説明

事故情報取得システム

【課題】 より確実に現場検証に用いる事故情報を取得する。
【解決手段】 事故情報取得システムに含まれる車両10は、車両事故が発生したことを検出する事故検出部11と、事故検出部11により事故を検出した際に、事故情報を記録した記録装置11b,11c,11d,20に対して、当該事故情報の送信要求を近距離無線通信により送信する事故情報要求部12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両事故に係る事故情報を取得する事故情報取得システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両事故における現場検証は、運転者の言い分、道路に残されたタイヤの跡、車の傷の程度等を参照しながら事後的な判断により行われていた。このような現場検証の結果は、例えば自動車保険における過失割合の算出の際に参照されるため、客観的なものであることが必要とされるが、上記のような方法では客観性を担保するのは難しい。
【0003】
その一方で、道路に沿って設置された路側機器によって、事故を起こした車両を撮影する技術が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−49988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された技術を現場検証に適用することとすれば、より現場検証をより客観的なものにすることが可能である。しかしながら、路側機器が設置された場所のみでしか適用することができない。
【0005】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、より確実に現場検証に用いる事故情報を取得することができる事故情報取得システムを提供することを目的とする。ここで、事故情報とは、事故発生時に事故現場で取得された、画像、映像及び音声等、車両事故の現場検証に用いることができる情報を指す。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る事故情報取得システムは、車両事故が発生したことを検出する事故検出手段と、事故検出手段により事故が検出された際に、事故情報を記録した記録装置に対して、当該事故情報の送信要求を近距離無線通信により送信する事故情報要求手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る事故情報取得システムでは、車両事故が発生すると事故検出手段がその事故を検出し、当該検出をトリガとして事故情報要求手段が、事故情報を記録した記録装置に対して事故情報の送信要求を近距離無線通信により送信する。送信要求を受けた記録装置により事故情報が事故車両等に送信されることにより、事故情報が取得される。記録装置は路側機器に備えられたものだけでなく、例えば事故車両以外の車両に備えられていることもあるので、より確実な事故情報の取得が可能となる。
【0008】
事故情報取得システムは、車両事故に係る車両の位置情報を取得する事故車両位置取得手段と、事故情報を記録した記録装置の位置情報を取得する記録装置位置取得手段と、を更に備え、事故情報要求手段は、事故車両位置取得手段及び記録装置位置取得手段により取得された位置情報に基づき送信要求を送信する記録装置を決定する、ことが望ましい。この構成によれば、現場検証に用いられるべき事故情報を記録した記録装置を選択して送信要求を送信することができるので、より効率的な事故情報の取得が可能となる。
【0009】
事故情報取得システムは、事故情報を記録する記録装置に対して、事故情報の記録要求を送信する記録要求手段を更に備えることが望ましい。なお、記録装置が記録する事故情報には、事故情報になりうる情報即ち、事故が発生する前から記録される情報も含まれる。この構成によれば、事故情報の記録要求を受信した記録装置が、事故情報の記録を開始し、より確実な事故情報の取得が可能となる。
【0010】
事故情報取得システムは、車両事故に係る車両の位置情報を取得する事故車両位置取得手段と、事故情報を記録する記録装置の位置情報を取得する記録装置位置取得手段と、を更に備え、記録要求手段は、事故車両位置取得手段及び記録装置位置取得手段により取得された位置情報に基づき記録要求を送信する記録装置を決定する、ことが望ましい。なお、車両事故に係る車両には、車両事故に係わりうる車両、即ち事故が発生していない状況の車両も含まれる。この構成によれば、より適切に事故情報を記録しうる記録装置を選択して記録要求を送信することができるので、より効率的な事故情報の取得が可能となる。
【0011】
