説明

二層触媒と、その製造方法と、ナノチューブの製造でのその使用

【課題】二層触媒と、その製造方法とナノチューブの製造での使用。
【解決手段】本発明はナノチューブ、特にカーボンナノチューブ製造用触媒材料に関する。本発明触媒材料は2つの重ね合わされた触媒層を支持する多孔質基材を含む固体粒子の形をしており、第1層は基材上に直接配置され、周期律表のVIB族の少なくとも一種の遷移金属、好ましくはモリブデンを含み、第2触媒層は第1層上に配置され、鉄を含む。本発明はこの触媒材料の製造方法と、この触媒材料を用いたナノチューブの合成方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な二層触媒に関するものである。
本発明はさらに、上記二層触媒の製造方法と、ナノチューブ、特にカーボンナノチューブの製造でのその使用とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
担持遷移金属触媒、特にカーボンナノチューブ(CNT)粉末製造用触媒に焦点を当てた研究が数多くなされている。CNTは揮発性で取り扱いの難しいカーボンブラック粉末のあらゆる用途における代替物として最近集中的な研究の対象となっている。さらに、CNTはそれを含む複合材料に低含有量で粉末状カーボンブラックに少なくとも等しい優れた機械特性と電気および/または熱伝導特性を与えるという利点も有する。その優れた機械特性、特に耐伸び性の一部は(長さ/直径)アスペクト比が極めて高いことに関係する。
【0003】
CNTは縦方向軸線に対して同心に巻かれた一枚または複数枚のグラファイトシートから成る。単一シートから成るナノチューブとしてはSWNT(単一壁ナノチューブ)が挙げられ、複数の同心シートから成るナノチューブとしてはMWNT(多重壁ナノチューブ)が挙げられる。一般にSWNTはMWNTより製造が難しい。カーボンナノチューブは種々の方法、例えば放電、レーザーアブレーションまたは化学的蒸着法(CVD)または物理的蒸着(PVD)で製造できる。
【0004】
CNTの品質、CNTの特徴の再現性および生産性の観点から最も有望なCNTの製造方法はCVD法であると本発明者は考える。この方法では高温にした金蔵触媒を入れた反応器に炭素を多く含むガス源を噴射する。ガス源が金属と接触すると黒鉛平面のCNTと水素とに分解する。触媒は一般に顆粒の形をした化学的に不活性な固体基材、例えばアルミナ、シリカ、マグネシアまたは炭素で構成される固体基材上に担持された触媒金属、例えば鉄、コバルトまたはニッケルからなる。一般に用いられる炭素ガス源はメタン、エタン、エチレン、アセチレンまたはベンゼンである。
【0005】
このCVD法を記載した文献の例としてはHyperion Catalysis International Inc.の特許文献1(国際特許第WO 86/03455号公報)が挙げられる。この特許はCNT合成に関する基本特許の一つとみなすことができ、直径が3.5〜70nmで、アスペクト比が100以上のほぼ円筒形のカーボンフィブリル(CNTの旧称)とその製造方法が記載されている。この合成法では炭素を含む気体化合物、例えば炭化水素を鉄含有触媒(例えばFe34、炭素担体上のFe、アルミナ担体上のFe、カーボンフィブリル担体上のFe等)と接触させる。この合成は850℃〜1200℃の範囲で選択される温度で行う。触媒は乾式含浸、沈殿、湿式含浸で調製される。
【0006】
連続流動床等のプロセスの改良法(例えばTsinghua Universityの特許文献2(国際特許第WO 02/94713 A1号公報)および特許文献3(フランス国特許第2 826 646号公報、INPT))も知られている。これらでは触媒および生成カーボン材料の凝集状態を制御することができる。
【0007】
触媒の改良に焦点を当てた研究、特に種々の触媒金属の組合せも多数ある。Hyperion Catalysis International Inc.の特許文献4(米国特許第2001/00036549号明細書)にはFe/MoおよびFe/Cr型の担持バイメタル触媒が記載されている。この文献では約1〜2質量%のモリブデンの添加によって500〜1500℃の温度で鉄モノメタル触媒に対して生産性を2倍にできる。しかし、2.5質量%を超える添加では生産性が下がることが示されている。
【0008】
