説明

二液型接着剤用接着装置、及び該装置を用いた物品の接着方法

【課題】第一液と第二液とからなる二液型接着剤を用いて二つの物品を接着する際に、第一液を一方の物品の接着面に、第二液を他方の物品の接着面に、効率よく塗布し、接着することのできる接着装置、及び該装置を用いた物品の接着方法を提供する。
【解決手段】所定の間隔を持って配置された、第一液を貯留する第一容器21と、第二液を貯留する第二容器22と、前記第一容器に挿脱自在に上下動可能な第一塗布体31と、第一塗布体と連結し、前記第二容器に挿脱自在に上下動可能な第二塗布体32と、一方の物品の接着面を第一塗布体に押圧し接離自在とする第一物品把持体41と、他方の物品の接着面を第二塗布体に押圧し接離自在とする第二物品把持体42とからなることを特徴とする二液型接着剤用接着装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、第一液と第二液とからなる二液型接着剤を用いて二つの物品を接着する際に、第一液を一方の物品の接着面に、第二液を他方の物品の接着面に、効率よく塗布することのできる接着装置、及び該装置を用いた物品の接着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二液型接着剤は第一液と第二液とが反応することによって硬化が始まり、物品を接着する。このような二液型接着剤を用いて二つの物品を接着させる場合、1)接着剤を塗布する直前に第一液と第二液とを混合し、該混合物を少なくとも一方の物品の接着面に塗布した後、接着面同士を重ね合せ接着する方法、2)一方の物品の接着面に第一液、他方の物品の接着面に第二液を塗布した後、接着面同士を重ね合せ接着する方法、のいずれかの方法が採用されている。
【0003】
上記1)の方法は、接着剤を一方の物品の接着面に塗布するだけでも接着が可能であり、接着剤の塗布作業を簡素化することができる。しかしながら第一液と第二液とを混合してから物品を接着させるまでの時間が、ポットライフを越えないように絶えず留意する必要があった。また一旦混合した接着剤は硬化反応が開始しているので、使い残りが生じてもこれを保存して再利用することはできなかった。
一方、上記2)の方法は接着剤を塗布する前に混合しないため、使い残した接着剤は保存して再度利用することができる。しかしながら異なる種類の接着剤を異なる物品の接着面に、ほぼ同じタイミングで塗布する必要があり、該作業が非常に煩わしいものであった。そして、現在は手作業によって行われることが一般的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、第一液と第二液とからなる二液型接着剤を用いて二つの物品を接着する際に、第一液を一方の物品の接着面に、第二液を他方の物品の接着面に、効率よく塗布し、接着することのできる接着装置、及び該装置を用いた物品の接着方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するための手段として、
所定の間隔をもって配置された、第一液を貯留する第一容器と、第二液を貯留する第二容器と、前記第一容器に挿脱自在に上下動可能な第一塗布体と、第一塗布体と連結し、前記第二容器に挿脱自在に上下動可能な第二塗布体と、一方の物品の接着面を第一塗布体に押圧し接離自在とする第一物品把持体と、他方の物品の接着面を第二塗布体に押圧し接離自在とする第二物品把持体とからなることを特徴とする二液型接着剤用接着装置を提供する。
また、前記第一容器及び/又は前記第二容器には、余剰接着剤を掻き取るための手段が講じられていることを特徴とする前記接着装置を提供する。
また、前記第一容器及び/又は前記第二容器には、液垂れ受け部が設けられていることを特徴とする前記接着装置を提供する。
また、前記第一物品把持体及び/又は前記第二物品把持体は、回動可能であることを特徴とする前記接着装置を提供する。
【0006】
更に、上記接着装置を用いた物品の接着方法であって、第一液を貯留する第一容器に第一塗布体を、第二液を貯留する第二容器に第二塗布体を挿入し、各塗布体に各液を浸潤させた後、塗布体を引き上げ、第一塗布体及び第二塗布体を所定位置に停止させ、第一物品把持体に把持される一方の物品の接着面を第一塗布体に、第二物品把持体に把持される他方の物品の接着面を第二塗布体に押圧し、各物品の接着面に各液を付着させ、次いで一旦各物品を各塗布体から引き離し、各塗布体を退避させた後、一方の物品及び/又は他方の物品を移動させ、一方の物品の接着面と他方の物品の接合面とを重ね合わせることを特徴とする二液型接着剤を用いた物品の接着方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の二液型接着剤用接着装置、及び接着方法を用いると、きわめて簡単に二液型接着剤の第一液と第二液とを異なる物品の接着面に塗布することができ、物品の接着作業を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の接着装置の模式図である。
