説明

二次電池容器用積層材及び二次電池容器

【課題】二次電池の容器または外装材として使用する耐振動性、耐衝撃性に優れたアルミニウム箔を用いない積層材とそれを用いた二次電池用容器を提供する。
【解決手段】ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンまたはナイロンからなるフィルム(A)、ポリオレフィン発泡層(B)、ポリプロピレンフィルム(C)が積層された積層材であって、AのB側表面にはアルミニウム、アルミナ、シリカまたはシリカとアルミナの混合物からなる薄膜が設けられ、Cが無延伸のポリプロピレンフィルムであり、CのB側界面にはアルミニウムの薄膜が形成されていることを特徴とする積層材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二次電池に使用する積層材、詳しくは、二次電池の容器または外装材として使用する耐振動性、耐衝撃性に優れた積層材とそれを用いた二次電池用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
環境保護運動の高まりを背景として電気自動車、ハイブリット自動車、電気自動二輪車等の導入が促進されている。これらには、リチウムイオン二次電池の利用が有望視されている。
【0003】
リチウムイオン二次電池用外装材には、アルミニウム箔をバリヤー構成とするラミネート材が使用されつつある。要求性能としては、i)水蒸気透過性が極めて低いこと、ii)内部電解液のもれがないこと、iii)耐電解液特性にすぐれ経時後内層部のフィルムのデラミネーション(剥離)等がないこと、iv)プレス成形でき、成形後アルミニウム箔のピンホール又はクラックができないこと、v)成形後内層フィルムにクラックが生じず、電池作成時リード線とラミネート材中のアルミニウムとの導通がないこと、vi)110℃等の高温にも一時的に耐える耐熱性を有すること、等が挙げられる。
【0004】
これらを満足する積層材としては、外装樹脂フィルム/第1の接着剤層/化成処理アルミニウム箔/第2の接着剤層/シーラントフィルムが積層した積層材であって、シーラントフィルムが、α−オレフィンの含有量が2〜10重量%であるプロピレンとα−オレフィンのランダム共重合体とからなり、これに滑剤として、エルカ酸アミド又はオレイン酸アミドを500〜2500ppmと、エチレンビスオレイン酸アミドを500〜2500ppm含有させたことを特徴とする二次電池容器用積層材(特許文献1)、外装樹脂フィルム/接着剤層/化成処理アルミニウム箔/プライマー層/シーラントフィルムが積層した積層材であって、シーラントフィルムが、α−オレフィンの含有量が2〜10重量%であるプロピレンとα−オレフィンとのランダム共重合体と、2〜40重量%のエラストマーまたはポリブテンのいずれか1以上とのブレンド品で、0.5%重量%以下の滑剤を含むことを特徴とする二次電池容器用積層材(特許文献2)、等が提案され、実用化されている。
【0005】
また、電子部品包装用袋として静電気による破壊や湿度による影響を受け品質の低下を防ぐための包装用袋であって、電子部品を袋内部に収納する際に電子部品のエッジが強く当たったり、電子部品を袋詰めにして移送する際に、電子部品や外部の突起で破袋し易く、いわゆる突刺し耐性を改善させた、金属箔を挟んで一方の側に熱可塑性樹脂層(A)が、又他方の側に熱可塑性樹脂層(B)が積層された積層フィルムであって、金属箔と熱可塑性樹脂層とは押出しラミネーションにより貼り合わされ、且つ熱可塑性樹脂層(A)の引張強度をSa、破断時の伸びをEaとし、熱可塑性樹脂層(B)の引張強度をSb、破断時の伸びをEbとした場合、上記熱可塑性樹脂層(A)及び熱可塑性樹脂層(B)は、引張強度の比がSa/Sb=1/2乃至1/20、伸びの比がEa/Eb=1/0.8乃至1/0.01の関係を有し、熱可塑性樹脂層(A)及び熱可塑性樹脂層(B)の少なくとも一方において、金属箔とは反対側の表面に熱シール材層を積層させた、電子部品包装用積層フィルム(特許文献3)等が提案され、これを二次電池容器用積層材として使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-288865号公報