特許文献5(米国特許第2008/0003169号明細書)には生産性が改善されたFe/Mo/アルミナ型触媒が記載されている。しかし、この触媒は担持触媒の構造とは異なる構造を有する。すなわち、この触媒は鉄塩およびモリブデン塩の溶液とアルミニウム塩の溶液との共沈で得られる。
【0009】
本発明者は特許文献6(国際特許出願第WO 2006/082325号公報)で数種類の金属を組み合わせることができる新規タイプの担持触媒を提案した。しかし、この文献ではFe/アルミナ触媒の実施例のみしか記載がない。
【0010】
特許文献7(欧州特許第2 077 251号公報)には単一壁カーボンナノチューブ製造用の担持触媒が開示されている。この担持触媒は非多孔質アルミナをベースにした担体で被覆された石英ガラスまたはコージライトから成る平らな基材から成る。担体上に所定プロセスによって触媒金属(モリブデンおよび鉄)を堆積させる。触媒金属は薄層を形成する。この特許文献7の触媒は触媒活性が低く、厚さが10μmを超えないカーボンナノチューブのフィルムが形成される。
【0011】
上記のように種々の方法が開発されているが、触媒を用いたCNT合成反応の生産性をさらに改良できる新規な触媒に対するニーズがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際特許第WO 86/03455号公報
【特許文献2】国際特許第WO 02/94713 A1号公報
【特許文献3】フランス国特許第2 826 646号公報
【特許文献4】米国特許第2001/00036549号明細書
【特許文献5】米国特許第2008/0003169号明細書
【特許文献6】国際特許出願第WO 2006/082325号公報
【特許文献7】欧州特許第2 077 251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者は、「コア−シェル」型の構造体を有する担持触媒を用いることで上記の改良が可能になるということを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、ナノチューブ、特にカーボンナノチューブ製造用の触媒材料を提案することにある。本発明の触媒材料は固体粒子の形をしており、この粒子は2つの重ね合わされた触媒層を支持する多孔質基材を含み、好ましくはこの多孔質基材のみから成り、第1層(「コア」とよばれる)は基材上に直接配置され、周期律表のVIB族の少なくとも一種の遷移金属、好ましくはモリブデンを含み、第2層(「シェル」とよばれる)は第1層上に配置され、鉄を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】カーボンナノチューブのフィルムで被覆された本発明触媒粒子を示す写真。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の「少なくとも一種の金属」とは一種以上の金属を意味する。「鉄」および「遷移金属」とは元素状態すなわち0酸化状態か、酸化状態の金属を意味する。しかし、これら金属は主として元素状態であるのが好ましい。
本発明の触媒材料は多孔質基材上に配置されたコア−シェル構造体を有する。
【0017】
第1層またはコア中に存在する遷移金属はクロム、モリブデン、タングステンまたはこれらの混合物であるのが好ましい。モリブデンを用いるのが有利である。カーボンナノチューブの合成ではこれらの触媒金属が反応を開始する役目をすることが知られている。従って、その存在はカーボンナノチューブの合成反応の開始に有用である。第2層またはシェル中に存在する鉄はそれ自体、カーボンナノチューブの鎖の延長時に役目を有するものとして知られている。本発明者は、CNTの合成は触媒の内側から外側へ起こるということを観察した。理論に縛られるものではないが、開始触媒金属を開始の起こる触媒材料の部分すなわち触媒材料の内側により近く配置し、鎖延長触媒金属をより外側に配置することによってCNTの合成が良くなると本発明者は考える。
【0018】
コアは、周期律表のVIB族の遷移金属に加えて、鉄をさらに含むことができる。この場合、コア中の鉄の量(質量)は周期律表のVIB族の遷移金属の量(質量)より少なくすることができる。同様に、シェルは鉄に加えて周期律表のVIB族の遷移金属、好ましくはモリブデンをさらに含むことができる。この場合、シェル中の周期律表のVIB族の遷移金属の量(質量)は一般に鉄の量(質量)より少なくする。
