説明

二相シリケート系黄色蛍光体

【課題】温度安定性と増強された演色性を有するシリケート系黄色蛍光体の提供。
【解決手段】220〜530nmの範囲の波長を有する放射線源によって励起され、約555nm〜約580nmの範囲の波長でピーク発光強度を有する新規な二相黄色蛍光体であって、式a[Sr(M1)1−xSiO・(1−a)[Sr(M2)1−ySiO:Eu2+D(M1及びM2は、Ba等の二価金属、a、x、y、z及びuの値は、0.6≦a≦0.85、0.3≦x≦0.6、0.85≦y≦1、1.5≦z≦2.5、2.6≦u≦3.3、Eu及びDは、それぞれ、0/001〜約0.5の範囲である)によって示すことができる。Dは、F、Cl、Br、S及びNから選択されるアニオンであり、Dアニオンの少なくともいくつかが蛍光体のホストシリケート格子中の酸素に取って代わる。本黄色蛍光体は、高輝度白色LED照明システム用途等に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施態様は、一般に、二相シリケート系フォトルミネセンス材料に関する。より具体的には、本実施態様は、高輝度白色LED光照明システム、LCDディスプレーパネル、プラズマディスプレーパネル及び黄色照明システムで用途を有する、二つのシリケート系相を含む黄色発光蛍光体に関する。
【背景技術】
【0002】
白色LEDは当該技術で公知であり、比較的最近の技術革新である。電磁スペクトルの青/紫外線領域で発光するLEDが開発されてはじめて、LEDに基づく白色照明源を製造することが可能になった。経済的には、白色LEDは、特にその製造コストが下がり、技術がさらに進歩するにつれ、白熱光源(電球)に取って代わる潜在性を有している。特に、白色LEDの潜在性は、寿命、ロバストさ及び効率において白熱電球のそれよりも優れると考えられている。たとえば、LEDに基づく白色照明源は、100,000時間の作動寿命及び80〜90%の効率の工業規格に適合すると期待されている。高輝度LEDは、交通信号のような社会の分野に対してすでに実質的な影響を及ぼして白熱電球に取って代わっており、ほどなく、家庭及びビジネスならびに他の日常用途で一般化している照明要求に応じるということは驚くべきことではない。
【0003】
発光性蛍光体に基づく白色光照明システムを製造するための一般的手法がいくつかある。今日まで、大部分の白色LED市販品は、図1に示す、放射線源からの光が白色光照明の色出力に寄与する手法に基づいて製造されている。図1のシステム10を参照すると、放射線源11(LEDであってもよい)が電磁スペクトルの可視部分で光12、15を発する。光12及び15は同じ光であるが、説明のために二つの別個のビームとして示されている。放射線源11から発される光の一部分、すなわち光12が、放射線源11からエネルギーを吸収したのち光14を発することができるフォトルミネセンス物質である蛍光体13を励起する。光14は、スペクトルの黄色領域で実質的に単色であることもできるし、緑と赤、緑と黄又は黄と赤などの組み合わせであることもできる。放射線源11はまた、蛍光体13によって吸収されない可視領域で青色の光を発する。これは、図1に示す青色可視光15である。青色可視光15が黄色光14と混合して、図示する所望の白色照明16を提供する。
【0004】
あるいはまた、より新規な手法は、紫外線(UV)領域で光を発する非可視性放射線源を使用することである。この概念が、放射線源から出る光が照明システムによって発される光に実質的に寄与しないような、非可視領域で発光する放射線源を含む照明システムを示す図1Bに示されている。図1Bを参照すると、実質的に非可視性の光が光22、23として放射線源21から発される。光22は光23と同じ特性を有するが、以下の点を示すために二つの異なる参照番号が使用されている。光22は、蛍光体、たとえば蛍光体24又は25を励起するために使用することができるが、放射線源21から発された、蛍光体に衝突しない光23は、人の眼には実質的に見えないため、蛍光体からの色出力28に寄与しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
要望されていることは、従来技術のシリケート系黄色蛍光体に対する改良であって、蛍光体からの青色励起光の所望の黄色出力への同等以上の転換効率によって少なくとも部分的に表される改良である。また、蛍光体は、200℃までの温度安定性及び増強された演色性を有することが望ましい。さらには、製造歩留の改善にとって、約400nm〜約480nmの範囲の波長で広く一貫した励起効率を有する黄色蛍光体を有することがきわめて重要である。すべての高い性能及び低コストを有する望ましい黄色蛍光体は、青色LEDと組み合わせて使用されると、色出力が温度に応じて安定であり、色の混合が所望の均一な色温度及び演色指数を生じさせる高輝度白色光を発することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施態様は、式(M1)2SiO4及び(M2)3SiO5(式中、M1及びM2は、それぞれアルカリ土類金属であることができる)によって一般的に示される二つの別々の相をその組成中に有する黄色蛍光体に関する。本蛍光体は、約220nm〜約530nmの範囲の放射線を発する放射線源によって励起されると、約555nm〜約580nmの範囲の波長でピーク発光強度を有する。本黄色蛍光体は、UVないし約530nm未満の波長を有する可視光を吸収するように構成され、約360nm〜約520nmの広い範囲の波長を有する光により、ほぼ一貫した発光強度で励起させることができる。
【0007】
特に、本発明の黄色蛍光体は、Mg、Ca、Ba又はZnである少なくとも一つの二価アルカリ土類元素M1又はM2を、式a[Srx(M1)1-xzSiO4・(1−a)[Sry(M2)1-yuSiO5:Eu2+D(式中、M1及びM2は、Ba、Mg、Ca及びZnからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つである)によって一般的に示される化学量論的関係で有する二相シリケート系化合物を含む。式中の中間にある大きな点(・)は、化合物のSiO4及びSiO5部分が材料中で二つの別々の相を形成していることを示す。a、x、y、z及びuの値は、以下の関係:0.6≦a≦0.85、0.3≦x≦0.6、0.85≦y≦1、1.5≦z≦2.5及び2.6≦u≦3.3に従う。ユーロピウム(Eu)及びアニオンDの量は、それぞれ、約0.001〜約0.5の範囲である。アニオンDは、F、Cl、Br、S及びNからなる群より選択され、特異的に、二相蛍光体の二つの相のいずれかの結晶格子中の酸素アニオンに取って代わる。これらの蛍光体は、約555nm〜580nmのピーク発光波長を有する可視光を発するように構成されている。
【0008】
本発明のさらなる実施態様で、黄色蛍光体は、白色LEDで使用することができる。このような白色光照明システムは、約280nmを超える波長を有する放射線を発するように構成された放射線源と、放射線源からの放射線の少なくとも一部を吸収し、550nm〜約580nmの波長でピーク強度を有する光を発するように構成された二相シリケート系黄色蛍光体とを含む。この黄色蛍光体は、式a[Srx(M1)1-xzSiO4・(1−a)[Sry(M2)1-yuSiO5:Eu2+D(式中、M1、M2、x、y、z及びuは、先に定義したとおりである)で示される。
【0009】
本黄色蛍光体を合成する方法は、ゾルゲル法、固相反応法及び共沈法を含む。これらの方法は一般的に、金属及びメタロイド塩を水性溶液に溶解し、成分をすべていっしょに沈殿させることを含む。沈殿物は、原子レベルで混合した金属のヒドロキシレート及びカルボキシレートの溶液を含むことができる。溶液は、結晶格子サイト上の酸素に取って代わることができるハロゲンドーパントを含むことができる。
【0010】
典型的な共沈法は、
a)Sr(NO33、(M1)(NO32及び(M2)(NO32を水に溶解するステップ、
b)Eu23を硝酸に溶解するステップ、
c)SrF2を硝酸に溶解するステップ、
d)ステップa)、b)及びc)で得られた溶液を混合するステップ、
e)ステップd)で得られた溶液に(CH3O)4Siを加え、次いでその混合物に酸を加えて沈殿を起こさせるステップ、
f)ステップe)の混合物のpHを約9に調節するステップ、
g)ステップf)の反応生成物を乾燥させ、次いで反応生成物を仮焼して沈殿物を分解するステップ、及び
h)ステップg)の沈殿物を還元性雰囲気中で焼結するステップ
を含む。
【0011】
