説明

二次電池システム

【課題】回路規模やコストの増大を抑制しつつ、二次電池のインピーダンスの測定が可能な二次電池システムを提供する。
【解決手段】電池パックは、直列に接続された複数の二次電池を備える。各二次電池のインピーダンスを測定するため、二次電池システムに、電池パックに備える各二次電池のインピーダンスを順次測定する電池監視ユニットと、インピーダンスの測定に必要な交流信号を生成し、電池パックに印加する交流信号発生部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は直列に接続された複数の二次電池を備えた二次電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、充電することで何度も繰り返し使用できるため、電池の使用頻度が比較的高い電気機器で利用される。特にリチウムイオン二次電池は、単位質量・体積あたりのエネルギー密度が高く、メモリ効果が少ない等の利点を有するため、小型化・軽量化が要求されるノート型やタブレット型のコンピュータ、あるいは携帯電話機等の情報処理機器、通信機器で広く利用されている。
【0003】
また、近年では、電気自動車やハイブリッド自動車等の電源としてもリチウムイオン二次電池を用いることが検討され、さらに地球温暖化問題に伴う低炭素社会の実現へ向けて導入されつつある太陽電池や風力発電等の再生可能電源で発電された電力を貯蔵する蓄電池にもリチウムイオン二次電池を用いることが検討されている。
【0004】
一般に、リチウムイオン二次電池は、正負の端子間電圧が所定の範囲内から逸脱する過充電や過放電によって電池性能が著しく劣化するため、端子間電圧を監視して過充電や過放電から保護する電池監視ユニットと組み合わせて使用される。また、リチウムイオン二次電池は、高温環境下における保管・使用(充放電)で電池性能の劣化が急速に進むことから、電池監視ユニットには二次電池の周囲温度を監視する機能を備えていることが多い。
【0005】
さらに、二次電池を使用する電気機器や自動車等では、該二次電池の蓄電量(SOC:State of Charge)をできるだけ正確に測定することが求められる。そこで、電池監視ユニットには充放電電流に基づき二次電池のSOCを測定するための蓄電量算出部を備えている。蓄電量算出部は、例えば二次電池と負荷(電力を消費する電気機器等)との間に直列に挿入された電流検出用の抵抗器と、該抵抗器の両端電圧を測定して電流値に変換する変換部と、変換部から出力される、充電時及び放電時における電流値をそれぞれ積算して積算電流値を求め、該積算電流値から二次電池に残存する蓄電量を求める演算部とを備えている。
【0006】
ところで、携帯電話機等の小型の電気機器と比べて消費電力が大きい電気自動車や電力貯蔵に用いられる二次電池は、高電圧出力を実現するために複数の二次電池(電池セル)を直列に接続した電池パックの形態で使用される。このような電池パック用の電池監視ユニットでは、各電池セルの端子間電圧をそれぞれ測定して異常な電池セルがないか否かを監視すると共に、各電池セルが同じ充放電状態となるように制御するセルバランサー回路を備えている。
【0007】
さらに、このような二次電池システムでは、例えば電気自動車で使用された電池セルを電力貯蔵用として再び使用する等、各電池セルを再利用することも検討されている。その場合、電池パックに要求される製品寿命を満たすには、再利用する電池セルの組み合わせや予備の電池セル数等を決定するために電池セル毎の劣化状態を把握することが重要になる。また、電池セル毎の劣化状態を把握することは、例えば劣化した電池セルを交換することにより、電池パックとしての製品寿命を延ばすためにも有効である。
【0008】
二次電池(電池セル)の劣化状態を知る方法としては、例えば二次電池の端子間のインピーダンスを測定し、その測定結果から二次電池の内部状態や劣化状態を判断する交流インピーダンス法が知られている。
【0009】
交流インピーダンス法では、二次電池の端子間電圧(開放電圧)に、例えば周波数が10mHz〜10kHz程度であり、電圧が10mV前後の交流信号を重畳して端子間電流を測定し、周波数毎の複素インピーダンスを求める。そして、得られた周波数毎の複素インピーダンスの特性から二次電池の電解液の抵抗、正極及び負極端子として用いる材料(活物質)間のイオンの出入りを示す電荷移動抵抗、活物質の拡散定数、電気2重層容量等を求めることが可能であり、それらの値の変化から二次電池の劣化状態を推定できる。
【0010】
なお、直列に接続された複数の二次電池のインピーダンスをそれぞれ測定するための回路については、例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011−038857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