【0019】
本発明の一つの有利な実施例では、本発明触媒は唯一の触媒金属としてモリブデンを含む第1触媒層を含み(さらにはこの層のみで構成され)、この第1触媒層上に唯一の触媒金属として鉄を含む第2触媒層を堆積させる。
本発明の触媒材料の鉄含有量は触媒材料の全質量の少なくとも25質量%、好ましくは30〜40質量%である。
周期律表のVIB族の遷移金属、好ましくはモリブデンの含有量は、触媒材料の全質量の0.5〜10質量%、特に1.5〜8質量%、好ましくは2〜4質量%である。
多孔質基材のBET比表面積は50m2/g以上、好ましくは70〜400m2/gであるのが有利である。BET比表面積は基材に吸収される窒素の量で測定でき、この方法は当業者に周知である。
【0020】
基材はCVD合成プロセスの運転条件下で遷移金属および鉄および気体状態の炭素源に対して不活性すなわち化学的に不活性であるのが好ましい。この基材は無機材料で作るのが有利である。この基材は特に触媒材料の50〜85質量%、例えば52〜83.5質量%である。
【0021】
基材はアルミナ、活性炭、シリカ、ケイ酸塩、マグネシア、酸化チタン、ジルコニア、ゼオライトまたは炭素繊維から選択できる。一つの有利な実施例では、基材はアルミナ、例えばガンマ型またはシータ型のアルミナである。
基材粒子および触媒材料粒子のマクロ形状がほぼ球形であることができ、そうでなくてもよい。本発明は触媒粒子が相対的にフラットな形(フレーク、平板等)および/または細長い形(シリンダ、ロッド、リボン等)にも適用できる。いずれの場合も、基材は微粉末状で、凝集体ではなく、特に平面状ではない。
【0022】
本発明では粒子の上記形状および寸法が触媒材料の流動床の形成するのに適している。実際に合理的な生産性を確実にするための基材粒子の寸法は20〜500ミクロン、好ましくは75〜150ミクロンの大きさを有するのが好ましい。この粒径は乾式または湿式のレーザー粒径分析で測定できる。
【0023】
本発明の一実施例では、触媒材料は単峰型粒度分布を有する球形粒子の形をしている。粒子の相当径は触媒材料の粒子の平均径の80〜120%である。変形例では、粒子は相当径が30〜350%の二峰型粒度分布を有することができる。
【0024】
本発明の触媒材料はモリブデンコアを支持するアルミナ粒子を含み、このコア上には鉄のシェルが配置される。各成分の質量百分率は触媒材料の全質量に対して鉄32%、モリブデン2%およびアルミナ66%であるのが有利である。
【0025】
本発明は上記触媒材料を製造する方法よも関するものである。本発明方法は周期律表のVIB族の遷移金属の塩、好ましくはモリブデン塩を含む含浸溶液を基材に含浸する第1段階と、鉄塩を含む含浸溶液を基材に含浸する第2段階とを含む。各含浸溶液はアルコール溶液または水溶液にすることができる。鉄塩は硝酸鉄、特に硝酸鉄九水和物にすることができる。モリブデン塩はモリブデン酸アンモニウム、特にモリブデン酸アンモニウム四水和物にすることができる。第1含浸溶液はモリブデン酸アンモニウム水溶液であり、第2溶液は硝酸鉄九水和物の水溶液であるのが有利である。
【0026】
各浸段階は乾燥ガス流下、好ましくは空気流下で行うのが好ましい。各含浸はインシチュー(in-situ、その場)で測定し温度が100〜150℃、好ましくは約120℃で行う。基材または下側層と常時接触する含浸溶液の量は一般に基材または下側層の粒子の表面上にフィルムを確実に形成するのに十分な量である。
【0027】
本発明の触媒材料の製造方法は、含浸段階の後に、インシチュー(in-situ、その場)で測定した温度が150〜250℃で行う乾燥段階と、有利にはその後に行う脱窒段階と、好ましくはインシチュー(in-situ、その場)で測定した温度が350〜450℃で行う不活性雰囲気下での脱窒段階とをさらに含む。
【0028】
本発明は本発明方法で得られる触媒材料にも関するものである。
本発明はさらに、珪素、炭素または硼素およびこれら元素の混合物(必要に応じて窒素と結合されるか、窒素ドープされていてもよい)から選択される材料のナノ粒子の製造方法において、本発明の触媒材料の少なくとも一つを用いることを特徴とする方法にも関するものである。
【0029】
本発明方法は気体状態の炭素源の熱分解によってカーボンナノチューブを選択的に製造する反応であるのが有利である。すなわち、本発明は特に、下記の段階を含む、気体状態の炭素源の分解によるカーボンナノチューブの製造方法に関する:
