二次監視レーダ
【課題】航空機から受信する拡張スキッタを利用してロールコール期間における航空機の捕捉を行なう。
【解決手段】監視空域を飛行する航空機に質問信号を送信する送信手段122と、監視空域を飛行する航空機から送信された信号を受信する受信手段123とを備え、応答信号を受信すると、当該応答信号を利用して航空機の飛行を監視する二次監視レーダであって、受信手段が、航空機から送信された航空機の識別子及び位置情報を含む拡張スキッタを受信すると、当該拡張スキッタに含まれる位置情報を利用して、航空機が所定範囲に存在する否かを判定する位置判定手段135dと、位置判定手段によって、航空機が所定範囲に存在すると判定されると、当該航空機をロールコール期間の捕捉対象と決定し、当該航空機から受信した拡張スキッタに含まれる航空機の識別子及び位置情報を利用して、送信手段に質問信号を送信させる送信制御手段131とを備える。
【解決手段】監視空域を飛行する航空機に質問信号を送信する送信手段122と、監視空域を飛行する航空機から送信された信号を受信する受信手段123とを備え、応答信号を受信すると、当該応答信号を利用して航空機の飛行を監視する二次監視レーダであって、受信手段が、航空機から送信された航空機の識別子及び位置情報を含む拡張スキッタを受信すると、当該拡張スキッタに含まれる位置情報を利用して、航空機が所定範囲に存在する否かを判定する位置判定手段135dと、位置判定手段によって、航空機が所定範囲に存在すると判定されると、当該航空機をロールコール期間の捕捉対象と決定し、当該航空機から受信した拡張スキッタに含まれる航空機の識別子及び位置情報を利用して、送信手段に質問信号を送信させる送信制御手段131とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機から受信する拡張スキッタを利用して航空機を監視する二次監視レーダに関する。
【背景技術】
【0002】
飛行中の航空機は、地上局の航空管制レーダで監視されている。図7に示すように、航空管制レーダであるモードS二次監視レーダ(SSRモードS:Secondary Surveillance Radar Mode S)1aは、航空機2に搭載されているトランスポンダ20(2a,2b)に質問を送信する。その後、モードS二次監視レーダ1aは、トランスポンダ20から送信される応答を受信すると、この応答を解析して航空機2を監視している(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
トランスポンダ20には、処理や送受信する信号の異なるモードSトランスポンダとATCRBSトランスポンダとがある。モードS二次監視レーダ1aは、このモードSトランスポンダを備える航空機(モードS機)と、ATCRBSトランスポンダを備える航空機(ATCRBS機)を確実に捕捉するため、「オールコール期間Ta」と「ロールコール期間Tr」を設定し、各期間Ta,Trで異なる処理を実行している。
【0004】
具体的には、モードS二次監視レーダ1aは、図8に示すように、信号の送受信を切り替える送受切替器121、信号を送信する送信器122及び信号を受信する受信器123を有する送受信部12を備えている。また、モードS二次監視レーダ1aは、信号の送信を制御する送信制御部131、モードS機から受信した信号を処理するモードS応答処理部136、ATCRBS機から受信した信号を処理するATCRBS応答処理部133、受信信号を利用してターゲットレポートを生成して航空機2の飛行を監視する監視処理部137及びオールコール期間及びロールコール期間を管理するチャネル管理部134を有する信号処理部13aを備えている。
【0005】
モードS二次監視レーダ1aは、図9に示すように、オールコール期間Taには、モードS機を捕捉するためにモードS一括質問を送信し、モードS機から送信されたモードS応答を受信してモードS機を捕捉する。また、オールコール期間Taには、モードS二次監視レーダ1aは、ATCRBS機を捕捉するためにATCRBS一括質問を送信し、ATCRBS機から送信されたATCRBS応答を受信してATCRBS機を捕捉する。
【0006】
一方、モードS二次監視レーダ1aは、オールコール期間Taに続くロールコール期間Trには、図9に示すように、オールコール期間Taで捕捉したモードS機との間でモードS個別質問の送信及びモードS応答の受信を行なうことで、このモードS機の捕捉を継続する。
【0007】
ところで、航空機衝突防止装置(図示せず)を搭載する航空機は、モードS二次監視レーダ1aからの質問に関係なく、定期的に拡張スキッタを送信している。拡張スキッタは、自機の存在を他の航空機に通知する信号であり、航空機衝突防止装置を備える航空機は、他の航空機から送信された拡張スキッタを受信すると、受信する拡張スキッタを利用して他の航空機との衝突防止に利用している。
【0008】
拡張スキッタは、モードSアドレスの他に航空機の位置等の情報を含んでおり、モードS二次監視レーダ1aがこのスキッタを利用することができれば、モードS二次監視レーダ1aのモードS機の監視性能が向上すると考えられる。
【0009】
図10(a)にオールコール期間Taにおけるアンテナ11と航空機2の位置関係の一例を示し、図10(b)に図10(a)に示したオールコール期間Taに続くロールコール期間Trにおけるアンテナ11と航空機2の位置関係を示す。ここで、モードS二次監視レーダ1aのアンテナ11の正面方向fに存在する航空機2aとの間で信号の送受信が行われる。一方、拡張スキッタは無指向性の電波であるから、モードS二次監視レーダ1aは、アンテナ11の正面方向f以外に存在する航空機2b1,2b2,2c1,2c2から送信された拡張スキッタも受信する。
【0010】
