説明

二次電池および組電池、並びにこれらを搭載する車両

【課題】 二次電池において、負極活物質の初期充放電ロスに起因する正極活物質の容量ロスを抑制し、電池全体の容量特性の低下を防止しうる手段を提供する。
【解決手段】 集電体の表面に形成された、正極活物質を含む正極活物質層と、電解質層と、集電体の表面に形成された、負極活物質を含む負極活物質層と、がこの順に積層されてなる少なくとも1つの単電池層を有する二次電池において、正極活物質層に、第1正極活物質と、前記第1正極活物質よりも低い充放電電位にて充放電可能であり、前記第1活物質よりも単位質量あたりの電気容量が大きい第2正極活物質と、を含ませる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に関する。特に本発明によれば、二次電池の容量特性のより一層の改善が図られる。
【背景技術】
【0002】
近年、大気汚染や地球温暖化に対処するため、二酸化炭素量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用二次電池の開発が盛んに行われている。
【0003】
モータ駆動用二次電池としては、全ての電池の中で最も高い理論エネルギを有するリチウムイオン二次電池が注目を集めており、現在急速に開発が進められている。リチウムイオン二次電池は、一般に、バインダを用いて正極活物質等を正極集電体の両面に塗布した正極と、バインダを用いて負極活物質等を負極集電体の両面に塗布した負極とが、電解質層を介して接続され、電池ケースに収納される構成を有している。
【0004】
リチウムイオン二次電池の容量特性および出力特性などの特性の向上には、各活物質層を構成する活物質の選定が極めて重要な意味を持つ。
【0005】
ここで、従来、リチウムイオン電池の負極活物質の1つの候補として、非晶質カーボンが知られている(例えば、特許文献1を参照)。特に、非晶質カーボンの1種であるハードカーボンは、単位質量あたりの電気容量が大きいことに加えて、充放電時の膨張収縮も小さく耐久性にも優れることから、負極活物質の候補として有望である。
【特許文献1】特開2001−143666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ハードカーボンなどの非晶質カーボンを負極活物質として採用すると、不可逆容量が大きく、初期充放電ロスが発生するという問題がある。すなわち、非晶質カーボンを負極活物質として用いると、本来発揮しうる理論容量に対して一定割合(例えば、20%程度)が充放電に利用できず、ロスとなってしまうのである。かような初期充放電ロスが発生する原因は完全に明らかとはなっていないが、充電時に負極活物質中に吸蔵されたリチウムイオンの一部がそのまま内部にトラップされてしまうというメカニズムが推定されている。
【0007】
ところで、二次電池の各電極活物質層を構成する各活物質間で、満充電後の放電時に利用される電気容量は等しい。従って、各活物質を、理論容量が等しくなる量で用いた場合であっても、負極活物質において上述したような初期充放電ロスが発生すると、満充電後の放電時には、相手方である正極活物質の理論容量が完全に利用されず、負極活物質の初期充放電ロスに対応する分の容量が無駄になってしまう。一般的に、正極活物質のエネルギ密度は負極活物質(非晶質カーボン)と比較して小さいことから、正極活物質における電池容量のロスは、電池全体の容量特性の低下を引き起こしてしまう。
【0008】
そこで本発明は、二次電池において、負極活物質の初期充放電ロスに起因する正極活物質の容量ロスを抑制し、電池全体の容量特性の低下を防止しうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、主成分となる正極活物質に加えて、他の正極活物質を、負極活物質の初期充放電ロス容量に対応する容量を引き受ける犠牲成分としてさらに添加することで、上記の問題が改善されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、集電体の表面に形成された、正極活物質を含む正極活物質層と、電解質層と、集電体の表面に形成された、負極活物質を含む負極活物質層と、がこの順に積層されてなる少なくとも1つの単電池層を有する二次電池であって、前記正極活物質が、第1正極活物質と、前記第1正極活物質よりも低い充放電電位にて充放電可能であり、前記第1活物質よりも単位質量あたりの電気容量が大きい第2正極活物質と、を含むことを特徴とする、二次電池である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、二次電池において、負極活物質の初期充放電ロスに起因する正極活物質の容量ロスが抑制されうる。その結果、電池全体の容量特性の低下が効果的に防止されうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
本発明は、集電体の表面に形成された、正極活物質を含む正極活物質層と、電解質層と、集電体の表面に形成された、負極活物質を含む負極活物質層と、がこの順に積層されてなる少なくとも1つの単電池層を有する二次電池であって、前記正極活物質が、第1正極活物質と、前記第1正極活物質よりも低い充放電電位にて充放電可能であり、前記第1活物質よりも単位質量あたりの電気容量が大きい第2正極活物質と、を含むことを特徴とする、二次電池である。