【特許文献2】特開2003-288866号公報
【特許文献3】特開平7-76375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、電気自動車、ハイブリット自動車、電気自動二輪車にこれらの二次電池容器用積層材を用いた場合、道路走行中の振動により、外装積層材に亀裂が入ったり、破れたりして、電解液のもれが起きたり、電解液が飛散するおそれがある。また、自動車等が衝突したときの衝撃により外装材が破れたり、中の発電要素が外に飛び出し、外装材を破壊する恐れがある。
【0008】
本発明の課題は、道路走行中の振動によっても、外層積層材に亀裂が入ったり、破れたりせず、内部電解液のもれ、飛散の恐れのない、また、自動車等が衝突したとき等の衝撃によっても外装積層材が破壊しない、二次電池容器用積層材と容器を提供することである。
【0009】
また、環境保護運動の高まりを背景として、リチウムイオン二次電池容器の積層材を構成しているアルミニウム箔が電池容器を廃棄する際に、産業廃棄物として焼却しにくく処理しにくいという問題が予想されているので、アルミニウム箔を用いないでリチウムイオン二次電池容器の積層材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ナイロンから選択される少なくとも一種のフィルム(A)、ポリオレフィン発泡層(B)、ポリプロピレンフィルム(C)がこの順に積層された積層材であって、AのB側表面にはアルミニウム、アルミナ、シリカ、シリカとアルミナの混合物から選択される少なくとも一種の薄膜が設けられ、Cが無延伸のポリプロピレンフィルムであり、CのB側表面にはアルミニウムの薄膜が形成することにより、耐振動性、耐衝撃性に優れる、アルミニウム箔を用いない環境に優しい二次電池容器用積層材が作成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
Aは積層材全体、ひいては積層材内部の電池を防護する機能を担う。またAのB側表面に設けられた薄膜は外面から水分が電池内部に侵入するのを防ぐ機能を有する。Bは道路からの振動、内部電池による振動を吸収する機能、及び外面から侵入する水分を発泡層の中に留める機能を有する。Cは積層材のC側同士を重ね合わせシール(接着)させ外装材を袋化、容器化させる機能を有する。またCのB側表面に設けられたアルミニウムの薄膜はAを通過して浸入した水分が電池内部に透過するのを防ぐ機能を有する。
【0012】
Aの水蒸気透過度は1g/m・day以下であることが好ましい。
【0013】
Aの破断強度が200MPa以上であることが好ましい。
【0014】
Bの破断強度が1MPa以上、破断伸度が200%以上であることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明は、上記記載の二次電池用積層材によって形成した二次電池容器である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、本発明の二次電池容器は、耐振動性、耐衝撃性に優れ、電気自動車、ハイブリット自動車、電気自動二輪車等に搭載されても、道路走行中の振動により、外装積層材に亀裂が入ったり、破れたりして、内部電解液のもれが起きたり、電解液が飛散するおそれはない。衝突時の衝撃により外装積層材が破れたりして内部発電要素が飛び出したりすることはない。また、アルミニウム箔を用いないので、産業廃棄物として処理しにくいことはない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0018】
本発明において、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンまたはナイロンからなるフィルム(A)(以下、単にAと略すことがある。以下のB、Cについても同様。)とは、テレフタール酸とエチレングリコールを主成分としエステル結合によって重合されたポリエチレンテレフタレート、プロピレン等が重合されたポリプロピレン、ε−カプロラクタムが重合されたナイロン6またはアジピン酸とヘキサメチレンジアミンが重合されたナイロン66等が、延伸倍率が2から8倍程度の二軸延伸により分子配向された高強度フィルムであり、公知のものが使用できる。