リチウムイオン二次電池等の二次電池の性能は、充放電回数、周囲温度、充放電電流量等に依存して変動するが、その劣化状態は、端子間電圧、充放電電流、電池の周囲温度のみを監視している背景技術の電池監視ユニットでは十分に把握することができない。
【0013】
一方、上述した交流インピーダンス法は、二次電池の内部状態や劣化状態を判断するのに有効であるが、例えばポテンショスタット、ガルバノスタット、周波数アナライザー等のように、大きく、重く、消費電力が大きく、かつ高価な汎用計測器を用いる必要がある。そのため、交流インピーダンス法は、一般に、二次電池自体の開発や分析に用いる技術として知られており、二次電池の使用中に該二次電池のインピーダンスを測定することは困難であると考えられていた。
【0014】
上記特許文献1では、各二次電池のインピーダンスを測定するための回路例を示しているが、例えば直列に接続された二次電池(電池セル)毎に温度検出部や端子間電圧を測定するための電圧検出部を備える構成であり、回路規模が大きくコストも増大するため、採用するのが困難という問題がある。
【0015】
本発明は上述したような背景技術が有する問題点を解決するためになされたものであり、回路規模やコストの増大を抑制しつつ、二次電池のインピーダンスの測定が可能な二次電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため本発明の二次電池システムは、直列に接続された複数の二次電池から成る電池パックと、
前記電池パックに備える各二次電池のインピーダンスを順次測定する電池監視ユニットと、
前記インピーダンスの測定に必要な交流信号を生成し、前記電池パックに印加する交流信号発生部と、
を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、回路規模やコストの増大を抑制しつつ、二次電池のインピーダンスの測定が可能な二次電池システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施の形態の二次電池システムの構成を示すブロック図である。
【図2a】二次電池のインピーダンス特性の一例を示すグラフである。
【図2b】二次電池のインピーダンスの周波数特性の一例を示すグラフである。
【図3】第2の実施の形態の二次電池システムの構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の二次電池システムの実施例の構成を示すブロック図である。
【図5】二次電池の溶液抵抗及び電荷移動抵抗の経日変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に本発明について図面を用いて説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の二次電池システムの構成を示すブロック図である。
【0020】
図1に示すように、第1の実施の形態の二次電池システムは、直列に接続された複数の二次電池から成る電池パック1と、電池パック1に備える各二次電池のインピーダンスを測定する電池監視ユニット2と、インピーダンスの測定に必要な交流信号を生成し、電池パック1に印加する交流信号発生部3とを有する。
【0021】
電池パック1には負荷4が並列に接続され、電池監視ユニット2及び交流信号発生部3には該電池監視ユニット2や交流信号発生部3の動作を監視する制御ユニット5が接続されている。
【0022】
電池パック1は、例えば電力の蓄積及び放出が可能なリチウムイオン二次電池(電池セル)を備えている。電池パック1は、所要の出力電圧に対応して複数の二次電池が直列に接続された構成である。図1は直列に接続された6つの二次電池で電池パック1が構成される例を示している。電池パック1の外形形状は、円筒型でもよく、ラミネート型と呼ばれる平板型でもよい。
【0023】
電池監視ユニット2は、二次電池の端子間に流れる電流を測定するための電流測定手段として、電池パック1の出力電流I1を測定するための抵抗器R1及び負荷4に流れる電流I2を測定するための抵抗器R2を備えている。また、電池監視ユニット2は、電池パック1が備える二次電池の各端子と接続され、外部からの指示にしたがって各二次電池の端子間電圧を順次出力するセレクタ21と、電池パック1に対する交流信号の印加時、電流測定手段で測定された二次電池の端子間に流れる交流電流Ip、セレクタ21を制御することで該セレクタ21から順次出力される複数の二次電池の端子間電圧(交流電圧)をそれぞれ取り込み、各二次電池のインピーダンスを順次算出する制御部22と、電池パック1の周囲温度を測定するための温度検出部23とを備えている。なお、電池監視ユニット2には、抵抗器R1及びR2の両端電圧、並びに各二次電池の端子間電圧を取り込むための不図示のA/D変換器を備え、各A/D変換器の出力信号は制御部22へ供給される。制御部22は、電池パック1の出力電流I1、負荷10に流れる電流I2及び各二次電池の端子間電圧に基づき、二次電池毎のインピーダンスをそれぞれ算出する。このとき、制御部22は、セレクタ21の動作を制御することで各二次電池の端子間電圧を順次選択し、二次電池毎のインピーダンスを順次算出すればよい。