励起スペクトルは、本黄色蛍光体が、約200〜540nmの範囲の波長で励起されると、効率的に蛍光を発するということを示す。本黄色蛍光体は、より高いルミネセンス効率及びより良好な温度安定性ならびに広い励起波長での発光一貫性を含む、従来技術の蛍光体に対して有利である発光特性を提供する。これらの励起波長は、約400nm〜約500nmの範囲である。
【0012】
ホスト格子中のアルカリ土類金属とケイ素との比率を変える影響、アルカリ土類金属のタイプ、Eu活性化剤の含量の影響及びハロゲンドーパントの役割が本開示で論じられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の新規な蛍光体は二相シリケート系化合物を含む。この蛍光体は、白色光LEDシステム、黄色照明システム及びカラーディスプレーパネルの成分、たとえばプラズマディスプレーパネルのRGB(赤、緑、青)バックライトシステムの成分をはじめとする多様な用途を有する。本発明の蛍光体は、高めのジャンクション温度で作動する高出力LEDパッケージで特に用途がある。
【0014】
本二相シリケート系蛍光体の様々な実施態様を以下の順序で説明する。まず、これら新規な二相シリケート系組成物の概要を延べ、続いて、ホストシリケート格子の結晶性、格子中のケイ素に対するアルカリ土類金属の相対量を変化させる影響及び種々のアルカリ土類金属の相対量を変化させる影響を論じる。次に、元素F、Cl、Br、S及びNの一つ以上を含むドーパントDに関する開示に加え、組成の少なくとも一つの相における活性化剤二価ユーロピウム(Eu2+)を論じる。特に重要なことは、ドーパント原子の少なくともいくつかがホストシリケート結晶の酸素原子格子サイトに位置するという事実である。
【0015】
二以上の相の蛍光体に利用可能な広い範囲の励起エネルギー、二以上の相の蛍光体の増強された温度安定性及びこのような二以上の相の蛍光体系が提供することができる所望の発光スペクトルを含むがこれらに限定されない、本二相シリケート系を提供する利点を論じる。
【0016】
最後に、白色LED及びカラーディスプレーパネルにおけるこのような二相蛍光体系の使用を、使用することができる励起光源のタイプ及び本二相系とともに使用することができる他の公知の蛍光体の例を含め、記載する。
【0017】
本実施態様の新規な多相シリケート系蛍光体系
本実施態様の新規な蛍光体組成物は、組成中に少なくとも二つのシリケート系相を有し、第一の相は、(M1)2SiO4の結晶構造と実質的に同じである結晶構造を有することができ、第二の相は、(M2)3SiO5の結晶構造と実質的に同じである結晶構造を有することができる。当業者には、これら二つのシリケート相が例示的であり、他にも多くの相が本発明の実施態様によって考慮され、互いに連携して作用する異なるシリケート相の相対量こそがこの新規な属性を決定するということが理解されよう。
【0018】
ここで、M1及びM2は、それぞれ典型的にはアルカリ土類金属であるが、他の元素であってもよい。したがって、本明細書中、M1、M2は、それぞれ、Sr、Ba、Mg、Ca及びZnからなる群より選択されるものと定義する。組成の少なくとも一つの相が、Mgを約0.0001重量%以上のレベルで含有する。
【0019】
本蛍光体組成物は、二価ユーロピウム(Eu2+)によって活性化することができるが、当業者には、二価ユーロピウム(Eu2+)が、蛍光体組成物を活性化するために使用することができる唯一の活性化剤ではないことが理解されよう。
【0020】
組成物の相の少なくとも一つが、ハロゲンであることができるドーパントDを含有する。ドーパントDがハロゲンである場合、それはF、Cl又はBrのいずれかである。しかし、ドーパントDが常にハロゲン又は排他的にハロゲンでなければならないということはない。事実、ドーパントDは、元素S及びNを含むこともでき、ハロゲンとS及び/又はNとの組み合わせであってもよい。実施態様によっては、蛍光体組成物に含まれるドーパントD原子の少なくともいくつかがホストシリケート結晶の酸素原子格子サイトに位置し、この場合もまた、シリケートホスト格子は、SiO4、SiO5、Si25、Si38、SiO4、Si27及びSi28のような構造を非限定的に含み、Siに取って代わるアルカリ土類金属の量はその原子価に依存する。
【0021】
本発明の一つの実施態様では、本発明の新規な二相蛍光体は、一般に、式a[Srx(M1)1-xzSiO4・(1−a)[Sry(M2)1-yuSiO5:Eu2+Dによって表すことができ、式のSiO4部分とSiO5部分の間にある記号は、相が別々であることを示すためのものである。この式は、任意の二つのシリケート相を選択することができるという点で例示的である。上記の例示的な式では、M1及びM2それぞれは、Ba、Mg、Ca及びZnからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つである。
【0022】
本実施態様にしたがって、蛍光体は、そのシリケート構造にかかわらず、化学組成において必ずしも化学量論的ではない。すなわち、化合物の組成における種々の元素の間の関係が必ずしも整数値である必要はない。たとえば、式a[Srx(M1)1-xzSiO4・(1−a)[Sry(M2)1-yuSiO5:Eu2+Dにおけるx、y及びzの値は、以下の関係:0.6≦a≦0.85、0.3≦x≦0.6、0.85≦y≦1、1.5≦z≦2.5及び2.6≦u≦3.3に従うことができる。
【0023】
本二相材料は、二つの手法:(1)原料成分の前駆体を二つのシリケート相の所望の組成で混合し、その前駆体を液相反応又は固相反応で処理し、焼結する手法、(2)二つの相材料を独立して処理し、最終的な二つの相材料を機械的混合によって混合する手法によって合成することができる。
【0024】
G. BlasseらによってPhilips Research Reports Vol. 23, No. 1, pp. 1-120で教示されているように、ユーロピウム活性化された蛍光体のホスト格子は、系Me2SiO4(MeはSr又はBaである)に属することができ、その場合、蛍光体は、結晶構造K2SO4様を有し、又はMe3SiO5(Meは、Ca、Sr又はBaである)に属することができ、その場合、蛍光体は、結晶構造Cs3CoCl5を有する(又はこの結晶構造に関連する)。本発明の蛍光体のホスト格子が同じく結晶質であるということは、図2Aに示す典型的なX線回折図によって実証されている。
【0025】
図2Aを参照すると、(M2)3SiO5タイプの化合物、M3SiO5及びM2SiO4タイプの化合物からなる二相組成物ならびに(M1)2SiO4タイプの化合物のX線回折図の比較が示されている。(M2)3SiO5タイプの化合物のX線回折図が図2Aの一番上の曲線として示され、測定した実際の化合物はSr3Eu0.6Si1.0250.13であった。(M1)2SiO4タイプの化合物のX線回折図が図2Aの一番下の曲線であり、実際の化合物は(Sr1.025Ba0.925Mg0.05)Eu0.06Si1.0340.12であった。
【0026】
図2Aの中間の曲線は、式(M1)2SiO4・(M2)3SiO5(・は、材料の二つの相の間の区別を示す)によって表すことができる一般的性質を有する二相シリケート系材料のX線回折図である。より具体的には、二相蛍光体は、式a(SrxM11-xzSiO4・(1−a)(SryM21-yuSiO5:Eu2+Dによって表すことができ、この場合、典型的な蛍光体は、0.72[Sr1.025Ba0.925Mg0.05)Eu0.06Si1.0340.12]・0.28(Sr3Eu0.6Si1.0250.13)であった。当然、当業者には、この場合、この命名法が、a=0.72、(1−a)=0.28であり、M1がアルカリ土類金属3種Sr、Ba及びMgすべてを含み、M2がSrのみであり、ドーパントFがフッ素であるということを意味することが理解されよう。
【0027】
図2Aの三つのX線回折(XRD)図を比較すると、3種すべてのサンプルが結晶質であることがわかる。特定の理論によって拘束されることを望まないが、(M1)2SiO4は、ケイ酸ストロンチウムSr2SiO4(斜方晶構造、空間群Pnma)の構造と合致するピークを示すことができ、(M2)3SiO5は、別のケイ酸ストロンチウムSr3SiO5(正方晶構造、空間群P4/ncc)の構造と合致するピークを示すことができると考えられる。本二相蛍光体のピーク位置は、実際の蛍光体中でストロンチウムに取って代わるバリウム及び/又はマグネシウムにより、2θ軸に沿ってわずかにシフトするかもしれない。
【0028】
図2Bは、二つの異なる方法:1)各相を別々に共沈させ、仮焼し、焼結し、二つの相それぞれが完全に処理されて初めて混合する方法、及び2)二つの相を液相中で同時に合成し、いっしょに共沈させ、仮焼し、焼結する方法によって合成された、典型的な二相蛍光体のX線回折図を示す。図2Bでは、方法1)によって調製したサンプルを「別々に焼結したのち機械的に混合」と標識し、方法2によって調製したサンプルを「同時沈殿」と標識する。