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみには制限されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0015】
(第1実施形態)
(構成)
図1は、バイポーラ型リチウムイオン二次電池(以下、「バイポーラ電池」とも称する)である、本実施形態の二次電池の概要を示す断面図である。なお、本明細書においては、バイポーラ電池を例に挙げて詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はかような形態のみに制限されない。
【0016】
図1に示す本実施形態のバイポーラ電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の電池要素21が、外装であるラミネートシート29の内部に封止された構造を有する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態のバイポーラ電池10の電池要素21は、集電体11の一方の面に正極活物質層13が形成され他方の面に負極活物質層15が形成された複数のバイポーラ電極を有する。各バイポーラ電極は、電解質層17を介して積層されて電池要素21を形成する。この際、一のバイポーラ電極の正極活物質層13と前記一のバイポーラ電極に隣接する他のバイポーラ電極の負極活物質層15とが電解質層17を介して向き合うように、各バイポーラ電極および電解質層17が積層されている。
【0018】
隣接する正極活物質層13、電解質層17、および負極活物質層15は、一つの単電池層19を構成する。従って、バイポーラ電池10は、単電池層19が積層されてなる構成を有するともいえる。また、単電池層19の外周には、隣接する集電体11間を絶縁するための絶縁層31が設けられている。なお、電池要素21の最外層に位置する集電体(最外層集電体)(11a、11b)には、片面のみに、正極活物質層13(正極側最外層集電体11a)または負極活物質層15(負極側最外層集電体11b)のいずれか一方が形成されている。
【0019】
さらに、図1に示すバイポーラ電池10では、正極側最外層集電体11aが延長されて正極タブ25とされ、外装であるラミネートシート29から導出している。一方、負極側最外層集電体11bが延長されて負極タブ27とされ、同様にラミネートシート29から導出している。
【0020】
以下、本実施形態の特徴的な構成について、詳細に説明する。
【0021】
本実施形態のバイポーラ電池10は、正極が2種の正極活物質を含む点に特徴を有する。詳細には、第1正極活物質であるスピネル型マンガン酸リチウムと、第2正極活物質である燐酸鉄リチウムとの2種の正極活物質が、正極の活物質層に含まれている。
【0022】
ここで、第2正極活物質である燐酸鉄リチウムは、第1正極活物質であるスピネル型マンガン酸リチウムに比べて、より低い充放電電位にて充放電可能である。具体的には、スピネル型マンガン酸リチウムの充放電電位はリチウム金属に対して約3.9〜4.2Vであるのに対し、燐酸鉄リチウムは約3.4〜3.5Vとより低い電位にて充放電が可能である。従って、初期充放電時の負極活物質の不可逆容量は、より低電位にて充放電可能な燐酸鉄リチウムにより犠牲的に引き受けられる。
【0023】
また、第1正極活物質であるスピネル型マンガン酸リチウムの単位質量あたりの理論電気容量は148mAh/gとそれほど高くはない。にもかかわらず、スピネル型マンガン酸リチウムを正極活物質として用いる場合には、サイクル耐久性や耐熱性を向上させる目的で元素置換処理が施されるのが一般的である。かような処理によれば、実際に使用される際には100mAh/g程度にまで電気容量は低下してしまう場合がある。
【0024】
これに対し、第2正極活物質である燐酸鉄リチウムの単位質量あたりの理論電気容量は170mAh/gと大きい。このため、少量の燐酸鉄リチウムの添加によっても、上述した犠牲効果を発揮させうる。従って、正極活物質の主剤である第1正極活物質の特性を損なうことなく、第1正極活物質における不可逆容量の発生が抑制されうる。
【0025】
上記のような構成とすることで、負極活物質に非晶質カーボン(特に、ハードカーボン)などの不可逆容量の大きい負極活物質を用いた場合であっても、負極における初期充放電ロスに起因する正極活物質の容量ロスが抑制され、電池全体の容量特性の低下が防止されうる。以下、かような効果が得られるメカニズムを図面を参照しながら説明する。
【0026】
図2は、本発明の効果が得られるメカニズムを説明するための模式図である。図2の各図は、本実施形態の電池の、充放電の各時点における状態を示す図である。また、縦軸は各活物質の容量密度(dQ/dE)を示し、横軸は電位を示す。さらに、直線Pは正極の電位を示し、直線Nは負極の電位を示す。よって、直線Pと直線Nとの距離は電池電圧を示す。また、斜線部は放電可能な充電容量(可逆容量)を示し、網掛け部は放電不可能な充電容量(不可逆容量)を示す。
【0027】
図2(a)は、電池作製直後の状態を示す図である。電池作製直後、充電前においては、各電極の電位は±0.5V程度であり、電池電圧は約1V程度である。電池作製直後の充電前において電極に電位が生じ、一定の電池電圧が発生する理由は完全に明らかとはなっていないが、極微量の不純物などが関与しているものと考えられる。
【0028】