【0019】
本発明において、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンまたはナイロンからなるフィルム(A)を用いないと、振動、衝撃吸収材であるポリオレフィン発泡層(B)が外部からの振動時の力によりすぐに磨り減って破れてしまい好ましくない。
【0020】
Aの破断強度は200MPa以上、より望ましくは220〜480MPaが好ましい。
【0021】
破断強度が200MPa以上であれば、電池外側からの振動時の力により外装が変形し難く、亀裂が入り難く、破れ難く、破断強度が480MPa以下であると、電池用容器を成形するときの加工特性(絞り性)が良好なので、破断強度は200MPa以上、480MPa以下であることがより好ましい。
【0022】
なお、Aの厚さは5μmより厚いと、電池容器成形時、電解液が付着した場合、外層が破れにくく、30μmより薄いと加工特性(絞り性)が良好なので、Aの厚さは5〜30μmがより好ましい。
【0023】
本フィルム(A)のB側にはアルミニウム、アルミナ、シリカまたはシリカとアルミナの混合物を蒸着する公知の手法等により薄膜層が形成されている。薄膜層の厚さは下記するAの水蒸気透過率が小さくなるものであれば特に限定されないが、5〜100nm程度である。
【0024】
Aの外側表面に上記薄膜層を設けた場合、電池容器とした後、実際の使用時に外部からの振動、変形等により薄膜がすぐに削れてしまい、好ましくない。よってB側表面に薄膜が形成されていることが必要である。
【0025】
本薄膜層が設けられたフィルム(A)の水蒸気透過度は1g/m・day以下、より好ましくは0.7g/m・day以下であることが望ましい。1g/m・day以下であると、水蒸気が容器内に侵入しにくくなり、電解液中のリチウム塩と反応しフッ酸が生成されにくくなり、フッ酸による積層材の破れが起きにくくなり好ましい。本水蒸気透過率は前記薄膜層厚さの調節により達成できる。
【0026】
本発明において、ポリオレフィン発泡層(B)には発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の発泡体が用いられ、耐衝撃性の観点から、独立気泡構造を有する発泡ポリオレフィンが好ましく、特に発泡ポリプロピレン、発泡エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましい。
【0027】
ポリオレフィン発泡層が電池用容器の積層材の構成材としてフィルムAの容器内側に配置されることにより、自動車等の道路上での振動、走行衝突時時に受ける衝撃がポリオレフィン発泡層に吸収され、電池容器の耐振動性、耐衝撃性が向上する。独立気泡型は独立気泡の圧縮性により、連続気泡型に比べ、耐衝撃性が高く好ましい。また独立気泡型の方が水分を吸収しにくく好ましい。
【0028】
また、Bの破断強度は1MPa以上、より好ましくは、1.5MPa以上、破断伸度は200%以上、より好ましくは240%以上であることが更に望ましい。破断強度が1MPa以上であり、破断伸度が200%以上であると、自動車の走行時の振動の外部との摩擦でBが磨耗しにくくなり、またBがより破断しがたくなる。
【0029】
ポリオレフィン発泡層の厚みは2mm以上であると、耐衝撃性がより向上し、厚さは6mm以下であると、当該ポリオレフィン発泡体が市場で入手しやすいので、厚さは2〜6mmがより好ましい。
【0030】
独立気泡型ポリオレフィン発泡体としては、東レ株式会社製「トーレペフ」等を購入することにより利用できる。
【0031】
本発明のポリプロピレンフィルム(C)(以下、単にCと略すことがある。)は、二次電池用容器を作成するためのシーラントフィルムとして機能するため、公知の無延伸ポリプロピレンフィルムを用いることができる。無延伸フィルムであると、延伸フィルムに比べてヒートシール温度が低くなり、二次電池用容器を熱シールにより成形し易くなり好ましい。無延伸の場合、シール時にポリプロピレン分子の絡み合いが進みやすいからである。
【0032】
