説明

二次電池

【課題】本発明は、界面抵抗を低減した二次電池を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明においては、正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された電解質層とを有する二次電池であって、上記正極活物質および上記負極活物質の少なくとも一方の電極活物質と、電解質材料との界面に、上記電解質材料の比誘電率よりも高い比誘電率を有する修飾材が配置されていることを特徴とする二次電池を提供することにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、界面抵抗を低減した二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年におけるパソコン、ビデオカメラおよび携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。また、自動車産業界等においても、電気自動車用あるいはハイブリッド自動車用の高出力かつ高容量の電池の開発が進められている。現在、種々の電池の中でも、エネルギー密度が高いという観点から、リチウム二次電池が注目を浴びている。
【0003】
このようなリチウム二次電池の分野において、活物質および電解質間の界面抵抗を小さくするために、種々の研究がなされている。例えば、特許文献1には、負極層と硫化物系固体電解質層との間に負極層に対して電気化学的に安定で電子伝導性のないLiイオン伝導体修飾層を有する全固体リチウム二次電池が開示されている。これは、硫化物系固体電解質層の負極層側界面での空間電荷層の形成を抑制することにより、リチウムイオン伝導に対する抵抗を小さくし、出力の向上を図ったものである。
【0004】
また、特許文献2には、活物質粒子および酸化物系無機固体電解質粒子の間に、誘電率が高くイオン伝導性に優れた溶媒であるスルホランまたはその誘導体のうち少なくとも1つを含浸させたリチウム電池が開示されている。さらに、特許文献3には、活物質層と、前記活物質層に焼結接合された固体電解質層を含む全固体リチウム二次電池用積層体であって、前記積層体は、X線回折法により分析したときに、前記活物質層の構成成分および前記固体電解質層の構成成分以外の成分が検出されない全固体リチウム二次電池用積層体、ならびに、このような積層体を用いた全固体リチウム二次電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−193803号公報
【特許文献2】特開2002−042862号公報
【特許文献3】特開2007−005279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の二次電池においては、電極活物質と電解質材料との界面抵抗が大きいという問題がある。そのため、高レートで充放電した場合に容量が著しく低下してしまう。本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、界面抵抗を低減した二次電池を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明においては、正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された電解質層とを有する二次電池であって、上記正極活物質および上記負極活物質の少なくとも一方の電極活物質と、電解質材料との界面に、上記電解質材料の比誘電率よりも高い比誘電率を有する修飾材が配置されていることを特徴とする二次電池を提供する。
【0008】
本発明によれば、電極活物質および電解質材料の界面に、電解質材料の比誘電率よりも高い比誘電率を有する修飾材を配置することにより、電極活物質と電解質材料との界面抵抗を低減した二次電池とすることができる。これにより、高レートでの充放電時においても高い容量を得ることができる。
【0009】
上記発明においては、上記修飾材が、固体であることが好ましい。固体の流動性は極めて低いため、修飾材が移動することなく、より確実に電極活物質および電解質材料の界面に配置することができるからである。
【0010】
上記発明においては、上記修飾材が、酸化物であることが好ましい。大気中で安定な修飾材とすることができるからである。
【0011】
上記発明においては、上記修飾材が、BaTiOであることが好ましい。比誘電率が高いからである。
【0012】
上記発明においては、上記修飾材が、Li、LiTaOおよびLiNbOの少なくとも一種であることが好ましい。比誘電率が高いからである。
【0013】
上記発明においては、上記電解質材料が、一般式Li1+xAlGe2−x(PO(0≦x≦2)で表される化合物であることが好ましい。
【0014】
上記発明においては、上記電極活物質が上記正極活物質であり、上記正極活物質がLi、NiおよびMnを含有する酸化物正極活物質であることが好ましい。
【0015】
上記発明においては、上記電極活物質層における上記電極活物質および上記修飾材の重量比が、電極活物質/修飾材=100/0.1〜100/3の範囲内であることが好ましい。界面抵抗を効果的に低減することができるからである。
【0016】
上記発明においては、上記重量比が、電極活物質/修飾材=100/0.1〜100/1の範囲内であることが好ましい。界面抵抗をより低減することができるからである。
【0017】
上記発明においては、上記電極活物質層における上記電極活物質に担持された上記修飾材および上記電解質材料の重量比が、修飾材/電解質材料=0.1/5〜3/5の範囲内であることが好ましい。界面抵抗を効果的に低減することができるからである。
【0018】
上記発明においては、上記重量比が、修飾材/電解質材料=0.1/5〜1/5の範囲内であることが好ましい。界面抵抗をより低減することができるからである。
【発明の効果】
【0019】
本発明においては、界面抵抗を低減した二次電池を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の二次電池の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明における修飾材の一例を示す概略断面図である。
【図3】実施例1で用いられたLiCoO粒子のTEM写真である。
【図4】実施例1で得られた複合化粒子のTEM写真である。