充電を開始すると、正極においては、より低い電位にて充放電可能な第2正極活物質が先に充電される。図2(b)は、第2正極活物質の充電が完了した直後の状態を示す図である。この際、負極活物質の充電も進行するが、その一定割合は不可逆容量となっている。
【0029】
さらに充電を続けると、正極においては、より高い充放電電位を有する第1正極活物質の充電が進行する。一方、負極においても同様に充電が進行する。正負極双方の活物質が完全に充電されると、充電は完了する。図2(c)は、充電が完了した状態(満充電状態)を示す図である。
【0030】
一方、放電を開始すると、負極においては、可逆容量に対応する分のみの放電が進行し、不可逆容量に対応する分の放電は行われない。ここで、図3は、第2正極活物質を含まない従来の電池における放電が完了した状態を示す図である。このように、従来の正極では、負極活物質の不可逆容量と同量の不可逆容量が、正極活物質にも発生してしまう。一般に正極活物質のエネルギ密度は負極活物質と比較して小さいことから、図示するような不可逆容量が正極活物質においても発生すると、電池全体の容量特性の低下につながってしまう。
【0031】
図2(d)は、本実施形態の電池における放電が完了した状態を示す図である。本実施形態においては、第1正極活物質よりも充放電電位の低い第2正極活物質の所定量が、正極活物質層に含まれている。これにより、図2(d)に示すように、負極活物質の不可逆容量に対応する正極側の不可逆容量を第2正極活物質が引き受けることとなる。従って、図示するように、正極活物質の主剤である第1正極活物質の放電が完全に行われうる。ただし、第1正極活物質の放電が完全に行われる形態のみに、本発明の技術的範囲が限定されるわけではない。
【0032】
以上のように、本実施形態の電池によれば、正極活物質における放電容量の低下や、これに起因する電池全体の容量特性の低下といった問題が解決されうる。なお、上記のメカニズムはあくまでも推測に過ぎず、他のメカニズムにより電池の容量特性の向上が図られていたとしても、本発明の技術的範囲は何ら影響を受けることはない。
【0033】
以下、本実施形態のバイポーラ電池10を構成する部材について簡単に説明するが、下記の形態のみに制限されることはなく、従来公知の形態が同様に採用されうる。
【0034】
[集電体(最外層集電体を含む)]
集電体11および最外層集電体(11a、11b)は、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス(SUS)箔など、導電性の材料から構成される。集電体の一般的な厚さは、1〜30μmである。ただし、この範囲を外れる厚さの集電体を用いてもよい。
【0035】
集電体11の大きさは、バイポーラ電池10の使用用途に応じて決定される。大型の電池に用いられる大型の電極を作製するのであれば、面積の大きな集電体が用いられる。小型の電極を作製するのであれば、面積の小さな集電体が用いられる。
【0036】
[活物質層]
活物質層は活物質を含み、必要に応じてその他の添加剤をさらに含む。
【0037】
正極活物質層13は、第1正極活物質および第2正極活物質を含む。この際、第2正極活物質は、第1正極活物質に比べて、より低い充放電電位にて充放電可能であり、さらに、第1正極活物質よりも単位質量あたりの電気容量が大きい。正極活物質層をかような構成とすることで、上述したような本発明の効果が得られる。
【0038】
正極活物質の具体的な種類は特に制限されず、上記の条件を満足するように、従来公知の正極活物質が適宜選択されうる。ただし、第2正極活物質については、主剤である第1正極活物質の特性に悪影響を及ぼさないものであることが好ましい。
【0039】
充放電電位および単位質量あたりの電気容量の値(0.1Cでの値)とともに、正極活物質の一例を挙げると、第1正極活物質としては、例えば、スピネル型マンガン酸リチウム(3.9〜4.2V、100mAh/g)、ニッケルコバルト酸リチウム(3.5〜4.2V、170mAh/g)、コバルト酸リチウム(3.9〜4.2V、145mAh/g)などが挙げられる。一方、第2正極活物質としては、例えば、燐酸鉄リチウム(3.4〜3.5V、160mAh/g)、Li(3.2〜3.5V、145mAh/g)、Li1/4MnO(2.9〜3.6V、160mAh/g)などが挙げられる。本発明の効果を充分に発揮させるためには、電池の信頼性および耐久性という観点から、第1正極活物質としては、スピネル型マンガン酸リチウムが好ましく用いられうる。また、電気容量が大きく安定性にも優れるという観点から、第2正極活物質としては、燐酸鉄リチウムが好ましく用いられうる。なお、第1正極活物質および第2正極活物質としては、いずれも、1種のみの活物質が単独で用いられてもよいし、2種以上の活物質が併用されてもよい。
【0040】
第1および第2の正極活物質におけるリチウムの吸蔵放出反応の速度についても特に制限はない。ただし、第1正極活物質は正極活物質の主剤であるため、当該速度は速いほど好ましい。これに対し、第2正極活物質の役割は初回充電時に負極活物質の不可逆容量を犠牲的に引き受けることである。従って、第2正極活物質のリチウム吸蔵放出速度は、第1正極活物質ほど速い必要はない。
【0041】
