説明

二剤式染毛剤

【課題】ノンエアゾール式二剤式染毛剤の混合液の温度が、酸化染料の酸化反応により急激に上昇するような場合でも、吐出される泡の泡質が良好であり、かつ低温時の起泡性も良好で、しかも染毛剤として求められる基本的な性能も備え、ノンエアゾール式二剤式染毛剤特有の効果が得られる二剤式染毛剤の提供。
【解決手段】アルカリ剤を含有する第1剤と過酸化水素を含有する第2剤、及びノンエアゾールフォーマー容器からなり、混合液中に次の成分(A)及び(B)を含有し、過酸化水素の混合液中の含有量が3.60質量%以上、混合液の粘度が1〜300mPa・sである二剤式染毛剤。及び当該二剤式染毛剤の第1剤と第2剤の混合液の泡を毛髪に適用し、3〜60分放置後、洗い流す毛髪の染色方法。
成分(A):酸化染料
成分(B):重量平均分子量200〜800のポリプロピレングリコール 0.50〜3.0質量%

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二剤式染毛剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二剤式の毛髪脱色剤や染毛剤としては、液状又はクリーム状のものが古くから広く普及している。しかし、これらを毛髪にムラなく塗布するのは慣れない人にとって難しい。髪に適用する混合物の粘度が、放置時のタレ落ち防止のために1000〜10000mPa・s程度と高めになるよう調整されており、均一に剤を広げにくく、また毛髪の根元まで充分に剤を行き渡らせにくいからである。更に、毛髪の根元部分や後頭部への塗布にはブロッキング、合わせ鏡等のスキルが必要とされ、多くの時間も要する。
【0003】
これに対し、二剤式毛髪脱色剤又は二剤式染毛剤の混合液をノンエアゾールタイプのフォーマー容器から泡状に吐出させるものが知られている(特許文献1)。この毛髪脱色剤又は染毛剤は、第1剤と第2剤の混合液をノンエアゾールタイプのフォーマー容器から泡状に吐出することにより、慣れない人であっても簡単に毛髪にムラなく適用でき、仕上がりに色ムラが生じないものである。簡単に適用できるのでブロッキング、合わせ鏡等のスキルも不要であり、染毛に要する時間も従来に比べはるかに短く済む。このように従来と比べてはるかに優れた性能を有するので、性別、年齢層を問わず幅広い客層に支持されつつある。このため、多くの客層のニーズに合わせて、様々な製品が開発されている。
【0004】
明るめの色に染めるための製品を作る際には、混合液中の過酸化水素の濃度が高くなるように処方を作ることになる。ここで本発明者らは、過酸化水素を高濃度に含む処方の検討において、条件にもよるが、混合液の液温が、混合直後から髪へ適用するのに必要な時間である10〜20分までといった短い間に、顕著に上昇する現象が発生することに着目した。このような混合液の液温上昇は、フォーマー容器から吐出される泡のきめ細かさに悪影響を与えたり、気液混合比のバランスを崩して水っぽい泡の原因となったりなどして、塗布のしやすさに悪影響を及ぼす。あるいは、酸化染料の反応が速くなりすぎることにより混合直後の剤と20分経過後の剤とでの染色力に差が生じ、色ムラの原因になる可能性がある。このような現象は、古くから広く普及している液状又はクリーム状の染毛剤には見られなかったものである。
【0005】
本発明者らは、混合液の温度上昇の原因を探ったところ、ノンエアゾールフォーマー容器から泡状に吐出される染毛剤の粘度が従来の染毛剤と比べて極端に低いため、酸化染料の反応速度が速くなることに起因するものと考えるに至った。
【0006】
そこで、液温が上昇してもノンエアゾールフォーマー容器から吐出される泡のきめ細かさ、適切な気液混合比といった泡質を良好なものとするために、高級アルコールを増量することを考えた。しかし、単に高級アルコールを用いるだけでは、今度は低温時の起泡性に影響することが分かっている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-339216号公報
【特許文献2】特開2007-291015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、ノンエアゾール式二剤式染毛剤の混合液の温度が、酸化染料の酸化反応により急激に上昇するような場合においても、吐出される泡のきめ細かさ、適切な気液混合比といった泡質が良好であり、かつ低温時(冬期の室内温度として想定される15℃前後)の起泡性も良好で、しかも染毛剤として求められる基本的な性能も備え、ノンエアゾール式二剤式染毛剤特有の効果が得られる二剤式染毛剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ノンエアゾール式二剤式染毛剤において、特定の分子量範囲のポリプロピレングリコールを用いることにより、上記課題が解決されることを見出した。