【図5】実施例1〜4および比較例1で得られた評価用電池のサイクリックボルタンメトリー測定の結果を示すグラフである。
【図6】実施例1〜4および比較例1で得られた評価用電池のピーク電流値およびBaTiO添加量の関係を示すグラフである。
【図7】実施例5で得られた複合化粒子Bを説明する概略断面図である。
【図8】実施例7で用いられたLNM粒子および実施例7で得られた複合化粒子A、BのSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の二次電池について、詳細に説明する。
【0022】
本発明の二次電池は、正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された電解質層とを有する二次電池であって、上記正極活物質および上記負極活物質の少なくとも一方の電極活物質と、電解質材料との界面に、上記電解質材料の比誘電率よりも高い比誘電率を有する修飾材が配置されていることを特徴とするものである。
【0023】
図1は、本発明の二次電池の一例を示す概略断面図である。図1における二次電池10は、正極活物質層1と、負極活物質層2と、正極活物質層1および負極活物質層2の間に形成された電解質層3と、正極活物質層1の集電を行う正極集電体4と、負極活物質層2の集電を行う負極集電体5と、これらの部材を収納する電池ケース6とを有する。さらに、正極活物質層1は、正極活物質11と、電解質材料12と、正極活物質11および電解質材料12の界面に配置された修飾材13とを有する。ここで、修飾材13は、電解質材料12の比誘電率よりも高い比誘電率を有するものである。図1においては、電解質材料12および修飾材13が、正極活物質11の表面に担持され、複合化粒子を形成している。なお、図1では、電解質材料12および修飾材13が正極活物質11の表面に担持された複合化粒子を例示しているが、本発明においては、電極活物質と電解質材料との界面に修飾材が配置されていれば良い。例えば、修飾材が電極活物質の表面に担持された複合化粒子と、電極活物質層および固体電解質層の少なくとも一方に含まれる電解質材料とが接触していても良く、修飾材が電解質材料の表面に担持された複合化粒子と、電極活物質とが接触していても良く、電極活物質層と固体電解質層との間に修飾材が配置されていても良い。また、本発明の二次電池の種類は特に限定されるものではなく、例えば、圧粉型電池、焼成型電池、薄膜型電池等を挙げることができる。
【0024】
本発明によれば、電極活物質および電解質材料の界面に、電解質材料の比誘電率よりも高い比誘電率を有する修飾材を配置することにより、電極活物質と電解質材料との界面抵抗を低減した二次電池とすることができる。これにより、高レートでの充放電時においても高い容量を得ることができる。
【0025】
ここで、電解質材料の比誘電率よりも高い比誘電率を有する修飾材が、電極活物質と電解質材料との界面抵抗を低下させるメカニズムは、未だ定かではないが、次のように推測される。すなわち、電極活物質および電解質材料の界面に、比誘電率が高い材料が配置されることで、充放電時に界面にかかる極めて大きな電場を緩和することにより、界面近傍での格子歪みを抑制することが一因と考えられる。具体的には、例えば、正極活物質層と、負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された電解質層とを有するリチウム二次電池の場合、放電時には、負極活物質層から正極活物質層に向かってLiイオンが移動するが、正極活物質層と電解質層との界面抵抗が高いため、Liイオンが両者の界面に堆積し、格子歪みが起こることが考えられる。その結果、正極活物質層側へのLiイオンのホッピングが起こりにくくなり、界面抵抗が増加し、Liイオン伝導度が低下してしまう。これに対して、正極活物質層および電解質層の界面に、BaTiOのような比誘電率が高い材料を配置することで、界面でのLiイオンの堆積および偏りを抑制することができると考えられる。誘電体には、電位の勾配を緩やかにする働きがあるため、誘電体を界面に存在させることにより、Liイオンが界面に溜まりにくくすることができ、誘電体の比誘電率が高いほど、界面でのLiイオンの移動をよりスムーズにすることができると考えられる。
【0026】
また、次のようなメカニズムも推測される。すなわち、電極活物質および電解質材料の界面に、比誘電率が高い材料が配置されることで、充放電時に界面にかかる極めて大きな電場を緩和することができ、界面の固体電解質材料側でのキャリア欠乏層(例えばリチウム欠乏層)の形成を抑制することができると考えられる。一般的に電極活物質と固体電解質材料との界面では、両者の電位差によって大きな局所電場が引き起こされて固体電解質材料側にキャリア欠乏層(例えばリチウム欠乏層、厚さ:数nm〜数μm)が形成されると考えられる。このようなキャリア欠乏層では、材料中の金属濃度が最適組成からずれているためにイオン伝導性が低くなり、その結果、界面抵抗が増加すると考えられる。このようなキャリア欠乏層は、電極活物質と固体電解質材料との電位差が大きいほど顕著に生じることから、例えば正極活物質の平均作動電圧が高い場合、より顕著になると考えられる。
【0027】
一方で、電極活物質および固体電解質材料の界面に、BaTiOのような比誘電率の高い材料が修飾されると、電極活物質および固体電解質材料の電位差により生じる大きな局所電場が緩和される。そのため、キャリア欠乏層でのイオン移動度の低下が抑制される結果、界面抵抗が小さくなると考えられる。また誘電体の比誘電率が高いほど、界面でのイオンの移動をよりスムーズにすることができると考えられる。そのため、固体電解質材料の比誘電率よりも高い比誘電率を有する修飾材を電極活物質および固体電解質材料の界面に配置することで、電極活物質および固体電解質材料の界面抵抗を十分に低減できると考えられる。
【0028】
なお、特許文献2においては、スルホランおよびスルホラン誘導体は誘電率が高くイオン伝導性に優れた溶媒であり、これが活物質および酸化物系無機固体電解質の粒子の接触点近傍に存在することで、粒子間のリチウムイオン伝導に対する抵抗が低減されるとの記載がある。しかしながら、スルホランの比誘電率と、そこで用いられた酸化物系無機固体電解質(Li1+x+yAlTi2−xSi3−y12(0≦x≦0.4、0≦y≦0.6))の比誘電率との大小関係については記載されていなかった。本発明者等の検討によれば、スルホランの比誘電率は、上記酸化物系無機固体電解質の比誘電率よりも低かった。そのため、活物質と酸化物系無機固体電解質との界面抵抗を十分に低減することはできないと考えられる。