(a)上記定義の触媒材料を反応装置、特に流動床に導入する段階、
(b)触媒材料を620〜680℃、好ましくは約650℃の温度に加熱する段階、
(c)(b)段階で得た触媒材料と炭素源(アルカンまたはアルケン)、好ましくはエチレンとを接触させ、炭素源の触媒分解によってカーボンナノチューブと水素とを触媒材料の表面に生成する段階、
(d)(c)で製造されたカーボンナノチューブを回収する段階。
【0030】
炭素源はアルカン、例えばメタンまたはエタンまたはアルケン、好ましくはエチレン、イソプロピレン、プロピレン、ブテン、ブタジエンおよびこれらの混合物を含む群の中から選択できる。この炭素源は特許文献8(欧州特許第1 980 530号公報)に記載の再生可能な起源のものにすることができる。用いるアルケンはエチレンであるのが好ましい。
【特許文献8】欧州特許第1 980 530号公報
【0031】
本発明では(c)段階で炭素源、好ましくはエチレンを水素流と混合するのが有利である。
【0032】
この場合、炭素源/水素比は90/10〜60/40、好ましくは70/30〜80/20にすることができる。(c)段階はエチレン/水素混合物の比を75/25にして実施するのが有利である。
各段階は同一反応装置で同時にまたは連続的に実施するのが好ましい。
本発明方法はカーボンナノチューブの製造に悪影響を及ぼさない限り、その他の段階(予備、中間または後処理段階)をさらに含むことができる。
【0033】
触媒材料はCNT合成反応器内でインシチュー(in-situ、その場)で還元し、触媒を使用する時に触媒層が還元状態にするのが有利である。
また、必要に応じて、(d)段階の前または後に反応器に対してインシチューまたはエックスシチューでナノチューブをミリングする段階を設けることもできる。さらに、(d)段階の前または後にナノチューブを化学的および/または熱的に精製する段階を設けることもできる。
【0034】
本発明方法の生産性は高く、常に20以上、さらには25以上である。この生産性は生成した炭素の質量と用いた触媒の質量との比で計算される。また、本発明方法で作ったカーボンナノチューブは従来プロセスのものよりも凝集しにくい。
【0035】
本発明はさらに、上記方法で得られるカーボンナノチューブにも関するものである。このカーボンナノチューブは例えば5〜15枚、好ましくは7〜10枚の同心に巻かれたグラフェンシートを含む多重壁ナノチューブであるのが有利である。本発明で得られたナノチューブは一般に平均直径が0.1〜200nm、好ましくは0.1〜100nm、さらに好ましくは0.4〜50nm、さらに好ましくは1〜30nmで、長さは0.1μm以上、有利には0.1〜20μm、例えば約6μmであるのが有利である。長さ/直径比は10以上、大抵は100以上であるのが有利である。比表面積は例えば100〜600m2/gで、かさ密度は0.01〜0.5g/cm3、さらに好ましくは0.07〜0.2g/cm3にすることができる。
【0036】
本発明の別の対象は上記方法で得られたカーボンナノチューブの、電気および/または熱伝導特に優れ、および/または機械特性、特に耐延長性に優れた複合材料での使用にある。特に、CNTは電子部品の包装用高分子組成物または燃料パイプまたは帯電防止皮膜または塗料の製造用高分子組成物、あるいは、超コンデンサのサーミスタまたは電極または航空、船舶または自動車分野の構造部品の製造で使用できる。
【0037】
以下、添付図面を参照して本発明をさらに詳細に説明するが、下記実施例は単に説明のためのもので、本発明が下記実施例に限定されるものではない。添付図面はカーボンナノチューブのフィルムで被覆された本発明の触媒粒子を示す。
【実施例】
【0038】
実施例1
25Fe3Mo7Fe/Al2O3触媒を、メジアン径が約85μmで比表面積が160m2/gであるPuralox(登録商標)SCCa-5/150アルミナから調製する。120℃に加熱したジャケットを備えた1リットル反応器に、100gのアルミナを導入し、反応器を空気でパージする。ポンプを用いて535g/lの硝酸鉄九水和物と60g/lのモリブデン酸アンモニウム四水和物とを含む150mlの硝酸鉄とモリブデン酸アンモニウムとの溶液を注入し、次いで535g/lの硝酸鉄九水和物を含む520ml硝酸鉄の溶液を続けて注入する。目標の比(金属の質量/触媒の質量)が鉄32%でモリブデン3%であるので、添加時間を25時間に設定する。次いで、触媒を乾燥空気のパージ下、220℃、インシチューで8時間加熱し、次いで、400℃のマッフル炉に8時間入れる。