【0024】
温度検出部23は、電池パック1近傍に配置される温度センサを備え、該温度センサの出力信号から電池温度を検出し、その温度データを制御部22へ出力する。
【0025】
制御部22は、二次電池毎のインピーダンスの測定値と共に、温度検出部23から通知された温度データを制御ユニット13へ送信する。
【0026】
制御部22は、例えばCPU、メモリ、各種の論理回路を備えた情報処理装置(コンピュータ)で実現できる。その場合、CPUはメモリに格納されたプログラムにしたがって処理を実行することで電池制御部22としての機能を実現する。
【0027】
なお、抵抗器R1及びR2は、電流が流れることで電力を消費するため、できるだけ小さい抵抗値であることが望ましい。抵抗器R1及びR2の値は、電池パック1の容量や用途に応じて決定すればよい。
【0028】
交流信号発生部3は、電池パック1の出力電圧よりも高い直流電圧を出力する昇圧電源部31と、昇圧電源部31から出力された直流電圧をスイッチングすることで交流信号を生成するトランジスタ32と、トランジスタ32から出力された交流信号を電池パック1の出力電圧に重畳するためのダイオード33と、周波数が一定の信号を生成する発振器34と、発振器34から出力された信号を分周してインピーダンス測定に用いる周波数信号を生成し、該周波数信号にしたがってトランジスタ32をスイッチングさせる信号生成部35と、電池パック1の出力電圧に重畳された交流信号の電圧を測定する電圧計測部36とを有する。
【0029】
昇圧電源部31は、例えば周知の直流電源と、該直流電源から出力される直流電圧を昇圧する周知の昇圧型のDC−DC変換回路とを備え、信号生成部35からの制御信号にしたがって出力電圧を変更可能な構成である。
【0030】
電圧計測部36で測定された交流電圧は、不図示のA/D変換器でデジタル信号に変換されて信号生成部35に帰還され、信号生成部35により電池パック1の出力電圧へ重畳する(電池パック1へ印加する)交流信号の電圧が一定に制御される。交流信号発生部4で生成された交流信号の電圧値や周波数の情報は、制御ユニット5へ送信される。
【0031】
信号生成部35は、例えばCPU、メモリ、各種の論理回路を備えた情報処理装置(コンピュータ)で実現できる。その場合、CPUはメモリに格納されたプログラムにしたがって処理を実行することで信号生成部35としての機能を実現する。
【0032】
負荷4は、電池パック1から電力が供給される、電力を消費する各種の電気機器である。図1では電池パック1に負荷4が直接接続された構成例を示しているが、多くの場合、電池パック1にはDC/DC変換器、AC/DC変換器、DC/AC変換器等のレギュレータを介して負荷4が接続される。交流信号発生部3で生成された交流信号の周波数は該レギュレータの動作周波数と比べて十分に低いため、該交流信号はレギュレータによって平滑化される。したがって、交流信号発生部3で生成された交流信号がレギュレータを介して負荷4へ供給されることはない。なお、電池パック1と負荷4とが直接接続される場合は、入力インピーダンスが小さい負荷4へ交流信号が供給されないように、電池パック1と負荷4との間に交流成分を遮断するインタク等を挿入すればよい。
【0033】
制御ユニット5は、電池監視ユニット1から送信される二次電池毎のインピーダンスの測定値及び電池パック1の温度データ、並びに交流信号発生部3から送信される交流信号の電圧値や周波数等のデータを保存する。制御ユニット5に保存されたデータは、二次電池の劣化状態の分析等で利用される。
【0034】
次に図1に示した第1の実施の形態の二次電池システムの動作について説明する。
【0035】
交流信号発生部3は、発振器34で生成された周波数信号を分周してインピーダンス測定に用いる所定の周波数信号を生成し、該周波数信号にしたがってトランジスタ32をスイッチングさせることで電池パック1の出力電圧に重畳する交流信号を生成する。この交流信号は、各二次電池に対して、例えば5mV〜20mVの交流電圧が印加されるように