負極活物質層15は、負極活物質を含む。負極活物質としては、上記のリチウム遷移金属−複合酸化物や、カーボンが好ましい。カーボンとしては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛系炭素材料、カーボンブラック、活性炭、カーボンファイバー、コークス、非晶質カーボン等が挙げられる。非晶質カーボンのなかでも、サイクル耐久性に優れるという観点からは、ハードカーボンが負極活物質として好ましく用いられうる。なお、負極活物質としては、1種のみの活物質が単独で用いられてもよいし、2種以上の活物質が併用されてもよい。
【0042】
各活物質層(13、15)に含まれるそれぞれの活物質の平均粒子径は、特に制限されず、従来公知の知見を参照して適宜調節されうる。好ましくは、活物質の平均粒子径は、1〜30μm程度である。ただし、この範囲を外れる粒子径を有する活物質を用いても、勿論よい。
【0043】
各活物質層(13、15)には、必要であれば、その他の物質が含まれてもよい。例えば、バインダ、導電助剤、リチウム塩(支持電解質)、イオン伝導性ポリマー等が含まれうる。また、イオン伝導性ポリマーが含まれる場合には、前記ポリマーを重合させるための重合開始剤が含まれてもよい。
【0044】
バインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、合成ゴム系バインダ等が挙げられる。
【0045】
導電助剤とは、活物質層(13、15)の導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、アセチレンブラック等が挙げられる。
【0046】
リチウム塩(支持電解質)としては、LiBETI(リチウムビス(パーフルオロエチレンスルホニルイミド);Li(CSON)、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO等が挙げられる。
【0047】
イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)系およびポリプロピレンオキシド(PPO)系のポリマーが挙げられる。ここで、前記イオン伝導性ポリマーは、バイポーラ電池10の電解質層17において電解質として用いられるイオン伝導性ポリマーと同じであってもよく、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
【0048】
重合開始剤は、イオン伝導性ポリマーの架橋性基に作用して、架橋反応を進行させるために配合される。開始剤として作用させるための外的要因に応じて、光重合開始剤、熱重合開始剤などに分類される。重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)や、光重合開始剤であるベンジルジメチルケタール(BDK)等が挙げられる。
【0049】
各活物質層(13、15)に含まれる各成分の配合比は、特に限定されない。配合比は、リチウムイオン二次電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。ただし、第2正極活物質の配合量は、当該活物質が引き受けるべき負極活物質の初期充放電ロス容量(不可逆容量)の大きさを考慮して、設定されることが好ましい。好ましい形態においては、正極活物質層に含まれる第2正極活物質の電気容量の、負極活物質の初期充放電ロス容量(不可逆容量)に対する百分率(以下、「初期ロス置換率」とも称する)が、10〜150%、より好ましくは40〜110%となるように、正極活物質層における第2正極活物質の配合量を決定すればよい。第2正極活物質の配合量が少なすぎると、負極活物質の初期充放電ロス容量を充分に引き受けることができず、本発明の効果が充分に得られない虞がある。一方、第2正極活物質の配合量が多すぎると、第2正極活物質が充放電特性に劣る場合に、電池の制御性に支障をきたす虞がある。
【0050】
[電解質層]
電解質層17を構成する電解質としては、一般に、液体電解質またはポリマー電解質が挙げられる。本発明においては、好ましくはポリマー電解質が用いられる。ポリマー電解質を用いることにより、電解質などの液漏れが防止され、バイポーラ電池10の安全性が向上しうる。
【0051】
ポリマー電解質は、イオン伝導性ポリマーから構成され、イオン伝導性を示すのであれば材料は限定されない。優れた機械的強度を発現させることが可能である点で、重合性のイオン伝導性ポリマーが、熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合などにより架橋されてなるものが好適に用いられる。かかる架橋ポリマーを用いることで電池の信頼性が向上し、かつ簡易な構成で出力特性に優れたバイポーラ電池10が作製される。
【0052】
ポリマー電解質としては、真性ポリマー電解質、およびゲルポリマー電解質が挙げられる。
【0053】
真性ポリマー電解質としては、特に限定されないが、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、およびこれらの共重合体等が挙げられる。かようなポリアルキレンオキシド系高分子には、リチウム塩などの電解質塩がよく溶解しうる。また、これらの高分子は、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。
【0054】