【0029】
図2Bに示す二つのサンプルに関してピーク及びそれらの位置は実質的に同じであり、二つの相(M1)2SiO4及び(M2)3SiO5が液相中で別々に形成されることを示す。
【0030】
SiO4及びSiO5シリケート相におけるアルカリ土類成分M1及びM2の影響
このセクションでは、(M1)2SiO4及び(M2)3SiO5シリケート相におけるアルカリ土類成分M1及びM2それぞれの影響を論じる。
【0031】
(M1)2SiO4相の光学的性質は、とりわけ、ストロンチウムの量に対する他の元素の比率を調節する方法によって制御することができ、その場合、M1は、ストロンチウム(Sr)及び別のアルカリ土類元素、たとえばマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)又は遷移金属元素、たとえば亜鉛(Zn)又はそれらの組み合わせである。本発明概念のこの実施態様を定位置に配する例示的なデータセットが、全体を引用例として本明細書に取り込む2005年11月8日出願の「Silicate-based green phosphors」と題する米国特許出願第11/269,953号で示されている。
【0032】
米国特許出願第11/269,953号では、約522nmで発光する式(Sr0.2Ba0.82SiO4:Eu2+F、約525nmで発光する式(Sr0.3Ba0.72SiO4:Eu2+F及び約532nmで発光する式(Sr0.4Ba0.62SiO4:Eu2+Fの3種の緑色蛍光体の発光スペクトルが、スペクトルの黄色領域でより多く発光する、式(Sr0.7Ba0.32SiO4:Eu2+Fで示される黄色シリケート系蛍光体の発光スペクトルと比較されている。黄色蛍光体は約540nmで発光する。蛍光体は、約450nmで発光する青色LEDで励起した。
【0033】
本発明者らは、先の研究において、(Sr1-xBax2SiO4蛍光体系では、ピーク発光が起こる波長位置が、x=1の場合(換言するならば、アルカリ金属含有量が100%Baである場合)の500nmの緑色から、x=0の場合(100%Sr)の580nmでの黄色まで変化するということを見いだした。450nmの同じ光源からの転換効率は、Baが0から約90%まで増すとき、連続的な増大を示す。Srに対するBaの比が0.3〜0.7であるときに得られる545nmのピーク発光波長は、YAG:Ceピーク発光波長のそれに近い。
【0034】
同じ4種の蛍光体(Sr0.2Ba0.82SiO4:Eu2+F、(Sr0.3Ba0.72SiO4:Eu2+F、(Sr0.4Ba0.62SiO4:Eu2+F及び(Sr0.7Ba0.32SiO4:Eu2+Fの励起スペクトルの群が米国特許出願第11/269,953号に示されている。当業者には、「励起スペクトル」が実際には、光の強度が励起放射線の波長の関数として測定される発光スペクトルであるということが理解されよう。換言するならば、蛍光体から発される光を測定するところの特定の波長が選択され、それは、スキャンされる蛍光体に進入する放射線の波長である。この一連の実験で選択された波長は、蛍光体を450nmで励起したときもっとも強い発光が起こった波長である。
【0035】
米国特許出願第11/269,953号の特定の例では、実験に使用した検出器は、(Sr0.2Ba0.82SiO4:Eu2+F蛍光体によって発される522nm光の強度を測定するようにセットされていた。理由は、この波長が、(Sr0.2Ba0.82SiO4:Eu2+F蛍光体を450nmで励起したときにもっとも強い発光が起こる波長であったからである。ひとたび検出器が522nmにセットされると、励起放射線の波長が約300〜約560nmでスキャンされ、522nmでの発光が記録された。同様に、検出器は、(Sr0.3Ba0.72SiO4:Eu2+F、(Sr0.4Ba0.62SiO4:Eu2+F及び(Sr0.7Ba0.32SiO4:Eu2+F蛍光体それぞれの場合で525nm、532nm及び540nm光の強度を測定するようにセットされ、サンプルごとに約300〜約560nmの励起放射線の波長をスキャンした。
【0036】
この例のデータは、522nm、525nm及び532nmで発光する3種の緑色蛍光体が、励起放射線が約420nm未満の波長を有するとき、励起放射線に対して、より応答性しやすいということを示す。約420〜460nmで、522及び525nm緑色蛍光体の曲線は、532nm緑色蛍光体及び540nm黄色蛍光体の両方よりも低下する。4種の蛍光体のいずれも、約500超〜520nmの波長を有する励起放射線に応答する。
【0037】
要するに、単相系に対する二相系における励起に関して予想外の結果が得られるということがわかる。
【0038】
Ba以外の元素をシリケートホスト中のSrに代えて用いることもできる。これら代替元素としては、Ca及びMgがある。Sr−Ba系シリケート蛍光体系におけるバリウム又はストロンチウムのカルシウム置換は、一般に、単相(M1)2SiO4系の発光強度を下げ、カルシウム置換のレベルが40%未満であるとき、発光をより長い波長に移動させると示されている。(米国特許出願第11/269,953号を参照)。Sr−Ba系シリケート蛍光体系におけるバリウム又はストロンチウムの多量のマグネシウム置換は、一般に、発光強度を下げ、発光をより短い波長に移動させた。しかし、バリウム又はストロンチウムの少量のマグネシウム置換(たとえば10%未満)は、発光強度を高め、発光をより長い波長にシフトした。
【0039】
また、(M1)2SiO4シリケート系緑色蛍光体への少量のMg添加の効果が米国特許出願第11/269,953号に示されている。この中で開示されているものは、450nm励起の下での蛍光体(Sr0.057Ba0.4Mg0.0252SiO4:Eu2+F及び(Sr0.057Ba0.4Mg0.0252SiO4:Eu2+Fの発光スペクトルを測定し、実質的にMgを含まない蛍光体の発光と比較したものである。Mgを有しない「対照」蛍光体は、式(Sr0.6Ba0.42SiO4:Eu2+Fによって示されるものであった。この一連の組成物を選択した目的は、まずSrに代えてMgを用いてBa濃度を実質的に一定に維持し、次いでBaに代えてMgを用いてSr濃度を実質的に一定に維持する効果を示すことであった。
【0040】
Mg添加が発光強度を増大した。3種すべての蛍光体に関して約540nmでの発光強度のピークを見ると、3種のうち最低の発光強度を示す蛍光体は対照蛍光体(Sr0.6Ba0.42SiO4:Eu2+Fであった。Baに代えてMgを用いた蛍光体は、対照蛍光体に対して約6〜7%の発光強度の増大を示し、Srに代えてMgを用いた蛍光体は、対照蛍光体に対して約10%の発光強度の増大を示した。また、Mgの包含がピーク発光が起こる波長をより長い波長(すなわち、わずかに黄色に近く、緑から離れる方向)にシフトしたことが認められ、この効果は、Srに代えてMgを用いた場合によりもBaに代えてMgを用いた場合により顕著に表れた。
【0041】
繰り返していうが、これらの効果は、単相(M1)2SiO4系に関して認められた。
【0042】
単相(M2)3SiO5系に関しても同様な光学的観測を行い、単相(M1)2SiO4系の観測結果と比較することができる。これらは、全体を引用例として本明細書に取り込む2005年10月25日出願の「Silicate-based orange phosphors」と題する米国特許出願第11/258,679号で論じられ、この出願は、個々の相Sr3SiO5、(Ba0.1Sr0.93SiO5及び(Ba0.075Mg0.025Sr0.93SiO5の発光スペクトルを報告している。最大発光強度を示した蛍光体は、蛍光体(Ba0.1Sr0.93SiO5及び(Sr0.97Eu0.033SiO5:Fであった。これらの蛍光体は、示した5種の蛍光体のうち最高の発光強度を示しただけでなく、グラフ中、電磁スペクトルのオレンジ色領域に十分入る約585〜600nmの範囲の最長ピーク発光波長のいくつかをも示した。本発明の例示的な蛍光体のうち、最短発光波長を示した蛍光体は(Ba0.075Mg0.025Sr0.9Eu0.033SiO5であり、ピーク波長発光は580nmをわずかに下回るものであった。
【0043】
