図2】図2は実施形態1の予備発泡装置における加熱媒体噴出部の蒸気室を示す平面図である。
【図3】図3は実施形態1の予備発泡装置における蒸気室内に設けられた蒸気配管の形状を点線で示す説明図である。
【図4】図4は本発明の予備発泡装置の実施形態2を示す概略構成図である。
【図5】図5は実施形態2の予備発泡装置における加熱媒体噴出部の蒸気室を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発泡性樹脂粒子を予備発泡させる本発明の予備発泡装置は、前記発泡室と、前記加熱媒体噴出部とを備え、前記加熱媒体噴出部は、重力に沿った方向から見た前記発泡室内の外周領域への単位容積当たりの加熱媒体による供給熱量が中央領域への単位容積当たりの加熱媒体による供給熱量よりも多くなるよう加熱媒体を噴出する構成を有する。以下、単に「加熱媒体供給熱量」というときは、単位容積当たりの加熱媒体による供給熱量を意味しているとする。
ここで、「重力に沿った方向」とは、発泡室を上方または下方から平面的に見る方向を意味し、水平面に対する厳密な垂直方向を意味しない。
【0010】
本発明において、加熱媒体としては、蒸気、加熱された空気、あるいは蒸気と空気(加熱または非加熱)の混合媒体を用いることができる。
前記加熱媒体噴出部は、重力によって発泡室内の底部に滞留し易い発泡性樹脂粒子を吹き上げて拡散させるのに有利な観点から、発泡室内の底部から上方に向かって加熱媒体を噴出するように構成されることが好ましい。
また、前記発泡室内の発泡性樹脂粒子と加熱媒体を積極的に攪拌して予備発泡を効率よく行う観点から、前記発泡室内に攪拌羽根が回転可能に設けられていてもよい。この場合、攪拌羽根の回転によって外周領域に多くの発泡性樹脂粒子が集まっても、加熱媒体噴出部の構成によって、発泡室内の全領域に亘って発泡性樹脂粒子1個当たりに与える熱量を均等にすることができる。
【0011】
本発明の予備発泡装置において、加熱媒体噴出部の独自構成は次の(A)および(B)のように構成されてもよい。
(A)前記加熱媒体噴出部は、前記発泡室内の前記中央領域に加熱媒体を噴出する中央噴出部と、前記発泡室内の前記外周領域に加熱媒体を噴出する外周噴出部とを備え、前記外周噴出部からの前記加熱媒体による供給熱量を前記中央噴出部からの前記加熱媒体による供給熱量よりも多く調整できるように構成される。つまり、加熱媒体噴出部を中央噴出部と外周噴出部とに分割する。
【0012】
(B)前記加熱媒体噴出部は、前記発泡室内の前記中央領域に加熱媒体を噴出する中央噴出孔と、前記発泡室内の前記外周領域に加熱媒体を噴出する外周噴出孔とを備え、前記外周噴出孔の総開口面積が前記中央噴出孔の総開口面積よりも大きく設定される。なお、1個の外周噴出孔の開口面積は、1個の中央噴出孔の開口面積より大きくてもよく、小さくてもよい。つまり、孔の大きさは関係ない。
【0013】
構成(A)によれば、中央噴出部から噴出する加熱媒体供給量と外周噴出部から噴出する加熱媒体供給量を独立的に容易に調整することができる。換言すると、発泡室内の中央領域への加熱媒体による供給熱量と外周領域への加熱媒体による供給熱量の割合を自由に制御することができる。
この場合、例えば、外部の加熱媒体供給源から外周噴出部に供給される蒸気等の加熱媒体の圧力が中央噴出部に供給される加熱媒体の圧力よりも高く調整される、あるいは外周噴出部に供給される加熱媒体の流量が中央噴出部に供給される加熱媒体の流量よりも多く調整される。尚、上記の加熱媒体は蒸気だけに限定されることはなく、例えば加熱された空気、あるいは蒸気と空気の混合媒体でも可能である。
【0014】
加熱媒体として蒸気を用い、かつ蒸気圧を調整する場合、例えば、前記加熱媒体噴出部が、外部の蒸気供給源と接続される蒸気配管をさらに備え、前記蒸気配管は、その蒸気移送下流側に、前記中央噴出部と接続する中央分岐配管と、前記外周噴出部と接続する外周分岐配管とを有し、前記中央分岐配管および前記外周分岐配管は、蒸気搬送下流側から順に圧力計およびバルブを有する構成であってもよい。
なお、圧力計の代わりに流量計を用いることにより、外周噴出部に供給される蒸気の流量を中央噴出部に供給される蒸気の流量よりも多く調整できる。
また、蒸気の変わりに加熱した空気を用いる場合、前記蒸気配管を加熱空気配管として用いることができる。
あるいは、前記蒸気配管に加えて、前記中央噴出部と前記外周噴出部とに各々空気供給配管を接続し、外周噴出部に供給される蒸気および空気の供給量と中央噴出部に供給される蒸気および空気の供給量とを調整することで、前記外周噴出部からの前記加熱媒体の噴出温度と前記中央噴出部からの前記加熱媒体の噴出温度とを自由に制御することができる。
【0015】
さらに構成(A)においては、前記中央分岐配管および前記外周分岐配管の加熱媒体移送下流側が同心円状に形成されていてもよく、このようにすれば、加熱媒体供給源からの加熱媒体を効率よく発泡室内に供給することができる。
また、発泡室内の中央領域と外周領域の間の中間領域に加熱媒体を噴出することができる中間噴出部を加熱媒体噴出部に設けると共に、中間噴出部に加熱媒体を供給することができる中間分岐配管を加熱媒体配管に設けてもよい。この場合も、中間分岐配管の加熱媒体搬送下流側を、同心円状の中央分岐配管と外周分岐配管の間において同心円状に形成することができる。
