説明

二成分系繊維上の耐光堅牢性を有する染色物

分散染料を用いた、熱力学的に相溶するポリオレフィン及びポリアミドから構成される複数成分系繊維上の染色物の耐光堅牢度を改良する方法であって、当該複数成分系繊維が、ベンゾトリアゾール誘導体を用いて処理されることを特徴とする方法が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数成分系繊維を染色するため、特に、二成分系繊維及び三成分系繊維を染色するための方法に関し、当該染色物は、耐光堅牢度が特に優れている。本発明はまた、それらにより染色された耐光堅牢性を有する複数成分系繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
未変性のポリオレフィン繊維、特にポリプロピレン(PP)繊維は、堅牢度が非常に低い超(extremely)パールシェードにおいてのみ、通常の分散染料を用いて染色することができる。可染性を向上させるための先行技術の手段には、一方では、ポリオレフィン繊維(特にポリプロピレン(PP)繊維)を化学変性することが含まれ、そして他方では、変性された又は新規に合成された染料を用いることが含まれる。
【0003】
特公平10−331034号公報は、コア成分中の一定量のフェノール系酸化防止剤を含み、かつシース成分に一定量のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を含むことによる、繊維それ自体の耐熱性及び耐候性を改良されたテキスタイル向けの繊維として好適であり、かつ優れた水分吸収特性及び水分放出特性を有する繊維に関する。二成分系繊維に対する耐光堅牢性染色に関しては、何も開示されていない。
【0004】
欧州特許第445076号明細書は、分散剤として変性したリグニンスルホネートを利用するベンゾトリアゾール系紫外線(U.V.)吸収剤の安定な分散液、ベンゾトリアゾール系U.V.吸収剤を分散する方法、当該安定な分散液を利用してテキスタイルを保護する方法、及び任意の未分散のU.V.吸収剤をろ過し、沈殿が生ずることを避ける安定な分散液を用いて処理したテキスタイルに関する。二成分系繊維に対する耐光堅牢性染色に関しては、何も開示されていない。
【0005】
欧州特許第474595号明細書は、UVを吸収するベンゾトリアゾール化合物の安定な水性分散液に関し、これらの分散液は、合成繊維、特にポリエステル繊維又は酸により変性ポリエステル繊維上の染色物の耐光堅牢度を改良するための優れた組成物である。しかし、二成分系繊維に対する耐光堅牢性染色に関しては、何も開示されていない。
米国特許第5221287号明細書は、酸性及び塩基性染料に親和性を有するポリアミド繊維、当該繊維間のブレンド並びに当該繊維及び他の繊維のブレンドの光化学安定化及び熱安定化のための方法に関する。しかし、二成分系繊維に対する耐光堅牢性染色に関しては、何も開示されていない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
ポリエステル繊維の染色用にも用いることができる染料の好適なプロセス管理及び好適な分散液により、当該染色物をさらに処理(当該処理は、特に、ベンゾトリアゾール誘導体を用いて実施される)した場合に、良好な耐光堅牢性染色結果が得られることは明らかである。
【0007】
分散染料を用いた複数成分系繊維の染色物(特に、熱力学的に相溶する(thermodynamically compatible)ポリオレフィン及びポリアミドから構成される二成分系繊維の染色物に関する)は、当該複数成分系繊維をベンゾトリアゾール誘導体で処理すると、高い耐光堅牢度を有することが見出された。
【0008】
本発明はまた、本発明の方法により染色された耐光堅牢性を有する複数成分系繊維に関する。
本発明はまた、染色された複数成分系繊維(特に、熱力学的に相溶性を有するポリオレフィン及びポリアミドから構成される二成分系繊維の染色物に関する)の耐光堅牢度を向上させるためにベンゾトリアゾール誘導体を用いることに関する。
【0009】
本発明に従う複数成分系繊維は、平行(side−by−side)繊維(2種又は3種以上のポリマーが、ブレンドされることなく、かつ異なる繊維となることなく平行して、それにより結合し、そして単一の繊維を形成する)、シースコア繊維(第一のポリマーがコア部分を構成し、そして第二のポリマーが当該第一のポリマーの周囲のシースを形成し、そして所望によりさらなるポリマーが、内部のコア及びシース構造体の周囲のシースを形成する)、又は海島(islands−in−a−sea)繊維(第一のポリマーの複数のコア部分が、第二のシースポリマーにより囲まれている)である。上記シースコア繊維及び海島繊維は、好ましい複数成分系繊維であるが、上記シースコア繊維は、より好ましい繊維である。好ましいシースコア繊維では、上記シースは、上記コア部分の周りに同心円状に配置されている。
【0010】
好ましい複数成分系繊維(特に、二成分系繊維)は、熱力学的に相溶するポリオレフィン及びポリアミド、特に、ポリプロピレン、変性されたポリアミド(PA)及びポリアミドから成る。好ましい複数成分系繊維、又はさらに正確には、二成分系繊維は、ポリフィラメント状(polyfilamentary)の特徴を有する。
【0011】
さらに好ましい複数成分系繊維(特に、二成分系繊維)は、他のポリマー(好ましくは、ポリオレフィン)により覆われている一種のポリマー(好ましくは、ポリアミド)のコアから成る。熱力学的に相溶するポリプロピレン及びポリアミド(特に、ポリプロピレン及びナイロン6(PP/N6))から構成される繊維は、1種のポリマー(好ましくは、ポリアミド)の細いフィラメントが、他のポリマー(好ましくは、ポリオレフィン)のマトリックス内に形成されるように、一般的な紡績法により製造されている。2種の溶融物が、同時に吐糸管口に供給されると、2成分系フィラメントが得られる。2つの同心の穴を有する吐糸管により、2種の溶融物からシースコアフィラメント(2成分系シースコア繊維)が生ずる。
【0012】
PA及びPPの間の付着を改良するために、アイオノマー(TM)、無水マレイン酸又はポリエステルを利用することができる。種々の成分間の相溶性を向上させるためのこれらの薬剤は、最大10重量%の量で存在することができ、3〜8重量%が好ましい。
本発明による好ましい複数成分系繊維(特に、二成分系繊維)は、上記複数成分系繊維又は二成分系繊維の1成分を染色し、そしてベンゾトリアゾール誘導体を、これらの他の部分に適用する。当該染料及びベンゾトリアゾール誘導体は、上記複数成分系繊維の同一成分の中には配置されない。
【0013】
本発明による好ましい複数成分系繊維(特に、二成分系繊維)は、複数成分系繊維又は二成分系繊維のコア部分を染色し、そしてベンゾトリアゾール誘導体を、シース部分に適用する。本発明に従う好ましい複数成分系繊維は、二成分系繊維である。
【0014】
好ましいベンゾトリアゾール誘導体は、次の式(I)のベンゾトリアゾール誘導体である:
【化1】