【0039】
実施例2(比較例)
実施例1の条件下で、最初に520mlの硝酸鉄溶液を、次いで、150mlの硝酸鉄とモリブデン酸アンモニウムとの溶液を注入して32%の鉄と3%のモリブデンとを含む3Mo7Fe25Fe/Al2O3触媒を調製する。
【0040】
実施例3
実施例1の条件下で、最初に60g/lのMoを含む90mlのモリブデン酸アンモニウムの溶液を、次いで、650mlの535g/lの硝酸鉄溶液を注入して32%の鉄と2%のモリブデンとを含む32Fe2Mo/Al2O3触媒を調製する。
【0041】
実施例4(比較例)
32Fe/Al2O3触媒をメジアン径が約85μmで比表面積が160m2/gであるPuralox(登録商標)SCCa-5/150アルミナから調製する。120℃に加熱したジャケットを備えた1リットル反応器に、100gのアルミナを導入し、反応器を空気でパージする。ポンプを用いて、次いで、535g/lの硝酸鉄九水和物を含む630mlの硝酸鉄溶液を連続注入する。目標の比(金属の質量/触媒の質量)は32%であるので、添加時間を25時間に設定する。次いで、触媒を乾燥空気のパージ下、220℃、インシチューで8時間加熱し、次いで、400℃のマッフル炉に8時間入れる。
【0042】
実施例5
直径が5cmで実効高が1m反応器に、質量が約2.3gの触媒を層にして入れ、触媒試験を実施する。触媒を650℃で2.66l/分の窒素下に30分間加熱し、次いで、2 l/分の窒素および0.66 l/分の水素下に30分間還元状態に維持する。この保持の終了後、エチレンを2l/分の流量で、また水素を0.66l/分の流量で導入する。60分後、加熱を停止し、反応器を2.66l/分の窒素流下に冷却する。約2gの複合材料を800℃で6時間焼成した後に残った質量を求め、生成物の量を評価する。
【0043】
【表1】

【0044】
本発明触媒を用いると比較例の触媒よりも高い活性のカーボンナノチューブを高い生産性で得ることができる。
【0045】
添付図面は上記方法と同様な方法で作ったカーボンナノチューブのフィルムで被覆された本発明触媒粒子を示す。この図からわかるように、ナノチューブのフィルムは厚さが100μm以上である。試験したサンプル全体をより良く表すフィルム厚さの値を得るために、反応終了時に触媒粒子の粒径分析を行った。反応前の触媒粒子の平均径(D50)を減算した後、そこから、ナノチューブのフィルムの平均厚さがこのサンプル場合は約200μmであることを導いた。
【0046】
本発明で得られたナノチューブをポリマーマトリックスに導入することで機械的および/または熱的および/または伝導特性が改良された複合材料を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノチューブ、特にカーボンナノチューブの製造用の触媒材料であって、この材料は固体粒子の形であり、この粒子は2つの重ね合わされた触媒層を支持する多孔質基材を含み、第1層は基材上に直接配置され且つ周期律表のVIB族からの少なくとも一種の遷移金属、好ましくはモリブデンを含み、第2層は第1層上に配置され且つ鉄を含む触媒材料。
【請求項2】
第1層が鉄をさらに含み、および/または第2層が周期律表のVIB族からの遷移金属、好ましくはモリブデンをさらに含む請求項1に記載の触媒材料。
【請求項3】
唯一の触媒金属としてモリブデンを含む第1触媒層を含み、この第1触媒層に唯一の触媒金属として鉄を含む第2触媒層を堆積させる請求項1に記載の触媒材料。
【請求項4】
鉄含有量が触媒材料の全質量の少なくとも25%、好ましくは30〜40質量%である請求項1〜3のいずれか一項に記載の触媒材料。
【請求項5】
周期律表のVIB族からの遷移金属の含有量が、触媒材料の全質量の0.5〜10%、特に1.5〜8%、好ましくは2〜4質量%である請求項1〜4のいずれか一項に記載の触媒材料。
【請求項6】
多孔質基材のBET比表面積が50m2/g以上、好ましくは70〜400m2/gである請求項1〜5のいずれか一項に記載の触媒材料。
【請求項7】