さらに、発泡室内の中間領域に同心円状に異なる加熱媒体供給量で加熱媒体が供給されるように、具体的には、中央領域側から外周領域側に向かって段階的に加熱媒体供給熱量が増加するよう調整できるように、加熱媒体噴出部および加熱媒体配管を構成してもよい。
【0016】
構成(A)において、中央、中間および外周噴出部には、発泡室内に面する領域に加熱媒体噴出孔が設けられる。各噴出部において、加熱媒体噴出孔の形状、大きさ、数、形成位置等は特に限定されるものではないが、加熱媒体噴出孔の形成を容易に行える観点から、全ての加熱媒体噴出孔を同一の形状および大きさ(例えば、同一の円形)に形成するのが好ましい。また、各噴出部において、加熱媒体噴出孔の形成位置は、発泡室内の同一領域において加熱媒体供給熱量のばらつきを生じ難い観点から、周方向に等間隔であることが好ましい。また、各噴出部において、加熱媒体噴出孔の数も、発泡室内の同一領域において加熱媒体供給熱量のばらつきを生じさせない数が好ましい。
このように構成された構成(A)において、各噴出部の蒸気圧は、例えば、中央噴出部で0.060〜0.005MPa、中間噴出部で0.065〜0.008MPa、外周噴出部で0.070〜0.011MPaに調整される。
【0017】
構成(B)によれば、外周領域への加熱媒体供給量が中央領域への加熱媒体供給量よりも多くなるように加熱媒体を噴出することができる加熱媒体噴出部の構造を、簡素な一体構造で形成することができると共に、蒸気供給源と加熱媒体噴出部とをストレートな1本の蒸気配管で接続することができる。この構成(B)は、外周噴出孔の総開口面積が中央噴出孔の総開口面積よりも大きく設定されているため、加熱媒体噴出部内に一定圧力で加熱媒体を供給するだけで、外周領域への加熱媒体供給熱量が中央領域の加熱媒体供給熱量よりも自動的に多くなる。
【0018】
構成(B)において、中央および外周噴出孔の形状、数、形成位置等は特に限定されるものではないが、発泡室内の同一領域において加熱媒体供給熱量のばらつきを生じ難いように、構成(A)と同様に設定することができる。
さらに構成(B)は、発泡室内の中央領域と外周領域の間の中間領域に加熱媒体を噴出することができるように、同心円状に配置された中央および外周噴出孔の群の間に、中間噴出孔の群が設けられてもよい。この場合、発泡室内の中間領域への加熱媒体供給熱量が、中央領域への加熱媒体供給熱量と外周領域への加熱媒体供給熱量の中間程度となるように、中間噴出孔の開口面積を、中央噴出孔の開口面積と外周噴出孔の開口面積の中間程度に設定することが好ましい。さらに、発泡室内の中間領域に同心円状に異なる加熱媒体供給熱量で加熱媒体が供給されるように、具体的には、中央領域側から外周領域側に向かって段階的に加熱媒体供給熱量が増加するように、同心円状に複数の中間噴出孔の群を配置してもよい。
例えば、中央、中間および外周噴出孔の各総開口面積の比は、1:3:6〜2:3:5程度とすることができる。
【0019】
また、構成(A)および(B)の応用例として、構成(A)における外周噴出部の加熱媒体噴出孔の総開口面積が中央噴出部の加熱媒体噴出孔の総開口面積よりも大きくした構成(C)が挙げられる。この場合、構成(C)において、中央、中間および外周分岐配管から圧力計およびバルブを省略することができる。
【0020】
本発明の予備発泡装置による予備発泡可能な発泡性樹脂粒子としては、代表的には、当該分野で広く用いられている発泡性ポリスチレン系樹脂粒子が挙げられるが、特に限定されるものではない。
本発明における加熱媒体噴出部の前記独自構成によれば、攪拌によって多くの発泡性樹脂粒子が集まり易く、また外気によって冷え易い外周領域の加熱媒体供給熱量を中央領域の加熱媒体供給熱量よりも多くすることにより、発泡室内の異なる領域間の発泡性樹脂粒子1個当たりに与える熱量のばらつきを小さく抑えることができる。
しがって、本発明の予備発泡装置は、特に、従来では発泡粒径のばらつきを小さく抑えることが難しかった発泡性樹脂粒子、すなわち、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子よりも発泡速度が早い発泡性樹脂粒子の予備発泡に好適である。
このような発泡性樹脂粒子としては、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂との発泡性複合樹脂粒子が挙げられる。
以下、本発明の予備発泡装置に好適なポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂との発泡性複合樹脂粒子について説明する。
【0021】
ポリスチレン系樹脂としては、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリルブタジエン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。これらの樹脂は混合されていてもよい。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
発泡性複合樹脂粒子中のポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂の割合は、例えば、ポリスチレン系樹脂100重量部に対してポリオレフィン系樹脂10〜100重量部とすることができる。