したがって、図10(a)に示すオールコール期間Taに、モードS二次監視レーダ1aがアンテナ11の正面方向f以外にいる航空機2b1,2b2,2c1,2c2から送信された拡張スキッタを受信したとき、このオールコール期間Taに続くロールコール期間Tr(図10(b))において、拡張スキッタを送信した全ての航空機2b1,2b2,2c1,2c2との間で質問応答を行なうことはできない。すなわち、図10(b)に示すロールコール期間Trに航空機2b1,2b2,2c1,2c2がアンテナ11の正面方向fにいるとは限らない。
【0011】
また、アンテナ11が回転するばかりでなく航空機2も静止せずに動いているため、各航空機2は、ロールコール期間Trに移行した際にはオールコール期間Taの位置に存在していないため、拡張スキッタに含まれていた位置情報で特定される場所に質問信号を送信しても航空機2から応答信号を得ることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−175784号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Michael C. Stevens “Secondary Surveillance Radar” 1998, ISBN 0-89006-292-7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したように、拡張スキッタは、無指向性であるため、拡張スキッタを利用して航空機2の情報を取得することができたとしても、この拡張スキッタを送信した航空機2のロールコール期間Trにおける捕捉に移行することは困難である。
【0015】
従って本発明は、航空機から受信する拡張スキッタをロールコール期間における航空機の捕捉に有効に利用して航空機を監視する二次監視レーダ及び航空機の監視方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の特徴に係る二次監視レーダは、監視空域を飛行する航空機に質問信号を送信する送信手段と、監視空域を飛行する航空機から送信された信号を受信する受信手段とを備え、受信手段が質問信号に応答して航空機から送信された応答信号を受信すると、当該応答信号を利用して航空機の飛行を監視する二次監視レーダであって、受信手段が、航空機から送信された航空機の識別子及び位置情報を含む拡張スキッタを受信すると、当該拡張スキッタに含まれる位置情報を利用して、航空機が所定範囲に存在するか否かを判定する位置判定手段と、位置判定手段によって、航空機が所定範囲に存在すると判定されると、当該航空機をロールコール期間の捕捉対象と決定し、当該航空機から受信した拡張スキッタに含まれる航空機の識別子及び位置情報を利用して、送信手段に質問信号を送信させる送信制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、航空機から受信する拡張スキッタをロールコール期間における航空機の捕捉に有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の最良の実施形態に係るモードS二次監視レーダの構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】図1のモードS二次監視レーダでスキッタを処理する構成について説明する機能ブロック図である。
【図3】スキッタのフォーマットを説明する図である。
【図4】図1のモードS二次監視レーダが捕捉対象とする航空機について説明する図である。
【図5】図1のモードS二次監視レーダが送受信する信号について説明する図である。
【図6】図1のモードS二次監視レーダで実行される処理の一例を説明するフローチャートである。
【図7】一般的なモードS二次監視レーダとトランスポンダを表わす概略図である。
【図8】従来のモードS二次監視レーダの構成を説明する機能ブロック図である。
【図9】従来のモードS二次監視レーダが送受信する信号について説明する図である。
【図10】従来のモードS二次監視レーダが捕捉対象とする航空機について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を用いて本発明の最良の実施形態に係るモードS二次監視レーダ1について説明する。モードS二次監視レーダ1は、図7を用いて上述したモードS二次監視レーダ1aと同様に、地上局に設置されており、航空機2に備えられるトランスポンダ20との質問応答に基づいて航空機2を監視する。以下の説明において、従来と同一の構成については、上述の説明と同一の符号を付して説明する。
【0020】
図1に示すように、本発明の最良の実施形態に係るモードS二次監視レーダ1は、アンテナ11と、アンテナ11を介して信号を送受信する送受信部12と、送受信部12に接続され、質問応答を制御するとともに受信する応答に基づいてターゲットレポートを生成して出力する信号処理部13とを備えている。
【0021】
送受信部12は、送受切替器121、送信器122及び受信器123を有し、アンテナ11を介して質問を送信するとともに、アンテナ11で受信する応答を信号処理部13に出力している。
【0022】
また、信号処理部13は、質問の送信制御を制御する送信制御部131、受信したモードS応答を処理するモードS応答処理部132、受信したATCRBS応答を処理するATCRBS応答処理部133、オールコール期間Ta及びロールコール期間Trをスケジューリングするチャネル管理部134、応答に応じてターゲットレポートを生成する監視処理部135を有している。
【0023】
モードS応答処理部132は、受信した信号が送信した質問信号に応答して送信されたモードS応答であるか否かを判定する応答判定手段132aの他、受信した信号が拡張スキッタであるか否かを判定するため、図2に示すように、スキッタ判定手段132bを有する。
【0024】
拡張スキッタには様々な種類があるが、いずれの信号も図3に示すように、「DFフィールド(拡張スキッタの種類)」、「CAフィールド(トランスポンダの能力)」、「AAフィールド(トランスポンダのモードSアドレス)」、「MEフィールド(航空機の位置及び速度)」、「PIフィールド(パリティ)」を有する信号であって、PIフィールドのコードは0になる。