また、本ポリプロピレンフィルム(C)のポリオレフィン発泡体(B)に接する側表面にはアルミニウムが蒸着されていることを特徴とし、公知のアルミニウム蒸着無延伸ポリプロピレンフィルムを用いることができる。本アルミニウム蒸着層により、水分が大気中よりAに設けられた薄膜層に加えて、より容器内に入りにくくなり好ましい。具体的には東レフィルム加工株式会社製のアルミニウム蒸着無延伸ポリプロピレンフィルム“VM−CPP”等が使用できる。
【0033】
Cのフィルム厚さについては、厚さが25μm以上であると、電池の容器を成形するためのシール強度が向上し、シールがはがれにくくなり、液漏れが起こりにくくなり、厚さが50μm以下であると、アルミニウム蒸着無延伸ポリプロピレンフィルムとして市場で入手しやすいので、厚さは、25〜50μmであることがより好ましい。
【0034】
本発明の二次電池容器用積層材はA/B/Cの順に積層されていなければならない。Cは積層材を電池用容器として成形する際に、CとCを重ね合わせシールさせる機能を持つので、最内層である必要がある。Bを最外層としてB/A/Cと積層させると、Bが外部との摩擦ですぐに磨り減ってしまい、電池用容器がすぐに破れてしまう。Bを用いないA/C積層材では振動、衝撃によりCにすぐに亀裂が入り、電池用容器がすぐに破れてしまう。Cを最外層に積層すると外部からの力でCがすぐに変形し、磨り減り、破壊され易くなり好ましくない。
【0035】
本発明の積層材の製造方法は、特に限定されるものではないが、次の方法によって形成できる。
【0036】
ポリオレフィン発泡層(B)とポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンまたはナイロンからなるフィルム(A)とポリプロピレンフィルム(C)とはスプレー法、ロールコーター法、刷毛抜け法等によって接着することができる。接着剤としては、クロロプレン系、アクリル系、ポリエステル系成分等の接着剤を使用することができる。具体的には、ノガワケミカル(株)製のダイアボンド(クロロプレン系)、サイデン化学(株)製のサイビノール(クロロプレン系)、住友スリーエム(株)製の水性ボンド7(アクリル系)、日立化成ポリマー(株)製のハイボンド(ポリエステル系)等を挙げることができる。また、両面接着テープ、例えば日東電工の両面接着テープNo.5713を用いて接着することができる。
【0037】
AとBを接着しA/B積層材とし、このB側にCを接着しA/B/C積層材を得ることができる。
【0038】
二次電池容器は、本発明の積層材から積層材片を2枚切り出し、ポリプロピレンフィルム(C)が内側になるように重ね、その三辺をヒートシールにより融着して袋を作成することにより作成できる。また積層材を1枚切り出し、一端をポリプロピレンフィルム(C)が内側になるように折り曲げ、側面の二辺をヒートシールにより融着して袋を作成することによっても作成できる。
【0039】
また、二次電池容器は、本発明の積層材から積層材片を2枚切り出し、1枚の積層材をフィルム(A)が外側になるように金型により絞り成形し、発電要素を封入するための絞り成型部を設けた成形材と、他の1枚の積層材とをポリプロピレン(C)側に重ね合わせ、ヒートシールにより融着して容器を作成することができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各特性値は以下の方法で測定した。
【0041】
(1)破断強度、破断伸度
引張り試験機(テンシロン)を用いてクロスヘッドスピード300mm/分、幅10mm、試料長50mmとしてフィルム、発泡層の長手方向、幅方向について、25℃、65%RHの環境下にてJIS−K7127(1999年)に準拠して、破断強度、破断伸度、ヤング率値を測定した。評価は長手方向、幅方向それぞれの破断強度、破断伸度を各5回ずつ測定し、長手方向と幅方向の平均値を用いた。
【0042】
(2)フィルム、発泡層厚さ
電子マイクロメータ(アンリツ株式会社製 商品名「K−312A型」)を用いて針圧30gにてフィルム厚さ、発泡層の厚さを測定した。
【0043】
(3)AのB側表面、CのB側表面に形成された薄膜の存在、組成物の確認
