説明

二軸延伸テープ状物製造方法、テープ状物折返し装置及び二軸延伸テープ状物製造装置

【課題】本発明の課題は、横延伸装置における延伸倍率が大きくなるように変更されるような場合であってもカレンダー成形装置や縦延伸装置等の制御パラメータ等の再設定が行われる必要のない二軸延伸テープ状物の製造方法を提供することにある。
【解決手段】本発明に係る二軸延伸テープ状物製造方法において、第1延伸工程では、未延伸テープ状物UTが未延伸テープ状物の長手方向に延伸されて第1延伸テープ状物1STが作製される。折返し工程では、第1延伸テープ状物の幅方向の片端部又は両端部が1回又は複数回折り返されて所定幅の第1延伸テープ状物(以下「改幅第1延伸テープ状物IW−1ST」という)が作製される。第2延伸工程では、改幅第1延伸テープ状物の折返し部分の一部又は全部が把持されて改幅第1延伸テープ状物が改幅第1延伸テープ状物の幅方向に延伸されて第2延伸テープ状物2STが作製される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸延伸テープ状物製造方法、テープ状物折返し装置及び二軸延伸テープ状物製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従前より「未延伸テープ状物を長手方向に延伸する第1延伸装置(例えばロール延伸装置等)と、第1延伸装置において長手方向に延伸されたテープ状物(以下「第1延伸テープ状物」という)を幅方向に延伸する第2延伸装置(例えばテンター装置等)とから構成される二軸延伸装置(例えば、特許文献1参照)が公に知られている。
【特許文献1】特開2002−67141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、通常、テンター装置等に代表される第2延伸装置では延伸幅に限界がある。このため、オペレータ等が第2延伸装置において第1延伸テープ状物の幅方向の延伸倍率を比較的大きく設定する必要がある場合、オペレータ等はその第1延伸テープ状物の幅を十分小さくするように第1延伸装置の制御パラメータ等を設定しなければならない場合がある。また、かかる場合であってさらに長手方向への延伸倍率が規定されている場合、オペレータ等はカレンダー成形装置等において未延伸テープ状物の幅や厚さも調節しなけばならず、さらにはカレンダー成形の前工程であるビード押出成形装置におけるビード直径の変更も必要とする。したがって、オペレータ等がこのような二軸延伸装置において第2延伸装置における延伸倍率が大きくなるように設定変更すると、オペレータ等は、ビード押出成形装置の金型の変更や、カレンダー成形装置や第1延伸装置等の制御パラメータ等までも再設定もしなければならない場合がある。このような変更及び再設定等の手間は二軸延伸テープ状物の生産性の低下を招く。このため、二軸延伸テープ状物の製造現場ではこのような再設定の手間をなくすことが期待されている。さらに、このように操作パラメータを絞り込める効果により、新規2軸延伸物の開発を迅速におこなえることが期待される。
【0004】
ここで、このような再設定の手間を省く方法として、例えば、予め幅広の第1延伸テープ状物を作製しておき、第2延伸装置における延伸倍率に応じて第1延伸テープ状物を、その延伸倍率に適合した幅となるように切断する方法等が考えられる。しかし、テープ状物が例えばポリテトラフルオロエチレン(以下「PTFE」という)等から形成される場合、時間の経過に従って切断刃にPTFE微粉末が付着して切断不良が生じることがあったため、このような方法は実用化まで至らなかった。
【0005】
本発明の課題は、テンター装置等に代表される第2延伸装置における延伸倍率が大きくなるように変更されるような場合であってもビード押出成形装置の金型の交換、カレンダー成形装置や第1延伸装置等の制御パラメータ等の再設定等が行われる必要のない二軸延伸テープ状物の製造方法を提供することにある。
【0006】
また、本発明の別の課題は、このような二軸延伸テープ状物の製造方法を実現することができる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る二軸延伸テープ状物製造方法は、第1延伸工程、折返し工程及び第2延伸工程を備える。第1延伸工程では、未延伸テープ状物が未延伸テープ状物の長手方向に延伸されて第1延伸テープ状物が作製される。折返し工程では、第1延伸テープ状物の幅方向の片端部又は両端部が1回又は複数回折り返されて所定幅の第1延伸テープ状物(以下「改幅第1延伸テープ状物」という)が作製される。第2延伸工程では、改幅第1延伸テープ状物の折返し部分の一部又は全部が把持されて改幅第1延伸テープ状物が改幅第1延伸テープ状物の幅方向に延伸されて第2延伸テープ状物が作製される。
【0008】
この二軸延伸テープ状物製造方法には折返し工程が組み込まれている。そして、この折返し工程では、第1延伸テープ状物の幅方向の片端部又は両端部が1回又は複数回折り返されて改幅第1延伸テープ状物が作製される。このため、オペレータ等が第1延伸工程において予め幅広の第1延伸テープ状物が作製されるようにカレンダー成形装置や第1延伸装置(未延伸テープ状物を長手方向に延伸する装置)等の制御パラメータ等を設定しておけば、そのオペレータ等は、第2延伸装置(第1幅方向延伸装置)における延伸倍率が大きくなるように変更されるような場合であってもビード押出成形装置の金型の交換、カレンダー成形装置(未延伸テープ状物の成形装置)や第1延伸装置(長手方向延伸装置)等の制御パラメータ等の再設定等を行う必要はない。また、この二軸延伸テープ状物製造方法は、第1延伸テープ状物が未焼成PTFEテープである場合であっても問題なく利用することができる。さらに、未焼成テープの延伸においては、配向が安定した一軸延伸テープの中央部を横延伸することができるので、品質の安定した2軸延伸物が得られる。
【0009】
第2発明に係るテープ状物折返し装置は、テープ状物の幅方向の片端部又は両端部を1回又は複数回折り返すテープ状物折返し装置であって、押さえ具及び第1ガイド部材を備える。なお、このテープ状物折返し装置は、例えば、主に長手方向延伸装置と幅方向延伸装置とから成るテープ状物の二軸延伸装置において長手方向延伸物の幅を調節するために長手方向延伸装置と幅方向延伸装置との間に挿入されるものであるが、使用態様については特に限定されず粘着テープの幅方向片側に非粘着部を形成するために用いられてもよい。また、ここにいう「テープ状物」とは、例えば、ポリテトラフルオロエチレンテープ等である。また、このテープ状物は、未延伸テープ状物や一軸延伸テープ状物等であってもよい。押さえ具は、テープ状物の幅よりも狭い幅を有する。そして、この押さえ具は、テープ状物の一部をテープ状物の片方の面から押さえつける。第1ガイド部材は、押さえ具のテープ状物送り方向下流側に配置されている。そして、この第1ガイド部材は、テープ状物送り方向下流側からテープ状物の通過路に沿って見た場合において押さえ具の外側に向かうに従って下方に向かって傾斜する。