【0022】
発泡性複合樹脂粒子は、複合樹脂粒子に発泡剤を含浸させることで得ることができる。
発泡剤としては、例えば、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、工業用ペンタン、石油エーテル、シクロヘキサン、シクロペンタン等の単独又は混合物が挙げられる。
複合樹脂粒子は、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂とを押出機を使用して溶融押出した後、水中カット、ストランドカット等により造粒することで、得ることができる。
また、ポリオレフィン系樹脂の粒子にスチレン系モノマーを含浸させ、重合させることにより得ることもできる。この方法で得られた粒子を改質ポリスチレン系樹脂粒子と称する。
本発明の予備発泡装置に使用するのに好適な発泡性樹脂粒子の平均粒子径は0.5〜4.0mmであり、より好適には1.0〜3.0mmである。
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の予備発泡装置の実施形態を詳説する。なお、本発明は図面に例示された実施形態に限定されるものではない。
【0024】
(実施形態1)
図1は本発明の予備発泡装置の実施形態1を示す概略構成図である。
この予備発泡装置F1は、発泡性樹脂粒子(図示省略)が投入される発泡室10と、この発泡室10内に重力に沿った方向Hに蒸気を噴出して発泡性樹脂粒子を予備発泡させる蒸気噴出部20と、発泡室10内に回転可能に設けられた攪拌羽根30とを備えている。
【0025】
発泡室10は、上端に天井壁を有する下方開口筒形に形成されている。この発泡室10において、天井壁には内部へ予備発泡前の発泡性樹脂粒子を投入するための開閉可能な投入部11および蒸気弁12が設けられると共に、外周壁には予備発泡後の予備発泡粒子を内部から取り出すための開閉可能な排出部13が設けられている。また、発泡室10内には、予備発泡時に発泡室10内の予備発泡粒子が所定の高さに達したことを検知する図示しないレベルセンサーが設けられている。さらに、図示しないが、発泡室10には、内圧を検知する圧力計、排気弁および冷却弁が設けられている。
この発泡室10の内部において、重力に沿った方向Hから見て、中央側が中央領域R1であり、外周側が外周領域R3であり、中央領域R1と外周領域R3との間が中間領域R2である。
【0026】
蒸気噴出部20は、発泡室10の下部に配置されて発泡室10の底部を構成する円板形の蒸気室21と、蒸気供給源(ボイラ)Bと接続されて蒸気供給源Bからの蒸気を蒸気室21へ供給する蒸気配管22と、空気を蒸気室21へ供給する空気配管23と、ドレン配管24とを備えている。図2は実施形態1の予備発泡装置F1における蒸気噴出部20の蒸気室21を示す平面図である。
蒸気室21は、発泡室10内の前記中央領域R1に蒸気を噴出する円環管形の中央噴出部21aと、中央噴出部21aの外周に設けられて前記中間領域R2に蒸気を噴出する円環管形の中間噴出部21bと、中間噴出部21bの外周に設けられて前記外周領域R3に蒸気を噴出する円環管形の外周噴出部21cとを備える。
【0027】
中央、中間および外周噴出部21a、21b、21cは隙間が無い同心円状に配置されると共に、これらの上壁には周方向に所定間隔で複数の蒸気噴出孔21hが形成されている。なお、複数の蒸気噴出孔21hは、各噴出部21a、21b、21cの半径方向の幅のほぼ中間位置に配置されている。
中央、中間および外周噴出部21a、21b、21cの間に隙間が形成されないようにするために、これらの上壁は、例えば、一枚の円形ステンレス鋼板にて一体的に形成してもよい。この場合、一体的に形成された上壁の内面側に円環形の仕切り板を設けて各噴出部21a、21b、21cを区画することができる。
中央、中間および外周噴出部21a、21b、21cの外径比率は、特に限定されず、例えば、1〜8:2〜9:3〜10とすることができる。
本発明において、このように構成された中央、中間および外周噴出部21a、21b、21cの上方の領域が、発泡室10内部の前記中央、中間および外周領域R1、R2、R3である。
【0028】
中央、中間および外周噴出部21a、21b、21cにそれぞれ形成される蒸気噴出孔hの数は、各噴出部21a、21b、21cの外径、蒸気噴出孔hの外径、発泡室10内の同一領域における蒸気供給量等の条件によって異なる。このように異なる条件であっても、発泡室10内の同一領域において、発泡性樹脂粒子に蒸気が多く当たる箇所と少なく当たる箇所がなるべく存在しないように、各噴出部21a、21b、21c毎に蒸気噴出孔hの数を設定することが好ましい。なお、発泡室10内の同一領域に多少存在する蒸気量の偏りは、発泡室10内に設けられた攪拌羽根30が回転して発泡性樹脂粒子および蒸気を攪拌するため問題とならない。
【0029】