また、ゲルポリマー電解質とは、一般的に、イオン伝導性を有する全固体高分子電解質に、電解液を保持させたものをいう。なお、本願では、リチウムイオン伝導性を有しない高分子の骨格中に、同様の電解液を保持させたものも、ゲルポリマー電解質に含まれるものとする。用いられる電解液(電解質塩および可塑剤)の種類は特に制限されない。電解質塩としては、例えば、LiBETI、LiBF、LiPF、LiN(SOCF、LiN(SO等のリチウム塩が例示される。また、可塑剤としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートなどのカーボネート類などが例示される。
【0055】
電解質層がゲルポリマー電解質を含む場合、電解質層は、ゲルポリマー原料溶液を不織布などのセパレータに含浸させた後、上記の種々の方法を用いて重合することにより形成されたものであってもよい。セパレータを用いることにより、電解液の充填量を高めることができるとともに、電池内部の熱伝導性が確保されうる。
【0056】
[絶縁層]
バイポーラ電池10においては、通常、各単電池層19の周囲に絶縁層31が設けられる。この絶縁層31は、電池内で隣り合う集電体11同士が接触したり、電池要素21における単電池層19の端部の僅かな不揃いなどに起因する短絡が起こったりするのを防止する目的で設けられる。かような絶縁層31の設置により、長期間の信頼性および安全性が確保され、高品質のバイポーラ電池10が提供されうる。
【0057】
絶縁層31を構成する材料としては、絶縁性、固体電解質の脱落に対するシール性や外部からの水分の透湿に対するシール性(密封性)、電池動作温度下での耐熱性などを有するものであればよく、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ゴムなどが用いられうる。なかでも、耐蝕性、耐薬品性、作り易さ(製膜性)、経済性などの観点から、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂が、絶縁層31の構成材料として好ましく用いられる。
【0058】
[タブ]
バイポーラ電池10においては、電池外部に電流を取り出す目的で、最外層集電体(11a、11b)に電気的に接続されたタブ(正極タブ25および負極タブ27)が外装であるラミネートシート29の外部に取り出される。具体的には、正極用最外層集電体11aに電気的に接続された正極タブ25と、負極用最外層集電体11bに電気的に接続された負極タブ27とが、外装の外部に取り出される。
【0059】
タブ(正極タブ25および負極タブ27)を構成する材料は特に制限されず、バイポーラ電池用のタブとして従来用いられている公知の材料が用いられうる。タブの構成材料としては、例えば、アルミニウム、銅、チタン、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、これらの合金等が例示される。なお、正極端子25と負極端子27とでは、同一の材質が用いられてもよいし、異なる材質が用いられてもよい。また、本実施形態のように、最外層集電体(11a、11b)を延長することによりタブ(25、27)としてもよいし、別途準備したタブを最外層集電体に接続してもよい。
【0060】
[外装]
バイポーラ電池10においては、使用時の外部からの衝撃や環境劣化を防止するために、電池要素21は、ラミネートシート29などの外装内に収容されることが好ましい。外装としては特に制限されず、従来公知の外装が用いられうる。自動車の熱源から効率よく熱を伝え、電池内部を迅速に電池動作温度まで加熱しうる点で、好ましくは、熱伝導性に優れた高分子−金属複合ラミネートシート等が用いられうる。
【0061】
(製造方法)
本実施形態のバイポーラ電池10の製造方法については特に制限はなく、電池の製造分野において従来公知の知見を参照して、製造されうる。以下、本実施形態のバイポーラ電池10の製造方法を、簡単に説明する。
【0062】
まず、活物質を含むスラリーを集電体に塗布し、乾燥させて、バイポーラ電極を作製する。ここで、正極活物質を含むスラリーを調製する際には、上記の第1正極活物質および第2正極活物質を、当該スラリー中に添加する。
【0063】
次いで、上記で作製したバイポーラ電極と電解質層とを積層して、電池要素を作製する。電解質層の作製方法も特に制限されず、従来公知の手法により作製が可能である。
【0064】
続いて、得られた電池要素の最外層に、リードが接続されたタブを接合し、当該リードが外部に露出するように、電池要素をラミネートシート中に入れ、真空に封止する。なお、電解質層が電解液を含む場合、すなわち、電解質層が液体電解質またはゲル電解質を含む場合には、ラミネートシートの封止前に、電解液を注液すればよい。
【0065】
以上の工程により、複数の単電池層を有する本実施形態のバイポーラ電池10が完成する。
【0066】
(第2実施形態)
第2実施形態のバイポーラ電池は、上記の第1実施形態と比較して、正極活物質層の構成が異なるのみであり、その他の構成は上記の第1実施形態と同様である。従って、第1実施形態と同一の部材には同一の参照番号を付し、第1実施形態と同様の構成については詳細な説明を省略する。
【0067】
図4は、本実施形態(第2実施形態)のバイポーラ電池10を構成する単電池層19の1つを拡大した拡大断面図である。
【0068】