(式中、
1は、ハロゲン原子であり,
2は、C1〜C6のアルキルであり、そして
3は、C1〜C6のアルキルである)。
3は、分岐したC3〜C6のヒドロカルビル基であることが好ましい。
【0015】
式(I)の好ましいベンゾトリアゾールにおいて、
1は、塩素又はフッ素であり、
2は、メチル、エチル又はプロピルであり、そして
3は、メチル、エチル若しくはプロピル、イソプロピル又は第三級ブチルである。
【0016】
特に好ましい式(I)のベンゾトリアゾールは、次の式(I’)を有する:
【化2】

(式中、
1は、ハロゲン原子であり、
2は、C1〜C6のアルキルであり、そして
3は、C1〜C6のアルキルである)。
【0017】
式(I’)の好ましいベンゾトリアゾールにおいて、
1は、塩素又はフッ素であり、
2は、メチル、エチル又はプロピルであり、そして
3は、メチル、エチル又はプロピル、イソプロピル、第三級ブチルである。
【0018】
1が塩素であり、R2がメチルであり、そしてR3が第三級ブチルである式(I’)のベンゾトリアゾール誘導体が特に好ましい。
上記ベンゾトリアゾール誘導体は、本発明の方法における乾燥材料に基づいて0.01〜20重量%、好ましくは本発明の方法における乾燥材料に基づいて0.01〜15重量%、特に0.1〜15重量%、特に本発明の方法における乾燥材料に基づいて0.1〜10重量%の量で用いられる。
【0019】
上記ベンゾトリアゾール誘導体を用いた処理を、染色の後に、又は染色の際に同時に行うことができる。本発明の目的のための染色には、印刷が含まれる。
本発明の方法のための分散染料は、ポリエステル材料を染色するために習慣的に用いられているが、ポリアミド上にも高い耐光堅牢度を有する分散染料である。
【0020】
本発明の方法のための好ましい分散染料は、次の式(1)を有する:
【化3】

