説明

二次電池の制御装置

【課題】二次電池の劣化の程度に応じて二次電池の電圧が許容電圧を越えることを適切に抑制する。
【解決手段】ECUは、バッテリに入力される実入力電力Pbが許容電力Win未満の状態でバッテリ電圧Vbが許容電圧V2を超えている超過時間αを計測し(211)、超過時間αが長いほどバッテリの劣化レベルLVを大きい値に算出する(213)。ECUは、劣化レベルLVが大きいほどしきい電圧V1を低い値に算出する(221)。ECUは、バッテリ電圧Vbがしきい電圧V1を超えたというWin−F/B制御開始条件が成立した場合、バッテリ電圧Vbがしきい電圧V1以下となるように許容電力Winをフィードバック制御する(222)。ECUは、バッテリの実入力電力Pbを許容電力Win以下に制限する(223)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2010−60408号公報(特許文献1)には、リチウムイオン二次電池を一定の電力値で連続的に放電および充電させる診断モードにおいて取得されたリチウムイオン二次電池の電圧変化に基づきリチウムイオン二次電池の劣化状態を判定するとともに、その劣化状態に応じて充放電電力を制限することによってリチウムイオン二次電池の更なる劣化を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−60408号公報
【特許文献2】特開2003−308885号公報
【特許文献3】特開2002−162451号公報
【特許文献4】特開2002−78223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のように単に二次電池の劣化状態に応じて充放電電力を制限するだけでは、二次電池の劣化の程度によっては、二次電池の電圧が許容電圧を越えてしまうおそれがある。しかしながら、特許文献1においては、このような課題およびその解決手法について何ら言及されていない。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、二次電池の劣化の程度に応じて二次電池の電圧が許容電圧を越えることを適切に抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る二次電池の制御装置は、二次電池に供給される実電力を許容電力値以下に制限する制限部と、開始条件が成立したときに、二次電池の実電圧がしきい電圧以下となるように許容電力値をフィードバック制御する制御部と、実電力が許容電力値未満の状態で実電圧が許容電圧を超えている超過時間に応じて開始条件を変更する変更部とを備える。
【0007】
好ましくは、変更部は、超過時間に応じて二次電池の劣化レベルを算出し、劣化レベルに応じて開始条件を変更する。
【0008】
好ましくは、変更部は、超過時間が長いほど劣化側のレベルとなるように劣化レベルを算出し、劣化レベルが劣化側のレベルであるほど開始条件を成立し易くする。
【0009】
好ましくは、開始条件は、許容電圧よりも低いしきい電圧を実電圧が超えたという条件である。変更部は、劣化レベルが劣化側のレベルであるほどしきい電圧を低い値に低下させる。
【0010】
好ましくは、変更部は、超過時間が長いほど開始条件を成立し易くする。
好ましくは、開始条件は、許容電圧よりも低いしきい電圧を実電圧が超えたという条件である。変更部は、超過時間が長いほどしきい電圧を低い値に低下させる。
【0011】
好ましくは、二次電池は、車両駆動用の電動機に電力を供給するためのリチウムイオン二次電池である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、二次電池の劣化の程度に応じて二次電池の電圧が許容電圧を越えることを適切に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】車両の全体ブロック図である。
【図2】リチウムイオン二次電池の使用時間と内部抵抗との関係を模式的に示す図である。
【図3】ECUの機能ブロック図である。
【図4】超過時間αと劣化レベルLVとの関係を模式的に示す図である。
【図5】劣化レベルLVとしきい電圧低下量ΔV1との関係を模式的に示す図である。
【図6】バッテリの実入力電力Pbとバッテリ電圧Vbとの関係を示す図(その1)である。
【図7】バッテリの実入力電力Pbとバッテリ電圧Vbとの関係を示す図(その2)である。
【図8】バッテリの実入力電力Pbとバッテリ電圧Vbとの関係を示す図(その3)である。
【図9】ECUの処理手順を示すフローチャート(その1)である。