【0010】
本発明は、アルカリ剤を含有する第1剤と過酸化水素を含有する第2剤、及び第1剤と第2剤の混合液を泡状に吐出するノンエアゾールフォーマー容器からなり、混合液中に次の成分(A)及び(B)を含有し、前記過酸化水素の混合液中の含有量が3.60質量%以上、混合液の25℃における粘度が1〜300mPa・sである二剤式染毛剤を提供するものである。
成分(A):酸化染料
成分(B):重量平均分子量200〜800のポリプロピレングリコール 0.50〜3.0質量%
【0011】
また本発明は、上記二剤式染毛剤の第1剤と第2剤の混合液の泡を毛髪に適用し、3〜60分放置後、洗い流す毛髪の染色方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
ノンエアゾール式二剤式染毛剤の混合液の温度が、酸化染料の酸化反応により急激に上昇するような場合においても、吐出される泡のきめ細かさ、適切な気液混合比といった泡質が良好であり、かつ低温時の起泡性も良好で、しかも染毛剤として求められる基本的な性能も備え、ノンエアゾール式二剤式染毛剤特有の効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔アルカリ剤〕
第1剤が含有するアルカリ剤としては、例えば、アンモニア、モノエタノールアミン等のアルカノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を使用することができる。また、適宜、緩衝剤として、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム等のアンモニウム塩や、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩などを添加することができる。
【0014】
本発明の二剤式染毛剤における第1剤と第2剤の混合液のpHは、8〜11、特に9〜11が好ましく、アルカリ剤の使用量は、混合液のpHが上記範囲となるように適宜調整される。
【0015】
〔過酸化水素〕
第2剤が含有する過酸化水素の含有量は、髪を明るめの色に染めることができるものとする観点より、第1剤と第2剤の混合液中の3.60質量%以上、更には3.65質量%以上、更には3.70質量%以上が好ましい。一方で髪へのダメージを抑える観点から第1剤と第2剤の混合液中の8.00質量%以下、更には7.00質量%以下、更には6.00質量%以下が好ましい。また、第2剤のpHは、過酸化水素の分解抑制のため、2〜6、特にpH2.5〜4とすることが好ましい。
【0016】
〔(A):酸化染料〕
本発明の二剤式染毛剤の第1剤は成分(A)の酸化染料を含有する。この酸化染料としては、パラフェニレンジアミン、パラアミノフェノール、トルエン-2,5-ジアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)パラフェニレンジアミン、2-(2-ヒドロキシエチル)パラフェニレンジアミン、4-アミノ-3-メチルフェノール、6-アミノ-3-メチルフェノール、オルトアミノフェノール、1-ヒドロキシエチル-4,5-ジアミノピラゾール等の染料前駆体、レゾルシン、2-メチルレゾルシン、メタアミノフェノール、5-アミノオルトクレゾール、5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-2-メチルフェノール、メタフェニレンジアミン、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、1-ナフトール等のカップラーが挙げられる。
【0017】
成分(A)の酸化染料は、2種以上を併用することもでき、またその含有量は、保存安定性及び染色性能の観点から、第1剤と第2剤の混合液中の0.10〜1.8質量%、更には0.40〜1.4質量%、更には0.70〜1.0質量%が好ましい。
【0018】