また、式(Sr0.97Eu0.03ySiO5で示される一連の例示的な蛍光体におけるSr(又はBa、Caなど)とSiとの含量の比を変化させる例が米国特許出願第11/258,679号に示されている。このデータは、Siに対するSrの比が約3.1であるとき発光強度の最大値が見られ、二次的な強度最大値が約2.8で見られることを示す。このグラフの要点は、ケイ素に対するアルカリ土類金属又は他の元素Mの比は約3.0の値で固定されている場合、単相系における化学量論的(M2)3SiO5に厳密に固執する必要がないことを示すことである(同じく、M2は、Sr、Ba、Ca、Euなどの量である)。事実、発光強度を高めるためにこの比を従来の値に対して変化させることに利点がある。
【0044】
米国特許出願第11/258,679号の(M2)3SiO5オレンジ色蛍光体中のアルカリ土類金属の性質(すなわち具体的な種)及び含量を変えることは、発光強度のピーク値及び発光波長の両方に対して影響を及ぼした。その場合、アルカリ土類金属Mは、(MxSr1-x2.91Eu0.09SiO5系中、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)及びバリウム(Ba)からなる群より選択されている。
【0045】
2種の異なるアルカリ土類金属Ca及びMgを含める効果が米国特許出願第11/258,679号に示され、サンプルが0.0、0.5及び1.0に等しいxの値を有する場合の式(CaxSr1-x2.91Eu0.09SiO5で示される一連の蛍光体の発光スペクトルデータが示されている。また、データは、三つのピークすべてがx=0組成の場合のピークと本質的に同じ高さを有するようにx=1及びx=0.5の結果を正規化して示した。この系では、中間的なCa対Sr比を有する組成物(換言すると、実質的に等しい量のCa及びSrを有する組成物)が約605〜610nmで最長のピーク波長発光を示した。これは、同系の他の2種の要素のいずれよりも赤色に近く、黄色から離れている。大部分がカルシウムからなる組成物(x=1)は、黄色の緑色側端に近い色である約510nmで最短のピーク発光波長を示した。すべてストロンチウムを有し、カルシウムを有しない組成物は、分布の中間であり、ピーク波長発光は約590nmであった。
【0046】
再び米国特許出願第11/258,679号を参照すると、組成(MgxSr1-x2.91Eu0.09SiO5中のストロンチウムに代わるマグネシウムの使用が発光強度を下げるとともに、ピーク発光波長をより短い波長にシフトするということが認められた。これは、蛍光体が403nm及び450nmで励起された場合の両方の状況に当てはまった。アルカリ土類金属成分としてすべてストロンチウムからなる組成物(x=0)は、両方の励起波長で最長の波長で発光し、ここでもまた、この発光は約590nmで起こった。ストロンチウムに代えて少量のマグネシウムを用いること(x=0.2)は、発光強度を有意に下げるが、発光波長を実質的に変えることはない。
【0047】
さらなる量のマグネシウムを用いて、まずx=0.30のレベルまで、次にさらにx=0.35のレベルまでストロンチウムに代えると、発光強度は、マグネシウムゼロレベルの場合に実証された強度の完全な回復とはいえないが、x=0.2の組成の発光強度から増大した。ストロンチウムに代わるこの一連のマグネシウムの使用のこの点(レベルx=0.35)で、系中の二番目に高い発光強度が認められた。この濃度から、ストロンチウムに代えてマグネシウムをさらに用いると(x=0.4及びx=0.5の値まで)、強度は、まずは小さな程度に、次いでどちらかといえば実質的に低下した。組成x=0.3、0.35及び0.4、x=0.5のピーク発光波長は約530〜560nmの範囲であった。
【0048】
単相系におけるEu活性化剤の含量の影響
組成物Me3SiO5中の最適な活性化剤濃度は、アルカリ土類金属Me(Meは、Ca、Sr及びBaである)に対して数原子%のユーロピウムであると報告されており(G. BlasseらによるPhilips Research Reports, Vol. 23, No. 1, 1968の論文を参照)、同様な結果が本開示で見いだされ、報告される。式(Sr1-xEux3SiO5によって示される単相シリケート系組成物におけるユーロピウム活性化剤の含量を変化させる効果が米国特許出願第11/258,679号で報告されている。約0.02のEu濃度を有する組成物の場合に最大発光強度が見られ、次に強い組成物がx=0.03である。
【0049】
式[Srx(M1)1-xzSiO4・(1−a)[Sry(M2)1-yuSiO5:Eu2+Dによって一般的に示される本二相シリケート系蛍光体では、各相におけるユーロピウム活性化剤のレベルは指定されないが、一般に、Eu2+が二相組成物中のM1及びM2に取って代わる場合、約0.01〜約0.1の範囲であることができる。
【0050】
ドーパントアニオンDの役割
次に、ドーパントアニオンDを本二相組成物に含める効果を、式[Srx(M1)1-xzSiO4・(1−a)[Sry(M2)1-yuSiO5:Eu2+D中のDの量を特定しない場合で論じる。この実施態様では、組成物の相の少なくとも一つが、F、Cl、Br、S及びNからなる群より選択されるドーパントDを含み、ドーパント原子の少なくともいくつかがホストシリケート結晶の酸素原子格子サイトに位置している。
【0051】
単相系におけるフッ素(F)の役割の例が米国特許出願第11/258,679号に示され、蛍光体(Sr0.97Eu0.033SiO56zの発光強度をフッ素(F)濃度の関数としてグラフで示している。zは0〜約0.1の範囲であった。ここでは、(M2)3SiO5タイプ単相シリケート系中の約0.03〜0.06の範囲のF濃度が発光強度における実質的な増強を提供することが示されている。
【0052】
本二相実施態様では、フッ素のようなハロゲンをNH4Fドーパントの形態で二つの相のいずれかに加えることができる。本発明者らは、NH4Fドーパントの量が非常に小さい(約1%)とき、ピーク発光は短めの波長に位置し、より多くNH4Fが加えられるにつれ、波長がドーパント量とともに増大するということを見いだした。Euドープされた蛍光体のルミネセンスは、4f65d1から4f7への電子項遷移を受ける、化合物中のEu2+の存在によるものである。発光バンドの波長位置は、ホストの材料又は結晶構造に多分に依存して、スペクトルの近UV領域から赤色領域まで変化する。この依存性は、5dレベルの結晶場分裂によるものと解釈されている。結晶場強度が増すにつれ、発光バンドはより長い波長にシフトする。5d−4f遷移のルミネセンスピークエネルギーは、電子間反発を規定する結晶パラメータ、換言するならば、Eu2+カチオンと包囲するアニオンとの間の距離ならびに遠いカチオン及びアニオンまでの平均距離によってもっとも影響を受ける。
【0053】
少量のNH4Fの存在では、フッ素アニオンドーパントは、焼結処理中に主として融剤として機能する。一般に、融剤は、二つの方法のいずれか一方で焼結処理を改善する。第一の方法は、液体焼結機構によって結晶成長を促進する方法であり、第二の方法は、結晶粒子から不純物を吸収、回収し、焼結材料の相純度を改善する方法である。本発明の一つの実施態様では、ホスト蛍光体は(Sr1-xBax3SiO5である。Sr及びBaはいずれも非常に大きなカチオンである。不純物と見なすことができる、より小さなカチオン、たとえばMg及びCaが存在してもよい。したがって、ホスト格子のさらなる精製が、より完全な対称性の結晶格子及びカチオンとアニオンとの間のより大きな距離を生じさせて、その結果、結晶場強度が弱まる。これが、少量のNH4Fドーピングが発光ピークをより短い波長に移動する理由である。この少量のFドーピングによる発光強度の増大は、欠陥がほとんどない高品質結晶のおかげである。
【0054】
NH4Fの量がさらに増すと、F-アニオンのいくつかがO2-アニオンに取って代わり、格子に組み込まれる。電荷の中性を維持するため、カチオン空位が形成される。カチオン位置の空位はカチオンとアニオンとの間の平均距離を減らすため、結晶場強度が増す。したがって、カチオン空位の増加によってNH4F含有量が増すにつれ、発光曲線のピークはより長い波長に移動する。発光波長は、結晶場強度によってのみ決まる基底状態と励起状態との間のエネルギーギャップと密接に関連する。フッ素及び塩素による発光波長増大の結果は、フッ素又は塩素がホスト格子中におそらくは酸素のサイトに取って代わって組み込まれることの強い証拠である。他方、リンイオンの添加は、予想どおり、発光波長を実質的に変化させない。これもまた、リンイオンがカチオンとして作用し、酸素に取って代わらず、したがって、容易には格子に組み込まれず、ホスト材料の結晶場強度を変化させないという証拠である。これは特に、本質的に酸素サイトからなるEu2+イオンを取り囲む結晶場に当てはまる。NH42PO4を加えることによって得られる発光強度の改善は、それが上述のように融剤として働くことを示す。
【0055】
二相シリケート系の光学的性質