事故情報取得システムは、車両事故に係る車両の位置情報を取得する事故車両位置取得手段と、位置と当該位置における車両事故の発生確率とを対応付けて記憶した事故確率データベースと、記録要求手段は、事故車両位置取得手段により取得された位置情報及び事故確率データベースに記憶された当該位置における車両事故の発生確率を参照して、当該発生確率が予め設定された条件に適合するか否か判断し、当該判断に基づいて事故情報の記録要求を送信する、ことが望ましい。この構成によれば、例えば事故確率が高い場所においてのみ事故情報の記録がなされる等、より効率的な事故情報の取得が可能となる。
【0012】
事故情報取得システムは、事故情報を記録する記録装置は撮像装置であり、車両事故に係る車両の位置情報を取得する事故車両位置取得手段と、事故情報を記録する記録装置の位置情報を取得する記録装置位置取得手段と、事故車両位置取得手段及び記録装置位置取得手段により取得された位置情報に基づき、記録装置による撮像の方向を決定する撮像方向決定手段と、を更に備えることが望ましい。この構成によれば、事故の方向に向けて撮像が行われるので、より適切な事故情報の取得が可能になる。
【0013】
事故情報取得システムは、車両事故に係る車両の移動速度及び移動方向の情報を取得する事故車両速度取得手段と、事故情報を記録する記録装置の移動速度及び移動方向の情報を取得する記録装置速度取得手段と、を更に備え、撮像方向決定手段は、事故車両速度取得手段及び記録装置速度取得手段により取得された移動速度及び移動方向の情報にも基づき、記録装置による撮像の方向を決定する、ことが望ましい。この構成によれば、車両及び記録装置が移動していても事故の方向に向けて撮像が行われるので、より適切な事故情報の取得が可能になる。
【0014】
事故情報取得システムは、事故検出手段は、車両事故に係る車両の事故部位の情報を更に取得し、撮像方向決定手段は、事故検出手段により取得された事故部位の情報にも基づき、記録装置による撮像の方向を決定する、ことが望ましい。この構成によれば、事故部位の方向に向けて撮像が行われるので、より適切な事故情報の取得が可能になる。
【0015】
事故情報取得システムは、記録装置を含み、当該記録装置は、事故情報を記録する記録手段と、送信要求を受信し、当該送信要求に応じて記録手段により記録された事故情報を送信する事故情報送信手段と、を備えることが望ましい。記録装置を含むシステム構成とすれば、本発明を確実に実施することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、送信要求を受けた記録装置により事故情報が送信されることにより、事故情報が取得される。事故情報を記録する記録装置は路側機器に備えられたものだけでなく、例えば事故車両以外の車両に備えられていることもあるので、より確実な事故情報の取得が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る事故情報取得システムの実施形態について説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
本実施形態における事故情報システムは、車両事故が発生した際に、現場検証に用いることができる事故情報を取得するシステムである。ここで、事故情報とは、事故発生時に事故現場で取得された、画像、映像及び音声等、車両事故の現場検証に用いることができる情報を指す。また、車両事故とは、自動車等の車両同士の事故だけでなく、自動車と人との接触事故等も含む。
【0019】
本実施形態における事故情報取得システムには車両10が含まれ、図1に車両10の構成を示す。図1に示すように、車両10は、事故検出部(事故検出手段)11と、事故情報要求部(事故情報要求手段)12と、車両位置取得部13と、記録装置位置取得部(記録装置位置取得手段)14と、カメラ部(記録手段)15と、事故情報送信部(情報送信手段)16とを備える。これらの機能は、CPU、メモリ等により構成され、車両10に搭載された情報処理装置により実現される。また、各機能において特別な装置等が必要となる場合は後述する。また、車両10には、エンジン、ボディ及びシャシー等自動車等の車両が通常備える構成要素も備えている。本実施形態における事故情報システムでは、事故情報は車両10(事故車両)にて取得するものとする。なお、事故情報は車両10により取得される必要は必ずしもなく、別途設置されるサーバ装置等で取得されてもよい。
【0020】