また、前記酸化染料のうち、パラアミノフェノールは染毛剤の色を調節するのに特に重要な染料である一方で、特に酸化反応が速く、混合液の温度上昇の原因となりやすい。そのため本発明は、成分(A)として少なくともパラアミノフェノールを使用する場合に好適である。パラアミノフェノールを本発明の二剤式染毛剤に用いる場合、保存安定性及び染色性能の観点も鑑みて、第1剤と第2剤の混合液中に0.050〜0.50質量%、更には0.10〜0.40質量%、更には0.15〜0.30質量%の範囲で含有する場合に、より好適である。
【0019】
また、本発明の二剤式染毛剤の第1剤には、上記酸化染料以外に、直接染料を含有させることもできる。直接染料としては、パラニトロオルトフェニレンジアミン、パラニトロメタフェニレンジアミン、ベーシックイエロー87、ベーシックオレンジ31、ベーシックレッド12、ベーシックレッド51、ベーシックブルー99、アシッドオレンジ7等を挙げることができる。
【0020】
〔(B):ポリプロピレングリコール〕
成分(B)の重量平均分子量200〜800のポリプロピレングリコールは、吐出する泡のきめ細かさ、適切な気液混合比といった泡質を良好なものとするために用いられる。ポリプロピレングリコールは、好ましくは第1剤に配合され、これにより酸化染料の濃度が濃い場合においても保存安定性を向上することができる。ポリプロピレングリコールの重量平均分子量は、300〜500がより好ましい。ここで、重量平均分子量とは、ゲルパーメェーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量をいう。
【0021】
成分(B)の含有量は、第1剤と第2剤の混合液の泡質を向上すると共に毛髪への良好な塗布性を確保する観点から、当該混合液中の0.50〜3.0質量%であるが、好ましくは0.80〜2.5質量%、更には1.2〜2.0質量%である。
【0022】
〔(C):炭素数が10〜30の直鎖飽和脂肪族アルコール〕
本発明の二剤式染毛剤の混合液が反応熱による温度上昇によっても、フォーマー容器から吐出させる泡のきめ細かさ、気液混合比を適度なものとし、吐出後の泡もちを良くし、毛髪に塗布した後、放置している間の液だれを抑制する効果を高め、しかも低温の起泡性を良好なものとするため、成分(C)として炭素数が10〜30の直鎖飽和脂肪族アルコールを含有させることができる。炭素数が10〜30の直鎖飽和脂肪族アルコールとしては、炭素数が12〜24、特に14〜22のものが好ましい。成分(C)の炭素数が10〜30の直鎖飽和脂肪族アルコールとしては、例えば、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。
【0023】
成分(C)は、二種以上を併用することもでき、第1剤又は第2剤のいずれか一方又は両方に含有させることができる。第1剤と第2剤の混合液中における成分(C)の含有量は、混合液が反応熱によって温度上昇した場合でも、フォーマー容器から吐出させる泡のきめ細かさ、気液混合比を適度なものとし、吐出後の泡もちを良くし、毛髪に塗布した後、放置している間の液だれを抑制する効果を高め、しかも低温の起泡性を良好なものとする観点から、0.50〜0.85質量%、更には0.60〜0.82質量%、更には0.70〜0.79質量%が好ましい。
【0024】
〔界面活性剤〕
フォーマー容器の泡吐出手段によって空気と毛髪化粧料が混合されることで容易に泡が形成され、かつその泡が安定となるようにするため、第1剤と第2剤のいずれか一方、又は両方に界面活性剤を含有させることができる。
【0025】
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル系アニオン界面活性剤;N-アシルアミノ酸塩、N-アシル-N-アルキルアミノ酸塩、アミド型N-アシルアミノ酸塩、エーテルカルボン酸塩、脂肪酸塩、コハク酸アルキル又はコハク酸アルケニルの塩等のカルボン酸系アニオン界面活性剤;スルホコハク酸塩型、イセチオン酸塩型、タウリン塩型、アルキルベンゼンスルホン酸塩型、α-オレフィンスルホン酸塩型、アルカンスルホン酸型等のスルホン酸系アニオン界面活性剤;アルキルリン酸塩、アルキルエーテルリン酸塩等のリン酸エステル系アニオン界面活性剤が挙げられる。これらのうち、カルボン酸系、硫酸エステル系が好ましく、特にカルボン酸系が好ましい。カルボン酸系アニオン界面活性剤の中でも、N-アシルアミノ酸塩、エーテルカルボン酸塩が好ましく、特に、アシル基の炭素数が10〜18、好ましくは10〜16、更には10〜14のN-アシルグルタミン酸塩、アルキル基の炭素数が10〜18、好ましくは10〜16、更には10〜14でオキシエチレン基の平均付加モル数が3〜15、好ましくは3〜12、更には4〜10のポリオキシエチレンアルキルカルボン酸塩が好ましい。
【0026】