【0010】
このテープ状物折返し装置では、先ず、テープ状物の一部がテープ状物の片面から押さえ具で押さえつけられると、押さえ具からはみ出ているテープ状物の端部が押さえ具側に立ち上がる。そして、このテープ状物折返し装置では、さらに、押さえ具によって立ち上げられたテープ状物の端部がテープ状物送り方向下流側において第1ガイド部材の下側に通されるようにセットされる。この結果、第1ガイド部材近傍では、テープ状物の立ち上がった端部がテープ状物の内側に折り返された状態となる。そして、このようにテープ状物がセットされた状態で、テープ状物がテープ状物送り方向に向かって送られると、テープ状物の端部が連続的に折り返される。なお、折り返されたテープ状物の幅は、押さえ具の幅とほぼ同一となる。このため、このテープ状物折返し装置は、押さえ具の幅が第2延伸工程における延伸倍率に適した幅に設定されれば、第1発明に係る二軸延伸テープ状物製造方法を実現させることができる。
【0011】
なお、このようにテープ状物の幅方向の端部を折り返すテープ状物折返し装置の従前の例としては、テープ状物を送り出す送出ローラと、テープ状物を案内するためのガイドローラと、送出ローラとガイドローラとの間に位置しテープ状物の幅方向の片端部が張り出すように巻き掛けられる折曲ローラと、テープ状物の折曲ローラから張り出した部分(以下「張出部分」という)と接触するように設けられ張出部分をテープ状物の内側に案内するように形成される折返しガイドとを備える装置(例えば、特開2003−118926号公報)が挙げられる。
【0012】
しかし、このようなテープ状物折返し装置では、テープ状物の幅方向の端の形状が一定でない場合にある時点から折曲ローラでテープ状物が折り返されないおそれが生じるという問題や、テープ状物が比較的剛直である場合にテープ状物の一部がローラから張り出していてもテープ状物が下方に垂れずテープ状物の端部を折り返すことができないといった問題がある。これに対し、第2発明に係るテープ状物折返し装置には、このような問題は生じ得ない。この点で、第2発明に係るテープ状物折返し装置は、従前のテープ状物折返し装置よりも優れる。
【0013】
第3発明に係るテープ状物折返し装置は、第2発明に係るテープ状物折返し装置であって、押さえ具は、第1ガイドローラである。この第1ガイドローラは、テープ状物の幅方向と平行な方向に沿った回転軸を有する。また、第1ガイド部材は、第2ガイドローラである。この第2ガイドローラは、テープ状物送り方向下流側からテープ状物の通過路に沿って見た場合において押さえ具の内側から外側に向かうに従って下方に向かって傾斜する方向に沿った回転軸を有する。
【0014】
このテープ状物折返し装置では、押さえ具が第1ガイドローラであり、第1ガイド部材が第2ガイドローラである。このため、このテープ状物折返し装置では、摩擦擦過に弱いテープ状物であってもテープ状物を傷めることなくテープ状物の幅方向の端部を折り返すことができ、また、摩擦係数が高いテープ状物であってもテープ状物を幅方向の端部を折返しながらスムースにテープ状物を送ることができる。
【0015】
第4発明に係るテープ状物折返し装置は、第2発明又は第3発明に係るテープ状物折返し装置であって、第2ガイド部材をさらに備える。第2ガイド部材は、押さえ具の少なくとも幅方向片側に押さえ具と近接して配置されている。そして、この第2ガイド部材は、テープ状物送り方向下流側からテープ状物の通過路に沿って見た場合において押さえ具の側面と平行な方向に沿って延びている。なお、この第2ガイド部材は、テープ状物送り方向下流側からテープ状物の通過路に沿って見た場合において押さえ具の側面と平行な方向のうちテープ状物の通過路に直交する方向に沿って延びるのが好ましい。
【0016】
このテープ状物折返し装置では、テープ状物の一部がテープ状物の片面から押さえ具で押さえつけられ、そのときに押さえ具からはみ出ているテープ状物の端部が押さえ具と第2ガイド部材との間に挿入されるようにテープ状物がセットされる。このため、このテープ状物折返し装置では、テープ状物の端部を確実に立ち上げられた状態とすることができる。
【0017】
第5発明に係るテープ状物折返し装置は、第4発明に係るテープ状物折返し装置であって、第2ガイド部材は、第3ガイドローラである。この第3ガイドローラは、テープ状物の幅方向を含む面と直交する方向に沿った回転軸を有する。
【0018】
このテープ状物折返し装置では、第2ガイド部材が第3ガイドローラである。このため、このテープ状物折返し装置では、摩擦擦過に弱いテープ状物であってもテープ状物を傷めることなくテープ状物の幅方向の端部を折り返すことができ、また、摩擦係数が高いテープ状物であってもテープ状物を幅方向の端部を折返しながらスムースにテープ状物を送ることができる。
【0019】
第6発明に係るテープ状物折返し装置は、第5発明に係るテープ状物折返し装置であって、押さえ具は、第1ガイドローラである。この第1ガイドローラは、テープ状物の幅方向と平行な方向に沿った回転軸を有する。また、第3ガイドローラは、第1ガイドローラの回転軸よりも第1ガイド部材側に配置されており、且つ、回転軸がテープ状物の通過路に直交するように配置されている。
【0020】
このテープ状物折返し装置では、第3ガイドローラが、第1ガイドローラの回転軸よりも第1ガイド部材側に配置されており、且つ、回転軸がテープ状物の通過路に直交するように配置されている。このため、このテープ状物折返し装置では、テープ状物に不要な張力がかかることを防止することができる。
【0021】
第7発明に係るテープ状物折返し装置は、第2発明から第6発明のいずれかに係るテープ状物折返し装置であって、第3ガイド部材をさらに備える。この第3ガイド部材は、押さえ具と第1ガイド部材との間に配置される。そして、この第3ガイド部材は、テープ状物送り方向下流側からテープ状物の通過路に沿って見た場合において一部が押さえ具と重なっており、押さえ具の外側から内側に向かうに従って先細り形状となる。なお、第3ガイド部材の先端は、テープ状物切断防止のため丸みを帯びた形状とされるのが好ましい。