【0025】
スキッタ判定手段132bは、DFフィールドの値が「10001」又は「10010」であって、PIフィールドのコードが0である受信信号を拡張スキッタであると判定し、DFフィールドの値が「10001」又は「10010」以外の受信信号や、PIフィールドのコードが0でない受信信号を拡張スキッタではないと判定する。また、スキッタ判定手段132bは、拡張スキッタであると判定した信号を監視処理部135に出力する。
【0026】
監視処理部135は、図2に示すように、従来と同様に航空機2から送信された応答信号を処理する応答処理手段135aと、応答処理手段135aで処理された応答信号を利用して、ロールコール期間Trの捕捉対象として決定された航空機の識別子(モードSアドレス)及び位置情報等を記憶装置のロールコール捕捉対象リスト135hに記憶する記憶処理手段135bと、応答処理手段135aで処理された応答信号を利用して航空機の監視に利用するターゲットレポートを生成するレポート生成手段135cとを有する。
【0027】
また、監視処理部135は、航空機2の監視に拡張スキッタを利用するため、図2に示すように、従来のモードS二次監視レーダでは有していなかった構成として、拡張スキッタに含まれる航空機2の位置情報を判定する位置判定手段135dと、ロールコール期間Trの捕捉対象でない拡張スキッタを送信した航空機2の識別子(モードSアドレス)及び位置情報等を記憶装置の候補機リスト135iに仮記憶する仮記憶手段135eと、記憶装置に同一の航空機2の情報が複数仮記憶されている場合に、航空機の位置を予測する予測手段135fと、ロールコール期間Trにおいて航空機の捕捉を処理するロールコール捕捉処理手段135gとを有する。
【0028】
さらに、本発明に係るモードS二次監視レーダ1の記憶処理手段135bは、応答処理手段135aの処理結果の他、位置判定手段135dの判定結果を利用して、ロールコール期間Trの捕捉対象として決定された航空機2の識別子(モードSアドレス)及び位置情報等を記憶装置のロールコール捕捉対象リスト135hに記憶する。
【0029】
なお、図2に示す例では、ロールコール捕捉対象リスト135h及び候補機リスト135iは、監視処理部135の内部の記憶装置で記憶されているが、監視処理部135の外部の記憶装置に記憶されていても良い。
【0030】
位置判定手段135dは、拡張スキッタに含まれる航空機の位置情報に基づいて、アンテナ11との位置関係を比較し、航空機がアンテナ11の正面方向fに対し回転方向側の所定範囲内(図4の斜線部分)に存在するか否かを判定する。また、位置判定手段135dは、航空機がアンテナ11の正面方向fより回転方向側の所定範囲内に存在する場合、この航空機を次のロールコール期間Trにおける捕捉対象であると判定する。一方、航空機の位置がアンテナ11の正面方向fより回転方向側の所定範囲外(図4の斜線部分以外)に存在する場合、位置判定手段135dは、この航空機を次のロールコール期間Trにおける捕捉対象ではないと判定する。
【0031】
図4には、アンテナ11と、モードS二次監視レーダ1で質問信号の送信及び応答信号の受信が可能な航空機2aと、モードS二次監視レーダ1で拡張スキッタを受信可能な航空機2b1,2b2,2c1,2c2とを示している。すなわち、モードS二次監視レーダ1は、アンテナ11の正面方向fに存在する航空機2aとのみ質問応答を行なうことができる。一方、拡張スキッタは無指向性であるため、モードS二次監視レーダ1は、アンテナ11との向きとは無関係に航空機2b1,2b2,2c1,2c2から送信される拡張スキッタを受信することができる。
【0032】
図4(a)をオールコール期間Taにおけるアンテナ11と監視対象の航空機について表わす図としたとき、図4(b)は、図4(a)のオールコール期間Taに続くロールコール期間Trにおけるアンテナ11と監視対象の航空機について表わす図である。
【0033】
アンテナ11は、時計回りに回転するため、オールコール期間Taで拡張スキッタを送信した航空機2b1,2b2,2c1,2c2のうち、アンテナ11の正面方向より回転方向側の所定範囲(図4(a)の斜線部分)に存在する航空機2b1,2b2は、次のロールコール期間Trにおける捕捉対象となり得る。したがって、モードS二次監視レーダ1は、航空機2b1,2b2が次のスキャンでロールコール期間Trにおける捕捉対象となり得ると判定し、ロールコール期間Trで捕捉を行なう。
【0034】
仮に、モードS二次監視レーダ1がオールコール期間Taに航空機2b1,2b2,2c1,2c2から送信された拡張スキッタを受信したとき、航空機2b1のみがアンテナ11の正面方向より回転方向側の所定範囲(図4(b)の斜線部分)に存在するため、航空機2b1のみが次のロールコール期間Trにおける捕捉対象となる。
【0035】
記憶処理手段135bは、位置判定手段135dによって次のロールコール期間Trの捕捉対象と判定した航空機のモードSアドレス及び位置情報等を記憶装置のロールコール捕捉対象リスト135hに追加する。ロールコール捕捉対象リスト135hでは、少なくとも、航空機の「モードSアドレス」及び「位置情報」を含んでいる。ここで、ロールコール捕捉対象リスト135hが含む「位置情報」は、オールコール期間Taにおける航空機の位置であっても良いし、次のロールコール期間Trにおける航空機の予測位置であっても良い。
【0036】
仮記憶手段135eは、位置判定手段135dによって次のロールコール期間Trにおける捕捉対象でないと判定された航空機の「モードSアドレス」及び「位置情報」等を記憶装置の候補機リスト135iに追加する。候補機リスト135iでは、少なくとも、航空機の「モードSアドレス」及び「位置情報」を含んでいる。ここで、候補機リスト135iが含む「位置情報」は、オールコール期間Taにおける航空機の位置である。
【0037】