実施形態1の場合、中央噴出部21aには中心角度θ1が90°の間隔で4個、中間噴出部21bにも中心角度θ2が90°の間隔で4個、外周噴出部21cには中心角度θ3が45°の間隔で8個の蒸気噴出孔21hが形成されている。このとき、中央噴出部21aの蒸気噴出孔21hと、中間噴出部21bの蒸気噴出孔21hと、外周噴出部21cの蒸気噴出孔21hとは、中央噴出部21aの中心孔の中心点から半径方向に延びる同一線上に並ばない位置に配置されている。なお、各蒸気噴出孔21hの外形は特に制限されないが、例えば、予備発泡前の発泡性樹脂粒子のサイズよりも小さい0.1〜0.5mm程度であり、これよりも大きい直径を有する外周噴出孔の場合には、発泡性樹脂粒子のサイズよりも小さい網目を有する金網が取り付けられている。また噴出孔の形状についても特に制限はされず、予備発泡前の発泡性樹脂粒子のサイズよりも小さい溝幅0.1〜0.5mm程度のスリット状であってもよく、この場合のスリット長さ方向には制限が無いが、2〜100mm程度が適当である。
なお、中心角度θ1、θ2、θ3は前記角度に限定されないが、各噴出部21a〜21cにおいて周方向等間隔で複数の蒸気噴出孔21hが配置されていることが好ましい。例えば、蒸気噴出孔21hの数は、中央噴出部21aにおいて4個(θ1=90°)、中間噴出部21bにおいて8個(θ2=45°)、外周噴出部21cにおいて16個(θ3=22.5°)としてもよい。
【0030】
蒸気配管22は、その蒸気移送下流側に、中央噴出部21aと接続する中央分岐配管22aと、中間噴出部21bと接続する中間分岐配管22bと、外周噴出部21cと接続する外周分岐配管22cとを有している。なお、中央、中間および外周分岐管22a、22b、22cは同じ内径を有する管からなる。図3は実施形態1の予備発泡装置F1における蒸気室21内に設けられた蒸気配管22の形状を点線で示す説明図である。
実施形態1の場合、中央分岐配管22aの下流側には中央噴出部21aの内部に配置されたC字形部分22a1を有し、中間分岐環22bの下流側には2つに分岐して中間噴出部21bの内部に配置された一対の円弧形部分22b1、22b2を有し、外周分岐管22cの下流側には2つに分岐して外周噴出部21bの内部に配置された一対の円弧形部分22c1、22c2を有している。
【0031】
また蒸気と混合して加熱媒体の温度調を制御する空気配管23は、蒸気配管22と同様に、その空気移送下流側に、中央噴出部21aと接続する中央分岐配管23aと、中間噴出部21bと接続する中間分岐配管23bと、外周噴出部21cと接続する外周分岐配管23cとを有している。なお、中央、中間および外周分岐管23a、23b、23cは同じ内径を有する管からなる。
空気配管23も蒸気配管22と同様に、中央分岐配管23aの下流側には中央噴出部21aの内部に配置されたC字形部分23a1を有し、中間分岐環23bの下流側には2つに分岐して中間噴出部21bの内部に配置された一対の円弧形部分23b1、23b2を有し、外周分岐管23cの下流側には2つに分岐して外周噴出部21bの内部に配置された一対の円弧形部分23c1、23c2を有している。
【0032】
C字形部分22a1、円弧形部分22b1、22b2および円弧形部分22c1、22c2の下流側端部は閉じられていると共に、それらには長手方向に沿って所定間隔で複数の蒸気噴出孔が形成されている。このとき、各分岐配管22a、22b、22cの各蒸気噴出孔と各々、中央噴出部21a、中間噴出部21bおよび外周噴出部21cの各蒸気噴出孔21hとを直接接続して蒸気を供給しても構わないが、各分岐配管22a、22b、22cの各蒸気噴出孔から、噴出された蒸気は、各噴出部21a、21b、21cを経由して、各々、空気配管23a、23b、23cの各噴出孔から噴出された空気と混合されて温度調整された後、中央噴出部21a、中間噴出部21bおよび外周噴出部21cの各蒸気噴出孔21hから、発泡室10内へ供給されることが好ましい。
そのため、各噴出部21a、21b、21cの内部において、蒸気配管22の中央、中間および外周分岐管22a、22b、22cと、空気配管23の中央、中間および外周分岐管23a、23b、23cとは、同心円状に隣接して設けられることができる。
【0033】
さらに、蒸気配管22において、中央分岐配管22aは、蒸気搬送下流側から順に圧力計P1およびバルブV1を有している。これと同様に、中間分岐配管22bおよび外周分岐配管22cも圧力計P2、P3およびバルブV2、V3を有している。また、蒸気配管22における各分岐配管22a、22b、22cよりも上流側にも圧力計P4およびバルブV4が設けられている。
また、空気配管23aについても同様に、空気搬送下流側から順に圧力計P5およびバルブV5を有している。これと同様に、中間分岐配管23bおよび外周分岐配管23cも圧力計P6、P7およびバルブV6、V7を有している。また、空気配管23における各分岐配管23a、23b、23cよりも上流側にも圧力計P8およびバルブV8が設けられている。
【0034】
このような構成により、蒸気配管22a、22b22cの各噴出孔から噴出された蒸気と、空気配管23a、23b、23cの各噴出孔から噴出された空気とが、中央、中間および外周噴出部21a、21b、21cの内部に供給させれることにより加熱媒体は温度調整され、温度調整された加熱媒体が各噴出部21a、21b、21cから発泡室10内の中央、中間および外周領域R1、R2、R3に供給される。
この構成は、発泡室10内の中央、中間および外周領域R1、R2、R3に直接蒸気および空気を供給する場合と比べて、各領域R1、R2、R3内での温度バラツキを抑えることができる。
【0035】