以下、本発明の二次電池について、構成ごとに説明する。
【0029】
1.正極活物質層
まず、本発明における正極活物質層について説明する。本発明における正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有する層であり、必要に応じて、電解質材料、導電化材および結着材の少なくとも一つを含有していても良い。本発明においては、正極活物質層が電解質材料を含有することが好ましい。正極活物質層のイオン伝導性を向上させることができるからである。また、本発明において、正極活物質層が、正極活物質および電解質材料の両方を含有する場合、電解質材料の比誘電率よりも高い比誘電率を有する修飾材が正極活物質層内に配置されることが好ましい。なお、この場合、上記修飾材は、正極活物質と電解質材料との界面の全面に配置されている必要はなく、正極活物質と電解質材料との界面の少なくとも一部に配置されていれば良い。
【0030】
(1)正極活物質
本発明に用いられる正極活物質は、目的とする二次電池の伝導イオンの種類により異なるものである。例えば、本発明の二次電池がリチウム二次電池である場合、正極活物質は、リチウムイオンを吸蔵・放出する。
【0031】
本発明に用いられる正極活物質としては、特に限定されるものではないが、例えば、酸化物正極活物質を挙げることができる。酸化物正極活物質を用いることにより、エネルギー密度の高い二次電池とすることができる。本発明の二次電池がリチウム二次電池の場合、用いられる酸化物正極活物質としては、例えば、LiCoO、LiMnO、LiNiO、LiVO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3等の岩塩層状型活物質、LiMn、Li(Ni0.5Mn1.5)O等のスピネル型活物質、LiFePO、LiMnPO等のオリビン型活物質等を挙げることができる。また、LiFeSiO、LiMnSiO等のSi含有酸化物を正極活物質として用いても良い。
【0032】
また、正極活物質は、Li、NiおよびMnを含有する酸化物正極活物質(LNM)であることが好ましい。例えばLAGPを用いた場合に、界面抵抗を十分に小さくできるからである。このような酸化物正極活物質としては、例えば、LiNiMn1−x(0<x<1であり、例えばLiNi0.5Mn0.5)、LiNiCoMn(x+y+z=1であり、例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3)、LiNiMn2−x(0<x<2であり、例えばLiNi0.5Mn1.5)、LiCrNiMn(x+y+z=2であり、例えばLiCr0.05Ni0.50Mn1.45)等を挙げることができる。また、他の例としては、LiMnO−LiNi1/3Co1/3Mn1/3固溶体、LiMnO−LiNi0.5Mn1.5固溶体等を挙げることができる。
【0033】
正極活物質の形状としては、例えば、粒子形状を挙げることができ、中でも、真球状または楕円球状であることが好ましい。また、正極活物質が粒子形状である場合、その平均粒径は、例えば、0.1μm〜50μmの範囲内であることが好ましい。なお、上記平均粒径は、粒度分布計により測定したD50で定義することができる。また、後述する各材料の平均粒径についても、同様に定義することができる。また、正極活物質層における正極活物質の含有量は、例えば、10重量%〜99重量%の範囲内であることが好ましく、20重量%〜90重量%の範囲内であることがより好ましい。
【0034】
(2)電解質材料
本発明においては、正極活物質層が、電解質材料を含有することが好ましい。正極活物質層のイオン伝導性を向上させることができるからである。本発明に用いられる電解質材料としては、固体電解質材料であっても良く、液体電解質材料であっても良く、ポリマー電解質材料であっても良いが、中でも、固体電解質材料であることが好ましい。固体電解質材料は、可燃性の有機溶媒を含まないため、安全性の高い二次電池とすることができるからである。
【0035】
本発明に用いられる固体電解質材料としては、例えば、酸化物固体電解質材料および硫化物固体電解質材料等を挙げることができる。酸化物固体電解質材料としては、例えば、NASICON型構造を有する化合物等を挙げることができる。本発明の二次電池がリチウム二次電池である場合、NASICON型構造を有する化合物の一例としては、一般式Li1+xAlGe2−x(PO(0≦x≦2)で表される化合物(LAGP)を挙げることができる。上記一般式において、xの範囲は、0以上であれば良く、中でも、0より大きいことが好ましく、0.3以上であることがより好ましい。一方、xの範囲は、2以下であれば良く、中でも、1.7以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましい。中でも、本発明においては、上記電解質材料が、Li1.5Al0.5Ge1.5(POであることが好ましい。また、NASICON型構造を有する化合物の他の例としては、一般式Li1+xAlTi2−x(PO(0≦x≦2)で表される化合物(LATP)を挙げることができる。上記一般式において、xの範囲は、0以上であれば良く、中でも、0より大きいことが好ましく、0.3以上であることがより好ましい。一方、xの範囲は、2以下であれば良く、中でも、1.7以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましい。中でも、本発明においては、上記電解質材料が、Li1.5Al0.5Ti1.5(POであることが好ましい。また、酸化物固体電解質材料の他の例としては、LiLaTiO(例えば、Li0.34La0.51TiO)、LiPON(例えば、Li2.9PO3.30.46)、LiLaZrO(例えば、LiLaZr12)等を挙げることができる。
一方、硫化物固体電解質材料としては、例えば、LiS−P、LiS−P−LiI、LiS−P−LiO、LiS−P−LiO−LiI、LiS−SiS、LiS−SiS−LiI、LiS−SiS−LiBr、LiS−SiS−LiCl、LiS−SiS−B−LiI、LiS−SiS−P−LiI、LiS−B、LiS−P−Z(ただし、m、nは正の数。Zは、Ge、Zn、Gaのいずれか。)、LiS−GeS、LiS−SiS−LiPO、LiS−SiS−LiMO(ただし、x、yは正の数。Mは、P、Si、Ge、B、Al、Ga、Inのいずれか。)等を挙げることができる。なお、上記「LiS−P」の記載は、LiSおよびPを含む原料組成物を用いてなる硫化物固体電解質材料を意味し、他の記載についても同様である。さらに具体的には、例えば、Li11、Li3.250.95、Li3.25Ge0.250.75等を挙げることができる。