事故検出部11は、車両10に車両事故が発生したことを検出する。具体的には、例えば車両10のボディに圧力(歪み)センサを設けておき、圧力センサが検知するボディに加えられた圧力が一定以上の値となっていることにより事故が発生したことを検出する。また、車両10に備えられるABS(Anti-lock Brake System)の動作を検知できるようにしておき、車両事故の検出にABSの動作用いることとしてもよい。同様に車両10に備えられるエアバッグの動作や、加速度センサ又は転倒センサ(ジャイロセンサ)により取得される情報等に基づいて、車両事故を検出することとしてもよい。また、車両10の部位毎にセンサを設けておき、車両事故により損傷を受けた車両10の部位又は位置を特定することとしてもよい。また、それら以外でも事故を判断する他の技術が用いられてもよい。事故検出部11により事故が検出されたという情報は、事故情報要求部12に送信される。
【0021】
事故情報要求部12は、事故検出部11により事故を検出した際に、事故情報を記録した記録装置に対して、当該事故情報の送信要求を近距離無線通信により送信する。送信要求には、送信を要求する事故情報を特定する情報(例えば、記録された時間、及び送信先等)が含まれているのが望ましい。送信要求を送信する記録装置としては具体的には、カメラ等の事故情報を記録できる装置を搭載した他の車両等が相当する。また、路側等に設置された記録装置でもよい。事故情報は、具体的には画像又は映像等、視覚により事故の状況を確認できるものが好ましい。また、音声等で事故の状況を記録したものでもよい。事故情報が画像又は映像である場合は、事故情報を取得する記録装置としてはカメラ等の撮像装置が用いられる。事故情報が音声である場合は、事故情報を取得する記録装置は録音装置が用いられる。また、上記のように要求は近距離無線通信により送信されるので、上記した車両10に搭載される情報処理装置には近距離無線通信を行うことができる装置が備えられる。また、事故情報を記録した記録装置と通信が可能になるよう、通信範囲が数m〜数十m程度である近距離通信方法を用いるのが好ましい。また、事故情報要求部12は、事故検出部11、車両位置取得部13及び記録装置位置取得部14から送信される情報を受信し、それらの情報に基づいて送信要求を送信する記録装置を決定するのが好ましい。決定方法について詳しくは後述する。また、記録装置からの事故情報の送信先については、上記のように送信要求に送信先の情報を含めることとしてもよいし、予め定めておいてもよい。
【0022】
車両位置取得部13は、車両10の位置情報を取得する。具体的には例えば、GPS(Global Positioning System)により、位置情報として車両10が位置する場所の緯度及び経度を取得する。なお、車両10が車両事故に係るものとなった場合は、車両位置取得部13は事故車両位置取得手段の役割を果たす。
【0023】
記録装置位置取得部14は、事故情報を記録した記録装置の位置情報を取得する。具体的には例えば、記録装置に対して当該記録装置の位置情報の送信要求を送信し、その送信要求に応じて記録装置から送信された位置情報を受信することにより取得する。位置情報としては、具体的には記録装置が位置する場所の緯度及び経度であることが好ましい。
【0024】
上記の構成要素は他の記録装置から事故情報を取得するために必要な機能である。本実施形態においては、車両10が事故情報を記録する記録装置ともなりえる場合がある。以下は記録装置になる場合の構成要素である。
【0025】
カメラ部15は、レンズ及び半導体素子等により構成され撮像を行う。撮像された画像又は映像はカメラ部15のメモリ等に記憶される。カメラ部15により撮像された画像又は映像に車両事故に係るものが含まれていれば、その画像又は映像は事故情報となる。なお、カメラ部15は、記録手段の例であり、例えば録音装置やタイムスタンプ等、他の記録装置が用いられることとしてもよい。また、それら複数の記録装置が併用されてもよい。
【0026】
事故情報送信部16は、他の装置(車両)から近距離無線通信により事故情報の送信要求を受信し、その送信要求に応じてカメラ部15のメモリ等に記憶された事故情報を当該他の装置に送信する。事故情報の送信先の情報は、送信要求に含まれており、例えば、送信要求を送信した装置あるいは別途設けられたサーバ装置等であることが好ましい。
【0027】
なお、車両10が事故情報を記録する記録装置になる場合は、上記の車両位置取得部13は、事故情報を記録する記録装置の位置情報を取得する機能となる。また、その場合のため、他の装置からの位置情報の送信要求を受信し、その送信要求に応じて、車両10の位置情報を送信する機能をも備える。
【0028】