非イオン界面活性剤としては、アルキルポリグルコシド、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキルグリセリルエーテル等が挙げられる。アルキルポリグルコシドとしては、アルキル基の炭素数が8〜18、更には8〜14、特に9〜11であるものが好ましく、またこのアルキル基が直鎖であるものが好ましい。グルコシドの平均重合度は1〜5、特に1〜2が好ましい。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、アルキル基の炭素数が10〜22、特に12〜18であるものが好ましく、またこのアルキル基が直鎖であるものが好ましい。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテルがより好ましく、なかでもオキシエチレン基の平均付加モル数が1〜40、特に4〜30であるものが好ましい。アルキルグリセリルエーテルとしては、アルキル基の炭素数が8〜18、特に8〜12であるものが好ましく、またこのアルキル基が分岐鎖であるものが好ましい。
【0027】
カチオン界面活性剤としては、モノ長鎖アルキル4級アンモニウム塩が好ましく、具体的には、セトリモニウムクロリド、ステアルトリモニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリド、ステアラルコニウムクロリド、ベンザルコニウムクロリド等が挙げられ、ステアルトリモニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリドがより好ましい。カチオン界面活性剤の市販品としては、コータミン86W、同86P コンク、同60W、同D2345P(以上、花王社製)、ニッコール CA-2580(日本サーファクタント工業社製)が挙げられる。
【0028】
両性界面活性剤としては、炭素数8〜24のアルキル基、アルケニル基又はアシル基を有するカルボベタイン系、アミドベタイン系、スルホベタイン系、ヒドロキシスルホベタイン系、アミドスルホベタイン系、ホスホベタイン系、イミダゾリニウム系の界面活性剤が挙げられ、なかでもカルボベタイン系界面活性剤、スルホベタイン系界面活性剤が好ましい。好ましい両性界面活性剤としては、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等が挙げられる。
【0029】
界面活性剤としては、液温が低い時でも常温に近い時でも毛髪に塗布しやすい良好な泡立ちを実現するために、アニオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤が好ましい。界面活性剤は二種以上を併用することもでき、第1剤と第2剤の混合液中における含有量は、2〜10重量%であり、好ましくは2.5〜7重量%、特に3〜5重量%である。
【0030】
また、液温が低い時の泡質をより向上させるためには、混合液におけるアニオン界面活性剤の非イオン界面活性剤に対する重量比(アニオン界面活性剤の含有量/非イオン界面活性剤の含有量)が、0.01〜1、特に0.1〜0.5であることが好ましい。
【0031】
〔カチオン性ポリマー〕
本発明の二剤式染毛剤は、第1剤、第2剤のいずれか一方又は両方に、カチオン性ポリマーを含有させることができる。カチオン性ポリマーとは、カチオン基又はカチオン基にイオン化され得る基を有するポリマーをいい、全体としてカチオン性となる両性ポリマーも含まれる。すなわち、カチオン性ポリマーとしては、ポリマー鎖の側鎖にアミノ基又はアンモニウム基を含むか、又はジアリル4級アンモニウム塩を構成単位として含むもの、例えばカチオン化セルロース、カチオン性澱粉、カチオン化グアーガム、ジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体、4級化ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0032】
ジアリル4級アンモニウム塩の重合体又は共重合体の具体例としては、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド重合体(ポリクオタニウム-6、例えばマーコート100;Nalco社)、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド/アクリル酸共重合体(ポリクオタニウム-22、例えばマーコート280、同295;Nalco社)、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド/アクリルアミド共重合体(ポリクオタニウム-7、例えばマーコート550;Nalco社);アクリル酸/ジアリル第四級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合体(ポリクオタニウム-39、例えばマーコートプラス3331;Nalco社)等が挙げられる。