A/B/C積層材の小片(2mm×2mm)をエポキシ樹脂(リファインテック(株)製の商品名「エポマウント」)中に包埋し、ミクロトームを用いて包埋樹脂ごと50nm厚さにスライスし、AのB側表面、CのB側表面をエネルギー分散型X線検出器(EDAX社製GENESIS4000)を装着した走査型電子顕微鏡(日立製作所製 S−4700)により倍率1万倍で観察して薄膜の存在、薄膜形成組成物の確認を行った。
【0044】
(4)耐振動性
本発明の積層材から20cm×15cmの積層材片を2枚切り出し、ポリプロピレンフィルム(C)が内側になるように重ね、その三辺を超音波シールにより融着して袋を作成し、ここに、下記試験液を100g入れ、電池構成体模擬体としてアルミニウム板(3mm厚さ×15cm×10cm)を入れた後、袋口をヒートシールにより閉じた。
【0045】
試験液はエチレンカーボネート/エチレンメチルカーボネート=1/1(重量比)に六フッ化リン酸リチウム塩( 濃度1.5mol/L)を加えたものを使用した。
【0046】
本試験液・アルミニウム板含有容器を振動試験機(アイデックス株式会社製 “BF−50UD”)に固定し、室温で、振幅0.75mm(縦方向)、10Hz→55Hz→10Hzを60秒で掃引、これを1サイクルとして8時間行った後の、容器の破れ、液漏れの状態を目視で観察し、以下の基準で評価し、○、○〜△および△は実用範囲、×および××は実用範囲外とした。
○: 破れ、液漏れ変化が観察されず。
○〜△:容器に液漏れはないが、わずかに亀裂が見られる。
△: 袋に目視できる亀裂、破れはないが、液もれが、わずかに観察される。
×:袋に亀裂が明らかに見られ、そこから液漏れが発生している。
××:袋が破れて液の大部分が漏れている。
【0047】
(5)耐衝撃性
上記(4)で作成した試験液・アルミニウム板封入容器を、温度60℃、相対湿度90%の環境下(エスペック株式会社製 恒温恒湿槽 プラチナスKシリーズ PH-1K使用)、24時間放置後、取り出し、室温で1時間放置後、長辺と短辺で形成される面を下側にして、大理石の試験台に5メートルの高さから繰り返し落下させた(時速35kmの衝突に相当)。
100回繰り返して落下させた後の、容器の破れ、液漏れの状態を目視で観察し、以下の基準で評価し、○、○〜△および△は実用範囲、×および××は実用範囲外とした。
○: 破れ、液漏れ変化が観察されず。
○〜△:容器に液漏れはないが、わずかに亀裂が見られる。
△: 容器にわずかに亀裂が見られ、液もれが、わずかに観察される。
×:容器に亀裂が明らかに見られ、そこから液漏れが発生している。
××:容器が破れて液の大部分が漏れている。
(6)水蒸気透過率
MOCON社製PERMATRAN W−TWINを用いて、1992年8月1日制定の「プラスチックフィルム及びシートの水蒸気透過度試験方法(機器測定法)JIS K7129B法」に従い、40℃,90%RH条件で測定した。
【0048】
[実施例1]
厚さ12μm、破断強度が215MPa、破断伸度が160%、水蒸気透過率が0.7g/m・dayのアルミニウム蒸着を施した二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レフィルム加工株式会社製“VM-PET”1510)(A)と、厚さ2mmの破断強度が1.6MPa、破断伸度が246%のポリオレフィン発泡層(B)(発泡ポリプロピレン、東レ株式会社製「トーレペフ」(登録商標)15020 AP61)をロールコーター法によって、住友スリーエム株式会社製のアクリル系水性接着剤“水性ボンド7”を用いて、Aの蒸着面とBとを重ねて、A/B積層材を作成した。ここで、接着剤塗布量は固形分としてA側に20g/mとし、A/B貼り合わせ後、50℃、72時間のエージング処理を行った。
【0049】
A/B積層材と厚さ40μm、破断強度49MPa、破断伸度670%、水蒸気透過率0.5g/m・dayのアルミニウム蒸着を施した無延伸ポリプロピレンフィルム(C)(東レフィルム加工株式会社製“VM-CPP”2703)とを、BとCのアルミニウム蒸着膜形成面側とを重ね合わせ、ロールコーター法によって、住友スリーエム株式会社製のアクリル系水性接着剤“水性ボンド7”を用いてA/B/C積層材を作成した。ここで接着剤塗布量はC側に固形分として20g/mとし、B/C貼り合わせ後、55℃、72時間のエージング処理を行った。