【0036】
また、本発明に用いられる電解質材料が固体電解質材料である場合、固体電解質材料の形状としては、例えば、粒子形状を挙げることができ、中でも、真球状または楕円球状であることが好ましい。また、固体電解質材料が粒子形状である場合、その平均粒径は、例えば、50nm〜5μmの範囲内であることが好ましく、100nm〜3μmの範囲内であることがより好ましい。正極活物質層における固体電解質材料の含有量は、例えば、1重量%〜90重量%の範囲内であることが好ましく、10重量%〜80重量%の範囲内であることがより好ましい。
【0037】
また、本発明に用いられる液体電解質材料としては、通常、非水電解液を用いることができる。本発明の二次電池がリチウム二次電池である場合、用いられる非水電解液は、通常、リチウム塩および非水溶媒を含有する。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiClOおよびLiAsF等の無機リチウム塩;およびLiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO等の有機リチウム塩等を挙げることができる。非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ブチレンカーボネート(BC)、γ−ブチロラクトン、スルホラン、アセトニトリル、1,2−ジメトキシメタン、1,3−ジメトキシプロパン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランおよびこれらの混合物等を挙げることができる。非水電解液におけるリチウム塩の濃度は、例えば、0.5mol/L〜3mol/Lの範囲内である。なお、本発明においては、非水電解液として、例えば、イオン性液体等の低揮発性液体を用いても良い。
【0038】
(3)修飾材
本発明において、正極活物質層が、正極活物質および電解質材料の両方を含有する場合、電解質材料の比誘電率よりも高い比誘電率を有する修飾材が正極活物質層内に配置されることが好ましい。修飾材は、電解質材料の比誘電率よりも高い比誘電率を有するため、電池使用時に、正極活物質および電解質材料の界面に伝導イオンが堆積することや偏りを生じることを抑制し、上記界面での伝導イオンの移動をスムーズにすることができる。
【0039】
本発明に用いられる修飾材は、電解質材料の比誘電率よりも高い比誘電率を有するものである。比誘電率の測定方法としては、以下の2つの方法のいずれかを採用することができる。なお、2つの測定方法では、得られる比誘電率の値(絶対値)が異なる場合があるが、これは測定条件が異なるためであり、いずれの方法を用いても、電解質材料の比誘電率と修飾材の比誘電率との相対的な大小関係は同じである。
【0040】
第一の測定方法としては、例えば、Yokogawa−Hewlett Packard製のインピーダンスアナライザ4194Aを用いて、試料の比誘電率を測定する方法を挙げることができる。具体的には、電極セルに試料を導入し、電圧・周波数を印加して、電極間に蓄えられる電気容量(キャパシタンス)を測定し、下記式(1)より試料の比誘電率(ε)を測定する。なお、下記式(1)において、C:試料のキャパシタンス、C:空気のキャパシタンスである。
ε=C/C (1)
【0041】
第二の測定方法としては、例えば、JIS C 2565に記載の方法(空洞共振器法等)や、上記JIS C 2565に記載の方法を試料挿入孔閉鎖形として改良した方法(試料挿入孔閉鎖形の摂動方式空洞共振器法)等を挙げることができる。具体的には、空洞共振器内に試料を挿入し、試料挿入前後の共振周波数の変化を測定することにより誘電率を算出することができる。
【0042】
また、修飾材の比誘電率(A)に対する電解質材料の比誘電率(B)の比率(B/A)は、本発明の効果を得ることができれば特に限定されるものではないが、例えば、0.001〜1の範囲内であることが好ましく、0.005〜0.5の範囲内であることがより好ましく、0.01〜0.1の範囲内であることが特に好ましい。
【0043】
本発明における修飾材は、電解質材料の比誘電率よりも高い比誘電率を有するものであれば特に限定されるものではないが、強誘電体であることが好ましい。修飾材に強誘電体を用いると、外部回路から電圧を印加しない場合でも、自発分極を利用して界面の電場を緩和することができるためである。また、修飾材の比誘電率を高くすることができるため、上述した界面での伝導イオンの堆積や偏りを抑制し、伝導イオンの移動をスムーズにする効果が、修飾材近傍のみならず、修飾材から離れた場所でも得られ、修飾材を正極活物質と電解質材料との界面に少量配置することで、界面抵抗を効率良く低減することができるからである。また、修飾材は、例えば、固体であっても良く、液体であっても良く、ゲルであっても良いが、中でも、固体であることが好ましい。固体の流動性は極めて低いため、修飾材が移動することなく、より確実に電極活物質および電解質材料の界面に配置することができるからである。固体の修飾材としては、例えば、酸化物、硫化物、窒化物、ポリマー等を挙げることができ、中でも、酸化物が好ましい。大気中で安定であるからである。酸化物の修飾材の具体例としては、BaTiO、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、AlPO、ロッシェル塩、TiO、SiO、MgO、AlPO、Al、Li、LiTaO、LiNbO、LiPO、LiAlSiO、Li−P−Si−O、Li−B−Si−O等を挙げることができ、中でも、BaTiO、Li、LiTaO、LiNbOが好ましい。比誘電率が高いからである。また、硫化物の修飾材の具体例としては、硫化バナジウム、硫酸マグネシウム等を挙げることができ、窒化物の修飾材の具体例としては、Si、SiAlON等を挙げることができる。
【0044】