(式中、R4及びR’4は、独立して、フェニル基か、又はハロゲン(特に、−Cl又は−Br)、−CH3、−CH2CH3、−OCH3、−OCH2CH3若しくは−OHにより置換されたフェニル基である)。
【0021】
本発明の方法のためのさらに好ましい分散染料は、次の式(2)、(3)又は(4)を有する分散染料である:
【化4】

(式中、R5、R’5及びR”5は、独立して、ハロゲン(特に、−Cl又は−Br)、フェニル基、又はハロゲン(特に、−Cl又は−Br)、−CH3、−CH2CH3、−OCH3、−OCH2CH3若しくは−OHにより置換されたフェニル基である)。
【0022】
本発明の方法のためのさらに好ましい分散染料は、次の式(5)を有する分散染料である:
【化5】

(式中、
6は、ハロゲン(特に、−Cl又は−Br)、フェニル基、又はハロゲン(特に、−Cl又は−Br)、−CH3、−CH2CH3、−OCH3、−OCH2CH3若しくは−OHにより置換されたフェニル基、あるいはフェニル基、又はハロゲン(特に、−Cl又は−Br)、−CH3、−CH2CH3、−OCH3、−OCH2CH3若しくは−OHにより置換されたフェノキシ基であり、
7は、フェニル基、又はハロゲン(特に、−Cl又は−Br)、−CH3、−CH2CH3、−OCH3、−OCH2CH3若しくは−OHにより置換されたフェニル基であり、
8は、−NH2又は−NHR9であり、ここでR9は、ハロゲン(特に、−Cl又は−Br)、フェニル基、若しくはハロゲン(特に、−Cl又は−Br)、−CH3、−CH2CH3、−OCH3、−OCH2CH3若しくは−OHにより置換されたフェニル基、又はフェニル基若しくはハロゲン(特に、−Cl又は−Br)、−CH3、−CH2CH3、−OCH3、−OCH2CH3若しくは−OHにより置換されたフェノキシ基であるか、あるいはR9は、式SO2−フェニルの基であり、ここで当該SO2−フェニル基のフェニル基は、置換されていないか、又はハロゲン(特に、−Cl又は−Br)、−CH3、−CH2CH3、−OCH3、−OCH2CH3若しくは−OHにより置換されたフェニル基であるか、又はハロゲン(特に、−Cl又は−Br)、−CH3、−CH2CH3、−OCH3、−OCH2CH3若しくは−OHにより置換されたフェニル基である。)
【0023】
本発明の方法のためのさらに好ましい分散染料は、次の式(6)を有する分散染料である:
【化6】