【図10】ECUの処理手順を示すフローチャート(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に従う車両1の全体ブロック図である。図1を参照して、この車両1は、エンジン10と、第1MG(Motor Generator)20と、第2MG30と、動力分割装置40と、減速機50と、PCU(Power Control Unit)60と、バッテリ70と、駆動輪80と、ECU(Electronic Control Unit)200とを備える。
【0016】
エンジン10、第1MG20および第2MG30は、動力分割装置40を介して連結される。そして、この車両1は、エンジン10および第2MG30の少なくとも一方から出力される駆動力によって走行する。エンジン10が発生する動力は、動力分割装置40によって2経路に分割される。すなわち、一方は減速機50を介して駆動輪80へ伝達される経路であり、もう一方は第1MG20へ伝達される経路である。
【0017】
エンジン10は、ECU200からの制御信号S1によって制御される。第1MG20および第2MG30は、交流電動機であり、たとえば、三相交流同期電動機である。第1MG20は、動力分割装置40によって分割されたエンジン10の動力を用いて発電する。第2MG30は、バッテリ70に蓄えられた電力および第1MG20により発電された電力の少なくとも一方を用いて駆動力を発生する。そして、第2MG30の駆動力は、減速機50を介して駆動輪80に伝達される。なお、車両の制動時等には、減速機50を介して駆動輪80により第2MG30が駆動され、第2MG30が発電機として動作する。これにより、第2MG30は、車両の運動エネルギを電力に変換する回生ブレーキとしても機能する。第2MG30により発電された回生電力は、バッテリ70に蓄えられる。
【0018】
動力分割装置40は、サンギヤと、ピニオンギヤと、キャリアと、リングギヤとを含む遊星歯車から成る。ピニオンギヤは、サンギヤおよびリングギヤと係合する。キャリアは、ピニオンギヤを自転可能に支持するとともに、エンジン10のクランクシャフトに連結される。サンギヤは、第1MG20の回転軸に連結される。リングギヤは第2MG30の回転軸および減速機50に連結される。このように、エンジン10、第1MG20および第2MG30が、遊星歯車からなる動力分割装置40を介して連結されることで、エンジン回転速度Ne、第1MG回転速度(第1MG20の回転軸の回転速度)Nm1および第2MG回転速度(第2MG30の回転軸の回転速度)Nm2は、共線図において直線で結ばれる関係になる。
【0019】
PCU60は、ECU200からの制御信号S2によって制御される。PCU60は、バッテリ70に蓄えられた直流電力を第1MG20および第2MG30を駆動可能な交流電力に変換して第1MG20および/または第2MG30に出力する。これにより、バッテリ70に蓄えられた電力で第1MG20および/または第2MG30が駆動される。また、PCU60は、第1MG20および/または第2MG30によって発電される交流電力をバッテリ70を充電可能な直流電力に変換してバッテリ70へ出力する。これにより、第1MG20および/または第2MG30が発電した電力でバッテリ70が充電される。
【0020】
バッテリ70は、第1MG20および/または第2MG30を駆動するための電力を蓄えるリチウムイオン二次電池である。
【0021】
ECU200には、回転速度センサ11、レゾルバ12,13、車速センサ14、アクセルポジションセンサ15、監視ユニット16などが接続される。
【0022】
回転速度センサ11は、エンジン回転速度(エンジン10のクランクシャフトの回転速度)Neを検出する。レゾルバ12は、第1MG回転速度Nm1を検出する。レゾルバ13は、第2MG回転速度Nm2を検出する。車速センサ14は、ドライブシャフトの回転速度から車速Vを検出する。アクセルポジションセンサ15は、ユーザによるアクセルペダルの操作量Aを検出する。監視ユニット16は、バッテリ70の状態(バッテリ電圧Vb、バッテリ電流Ib、バッテリ温度Tb)を検出する。これらの各センサは、検出結果を表わす信号をECU200に送信する。
【0023】
ECU200は、図示しないCPU(Central Processing Unit)およびメモリを内蔵し、当該メモリに記憶された情報や各センサからの情報に基づいて、所定の演算処理を実行するように構成される。
【0024】
図2は、リチウムイオン二次電池の使用時間と内部抵抗との関係を模式的に示す図である。ニッケル水素二次電池の内部抵抗は使用時間の影響をほとんど受けない(図2の破線)のに対し、リチウムイオン二次電池の内部抵抗は使用時間が長いほど上昇する特性がある。バッテリ70はリチウムイオン二次電池であるため、使用時間が長いほど内部抵抗が上昇する。
【0025】
図3は、ECU200の機能ブロック図である。図3に示した各機能ブロックは、ハードウェアによって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0026】