【0033】
4級化ポリビニルピロリドンの具体例としては、ビニルピロリドン(VP)とメタクリル酸ジメチルアミノエチルの共重合体と硫酸ジエチルから得られる4級アンモニウム塩(ポリクオタニウム-11、例えばガフコート734、同755、同755N;アイエスピー・ジャパン社)等が挙げられる。
【0034】
カチオン化セルロースの具体例としては、ヒドロキシエチルセルロースに塩化グリシジルトリメチルアンモニウムを付加して得られる4級アンモニウム塩の重合体(ポリクオタニウム-10、例えばレオガードG、同GP;ライオン社、ポリマーJR-125、同JR-400、同JR-30M、同LR-400、同LR-30M;Amerchol社)、ヒドロキシエチルセルロース/ジメチルジアリルアンモニウムクロリド共重合体(ポリクオタニウム-4、例えばセルコートH-100、同L-200;ナショナルスターチアンドケミカル社)等が挙げられる。
【0035】
これらのうち、構成単位としてジメチルジアリルアンモニウム塩構造を有するポリマー、例えば、ポリクオタニウム-4、ポリクオタニウム-6、ポリクオタニウム-7、ポリクオタニウム-22、ポリクオタニウム-39が好ましく、更にはポリクオタニウム-6、ポリクオタニウム-7、ポリクオタニウム-22、ポリクオタニウム-39が好ましく、特にポリクオタニウム-22が好ましい。
【0036】
カチオン性ポリマーは、水溶性のものが好ましい。またカチオン性ポリマーは、2種以上を併用することもでき、またその含有量は、良好な泡立ち、液だれの防止、フォーマー容器からの良好な吐出性の点から、第1剤と第2剤の混合液中の0.01〜3質量%、更には0.05〜2質量%、特に0.1〜1質量%が好ましい。
【0037】
〔その他の成分〕
その他、第1剤及び第2剤は、目的に応じて、シリコーン類、香料、紫外線吸収剤、エデト酸等の金属封鎖剤、殺菌剤、パラオキシ安息香酸メチル等の防腐剤、フェナセチン、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、硫酸オキシキノリン等の安定化剤、エタノール、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノール等の有機溶剤、ヒドロキシエチルセルロース等の高分子化合物、保湿剤等を含有することができる。また、第1剤及び第2剤の混合液は、水を主たる媒体とすることが好ましい。
【0038】
本発明の二剤式染毛剤は、アルカリ剤を含有する第1剤と、過酸化水素を含有する第2剤を含む二剤式酸化染毛剤として提供される。ここで二剤式とは、これら第1剤及び第2剤に加え、過硫酸塩などを含有する第3剤又はコンディショニング成分等を含有する第3剤を更に混合して用いる三剤式酸化染毛剤をも含むものとする。第1剤と第2剤の混合比は、質量比で1:4〜4:1であることが好ましく、1:3〜1:2が更に好ましい。
【0039】
〔粘度〕
第1剤と第2剤の混合液の粘度は、1〜300mPa・sとされるが、2〜200mPa・s、更には3〜100mPa・s、特に5〜30mPa・sとするのが好ましい。なお、ここでの粘度は、25℃、株式会社トキメック製B型回転粘度計(モデルTV-10)で、ローターNo.1又はNo.2を用い、60rpmで1分間回転させた後の値とする。測定対象が100mPa・s未満の場合はローターNo.1を用い、100〜499mPa・sの場合はローターNo.2を用いて測定する。なお、測定は25℃の恒温槽において測定するものとし、第1剤と第2剤とを混合後ただちに測定するものとし、反応熱による温度変化は無視するものとする。
【0040】
第1剤と第2剤の混合液の粘度が上記範囲となるように調整することにより、塗布しやすい泡体積を実現することができ、かつ混合液が毛髪に塗布された後の垂れ落ちを抑制することができると共に、スクイズフォーマーなどで泡を吐出する際にスクイズしやすくなる。混合液の粘度を前述の範囲に調整するためには、エタノール等の水溶性溶剤を添加したり、あるいは界面活性剤、ポリオール類、高級アルコール等の含有量や種類を適宜調整したりすればよい。