(式中、
10は、H又はハロゲン、特に−H、−Cl又は−Brである)。
【0024】
本発明の方法のために特に好適な式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)の分散染料は、C.I.Disperse Orange 41及び/又はC.I.Disperse Orange 41:1及び/又はC.I.Disperse Violet 36及び/又はC.I.Solvent Yellow 163及び/又はC.I.Disperse Blue 73及び/又はC.I.Disperse Blue 56及び/又はC.I.Disperse Red 86及び/又はC.I.Disperse Red 60及び/又はC.I.Disperse Violet 27及び/又はC.I.Disperse Yellow 64及び/又はC.I.Disperse Yellow 54である。
式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)のこれらの染料を、単独でもちいることができ、又は本発明の方法における上述の分散染料の1種を含む混合物として用いることができる。
【0025】
本発明の方法における染色又は印刷は、それ自体公知の方法、例えば、フランス国特許第1 445 371号明細書に記載される方法に従ってなされる。慣用の染色法(それにより、本発明の方法を、分散染料を用いて染色及び/又は印刷することができる)はまた、例えば、M.Peter及びH.K.Rouetteの「Grundlagen der Textilveredelung;Handbuch der Technologie,Verfahren und Maschinen」thirteenth,revised edition,1989,Deutscher Fachverlag GmbH,Frankfurt/Main,Germany,ISBN 3−87150−277−4(次のページが特に関連性がある:ページ460〜461、482〜495、556〜566及び574〜587)に記載されている。マット及びカーペットの可能性には、連続染色法又はバッチ染色法、そして非接触染色若しくは伝統的な印刷又はChromoJet法による染料若しくは染料配合物のスプレー、あるいは他の方法(M.Peter及びH.K.Rouette「Grundlagen der Textilveredelung;Handbuch der Technologie,Veriahren und Maschinen」thirteenth,revised edition,1989,Deutscher Fachverlag GmbH,Frankfurt/Main,Germany,ISBN 3−87150−277−4,ページ484〜492(chapter 7.221.1)及びページ846並びに図8.70)が含まれる。
【0026】
得られる染色物は、全般にわたる良好な堅牢度を有している;特に、耐光堅牢度、ヒートセット堅牢度及びプリーツ加工堅牢度、そしてまた熱安定化(熱移動堅牢度)後の優れた湿潤堅牢度、特に、高い耐光堅牢度に言及することができる。
上記繊維材料は、種々の加工形態、例えば、繊維、ヤーン又はウェブとして、織物若しくはループ状編物又はカーペット状として存在することができる。これらのテキスタイルは、自動車分野において、又は一般的な輸送工学、例えば、鉄道、飛行機及び/若しくは路面電車において、建設された構造物の技術において、又はより正確には、建設された構造体の中若しくは上において、及び/又はレジャー分野において実用性を見出されている。
【0027】
上記分散染料は、公知の染色法により繊維材料上に適用される。例えば、ポリオレフィン−ポリアミド複数成分系繊維又は二成分系繊維材料を、70〜140℃の温度において、慣用の担体を用い又は用いず、アニオン性又は非イオン性分散剤の存在下で、水性分散液からイグゾースト染色する。
ポリオレフィン−ポリアミド系繊維材料は、3〜7、そして特に3〜6のpHで染色されるのが好ましい。染色温度は、好ましくは70〜110℃の範囲、そして特に80〜105℃の範囲である。
【0028】
浴比は、装置、基材及び製造の形態(make−up form)によって決まる。しかし、当該浴比を、広範囲、例えば、4:1〜100:1、そして好ましくは5:1〜30:1に選択することができる。本発明に従って用いられる分散染料を、慣用の染色法、例えば、イグゾースト法において、連続法において、印刷法において、又はノンインパクト印刷法、例えば、インクジェット又はスプレー圧力/CuromoJet(特に、カーペットに好適)において適用することができる。
【0029】
本発明に従って用いられる分散染料はまた、例えば、連続染色法又はバッチフォーム染色法及び連続フォーム染色法において、低浴比から染色するために好適である。
水及び上記染料を加えた染色液体又は印刷ペーストは、追加の添加剤、例えば、湿潤剤、消泡剤、均染剤又は繊維材料の特性に影響を与える薬剤、例えば、布帛柔軟剤、難燃剤又は撥汚染剤、撥水剤及び撥油剤並びに硬水軟化剤及び天然又は合成増粘剤(例えば、アルギネート及びセルロースエーテル)を含むことができる。