予測手段135fは、候補機リスト135iで同一のモードSアドレスについて複数の位置情報が記憶されている場合、この複数の位置情報から、次のロールコール期間Trにおける航空機の位置や航空機がアンテナ11の正面方向fに存在する際の位置を予測する。すなわち、同一のモードSアドレスについて記憶される複数の位置情報とは、同一航空機の過去の異なる時間における位置情報である。したがって、予測手段135fは、過去の異なる時間の位置情報を利用して、ロールコール期間Trの捕捉対象となる位置を予測する。
【0038】
また、記憶処理手段135bは、航空機のモードSアドレス及び予測手段135fが求めた航空機の位置情報を、ロールコール期間Trにおける捕捉対象として、記憶装置のロールコール捕捉対象リスト135hに追加する。
【0039】
ロールコール捕捉処理手段135gは、記憶装置のロールコール捕捉対象リスト135hを参照し、ロールコール期間Trに航空機の捕捉を処理するための制御信号を生成し、チャネル管理部134に出力する。
【0040】
図5に示すように、モードS二次監視レーダ1では、オールコール期間Taには、モードS一括質問信号の送信と質問信号に対して受信する応答信号の処理及びATCRBS一括質問信号の送信と質問信号に対して受信する応答信号の処理に加え、受信する拡張スキッタの処理を実行している。また、モードS二次監視レーダでは、ロールコール期間Trには、オールコール期間Taに一括質問応答で捕捉された航空機の他、オールコール期間Taに拡張スキッタを受信した航空機にもモードS個別質問が送信される。
【0041】
続いて、図6に示すフローチャートを用いて、本発明の実施形態に係る二次監視レーダにおいて、受信する拡張スキッタを利用して航空機を監視する処理について説明する。
【0042】
受信器123が信号を受信すると(S1)、スキッタ判定手段132bは、受信した信号のDFフィールドの値が「10001」又は「10010」と一致し、かつ、PIフィールドのコードが0であるか否かを判定する(S2)。このとき、DFフィールドの値が「10001」又は「10010」と一致し、かつ、PIフィールドのコードが0であれば(S2でYES)、スキッタ判定手段132bは、受信した信号を拡張スキッタであると判定して監視処理部135に出力する(S3)。一方、DFフィールドの値が「10001」又は「10010」と一致しないときやPIフィールドのコードが0でないとき、スキッタ判定手段132bは、受信した信号は拡張スキッタではないと判定し、次に受信する信号を待機する(S2でNO)。
【0043】
位置判定手段135dは、スキッタ判定手段132bから入力した拡張スキッタの位置情報を基に、アンテナ11と拡張スキッタを送信した航空機2の位置関係を判定する(S4)。位置判定手段135dによって拡張スキッタがアンテナ11の正面方向より回転方向側の所定範囲外にある場合(S4でNO)、仮記憶手段135eは、候補機リスト135iにステップS1で受信した拡張スキッタに含まれる情報を追加する(S5)。
【0044】
ここで、候補機リスト135iにステップS5で追加した航空機2に関する位置情報が複数記憶されているとき(S6でYES)、予測手段135fは、次のロールコール期間Trにおける航空機2の位置を予測する(S7)。一方、追加した航空機2に関する位置情報が複数記憶されていないとき、次に受信する信号を待機する(S6でNO)。
【0045】
記憶処理手段135bは、ステップS3で出力された拡張スキッタの位置情報又はステップS7で予測された位置情報等をロールコール期間Trにおける捕捉対象として、ロールコール捕捉対象リスト135hに追加する(S8)。その後、ロールコール捕捉処理手段135gは、ロールコール捕捉対象リスト135hを参照し、ロールコール期間Trに航空機2を捕捉するための処理を実行する(S9)。
【0046】
本発明の最良の実施形態に係るモードS二次監視レーダ1によれば、航空機2から送信される拡張スキッタを利用してロールコール期間Trにおける捕捉対象を決定することができる。したがって、オールコール期間Ta及びロールコール期間Trを有効に使用して航空機2を捕捉し、航空機の監視性能を向上することができる。
【符号の説明】
【0047】
1…モードS二次監視レーダ
11…アンテナ
12…送受信部
121…送受切替器
122…送信器(送信手段)
123…受信器(受信手段)
13…信号処理部
131…送信制御部(送信制御手段)
132…応答処理部
132a…応答判定手段
132b…スキッタ判定手段
133…ATCRBS応答処理部
134…チャネル管理部
135…監視処理部
135a…応答処理手段
135b…記憶処理手段
135c…レポート生成手段
135d…位置判定手段
135e…仮記憶手段
135f…予測手段
135g…ロールコール捕捉処理手段
135h…ロールコール捕捉対象リスト
135i…候補機リスト
2(2a,2b1,2b2,2c1,2c2)…航空機
20…トランスポンダ
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機から受信する拡張スキッタを利用して航空機を監視する二次監視レーダに関する。
【背景技術】
【0002】
飛行中の航空機は、地上局の航空管制レーダで監視されている。図7に示すように、航空管制レーダであるモードS二次監視レーダ(SSRモードS:Secondary Surveillance Radar Mode S)1aは、航空機2に搭載されているトランスポンダ20(2a,2b)に質問を送信する。その後、モードS二次監視レーダ1aは、トランスポンダ20から送信される応答を受信すると、この応答を解析して航空機2を監視している(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
トランスポンダ20には、処理や送受信する信号の異なるモードSトランスポンダとATCRBSトランスポンダとがある。モードS二次監視レーダ1aは、このモードSトランスポンダを備える航空機(モードS機)と、ATCRBSトランスポンダを備える航空機(ATCRBS機)を確実に捕捉するため、「オールコール期間Ta」と「ロールコール期間Tr」を設定し、各期間Ta,Trで異なる処理を実行している。