設定する。交流信号の電圧が5mV以下である場合、S/N比が悪化するため、インピーダンスの測定精度が低下するおそれがある。一方、交流信号の電圧を20mV以上に設定すると、線形性が失われて歪みが大きくなり、やはりインピーダンスの測定精度が低下するおそれがある。したがって、二次電池に印加する交流信号の電圧は5mV〜20mV程
度が望ましい。
【0036】
通常、電池パック1が備える各二次電池の電池性能や特性がほぼ同じであるため、電池パック1に印加された交流信号の電圧は、各二次電池に対して等分されて印加される。例えば、図1に示すように電池パック1が直列に接続された6つの二次電池で構成されている場合、電池パック1に印加する交流信号の電圧は30mV〜120mVに設定すればよ
い。
【0037】
電池監視ユニット2は、電池パック1に交流信号が印加された状態で、抵抗器R1及びR2の両端電圧を取得すると共に、セレクタ21に各二次電池の端子間電圧を順次出力させ、各二次電池の端子間電圧(交流電圧)及び交流電流Ipから二次電池毎のインピーダンスを順次算出する。なお、二次電池の交流電流Ipは、Ip=I1−I2で求めることができる。
【0038】
この二次電池のインピーダンスについて、二次電池の等価回路モデルに基づくシミュレーション結果を用いて説明する。
【0039】
図2aは二次電池のインピーダンス特性の一例を示すグラフである。なお、インピーダンスは複素数で表されるため、図2aの横軸にはインピーダンスの実部の値を配置し、縦軸にはインピーダンスの虚部の値を配置している。一般に、二次電池は容量性のインピーダンス特性を有するため、図2aの縦軸は負の値とする。また、図2aに示す実線は二次電池が劣化する前の特性例を示し、破線は二次電池が劣化した後の特性例を示している。
【0040】
図2aに示すグラフおいて、虚部の値が0であるときの実部の値(F1)は二次電池の溶液抵抗(電解液の抵抗)に相当し、半円状の特性領域における実部軸上の長さ(F1〜F2)は二次電池の電荷移動抵抗(二次電池の活物質間のリチウムイオンの出入りに伴う抵抗)に相当する。また、実部の値に対して虚部の値が比例して増加する直線状の領域における実部軸上の長さ(F2〜F3)は活物質内の拡散抵抗に相当する。
【0041】
図2aに示す、実部の0近傍からF1までは、交流信号が約1kHz〜10kHzのときに得られる特性であり、F1〜F2は交流信号が約1kHz〜1Hzのときに得られる特性であり、F2〜F3は交流信号が1Hz以下で得られる特性である。図2aに示すF1、F2、F3の値は、二次電池のサイズや形状によって異なるが、リチウムイオン二次電池であれば同様の特性となる。
【0042】
図2aに示すように、二次電池の電池性能が劣化すると、破線で示すように全ての抵抗値(溶液抵抗、電荷移動抵抗、拡散抵抗)が上昇する傾向にある。しかしながら、例えば電解液のみ劣化した場合は溶液抵抗が上昇し、活物質表面のSEI(Solid Electrolyte Interface)層の抵抗が増大した場合は、電荷移動抵抗が上昇する。
【0043】
図2bは、二次電池のインピーダンスの周波数特性の一例を示すグラフである。図2bに示すグラフは、図2aに示したシミュレーション結果を周波数に対応するインピーダンスの絶対値でプロットしなおしたものである。図2bに示す実線は二次電池が劣化する前の特性例を示し、破線は二次電池が劣化した後の特性例を示している。
【0044】
図2bに示す1kHz〜10kHzにおけるインピーダンスの絶対値は二次電池の溶液抵抗を示し、1kHz〜1Hzにおけるインピーダンスの絶対値は二次電池の溶液抵抗と電荷移動抵抗の和を示している。図2bに示す周波数特性でも、二次電池の電池性能が劣化すると、破線で示すようにインピーダンスが上昇する傾向にあることが分かる。したがって、インピーダンスの絶対値のみを測定しても、二次電池の溶液抵抗及び電荷移動抵抗を評価することが可能であり、二次電池が劣化したか否かを判断できる。また、図2bに示す周波数特性から、二次電池の評価には0.1Hz〜10KHzの周波数範囲でインピーダンスを測定すればよいことが分かる。ここで、周波数間隔や測定点の数は、要求される測定精度に応じて適宜選択すればよい。
【0045】
本実施形態の二次電池システムによれば、電池パック1の出力電圧に交流信号を重畳し、電池監視ユニット2により交流電流及び二次電池毎の端子間電圧(交流電圧)を測定することで、簡易な回路構成で電池パック1が備える二次電池毎のインピーダンスを測定できる。そのため、回路規模やコストの増大を抑制しつつ、各二次電池のインピーダンスの測定が可能になる。
【0046】
また、本実施形態の二次電池システムは、電池パック1を使用している状態で、各二次電池のインピーダンスを測定できるため、測定回数を増やすことが可能であり、例えば周波数毎に測定値の平均値等を求めることで、二次電池のインピーダンスを所要の精度で取得できる。