【0030】
染浴又は印刷ペースト内で用いられる分散染料の量は、所望の色の深さにもよるが、広範囲で変化させることができる。有利な量は、一般的に、それぞれ、繊維及び印刷ペーストの重量に基づいて、0.01%〜15重量%(0.001%〜20重量%)、そして特に0.1%〜10重量%の範囲であることができる。
【0031】
カーペット向けの種々の染色及び印刷法は、次の通りに実施されることが好ましい。
連続法のために、下記の組成の液体を調製する;
0.001〜30g/Lの分散染料;
1〜15g/Lの増粘剤、
例えば、Polyprint M225、ポリ糖、グアール、タマリンド;
0.1〜10g/Lの湿潤剤及び耐霜剤、
例えば、Sandogen WAF liq.、Sandogen AFB liq.;
0.1〜10g/Lの酸供与体、
例えば、Sandacid VS liq.、Sandacid VAN liq.;
0.1〜10g/Lの緩衝剤系、
例えば、Sandacid PB liq.、Sandacid PBBK Liq.:
0.1〜30g/Lの、式(I)のベンゾトリアゾール誘導体。
【0032】
染色すべき材料を、パッダ(pad−mangle)内で、100〜600%(好ましくは、400%)の含浸率までパッド染色し(pad)、そして約102℃で2〜20分間(好ましくは、8分間)、高温の飽和水蒸気内で固着させるか、あるいは、上記の時間の間、乾式加熱又は過熱水蒸気を用いて固着させることができる。その後、当該材料を、冷水ですすぎ、そして適切な場合には、さらに当業界で慣用の方法で処理又は加工する。
【0033】
イグゾースト法向けに、次の組成の液体を調製する;
0.001〜20%の分散染料;
0.1〜10ml/Lの分散剤、
例えば、Lyocol RDN liq.、Lyocol OU Liq.;
0.1〜 5g/Lの硫酸アンモニウム:
0.1〜30g/Lの式(I)のベンゾトリアゾール誘導体。
【0034】
当該pHを、3〜7の値、そして好ましくは4.5〜6のpHに調整する。それを、70〜140℃で30〜90分乾燥させ、次いで水ですすぎ、そして適切な場合には、当業界で慣用の方法でさらに処理又は加工する。
【0035】
ノンインパクト印刷法向けに次の組成の印刷ペーストを調製する;
0.001〜30g/kgの分散染料;
2〜20g/kgの合成増粘剤、
例えば、Tanaprint ST 160,Prisulon 200,Texipol 675031;
0.1〜10g/kgの分散剤、湿潤剤、耐霜剤、
例えば、Sandogen WAF liq.、Sandogen AFB liq.、Tanaspers CF liq.;
0.1〜10g/kgのpH調整用の酸、
例えば、クエン酸;
0.1〜10g/kgの消泡剤、
例えば、Nofome 1125 liq.、Antimussol UP liq.、Antimussol SF liq.:
0.1〜30g/Lの式(I)のベンゾトリアゾール誘導体。
【0036】
ノンインパクト印刷法において印刷すべき材料が、当該印刷すべき材料の乾燥重量に基づいて、100〜600%(好ましくは、300%)の含浸率まで、上記印刷ペーストを用いてスプレーされ、そして約102℃で2〜20分間(好ましくは、8分間)、高温の飽和水蒸気内で固着させるか、あるいは、乾式加熱又は過熱水蒸気を、固着させるために用いることができる。その後、当該材料を冷水ですすぎ、そして適切な場合には、当業界で慣用の方法でさらに処理又は加工する。
【0037】
産業で慣用されるさらなる処理又はさらなる加工操作は、フッ素化化学物質、他の撥汚染化学物質及び/若しくは撥水化学物質、並びに/又はカーペット裏地の適用を含むことができる。
続く例は、本発明を具体的に説明するものである。パーセンテージは、他に記載がない限り、重量によるものである。
【実施例】
【0038】
染色例は、Aquafil Textile Yarns S.p.A.,Via Parma,45,IT−4604l Asola−Mantova(Italy)の二成分系繊維(PP/PA)から製造されたカーペットの小片を利用した。
【0039】
例1(本発明に従うものではない)
カーペットの小片を、0.25g/LのC.I.Solvent Yellow 163、0.06g/LのC.I.Disperse Red 86及び0.009g/LのC.I.Disperse Blue 73、100g/LのPolyprint M225の3.5%溶液、3g/LのSandogen WAF liq.、2g/LのSandacid VS liq.及び十分なSandacid PB liq.を含む浴(pH5)内のパッダで、400%の含浸率(乾燥重量に基づく)までパッド染色し、そしてそのようにして含浸させたカーペット片を、102℃において、高温の飽和水蒸気内で8分間固着させ、続いて冷水で洗浄した。当該カーペット片に、ベージュの染色物を得た。そのようにして得たカーペット片を、耐光堅牢度に関して試験した(本明細書の下記を参照のこと)。
【0040】
例2(本発明に従うものではない)
カーペットの小片を、例1の様に染色したが、当該浴は、次の式:
【化7】