【0004】
具体的には、モードS二次監視レーダ1aは、図8に示すように、信号の送受信を切り替える送受切替器121、信号を送信する送信器122及び信号を受信する受信器123を有する送受信部12を備えている。また、モードS二次監視レーダ1aは、信号の送信を制御する送信制御部131、モードS機から受信した信号を処理するモードS応答処理部136、ATCRBS機から受信した信号を処理するATCRBS応答処理部133、受信信号を利用してターゲットレポートを生成して航空機2の飛行を監視する監視処理部137及びオールコール期間及びロールコール期間を管理するチャネル管理部134を有する信号処理部13aを備えている。
【0005】
モードS二次監視レーダ1aは、図9に示すように、オールコール期間Taには、モードS機を捕捉するためにモードS一括質問を送信し、モードS機から送信されたモードS応答を受信してモードS機を捕捉する。また、オールコール期間Taには、モードS二次監視レーダ1aは、ATCRBS機を捕捉するためにATCRBS一括質問を送信し、ATCRBS機から送信されたATCRBS応答を受信してATCRBS機を捕捉する。
【0006】
一方、モードS二次監視レーダ1aは、オールコール期間Taに続くロールコール期間Trには、図9に示すように、オールコール期間Taで捕捉したモードS機との間でモードS個別質問の送信及びモードS応答の受信を行なうことで、このモードS機の捕捉を継続する。
【0007】
ところで、航空機衝突防止装置(図示せず)を搭載する航空機は、モードS二次監視レーダ1aからの質問に関係なく、定期的に拡張スキッタを送信している。拡張スキッタは、自機の存在を他の航空機に通知する信号であり、航空機衝突防止装置を備える航空機は、他の航空機から送信された拡張スキッタを受信すると、受信する拡張スキッタを利用して他の航空機との衝突防止に利用している。
【0008】
拡張スキッタは、モードSアドレスの他に航空機の位置等の情報を含んでおり、モードS二次監視レーダ1aがこのスキッタを利用することができれば、モードS二次監視レーダ1aのモードS機の監視性能が向上すると考えられる。
【0009】
図10(a)にオールコール期間Taにおけるアンテナ11と航空機2の位置関係の一例を示し、図10(b)に図10(a)に示したオールコール期間Taに続くロールコール期間Trにおけるアンテナ11と航空機2の位置関係を示す。ここで、モードS二次監視レーダ1aのアンテナ11の正面方向fに存在する航空機2aとの間で信号の送受信が行われる。一方、拡張スキッタは無指向性の電波であるから、モードS二次監視レーダ1aは、アンテナ11の正面方向f以外に存在する航空機2b1,2b2,2c1,2c2から送信された拡張スキッタも受信する。
【0010】
したがって、図10(a)に示すオールコール期間Taに、モードS二次監視レーダ1aがアンテナ11の正面方向f以外にいる航空機2b1,2b2,2c1,2c2から送信された拡張スキッタを受信したとき、このオールコール期間Taに続くロールコール期間Tr(図10(b))において、拡張スキッタを送信した全ての航空機2b1,2b2,2c1,2c2との間で質問応答を行なうことはできない。すなわち、図10(b)に示すロールコール期間Trに航空機2b1,2b2,2c1,2c2がアンテナ11の正面方向fにいるとは限らない。
【0011】
また、アンテナ11が回転するばかりでなく航空機2も静止せずに動いているため、各航空機2は、ロールコール期間Trに移行した際にはオールコール期間Taの位置に存在していないため、拡張スキッタに含まれていた位置情報で特定される場所に質問信号を送信しても航空機2から応答信号を得ることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−175784号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Michael C. Stevens “Secondary Surveillance Radar” 1998, ISBN 0-89006-292-7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述したように、拡張スキッタは、無指向性であるため、拡張スキッタを利用して航空機2の情報を取得することができたとしても、この拡張スキッタを送信した航空機2のロールコール期間Trにおける捕捉に移行することは困難である。
【0015】
従って本発明は、航空機から受信する拡張スキッタをロールコール期間における航空機の捕捉に有効に利用して航空機を監視する二次監視レーダ及び航空機の監視方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の特徴に係る二次監視レーダは、監視空域を飛行する航空機に質問信号を送信する送信手段と、監視空域を飛行する航空機から送信された信号を受信する受信手段とを備え、受信手段が質問信号に応答して航空機から送信された応答信号を受信すると、当該応答信号を利用して航空機の飛行を監視する二次監視レーダであって、受信手段が、航空機から送信された航空機の識別子及び位置情報を含む拡張スキッタを受信すると、当該拡張スキッタに含まれる位置情報を利用して、航空機が所定範囲に存在するか否かを判定する位置判定手段と、位置判定手段によって、航空機が所定範囲に存在すると判定されると、当該航空機をロールコール期間の捕捉対象と決定し、当該航空機から受信した拡張スキッタに含まれる航空機の識別子及び位置情報を利用して、送信手段に質問信号を送信させる送信制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、航空機から受信する拡張スキッタをロールコール期間における航空機の捕捉に有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の最良の実施形態に係るモードS二次監視レーダの構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】図1のモードS二次監視レーダでスキッタを処理する構成について説明する機能ブロック図である。