例示的な二相シリケート系蛍光体系の光学的性質が図3〜6に示されている。図3は、二相系の励起スペクトルを単相蛍光体との比較で示すものであり、図4は、同じ2種の化合物の発光スペクトルである。図5Aは、三つの異なる励起波長における二相系の発光スペクトルであり、図5Bは、図5Aの二相蛍光体系のCIE座標及びRaの表である。図6は、温度の関数としての発光強度として定義される温度安定性を示す。これらの図それぞれを順に説明する。
【0056】
図3は、式a(SrxM11-xzSiO4・(1−a)(SryM21-yuSiO5:Eu2+Dによって一般的に示され、0.72(Sr1.025Ba0.925Mg0.05)Eu0.06Si1.0340.12]・0.28(Sr3Eu0.6Si1.0250.13)によって具体的に示される例示的な二相シリケート蛍光体の励起スペクトルである。比較のため、単相蛍光体(Sr1.025Ba0.925Mg0.05)Eu0.06Si1.0340.12が示されている。
【0057】
図3で予想外であることは、二相系の発光強度が非常に広い範囲の励起波長で一定である異例さである。二相化合物は、約140nmを超える励起波長範囲で約10%以下しか変化しない発光強度を示す。実施態様によっては、励起波長は、約140nmの励起波長範囲で約5%以下しか変化しない。この場合、励起波長の140nm範囲は、約380〜約520nmである。
【0058】
比較のため、(M1)2SiO4によって一般的に示され、(Sr1.025Ba0.925Mg0.05)Eu0.06Si1.0340.12によって具体的に示される単相系は、この同じ360〜520の波長範囲のルミネセンスにおいて100%近い低下を示す。
【0059】
このような横ばいの曲線を有する利点は、二相蛍光体系が、多様な励起光源によって励起されることができ、それでも、一定量のルミネセンスを発するということである。これは、本二相シリケート系化合物を使用する光学エンジニアに対し、放射線源の選択及びシステム全体の設計において異例な大きさの融通性を与える。
【0060】
当然、他の実施態様では、このような広い範囲の励起波長で一定の発光は不要であるかもしれない。換言するならば、約80nmのより狭い範囲、たとえば380〜460nmの範囲で一定の発光を提供するだけでよいかもしれない。図3には、本二相シリケート系化合物0.72(Sr1.025Ba0.925Mg0.05)Eu0.06Si1.0340.12]・0.28(Sr3Eu0.6Si1.0250.13)がこの80nmの励起範囲で約10%(又は5%)未満の変化を示し続け、一方、(Sr1.025Ba0.925Mg0.05)Eu0.06Si1.0340.12単相蛍光体は約50%の低下を示すことが示されている。
【0061】
単相シリケート系化合物の発光スペクトルと二相シリケート系化合物の発光スペクトルとの比較が図4に示されている。ここでもまた、例示的な(M1)2SiO4蛍光体は(Sr1.025Ba0.925Mg0.05)Eu0.06Si1.0340.12であり、例示的な(M1)2SiO4・(M2)3SiO5二相系は0.72(Sr1.025Ba0.925Mg0.05)Eu0.06Si1.0340.12]・0.28(Sr3Eu0.6Si1.0250.13)である。単相蛍光体及び二相系の励起波長は約440nmであり、曲線の幅を比較しやすくするためのデータを正規化してある。図4は、二相系が単相系よりも広い発光範囲を示すことを示す。
【0062】
二相系が励起波長によって実質的に影響されないということが図5Aで異なるかたちで示されている。この図では、(M1)2SiO4・(M2)3SiO5二相系0.72(Sr1.025Ba0.925Mg0.05)Eu0.06Si1.0340.12]・0.28(Sr3Eu0.6Si1.0250.13)を、447nm、452.5nm及び460nmのピーク励起波長を有する三つの異なる放射線源によって励起した。図5は、500〜660nmの発光プロフィールならびにピーク発光強度及びピーク発光が起こる波長(約575nm)が実質的に同じであったことを示す。
【0063】
発光プロフィールの定量評価が図5Bに示されている。この図では、447.0nm青色チップによって励起されたプロフィールのCIEx及びy座標がそれぞれ0.311及び0.304であり、Ra値が65.6であった。452.5nm青色チップによって励起されたプロフィールのCIEx及びy座標はそれぞれ0.310及び0.308であり、Ra値は68.5であった。460.0nm青色チップによって励起されたプロフィールのCIEx及びy座標はそれぞれ0.308及び0.304であり、Ra値は70.9であった。
【0064】
温度安定性
本二相系の予想外のさらなる有利な属性は、広範囲の温度にわたるその顕著な温度安定性である。図6には、20℃〜180℃の温度範囲で測定した、一般式(M1)2SiO4・(M2)3SiO5によって示される二相シリケート系蛍光体組成物の発光強度を、ある特定の温度における発光強度がその組成物又は蛍光体が室温(20℃)で示す強度に対してプロットされるような方法でグラフにしている。比較のために、単相蛍光体(M1)2SiO4の場合の同様な測定及び分析が示されている。例示的な単相蛍光体は(Sr1.025Ba0.925Mg0.05)Eu0.06Si1.0340.12であり、例示的な二相系は0.72(Sr1.025Ba0.925Mg0.05)Eu0.06Si1.0340.12]・0.28(Sr3Eu0.6Si1.0250.13)であった。
【0065】
結果は、本二相系の場合、組成物を、約100℃を超える温度で、20℃で発される光の強度の約90%以上である強度を有する光を発するように構成することができることを示す。約120℃を超える温度では、20℃で発される光の強度の約90%以上である強度を有する光が発される。同様に、約140℃を超える温度では、20℃で発される光の強度の約80%以上である強度を有する光が発され、約160℃を超える温度では、20℃で発される光の強度の約80%以上である強度を有する光が発され、約180℃を超える温度では、20℃で発される光の強度の約70%以上である強度を有する光が発される。
【0066】
これが、100℃、120℃、140℃、160℃及び180℃の温度で、20℃で発される光の強度のそれぞれ約80%、65%、55%、45%及び30%の強度を有する光を発する単相系と比較される。
【0067】
明らかに、二相系は、単相系よりも優れた温度安定性を提供する。蛍光体(及びそれが一部を構成する照明システム)の温度安定性の市場に対する意義は以下である。一般的な照明及び自動車用途は通常、約100℃を超える作動温度を要する。さらには、LEDチップ表面のジャンクション温度は、素子への入力電流が増すにつれ上昇する。駆動電流を増すことによってより高い輝度を達成することができるが、LEDパッケージの熱管理に入念な配慮が払われなければならない。1Wを超える出力を有するLEDのジャンクション温度は約120℃に指定され、将来の用途は、素子ジャンクションで約200℃に達する作動温度を要すると考えられている。
【0068】
白色光照明の製造
次に、本発明二相黄色蛍光体を使用して製造することができる白色光照明を論じる。このセクションは、進歩性のある二相黄色蛍光体を励起するために使用することができる例示的な青色LEDの記載で始まる。本黄色蛍光体が、可視範囲の青色部分を含む大きな範囲の波長の光を吸収することができ、そのような光によって励起されることができるということが、図3の励起スペクトルによって実証されている。図1の略図にしたがって、進歩性のある黄色蛍光体からの光を青色LEDからの光と組み合わせて白色照明を作ることができる。あるいはまた、進歩性のある黄色蛍光体からの光(非可視性UV励起光源によって励起)を別の蛍光体、たとえば青色、緑色、オレンジ色又は赤色蛍光体からの光と合わせてもよい。このように、白色光の演色性は、他の蛍光体をシステムに含めることによって調節することができる。
【0069】
現在の白色LED製造は、蛍光体に励起を提供するために使用される青色チップ(放射線源)の出力の波長におけるばらつきのせいで、最終製品のCIE出力を正確に制御することができないことを知っておくことが重要である。現在、青色発光半導体チップの形態の励起光源は、約445nm〜470nmの範囲で2.5nmきざみで分類されている。実質すべての既存の黄色蛍光体が、放射線源の波長が変化するとき、発光強度の一定のばらつきがたとえ約2.5nmでしかないとしてもばらつきは存在する。YAG材料は、約460nmの放射波長で励起されたとき発光最大値を有し、励起波長が460nm値のいずれかの側に変化すると、発光効率は低下する。シリケート系単相蛍光体は、図3に示すように、励起波長が450nmから増大すると劇的に低下する発光効率を有する。