【0041】
〔気液混合比〕
フォーマー容器の泡吐出手段による空気と混合液との気液混合比は、剤の髪への馴染み易さ及び塗り易さの点から、7〜40mL/gが好ましく、15〜30mL/gがより好ましい。なお、ここでの気液混合比は次のようにして測定した値である。
【0042】
まず、25℃で吐出した泡の質量と体積を測定することにより気液混合比を求める。S1スクイズフォーマー容器(大和製罐社、容積210mL、メッシュの粗さ(目開き)は混合室150メッシュ(1インチ(25.4mm)あたり150の桝目)、先端200メッシュ)に混合液を100g入れ、残量が80gの時点から、20gの泡を1000mLのメスシリンダーに吐出し、吐出開始から1分後に泡の体積を測定する。この吐出された泡の容積(mL)を質量20gで割ることにより気液混合比(mL/g)が得られる。
【0043】
〔フォーマー容器〕
本発明において、フォーマー容器は、非エアゾール式の容器であって、第1剤と第2剤の混合液を、噴射剤を使用することなく空気と混合して泡状に吐出させるために使用する。フォーマー容器の使用により、吐出させた剤の飛び散りを防止できるという効果も得られる。特に、非エアゾール式の容器は、エアゾール式の容器に比べて、製品を安価に製造可能であり、高圧ガスの噴射剤が不要であるため、製品を流通においてより安全に取り扱うことができる。
【0044】
フォーマー容器としては、泡吐出手段を有する公知のポンプフォーマー容器、スクイズフォーマー容器、電動式泡立て器、蓄圧式ポンプフォーマー容器等を使用することができる。より具体的には、例えば、ポンプフォーマーE3タイプ、同F2タイプ〔以上、大和製罐社、食品と容器(vol.35, No.10, p588〜593(1994); vol.35, No.11, p624〜627(1994); vol.36, No.3, p154〜158(1995))〕、S1スクイズフォーマー(大和製罐社、特開平7-215352号公報)、電動泡立て器(松下電工社)、エアスプレーフォーマー(エアスプレーインターナショナル社)等が挙げられる。本発明の二剤式泡状染毛剤に用いるフォーマー容器としては、安価で使い勝手が良いことから、ポンプフォーマー容器及びスクイズフォーマー容器が好ましい。
【0045】
ポンプフォーマー容器又はスクイズフォーマー容器は、ネット等の泡生成部分を有するものであり、1剤と2剤との混合液が乾燥固化して目詰まりを起こした場合に、次回の吐出時に泡の流れによって、直ちに固化物を溶解して目詰まりを解消できるという点から薄肉のネットを有することが好ましい。この場合、ネットのメッシュとしては、50〜280メッシュが好ましく、90〜250メッシュがより好ましく、130〜220メッシュがより好ましい。ここで、メッシュとは、1インチ当たりの目の数をいう。この範囲のメッシュのネットを使用することにより、クリーミーな泡を生成することができる。また、このようなネットの材質としては、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、テフロン(登録商標)、カーボンファイバー、ステンレス等を挙げることができ、より好ましくはナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルであり、より好ましくはナイロンである。
【0046】
本発明の二剤式泡状染毛剤において使用するフォーマー容器には、このようなネットを少なくとも一枚、好ましくは複数枚配設し、特に経済性、泡の安定性等の点から混合室と先端との二ヶ所に1枚ずつ配設することが好ましい。
【0047】
フォーマー容器において、内容物に接触する部分(容器内壁,泡吐出手段内壁等)は、アルカリ及び過酸化水素により腐食せず、また、過酸化水素の分解により発生した酸素が透過する材質で構成することが好ましい。
【0048】
第1剤、第2剤及びフォーマー容器からなる本発明の二剤式泡状染毛剤の製品形態としては、第1剤又は第2剤をそれぞれフォーマー容器と別個の容器に充填し、使用時に双方の剤をフォーマー容器に移し入れ、混合するようにしてもよいが、一方の剤をフォーマー容器に充填し、他方の剤を別個の容器に充填し、使用時に、他方の剤をフォーマー容器内に移し入れるようにしてもよい。この場合、第2剤は、過酸化水素の分解によって生じる酸素のために容器内の圧力が上昇することを防止するため、ガス透過性のある容器、特に酸素透過性のある材質(例えば、ポリエチレン)から成るフォーマー容器に充填することが好ましい。一方、第1剤は、酸化染料の酸化を防止するため、酸素が透過し難い容器を用いる必要がある。