【0022】
このテープ状物折返し装置では押さえ具と第1ガイド部材との間に第3ガイド部材が配置される。このため、このテープ状物折返し装置では、押さえ具によって立ち上げられたテープ状物の端部が第3ガイド部材に接触するように第3ガイド部材が配置されれば、押さえ具によって立ち上げられたテープ状物の端部がさらに内側に折り曲げられる。したがって、このテープ状物折返し装置では、テープ状物の端部を複数回折り返すことができる。
【0023】
なお、このようにテープ状物の端部を複数回折り返すことができれば、テープ状物の中央部にテープ状物の端部が接触することを避けることができる。このため、テープ状物の折返し部分が把持されてテープ状物が幅方向に延伸される場合において完成品部分となるテープ状物中央部に欠損が生じにくくなる。
【0024】
第8発明に係るテープ状物折返装置は、第7発明に係るテープ状物折返し装置であって、第3ガイド部材は、第4ガイドローラである。そして、この第4ガイドローラは、テープ状物の幅方向と平行な方向を含む面と直交する方向に沿った回転軸を有する。また、この第4ガイドローラは、回転軸を含む面で切ったときに断面が半径方向外側に向かうに従って先細りとなる外周先端部を有する。つまり、この第4ガイドローラは、回転軸を含む面で切った断面が菱形や六角形等の形状を有するそろばん珠状のガイドローラである。また、第2ガイド部材が第3ガイドローラである場合、第4ガイドローラの回転軸は第3ガイドローラの回転軸に平行であることが好ましい。
【0025】
このテープ状物折返装置では、第3ガイド部材が第4ガイドローラである。このため、このテープ状物折返装置では、剪断応力の低いテープ状物であってもテープ状物を切断することなくテープ状物の幅方向の端部を複数回折り返すことができる。
【0026】
第9発明に係るテープ状物折返し装置は、第2発明から第8発明のいずれかに係るテープ状物折返し装置であって、張力形成機構をさらに備える。張力形成機構は、テープ状物に、テープ状物の長手方向に沿って一定の張力をかける。
【0027】
このテープ状物折返し装置には張力形成機構が設けられる。このため、このテープ状物折返し装置では、弾性を有し張力により幅が変動するテープ状物(例えば、網目状繊維構造を有する未焼成PTFEテープ等)を常に一定幅になるように折り返すことができる。
【0028】
第10発明に係るテープ状物折返し装置は、第4発明から第9発明のいずれかに係るテープ状物折返し装置であって、ガイド部材は、テープ状物送り方向下流側からテープ状物の通過路に沿って見た場合において押さえ具の幅方向両側にそれぞれ一対ずつ設けられる。そして、このテープ状物折返し装置は、一対の保持部材及び保持部材間距離調節機構をさらに備える。保持部材は、押さえ具の幅方向片側に設けられるガイド部材をまとめて保持する。保持部材間距離調節機構は、保持部材の中間点が常に一定となるように保持しながら保持部材を押さえ具の幅方向と平行な方向に沿って移動させることが可能である。なお、この保持部材間距離調節機構は、リンク機構等を利用することによって製作可能である。
【0029】
このテープ状物折返し装置には一対の保持部材及び保持部材間距離調節機構が設けられる。このため、このテープ状物折返し装置では、押さえ具が幅の異なる押さえ具に変更された場合であっても全てのガイド部材を容易に且つ正確に適正な位置に配置し直すことができる。
【0030】
第11発明に係るテープ状物折返し装置は、第2発明から第10発明のいずれかに係るテープ状物折返し装置であって、押さえ具切換機構をさらに備える。押さえ具切換機構は、異なる幅を有する複数の押さえ具を保持する。そして、この押さえ具切換機構は、テープ状物を押さえつける押さえ部を切り換えることが可能である。
【0031】
このテープ状物折返し装置には押さえ具切換機構が設けられる。このため、このテープ状物折返し装置では、オペレータ等が押さえ具の幅を変更する場合においてオペレータ等が押さえ具を取り外して他の押さえ具を取り付ける手間を省くことができる。
【0032】
第12発明に係る二軸延伸テープ状物製造装置は、第1延伸装置、テープ状物折返し装置及び第2延伸装置を備える。第1延伸装置は、未延伸テープ状物を未延伸テープ状物の長手方向に延伸して第1延伸テープ状物を作製する。テープ状物折返し装置は、第1延伸テープ状物の幅方向の片端部又は両端部を1回又は複数回折り返して所定幅の第1延伸テープ状物(以下「改幅第1延伸テープ状物」という)を作製する装置であって、第2発明から第9発明のいずれかに係るテープ状物折返し装置である。第2延伸装置は、改幅第1延伸テープ状物の折返し部分の一部又は全部を把持して改幅第1延伸テープ状物を改幅第1延伸テープ状物の幅方向に延伸して第2延伸テープ状物を作製する。なお、ここにいう「第2延伸装置」は、例えば、テンター装置等である。
【0033】
この二軸延伸テープ状物製造装置では、先ず、第1延伸装置において未延伸テープ状物が未延伸テープ状物の長手方向に延伸されて第1延伸テープ状物が作製される。そして、テープ状物折返し装置において先ず、第1延伸テープ状物の一部が第1延伸テープ状物の片面から押さえ具で押さえつけられ、そのときに押さえ具からはみ出ている第1延伸テープ状物の幅方向の端部が押さえ具と第1ガイド部材との間に挿入されるように第1延伸テープ状物がセットされる。この結果、押さえ具及び第1ガイド部材近傍では第1延伸テープ状物は幅方向の端部が立ち上げられた状態となる。そして、この二軸延伸テープ状物製造装置では、テープ状物折返し装置においてさらに、押さえ具と第1ガイド部材とによって立ち上げられた第1延伸テープ状物の端部が第1延伸テープ状物送り方向下流側において第2ガイド部材の下側に通されるようにセットされる。この結果、第2ガイド部材近傍では、第1延伸テープ状物の立ち上がった端部が第1延伸テープ状物の内側に折り返された状態となる。そして、このように第1延伸テープ状物がテープ状物折返し装置にセットされた状態で、第1延伸テープ状物がテープ状物送り方向に向かって送られると、第1延伸テープ状物の端部が連続的に折り返される。なお、折り返された第1延伸テープ状物の幅は、押さえ具の幅とほぼ同一となる。そして、このようにして作製された改幅第1延伸テープ状物は第2延伸装置に送られ、第2延伸装置において改幅第1延伸テープ状物の折返し部分の一部又は全部が把持されて改幅第1延伸テープ状物が改幅第1延伸テープ状物の幅方向に延伸されて第2延伸テープ状物が作製される。このため、この二軸延伸テープ状物製造装置は、テープ状物折返し装置の押さえ具の幅が第2延伸工程における延伸倍率に適した幅に設定されれば、第1発明に係る二軸延伸テープ状物製造方法を実現させることができる。