本発明においては、電極活物質(例えば正極活物質)と電解質材料との界面に、修飾材が配置される。修飾材および電解質材料の組み合わせは、上述した比誘電率の関係を満たせば特に限定されるものではなく、任意の組み合わせで良い。好ましい組み合わせの一例としては、修飾材が、BaTiO、Li、LiTaOおよびLiNbOの少なくとも一種であり、電解質材料がLAGPである組み合わせを挙げることができる。また、正極活物質および電解質材料の組み合わせは特に限定されるものではなく、任意の組み合わせで良い。好ましい組み合わせの一例としては、正極活物質がLNMであり、電解質材料がLAGPである組み合わせを挙げることができる。
【0045】
正極活物質層における修飾材の含有量は、本発明の効果を発揮することができれば特に限定されるものではなく、正極活物質層に含まれる電解質材料および修飾材の種類等に応じて適宜調整されることが好ましい。正極活物質層における正極活物質および修飾材の重量比は、正極活物質/修飾材=100/0.1〜100/3の範囲内であることが好ましく、正極活物質/修飾材=100/0.1〜100/1の範囲内であることがより好ましい。また、上記の場合、正極活物質層における電解質材料および修飾材の重量比は、電解質材料/修飾材=30/0.1〜30/3の範囲内であることが好ましく、電解質材料/修飾材=30/0.1〜30/1の範囲内であることがより好ましい。修飾材の重量比が少なすぎると、正極活物質および電解質材料の界面での伝導イオンの堆積をあまり抑制することができず、本発明の効果を十分に得ることができない可能性があるからであり、修飾材の重量比が多すぎると、伝導イオンの通り道がなくなってしまい、本発明の効果が薄れる可能性があるからである。なお、BaTiOのように比誘電率が極めて高い修飾材の場合、上述したように、上記界面での伝導イオンの堆積や偏りを抑制し、伝導イオンの移動をスムーズにする効果が、修飾材近傍のみならず、修飾材から離れた場所でも得られ、修飾材の添加量を少量とすることができると考えられる。
【0046】
また、本発明においては、修飾材および電解質材料が、正極活物質の表面に担持され、複合化粒子を形成していることが好ましい。正極活物質および電解質材料の界面に、修飾材を容易かつ確実に配置することができるからである。正極活物質層における正極活物質の表面に担持された修飾材および電解質材料の重量比は、例えば、電解質材料が一般式Li1+xAlGe2−x(PO(0≦x≦2)で表される化合物であり、修飾材がBaTiOである場合、修飾材/電解質材料=0.1/5〜3/5の範囲内であることが好ましく、修飾材/電解質材料=0.1/5〜1/5の範囲内であることがより好ましい。なお、上記複合化粒子は、正極活物質と、修飾材と、電解質材料とを混合し、複合化処理を行うことにより得ることができる。複合化処理としては、例えば、メカノフュ−ジョン等を挙げることができる。
【0047】
本発明において、正極活物質層が、電解質材料を含有する場合、電解質材料の比誘電率よりも高い比誘電率を有する修飾材は、正極活物質層内に配置されることが好ましい。この場合の修飾材の形態としては、例えば、図2に示すように、修飾材13が、正極活物質11および電解質材料12との複合化処理により得られた複合化粒子の一部として、正極活物質11および電解質材料12の界面に配置される形態(図2(a))、修飾材13が、正極活物質11と電解質材料12との反応(例えば、電池作製過程の焼成等)により自己形成された異相として、正極活物質11および電解質材料12の界面に配置される形態(図2(b)および(c))等を挙げることができる。なお、図2(b)の場合、修飾材13が正極活物質11の表面全体を被覆しているものの、修飾材13の厚さを薄くすることにより、伝導イオンは修飾材13を通り抜けることができる。伝導イオンの通り道を確保するため、図2(c)のように、正極活物質11と電解質材料12とを部分的に接触させて、正極活物質11および電解質材料12の界面に修飾材13を自己形成しても良い。一方、本発明において、正極活物質層が、電解質材料を含有しない場合、電解質材料の比誘電率よりも高い比誘電率を有する修飾材は、通常、正極活物質層内、電解質層内、または、正極活物質層および電解質層の界面に配置される。また、本発明においては、修飾材が電解質材料の表面に担持していても良い。
【0048】
(4)正極活物質層
本発明における正極活物質層は、さらに導電化材を含有していても良い。導電化材の添加により、正極活物質層の導電性を向上させることができる。導電化材としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー等を挙げることができる。また、正極活物質層は、さらに結着材を含有していても良い。結着材としては、例えば、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素含有結着材等を挙げることができる。正極活物質層の厚さは、目的とする二次電池の種類によって異なるものであるが、例えば、0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましい。
【0049】
2.負極活物質層
次に、本発明における負極活物質層について説明する。本発明における負極活物質層は、少なくとも負極活物質を含有する層であり、必要に応じて、電解質材料、導電化材および結着材の少なくとも一つをさらに含有していても良い。本発明においては、負極活物質層が電解質材料を含有することが好ましい。負極活物質層のイオン伝導性を向上させることができるからである。また、本発明において、負極活物質層が、負極活物質および電解質材料の両方を含有する場合、電解質材料の比誘電率よりも高い比誘電率を有する修飾材が負極活物質層内に配置されることが好ましい。なお、この場合、上記修飾材は、負極活物質と電解質材料との界面の全面に配置されている必要はなく、負極活物質と電解質材料との界面の少なくとも一部に配置されていれば良い。
【0050】
本発明に用いられる負極活物質としては、例えば、金属活物質およびカーボン活物質を挙げることができる。金属活物質としては、例えば、In、Al、SiおよびSn等を挙げることができる。一方、カーボン活物質としては、例えば、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等を挙げることができる。負極活物質層における負極活物質の含有量は、例えば、10重量%〜99重量%の範囲内であることが好ましく、20重量%〜90重量%の範囲内であることがより好ましい。
【0051】