以下、本実施形態における事故情報取得システムにより実行される処理を説明する。本処理は、図2に示すように車両10aに車両事故が発生した際に実行される処理である。なお図2は、交差点において車両同士が接触し事故が発生したところを模式的に示した図である。図2に示すように、車両事故が発生した際に、事故車両10aが備える近距離無線通信機能の通信範囲NAの範囲内に、(上述した車両10と同じ装置を備える)車両10b,10c,10dが位置しているものとする。また、通信範囲NAの範囲外の路側に、カメラ20が備えられているものとする。なお、カメラ20は、上述した車両位置取得部13(自車両でなく自装置の位置情報を取得する)と、カメラ部15と、事故情報送信部16とを備える。ここで、事故車両の周囲の車両10b,10c,10d及びカメラ20は、自らが備えるカメラ部15により、その事故の画像又は映像を記録している。
【0029】
以下、図3のシーケンス図を用いて本実施形態の処理の流れを説明する。車両事故が発生した事故車両10aでは、事故検出部11が、自車両に事故が発生したことを検出する(S01)。事故が検出された旨は、事故検出部11から事故情報要求部12に送信される。続いて、事故車両10aでは、車両位置取得部13が、自車両の位置情報を取得する(S02)。自車両の位置情報は、車両位置取得部13から事故情報要求部12に送信される。
【0030】
続いて、事故車両10aでは、記録装置位置取得部14が、記録装置の位置情報の送信要求を、事故車両が備える近距離無線通信機能により送信する(S03)。この送信要求は、送信先を特定して行われるものではなく、通信範囲NA内の全ての装置が受信できるように送信される。当該送信要求を受信した車両10b,10dでは、車両位置取得部13が自車両の位置情報を取得し、その位置情報を事故車両10aに送信する(S04)。ところで、事故車両10aから送信された位置情報の送信要求は、通信範囲NA内を中継して通信範囲NA外に送信されてもよい。例えば、カメラ20は通信範囲NA外に位置しているが、車両10cとカメラ20との間に形成されたアドホックネットワークを介して、車両10cがカメラ20に当該送信要求を送ることとしてもよい(S03´)。送信要求を受けたカメラ20は、自装置の位置情報を取得し、その位置情報を車両10cに送信する(S04´)。カメラ20の位置情報を受信した車両10cは、カメラ20の位置情報と自車両の位置情報を事故車両10aに送信する(S04´´)。位置情報を送信された事故車両10aでは、記録装置位置取得部14が各位置情報を受信する。各位置情報は、記録装置位置取得部14から事故情報要求部12に送信される。
【0031】
続いて、事故車両10aでは、事故情報要求部12が自車両10a及び各記録装置10b,10c,10d,20の位置情報を参照して、予め定められたルール等に基づき事故情報の送信要求を送信する記録装置を決定する(S05)。この決定は、例えば、事故車両10a及び各記録装置10b,10c,10d,20の位置情報から、事故車両10aと各記録装置10b,10c,10d,20との間の距離を算出し、当該距離が予め定められた値以下の記録装置を送信対象とする等により行われる。上記の例で具体的には、上記予め定められた値が図2の範囲R1に対応するものである場合は、全ての各記録装置10b,10c,10d,20を、送信要求を送信する記録装置と決定する。また、上記予め定められた値が図2の範囲R2に対応するものである場合は、記録装置(車両)10bのみを、送信要求を送信する記録装置と決定する。
【0032】
続いて、事故情報要求部12は、当該決定した記録装置に対して事故情報の送信要求を送信する(S06)。当該送信要求を受信した車両10b,10dでは、カメラ部15により記録した事故情報を事故車両10aに送信する(S07)。また、カメラ20に対しては、上記の位置情報の送信時(S03´、S04´、S04´´)と同様に、車両10cを中継して事故情報の送信要求が送信され(S06´)、車両10cを中継して事故情報が事故車両10aに送信される(S07´、S07´´)。各記録装置10b,10c,10d,20から事故情報が送信された事故車両10aは、当該事故情報を受信する。
【0033】
ここで、事故情報は各記録装置10b,10c,10d,20から事故車両10aに送信されることとしているが、例えば事故車両10aから送信される送信要求に予め別途設けられたサーバ装置を送信先として指定することにより、サーバ装置に送信されることとしてもよい。また、送信要求で指定しなくとも、予めサーバ装置を送信先として定めておいてもよい。
【0034】
また、上記の処理では各記録装置10b,10c,10d,20においては、事故車両10aに対して事故情報を送信するか否かの判断はなされていないが、例えば事故車両10aの位置情報を事故車両10aから受信し、その事故車両10aの位置情報と自装置の位置情報とを参照して、事故情報を送信するか否かの判断を行うこととしてもよい。また、事故車両10aにおける損傷を受けた部位、及び事故車両10aの向きが特定される情報が、上記判断のために事故車両10aの位置情報及び自装置の位置情報と併せて参照されてもよい。その場合、事故情報要求部12により送信される事故情報の送信要求に、事故車両10aにおける損傷を受けた部位、及び事故車両10aの向きが特定される情報が含まれるようにしておく。