【発明の効果】
【0034】
第1発明に係る二軸延伸テープ状物製造方法を採用するに当たり、オペレータ等が第1延伸工程において予め幅広の第1延伸テープ状物が作製されるようにカレンダー成形装置や第1延伸装置(未延伸テープ状物を長手方向に延伸する装置)等の制御パラメータ等を設定しておけば、そのオペレータ等は、第2延伸装置(第1幅方向延伸装置)における延伸倍率が大きくなるように変更されるような場合であってもビード押出成形装置の金型の交換、カレンダー成形装置(未延伸テープ状物の成形装置)や第1延伸装置(長手方向延伸装置)等の制御パラメータ等の再設定等を行う必要はない。また、この二軸延伸テープ状物製造方法は、第1延伸テープ状物が未焼成PTFEテープである場合であっても問題なく利用することができる。さらに、未焼成テープの延伸においては、配向が安定した一軸延伸テープの中央部を横延伸することができるので、品質の安定した2軸延伸物が得られる。
【0035】
第2発明に係るテープ状物折返し装置は、押さえ具の幅が第2延伸工程における延伸倍率に適した幅に設定されれば、第1発明に係る二軸延伸テープ状物製造方法を実現させることができる。
【0036】
第3発明に係るテープ状物折返し装置では、摩擦擦過に弱いテープ状物であってもテープ状物を傷めることなくテープ状物の幅方向の端部を折り返すことができ、また、摩擦係数が高いテープ状物であってもテープ状物を幅方向の端部を折返しながらスムースにテープ状物を送ることができる。
【0037】
第4発明に係るテープ状物折返し装置では、テープ状物の端部を確実に立ち上げられた状態とすることができる。
【0038】
第5発明に係るテープ状物折返し装置では、摩擦擦過に弱いテープ状物であってもテープ状物を傷めることなくテープ状物の幅方向の端部を折り返すことができ、また、摩擦係数が高いテープ状物であってもテープ状物を幅方向の端部を折返しながらスムースにテープ状物を送ることができる。
【0039】
第6発明に係るテープ状物折返し装置では、テープ状物に不要な張力がかかることを防止することができる。
【0040】
第7発明に係るテープ状物折返し装置では、押さえ具によって立ち上げられたテープ状物の端部が第3ガイド部材に接触するように第3ガイド部材が配置されれば、押さえ具によって立ち上げられたテープ状物の端部がさらに内側に折り曲げられる。したがって、このテープ状物折返し装置では、テープ状物の端部を複数回折り返すことができる。
【0041】
第8発明に係るテープ状物折返装置では、剪断応力の低いテープ状物であってもテープ状物を切断することなくテープ状物の幅方向の端部を複数回折り返すことができる。
【0042】
第9発明に係るテープ状物折返し装置では、弾性を有し張力により幅が変動するテープ状物(例えば、網目状繊維構造を有する未焼成PTFEテープ等)を常に一定幅になるように折り返すことができる。
【0043】
第10発明に係るテープ状物折返し装置では、押さえ具が幅の異なる押さえ具に変更された場合であっても全てのガイド部材を容易に且つ正確に適正な位置に配置し直すことができる。
【0044】
第11発明に係るテープ状物折返し装置では、オペレータ等が押さえ具の幅を変更する場合においてオペレータ等が押さえ具を取り外して他の押さえ具を取り付ける手間を省くことができる。
【0045】
第12発明に係る二軸延伸テープ状物製造装置は、テープ状物折返し装置の押さえ具の幅が第2延伸工程における延伸倍率に適した幅に設定されれば、第1発明に係る二軸延伸テープ状物製造方法を実現させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本発明の一実施形態に係る二軸延伸装置1は、未延伸テープ状物UTを長手方向及び幅方向に延伸処理するための装置であって、図1に示されるように、主に、第1繰出しローラ61a、一軸延伸装置10、第1巻取りローラ61b、第2繰出しローラ62a、ダンサーロール式張力制御機構25、折返し装置20、テンター装置50及び第2巻取りローラ62bから構成される。この二軸延伸装置1では、図1に示されるように、未延伸テープ状物UTが第1繰出しローラ61aから繰り出され、一軸延伸装置10において未延伸テープ状物UTが未延伸テープ状物UTの長手方向に延伸されて一軸延伸テープ状物1STとされ、その一軸延伸テープ状物1STが第1巻取りローラ61bにより巻き取られる。そして、一軸延伸テープ状物1STを巻き取った第1巻取りローラ61bが第2繰出しローラ62aとしてセットされ、一軸延伸テープ状物1STが第2繰出しローラ62aから繰り出され、折返し装置20において一軸延伸テープ状物1STの幅方向の両端部が折り返されて一軸延伸テープ状物1STが改幅一軸延伸テープ状物IW−1STとされ、さらに、テンター装置50において改幅一軸延伸テープ状物IW−1STの折返し部分が把持され、改幅一軸延伸テープ状物IW−1STが改幅一軸延伸テープ状物IW−1STの幅方向に延伸されて二軸延伸テープ状物2STとされ、最後に二軸延伸テープ状物2STが第2巻取りローラ62bにより巻き取られる。なお、このとき、第2繰出しローラ62aから折返し装置20の出口ローラ252までの一軸延伸テープ状物1ST,IW−1STには、ダンサーロール式張力制御機構25により常に一定の張力がかけられている。また、本実施の形態において二軸延伸装置1を構成する主要な装置10,20,50のうち一軸延伸装置10及びテンター装置50は当業者に公知の一軸延伸装置及びテンター装置である。したがって、本実施の形態では、一軸延伸装置10及びテンター装置50の説明を省略し、折返し装置20についてのみ以下に説明を行う。
【0047】
<折返し装置の構成>
本発明に係る折返し装置20は、図2及び図6に示されるように、主に、フレーム29、入口ローラ251、第1ガイドローラ21a,21b、第2ガイドローラ22、第3ガイドローラ23、第4ガイドローラ24、出口ローラ252及びリンク機構27から構成される。なお、図2は、折返し装置の幅方向中間点を通るように長手方向に沿って切断し内部側から見たときの折返し装置の概略図である。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0048】
(1)フレーム
フレーム29は、図2及び図3に示されるように、折返し装置20の幅方向両側に設けられる枠体であって、折返し装置20の主要構成部品を支持している。