【0049】
〔使用方法〕
本発明の二剤式泡状染毛剤を使用して毛髪(特に頭髪)を染色するには、予め毛髪を梳かしておくことが好ましい。これにより、後述する再度泡立てる処理中に毛髪がからみにくくなるので、混合液が飛び散るおそれがない。また、毛髪を梳かした後、染毛剤組成物の適用で汎用されているブロッキング操作を行う必要はなく、更にはブロッキング操作を行わないことが好ましい。これにより、後述する染毛剤組成物を毛髪に適用する操作や再度泡立てる操作がやりやすくなる。次いで、本発明の二剤式染毛剤をフォーマー容器内で第1剤と第2剤を混合する。その容器から吐出される泡状の混合液を、直接毛髪に適用してもよく、手又はブラシなどの道具を使って毛髪に適用してもよい。剤の飛び散りや液ダレを防止する観点から、(手袋をした)手にいったん取った後、毛髪に適用することがより好ましい。
【0050】
塗布後は3〜60分程度、好ましくは5〜45分程度放置する。この際、放置の間の液ダレを一層防止し、毛髪の根元にも混合液を十分に行き亘らせる観点から、毛髪上で再度泡立てることが好ましい。再度泡立てるには、ガスを注入しても、振動機やブラシのような器具を用いても、あるいは指を用いてもよいが、指を用いるのがより好ましい。
【0051】
ここで再度泡立てる時期は、完全に泡が消えた後であってもよく、泡が消える途中であってもよく、あるいは適用した泡が変化する前であってもよい。あるいは泡を適用したい範囲全てに適用完了した後であっても、適用途中であってもよい。再度泡立てるのは、連続的に1回行ってもよく、断続的に複数回繰り返してもよい。
【0052】
これらの操作の後、混合液を洗い流す。その後、適宜シャンプーやリンスをした後水洗して、髪を乾燥させる。
【実施例】
【0053】
実施例1〜9及び比較例1〜6
表1〜3に示す配合組成(質量%)の第1剤と第2剤を調製し、それぞれ容器に封入し、25℃の部屋で液温を25℃とした。第1剤と第2剤を混合比(質量比)1:2で、スクイズフォーマー(大和製罐社、容積210mL、メッシュの粗さは混合室150メッシュ、先端200メッシュ、空気導入路の最狭部の開口面積の合計は0.35mm2、ディップチューブの内径はφ1.7mm)内で混合し、泡状に吐出させた。
下記項目について以下の基準で専門パネラー5名により評価し、平均値を表1〜3の配合組成の下欄に示した。
【0054】
25℃で吐出させた泡の泡質
25℃にて1時間以上保存しておいた第1剤及び第2剤を同一容器内に注入した瞬間から60秒後(実際に染毛を開始すると想定される時間)にスクイズフォーマーにより吐出させたときの泡質を、下記基準に従って評価した。
5:とても保形性が良く、きめ細かな泡
4:保形性が良く、きめ細かな泡
3:ややゆるい、又はきめがやや粗い泡
2:ゆるい、又はきめが粗い泡
1:水っぽい泡、又は大きな泡が多数混じった粗い泡
【0055】
15℃での吐出性
15℃にて1時間以上保存しておいた第1剤及び第2剤を同一容器内に注入した瞬間から60秒後(実際に染毛を開始すると想定される時間)にスクイズフォーマーにより吐出させたときのスクイズのしやすさを、下記基準に従って評価した。
5:スクイズがとてもしやすい
4:スクイズがしやすい
3:どちらともいえない
2:スクイズするときにやや力がいる
1:スクイズするときに力がいる
【0056】
15℃で吐出させた泡の泡質
15℃にて1時間以上保存しておいた第1剤及び第2剤を同一容器内に注入した瞬間から60秒後(実際に染毛を開始すると想定される時間)にスクイズフォーマーにより吐出させたときの泡質を、下記基準に従って評価した。
5:とても保形性が良く、きめ細かな泡
4:保形性が良く、きめ細かな泡
3:ややゆるい、又はきめがやや粗い泡
2:ゆるい、又はきめが粗い泡
1:水っぽい泡、又は大きな泡が多数混じった粗い泡
【0057】
35℃で吐出させた泡の泡質
35℃にて1時間以上保存しておいた第1剤及び第2剤を同一容器内に注入した瞬間から60秒後(均一に混合するのに要する時間)にスクイズフォーマーにより吐出させたときの泡質を、下記基準に従って評価した。
5:保形性が良く、しっかりした泡
4:ややゆるい泡
3:ゆるい泡
2:かなりゆるい泡
1:泡状にならず、液状
【0058】
染毛性
25℃で吐出させた泡1gを、ビューラックス社製中国人白髪のトレスBM-W(A)(10cm、1g)に押し当てるようにして塗布し、均一になじませた。20分間放置した後、トレスを軽く水洗、シャンプーし、乾燥後、染毛前後の色差ΔEを算出した。
【0059】