図4に示すように、本実施形態のバイポーラ電池10において正極活物質層13は、2層構造を有する。具体的には、正極活物質層13は、電解質層17側に位置する第1正極活物質層(図4に示す13a)と、集電体11側に位置する第2正極活物質層13bとからなる。そして、第1正極活物質層13aは、上記の第1実施形態の欄において説明した第1正極活物質を含み、第2正極活物質を含まない。また、第2正極活物質層13bは、第1正極活物質を含まず、第2正極活物質を含む。なお、図4には、正極活物質層13および負極活物質層15がそれぞれ形成される集電体11、並びに単電池層19の周囲に配置される絶縁層31をも示す。
【0069】
ここで、より高出力条件下において充放電を行う場合、より電解質層17に近い側に存在する活物質は、充放電反応に充分に寄与しうる。これに対し、より電解質層17から遠い側(すなわち、集電体11に近い側)に存在する活物質は、充放電反応に充分に寄与することができない場合がある。これは、電極の電解質層17から遠い側ではイオン輸送が起こりにくくなることによるものと推測される。
【0070】
本実施形態(第2実施形態)のバイポーラ電池10によれば、高出力条件下での充放電により適した電池が提供されうる。すなわち、本実施形態のバイポーラ電池10の正極活物質層13においては、正極活物質の主剤である第1正極活物質を含む第1正極活物質層13aが、電解質層17側に配置されている。このため、反応性およびサイクル耐久性に優れる正極活物質を第1正極活物質として第1正極活物質層13aに含ませることで、電池の容量特性の向上のみならず、電池の出力特性の向上も図られる。なお、第2正極活物質層13bに含まれる第2正極活物質は、初期の充放電時以降の充放電反応に関与することを意図して添加されているわけではない。このため、電解質層17から遠い側(集電体11に近い側)に配置されていたとしても、電池の出力特性を低下させることはない。また、第2正極活物質は、初期の充放電時において、負極活物質の不可逆容量を引き受けることができれば充分であり、その目的は、電解質層17から遠い側(集電体11に近い側)に配置されていたとしても、充分に達成されうる。
【0071】
本実施形態において、正極活物質層13を構成する各層(13a、13b)の厚さの比は特に制限されず、第1および第2正極活物質のそれぞれの使用量に応じて、適宜調節されうる。
【0072】
以上、第2実施形態として、正極活物質層13が2層からなる形態を説明したが、場合によっては、正極活物質層13を3層以上の層から構成してもよい。かような形態としては、例えば、活物質として第1正極活物質のみを含む第1正極活物質層と、第1および第2正極活物質の双方を含む第2正極活物質層と、第2正極活物質層のみを含む第3正極活物質層とが、電解質層17側から集電体11側に向かってこの順に積層されてなる形態が例示されうる。
【0073】
(第3実施形態)
第3実施形態では、上記の第1実施形態および/または第2実施形態のバイポーラ電池を複数個、並列および/または直列に接続して、組電池を構成する。
【0074】
図5は、本実施形態の組電池を示す斜視図である。
【0075】
図5に示すように、組電池40は、上記の第1実施形態に記載のバイポーラ電池が複数個接続されることにより構成される。各バイポーラ電池10の正極タブ25および負極タブ27がバスバーを用いて接続されることにより、各バイポーラ電池10が接続されている。組電池40の一の側面には、組電池40全体の電極として、電極ターミナル(42、43)が設けられている。
【0076】
組電池40を構成する複数個のバイポーラ電池10を接続する際の接続方法は特に制限されず、従来公知の手法が適宜採用されうる。例えば、超音波溶接、スポット溶接などの溶接を用いる手法や、リベット、カシメなどを用いて固定する手法が採用されうる。かような接続方法によれば、組電池40の長期信頼性が向上しうる。
【0077】
本実施形態の組電池40によれば、上記の第1実施形態および/または第2実施形態のバイポーラ電池10を用いて組電池化することで、容量特性に優れる組電池が提供されうる。
【0078】
なお、組電池40を構成するバイポーラ電池10の接続は、複数個全て並列に接続してもよく、また、複数個全て直列に接続してもよく、さらに、直列接続と並列接続とを組み合わせてもよい。
【0079】
(第4実施形態)
第4実施形態では、上記の第1実施形態および/または第2実施形態のバイポーラ電池10、および/または第3実施形態の組電池40をモータ駆動用電源として搭載して、車両を構成する。バイポーラ電池10または組電池40をモータ用電源として用いる車両としては、例えば、ガソリンを用いない完全電気自動車、シリーズハイブリッド自動車やパラレルハイブリッド自動車などのハイブリッド自動車、および燃料電池自動車などの、車輪をモータによって駆動する自動車が挙げられる。
【0080】
参考までに、図6に、組電池40を搭載する自動車50の概略図を示す。自動車50に搭載される組電池40は、上記で説明したような特性を有する。このため、自動車50に組電池40を搭載することで、自動車50の出力特性が向上し、さらには、自動車50のより一層の軽量化および小型化が可能となる。
【0081】
以上のように、本発明の幾つかの好適な実施形態について示したが、本発明は、以上の実施形態に限られるものではなく、当業者によって種々の変更、省略、および追加が可能である。例えば、以上の説明ではバイポーラ型のリチウムイオン二次電池(バイポーラ電池)を例に挙げて説明したが、本発明の電池の技術的範囲がバイポーラ電池のみに制限されることはなく、例えば、バイポーラ型でないリチウムイオン二次電池であってもよい。参考までに、図7に、バイポーラ型でないリチウムイオン二次電池60の概要を示す断面図を示す。なお、図7に示すリチウムイオン二次電池60においては、負極活物質層15が正極活物質層13よりも一回り小さいが、かような形態のみには制限されない。正極活物質層13と同じかまたは一回り大きい負極活物質層15もまた、用いられうる。