【0035】
上記のように本実施形態における事故情報取得システムは、事故車両10aの周囲の事故情報を記録した記録装置10b,10c,10d,20に事故情報の送信を要求することができるので、より確実な事故情報の取得を可能とする。また、上述した一連の処理が行なわれると事故情報が取得されるので、迅速な事故情報の取得が可能になる。また、事故情報は記録装置10b,10c,10d,20により取得されたものであるので、客観的なものである。
【0036】
また、本実施形態のように事故車両10a及び記録装置10b,10c,10d,20の位置情報に基づいて事故情報の送信を要求する記録装置を決定することとすれば、現場検証に用いられるべき事故情報を記録した記録装置を選択して送信要求を送信することができるので、より効率的な事故情報の取得が可能となる。
【0037】
また、本実施形態において、記録装置10b,10c,10d,20を事故情報取得システムの構成要件とすれば、本発明をより確実に実施することができる。
【0038】
[変形例1]
上述した実施形態では、事故車両10aの周囲の記録装置10b,10c,10d,20は事故情報を自主的に記録していることを前提としていた。もし、記録装置10b,10c,10d,20が事故情報を記録していなければ、事故情報を取得することができない。
【0039】
そのような状況に対処するため、図4に示すように、事故情報取得システムに含まれる車両30は、記録要求部(記録要求手段)31を備えることとするのが好ましい。記録要求部31は、記録装置10b,10c,10d,20に対して、事故情報の記録要求を送信する。この記録要求は、事故が発生する前(上記のS01の前、例えば車両30aが走行している間ずっと)に送信され、記録要求を受信した記録装置10b,10c,10d,20は、事故情報の記録をその時点で行っていなければ、事故情報の記録を開始する。従って、記録要求部31を構成要件に含めることとすれば、より確実な事故情報の取得が可能となる。なお、図4では図が複雑となるため、図1で示したカメラ部15及び事故情報送信部16は省略した。
【0040】
記録要求部31における記録要求の送信は、上述した事故情報の取得要求の送信と同様に、車両位置取得部13により取得された車両30aの位置情報、及び記録装置位置取得部14により取得された各記録装置10b,10c,10d,20の位置情報に基づき、記録要求を送信する装置を決定してから行われることとしてもよい。この構成によれば、より適切に事故情報を記録しうる記録装置を選択して記録要求を送信することができるので、より効率的な事故情報の取得が可能となる。
【0041】
また、記録要求部31における記録要求の送信の際、送信を行うか否かの判断を車両事故の発生確率に基づいて行うこととしてもよい。そのために、図4に示すように、事故情報取得システムに含まれる車両30は、事故確率データベース32を備えることとするのが好ましい。事故確率データベース32は、位置と当該位置における車両事故の確率とを対応付けて記憶している。位置における車両事故の確率は、例えば、車両事故の統計データから決定することができる。事故確率の保持は、具体的には例えば図5に示すように、地図をメッシュに区切り、メッシュ(位置)毎に事故発生確率を“大”、“中”、“小”といった三段階で保持することが好ましい。なお、図5は、道路及び交差点における信号を含む地図をメッシュに区切り、メッシュ毎に事故発生確率を表した図である。
【0042】
車両事故の発生確率に基づいた、記録要求の送信の判断は次のようにして行われる。まず、車両30aでは、車両位置取得部13が自車両の位置情報を取得する。取得された位置情報は、車両位置取得部13から記録要求部31に送信される。記録要求部31は、事故確率データベース32に記憶された、その位置情報が示す位置に対応する車両事故の発生確率を参照する。記録要求部31では予め条件を設定しておき、記録要求部31は、当該発生確率が予め設定された条件に適合するか否か判断し、当該判断に基づいて事故情報の記録要求を送信する。その条件として、例えば予め閾値を設定しておきその閾値を上回ること等が用いられることが好ましい。
【0043】