【図3】スキッタのフォーマットを説明する図である。
【図4】図1のモードS二次監視レーダが捕捉対象とする航空機について説明する図である。
【図5】図1のモードS二次監視レーダが送受信する信号について説明する図である。
【図6】図1のモードS二次監視レーダで実行される処理の一例を説明するフローチャートである。
【図7】一般的なモードS二次監視レーダとトランスポンダを表わす概略図である。
【図8】従来のモードS二次監視レーダの構成を説明する機能ブロック図である。
【図9】従来のモードS二次監視レーダが送受信する信号について説明する図である。
【図10】従来のモードS二次監視レーダが捕捉対象とする航空機について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を用いて本発明の最良の実施形態に係るモードS二次監視レーダ1について説明する。モードS二次監視レーダ1は、図7を用いて上述したモードS二次監視レーダ1aと同様に、地上局に設置されており、航空機2に備えられるトランスポンダ20との質問応答に基づいて航空機2を監視する。以下の説明において、従来と同一の構成については、上述の説明と同一の符号を付して説明する。
【0020】
図1に示すように、本発明の最良の実施形態に係るモードS二次監視レーダ1は、アンテナ11と、アンテナ11を介して信号を送受信する送受信部12と、送受信部12に接続され、質問応答を制御するとともに受信する応答に基づいてターゲットレポートを生成して出力する信号処理部13とを備えている。
【0021】
送受信部12は、送受切替器121、送信器122及び受信器123を有し、アンテナ11を介して質問を送信するとともに、アンテナ11で受信する応答を信号処理部13に出力している。
【0022】
また、信号処理部13は、質問の送信制御を制御する送信制御部131、受信したモードS応答を処理するモードS応答処理部132、受信したATCRBS応答を処理するATCRBS応答処理部133、オールコール期間Ta及びロールコール期間Trをスケジューリングするチャネル管理部134、応答に応じてターゲットレポートを生成する監視処理部135を有している。
【0023】
モードS応答処理部132は、受信した信号が送信した質問信号に応答して送信されたモードS応答であるか否かを判定する応答判定手段132aの他、受信した信号が拡張スキッタであるか否かを判定するため、図2に示すように、スキッタ判定手段132bを有する。
【0024】
拡張スキッタには様々な種類があるが、いずれの信号も図3に示すように、「DFフィールド(拡張スキッタの種類)」、「CAフィールド(トランスポンダの能力)」、「AAフィールド(トランスポンダのモードSアドレス)」、「MEフィールド(航空機の位置及び速度)」、「PIフィールド(パリティ)」を有する信号であって、PIフィールドのコードは0になる。
【0025】
スキッタ判定手段132bは、DFフィールドの値が「10001」又は「10010」であって、PIフィールドのコードが0である受信信号を拡張スキッタであると判定し、DFフィールドの値が「10001」又は「10010」以外の受信信号や、PIフィールドのコードが0でない受信信号を拡張スキッタではないと判定する。また、スキッタ判定手段132bは、拡張スキッタであると判定した信号を監視処理部135に出力する。
【0026】
監視処理部135は、図2に示すように、従来と同様に航空機2から送信された応答信号を処理する応答処理手段135aと、応答処理手段135aで処理された応答信号を利用して、ロールコール期間Trの捕捉対象として決定された航空機の識別子(モードSアドレス)及び位置情報等を記憶装置のロールコール捕捉対象リスト135hに記憶する記憶処理手段135bと、応答処理手段135aで処理された応答信号を利用して航空機の監視に利用するターゲットレポートを生成するレポート生成手段135cとを有する。
【0027】
また、監視処理部135は、航空機2の監視に拡張スキッタを利用するため、図2に示すように、従来のモードS二次監視レーダでは有していなかった構成として、拡張スキッタに含まれる航空機2の位置情報を判定する位置判定手段135dと、ロールコール期間Trの捕捉対象でない拡張スキッタを送信した航空機2の識別子(モードSアドレス)及び位置情報等を記憶装置の候補機リスト135iに仮記憶する仮記憶手段135eと、記憶装置に同一の航空機2の情報が複数仮記憶されている場合に、航空機の位置を予測する予測手段135fと、ロールコール期間Trにおいて航空機の捕捉を処理するロールコール捕捉処理手段135gとを有する。
【0028】
さらに、本発明に係るモードS二次監視レーダ1の記憶処理手段135bは、応答処理手段135aの処理結果の他、位置判定手段135dの判定結果を利用して、ロールコール期間Trの捕捉対象として決定された航空機2の識別子(モードSアドレス)及び位置情報等を記憶装置のロールコール捕捉対象リスト135hに記憶する。
【0029】
なお、図2に示す例では、ロールコール捕捉対象リスト135h及び候補機リスト135iは、監視処理部135の内部の記憶装置で記憶されているが、監視処理部135の外部の記憶装置に記憶されていても良い。
【0030】
位置判定手段135dは、拡張スキッタに含まれる航空機の位置情報に基づいて、アンテナ11との位置関係を比較し、航空機がアンテナ11の正面方向fに対し回転方向側の所定範囲内(図4の斜線部分)に存在するか否かを判定する。また、位置判定手段135dは、航空機がアンテナ11の正面方向fより回転方向側の所定範囲内に存在する場合、この航空機を次のロールコール期間Trにおける捕捉対象であると判定する。一方、航空機の位置がアンテナ11の正面方向fより回転方向側の所定範囲外(図4の斜線部分以外)に存在する場合、位置判定手段135dは、この航空機を次のロールコール期間Trにおける捕捉対象ではないと判定する。