中央噴出部21aの中心孔には軸受を介してシャフト31が回転可能に取り付けられると共に、このシャフト31に前記攪拌羽根30が取り付けられている。また、中央噴出部21aの下面にはモータMが取り付けられており、このモータMの駆動軸とシャフト31とが連結している。なお、攪拌羽根30の形状、数等は特に限定されず、発泡室10内の発泡性樹枝粒子と蒸気を効率よく均一に攪拌できればよい。
【0036】
このように構成された予備発泡装置F1は、発泡室10内に発泡性樹脂粒子を投入し、発泡室10内に蒸気を供給しながら攪拌羽根30を回転させて予備発泡を行う際、中央、中間および外周分岐管22a、22b、22c内の圧力を示す圧力計P1〜P3の目盛り見ながらバルブV1〜V3の開き具合を調整することができる。つまり、この予備発泡装置F1は、バルブV1、V3を操作して中央分岐管22aのC字形部分22a1内の圧力よりも外周分岐管22cの円弧形部分22c1、22c2内の圧力を高く調整することにより、中央領域R1への蒸気供給量よりも外周領域R3への蒸気供給量を多く調整できる構成を有している。なお、中間領域R2への蒸気供給量は、中央領域R1への蒸気供給量と外周領域R3への蒸気供給量の中間程度とされる。
例えば、中央分岐管22a内の圧力は0.060〜0.005MPa、中間分岐管22b内の圧力は0.065〜0.008MPa、外周分岐管22c内の圧力は0.070〜0.011MPaとすることができる。
あるいはバルブV7、V5を操作して外周分岐管23cの圧力よりも中央分岐管23aの圧力を高く調整することで、蒸気と空気が混合した加熱媒体の供給温度を外周領域R3への供給温度よりも中央領域R1への供給温度を低く調整する事も可能である。なお、中間領域R2への加熱媒体の供給温度は、中央領域R1への供給温度と外周領域R3への供給温度の中間程度とされる。
なお、空気配管23に加熱した空気を供給することもでき、この場合、蒸気配管22を省略することができる。そして、バルブV7、V5を操作して外周分岐管23cの圧力よりも中央分岐管23aの圧力を低く調整することで、外周領域R3への加熱空気供給量を中央領域R1への加熱空気供給量よりも多く調整する事も可能である。なお、中間領域R2への加熱空気の供給量は、中央領域R1への供給量と外周領域R3への供給量の中間程度とされる。
【0037】
したがって、この予備発泡装置F1によれば、外気によって冷え易い外周領域の雰囲気温度を中央領域の雰囲気温度と同程度に維持することができる。それに加え、発泡室内の発泡性樹脂粒子と蒸気を攪拌する場合に、遠心力によって外周領域に多くの発泡性樹脂粒子が集まっても、発泡室内の全領域に亘って、発泡性樹脂粒子1個当たりに与える熱量を均等にすることができる。
その結果、実施形態1の予備発泡装置F1によれば、粒子径のばらつきを小さく抑えた予備発泡粒子を形成することができる。本発明は、特に、発泡速度が比較的速い前記発泡性複合樹脂粒子を予備発泡させる場合に好適である。
【0038】
(実施形態2)
図4は本発明の予備発泡装置の実施形態2を示す概略構成図であり、図5は実施形態2の予備発泡装置における蒸気噴出部の蒸気室を示す平面図である。なお、図4において、図1中の要素と同様の要素には同一の符号を付している。
実施形態2の予備発泡装置F2は、蒸気噴出部120が異なる以外は実施形態1と同様に構成されている。以下、実施形態2における実施形態1とは異なる点を主に説明する。
【0039】
実施形態2の予備発泡装置F2において、蒸気噴出部120は、発泡室10の下部に配置されて発泡室10の底部を構成する円板形の蒸気室121と、図示しない蒸気供給源と接続されて蒸気供給源からの蒸気を蒸気室121へ供給する蒸気配管122と、ドレン配管123とを備えている。
蒸気室121は、半径方向に広い幅を有する円環管形に形成されている。つまり、実施形態1における蒸気室21は中央、中間および外周噴出部に区画されていたが、実施形態2における蒸気室121は、内部が区画されておらず、一つの扁平な内部空間を有している。
【0040】
また、蒸気室121は、発泡室10内の中央領域R1に蒸気を噴出する中央噴出孔121h1と、中間領域R2に蒸気を噴出する中間噴出孔121h2と、外周領域R3に蒸気を噴出する外周噴出孔121h3とを備えている。
中央、中間および外周噴出孔121h1、121h2、121h3は、実施形態1における複数の蒸気噴出孔21hの位置と同様の位置に配置されている。しかしながら、蒸気噴出部120において、噴出孔一つ当たりの開口面積は外周噴出孔121h3が中央噴出孔121h1よりも大きく、総開口面積も外周噴出孔121h3が中央噴出孔121h1よりも大きい。また、中央噴出孔121h1の直径は、実施形態1における蒸気噴出孔21hの直径と同程度(例えば、0.1〜50mm程度)であり、これよりも大きい直径を有する外周噴出孔121h3および中間噴出孔121h2には、発泡性樹脂粒子のサイズよりも小さい網目を有する金網が取り付けられている。なお、外周噴出孔121h3の直径は 50〜100mm、中間噴出孔121h2の直径は40〜80mmとすることができる。
実施形態2において、中央噴出孔、中間噴出孔および外周噴出孔の総開口面積の割合は、中央噴出孔<中間噴出孔<外周噴出孔であれば特に限定されないが、例えば、1:3:6〜2:3:5程度である。
【0041】
(実施形態3)