本発明においては、負極活物質層が、電解質材料を含有することが好ましい。負極活物質層のイオン伝導性を向上させることができるからである。なお、電解質材料については、上記「1.正極活物質層」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。本発明に用いられる電解質材料が固体電解質材料である場合、負極活物質層における固体電解質材料の含有量は、例えば、1重量%〜90重量%の範囲内であることが好ましく、10重量%〜80重量%の範囲内であることがより好ましい。
【0052】
本発明において、負極活物質層が、負極活物質および電解質材料の両方を含有する場合、電解質材料の比誘電率よりも高い比誘電率を有する修飾材が負極活物質層内に配置されることが好ましい。修飾材は、電解質材料の比誘電率よりも高い比誘電率を有するため、電池使用時に、負極活物質および電解質材料の界面に伝導イオンが堆積することや偏りが生じることを抑制し、上記界面での伝導イオンの移動をスムーズにすることができる。なお、負極活物質層に用いられる修飾材については、上記「1.正極活物質層」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0053】
なお、負極活物質層に用いられる導電化材および結着材については、上述した正極活物質層における場合と同様である。また、負極活物質層の厚さは、目的とする二次電池の種類によって異なるものであるが、例えば、0.1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましい。
【0054】
3.電解質層
次に、本発明における電解質層について説明する。本発明における電解質層は、正極活物質層および負極活物質層の間に形成され、少なくとも電解質材料を含有する層である。電解質層に含まれる電解質材料を介して、正極活物質と負極活物質との間のイオン伝導を行う。電解質層の形態は、特に限定されるものではなく、液体電解質層、ゲル電解質層、ポリマー電解質層、固体電解質層等を挙げることができ、中でも、固体電解質層が好ましい。安全性に優れた二次電池とすることができるからである。
【0055】
固体電解質層は、固体電解質材料のみから構成されることが好ましいが、固体電解質材料を主相として含有し、修飾材を副相として含有していても良い。電解質層における修飾材の含有量としては、例えば、0.01重量%〜10重量%の範囲内であることが好ましく、0.1重量%〜5重量%の範囲内であることがより好ましい。なお、固体電解質層に用いられる固体電解質材料および修飾材については、上記「1.正極活物質層」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。また、固体電解質層は、必要に応じて、さらに結着材を含有していても良い。固体電解質層に用いられる結着材については、上述した正極活物質層における場合と同様である。
【0056】
電解質層の厚さは、電解質材料の種類および二次電池の構成によって大きく異なるものであるが、例えば、0.1μm〜1000μmの範囲内、中でも、0.1μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。
【0057】
4.その他の構成
本発明の二次電池は、上述した正極活物質層、負極活物質層および電解質層を少なくとも有するものである。さらに通常は、正極活物質層の集電を行う正極集電体、および、負極活物質層の集電を行う負極集電体を有する。正極集電体の材料としては、例えば、SUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボン等を挙げることができ、中でも、SUSが好ましい。一方、負極集電体の材料としては、例えば、SUS、銅、ニッケルおよびカーボン等を挙げることができ、中でも、SUSが好ましい。また、正極集電体および負極集電体の厚さや形状等については、二次電池の用途等に応じて適宜選択することが好ましい。また、本発明に用いられる電池ケースには、一般的な二次電池の電池ケースを用いることができる。電池ケースとしては、例えば、SUS製電池ケース等を挙げることができる。
【0058】
本発明の二次電池は、正極活物質層および負極活物質層の間に、セパレータを有していても良い。より安全性の高い二次電池を得ることができるからである。セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、ポリフッ化ビニリデン等の多孔膜;および樹脂不織布、ガラス繊維不織布等の不織布等を挙げることができる。
【0059】
5.二次電池
本発明の二次電池の種類としては、リチウム二次電池、ナトリウム二次電池、マグネシウム二次電池およびカルシウム二次電池等を挙げることができ、中でも、リチウム二次電池およびナトリウム二次電池が好ましく、特に、リチウム二次電池が好ましい。また、本発明の二次電池は、例えば、車載用電池として用いられることが好ましい。本発明の二次電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型および角型等を挙げることができる。また、本発明の二次電池の製造方法は、上述した二次電池を得ることができる方法であれば特に限定されるものではなく、一般的な二次電池の製造方法と同様の方法を用いることができる。本発明の二次電池が全固体二次電池である場合、例えば、正極活物質層を構成する材料、電解質層(固体電解質層)を構成する材料、および負極活物質層を構成する材料を順次プレスすることにより、発電要素を作製し、この発電要素を電池ケースの内部に収納し、電池ケースをかしめる方法等を挙げることができる。
【0060】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0061】
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。
【0062】
[実施例1]
(複合化粒子の作製)
正極活物質のLiCoO(日亜化学工業製、D50=10μm)と、修飾材のBaTiO(共立マテリアル製、D50=50nm)と、電解質材料のLi1.5Al0.5Ge1.5(PO(ホソカワミクロン製、D50=100nm、LAGP)とを、LiCoO:BaTiO:LAGP=100:0.1:5の重量比となるように秤量し、ホソカワミクロン製のメカノフュージョン装置AMS−MINIを用いて、複合化処理を行った。これにより、LiCoO/LAGP界面にBaTiOが配置された複合化粒子が得られた。
【0063】
(評価用電池の作製)