【0050】
特性は表1に示す。
【0051】
[実施例2]
実施例1において、ポリオレフィン発泡層(B)として、厚さ3mm、破断強度1.3MPa、破断伸度356%のポリオレフィン発泡層(B)(発泡ポリプロピレン、東レ株式会社製「トーレペフ」(登録商標)15030 AP66)としたこと以外は実施例1と同様にして、A/B/C積層材を作成した。特性は表1に示す。
[実施例3]
実施例1において、ポリオレフィン発泡層(B)として、厚さ1.5mm、破断強度1.4MPa、破断伸度316%のポリオレフィン発泡層(B)(発泡ポリプロピレン、東レ株式会社製「トーレペフ」(登録商標)15015 AP67)としたこと以外は実施例1と同様にして、A/B/C積層材を作成した。特性は表1に示す。
[実施例4]
実施例1において、ポリオレフィン発泡層(B)として、厚さ6mm、破断強度1.0MPa、破断伸度429%のポリオレフィン発泡層(B)(発泡エチレン−酢酸ビニル共重合体、東レ株式会社製「トーレペフ」(登録商標)13060 AM00)としたこと以外は実施例1と同様にして、A/B/C積層材を作成した。特性は表1に示す。
[実施例5]
実施例1において、ポリオレフィン発泡層(B)として、厚さ6mm、破断強度0.5MPa、破断伸度290%のポリオレフィン発泡層(B)(発泡エチレン−酢酸ビニル共重合体、東レ株式会社製「トーレペフ」(登録商標)30060 AL00)としたこと以外は実施例1と同様にして、A/B/C積層材を作成した。特性は表1に示す。
[実施例6]
実施例1において、ポリオレフィン発泡層(B)として、厚さ2mm、破断強度0.8MPa、破断伸度211%のポリオレフィン発泡層(B)(発泡ポリエチレン、東レ株式会社製「トーレペフ」(登録商標)15020 AA00)としたこと以外は実施例1と同様にして、A/B/C積層材を作成した。特性は表1に示す。
[実施例7]
実施例1において、ポリオレフィン発泡層(B)として、厚さ5mm、破断強度0.3MPa、破断伸度162%のポリオレフィン発泡層(B)(発泡ポリエチレン、東レ株式会社製「トーレペフ」(登録商標)30050 AG00)としたこと以外は実施例1と同様にして、A/B/C積層材を作成した。特性は表1に示す。
[実施例8]
実施例1において、ポリオレフィン発泡層(B)として、厚さ1.1mm、破断強度1.9MPa、破断伸度330%のポリオレフィン発泡層(B)(発泡ポリプロピレン、東レ株式会社製「トーレペフ」(登録商標)10010 AP67)としたこと以外は実施例1と同様にして、A/B/C積層材を作成した。特性は表1に示す。
[実施例9]
実施例1において、Aを、厚さ12μm、破断強度235MPa、破断伸度130%、水蒸気透過率1.5g/m・dayの、アルミナ(酸化アルミニウム)の蒸着を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(東レフィルム加工株式会社製「バリアロックス」(登録商標)1031HG)(A)に変更した。その他は実施例1と同様にして、A/B/C積層材を作成した。特性は表1に示す
[実施例10]
実施例1においてAを、厚さ12μm、破断強度225MPa、破断伸度98%、水蒸気透過率0.5g/m・dayのシリカ/アルミナの蒸着を施したポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製“エコシアール”VE500)(A)に変更した。その他は実施例1と同様にして、A/B/C積層材を作成した。特性は表1に示す。
【0052】
[実施例11]
実施例1において、Aとして、厚さ25μm、破断強度54MPa、破断伸度700%、の、水蒸気透過率0.5g/m・dayのアルミニウム蒸着がなされたポリプロピレンフィルム(東レフィルム加工株式会社製“VM-CPP”2402)(A)を用いた。その他は実施例1と同様にして、A/B/C積層材を作成した。特性は表1に示す。
【0053】
[実施例12]