【0047】
さらに、二次電池毎のインピーダンスの測定値を、例えば制御ユニット13で保存しておけば、各二次電池の劣化状態を把握できる。その場合、例えば劣化が大きく進行した二次電池を交換すれば、電池パック1の製品寿命を延ばすことが可能になる。また、電池パック1を他の用途で再利用する場合は、二次電池毎に再利用の可否を判断できる。
(第2の実施の形態)
図3は、第2の実施の形態の二次電池システムの構成を示すブロック図である。
【0048】
図3に示すように、第2の実施の形態の二次電池システムは、図1に示した交流信号発生部3の機能を電池監視ユニット2に内蔵した構成である。すなわち、本実施形態の電池監視ユニット12は、図1に示した抵抗器R1、抵抗器R2、セレクタ21、制御部22、温度検出部23、昇圧電源部31、トランジスタ32、ダイオード33、発振器34、信号生成部35及び電圧計測部36を備えた構成である。また、第2の実施の形態の二次電池システムは、図1に示した昇圧電源部31が備える直流電源に代えて、電池パック1の出力電圧を用いて電池パック1の出力電圧よりも高い直流電圧を出力する構成である。その他の構成は第1の実施の形態の二次電池システムと同様であるため、その説明は省略する。
【0049】
第1の実施の形態の二次電池システムでは、交流信号発生部3と電池監視ユニット2とをそれぞれ個別に備えているため、例えば二次電池のインピーダンスを測定していないとき、交流信号発生部3に対する電力供給を停止すれば、インピーダンス測定に必要な回路の消費電力を低減できる。
【0050】
一方、第2の実施の形態の二次電池システムでは、交流信号発生部3の機能が電池監視ユニット2に内蔵されているため、個別の機能毎に電力供給を停止するのが困難である。したがって、第2の実施の形態の二次電池システムは、インピーダンス測定を比較的頻繁に実施する場合に適用すればよい。
【0051】
第2の実施の形態の二次電池システムにおいても、第1の実施の形態の二次電池システムと同様に、簡易な回路構成で電池パック1が備える二次電池毎のインピーダンスを測定することが可能になるため、回路規模やコストの増大を抑制しつつ、各二次電池のインピーダンスを測定できる。
【0052】
また、本実施形態の二次電池システムも、電池パック1を使用している状態で、各二次電池のインピーダンスを測定できるため、測定回数を増やすことが可能であり、例えば周波数毎に測定値の平均値等を求めることで、二次電池のインピーダンスを所要の精度で取得できる。
【0053】
さらに、二次電池毎のインピーダンスの測定値を、例えば制御ユニット5で保存しておけば、各二次電池の劣化状態を把握することができる。
(実施例)
次に本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【0054】
図4は、本発明の二次電池システムの実施例の構成を示すブロック図である。
【0055】
図4に示す二次電池システムは、図1に示した電池パック1、電池監視ユニット2及び交流信号発生部3を3セット備え、電池パック1が直列に接続され、各電池パック1に対応して、それぞれ電池監視ユニット2及び交流信号発生部3が接続された構成である。なお、図4に示す二次電池システムは、図3に示した電池パック1及び電池監視ユニット12を3セット備えた構成でもよい。また、本実施例の電池パックは、例えば12個の二次電池が直列に接続された構成とする。
【0056】
各電池パック1には、該電池パック1に対する充電または電池パックからの放電を制御するパワーコンディショナ(PCS:Power Control System)6が接続されている。
【0057】
PCS6は、電力系統7から供給される交流電力を電池パック1に蓄電可能な直流電力に変換する不図示のAC/DC変換器及び各電池パック1から放電された直流電力を負荷4へ供給可能な交流電力に変換する不図示のDC/AC変換器を備え、各電池パック1へ充電に必要な電力を供給すると共に、各電池パック1から放電された電力を負荷(電気機器)4へ供給する。
【0058】
本実施例では、交流信号発生部3によって、例えば電圧が10mV×12=120mVの交流信号を対応する電池パック1にそれぞれ印加し、該交流信号の周波数を、1Hz、10Hz、100Hz、1kHzにそれぞれ設定する。
【0059】
ここで、二次電池のインピーダンスの測定値として、1Hzの交流信号の印加時に、実部の値0.029が得られ、虚部の値−0.007が得られ、10Hzの交流信号の印加時に、実部の値0.017が得られ、虚部の値−0.0073が得られ、100Hzの交流信号の印加時に、実部の値0.011が得られ、虚部の値−0.002が得られ、1KHzの交流信号の印加時に、実部の値0.01が得られ、虚部の値0.00が得られたとする。