【0031】
図4には、アンテナ11と、モードS二次監視レーダ1で質問信号の送信及び応答信号の受信が可能な航空機2aと、モードS二次監視レーダ1で拡張スキッタを受信可能な航空機2b1,2b2,2c1,2c2とを示している。すなわち、モードS二次監視レーダ1は、アンテナ11の正面方向fに存在する航空機2aとのみ質問応答を行なうことができる。一方、拡張スキッタは無指向性であるため、モードS二次監視レーダ1は、アンテナ11との向きとは無関係に航空機2b1,2b2,2c1,2c2から送信される拡張スキッタを受信することができる。
【0032】
図4(a)をオールコール期間Taにおけるアンテナ11と監視対象の航空機について表わす図としたとき、図4(b)は、図4(a)のオールコール期間Taに続くロールコール期間Trにおけるアンテナ11と監視対象の航空機について表わす図である。
【0033】
アンテナ11は、時計回りに回転するため、オールコール期間Taで拡張スキッタを送信した航空機2b1,2b2,2c1,2c2のうち、アンテナ11の正面方向より回転方向側の所定範囲(図4(a)の斜線部分)に存在する航空機2b1,2b2は、次のロールコール期間Trにおける捕捉対象となり得る。したがって、モードS二次監視レーダ1は、航空機2b1,2b2が次のスキャンでロールコール期間Trにおける捕捉対象となり得ると判定し、ロールコール期間Trで捕捉を行なう。
【0034】
仮に、モードS二次監視レーダ1がオールコール期間Taに航空機2b1,2b2,2c1,2c2から送信された拡張スキッタを受信したとき、航空機2b1のみがアンテナ11の正面方向より回転方向側の所定範囲(図4(b)の斜線部分)に存在するため、航空機2b1のみが次のロールコール期間Trにおける捕捉対象となる。
【0035】
記憶処理手段135bは、位置判定手段135dによって次のロールコール期間Trの捕捉対象と判定した航空機のモードSアドレス及び位置情報等を記憶装置のロールコール捕捉対象リスト135hに追加する。ロールコール捕捉対象リスト135hでは、少なくとも、航空機の「モードSアドレス」及び「位置情報」を含んでいる。ここで、ロールコール捕捉対象リスト135hが含む「位置情報」は、オールコール期間Taにおける航空機の位置であっても良いし、次のロールコール期間Trにおける航空機の予測位置であっても良い。
【0036】
仮記憶手段135eは、位置判定手段135dによって次のロールコール期間Trにおける捕捉対象でないと判定された航空機の「モードSアドレス」及び「位置情報」等を記憶装置の候補機リスト135iに追加する。候補機リスト135iでは、少なくとも、航空機の「モードSアドレス」及び「位置情報」を含んでいる。ここで、候補機リスト135iが含む「位置情報」は、オールコール期間Taにおける航空機の位置である。
【0037】
予測手段135fは、候補機リスト135iで同一のモードSアドレスについて複数の位置情報が記憶されている場合、この複数の位置情報から、次のロールコール期間Trにおける航空機の位置や航空機がアンテナ11の正面方向fに存在する際の位置を予測する。すなわち、同一のモードSアドレスについて記憶される複数の位置情報とは、同一航空機の過去の異なる時間における位置情報である。したがって、予測手段135fは、過去の異なる時間の位置情報を利用して、ロールコール期間Trの捕捉対象となる位置を予測する。
【0038】
また、記憶処理手段135bは、航空機のモードSアドレス及び予測手段135fが求めた航空機の位置情報を、ロールコール期間Trにおける捕捉対象として、記憶装置のロールコール捕捉対象リスト135hに追加する。
【0039】
ロールコール捕捉処理手段135gは、記憶装置のロールコール捕捉対象リスト135hを参照し、ロールコール期間Trに航空機の捕捉を処理するための制御信号を生成し、チャネル管理部134に出力する。
【0040】
図5に示すように、モードS二次監視レーダ1では、オールコール期間Taには、モードS一括質問信号の送信と質問信号に対して受信する応答信号の処理及びATCRBS一括質問信号の送信と質問信号に対して受信する応答信号の処理に加え、受信する拡張スキッタの処理を実行している。また、モードS二次監視レーダでは、ロールコール期間Trには、オールコール期間Taに一括質問応答で捕捉された航空機の他、オールコール期間Taに拡張スキッタを受信した航空機にもモードS個別質問が送信される。
【0041】
続いて、図6に示すフローチャートを用いて、本発明の実施形態に係る二次監視レーダにおいて、受信する拡張スキッタを利用して航空機を監視する処理について説明する。
【0042】
受信器123が信号を受信すると(S1)、スキッタ判定手段132bは、受信した信号のDFフィールドの値が「10001」又は「10010」と一致し、かつ、PIフィールドのコードが0であるか否かを判定する(S2)。このとき、DFフィールドの値が「10001」又は「10010」と一致し、かつ、PIフィールドのコードが0であれば(S2でYES)、スキッタ判定手段132bは、受信した信号を拡張スキッタであると判定して監視処理部135に出力する(S3)。一方、DFフィールドの値が「10001」又は「10010」と一致しないときやPIフィールドのコードが0でないとき、スキッタ判定手段132bは、受信した信号は拡張スキッタではないと判定し、次に受信する信号を待機する(S2でNO)。
【0043】
位置判定手段135dは、スキッタ判定手段132bから入力した拡張スキッタの位置情報を基に、アンテナ11と拡張スキッタを送信した航空機2の位置関係を判定する(S4)。位置判定手段135dによって拡張スキッタがアンテナ11の正面方向より回転方向側の所定範囲外にある場合(S4でNO)、仮記憶手段135eは、候補機リスト135iにステップS1で受信した拡張スキッタに含まれる情報を追加する(S5)。