【0049】
(2)入口ローラ
入口ローラ251は、一軸延伸装置10から送られてくる一軸延伸テープ状物1STの幅方向に平行な回転軸AX5を介してフレーム29に支持されるローラであって、一軸延伸テープ状物1STを折返し装置20内に案内する。なお、この入口ローラ251の幅は、一軸延伸テープ状物1STの幅よりも広く設計されている。
【0050】
(3)第1ガイドローラ
第1ガイドローラ21a,21bは、入口ローラ251の回転軸AX5と平行な回転軸AX1a,AX1b及び一軸延伸テープ状物1STよりも狭い幅を有する円柱形のローラであって、本実施の形態では図3に示されるように折返し装置20の幅方向ほぼ中央に位置しており、一軸延伸テープ状物1STの幅方向中央部を下方に押さえつける。なお、本実施の形態では、図2に示されるように、この第1ガイドローラ21a,21bが押し下げ深さによって、一軸延伸テープ状物1ST,IW−1STの通過路PL(面状の通過路)が決定される。
【0051】
なお、本実施の形態に係る折返し装置20では、図3に示されるように、幅広の第1ガイドローラ21bと幅狭の第1ガイドローラ21aとが用意されており、これらの第1ガイドローラ21a,21bは、第1ガイドローラ切換機構28により切換可能となっている。なお、第1ガイドローラ21a,21bが切り換えられるとき、スライダ26(図6参照)が折返し装置20の幅方向外側に引き出されて第2ガイドローラ22が第1ガイドローラ21a,21bから離れた状態とされる(ガイドローラ21a,21b,22の接触防止のため)。なお、スライダ26の移動機構については後に詳述する。
【0052】
第1ガイドローラ切換機構28は、図2及び図3に示されるように、主に、折返し装置20の幅方向両側に設けられる一対のローラリンク285及びローラリンク支持板284から構成されている。ローラリンク285は、両第1ガイドローラ21a,21bを、第1ガイドローラ21a,21bの回転軸AX1a,AX1bを介して支持する。ローラリンク支持板284は、ローラリンク285の外側に位置し、ローラリンク285を、ローラリンク285の回転軸AX7を介して支持する。第1ガイドローラ切換機構28は、このように構成されているため、ローラリンク285をローラリンク285の回転軸AX7を中心として回転させることにより幅広の第1ガイドローラ21bと幅狭の第1ガイドローラ21aとを適宜切り換えることができる。
【0053】
(4)第2ガイドローラ
第2ガイドローラ22は、図2及び図3に示されるように、一軸延伸テープ状物1ST,IW−1STの通過路PLに垂直な回転軸AX2(第1ガイドローラ21a,21bの側面SS1,SS2に平行)を有する円柱形のローラであって、第1ガイドローラ21a,21bの回転軸AX1a,AX1bよりも出口ローラ252に近い側の両脇に第1ガイドローラ21a,21bと近接するように配置されている。
【0054】
また、この第2ガイドローラ22は、図3、図6及び図7に示されるように、軸受け222及びガイドシャフト221を介してスライダ26に結合されている。このため、第2ガイドローラ22は、ガイドシャフト221を中心として旋回することができる。したがって、第2ガイドローラ22は、第1ガイドローラ21a,21bの切換によって一軸延伸テープ状物1ST,IW−1STの通過路PLが変更される場合であっても、回転軸AX2が一軸延伸テープ状物1ST,IW−1STの通過路PLに対して垂直になるように調整することができる。
【0055】
(5)第3ガイドローラ
第3ガイドローラ23は、図2及び図5に示されるように、一軸延伸テープ状物送り方向MDの下流側から一軸延伸テープ状物1ST,IW−1STの通過路PLに沿って見た場合において又は一軸延伸テープ状物送り方向MDに沿って見た場合において第1ガイドローラ21a,21bからフレーム29に向かうにつれて下方に向かって傾斜する回転軸AX3を有する円柱形のローラであって、第4ガイドローラ24の一軸延伸テープ状物送り方向MD下流側に配置されている。また、この第3ガイドローラ23は、一軸延伸テープ状物送り方向MDの下流側から一軸延伸テープ状物1ST,IW−1STの通過路PLに沿って見た場合において又は一軸延伸テープ状物送り方向MDに沿って見た場合において第1ガイドローラ21a,21b及び第2ガイドローラ22に重なるように配置されている。
【0056】
また、この第3ガイドローラ23は、図5、図6及び図7に示されるように、回転軸AX3に取り付けられている。この回転軸AX3は、ガイドシャフト231とその中心軸の交差角度を調整可能に取り付けられいる。また、このガイドシャフト231は、軸受232を介してスライダ26に軸を中心として回転可能に取り付けられている。したがって、第3ガイドローラ23は、3自由度に調整可能に組み込まれていることになる。また、、回転軸AX3周りの回転自由度を含めると、第3ガイドローラ23は4自由度を有していることになる。このため、第3ガイドローラは、改幅第一延伸テープ状物1W−1STの折り返し面に対して適正姿勢、適正位置に配置される。
【0057】
(6)第4ガイドローラ
第4ガイドローラ24は、図2及び図4に示されるように、一軸延伸テープ状物1ST,IW−1STの通過路PLに垂直な回転軸AX4を有するそろばん珠状のローラ(図9参照)であって、第2ガイドローラ22及び第3ガイドローラの間(第2ガイドローラ22の一軸延伸テープ状物送り方向MD下流側、第3ガイドローラ23の一軸延伸テープ状物送り方向MD上流側)に配置される。また、この第4ガイドローラ24は、一軸延伸テープ状物送り方向MDの下流側から一軸延伸テープ状物1ST,IW−1STの通過路PLに沿って見た場合において又は一軸延伸テープ状物送り方向MDに沿って見た場合において外周先端部PR(図9参照)が第1ガイドローラ21a,21bに重なるように(外周先端部PRが第1ガイドローラ21a,21bの側面から内部へ突出するように)配置されている。なお、第4ガイドローラ24の外周先端部の上下位置により、一軸延伸テープ状物1STの幅方向の端部の折返し形状を変化する。このため、第4ガイドローラ24の上下位置は、一軸延伸テープ状物1STの折返し形状を加味して決定される必要がある。
【0058】