【0060】
この場合、溶液抵抗は、1KHzにおける実部の値から約0.01Ω(すなわち10mΩ)が求まる。また、電荷移動抵抗は、1Hz及び1KHzにおける実部の値から、0.029−0.01=0.02Ω(すなわち20mΩ)が求まる。
【0061】
したがって、少なくとも1Hz及び1KHzの周波数におけるインピーダンスをそれぞれ測定することで、二次電池の溶液抵抗及び電荷移動抵抗を求めることができる。測定周波数は、予め二次電池単体の特性を測定して決定しておき、電池監視ユニット2や交流信号発生部3にその周波数の値を保存しておけばよい。
【0062】
なお、例えば1Hzの交流信号におけるインピーダンスを測定している場合、電池パック1が放電中であると、負荷変動により1秒以下の短い周期で交流電流が変動する可能性がある。そのため、二次電池のインピーダンス測定は電池パック1から放電を行わない(可能ならば充電も行わない)時間帯を選んで測定することが望ましい。本発明の二次電池システムでは、電池パックを使用中でも二次電池の交流インピーダンスを測定できるため、電池パックに対して充放電を行わない時間帯を利用してインピーダンス測定を実施できるように、予め測定時間をスケジューリングしておけばよい。また、そのようなスケジュールを実現できない場合は、例えば周波数毎のインピーダンス測定を多数回実施し、その測定値の平均値等を求めることで測定精度を向上させればよい。
【0063】
図5は、二次電池の溶液抵抗及び電荷移動抵抗の経日変化の一例を示すグラフである。図5は、例えば制御ユニットで保存された溶液抵抗及び電荷移動抵抗の値が日の経過と共に変化していく様子を示している。
【0064】
図5に示すように、溶液抵抗及び電荷移動抵抗は、絶対値が小さいため測定誤差の割合が大きくなるが、数百日単位で見るとそれぞれの抵抗値が変化していくことが分かる。この変化量に基づき、例えば1800日前後(約5年後)までの抵抗値の変化量から3600日後(約10年後)の変化量が予想できる。
【0065】
また、例えば電池パックで使用する二次電池と同じ種類の二次電池の寿命試験を予め実施しておき、該二次電池の溶液抵抗及び電荷移動抵抗の経年変化を示すリファレンスデータを用意しておけば、該リファレンスデータと測定値との差から、使用中の二次電池の劣化の進行度が判別できる。
【符号の説明】
【0066】
1 電池パック
2、12 電池監視ユニット
3 交流信号発生部
4 負荷
5 制御ユニット
6 パワーコンディショナ
7 電力系統
21 セレクタ
22 制御部
23 温度検出部
31 昇圧電源部
32 トランジスタ
33 ダイオード
34 発振器
35 信号生成部
36 電圧計測部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続された複数の二次電池から成る電池パックと、
前記電池パックに備える各二次電池のインピーダンスを順次測定する電池監視ユニットと、
前記インピーダンスの測定に必要な交流信号を生成し、前記電池パックに印加する交流信号発生部と、
を有する二次電池システム。
【請求項2】
直列に接続された複数の二次電池から成る電池パックと、
前記電池パックに備える各二次電池のインピーダンスの測定に必要な交流信号を生成し、前記電池パックに印加すると共に、前記複数の二次電池のインピーダンスを順次測定する電池監視ユニットと、
を有する二次電池システム。
【請求項3】
前記電池監視ユニットは、
前記二次電池の端子間に流れる電流を測定するための電流測定手段と、
前記二次電池の各端子と接続され、外部からの指示にしたがって前記複数の二次電池の端子間電圧を順次出力するセレクタと、
前記電池パックに対する前記交流信号の印加時、前記電流測定手段で測定された前記二次電池の端子間に流れる交流電流、前記セレクタを制御することで該セレクタから順次出力される前記複数の二次電池の端子間電圧をそれぞれ取り込み、前記複数の二次電池のインピーダンスを順次算出する制御部と、
を有する請求項1または2記載の二次電池システム。
【請求項4】
前記電池監視ユニットで測定された、前記複数の二次電池毎のインピーダンスの測定値を保存する制御ユニットをさらに有する請求項1から3のいずれか1項記載の二次電池システム。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−64697(P2013−64697A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204692(P2011−204692)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】