実施例1において、Aとして、厚さ9μm、破断強度235MPa、破断伸度80%、水蒸気透過率2g/m・dayのシリカ/アルミナの蒸着を施したポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製“エコシアール”VE100)(A)を用いた。その他は実施例1と同様にして、A/B/C積層材を作成した。特性は表1に示す。
【0054】
[実施例13]
実施例1において、Cの厚さを30μmとしたこと以外は実施例1と同様にし、A/B/C積層材を作成した。特性は表1に示す。
【0055】
[実施例14]
実施例1において、Cの厚さを25μmとしたこと以外は実施例1と同様にし、A/B/C積層材を作成した。特性は表1に示す。
【0056】
[実施例15]
実施例1において、Cの厚さを20μmとしたこと以外は実施例1と同様にし、A/B/C積層材を作成した。特性は表1に示す。
【0057】
[実施例16]
実施例1において、Aとして、厚さ12μm、破断強度280MPa、破断伸度100%、水蒸気透過率0.7g/m・dayのシリカ蒸着膜を設けた延伸ナイロン6フィルム(三菱樹脂株式会社製“テックバリア”NY)(A)を用いた。その他は実施例1と同様にし、A/B/C積層材を作成した。特性は表1に示す。
「実施例17]
実施例1において、Aとして、厚さ12μm、破断強度225MPa、破断伸度110%、水蒸気透過率0.05g/m・dayのシリカ蒸着膜を設けた二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製“テックバリア”HX)(A)を用いた。その他は実施例1と同様にし、A/B/C積層材を作成した。特性は表1に示す。
[実施例18]
実施例1において、Aとして、厚さ12μm、破断強度225MPa、破断伸度110%、水蒸気透過率0.3g/m・dayのシリカ蒸着膜を設けた二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂株式会社製“テックバリア”T)(A)を用いた。その他は実施例1と同様にし、A/B/C積層材を作成した。特性は表1に示す。
[実施例19]
実施例1において、Aとして、厚さ15μm、破断強度243MPa、破断伸度85%、水蒸気透過率3g/m・dayのシリカ/アルミナの蒸着を施した2軸延伸ナイロン6フィルム(東洋紡績株式会社製“エコシアール”VN100)(A)を用いた。その他は実施例1と同様にし、A/B/C積層材を作成した。特性は表1に示す。
[比較例1]
実施例1において、ポリオレフィン発泡層(B)を設けなかった。その他は実施例1と同様にし、A/C積層材を作成した。特性は表1に示す。
【0058】
[比較例2]
実施例1において、Bのかわりに、厚さ70μm、破断強度36MPa、破断伸度645%のポリエチレンフィルム(東洋紡績株式会社製“リックスフィルム”L6101)を用いた。その他は実施例1と同様にし、A/B/C積層材を作成した。特性は表1に示す。
【0059】
[比較例3]
実施例1において、Aとして、厚さ12μm、破断強度240MPa、破断伸度118%のアルミニウム蒸着がなされていないポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製「ルミラー」(登録商標)P60)(A)を用いた。その他は実施例1と同様にし、A/B/C積層材を作成した。特性は表1に示す。
【0060】
[比較例4]
実施例1において、Aとして、厚さ15μm、破断強度235MPa、破断伸度165%のアルミニウム蒸着がなされていないポリプロピレンフィルム(東レ株式会社製二軸延伸ポリプロピレンフィルム「トレファン」(登録商標)2578)(A)を用いた。その他は実施例1と同様にし、A/B/C積層材を作成した。特性は表1に示す。
【0061】
[比較例5]
実施例1において、Cとして、厚さ25μm、破断強度47MPa、破断伸度635%のアルミニウム蒸着がなされてない無延伸のポリプロピレンフィルム(東レフィルム加工株式会社製「トレファン」(登録商標)NO3501”)を用いた。その他は実施例と同様にし、A/B/C積層材を作成した。特性は表1に示す。
【0062】
[比較例6]