また、この第4ガイドローラ24は、図4、図6及び図7に示されるように、回転軸AX4の軸方向に位置調整可能に取り付けられている。この回転軸AX4は、ガイドシャフト241とその中心軸の交差角度を調整可能に取り付けられている。また、このガイドシャフト241は、軸受242を介してスライダ26に軸を中心として回転可能に取り付けられている。したがって、第4ガイドローラ24は、4自由度に調整可能に組み込まれていることになる。また、回転軸AX4周りの回転自由度を含めると、第4ガイドローラ24は5自由度を有していることになる。このため、第4ガイドローラは、改幅第一延伸テープ状物1W−1STの折り返し位置に対して適正姿勢、適正位置に配置される。
【0059】
なお、折り幅の上限は、第4ガイドローラ24の図9に示すそろばん玉状断面のV字辺長で決定される。このため、これを超える折り幅については大きなV字辺長を有する第4ガイドローラと交換すればよい。
【0060】
(7)出口ローラ
出口ローラ252は、入口ローラ251の回転軸AX5と平行な回転軸AX6をを介してフレーム29に支持されるローラであって、第1ガイドローラ21a,21b、第2ガイドローラ22、第4ガイドローラ24及び第3ガイドローラ23によって形成された改幅一軸延伸テープ状物IW−1STを第1巻取りローラ側に案内する。なお、この出口ローラ252の幅は、改幅一軸延伸テープ状物IW−1STの幅よりも広く設計されている。
【0061】
(8)リンク機構
リンク機構27は、図4〜図6に示されるように、主に、センターリンク271、サイドリンク272、リンクヒンジ27A,27C,27E及びリンクピン27B,27Dから構成される。センターリンク271は、その中心点においてリンクヒンジ27Cにより下部フレーム291に回転自在に取り付けられている。また、このセンターリンク271の両端部にはサイドリンク272がリンクピン27B,27Dにより回転自在に取り付けられている。なお、2本のサイドリンク272の長さは等しい。そして、サイドリンク272の端部のうちセンターリンク271取り付け側と反対側の端部はスライダ26の中央部分にリンクヒンジ27A,27Eにより回転自在に取り付けられている。このため、片側のスライダ26が折返し装置20の幅方向外側に引き出されると、もう片側のスライダ26が先のスライダ26の引き出し量と同じ量だけ引き出される。つまり、このリンク機構27により、2つのスライダ26の中間点MPからそれぞれのスライダ26の距離は常に同一となる。
【0062】
なお、スライダ26間の幅調節には、図7及び図8に示されるストッパー30及びスペーサ40が用いられる。
【0063】
ストッパー30は、図7及び図8に示されるように、主に、アーム部31、ハンドル部32、付勢固定部33及び握り部34から構成される。アーム部31は、図7及び図8に示されるように、略長方形状の板状部材であり、スライダ26の角部に形成される溝に嵌め込まれることによってスライダ26の位置ずれを防止する役割を担う。ハンドル部32は、アーム部31の板厚方向に沿ってアーム部31から折返し装置20の内側に向かって延びる棒状部分であり、アーム部31の先端部に取り付けられている。なお、このハンドル部32は、スライダ26のロック及びロック解除時にオペレータ等によって握られる。付勢固定部33は、図7に示されるように、主に、棒状部331、バネ332及び軸受333から構成されている。棒状部331は、アーム部31の板厚方向に沿ってアーム部31から折返し装置20の内側に向かって延びる部分であり、アーム部31の略中央部分に取り付けられている。そして、この棒状部331は、図7に示されるように、フレーム29に形成された貫通孔に軸受333を介して挿通されている。バネ332は、折返し装置20の内側において棒状部331の外側に通されており、ストッパー30全体をフレーム29に押しつける役目を担っている。握り部34は、ストッパー30全体を折返し装置20の幅方向外側に引き出すための部分であって、スライダ26間の幅調節時にオペレータ等によって握られる。ストッパー30は、このように構成されているため、バネ332の付勢力よりも大きな力で折返し装置20の幅方向外側に引っ張られると折返し装置20の幅方向外側に引き出され、その力が解放されるとバネ332の付勢力によってフレーム29に押しつけられる。
【0064】
スペーサ40は、図7及び図8に示されるように、略長方形状の板状部材であり、フレーム29とストッパー30との間に配置されている。そして、このスペーサ40には端部に板厚方向に貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔にはストッパー30の棒状部331が挿通される。このため、スペーサ40は、ストッパー30の棒状部331を中心として回転することができる。なお、このスペーサ40は、図8に示されるように、幅広の第1ガイドローラ21bが利用される場合にフレーム29に向かって右方向に倒されスライダ26とフレーム29との間に挿入され、幅狭の第1ガイドローラ21aが利用される場合にフレーム29に向かって左方向に倒されフリーな状態となる。なお、後者の場合、もちろんスライダ26間の距離は前者の場合に比べて短くなる。
【0065】
<折返し装置における一軸延伸テープ状物の両端部の折り返しの様子>
この折返し装置1では、先ず、第1ガイドローラ21a,21bが横に持ち上げられた状態で第2繰出しローラ62aから供給される一軸延伸テープ状物1STが入口ローラ251及び出口ローラ252の上部に接触するように渡され、次いで、第1ガイドローラ21a,21bが規定位置になるようにセットされて一軸延伸テープ状物1STが上面から押さえつけられる。そして、この状態において、第1ガイドローラ21a,21bからはみ出している一軸延伸テープ状物1STの幅方向の端部が第1ガイドローラ21a,21bと第2ガイドローラ22に挟み込まれ立ち上げられる(図3参照)。そして、さらに、一軸延伸テープ1STは、立ち上げられた幅方向の端部が第4ガイドローラ24の外周先端部PRに接することによりさらに内側に折り返され(図4参照)、第3ガイドローラ23において複数折り返された幅方向の端部が下方に押さえつけられ(図5参照)出口ローラ252で図10に示されるような改幅一軸延伸テープ状物IW−1STとなる。なお、この改幅一軸延伸テープ状物IW−1STはテンター装置50のチャック(図示せず)に把持される。そして、この状態で、テンター装置50が稼働されると、第2繰出しローラ62aから供給される一軸延伸テープ状物1STは、連続的に改幅一軸延伸テープ状物IW−1STとなり、テンター装置50に供給される。
【0066】
<本発明に係る二軸延伸装置の特徴>
(1)