の化合物の10%懸濁液5g/Lをさらに含んでいた。
当該カーペット片に、ベージュの染色を得た。そのようにして得たカーペット片を、耐光堅牢度に関して試験した(本明細書の下記を参照のこと)。
【0041】
例3
カーペットの小片を、例1の様に染色したが、当該浴は、次の式:
【化8】

の化合物の25%懸濁液5g/Lをさらに含んでいた。
当該カーペット片上に、ベージュの染色を得た。そのようにして得たカーペット片を、耐光堅牢度に関して試験した(本明細書の下記を参照のこと)。
【0042】
例4(本発明に従うものではない)
カーペットの小片を、例1の様に染色したが、当該浴は、次の式:
【化9】

の化合物の20%懸濁液5g/Lをさらに含んでいた。
当該カーペット片上に、ベージュの染色を得た。そのようにして得たカーペット片を、耐光堅牢度に関して試験した(本明細書の下記を参照のこと)。
【0043】
例5(本発明に従うものではない)
カーペットの小片を、例1の様に染色したが、当該浴は、次の式:
【化10】

の化合物35部と、次の式:
【化11】

の化合物35部との懸濁液5g/Lをさらに含んでいた。
当該カーペット片上に、ベージュの染色を得た。そのようにして得たカーペット片を、耐光堅牢度に関して試験した(本明細書の下記を参照のこと)。
【0044】
例6(本発明に従うものではない)
カーペットの小片を、例1の様に染色したが、当該浴は、次の式:
【化12】

の化合物の10%の懸濁液5g/Lをさらに含んでいた。
当該カーペット片上に、ベージュの染色を得た。そのようにして得たカーペット片を、耐光堅牢度に関して試験した(本明細書の下記を参照のこと)。
【0045】
例1〜7の耐光堅牢度の測定
耐光堅牢度を、ISO 105 Method 2に従って測定した。試験すべきカーペットの小片の試料を、半分覆い、羊毛布地片であるブルーの耐光堅牢度標準と共に光に曝露した。染色堅牢度を、上記試料のカラーの変化を、用いた耐光堅牢度標準のカラーの変化と比較して評価した。当該試料を、一定量の光エネルギーに曝露し、そして評価を、8段階のブルースケール及び5段階のグレースケールに関して行った。これにより、1〜5の光等級(rating)に対する染色堅牢度が得られる。
【0046】
【表1】

【0047】
例8
カーペットの小片を、0.30g/LのC.I.Disperse Blue 73、100g/LのPolyprint M225の3.5%溶液、3g/LのSandogen WAF Liq.、5g/Lの次の式:
【化13】

の化合物の25%懸濁液、2g/LのSandacid VS Liq.及び十分なSandacid PB Liq.を含む浴(pH5)内のパッダに、400%の含浸率(乾燥重量に基づく)までパッド染色し、そのようにして含浸させたカーペット片を、102℃の高温の飽和水蒸気(stream)内で8分間固着させ、続いて冷水で洗浄し、非常に良好な耐光堅牢度の赤みがかったイエローカラーを有するカーペット片を得た。
【0048】
例9〜16
カーペットの小片を、例8の様に染色したが、当該浴は、0.30g/LのC.I.Disperse Blue 73の代わりに、0.32g/Lの下記の染料(F)を含んでいた。
【表2】

【0049】
提示したカラーに着色し、かつ非常に良好な耐光堅牢度を有するカーペット片が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散染料を用いた、熱力学的に相溶するポリオレフィン及びポリアミドから構成される複数成分系繊維上の染色物の耐光堅牢度を向上させる方法であって、
当該複数成分系繊維が、ベンゾトリアゾール誘導体を用いて処理されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ベンゾトリアゾール誘導体が、次の式(I):
【化1】