均染性
髪をあごのラインで切り揃えるようにカットしたウイッグ(ビューラックス社、No.755s、毛髪全体の質量を約70gにした)に、25℃で吐出させた泡70gを押し当てるようにして塗布し、均一になじませた。20分間放置した後、ウイッグを軽く水洗、シャンプーし、乾燥した。均染性について、下記基準に従って評価した。
5:色ムラが無く、極めて均一な染まり
4:ほとんど色ムラが無く、均一な染まり
3:どちらともいえない
2:やや色ムラが見られる
1:色ムラが大きい
【0060】
塗布性
前述の均染性の評価をする際に、泡の塗りやすさについて、下記基準に従って評価した。
5:毛髪の上に泡を押し当てるだけで根元までしっかり剤がなじむ
4:手グシで簡単に剤を根元までなじませることができる
3:どちらともいえない
2:毛量の多い後頭部の根元等、場所によって剤がなじみにくい場合がある
1:なじみが悪く、根元などを塗り残す
【0061】
明るさ
25℃で吐出させた泡1gを、ビューラックス社製中国人黒髪のトレスBS-B(A)(10cm、1g)に押し当てるようにして塗布し、均一になじませた。20分間放置した後、トレスを軽く水洗、シャンプーし、乾燥後、明度L*を算出した。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
以上の評価結果より、ポリプロピレングリコール(重量平均分子量400)を本発明において規定される量配合した実施例1〜9では、配合量が限界値に近い場合、評価結果がわずかに低下する傾向が見られたが、全ての項目において良好な性能を有していた。また、染毛性及び明るさについても、性能の低下は見られなかった。
これに対して、比較例1〜6において、ポリプロピレングリコール(重量平均分子量400)の配合量を規定量よりも少なくした例(比較例1)では、15℃の泡質及び吐出性において、性能低下が見られ、同配合量を過剰にした例(比較例2)では、25℃及び35℃の泡質、並びに塗布性で、性能低下が見られた。
また、成分(B)のポリプロピレングリコール(重量平均分子量200〜800)に代えて、ポリプロピレングリコール(重量平均分子量1000)を配合した例(比較例3)、ポリエチレングリコール(重量平均分子量300)を配合した例(比較例4)、ジプロピレングリコールを配合した例(比較例5)では、15℃の泡質及び吐出性で、良好な性能が得られなかった。
また、酸化染料を配合しない例(比較例6)では、25℃及び15℃の泡質、並びに15℃の吐出性で良好な性能が得られなかった。これは、本処方が更に酸化染料を含有することを前提とした処方だからである。すなわち、酸化染料が配合されていないと、酸化染料による反応熱が発生しないので、吐出する瞬間での温度が上昇せず、反応熱の発生を前提とした処方では良好な性能とはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ剤を含有する第1剤と過酸化水素を含有する第2剤、及び第1剤と第2剤の混合液を泡状に吐出するノンエアゾールフォーマー容器からなり、混合液中に次の成分(A)及び(B)を含有し、前記過酸化水素の混合液中の含有量が3.60質量%以上、混合液の25℃における粘度が1〜300mPa・sである二剤式染毛剤。
成分(A):酸化染料
成分(B):重量平均分子量200〜800のポリプロピレングリコール 0.50〜3.0質量%
【請求項2】
更に、次の成分(C)を混合液中に0.50〜0.85質量%含有する請求項1記載の二剤式染毛剤。
成分(C):炭素数が10〜30の直鎖飽和脂肪族アルコール
【請求項3】
成分(A)の酸化染料としてパラアミノフェノールを混合液中に0.050〜0.50質量%含有する請求項1又は2記載の二剤式染毛剤。
【請求項4】
成分(A)としての混合液中の合計含有量が0.10〜1.8質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の二剤式染毛剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の二剤式染毛剤の第1剤と第2剤の混合液の泡を毛髪に適用し、3〜60分放置後、洗い流す染毛方法。

【公開番号】特開2011−132213(P2011−132213A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194570(P2010−194570)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】