【0070】
青色チップ放射線源及び黄色蛍光体を含むシステムから発される白色LED光のCIE値は、青色チップ及び黄色蛍光体の発光比率に依存する。放射線源(青色半導体チップ)に提供される電力及び素子中に存在する黄色蛍光体の量が正確に制御されるとしても、最終的なCIE値は、青色チップによって発される光の波長が変化するにつれて変化する。図4及び5Aに示すデータは、本二相黄色蛍光体を使用する白色LEDのCIE値はチップ波長の447nmから460nmへの変化によって影響されないことを示す。この利点は、本二相黄色蛍光体及び青色半導体励起光源を使用する白色LED製造におけるCIE値の制御の改善にとって劇的に有利である。
【0071】
青色LED放射線源
特定の実施態様では、青色LEDは、約400nm以上かつ約520nm以下の波長範囲で主発光ピークを有する光を発する。この光は二つの目的に役立つ。1)励起放射線を蛍光体システムに提供し、2)青色光を提供し、その光が、蛍光体システムから発される光と合わさって、白色光照明の白色光を構成する。
【0072】
特定の実施態様では、青色LEDは、約420nm以上かつ約500nm以下の光を発する。さらに別の実施態様では、青色LEDは、約430nm以上かつ約480nm以下の光を発する。青色LEDの波長は450nmであることができる。
【0073】
本明細書では、本実施態様の青色発光素子を総称的に「青色LED」と記すが、当業者には、青色発光素子は、青色発光ダイオード、レーザダイオード、面発光レーザダイオード、共振空洞発光ダイオード、無機エレクトロルミネセンス素子及び有機エレクトロルミネセンス素子の少なくともいずれかであればよい(いくつかが同時に作動することも考えられる)ということが理解されよう。青色発光素子が無機素子であるならば、それは、窒化ガリウム系化合物半導体、セレン化亜鉛半導体及び酸化亜鉛半導体からなる群より選択される半導体であることができる。
【0074】
図3は、本黄色蛍光体の励起スペクトルであり、これら新規な蛍光体が約220〜560nmの範囲の放射線を吸収することができ、もっとも重要なことには、励起波長が約400nmから約530nmに変化するとき、565nmで一定の発光強度を有することを示す。
【0075】
進歩性のある二相黄色蛍光体の使用例
本発明の一つの実施態様では、約430nm〜480nmの範囲の発光ピーク波長を有するGaN系青色LEDを約550〜580nm範囲の発光ピーク波長を有する進歩性のある黄色蛍光体と組み合わせて使用して、白色照明素子を構築することができる。当業者には、本黄色蛍光体から発された光を、とりわけ、可視青色放射線源からの光又は青色、緑色もしくは赤色蛍光体からの光と組み合わせることができることが理解されよう。
【0076】
本黄色蛍光体と、上記出願で記載されている青色LEDとの組み合わせから得ることができる白色光の例が図2に示されている。この白色光は、式a[Srx(M1)1-xzSiO4・(1−a)[(Sry(M2)1-yuSiO5:Eu2+Dによって示される黄色蛍光体を約450nmの発光波長を有する青色LEDと組み合わせることによって生成したものである。
【0077】
二相蛍光体処理法
本二相蛍光体組成物は、液相ゾルゲル法及び共沈法の組み合わせによって合成される。これらの方法によると、シリカ及び/又は加水分解ケイ素アルコキシドの溶液をヒドロキシル化/カルボキシル化アルカリ土類金属塩溶液と合わせて、後続の仮焼及び焼結に適した蛍光体前駆体を形成する。このような方法は、ハロゲンドーパントを蛍光体の結晶格子に組み込む場合に特に有利である。
【0078】
蛍光体粉末は、従来、固体状態で起こる反応である、「焼成」と呼ばれるいわゆる乾式法によって合成されてきた。「焼成」という語は、固相反応が通常、所望の原子比で混合又はブレンドされた金属原子前駆体化合物の高温処理(たとえば約1400℃に達する)を要するという理由で使用されている。焼成処理の出発原料は通常、最終組成物中に見られる元素(金属又はメタロイド)の炭酸塩、硝酸塩、酸化物又は水酸化物である。モル量を、最終製品中に望まれる化学量論的関係にしたがって秤量したのち、1)スラリー化、湿式ボールミリング、乾式ボールミリング又は乳鉢処理を含む多数の方法のいずれかによって混合する。次いで、材料の性質及び所望の反応にしたがって焼成雰囲気を変えながら出発原料を分解して最終生成物を得る。
【0079】
焼成処理では、前駆体は一般に反応を通じて固体状態のままであるが、途中から、結晶質物質になる。金属成分は固相では特に移動性ではないため、焼成法は、前駆体化合物を高温に付して原子が正しく拡散させ、十分に混合し、得られる結晶構造中で整然とした原子位置を見いだすことを促進する。
【0080】
焼成の前に「融剤」を反応混合物に含めてもよい。融剤は通常、ハロゲン化物の塩であり、固相反応中の反応体の結晶化及び拡散を促進するために含められる。特定の理論によって拘束されることを望まないが、本発明者らは、固相反応法で拡散及び結晶化を促進するために融剤化合物が使用されると、融剤化合物からのハロゲンが主に最終的に材料の粒界内に達し、結晶格子そのものの中には達しないと考える。したがって、融剤化合物からのハロゲンは、蛍光体の光学的性質には容易には寄与することができず、そのことが有利であるということが本発明者らによって示されている。
【0081】
ゾルゲル法及び共沈技術を含む液相法は、液相中で成分を原子レベルで密に混合させる利点を提供し、ここで、不純物ドーパント原子を結晶格子サイトに代替的に配置させることが可能である。本革新的技術の実施態様は、ゾルゲル法及び共沈法の態様を組み合わせて、これらの技術それぞれが蛍光体バッチの反応体を原子及び/又は分子レベルで混合する能力を利用している。本発明の一つの実施態様では、アルカリ土類金属は、ケイ素とで共沈することができる。すなわち、アルカリ土類金属は、ヒドロキシル化/カルボキシル化反応性モノマーとして官能化することができ、すると、そのような化合物は、少なくとも部分的に加水分解されたケイ素アルコキシドモノマーと反応することができる。本発明のこの実施態様は、蛍光体のケイ素メタロイド成分とアルカリ土類金属成分との間での共重合ということもできる。また、ハロゲンドーパントが液相中で反応体として参画するため、これもまた、反応混合物中に均一に分散し、結晶内のアニオン格子サイトの酸素に取って代わる。
【0082】
ゾルゲル法を使用する蛍光体の合成は当該技術で公知である。「ゾルゲル」とは、液体中に懸濁したコロイド状固形粒子の集合体であるゾルが、液相の残りを取り囲むセルを有する連続的な固体骨格を含む物質であるゲルに転換される反応機構をいう。ゾルゲル法を使用するゲルの形成のための出発原料は、ケイ素のような元素の酸化物、たとえばテトラメトキシシラン(TMOS)と呼ばれる化合物Si(OCH34及びテトラエトキシシラン(TEOS)と呼ばれる化合物Si(OC254を含むことができる。
【0083】
ゾルゲルマトリックスを形成する一つの方法は、一連の加水分解及び/又は縮合反応により、溶液中の多官能性モノマーを比較的大きな分岐度の高い物質に重合させる方法である。ひとたび分子が少なくとも部分的に加水分解すると、2個のシラノール基が縮合反応して(結合して)シロキサン結合(Si−O−Si)を含むオリゴマーを形成することができる。縮合は水分子又はアルコール分子を放出することができる。モノマーは潜在的に四つの反応サイトを有するため、側鎖で起こる反応の結果として架橋が起こり、発生中のゲルの内でより密でより強固な固体ネットワークに寄与することができる。ゲル中のSi−O−Siシロキサン結合の数の増大というに等しい、重合及び/又はゲル化の継続が、架橋の増大を介してより大きな分子量の固体物質を生成する。
【0084】
ゲル化ののち、仮焼及び焼結の前にいくつかの工程を実行することができ、そのような工程は、熟成及び乾燥を含む。熟成とは、オリゴマーと低分子量ポリマーとの間の架橋反応の継続及びポリマーネットワークの全体的強化と定義することができる。ゲルは、液体の大部分を煮沸除去することを含む多様な技術によって乾燥させることができ、この場合、重要なパラメータは蒸発の速度及び大気条件である。上記3種の反応、すなわち加水分解、水縮合及びアルコール縮合の速度は、pH、時間及び温度、反応体濃度、触媒(もしあれば)の性質及び濃度ならびにH2O/Siモル比を含む多数の要因によって影響を受ける。これらの要因を制御することにより、ゾルゲル誘導ネットワークの性質の微細構造を変化させることが可能である。
【0085】