また、月、日及び時間毎に車両事故の発生確率を保持しておくこととすることも好ましい。月、日及び時間毎に車両事故の発生確率を保持しておくこととすると、例えば雨や降雪等を考慮して上記の条件を設定することができる。具体的には雨の影響を考慮する場合は例えば次のようにする。まず、ある定められたメッシュ単位当りの車両事故の発生確率の値をA(P,m,d,t)とする。ここでPを位置、mを月、dを日、tを時間とする。次に、以下の式により降雨時の位置毎の車両事故の発生確率Ar(P)を求める。
【数1】

上記の式は、6月の梅雨の時期は降雨が多いという四季の特性を使い、降雨時の車両事故の発生確率を導出するものである。その日の天気の情報を予め入力しておき、その日の天気が雨であり、かつA(P,m,d,t)<Ar(P)を満たす場合には、A(P,m,d,t)に重み係数(所定の倍率)を掛けて閾値を越えているか比較する。即ち、重み係数をW(例えば、値を2とする)、閾値をThとすると、
A(P,m,d,t)×W>Th
であれば、条件に適合するとし、事故情報の記録要求を送信する。
【0044】
上記の条件を用いることとすれば、降雨時等、事故が発生しやすい場合を考慮して事故情報の記録要求を送信することが可能となる。また、例えば、降雨時の位置毎の車両事故の発生確率Ar(P)を求める上記の式を応用して(例えば、分子の和をとる範囲を2月とする)、降雪時等の条件を設定することができる。データベース32は、最新の状態を保つために、サーバ等からデータをダウンロードできることとするか、交通量の多い道路に設置されているビーコン局等から更新されることが望ましい。あるいはそれらの両方がなされてもよい。また、記録要求部31を、車両30でなく、事故の多い交差点等に一時的又は恒久的に設置しておき、その記録要求部31から付近を走行している車両30に事故情報の記録要求が送信されてもよい。
【0045】
[変形例2]
上述した実施形態のように事故情報を記録する手段がカメラ等の撮像装置である場合は、撮像を行う方向が重要である。事故現場の近くに記録装置が存在して、撮像を行っていたとしても、車両事故が発生した方向を撮像してなければ、適切な事故情報とはなりえない。そのような状況に対処するため、図6に示すように、事故情報取得システムに含まれる記録装置としての車両40は、撮像方向決定部(撮像方向決定手段)41を備えることとするのが好ましい。撮像方向決定部41は、事故車両及び記録装置の位置情報からカメラ部15による撮像の方向を決定し撮像の方向を制御する。
【0046】
また、図2に示した車両に付した矢印のように、事故車両及び記録装置は移動していることも多い。そのような状況で適切に撮像を行えるようにするため、車両及び装置の速度を考慮して撮像方向を決定することが好ましい。図6に示すように、事故情報取得システムに含まれる記録装置としての車両40は、事故車両速度取得部(事故車両速度取得手段)42と、車両速度取得部43と備えることとするのが好ましい。
【0047】
事故車両速度取得部42は、車両事故に係る車両の移動速度及び移動方向の情報を取得する。この取得は、事故車両に対して移動速度及び移動方向の情報の送信要求を送信し、当該送信要求に応じて事故車両から送信される情報を受信すること等により行われる。
【0048】
車両速度取得部43は、自車両の移動速度及び移動方向の情報を取得する。車両40が、記録装置となる場合、車両速度取得部43は装置速度取得手段の役割を果たす。移動速度及び移動方向の情報の取得は、車両40に備えられる速度センサやジャイロセンサ等を用いて行われる。
【0049】
撮像方向決定部41は、事故車両速度取得部42及び車両速度取得部43により取得された、各移動速度及び移動方向にも基づき撮像方向を決定する。具体的な撮像方向の決定方法を以下に説明する。状況としては、図7に示すように、車両40a,40bに事故が発生し、その事故情報を記録装置としての車両40cが撮像するというものである。なお図7は、道路において車両同士が接触し事故が発生したところを模式的に示した図である。
【0050】
撮像方向を制御する際の処理の流れを図8のシーケンス図を用いて説明する。なおこの撮像方向の制御は、事故が発生する前、及び事故が発生した後いずれの時点で行われてもよい。まず、事故車両40aが、撮像を行う車両40cに対して撮像方向を制御するよう制御要求を送信する(S11)。当該制御要求を受信した車両40cでは、撮像方向の制御に用いるための情報を取得するため、事故車両40aに対し、事故車両位置取得部(図示せず)が事故車両40aの位置情報の送信要求を、事故車両速度取得部42が事故車両40aの移動速度及び移動方向の情報の送信要求をそれぞれ送信する(S12)。
【0051】
送信要求を受信した事故車両40aでは、車両位置取得部13が自車両の位置情報を取得し、車両速度取得部43が自車両の移動速度及び移動方向をそれぞれ取得する(S13)。図7に示すように、事故車両40aの位置情報はベクトルP(t)に、事故車両40aの移動速度及び移動方向はベクトルV(t)にそれぞれ対応する(ここでtは時刻を示す)。取得された情報(P(t),V(t))は、車両40cに送信される(S14)。車両40cでは、それらの情報を受信する。