【実施例】
【0082】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0083】
実施例1
以下の手法により電極を作製し、作製した電極を用いてさらに試験用セルを作製した。この際、正負極の活物質層の単位面積あたりの各活物質の質量比(塗布密度比)を、下記の表1に示すように調節した。
【0084】
<負極の作製>
負極活物質であるハードカーボン(平均粒子径:20μm、充放電可逆容量:450mAh/g、初期充放電時不可逆容量:85mAh/g)(90質量部)、およびバインダであるポリフッ化ビニリデン(PVdF)(10質量部)を混合し、次いでスラリー粘度調整溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量添加して、負極活物質スラリーを調製した。
【0085】
一方、負極用の集電体として、銅箔(厚さ:15μm)を準備した。上記で調製した負極活物質スラリーを、準備した集電体の両面にコーターにより塗布し、乾燥させた。なお、負極活物質層の片面の厚さは、130μmであった。得られた積層体をプレスし、105mm×55mmのサイズに切り出して、試験用負極とした。
【0086】
<正極の作製>
まず、第1正極活物質として、スピネル型マンガン酸リチウム(LiMn、平均粒子径:20μm、充放電容量:100mAh/g)を準備した。また、文献(Journal of Electrochemical Society,148(2001)A224.)の記載に従って、第2正極活物質である燐酸鉄リチウム(LiFePO)を合成し、ボールミルを用いて粉砕した。得られた燐酸鉄リチウムの平均粒子径は、約5μmであった。
【0087】
次いで、上記で準備した第1正極活物質であるスピネル型マンガン酸リチウム(600質量部)、同じく上記で調製した第2正極活物質である燐酸鉄リチウム(118質量部)、導電助剤であるアセチレンブラック(44質量部)、およびバインダであるポリフッ化ビニリデン(PVdF)(44質量部)を混合し、次いでスラリー粘度調整溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を適量添加して、正極活物質スラリーを調製した。
【0088】
一方、正極用の集電体として、アルミニウム箔(厚さ:20μm)を準備した。上記で調製した正極活物質スラリーを、準備した集電体の両面にコーターにより塗布し、乾燥させ、100mm×50mmのサイズに切り出して、試験用正極とした。なお、正極の容量密度は、負極の容量密度の80%とした。
【0089】
<試験用セルの作製>
電解液として、プロピレンカーボネート(PC)とジメチルカーボネート(DMC)との等体積混合液にリチウム塩であるLiPFを1Mの濃度に溶解させたものを準備した。
【0090】
また、セパレータとして、ポリプロピレン製微多孔膜(厚さ:25μm)を準備した。
【0091】
上記で準備した正極(10枚)および負極(11枚)を、同じく上記で準備したセパレータを介して交互に積層して、電池要素とした。その後、各正極にはアルミニウムリードを溶接し、各負極にはニッケルリードを溶接した。さらに、各リードが外部に露出するように前記電池要素をラミネートフィルム中に入れ、真空乾燥機を用いて1日間乾燥後、上記で準備した電解液を注液し、さらに真空に封止して、試験用セルを完成させた。
【0092】
<実施例2および3>
正極活物質スラリー中の第1正極活物質および第2正極活物質の塗布密度比を下記の表1に示す値としたこと以外は、上記の実施例1と同様の手法により、試験用セルを作製した。
【0093】
<実施例4>
正極活物質スラリーとして、正極活物質の総量は一定のままで第2正極活物質を含まないこと以外は上記の実施例1で調製したのと同様の第1正極活物質スラリー、および、正極活物質の総量は一定のままで第1正極活物質を含まないこと以外は上記の実施例1で調製したのと同様の第2正極活物質スラリーをそれぞれ調製した。
【0094】
その後、集電体の両面に、まず第2正極活物質スラリーを塗布し、乾燥させて、第2正極活物質層を形成した。その後、前記第2正極活物質層の上層に、第1正極活物質スラリーを塗布し、乾燥させ、第1正極活物質層を形成して、正極を作製した。得られた正極活物質層における各活物質の塗布密度比を下記の表1に示す。
【0095】
上記以外の手法については、上記の実施例1と同様の手法により、試験用セルを作製した。
【0096】
<比較例1>
正極活物質スラリーに第2正極活物質を添加せず、第1正極活物質の塗布密度比を下記の表1に示す値としたこと以外は、上記の実施例1と同様の手法により、試験用セルを作製した。
【0097】
<放電容量の測定およびエネルギ密度の算出>
上記の各実施例および各比較例について、それぞれ3個ずつ同一の試験用コインセルを作製した。次いで、それぞれの試験用セルに対し、正極の理論容量に対して0.3Cの電流値にて定電流充電を行い、その後4.2Vの電圧値にて定電圧充電を行った。この際、定電流充電および定電圧充電の合計時間は7時間とした。
【0098】