ECU200は、劣化判定部210と、パワー制御部220とを含む。
劣化判定部210は、超過時間計測部211と、SOC算出部212と、劣化レベル算出部213とを含む。
【0027】
超過時間計測部211は、バッテリ70に供給される実電力(以下「実入力電力Pb」ともいう)が後述の許容電力Win未満の状態でバッテリ電圧Vbが許容電圧V2を超えている時間(以下、「超過時間α」ともいう)を計測する。なお、許容電圧V2は、バッテリ70が過電圧とならない電圧の上限値であって、実験等によって予め定められる。バッテリ電圧Vbがこの許容電圧V2を超える状態が続くと、バッテリ70の劣化が促進される結果となる。
【0028】
SOC算出部212は、バッテリ電圧Vb、バッテリ電流Ib、バッテリ温度Tbの履歴などに基づいてバッテリ70の蓄電状態SOC(State Of Charge)を算出する。
【0029】
劣化レベル算出部213は、超過時間α、蓄電状態SOC、バッテリ温度Tbなどに基づいて、バッテリ70の劣化レベルLVを算出する。劣化レベルLVは、バッテリ70の内部抵抗値の増加に伴なうバッテリ70の劣化の度合いを表わす指標である。
【0030】
図4は、超過時間αと劣化レベルLVとの関係を模式的に示す図である。図4に示すように、劣化レベルLVは超過時間αが長いほど大きい値(劣化側のレベル)となるように算出される。すなわち、劣化レベル算出部213は、超過時間αが長いほど、バッテリ70の内部抵抗(図2参照)が大きくバッテリ70が劣化していると判断して、劣化レベルLVを大きい値にする。
【0031】
図3に戻って、パワー制御部220について説明する。パワー制御部220は、V1算出部221と、Win設定部222と、Pb制限部223とを含む。
【0032】
V1算出部221は、劣化レベルLVに基づいてしきい電圧V1(<許容電圧V2)を算出する。なお、しきい電圧V1は、後述するWin−F/B制御に用いられる値である。
【0033】
V1算出部221は、まず、劣化レベルLVに基づいてしきい電圧V1の低下量ΔV1(>0)を算出する。
【0034】
図5は、劣化レベルLVとしきい電圧V1の低下量ΔV1との関係を模式的に示す図である。図5に示すように、低下量ΔV1は、劣化レベルLVが大きいほど、大きい値に算出される。
【0035】
そして、V1算出部221は、算出した低下量ΔV1をしきい電圧V1の前回値から減じた値を、しきい電圧V1の今回値として算出する。したがって、しきい電圧V1は、劣化レベルLVが大きいほど(すなわち超過時間αが長いほど)、低い値に設定される。
【0036】
図3に戻って、Win設定部222について説明する。Win設定部222は、バッテリ70の許容電力Winを設定する。
【0037】
Win設定部222は、バッテリ電圧Vbがしきい電圧V1を超えたという条件(以下、「Win−F/B制御開始条件」という)が成立した場合、バッテリ電圧Vbがしきい電圧V1以下となるように許容電力Winをフィードバック制御する(以下、このフィードバック制御を「Win−F/B制御」という)。このWin−F/B制御によって、許容電力Winは通常値よりも制限されることになる。
【0038】
Win設定部222は、Win−F/B制御の実行中、バッテリ電圧Vbのしきい電圧V1からの超過量が大きいほど許容電力Winの制限量を大きくする。ただし、ショック発生を防止するために、許容電力Winの制限レートには上限値が設けられる。
【0039】
ここで、しきい電圧V1は、上述したように、V1算出部221によって、劣化レベルLVが大きいほど(すなわち超過時間αが長いほど)、低い値に設定される。したがって、Win−F/B制御開始条件は、劣化レベルLVが大きいほど(すなわち超過時間αが長いほど)成立し易くなるように変更される。
【0040】
一方、Win−F/B制御開始条件が成立していない場合、Win設定部222は、許容電力Winを通常値に設定する。なお、許容電力Winの通常値は、バッテリ温度Tbや蓄電状態SOCに応じて設定される。
【0041】
Pb制限部223は、バッテリ70の実入力電力Pbを許容電力Win以下に制限するようにPCU60を制御する。ここで、上述したように、劣化レベルLVが大きいほどWin−F/B制御開始条件が成立し易くなるように変更されている。したがって、劣化レベルLVが大きいほどWin−F/B制御を早い段階から開始される。これにより、実入力電力Pbを早い段階から制限することができるため、劣化レベルLVが大きくてもバッテリ電圧Vbが許容電圧V2を超えないようにすることができる。
【0042】
図6は、バッテリ70が新品状態(ほとんど劣化していない状態)である場合の実入力電力Pbとバッテリ電圧Vbとの関係を示す図である。時刻t1でバッテリ電圧Vbがしきい電圧V1を超えると、Win−F/B制御が開始され、許容電力Winが低下され始める。これに伴なって実入力電力Pbも低下し始めるため、上昇していたバッテリ電圧Vbも少し遅れて低下し始め、その後の時刻t2でバッテリ電圧Vbはしきい電圧V1まで低下される。