(式中、
1はハロゲン原子であり、
2はC1〜C6のアルキルであり、そして
3はC1〜C6のアルキルである)
のベンゾトリアゾール誘導体であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数成分系繊維が、熱力学的に相溶するポリオレフィン及びポリアミド、特に、ポリプロピレン、変性されたPA及びポリアミドから成り、そして好ましくはポリフィラメント状の特性を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記複数成分系繊維が、好ましくは前記ポリアミドである第一のポリマーのコアから成ることと、このコアが、好ましくは前記ポリオレフィンである第二のポリマーにより覆われていることとを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ベンゾトリアゾール誘導体が、乾燥重量に基づいて、0.01〜20重量%の量で用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記分散染料が、次の式(1):
【化2】

(式中、R4及びR’4は、独立して、フェニル基、又はハロゲン(特に、−Cl又は−Br)、−CH3、−CH2CH3、−OCH3、−OCH2CH3若しくは−OHにより置換されたフェニル基である)、
又は次の式(2)、(3)若しくは(4):
【化3】

(式中、R5、R’5、及びR”5は、独立して、ハロゲン(特に、−Cl又は−Br)、フェニル基、又はハロゲン(特に、−Cl又は−Br)、−CH3、−CH2CH3、−OCH3、−OCH2CH3若しくは−OHにより置換されたフェニル基である)、
又は次の式(5):
【化4】

(式中、
6は、ハロゲン(特に、−Cl又は−Br)、フェニル基、若しくはハロゲン(特に、−Cl又は−Br)、−CH3、−CH2CH3、−OCH3、−OCH2CH3若しくは−OHにより置換されたフェニル基、又はフェニル基、若しくはハロゲン(特に、−Cl又は−Br)、−CH3、−CH2CH3、−OCH3、−OCH2CH3若しくは−OHにより置換されたフェノキシ基であり、
7は、フェニル基、又はハロゲン(特に、−Cl又は−Br)、−CH3、−CH2CH3、−OCH3、−OCH2CH3若しくは−OHにより置換されたフェニル基であり、
8は、−NH2又は−NHR9であり、ここでR9は、ハロゲン(特に、−Cl又は−Br)、フェニル基、若しくはハロゲン(特に、−Cl又は−Br)、−CH3、−CH2CH3、−OCH3、−OCH2CH3若しくは−OHにより置換されたフェニル基、又はフェニル基、若しくはハロゲン(特に、−Cl又は−Br)、−CH3、−CH2CH3、−OCH3、−OCH2CH3若しくは−OHにより置換されたフェノキシ基であるか、あるいはR9は、式SO2−フェニルの基であり、ここで当該SO2−フェニル基のフェニル基は、置換されていないか、又はハロゲン(特に、−Cl又は−Br)、−CH3、−CH2CH3、−OCH3、−OCH2CH3若しくは−OHにより置換されたフェニル基であるか、又はハロゲン(特に、−Cl又は−Br)、−CH3、−CH2CH3、−OCH3、−OCH2CH3若しくは−OHにより置換されたフェニル基である)
又は次の式(6):
【化5】

(式中、R10は、H又はハロゲン、特に−H、−Cl又は−Brである)
を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
分散染料を用いて染色された、熱力学的に相溶するポリオレフィン及びポリアミドから構成される耐光堅牢性を有する染色をされた複数成分系繊維であって、ベンゾトリアゾール誘導体を用いて処理されたことを特徴とする複数成分系繊維。
【請求項8】
カーペット及び/又はテキスタイル製床敷物を製造するための、請求項7に記載の耐光堅牢性を有する染色をされた複数成分系繊維の使用。
【請求項9】
熱力学的に相溶するポリオレフィン及びポリアミドから構成される複数成分系繊維を処理するためのベンゾトリアゾール誘導体の使用。
【請求項10】
熱力学的に相溶するポリオレフィン及びポリアミドから構成される染色された複数成分系繊維の耐光堅牢度を向上させるための、請求項9に記載のベンゾトリアゾール誘導体の使用。

【公表番号】特表2008−533320(P2008−533320A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501294(P2008−501294)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060718
【国際公開番号】WO2006/097475
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(596033657)クラリアント インターナショナル リミティド (48)
【Fターム(参考)】