実施形態2とは異なり、外周噴出孔121h3と中央噴出孔121h1の一つ当たりの開口面積は同じであってもよく、この場合、外周噴出孔121h3の数を中央噴出孔121h1の数よりも多くすることによって、複数の外周噴出孔121h3の総開口面積を複数の中央噴出孔121h1の総開口面積よりも大きくする。但し、発泡室10内の中央領域R1には必要最低限以上の蒸気量で蒸気が供給されると共に、外周領域R3には中央領域R1への蒸気供給量を上回る蒸気量で蒸気が供給されることは言うまでもない。
【0042】
蒸気配管122は、圧力計P11およびバルブV11を有し、圧力計P11よりも下流側の端部が蒸気室121と接続されている。
蒸気配管122は、蒸気室121に接続されて蒸気室121内に直接蒸気を流入させるよう構成されてもよく、あるいは、実施形態1と同様に蒸気室121内に蒸気配管122の下流側端部を配置させてもよい。
この場合、蒸気配管122の下流側端部を、実施形態1と同様にC字形部分と円弧形部分を有する分岐状に形成するか、あるいは渦巻き形に形成すると共に、蒸気配管122の下流側端部における中央、中間および外周噴出孔121h1、121h2、121h3と対応する位置に複数の蒸気噴出孔を形成する。さらには、蒸気配管122の各蒸気噴出孔を蒸気室121の各噴出孔121h1、121h2、121h3と管にて接続してもよい。なお、各蒸気噴出孔の大きさは、外周、中間および中央噴出孔121h3、121h2、121h1の大きさに応じて異ならせるようにしてもよい。
【0043】
このように構成された予備発泡装置は、発泡室10内に発泡性樹脂粒子を投入し、発泡室10内に蒸気を供給しながら攪拌羽根30を回転させて予備発泡を行う際、蒸気配管122のバルブV11よりも下流側の圧力は同一であるが、一つ当たりの外周噴出孔121h3から噴出する蒸気供給量は一つ当たりの中央噴出孔121h1から噴出する蒸気供給量よりも多い。よって、結果的に、発泡室10内の外周領域R3への蒸気供給量が中央領域R1への蒸気供給量よりも多くなる。
したがって、実施形態3の予備発泡装置も、実施形態1と同様の効果を奏することができる。
【実施例】
【0044】
〈発泡性複合樹脂粒子の製造〉
まず、エチレン−酢酸ビニル共重合体のペレット(日本ポリエチレン社製、製品名「LV−115」)を押出機に投入して加熱混合し、溶融樹脂を水中に押し出してカットすることにより、100粒重量当たり40mgとなる樹脂粒子を調整した。
このエチレン−酢酸ビニル共重合体の樹脂粒子14000重量部を攪拌機付き100Lオートクレーブに投入し、そこへピロリン酸マグネシウム315重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1.35重量部を加えた。そして、前記オートクレーブ中の混合物を10分間常温に保持しながら攪拌し、その後60℃に昇温して10分間攪拌した。
次いで、得られた懸濁液中に、ジクミルパーオキサイド7.2重量部を溶解させたスチレン単量体6000重量部を30分かけて滴下した。滴下後、30分間60℃に保持することにより、ポリエチレン系樹脂粒子にスチレン単量体を吸収させた。
【0045】
次に、得られた懸濁液を130℃に昇温し、この温度で2時間攪拌を続けた。その後、懸濁液の温度を90℃に下げ、この懸濁液中にドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1.5重量部を加えた後、ベンゾイルパーオキサイド39.9重量部、t−ブチルパーオキシベンゾエート3.15重量部およびジクミルパーオキサイド102.2重量部を重合開始剤として溶解したスチレン単量体5000重量部を1時間45分かけて滴下し、次いで、エチレンビスステアリン酸アミド35重量部を溶解したスチレン単量体10000重量部を1時間45分かけて滴下した。
この滴下終了後、90℃で1時間30分保持した後に143℃に昇温し、2時間30分保持して重合を完結し、常温まで冷却して熱可塑性樹脂粒子を取り出した。
熱可塑性樹脂粒子100重量部を別の撹拌機付き100Lオートクレーブに投入した後、発泡剤としてブタン15重量部をそのオートクレーブに注入した。注入後、オートクレーブ内を70℃に昇温して2時間撹拌を続けた。その後、オートクレーブ内を常温まで冷却して、予備発泡粒子の原料粒子としての発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子を取り出した。
この発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子の平均粒径は1.3mmであった。
【0046】
〈実施例1〉
前記製造工程によって得られた発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子を、図1〜図3に示す実施形態1の予備発泡装置F1を用いて次のように予備発泡を実施した。なお、中央噴出部21aの外径は490mmであり、中間噴出部21bの外径は770mmであり、外周噴出部21cの外径は1100mmであり、蒸気噴出孔21hは各噴出部に4個づつで直径は76mmであり、発泡室10の容積は1000cm3であった。
まず、発泡室10の投入部11を開き、28kgの原料粒子を発泡室10内に投入した後、攪拌羽根30を回転数80rpmで回転しながら蒸気室21から発泡室10内に蒸気を供給して原料粒子を蒸気加熱した。このとき、中央噴出部21a内を0.005Mpa、中間噴出部21b内を0.008Mpa、外周噴出部21c内を0.020Mpaの蒸気圧とすることにより、発泡室10内の外周領域R3への蒸気供給量を中央領域R1への蒸気供給量よりも多くした。