いくつかの異なる金属含有化合物の、それぞれの金属アルコキシド前駆体の溶液からの沈殿が一般に共沈法と呼ばれる。結晶質無機固体を合成する共沈法は、金属塩を水溶液に溶解し、金属のすべてを同時に、1種の金属がその種自体のクラスタに分離しないように沈殿させることを含む。均一に沈殿した共沈金属は、セラミック金属酸化物の前駆体を形成する。遷移金属及びアルカリ土類金属が溶液中でそれらの水酸化物、カルボキシレート(オキサレートを含む)、ニトレート及びシトレートの錯体として混合し、そこでこれらの有機配位子が1種の金属が他のタイプの各金属から離れて沈殿することを阻止するように作用する。混合金属前駆体固体を沈殿させたのち、有機配位子(ニトレート、オキサレート及びヒドロキシレート)を高温、通常は約200℃を超える高温で焼き切る。
【0086】
本実施態様にしたがって、ケイ素含有種及びアルカリ土類金属含有種それぞれがヒドロキシル化及び/又はカルボキシル化されているため、2タイプの種それぞれは、反応性官能基を有する多官能性モノマーの形態を含み、したがって、ケイ素のようなメタロイド及びアルカリ土類金属のような本当の金属は共重合して、ケイ素−酸素−アルカリ土類結合が形成されるゲルネットワークを形成することができる。蛍光体前駆体中のケイ素含有化合物とアルカリ土類含有化合物との間に液相中で確立されるこの均質性の保存こそが、本実施態様の利点の一つを提供する。
【0087】
本実施態様の少なくとも二つの相は、多様な方法で製造することができる。たとえば、出発金属及びメタロイドの所望のモル比を混合して、二つの異なる蛍光体相が早期に液体ゾルゲル/共沈状態で同時に調製されるところの必要な二相(たとえば(M1)2SiO4及び(M2)3SiO5緑色及び/又はオレンジ色蛍光体)ミックスを提供することができる。あるいはまた、二つの相(M1)2SiO4及び(M2)3SiO5は、ミックス中で別々に調製し、別々に仮焼し、粉末化し、いっしょに焼結してもよい。あるいはまた、二つの相(M1)2SiO4及び(M2)3SiO5は、別々に沈殿させ、仮焼し、焼結したのち、混合してもよい。
【0088】
本黄色蛍光体を製造する方法としては、ゾルゲル法、固相反応法、共沈法及び混合法がある。例示的な共沈法は、
a)Sr(NO33、(M1)(NO32及び(M2)(NO32を水に溶解するステップ、
b)Eu23を硝酸に溶解するステップ、
c)SrF2を硝酸に溶解するステップ、
d)ステップa)、b)及びc)で得られた溶液を混合するステップ、
e)ステップd)で得られた溶液に(CH3O)4Siを加え、次いでその混合物に酸を加えて沈殿を起こさせるステップ、
f)ステップe)の混合物のpHを約9に調節するステップ、
g)ステップf)の反応生成物を乾燥させ、次いで反応生成物を仮焼して沈殿物を分解するステップ、及び
h)ステップg)の沈殿物を還元性雰囲気中で焼結するステップ
を含む。
【0089】
上記で開示した発明の例示的な実施態様の多くの改変が当業者には容易に想到されよう。したがって、本発明は、請求の範囲に入るすべての構造及び方法を包含するものと解釈されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1a】可視範囲で発光する放射線源及び放射線源からの励起に応答して発光する二相シリケート系蛍光体を含む白色光照明システムであって、システムから発される光が蛍光体からの光と放射線源からの光との混合物であるシステムを構築するための一般的スキームの略図である。
【図1b】放射線源から出る光がシステムによって発される白色光に実質的に寄与しないような、非可視範囲で発光する放射線源を含む、同じく二相シリケート系蛍光体を含む白色光照明システムの略図である。
【図2A】シリケートホスト格子の結晶性を示すための、式a[Srx(M1)1-xzSiO4・(1−a)[Sry(M2)1-yuSiO5:Eu2+Dで示される例示的な二相シリケート系蛍光体のX線回折図である。
【図2B】二つの異なる合成法が二相系を製造することを示す、各方法によって合成された例示的な二相蛍光体a[Srx(M1)1-xzSiO4・(1−a)[Sry(M2)1-yuSiO5:Eu2+D(別々に焼結したのち機械的に混合及び同時沈殿)のX線回折図である。
【図3】約340nmを超える励起波長範囲で発光が10%以下しか変化せず、実施態様によっては5%以下しか変化しないように二相系を構成することができることを示す、単相系(M1)2SiO4と比較して示す一般式(M1)2SiO4・(M2)3SiO5によって示される例示的な二相系の励起スペクトルである。
【図4】励起を提供する青色チップの発光スペクトル及び本黄色蛍光体a[SrxM11-xzSiO4・(1−a)[SryM21-yuSiO5:Eu2+Dの正規化発光スペクトルを、白色LEDとしてパッケージングした従来技術(SrBaMg)2SiO4と比較して示すグラフである。本二相黄色蛍光体の黄色発光は、電磁スペクトルの緑色領域においてより広い発光を示す。
【図5A】明度及びCIEが励起波長によって実質的に影響されないことを示す、三つの異なる青色チップ励起波長(445nm、447.5nm及び450nm)を有する三つの異なる白色LEDにパッケージングした本黄色蛍光体a(SrxM11-xzSiO4・(1−a)(SryM21-yuSiO5:Eu2+Dの三つの発光スペクトルのプロットである。
【図5B】CIEx及びy座標ならびに図5AからのデータのRa値を定量化する表である。
【図6】室温(20℃)での発光強度に対してプロットした20℃〜180℃の範囲の温度における発光強度を示す例示的な二相シリケート系の温度安定性を、比較のために示す単相蛍光体からのデータとともに示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二つのシリケート系相を有する蛍光体組成物であって、
(M1)2SiO4の結晶構造と実質的に同じである結晶構造を有する第一の相、及び
(M2)3SiO5の結晶構造と実質的に同じである結晶構造を有する第二の相
(式中、
M1及びM2は、それぞれ、Sr、Ba、Mg、Ca及びZnからなる群より選択される)
を含み、
少なくとも一つの相が約0.0001重量%以上のMgを含有し、
少なくとも一つの相が二価ユーロピウム(Eu2+)によって活性化され、
少なくとも一つの相が、F、Cl、Br、S及びNからなる群より選択されるドーパントDを含有し、ドーパント原子の少なくともいくつかがホストシリケート結晶の酸素原子格子サイトに位置するものである組成物。
【請求項2】
少なくとも二つのシリケート系相を有する蛍光体組成物であって、
(M1)2SiO4の結晶構造と実質的に同じである結晶構造を有する第一の相、及び
(M2)3SiO5の結晶構造と実質的に同じである結晶構造を有する第二の相
(式中、
M1及びM2は、それぞれ、Sr、Ba、Mg、Ca及びZnからなる群より選択される)
を含み、
約80nmを超える励起波長範囲で約10%以下しか変動しない強度を有するルミネセンスを発するように構成されている組成物。
【請求項3】
少なくとも二つのシリケート系相を有する蛍光体組成物であって、
(M1)2SiO4の結晶構造と実質的に同じである結晶構造を有する第一の相、及び
(M2)3SiO5の結晶構造と実質的に同じである結晶構造を有する第二の相
(式中、
M1及びM2は、それぞれ、Sr、Ba、Mg、Ca及びZnからなる群より選択される)
を含み、
約80nm以上である励起波長範囲で約5%以下しか変動しない強度を有するルミネセンスを発するように構成されている組成物。
【請求項4】
少なくとも二つのシリケート系相を有する蛍光体組成物であって、
(M1)2SiO4の結晶構造と実質的に同じである結晶構造を有する第一の相、及び
(M2)3SiO5の結晶構造と実質的に同じである結晶構造を有する第二の相
(式中、
M1及びM2は、それぞれ、Sr、Ba、Mg、Ca及びZnからなる群より選択される)
を含み、
約140nm以上である励起波長範囲で約10%以下しか変動しない強度を有するルミネセンスを発するように構成されている組成物。
【請求項5】
少なくとも二つのシリケート系相を有する蛍光体組成物であって、
(M1)2SiO4の結晶構造と実質的に同じである結晶構造を有する第一の相、及び
(M2)3SiO5の結晶構造と実質的に同じである結晶構造を有する第二の相
(式中、
M1及びM2は、それぞれ、Sr、Ba、Mg、Ca及びZnからなる群より選択される)
を含み、
約140nm以上である励起波長範囲で約5%以下しか変動しない強度を有するルミネセンスを発するように構成されている組成物。
【請求項6】
前記励起波長範囲が約380nm〜約520nmである、請求項4記載の組成物。
【請求項7】
前記励起波長範囲が約380nm〜約520nmである、請求項5記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも二つのシリケート系相を有する蛍光体組成物であって、