実施例1において、Cとして、厚さ15μm、破断強度220MPa、破断伸度105%、の、水蒸気透過率0.5g/m・dayのアルミニウム蒸着がされた延伸ポリプロピレンフィルム(東レフィルム加工株式会社製“VM-OPP”MS33)(C)を用いた。その他は実施例1と同様にし、A/B/C積層材を作成した。ヒートシールが出来ず、袋が作成できず、二次電池用容器が作成できなかった。
【0063】
[比較例7]
実施例1において、フィルム(A)を用いなかった。その他は実施例1と同様にし、B/C積層材を作成した。特性は表1に示す。
【0064】
[比較例8]
実施例1において、Aのかわりに、厚さ25μm、破断強度33MPa、破断伸度555%のポリエチレンフィルム(東洋紡績株式会社製“リックスフィルム”L4102を用いた。その他は実施例1と同様にし、A/B/C積層材を作成した。特性は表1に示す。
【0065】
[比較例9]
実施例1において、Aのアルミニウム蒸着面を外側にしてA/B積層材を作成し、その他は実施例1と同様にし、A/B/C積層材を作成した。特性は表1に示す。
【0066】
[比較例10]
実施例1において、A/B積層材を作成後、AとCのアルミニウム蒸着膜形成面側とを重ね合わせ、その他は実施例1と同様にし、B/A/C積層材を作成した。特性は表1に示す。
【0067】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の積層材は加工性が良く、本発明の積層材から作成した容器は耐薬品性、耐振動性、耐衝撃性に優れるので、本発明の積層材は電気自動車、ハイブリット自動車、電気自動二輪車に搭載される二次電池用容器用の積層材として好適に用いられる。アルミニウム箔を用いないので環境に優しい特長を有す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ナイロンから選択される少なくとも一種のフィルム(A)、ポリオレフィン発泡層(B)、ポリプロピレンフィルム(C)がこの順に積層された積層材であって、AのB側表面にはアルミニウム、アルミナ、シリカ、シリカとアルミナの混合物から選択される少なくとも一種の薄膜が設けられ、Cが無延伸のポリプロピレンフィルムであり、CのB側表面にはアルミニウムの薄膜が形成されていることを特徴とする二次電池容器用積層材。
【請求項2】
Aの水蒸気透過率が1g/m・day以下であることを特徴とする請求項1記載の二次電池容器用積層材。
【請求項3】
Aの破断強度が200MPa以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の二次電池容器用積層材。
【請求項4】
Bの破断強度が1MPa以上、破断伸度が200%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の二次電池容器用積層材。
【請求項5】
アルミニウム、アルミナ、シリカ、シリカとアルミナの混合物から選択される少なくとも一種の薄膜が設けられたポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ナイロンから選択される少なくとも一種のフィルム(A)と、ポリオレフィン発泡体(B)と、アルミニウム薄膜が形成された無延伸のポリプロピレンフィルム(C)をこの順に積層し、Aの薄膜側をB側に、Cのアルミニウム薄膜をB側に積層することを特徴とする二次電池容器用積層材の製造方法。
【請求項6】
前記Aの破断強度が200MPa以上であることを特徴とする請求項5に記載の二次電池容器用積層材の製造方法。
【請求項7】
前記Bの破断強度が1MPa以上、破断伸度が200%以上であることを特徴とする請求項5または6に記載の二次電池容器用積層材の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載の二次電池容器用積層材によって形成した二次電池容器。

【公開番号】特開2012−84377(P2012−84377A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229371(P2010−229371)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000222462)東レフィルム加工株式会社 (142)
【Fターム(参考)】