発泡室10に設けられたレベルセンサーによる連続検知が2秒以上となったところで蒸気加熱を終了し、予発泡室10の蒸気弁12を閉じ、排気弁、ドレン弁および冷却弁を開き、発泡室10内を10秒間冷却した。冷却完了後、排出部13を開き、発泡室10内で予備発泡された予備発泡粒子を外部ホッパーに払い出した。
【0047】
〈比較例1〉
中央噴出部21a、中間噴出部21bおよび外周噴出部21c内を0.011Mpaの蒸気圧で統一したこと以外は、実施例1と同様にして予備発泡を行った。
【0048】
〈比較例2〉
中央噴出部21a、中間噴出部21bおよび外周噴出部21c内を0.008Mpaの蒸気圧で統一したこと以外は、実施例1と同様にして予備発泡を行った。
【0049】
〈比較例3〉
中央噴出部21a、中間噴出部21bおよび外周噴出部21c内を0.005Mpaの蒸気圧で統一したこと以外は、実施例1と同様にして予備発泡を行った。
【0050】
〈比較例4〉
中央噴出部21a、中間噴出部21bおよび外周噴出部21c内を0.003Mpaの蒸気圧で統一したこと以外は、実施例1と同様にして予備発泡を行った。
【0051】
〈実施例2〉
中央噴出部21a、中間噴出部21bおよび外周噴出部21c内へ0.018Mpaの蒸気圧を供給したが、このとき、空気配管23より、中央噴出部21a内へ0.40Mpa、中間噴出部21b内へ0.20Mpaの圧力で空気を供給することにより、発泡室10内の中央領域R1への加熱媒体供給温度を外周領域R3への供給温度よりも低くした。それ以外については、実施例1と同様にして予備発泡を行った。
【0052】
〈実施例3〉
中央噴出部21a内を0.010Mpa、中間噴出部21b内を0.015Mpa、外周噴出部21c内を0.020Mpaの蒸気圧とし、このとき、空気配管23より、中央噴出部21a、中間噴出部21bおよび外周噴出部21c内へ0.10Mpaの圧力で統一して空気を供給することにより、発泡室10内の中央領域R1への加熱媒体供給温度を外周領域R3への供給温度よりも低くした。それ以外については、実施例1と同様にして予備発泡を行った。
【0053】
〈実施例4〉
前記製造工程によって得られた発泡性改質ポリスチレン系樹脂粒子を、図4および図5に示す実施形態2の予備発泡装置F2を用いて、次のように予備発泡を実施した。なお、蒸気室121の外径は1100mmであり、中央噴出孔121h1は直径45mmのものが2個、中間噴出孔121h2は直径65mmのものが4個、外周噴出孔121h3は直径76mmのものが8個であり、中央噴出孔、中間噴出孔および外周噴出孔の総開口面積の割合は、1:4:11であり、発泡室10の容積は1000cm3であった。
まず、発泡室10の投入部11を開き、28kgの原料粒子を発泡室10内に投入した後、攪拌羽根30を回転数80rpmで回転しながら蒸気室121から発泡室10内に蒸気を供給して原料粒子を蒸気加熱した。このとき、蒸気室121内を0.012Mpaの蒸気圧とした。
発泡室10に設けられたレベルセンサーによる連続検知が2秒以上となったところで蒸気加熱を終了し、発泡室10の蒸気弁12を閉じ、排気弁、ドレン弁および冷却弁を開き、発泡室10内を10秒間冷却した。冷却完了後、排出部13を開き、発泡室10内で予備発泡された予備発泡粒子を外部ホッパーに払い出した。
【0054】
〈実施例5〉
各噴出孔の直径を76mmで統一し、各噴出孔の総開口面積の割合は、1:2:4であった。このとき、蒸気圧を0.011Mpaとした。それ以外は、実施形態2と同様にして予備発泡を行った。
【0055】
〈実施例6〉
各噴出孔の直径を45mmで統一し、各噴出孔の総開口面積の割合は、1:2:4であった。このとき、蒸気圧を0.025Mpaとした。それ以外は、実施形態2と同様にして予備発泡を行った。
【0056】
〈実施例7〉
中央噴出孔121h1は直径45mmのものが4個、中間噴出孔121h2は直径76mmのものが4個、外周噴出孔121h3は直径76mmのものが8個であり、各噴出孔の総開口面積の割合は、1:3:6であった。このとき、蒸気圧を0.011Mpaとした。それ以外は、実施形態2と同様にして予備発泡を行った。
【0057】
〈比較例5〉
各噴出孔の直径を76mmで統一し、中央噴出孔121h1および中間噴出孔121h2は4個、外周噴出孔121h3は8個で、各噴出孔の総開口面積の割合は、1:1:2であった。このとき、蒸気圧を0.011Mpaとした。それ以外は、実施形態2と同様にして予備発泡を行った。
【0058】
〈比較例6〉
蒸気圧を0.005Mpaとし、それ以外は、比較例5と同様にして予備発泡を行った。
【0059】
〈比較例7〉
各噴出孔の直径を65mmで統一し、蒸気圧を0.008Mpaとした。それ以外は、実施形態2と同様にして予備発泡を行った。
【0060】
〈比較例8〉
蒸気圧を0.015Mpaとし、それ以外は、比較例7と同様にして予備発泡を行った。
【0061】
〈比較例9〉
各噴出孔の直径を65mmで統一し、中央噴出孔121h1は4個、外周噴出孔121h3は8個で、各噴出孔の総開口面積の割合は、1:2であった。このとき、蒸気圧を0.015Mpaとした。それ以外は、実施形態2と同様にして予備発泡を行った。