まず、上記の方法により得られた複合化粒子と、LAGPとを、LiCoO:LAGP=100:30の重量比となるように秤量し、乳鉢で混合し、正極合材を得た。得られた正極合材の配合比は、LiCoO/BaTiO/LAGP=100/0.1/30であった。
次に、上記正極合材7.8mgと、LAGP300mgとの積層体を作製し、さらに、LAGP側に厚さ140μmのポリマー電解質層を積層して、正極活物質層/電解質層の積層体とした。この積層体の直径は、φ12.5mmであった。なお、LAGPとLi金属とが直接接触すると、界面に反応相を形成して抵抗が高くなってしまうため、ここでは便宜的にポリマー電解質層を挟んでいる。
続いて、上記の正極活物質層/電解質層の積層体に、Li金属を貼り付け、その後、2032型のコイン電池に封入することで評価用電池を作製した。
【0064】
[評価1]
(LiCoO粒子および複合化粒子のTEM観察)
実施例1で用いられたLiCoO粒子および実施例1で得られた複合化粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した。得られたTEM写真をそれぞれ図3および図4に示す。なお、図4(b)は、図4(a)の拡大図であり、白く見えている部分がBaTiOである。図3および図4を比較することで、複合化処理により、LiCoOの表面にLAGPおよびBaTiOが担持された複合化粒子が得られたことが確認された。
【0065】
(比誘電率測定)
Yokogawa−Hewlett Packard製のインピーダンスアナライザ4194Aを用いて、BaTiOおよびLAGPの比誘電率を測定した。その結果、BaTiOの比誘電率は1069であり、LAGPの比誘電率は86であった。
【0066】
[実施例2]
複合化粒子の作製において、正極活物質と、修飾材と、電解質材料との重量比をLiCoO:BaTiO:LAGP=100:0.5:5としたこと以外は、実施例1と同様にして、評価用電池を作製した。なお、正極合材の配合比は、LiCoO/BaTiO/LAGP=100/0.5/30であった。
【0067】
[実施例3]
複合化粒子の作製において、正極活物質と、修飾材と、電解質材料との重量比をLiCoO:BaTiO:LAGP=100:1:5としたこと以外は、実施例1と同様にして、評価用電池を作製した。なお、正極合材の配合比は、LiCoO/BaTiO/LAGP=100/1/30であった。
【0068】
[実施例4]
複合化粒子の作製において、正極活物質と、修飾材と、電解質材料との重量比をLiCoO:BaTiO:LAGP=100:3:5としたこと以外は、実施例1と同様にして、評価用電池を作製した。なお、正極合材の配合比は、LiCoO/BaTiO/LAGP=100/3/30であった。
【0069】
[比較例1]
上記複合化粒子を用いず、正極合材の配合比をLiCoO/LAGP=100/30としたこと以外は、実施例1と同様にして、評価用電池を作製した。
【0070】
[評価2]
(電気化学特性評価)
実施例1〜4および比較例1で得られた評価用電池を用いて、電気化学特性を評価した。具体的には、1mV/secの挿引速度、3V〜5Vの電圧範囲で、3サイクルのサイクリックボルタンメトリー測定を行い、酸化電流のピーク電流値を評価した。サイクリックボルタンメトリーの測定結果を図5に示し、得られたピーク電流値を表1に示す。また、ピーク電流値をBaTiO添加量に対してプロットしたグラフを図6に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
図5、図6および表1に示されるように、実施例1〜4で得られた評価用電池では、比較例1で得られた評価用電池と比較して、高いピーク電流値が得られ、高レートでの充放電時においても高い容量が得られることが確認された。これは、LiCoOとLAGPとの界面にBaTiOを配置することで、LiCoOおよびLAGPの界面抵抗を低減することができたためと考えられる。特に、実施例1〜3で得られた評価用電池は、高いピーク電流値を示しており、LiCoO/BaTiOの重量比が100/0.1〜100/1の範囲内である場合に、界面抵抗を低減させる効果が顕著であることが確認された。これは、LiCoO:BaTiOの重量比が100:0.1より小さいと、BaTiOの添加量が不十分である一方、LiCoO:BaTiOの重量比が100:1より大きいと、界面でのLiイオンおよび電子の移動をBaTiOが阻害する影響が大きくなるためと考えられる。
【0073】
[実施例5]
(複合化粒子の作製)
正極活物質のLiNi0.5Mn1.5(日亜化学工業製、D50=4.5μm、LNM)と、修飾材のLi(ホソカワミクロン製、D50=200nm)とを、LNM:Li=100:5の重量比となるように秤量し、ホソカワミクロン製の複合化処理装置(ノビルタ)を用いて、複合化処理を行った。これにより、LNMの表面にLiが担持した複合化粒子Aが得られた。次に、得られた複合化粒子Aと、電解質材料のLi1.5Al0.5Ge1.5(PO(ホソカワミクロン製、D50=100nm、LAGP)とを、複合化粒子A:LAGP=105:5の重量比となるように秤量し、ホソカワミクロン製の複合化処理装置(ノビルタ)を用いて、複合化処理を行った。これにより、複合化粒子Aの表面にLAGPが担持した複合化粒子Bが得られた。複合化粒子Bは、図7に示すように、LNM/LAGP界面にLiが配置された粒子である。
【0074】
(評価用電池の作製)
まず、上記の方法により得られた複合化粒子Bと、LAGPとを、複合化粒子B:LAGP=60:40の重量比となるように秤量し、乳鉢で混合し、正極合材を得た。
次に、一軸プレス治具(φ13mm)を用いて、上記正極合材0.010gから構成される正極活物質層と、LAGP0.3gから構成される固体電解質層とを有する積層体を形成した。その積層体に、200MPaの圧力で静水圧プレスを行った。その後、540℃、2時間、大気雰囲気の条件で1回目の焼成を行い、次いで、600℃、2時間、大気雰囲気の条件で2回目の焼成を行った。これにより、正極活物質層および固体電解質層から構成される焼結体を得た。この焼結体の固体電解質層側の表面にIn金属を配置し、発電要素を作製し、この発電要素を2032型コインセルに封入した。これにより、評価用電池を得た。
【0075】
[実施例6]
修飾材としてLiTaOを用いたこと以外は、実施例5と同様にして評価用電池を得た。
【0076】
[実施例7]
修飾材としてLiNbOを用いたこと以外は、実施例5と同様にして評価用電池を得た。
【0077】
[比較例2]