基材が、アルミナ、活性炭、シリカ、ケイ酸塩、マグネシア、酸化チタン、ジルコニア、ゼオライトおよび炭素繊維から選択され、好ましくは基材がアルミナである請求項1〜6のいずれか一項に記載の触媒材料。
【請求項8】
基材粒子の寸法がより大きく、20〜500ミクロン、好ましくは75〜150ミクロンである請求項1〜7のいずれか一項に記載の触媒材料。
【請求項9】
基材がアルミナで作られ、基材がモリブデンの第1層を支持し、この第1層上には鉄の第2層が配置され、且つ、各種成分の質量百分率が触媒材料の全質量に対して鉄32、モリブデン2およびアルミナ66である請求項3〜8のいずれか一項に記載の触媒材料。
【請求項10】
周期律表のVIB族からの遷移金属の塩、好ましくはモリブデン塩を含む第1含浸溶液、次いで、鉄塩、好ましくは硝酸鉄を含む第2含浸溶液を基材に含浸して請求項1〜9のいずれか一項に記載の触媒材料を製造する方法であって、これらの含浸はそれぞれ乾燥ガス流下で行うのが好ましい方法。
【請求項11】
各含浸を、インシチュー(in-situ、その場)で測定した、100〜150℃の温度で行う請求項10に記載の方法。
【請求項12】
基材または下にある層と常時接触する含浸溶液の量が、基材または下にある層の粒子の表面にフィルムを確実に形成するのに過不足なく十分である請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
含浸段階の後に、インシチュー(in-situ、その場)で測定した150〜250℃の温度で乾燥する段階、必要に応じてさらに、脱窒段階、好ましくはインシチュー(in-situ、その場)で測定した350〜450℃の温度で不活性雰囲気下に脱窒する段階を含む請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
下記の段階を含む、ナノチューブ、特にカーボンナノチューブの製造方法:
(a)請求項1〜9のいずれか一項に記載のまたは請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法で製造された触媒材料を反応器に導入する、特に流動床に入れる段階、
(b)620〜680℃、好ましくは約650℃の温度で触媒材料を加熱する段階、
(c)炭素源、好ましくはエチレンを(b)段階で得られた触媒材料と接触させて、炭素源の触媒分解によってカーボンナノチューブと水素とを触媒の表面に生成する段階、
(d)(c)で製造されたカーボンナノチューブを回収する段階。
【請求項15】
炭素源を(c)段階で水素流と混合する請求項14に記載の方法。
【請求項16】
炭素源/水素比が90/10〜60/40、好ましくは70/30〜80/20である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
エチレンを炭素源として用い、エチレン/水素比が75/25である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項14〜17のいずれか一項に記載の方法で得られるカーボンナノチューブ。
【請求項19】
改良された電気および/または熱伝導特性および/または改良された機械特性、特に耐延長性を与えるための複合材料中での請求項18に記載のカーボンナノチューブの使用。
【請求項20】
電子部品を包装するためのまたは燃料パイプまたは帯電防止皮膜または塗料を製造するための高分子組成物中での、あるいは、超コンデンサのためのサーミスタまたは電極内でのまたは航空、船舶または自動車分野における構造部品の製造での請求項19に記載のカーボンナノチューブの使用。

【図1】
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【公表番号】特表2013−502309(P2013−502309A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525192(P2012−525192)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051717
【国際公開番号】WO2011/020971
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【出願人】(506428713)アンスティテュ ナショナル ポリテクニーク ドゥ トゥールーズ (5)
【Fターム(参考)】