【0062】
〈比較例10〉
蒸気圧を0.005Mpaとし、それ以外は、比較例9と同様にして予備発泡を行った。
【0063】
〈実施例8〉
中央噴出孔121h1は直径45mmのものが4個、中間噴出孔121h2は直径76mmのものが4個、外周噴出孔121h3は直径76mmのものが8個であり、各噴出孔の総開口面積の割合は、1:3:6であった。このとき、蒸気圧を0.011Mpaとした。それ以外は、実施形態2と同様にして予備発泡を行った。
【0064】
〈予備発泡粒子の評価〉
実施例1および比較例1〜3の予備発泡粒子を次のように評価し、その結果を表1に示した。
[発泡倍数]
発泡倍数とは、原料粒子の比重を1.0g/cm3とし、得られた予備発泡粒子の嵩比重、密度の逆数である。
[発泡バラツキ]
発泡室10内から予備発泡粒子を払い出す際、払い出し開始直後の2秒間に発泡室下部の下部サンプルを抜き出し、払い出し終了直前の2秒間に発泡室上部の上部サンプルを抜き出し、上部サンプルの比重と下部サンプルの比重の比率Rを発泡バラツキとして算出し、R≦2.0は○(良好)、2.0≦R≦4.0は△(普通)、4.0≦Rは×(不良)と評価した。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
比較例1〜10の結果から、発泡室10内の中央、中間および外周領域への蒸気供給量(熱量)を一様にした場合、蒸気供給量が多くなるにつれて発泡バラツキが大きくなる傾向にあり、反対に蒸気供給量を少なくしていくと発泡バラツキは小さくなるがトータルサイクルが長くなる傾向にあることがわかった。
これに対し、実施例1〜10では、トータルサイクルが長くなるのを抑制しながら発泡バラツキを小さく抑制することができることが確認できた。
【符号の説明】
【0068】
10 発泡室
20、120 加熱媒体噴出部
21、121 蒸気室
21a 中央噴出部
21b 中間噴出部
21c 外周噴出部
22、122 蒸気配管
23 空気供給配管
22a、23a 中央分岐配管
22b、23b 中間分岐配管
22c、23c 外周分岐配管
24 ドレン配管
121h1 中央噴出孔
121h2 中間噴出孔
121h3 外周噴出孔
B 蒸気供給源
H 重力に沿った方向
1、P2、P3、P4、P5、P6、P7、P8、P11 圧力計
R1 中央領域
R2 中間領域
R3 外周領域
1、V2、V3、V4、V5、V6、V7、V8、V11 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡性樹脂粒子が投入される発泡室と、この発泡室内に重力に沿った方向に加熱媒体を噴出して前記発泡性樹脂粒子を予備発泡させる加熱媒体噴出部とを備え、前記加熱媒体噴出部は、重力に沿った方向から見た前記発泡室内の外周領域への単位容積当たりの加熱媒体による供給熱量が中央領域への単位容積当たりの加熱媒体による供給熱量よりも多くなるよう加熱媒体を噴出する構成を有することを特徴とする予備発泡装置。
【請求項2】
前記加熱媒体噴出部は、前記発泡室内の前記中央領域に加熱媒体を噴出する中央噴出部と、前記発泡室内の前記外周領域に加熱媒体を噴出する外周噴出部とを備え、前記外周噴出部からの前記加熱媒体による供給熱量を前記中央噴出部からの前記加熱媒体による供給熱量よりも多く調整できるように構成された請求項1に記載の予備発泡装置。
【請求項3】
前記加熱媒体噴出部が、外部の加熱媒体供給源と接続される加熱媒体配管をさらに備え、前記加熱媒体供給配管は、その加熱媒体移送下流側に、前記中央噴出部と接続する中央分岐配管と、前記外周噴出部と接続する外周分岐配管とを有し、前記中央分岐配管および前記外周分岐配管は、加熱媒体搬送下流側から順に圧力計およびバルブを有している請求項2に記載の予備発泡装置。
【請求項4】
中央分岐配管および前記外周分岐配管の加熱媒体移送下流側が同心円状に形成されている請求項3に記載の予備発泡装置。
【請求項5】
前記加熱媒体噴出部は、前記発泡室内の前記中央領域に加熱媒体を噴出する中央噴出孔と、前記発泡室内の前記外周領域に加熱媒体を噴出する外周噴出孔とを備え、
前記外周噴出孔の総開口面積が前記中央噴出孔の総開口面積よりも大きく設定された請求項1〜4のいずれか1つに記載の予備発泡装置。
【請求項6】
前記加熱媒体噴出部は、前記発泡室内の底部から上方に向かって加熱媒体を噴出する請求項1〜5のいずれか1つに記載の予備発泡装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の予備発泡装置の前記発泡室内に発泡性樹脂粒子を投入し、前記加熱媒体噴出部にて前記発泡室内の前記外周領域への単位容積当たりの加熱媒体による供給熱量が中央領域への単位容積当たりの加熱媒体による供給熱量よりも多くなるように加熱媒体を噴出させて発泡性樹脂粒子を予備発泡させる予備発泡方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−200885(P2012−200885A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64626(P2011−64626)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】