【0043】
図6に示すように、バッテリ70が新品状態である場合、実入力電力Pbを許容電力Win以下に制限していれば、バッテリ電圧Vbが許容電圧V2を越える前にバッテリ電圧Vbが低下し始めるため、時刻t1〜t2の間においてもバッテリ電圧Vbが許容電圧V2を越えることはない。これに対し、バッテリ70が劣化状態(劣化が進んでいる場合)である場合、実入力電力Pbを許容電力Win以下に制限しても、バッテリ電圧Vbが許容電圧V2を越える場合がある。
【0044】
図7は、バッテリ70が劣化状態である場合の実入力電力Pbとバッテリ電圧Vbとの関係を示す図である。時刻t3でバッテリ電圧Vbがしきい電圧V1を超えると、Win−F/B制御が開始され、許容電力Winが低下され始める。しかしながら、バッテリ70が劣化状態である場合は、実入力電力Pbが低下し始めてからバッテリ電圧Vbが低下し始めるまでの時間が新品状態よりも長くなる(すなわちWin−F/B制御の開始タイミングに対してバッテリ電圧Vbが実際に低下し始めるタイミングが新品状態よりも遅れる)傾向にある。この傾向は、バッテリ70の劣化が進んでいるほど強く現れる。その結果、図7に示すように、実入力電力Pbを許容電力Win以下に制限していても、Win−F/B制御を開始した時刻t3からバッテリ電圧Vbが実際にしきい電圧V1まで低下する時刻t6の間において、バッテリ電圧Vbが許容電圧V2を越えてしまう場合がある。このような状態が頻繁に生じると、過電圧によるバッテリ70の劣化がさらに促進されてしまう。
【0045】
このような問題を防止するために、ECU200(V1算出部221)は、上述したように、実入力電力Pbが許容電力Win未満の状態でバッテリ電圧Vbが許容電圧V2を超えている超過時間α(図7では時刻t4〜t5の時間)を計測し、超過時間αに応じてバッテリ70の劣化レベルLVを算出する。そして、ECU200(V1算出部221)は、劣化レベルLVが大きい値(劣化側のレベル)であるほど、しきい電圧V1を低下させる。
【0046】
図8は、バッテリ70が劣化状態である場合にしきい電圧V1をΔV1だけ低下させたときの実入力電力Pbとバッテリ電圧Vbとの関係を示す図である。図8に示すように、しきい電圧V1をΔV1だけ低下させることによって、より早い段階(図8の時刻t7よりも早い時刻t6)からWin−F/B制御を開始することができる。これにより、劣化状態においても、バッテリ電圧Vbが許容電圧V2を越える前にバッテリ電圧Vbを低下させ始めることができるため、バッテリ70の過電圧が適切に防止される。
【0047】
図9は、しきい電圧V1を算出するまでのECU200の処理手順を示すフローチャートである。図9に示すフローチャートは、予め定められた周期で繰り返し実行される。
【0048】
ステップ(以下、ステップを「S」と略す)10にて、ECU200は、実入力電力Pbが許容電力Win未満であるか否かを判断する。
【0049】
実入力電力Pbが許容電力Win未満である場合(S10にてYES)、ECU200は、処理をS11に移し、バッテリ電圧Vbが許容電圧V2を越えているか否かを判断する。
【0050】
バッテリ電圧Vbが許容電圧V2を越えている場合(S11にてYES)、ECU200は、処理をS12に移し、超過時間αの計測を開始あるいは継続する。
【0051】
S13にて、ECU200は、超過時間αが所定時間α0を超えたか否かを判定する。
超過時間αが所定時間α0を超えた場合(S13にてYES)、ECU200は、S14にて超過時間αから劣化レベルLVを算出する(図4参照)。その後、ECU200は、S15にて劣化レベルLVから低下量ΔV1を算出し(図5参照)、S16にてしきい電圧V1の前回値から低下量ΔV1を減じた値をしきい電圧V1の今回値として算出する。ECU800は、S17にて、算出されたしきい電圧V1の今回値をメモリに記憶する。
【0052】
図10は、しきい電圧V1を算出した後のECU200の処理手順を示すフローチャートである。図10に示すフローチャートは、予め定められた周期で繰り返し実行される。
【0053】
S20にて、ECU200は、メモリに記憶されたしきい電圧V1を読み出す。
S21にて、ECU200は、バッテリ電圧Vbがしきい電圧V1に達したか否か(すなわちWin−F/B制御開始条件が成立したか否か)を判断する。
【0054】
バッテリ電圧Vbがしきい電圧V1に達した場合(S21にてYES)、ECU200は、S22にて、許容電力Winを上述したWin−F/B制御によって設定する。このWin−F/B制御によって、バッテリ電圧Vbがしきい電圧V1以下となるように許容電力Winが通常値よりも制限されることになる。
【0055】