本発明の実施の形態に係る二軸延伸装置1では、先ず、一軸延伸装置10において未延伸テープ状物UTが未延伸テープ状物UTの長手方向に延伸されて一軸延伸テープ状物1STが作製される。そして、折返し装置20では、一軸延伸テープ状物1STの一部が一軸延伸テープ状物1STの片面から第1ガイドローラ21a,21bで押さえつけられると共に第1ガイドローラ21a,21bからはみ出ている一軸延伸テープ状物1STの幅方向の端部が第1ガイドローラ21a,21bと第2ガイドローラ22との間に挿入され立ち上げられる。そして、第1ガイドローラ21a,21bと第2ガイドローラ22とによって立ち上げられた一軸延伸テープ状物1STの幅方向の端部が一軸延伸テープ状物送り方向MD下流側において第4ガイドローラ24に接触して複数回折り返され、第3ガイドローラ23において一軸延伸テープ状物1STの幅方向の端部が下方に押さえつけられる。この結果、出口ローラ252では、一軸延伸テープ状物1STは図10に示されるような改幅一軸延伸テープ状物IW−1STとなる。なお、改幅一軸延伸テープ状物IW−1STの幅は、第1ガイドローラ21a,21bの幅とほぼ同一となる。そして、このようにして作製された改幅一軸延伸テープ状物IW−1STはテンター装置50において折返し部分が把持され幅方向に延伸されて二軸延伸テープ状物2STとされる。このため、オペレータ等が一軸延伸装置10により予め幅広の一軸延伸テープ状物1STが作製されるようにカレンダー成形装置(図示せず)や一軸延伸装置10等の制御パラメータ等を設定しておけば、そのオペレータ等は、テンター装置50における延伸倍率が大きくなるように変更されるような場合であってもカレンダー成形装置や一軸延伸装置10等の制御パラメータ等の再設定を行う必要はない。また、この二軸延伸装置1において折返し装置20の出口ローラ252で得られる改幅一軸延伸テープ状物IW−1STは図10に示されるようになるので、テンター装置50において幅方向の端部が製品になる中央部分に擦れることがない。このため、この二軸延伸装置1では、二軸延伸テープ状物2STの歩留まり向上が期待される。
【0067】
(2)
本発明の実施の形態に係る二軸延伸装置1では、折返し装置20において一軸延伸テープ状物1STの幅方向の両端部の折返しに用いられるガイド部材21a,21b,22,23,24が全てローラである。このため、この二軸延伸装置1では、一軸延伸テープ状物1STが摩擦擦過に弱くても一軸延伸テープ状物1STを傷めることなく一軸延伸テープ状物1STの幅方向の端部を折り返すことができ、また、一軸延伸テープ状物1STの摩擦係数が高くても幅方向の端部を折返しながらスムースに一軸延伸テープ状物1STテープ状物を送ることができる。
【0068】
(3)
本発明の実施の形態に係る二軸延伸装置1では、折返し装置20において第2ガイドローラ22が、第1ガイドローラ21a,21bの回転軸AX1a,AX1bよりも第3ガイドローラ23側に配置されており、且つ、回転軸AX2が一軸延伸テープ状物1STの通過路PLに直交するように配置されている。このため、この二軸延伸装置1では、一軸延伸テープ状物1STに不要な張力がかかることを防止することができる。
【0069】
(4)
本発明の実施の形態に係る二軸延伸装置1では、折返し装置20の改幅一軸延伸テープ状物送り方向上流側にダンサーロール式張力制御機構25が設けられている。このため、この二軸延伸装置1では、折返し装置20において一軸延伸テープ状物1STに常に一定の張力が付与されている。このため、この二軸延伸装置1では、折返し装置20において未焼成PTFEテープのように張力により幅が変動する網目状繊維構造を有する一軸延伸テープ状物1STを常に一定幅になるように折り返すことができる。
【0070】
(5)
本発明の実施の形態に係る二軸延伸装置1では、折返し装置20において一対のスライダ26びリンク機構27が設けられている。そして、各スライダ26には、第2ガイドローラ22、第3ガイドローラ23及び第4ガイドローラが1つずつまとめて保持されている。このため、この二軸延伸装置1では、第1ガイドローラ21a,21bが幅の異なる第1ガイドローラ21a,21bに切り換えられた場合であっても第2ガイドローラ22、第3ガイドローラ23及び第4ガイドローラ24を容易に且つ正確に適正な位置に配置し直すことができる。
【0071】
(6)
本発明の実施の形態に係る二軸延伸装置1では、折返し装置20において第1ガイドローラ切換機構28が設けられている。このため、この二軸延伸装置1では、オペレータ等が第1ガイドローラ21a,21bの幅を変更する場合においてオペレータ等が第1ガイドローラを取り外して他の第1ガイドローラを取り付ける手間を省くことができる。
【0072】
<変形例>
(A)
先の実施の形態では特に言及しなかったが、折返し装置20から第4ガイドローラ24が取り除かれてもよい。かかる場合、改幅一軸延伸テープ状物IW−1STの折り返し形状は図11に示されるようになる。
【0073】
(B)
先の実施の形態では特に言及しなかったが、第2ガイドローラ22、第3ガイドローラ23及び第4ガイドローラ24は片側のみ設けられてもよい。かかる場合、一軸延伸テープ状物1STの幅方向の片端部のみが折り返されることになる。なお、かかる場合、一軸延伸テープ状物1STの幅方向の片端ができるだけ第1ガイドローラ21a,21bの幅方向の第2ガイドローラ22、第3ガイドローラ23及び第4ガイドローラ24の非配置側の端に沿うように一軸延伸テープ状物1STが折返し装置20にセットされるのが好ましい。また、かかる場合、テンター装置50では、改幅一軸延伸テープ状物の折返し部分と非折返し部分とがそれぞれ把持されて改幅一軸延伸テープ状物が横延伸処理される。
【0074】
(C)
先の実施の形態では特に言及しなかったが、折返し装置20から第2ガイドローラ22が取り除かれてもよい。
【0075】
(D)
先の実施の形態に係る折返し装置20では第1ガイドローラ21a,21bの幅を変更するために予め2つの異なる幅を有する第1ガイドローラ21a,21bを保持し切り換えることができる第1ガイドローラ切換機構28が設けられたが、回転軸が同一直線上にのるように複数の幅が同一な又は幅の異なる第1ガイドローラが並べられ、隣接する第1ガイドローラのいくつかを選択することにより第1ガイドローラの幅が調節されてもよい。
【0076】
(E)
先の実施の形態に係る折返し装置20では一軸延伸テープ状物1STの幅方向の端部を折り返すためにガイド部材として第1ガイドローラ21a,21b、第2ガイドローラ22、第3ガイドローラ23及び第4ガイドローラ24が採用されたが、一軸延伸テープ状物1STの耐摩擦性が高い場合等にはガイド部材として非回転体が採用されてもよい。