【0044】
ここで、候補機リスト135iにステップS5で追加した航空機2に関する位置情報が複数記憶されているとき(S6でYES)、予測手段135fは、次のロールコール期間Trにおける航空機2の位置を予測する(S7)。一方、追加した航空機2に関する位置情報が複数記憶されていないとき、次に受信する信号を待機する(S6でNO)。
【0045】
記憶処理手段135bは、ステップS3で出力された拡張スキッタの位置情報又はステップS7で予測された位置情報等をロールコール期間Trにおける捕捉対象として、ロールコール捕捉対象リスト135hに追加する(S8)。その後、ロールコール捕捉処理手段135gは、ロールコール捕捉対象リスト135hを参照し、ロールコール期間Trに航空機2を捕捉するための処理を実行する(S9)。
【0046】
本発明の最良の実施形態に係るモードS二次監視レーダ1によれば、航空機2から送信される拡張スキッタを利用してロールコール期間Trにおける捕捉対象を決定することができる。したがって、オールコール期間Ta及びロールコール期間Trを有効に使用して航空機2を捕捉し、航空機の監視性能を向上することができる。
【符号の説明】
【0047】
1…モードS二次監視レーダ
11…アンテナ
12…送受信部
121…送受切替器
122…送信器(送信手段)
123…受信器(受信手段)
13…信号処理部
131…送信制御部(送信制御手段)
132…応答処理部
132a…応答判定手段
132b…スキッタ判定手段
133…ATCRBS応答処理部
134…チャネル管理部
135…監視処理部
135a…応答処理手段
135b…記憶処理手段
135c…レポート生成手段
135d…位置判定手段
135e…仮記憶手段
135f…予測手段
135g…ロールコール捕捉処理手段
135h…ロールコール捕捉対象リスト
135i…候補機リスト
2(2a,2b1,2b2,2c1,2c2)…航空機
20…トランスポンダ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視空域を飛行する航空機に質問信号を送信する送信手段と、前記監視空域を飛行する航空機から送信された信号を受信する受信手段とを備え、前記受信手段が質問信号に応答して航空機から送信された応答信号を受信すると、当該応答信号を利用して航空機の飛行を監視する二次監視レーダであって、
前記受信手段が、航空機から送信された前記航空機の識別子及び位置情報を含む拡張スキッタを受信すると、当該拡張スキッタに含まれる位置情報を利用して、前記航空機が所定範囲に存在する否かを判定する位置判定手段と、
前記位置判定手段によって、航空機が所定範囲に存在すると判定されると、当該航空機をロールコール期間の捕捉対象と決定し、当該航空機から受信した拡張スキッタに含まれる前記航空機の識別子及び位置情報を利用して、前記送信手段に質問信号を送信させる送信制御手段と、
を備えることを特徴とする二次監視レーダ。
【請求項2】
前記位置判定手段は、前記拡張スキッタに含まれる位置情報によって、航空機がアンテナからのビームの放射角のうちアンテナの正面に対し前記アンテナの回転方向に存在する場合、所定範囲に存在すると判定することを特徴とする請求項1に記載の二次監視レーダ。
【請求項3】
前記位置判定手段によって、航空機が前記所定範囲外に存在すると判定され、かつ、前記航空機が捕捉できていない航空機であると判定されると、同一の航空機から受信した複数の拡張スキッタに含まれる位置情報から当該航空機の飛行位置を予測する予測手段とをさらに備え、
ロールコール期間において、前記予測手段で予測された飛行位置に質問信号を送信することを特徴とする請求項1又は2に記載の二次監視レーダ。
【請求項1】
監視空域を飛行する航空機に質問信号を送信する送信手段と、前記監視空域を飛行する航空機から送信された信号を受信する受信手段とを備え、前記受信手段が質問信号に応答して航空機から送信された応答信号を受信すると、当該応答信号を利用して航空機の飛行を監視する二次監視レーダであって、
前記受信手段が、航空機から送信された前記航空機の識別子及び位置情報を含む拡張スキッタを受信すると、当該拡張スキッタに含まれる位置情報を利用して、前記航空機が所定範囲に存在する否かを判定する位置判定手段と、
前記位置判定手段によって、航空機が所定範囲に存在すると判定されると、当該航空機をロールコール期間の捕捉対象と決定し、当該航空機から受信した拡張スキッタに含まれる前記航空機の識別子及び位置情報を利用して、前記送信手段に質問信号を送信させる送信制御手段と、
を備えることを特徴とする二次監視レーダ。
【請求項2】
前記位置判定手段は、前記拡張スキッタに含まれる位置情報によって、航空機がアンテナからのビームの放射角のうちアンテナの正面に対し前記アンテナの回転方向に存在する場合、所定範囲に存在すると判定することを特徴とする請求項1に記載の二次監視レーダ。
【請求項3】
前記位置判定手段によって、航空機が前記所定範囲外に存在すると判定され、かつ、前記航空機が捕捉できていない航空機であると判定されると、同一の航空機から受信した複数の拡張スキッタに含まれる位置情報から当該航空機の飛行位置を予測する予測手段とをさらに備え、
ロールコール期間において、前記予測手段で予測された飛行位置に質問信号を送信することを特徴とする請求項1又は2に記載の二次監視レーダ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−266351(P2010−266351A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118474(P2009−118474)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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