【図2】図1aの部分拡大図(A)、bの部分拡大図(B)である。
【図3】第一容器の一実施例の模式的部分断面図である。
【図4】図1cの部分拡大図である。
【図5】本発明の接着装置を用いて物品を接着する作業工程図(A)〜(D)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて、本発明を説明する。図1は本発明の接着装置の一実施形態の模式図である。本発明の接着装置1は、第一液を貯留する第一容器21、第二液を貯留する第二容器22、第一容器に挿脱自在に上下動可能な第一塗布体31、第二容器に挿脱自在に上下動可能な第二塗布体32、一方の物品を把持する第一物品把持体41、他方の物品を把持する第二物品把持体42からなる。
【0010】
図1aの部分拡大図を図2(A)に、図1bの部分拡大図を(B)に示す。本発明の接着装置に用いられる第一容器21は第一塗布体31を挿入し得る形をし、第二容器22は第二塗布体32を挿入し得る形をし、第一容器21と第二容器22とは第一塗布体31と第二塗布体32との距離に応じた間隔を持って配置されている。また各容器21、22の挿入口21a、22aには、余剰接着剤を掻き取るための手段(以下、「掻き取り手段」と称す。)21b、22bが設けられていることが望ましい。尚、掻き取り手段21b、22bは、挿入口21a、22aの全周に設ける必要はなく、図2に示すように、塗布体31、32の後述する吸液部31a、32aと接する辺に設けておけばよい。また、図3に掻き取り手段として、断面が三角形の突出部(A)、容器内側に向かって垂れ下がる板(B)を例示するが、これらに限定されるものではない。該掻き取り手段21b、22bは、塗布体の表面に傷をつけないようゴム等からなることが好ましい。
【0011】
接着剤収納容器21、22は開口部21a、22aから上方に向かって広がりながら伸びる液垂れ受け部21c(21c’)、22c(22c’)を有することが望ましい。尚、接着剤の液垂れは塗布体31、32の後述する吸液部31a、32aから多く生じるので、吸液部31a、32aと接する辺から延びる液垂れ受け部21c、22cは大きく、その反対の辺から延びる液垂れ受け部21c’、22c’は小さいことが望ましい。反対の辺から伸びる液垂れ受け部21c’、22c’が大きいと塗布体の上下動を妨げる恐れがある。
【0012】
図1のcの部分拡大図を図4に示す。本発明の接着装置に用いられる第一塗布体31と第二塗布体32は、第一液または第二液を含むことができ、更に各物品の接着面を押圧した際に応力を発現できなければならない。これは第一塗布体31、第二塗布体32を、連続気泡を有するスポンジ等からなる吸液部31a、32aと、アルミニウムや鉄等の金属板、或いはプラスチック板等からなる支持部31b、32bとから構成することによって達成できる。
また第一塗布体31と第二塗布体32は、連結部33において、第一塗布体31の支持部31bと第二塗布体32の支持部32bとが向かい合うように連結されており、連動して上下動する。このとき該連結部33をエアシリンダー等の駆動体Aと接続しておけば、自動で第一塗布体31と第二塗布体32を上下動することができる。尚、図1では連結部33の下方に駆動体Aが位置しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば連結部33の上方に駆動体Aが位置していてもよい。
【0013】
本発明の接着装置は、更に一方の物品を把持する第一物品把持体41と、他方の物品を把持する第二物品把持体42とを有する。第一物品把持体41及び第二物品把持体42はそれぞれ、接着する物品を把持するためのものであり、各物品を接着面が向かい合う状態に把持することができる。また、把持した状態で各物品を各塗布体31、32に押圧することができ、更には各物品の接着面同士を重ね合わせることができる。尚、第一液と第二液を混合し硬化時間を短縮させるためには、各物品の接着面同士を重ね合わせた後、第一物品把持体41と第二物品把持体42の少なくとも一方を回転させる等し、接着面同士を擦り合わせることが好ましい。