上記の充電後、正極の理論容量に対して0.3Cの電流値にて2.7Vの電圧値まで定電流放電を行った。その後、0.5Cの電流値にて上記と同様に合計4時間の定電流/定電圧充電を行い、次いで、0.5Cの電流値にて上記と同様に定電流放電を行った。この0.5Cの電流値での充電/放電をもう1回繰り返し、この際の放電時の電池容量を測定した。そして、下記数式1:
【0099】
【数1】

【0100】
に従って、各試験用セルの質量エネルギ密度を算出し、各実施例および比較例ごとに平均値を得た。得られた質量エネルギ密度の平均値について、比較例における平均値を100とした場合の相対値として、各実施例および比較例における初期ロス置換率の値とともに、下記の表1に示す。
【0101】
【表1】

【0102】
各実施例と各比較例との比較から、第1正極活物質よりも低い充放電電位にて充放電可能であり、第1活物質よりも単位質量あたりの電気容量が大きい第2正極活物質を正極活物質層に添加することにより、負極活物質の初期充放電ロスに起因する正極活物質の容量ロスが抑制されうる。これは、負極活物質の初期充放電ロスが、第2の正極活物質により犠牲的に引き受けられ、第1正極活物質の電気容量のうち充放電に有効に使用されうる割合が上昇することによると考えられる。
【0103】
以上から、本発明によれば、電池全体の容量特性の低下が効果的に防止され、容量特性に優れる電池が提供されうる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】バイポーラ電池である、第1実施形態の電池の概要を示す断面図である。
【図2】本発明の効果が得られるメカニズムを説明するための模式図である。図2(a)は、電池作製直後の状態を示す図である。図2(b)は、第2正極活物質の充電が完了した直後の状態を示す図である。図2(c)は、充電が完了した状態(満充電状態)を示す図である。図2(d)は、本実施形態の電池における放電が完了した状態を示す図である。
【図3】第2正極活物質を含まない従来の電池における放電が完了した状態を示す図である。
【図4】第2実施形態のバイポーラ電池を構成する単電池層の1つを拡大した拡大断面図である。
【図5】第3実施形態の組電池を示す斜視図である。
【図6】第3実施形態の組電池を搭載する第4実施形態の自動車の概略図である。
【図7】バイポーラ型でないリチウムイオン二次電池の概要を示す断面図である。
【符号の説明】
【0105】
10 バイポーラ電池、
11 集電体、
13 正極活物質層、
13a 第1正極活物質層、
13b 第2正極活物質層、
15 負極活物質層、
17 電解質層、
19 単電池層、
21 電池要素、
25 正極タブ、
27 負極タブ、
29 ラミネートシート、
31 絶縁層、
33 正極集電体、
35 負極集電体、
40 組電池、
50 自動車、
60 バイポーラ型でないリチウムイオン二次電池。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体の表面に形成された、正極活物質を含む正極活物質層と、電解質層と、集電体の表面に形成された、負極活物質を含む負極活物質層と、がこの順に積層されてなる少なくとも1つの単電池層を有する二次電池であって、
前記正極活物質層が、第1正極活物質と、前記第1正極活物質よりも低い充放電電位にて充放電可能であり、前記第1活物質よりも単位質量あたりの電気容量が大きい第2正極活物質と、を含むことを特徴とする、電池。
【請求項2】
前記正極活物質層に含まれる前記第2正極活物質の電気容量の、前記負極活物質の初期充放電ロス容量に対する百分率が、10〜150%である、請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記正極活物質層が、
第1正極活物質を含む第1正極活物質層と、
前記第1活物質層よりも集電体側に位置する、第2正極活物質を含む第2正極活物質層と、
の少なくとも2層を含む、請求項1または2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記負極活物質が非晶質カーボンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項5】
前記第1正極活物質がスピネル型マンガン酸リチウムである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項6】
前記第2正極活物質が燐酸鉄リチウムである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項7】
バイポーラ型リチウムイオン二次電池である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の二次電池を用いた組電池。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の二次電池、または請求項8に記載の組電池を搭載する車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−294272(P2006−294272A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109188(P2005−109188)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】