【0052】
一方、車両40cでは、撮像方向の制御に用いるための、自車両に関する情報を取得する(S15)。即ち、車両位置取得部13が自車両の位置情報を取得し、車両速度取得部43が自車両の移動速度及び移動方向をそれぞれ取得する。図7に示すように、車両40cの位置情報はベクトルP(t)に、車両40aの移動速度及び移動方向はベクトルV(t)にそれぞれ対応する。また、図7に示すように、車両40cのカメラ部15の方向(撮像方向)はベクトルC(t)に対応する。
【0053】
撮像方向の制御に用いるための情報が取得されると、車両40cでは、撮像方向決定部41が各情報を参照し、以下の式から撮像方向C(t)を求め、撮像方向を決定する(S16)。
【数2】

上記の式において、右辺第1項は車両40cの位置を表し、中括弧で括られた第2項は事故車両40aの位置を表す。即ち、C(t)は、車両40cから事故車両40aへ向かう方向のベクトルとなる。第2項におけるΔtは、伝送遅延を表し、GPSによる位置情報を取得する時間等によるものであり、中括弧で括られた第2項は事故車両40aの速度ベクトルP(t)からtの時点での、事故車両40aの位置を求めている。また、Δtは事故車両40aから車両40cへの情報の送信(S14)において、情報が未達となり、事故車両40aから再送されるまでの時間(車両40cから事故車両40aへ送信されるAck(Acknowledgment)待ちの時間)にも起因する。事故車両40aの位置を正確に算出するため、Δtも事故車両40aから車両40c送信されるのが好ましい。(送信要求を受信した時刻や送信を行った時刻等、Δtを算出するための情報でもよい)。
【0054】
撮像方向が決定されると、カメラ部15がその撮像方向を参照し、撮像方向の制御を行う(S17)。なお、一度このように撮像方向C(t)が決定された後は、その情報を用いて、以下の式によりΔt時間後の撮像方向C(t)を決定することができる。
C(t+Δt)=C(t)+V(t)Δt−V(t)Δt
ここで、より適切な撮像方向C(t)を算出するため、車両40cの速度ベクトルV(t)及び事故車両40aの速度ベクトルV(t)は、算出の都度、最新の情報を取得することが望ましい。なお、車両40cは、事故車両40aとの距離が一定以上となった場合は、撮像方向の制御を終了することとするのが好ましい。
【0055】
上記のような構成によれば、事故が発生している方向での撮像が行われるので、より適切な事故情報の取得が可能となる。
【0056】
なお、上述の例では、事故車両40aの位置情報を用いて撮像方向を算出していたが、事故検出部11により、車両事故に係る車両の事故部位の情報を取得し、撮像方向決定部41では、その部位の情報にも基づいて撮像方向を検出することが望ましい。この構成によれば、事故部位の方向に向けて撮像が行われるので、より適切な事故情報の取得が可能になる。事故部位の情報としては、具体的には車両の大きさ(長さ、幅、高さ)、横転の状態、並びに車両前方右、前方左、中央右、中央左、後方右及び後方左等の車両の該当箇所等が相当する。これらの取得方法としては、部位毎に前述した圧力センサを付しておく方法等がある。
【0057】
また、上述の例では撮像方向の決定は車両40cで行ったが、撮像方向の決定に必要な情報を事故車両10aが取得し事故車両10aにおいて行ってもよい。その場合、決定した撮像方向の情報が事故車両10aから車両40cに送信される。
【0058】
また、撮像方向の制御は、事故発生前に行ってもよいと上述したが、記録要求部31からの記録要求の送信とあわせて行うこととしてもよい。
【0059】
また、1つの記録装置に対して、撮像方向の制御が複数ある場合は、自装置と距離が近い事故車両を撮像する等、予め条件を設定しておき、その条件に従って撮像方向を決定することとするのがよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態における車両の構成を示す図である。
【図2】実施形態において事故情報取得システムで処理が実行される場面を模式的に表した図である。
【図3】実施形態における事故情報取得システムで実行される処理を示すシーケンス図である。
【図4】実施形態における車両の変形例1の構成を示す図である。
【図5】事故確率データベースに記憶されるデータの例を示す図である。
【図6】実施形態における車両の変形例2の構成を示す図である。
【図7】撮像方向の制御が実行される場面を模式的に表した図である。
【図8】撮像方向の制御において実行される処理を示すシーケンス図である。