【0014】
次に本発明の接着装置を用いた物品の接着方法について、図5を基に説明する。まず、第一物品把持体71に一方の物品Xを、第二物品把持体72に他方の物品Yを把持させ、第一容器51に第一液を、第二容器52に第二液を貯留する。次いで第一塗布体61及び第二塗布体62を降下させ、第一容器51に第一塗布体61を、第二容器52に第二塗布体62を挿入し、各塗布体に各液を浸潤させる(図5(A))。次に、余剰液をしごき取りながら第一塗布体61及び第二塗布体62を引き上げ、一方の物品Xと他方の物品Yの接着面間まで上昇させる(図5(B))。そして第一物品把持体71及び第二物品把持体72を移動させ、一方の物品Xの接着面を第一塗布体61に、他方の物品Yの接着面を第二塗布体62に押圧し、各接着面に各液を付着させる(図5(C))。最後に、各物品を各塗布体から引き離し、塗布体を退避させた後に、前記第一物品把持体71及び/又は第二物品把持体72を移動させて、各物品の接合面を重ね合わせる(図5(D))。尚、第一液と第二液を混合し硬化時間を短縮させるためには、各把持部71、72の少なくとも一方を回転させるなどして、接着面同士を擦り合わせることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本願発明の二液型接着剤用接着装置、及び該装置を用いた物品の接着方法は、二液型接着剤を用いて、物品を自動で接着する際に利用できる。
【符号の説明】
【0016】
1 接着装置
21、51 第一容器
22、52 第二容器
21a、22a 開口部
21b、22b 掻き取り手段
21c、21c’22c、22c’ 液垂れ受け部
31、61 第一塗布体
32、62 第二塗布体
31a、32a 吸液部
31b、32b 支持部
33 連結部
41、71 第一物品把持体
42、72 第二物品把持体
A 駆動体
X 一方の物品
Y 他方の物品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔をもって配置された、第一液を貯留する第一容器と、第二液を貯留する第二容器と、
前記第一容器に挿脱自在に上下動可能な第一塗布体と、第一塗布体と連結し、前記第二容器に挿脱自在に上下動可能な第二塗布体と、
一方の物品の接着面を第一塗布体に押圧し接離自在とする第一物品把持体と、他方の物品の接着面を第二塗布体に押圧し接離自在とする第二物品把持体とからなることを特徴とする二液型接着剤用接着装置。
【請求項2】
前記第一容器及び/又は前記第二容器には、余剰接着剤を掻き取るための手段が講じられていることを特徴とする請求項1記載の接着装置。
【請求項3】
前記第一容器及び/又は前記第二容器には、液垂れ受け部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の接着装置。
【請求項4】
前記第一物品把持体及び/又は前記第二物品把持体は、回動可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の接着装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の接着装置を用いた物品の接着方法であって、
第一液を貯留する第一容器に第一塗布体を、第二液を貯留する第二容器に第二塗布体を挿入し、各塗布体に各液を浸潤させた後、
塗布体を引き上げ、第一塗布体及び第二塗布体を所定位置に停止させ、
第一物品把持体に把持される一方の物品の接着面を第一塗布体に、第二物品把持体に把持される他方の物品の接着面を第二塗布体に押圧し、各物品の接着面に各液を付着させ、
次いで一旦各物品を各塗布体から引き離し、各塗布体を退避させた後、一方の物品及び/又は他方の物品を移動させ、一方の物品の接着面と他方の物品の接合面とを重ね合わせることを特徴とする二液型接着剤を用いた物品の接着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−137076(P2011−137076A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297325(P2009−297325)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000206473)大倉工業株式会社 (124)
【Fターム(参考)】