修飾材を用いなかったこと以外は、実施例5と同様にして評価用電池を得た。
【0078】
[評価3]
(LNMおよび複合化粒子のSEM観察)
実施例7で用いられたLNM粒子および実施例7で得られた複合化粒子A、Bを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。得られたSEM写真をそれぞれ図8(a)〜(c)に示す。図8(a)〜(c)をそれぞれ比較することで、複合化処理により、LNM/LAGP界面にLiNbOが配置していることが確認された。
【0079】
(比誘電率測定)
実施例5〜7で用いた、Li、LiTaO、LiNbOおよびLAGPの1GHzにおける比誘電率を測定した。具体的には、粒径10nmの粉末0.3638gを用いて、JIS C 2565に記載の方法を穴閉鎖形に改良した測定方法に基づいて測定した。その結果を表2に示す。表2に示すように、Li、LiTaO、LiNbOは、いずれもLAGPよりも比誘電率が高いことが確認された。
【0080】
(界面抵抗測定)
実施例5〜7および比較例2で得られた評価用電池を用いて、LNMおよびLAGPの界面抵抗を測定した。まず、評価用電池に対して、挿引速度0.1mV/sec、電圧範囲2.5V〜4.8V(Li基準では3.1V〜5.4V(vs. Li/Li)に相当)の条件で、3サイクルのサイクリックボルタンメトリーを行った。次に、電位を4.7V(vs. Li/Li)に調整し、交流振幅100mV、周波数範囲1MHz〜10mHzの条件で、交流インピーダンス測定を行い、LNMおよびLAGPの界面抵抗を測定した。その結果を表2に示す。
【0081】
【表2】

【0082】
表2に示すように、電解質材料(LAGP)より比誘電率が大きな材料を用いることで、LNMおよびLAGPの界面抵抗が一桁小さくなることが確認された。界面抵抗の低減による電位的な利点としては、次の点が挙げられる。一般に、電池の放電時にはIR損による電圧降下が原因でエネルギー密度が低下してしまうので、できるだけ電池の内部抵抗を小さくして電圧降下幅を小さくすることが好ましい。界面抵抗が1/10に低減できると、IR損による電圧降下幅を最大で1/10に低減できるという利点がある。また、界面抵抗の低減による容量な利点としては、次の点が挙げられる。一般に、充放電レートが十分に小さい場合は界面抵抗の大小によれず理論容量を得ることができるが、充放電レートが大きい場合は界面抵抗が小さい方が大容量を得られるという利点がある。
【0083】
(平均作動電位の測定)
実施例5〜7および比較例1で得られた複合化粒子Bの平均作動電圧を、サイクリックボルタンメトリーにより求めた。その結果を表3に示す。
【0084】
【表3】

【0085】
表3に示すように、実施例5〜7の複合化粒子Bは、比較例2に比べて平均作動電位が高く維持された。ここで、比較例2のように、修飾材が存在しない状態でLNMおよびLAGPを600℃で焼成すると、LiMn、LiMnPO等の反応性が生じ、その結果、LNMの理論作動電圧である4.7V(vs. Li/Li)よりも低くなると考えられる。一方、実施例5〜7のように、修飾材が存在すると、LNMおよびLAGPの反応を抑制でき、LNMの平均作動電位の低下を抑制できたと考えられる。なお、この効果は、LiNbOよりもLiおよびLiTaOの方が顕著であることも示唆された。
【符号の説明】
【0086】
1 … 正極活物質層
2 … 負極活物質層
3 … 電解質層
4 … 正極集電体
5 … 負極集電体
6 … 電池ケース
10 … 二次電池
11 … 正極活物質
12 … 電解質材料
13 … 修飾材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に形成された電解質層とを有する二次電池であって、
前記正極活物質および前記負極活物質の少なくとも一方の電極活物質と、電解質材料との界面に、前記電解質材料の比誘電率よりも高い比誘電率を有する修飾材が配置されていることを特徴とする二次電池。
【請求項2】
前記修飾材が、固体であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記修飾材が、酸化物であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記修飾材が、BaTiOであることを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項5】
前記修飾材が、Li、LiTaOおよびLiNbOの少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項6】
前記電解質材料が、一般式Li1+xAlGe2−x(PO(0≦x≦2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記電極活物質が前記正極活物質であり、
前記正極活物質がLi、NiおよびMnを含有する酸化物正極活物質であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載の二次電池。
【請求項8】
前記電極活物質層における前記電極活物質および前記修飾材の重量比が、電極活物質/修飾材=100/0.1〜100/3の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかの請求項に記載の二次電池。
【請求項9】
前記重量比が、電極活物質/修飾材=100/0.1〜100/1の範囲内であることを特徴とする請求項8に記載の二次電池。
【請求項10】
前記電極活物質層における前記電極活物質の表面に担持された前記修飾材および前記電解質材料の重量比が、修飾材/電解質材料=0.1/5〜3/5の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれかの請求項に記載の二次電池。
【請求項11】
前記重量比が、修飾材/電解質材料=0.1/5〜1/5の範囲内であることを特徴とする請求項10に記載の二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−142268(P2012−142268A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263551(P2011−263551)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】