(M1)2SiO4の結晶構造と実質的に同じである結晶構造を有する第一の相、及び
(M2)3SiO5の結晶構造と実質的に同じである結晶構造を有する第二の相
(式中、
M1及びM2は、それぞれ、Sr、Ba、Mg、Ca及びZnからなる群より選択される)
を含み、
約100℃を超える温度で、20℃で発される光の強度の約90%以上である強度を有する光を発するように構成されている組成物。
【請求項9】
約120℃を超える温度で、20℃で発される光の強度の約90%以上である強度を有する光を発するように構成されている、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
約140℃を超える温度で、20℃で発される光の強度の約80%以上である強度を有する光を発するように構成されている、請求項8記載の組成物。
【請求項11】
約160℃を超える温度で、20℃で発される光の強度の約80%以上である強度を有する光を発するように構成されている、請求項8記載の組成物。
【請求項12】
約180℃を超える温度で、20℃で発される光の強度の約70%以上である強度を有する光を発するように構成されている、請求項8記載の組成物。
【請求項13】
220〜530nmの範囲の波長を有する放射線源によって励起されると、約555nm〜 約580nmの範囲の波長でピーク発光強度を有する二相黄色蛍光体であって、
少なくとも、(M1)2SiO4の結晶構造と実質的に同じである結晶構造を有する第一の相、及び
(M2)3SiO5の結晶構造と実質的に同じである結晶構造を有する第二の相
(式中、M1及びM2は、それぞれ、Sr、Ba、Mg、Ca及びZnからなる群より選択される)を含む蛍光体。
【請求項14】
220〜530nmの範囲の波長を有する放射線源によって励起されると、約555nm〜約580nmの範囲の波長でピーク発光強度を有する二相黄色蛍光体であって、
式a[Srx(M1)1-xzSiO4・(1−a)[Sry(M2)1-yuSiO5:Eu2+
(式中、
M1及びM2は、Ba、Mg、Ca及びZnからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、
0.6≦a≦0.85、0.3≦x≦0.6、0.85≦y≦1、1.5≦z≦2.5、2.6≦u≦3.3であり、
Eu及びDは、それぞれ、約0.001〜約0.5の範囲であり、
Dは、F、Cl、Br、S及びNからなる群より選択される少なくとも一つのアニオンであり、
Dアニオンの少なくともいくつかが蛍光体のシリケート格子中の酸素に取って代わる)
で示される蛍光体。
【請求項15】
M1が、Ba及びMgからなる群より選択され、M2がBaである、請求項14記載の蛍光体。
【請求項16】
M1がBaであり、M2が、Ba及びMgからなる群より選択される、請求項14記載の蛍光体。
【請求項17】
約280nmを超える波長を有する放射線を発するように構成された放射線源と、前記放射線源からの放射線の少なくとも一部を吸収し、約555nm〜約580nmの範囲の波長でピーク強度を有する光を発するように構成された二相黄色蛍光体と、を含む白色LEDであって、
前記蛍光体が、式
a[Srx(M1)1-xzSiO4・(1−a)[Sry(M2)1-yuSiO5:Eu2+
(式中、
M1及びM2は、Ba、Mg、Ca及びZnからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、
0.6≦a≦0.85、0.3≦x≦0.6、0.85≦y≦1、1.5≦z≦2.5、2.6≦u≦3.3であり、
Eu及びDは、それぞれ、約0.001〜約0.5の範囲であり、
Dは、F、Cl、Br、S及びNからなる群より選択される少なくとも一つのアニオンであり、
Dアニオンの少なくともいくつかが蛍光体のシリケート格子中の酸素に取って代わる)
で示されるものである白色LED。
【請求項18】
前記放射線源からの放射線の少なくとも一部を吸収し、約510nmを超える波長でピーク強度を有する光を発するように構成された緑色蛍光体をさらに含む、請求項17記載の白色LED。
【請求項19】
前記放射線源からの放射線の少なくとも一部を吸収し、約420〜約480nmの範囲の波長でピーク強度を有する光を発するように構成された青色蛍光体をさらに含む、請求項17記載の白色LED。
【請求項20】
約280nmを超える波長を有する放射線を発するように構成された放射線源と、前記放射線源からの放射線の少なくとも一部を吸収し、約555nm〜約580nmの範囲の波長でピーク強度を有する光を発するように構成された二相黄色蛍光体と、を含む黄色照明システムであって、
前記蛍光体が、式
a[Srx(M1)1-xzSiO4・(1−a)[Sry(M2)1-yuSiO5:Eu2+
(式中、
M1及びM2は、Ba、Mg、Ca及びZnからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、
0.6≦a≦0.85、0.3≦x≦0.6、0.85≦y≦1、1.5≦z≦2.5、2.6≦u≦3.3であり、
Eu及びDは、それぞれ、約0.001〜約0.5の範囲であり、
Dは、F、Cl、Br、S及びNからなる群より選択される少なくとも一つのアニオンであり、
Dアニオンの少なくともいくつかが蛍光体のシリケート格子中の酸素に取って代わる)
で示されるものである黄色照明システム。
【請求項21】
約280nmを超える波長を有する放射線を発するように構成された放射線源と、前記放射線源からの放射線の少なくとも一部を吸収し、約555nm〜約580nmの範囲の波長でピーク強度を有する光を発するように構成された二相黄色蛍光体と、を含むカラーディスプレーパネルであって、
前記蛍光体が、式
a[Srx(M1)1-xzSiO4・(1−a)[Sry(M2)1-yuSiO5:Eu2+
(式中、
M1及びM2は、Ba、Mg、Ca及びZnからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、
0.6≦a≦0.85、0.3≦x≦0.6、0.85≦y≦1、1.5≦z≦2.5、2.6≦u≦3.3であり、
Eu及びDは、それぞれ、約0.001〜約0.5の範囲であり、
Dは、F、Cl、Br、S及びNからなる群より選択される少なくとも一つのアニオンであり、
Dアニオンの少なくともいくつかが蛍光体のシリケート格子中の酸素に取って代わる)
で示されるものであるカラーディスプレーパネル。
【請求項22】

a[Srx(M1)1-xzSiO4・(1−a)[Sry(M2)1-yuSiO5:Eu2+
(式中、
M1及びM2は、Ba、Mg、Ca及びZnからなる群より選択される二価金属の少なくとも一つであり、
0.6≦a≦0.85、0.3≦x≦0.6、0.85≦y≦1、1.5≦z≦2.5、2.6≦u≦3.3であり、
Eu及びDは、それぞれ、約0.001〜約0.5の範囲であり、
Dは、F、Cl、Br、S及びNからなる群より選択される少なくとも一つのアニオンであり、
Dアニオンの少なくともいくつかが蛍光体のシリケート格子中の酸素に取って代わる)
で示される二相シリケート系黄色蛍光体を製造する方法であって、
ゾルゲル法、固相反応法、共沈法及び混合法からなる群より選択される方法。
【請求項23】
共沈法である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
a)Sr(NO33、(M1)(NO32及び(M2)(NO32を水に溶解するステップ、
b)Eu23を硝酸に溶解するステップ、
c)SrF2を硝酸に溶解するステップ、
d)ステップa)、b)及びc)で得られた溶液を混合するステップ、
e)ステップd)で得られた溶液に(CH3O)4Siを加え、次いでその混合物に酸を加えて沈殿を起こさせるステップ、
f)ステップe)の混合物のpHを約9に調節するステップ、
g)ステップf)の反応生成物を乾燥させ、次いで反応生成物を仮焼して沈殿物を分解するステップ、及び
h)ステップg)の沈殿物を還元性雰囲気中で焼結するステップ
を含む、請求項23記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−186674(P2007−186674A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−289542(P2006−289542)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(506358764)インテマティックス・コーポレーション (40)
【氏名又は名称原語表記】INTEMATIX CORPORATION
【Fターム(参考)】