一方、バッテリ電圧Vbがしきい電圧V1に達していない場合(S21にてNO)、ECU200は、S23にて、許容電力Winを通常値に設定する。
【0056】
S24にて、ECU200は、バッテリ70の実入力電力Pbを、許容電力Win以下に制限する。
【0057】
以上のように、本実施の形態に係るECU200は、バッテリ70の実入力電力Pbが許容電力Win未満の状態でバッテリ電圧Vbが許容電圧V2を超えている超過時間αを計測し、超過時間αに応じてバッテリ70の劣化レベルLVを算出する。そして、ECU200は、劣化レベルLVが大きい値であるほど、しきい電圧V1を低下させてWin−F/B制御開始条件が成立し易くする。これにより、より早い段階からWin−F/B制御を開始して許容電力Winを低下させる(すなわち実入力電力Pbを低下させる)ことができる。そのため、バッテリ電圧Vbが許容電圧V2を越えることをより適切に防止することができる。その結果、バッテリ70の劣化促進を適切に防止することができる。すなわち、従来においては、バッテリの内部抵抗値が上昇すると、バッテリ電圧が許容電圧よりも上昇し更なる劣化を促進させてしまっていたが、本実施の形態においてはこれを防止できる。
【0058】
また、従来においては、バッテリの内部抵抗の上昇による劣化を算出する際に、電圧と電流の同期が必要であった。これに対し、本実施の形態では、超過時間αのみでバッテリ70の劣化レベルLV(内部抵抗の上昇による劣化)を算出するため、センサの簡素化(コストダウン)が可能となる。
【0059】
なお、本実施の形態では、Win−F/B制御開始条件を「バッテリ電圧Vbがしきい電圧V1を超えた」という条件としたが、Win−F/B制御開始条件はこれに限定されず、変更することも可能である。たとえば、バッテリ電圧Vb以外のパラメータが特定の状態になった場合に将来的にバッテリ過電圧となると予測される場合には、そのパラメータが特定の状態になったという条件をWin−F/B制御開始条件にしてもよい。この場合においても、劣化レベルLVが大きい値であるほど、Win−F/B制御開始条件が成立し易くするするように変更すればよい。
【0060】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
1 車両、10 エンジン、11 回転速度センサ、12,13 レゾルバ、14 車速センサ、15 アクセルポジションセンサ、16 監視ユニット、20 第1MG、30 第2MG、40 動力分割装置、50 減速機、80 駆動輪、200 ECU、210 劣化判定部、211 超過時間計測部、212 SOC算出部、213 劣化レベル算出部、220 パワー制御部、221 V1算出部、222 Win設定部、223 Pb制限部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の制御装置であって、
前記二次電池に供給される実電力を許容電力値以下に制限する制限部と、
開始条件が成立したときに、前記二次電池の実電圧がしきい電圧以下となるように前記許容電力値をフィードバック制御する制御部と、
前記実電力が前記許容電力値未満の状態で前記実電圧が許容電圧を超えている超過時間に応じて前記開始条件を変更する変更部とを備える、二次電池の制御装置。
【請求項2】
前記変更部は、前記超過時間に応じて前記二次電池の劣化レベルを算出し、前記劣化レベルに応じて前記開始条件を変更する、請求項1に記載の二次電池の制御装置。
【請求項3】
前記変更部は、前記超過時間が長いほど劣化側のレベルとなるように前記劣化レベルを算出し、前記劣化レベルが劣化側のレベルであるほど前記開始条件を成立し易くする、請求項2に記載の二次電池の制御装置。
【請求項4】
前記開始条件は、前記許容電圧よりも低いしきい電圧を前記実電圧が超えたという条件であり、
前記変更部は、前記劣化レベルが劣化側のレベルであるほど前記しきい電圧を低い値に低下させる、請求項2に記載の二次電池の制御装置。
【請求項5】
前記変更部は、前記超過時間が長いほど前記開始条件を成立し易くする、請求項1に記載の二次電池の制御装置。
【請求項6】
前記開始条件は、前記許容電圧よりも低いしきい電圧を前記実電圧が超えたという条件であり、
前記変更部は、前記超過時間が長いほど前記しきい電圧を低い値に低下させる、請求項5に記載の二次電池の制御装置。
【請求項7】
前記二次電池は、車両駆動用の電動機に電力を供給するためのリチウムイオン二次電池である、請求項1に記載の二次電池の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−27112(P2013−27112A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158567(P2011−158567)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】