【符号の説明】
【0061】
10,30,40…車両(10a,30a,40a…事故車両、10b〜10d,40c…記録装置)、11…事故検出部、12…事故情報要求部、13…車両位置取得部、14…記録装置位置取得部、15…カメラ部、16…事故情報送信部、31…記録要求部、32…事故確率データベース、41…撮像方向決定部、42…事故車両速度取得部、43…車両速度取得部、20…カメラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両事故が発生したことを検出する事故検出手段と、
前記事故検出手段により事故が検出された際に、事故情報を記録した記録装置に対して、当該事故情報の送信要求を近距離無線通信により送信する事故情報要求手段と、
を備える事故情報取得システム。
【請求項2】
前記車両事故に係る車両の位置情報を取得する事故車両位置取得手段と、
前記事故情報を記録した記録装置の位置情報を取得する記録装置位置取得手段と、を更に備え、
前記事故情報要求手段は、前記事故車両位置取得手段及び前記記録装置位置取得手段により取得された位置情報に基づき前記送信要求を送信する記録装置を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の事故情報取得システム。
【請求項3】
事故情報を記録する前記記録装置に対して、事故情報の記録要求を送信する記録要求手段を更に備える請求項1に記載の事故情報取得システム。
【請求項4】
前記車両事故に係る車両の位置情報を取得する事故車両位置取得手段と、
前記事故情報を記録する記録装置の位置情報を取得する記録装置位置取得手段と、を更に備え、
前記記録要求手段は、前記事故車両位置取得手段及び前記記録装置位置取得手段により取得された位置情報に基づき前記記録要求を送信する記録装置を決定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の事故情報取得システム。
【請求項5】
前記車両事故に係る車両の位置情報を取得する事故車両位置取得手段と、
位置と当該位置における車両事故の発生確率とを対応付けて記憶した事故確率データベースと、
前記記録要求手段は、前記事故車両位置取得手段により取得された位置情報及び事故確率データベースに記憶された当該位置における車両事故の発生確率を参照して、当該発生確率が予め設定された条件に適合するか否か判断し、当該判断に基づいて事故情報の記録要求を送信する、
ことを特徴とする請求項3に記載の事故情報取得システム。
【請求項6】
前記事故情報を記録する記録装置は撮像装置であり、
前記車両事故に係る車両の位置情報を取得する事故車両位置取得手段と、
前記事故情報を記録する記録装置の位置情報を取得する記録装置位置取得手段と、
前記事故車両位置取得手段及び前記記録装置位置取得手段により取得された位置情報に基づき、前記記録装置による撮像の方向を決定する撮像方向決定手段と、
を更に備える請求項1に記載の事故情報取得システム。
【請求項7】
前記車両事故に係る車両の移動速度及び移動方向の情報を取得する事故車両速度取得手段と、
前記事故情報を記録する記録装置の移動速度及び移動方向の情報を取得する記録装置速度取得手段と、を更に備え、
前記撮像方向決定手段は、前記事故車両速度取得手段及び前記記録装置速度取得手段により取得された移動速度及び移動方向の情報にも基づき、前記記録装置による撮像の方向を決定する、
ことを特徴とする請求項6に記載の事故情報システム。
【請求項8】
前記事故検出手段は、前記車両事故に係る車両の事故部位の情報を更に取得し、
前記撮像方向決定手段は、前記事故検出手段により取得された事故部位の情報にも基づき、前記記録装置による撮像の方向を決定する、
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の事故情報システム。
【請求項9】
記録装置を含み、当該記録装置は、
事故情報を記録する記録手段と、
前記送信要求を受信し、当該送信要求に応じて前記記録手段により記録された事故情報を送信する事故情報送信手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の事故情報取得システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−293558(P2006−293558A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−111320(P2005−111320)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】