【0077】
(F)
先の実施の形態ではテンター装置50が独立した装置として存在する二軸延伸装置1が採用されたが、これに代えて、図12に示されるように一軸延伸装置10、折返し装置20及びテンター装置50が一体化されている二軸延伸装置101が採用されてもよい。かかる場合、折返し装置20において一軸延伸テープ状物1STに常に一定の張力がかけられるようにするために、先の実施の形態に係るダンサーロール式張力制御機構25が一軸延伸装置10と折返し装置20との間に挿入されてもよい。また、折返し装置20の入口ローラ251及び出口ローラ252の少なくとも出口ローラ252の回転速度を制御して折返し装置20における一軸延伸テープ状物1STに常に一定の張力がかかるようにしてもかまわない。
【0078】
(G)
先の実施の形態に係る二軸延伸装置1では張力制御機構としてダンサーロール式張力制御機構25が採用されたが、張力制御機構としてダンサーロール式張力制御機構以外の張力制御機構が採用されてもかまわない。
【0079】
(H)
先の実施の形態では特に言及しなかったが、ダンサーロール式張力制御機構25が折返し装置20に組み込まれてもかまわない。
【0080】
(I)
先の実施の形態では特に言及しなかったが、第4ガイドローラ24が軸方向に沿って多段に重ねられてもよい。例えば、二段重ねであれば、その外周部の断面形状はW字型となる。このようにすると、折り返し回数を増やすことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明に係るテープ状物折返し装置は、テープ状物をテープ状物の幅方向の端部を折り返すことによりテープ状物の幅を調整することができるという特徴を有し、例えば、一軸延伸テープ状物の幅をテンター装置に代表される横延伸装置における設定延伸倍率に応じた幅に調節したり、粘着テープの幅方向片側に非粘着部を形成したりする用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施形態に係る二軸延伸装置の概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る折返し装置の幅方向中間点を通るように長手方向に沿って切断し内部側から見たときの折返し装置の概略図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る折返し装置の第1ガイドローラ及び第2ガイドローラを一軸延伸テープ状物送り方向に沿って見た図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る折返し装置の第1ガイドローラ及び第4ガイドローラを一軸延伸テープ状物送り方向に沿って見た図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る折返し装置の第1ガイドローラ及び第3ガイドローラを一軸延伸テープ状物送り方向に沿って見た図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る折返し装置の部分平面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る折返し装置のスライダ付近の部分平面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る折返し装置のスライダ付近の部分側面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る折返し装置の第4ガイドローラの縦断面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る折返し装置によって得られる改幅一軸延伸テープ状物の横断面図である。
【図11】第4ガイドローラが取り除かれた折返し装置(変形例(A))によって得られる改幅一軸延伸テープ状物の横断面図である。
【図12】変形例(G)に係る二軸延伸装置の概略図である。
【符号の説明】
【0083】
1,101 二軸延伸装置(二軸延伸テープ状物製造装置)
10 一軸延伸装置(第1延伸装置)
20 折返し装置(テープ状物折返し装置)
21a,21b 第1ガイドローラ(押さえ具)
22 第2ガイドローラ(第2ガイド部材)
23 第3ガイドローラ(第1ガイド部材)
24 第4ガイドローラ(第3ガイド部材)
25 ダンサーロール式張力制御機構(張力形成機構)
26 スライダ(保持部材)
27 リンク機構(保持部材間距離調節機構)
28 第1ガイドローラ切換機構(押さえ具切換機構)
50 テンター装置(第2延伸装置)
1ST 第1延伸テープ状物,テープ状物
2ST 第2延伸テープ状物
AX1a,AX1b 第1ガイドローラの回転軸
AX2 第2ガイドローラの回転軸
AX3 第3ガイドローラの回転軸
AX4 第4ガイドローラの回転軸
IW−1ST 改幅第1延伸テープ状物
MD 一軸延伸テープ状物送り方向(テープ状物送り方向)
MP スライダの中間点(保持部材の中間点)
PL 第1延伸テープ状物の通過路
PR 第4ガイドローラの外周先端部
SS1,SS2 第1ガイドローラの側面(押さえ具の側面)
UT 未延伸テープ状物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未延伸テープ状物(UT)を前記未延伸テープ状物の長手方向に延伸して第1延伸テープ状物(1ST)を作製する第1延伸工程と、
前記第1延伸テープ状物の幅方向の片端部又は両端部を1回又は複数回折り返して所定幅の第1延伸テープ状物(以下「改幅第1延伸テープ状物(IW―1ST)」という)を作製する折返し工程と、
前記改幅第1延伸テープ状物の折返し部分の一部又は全部を把持して前記改幅第1延伸テープ状物を前記改幅第1延伸テープ状物の幅方向に延伸して第2延伸テープ状物(2ST)を作製する第2延伸工程と
を備える二軸延伸テープ状物製造方法。
【請求項2】
テープ状物(1ST)の幅方向の片端部又は両端部を1回又は複数回折り返すテープ状物折返し装置であって、
前記テープ状物の幅よりも狭い幅を有し前記テープ状物の一部をテープ状物の片方の面から押さえつける押さえ具(21)と、
前記押さえ具のテープ状物送り方向(MD)下流側に配置され、前記テープ状物送り方向下流側からテープ状物の通過路(PL)に沿って見た場合において前記押さえ具の外側に向かうに従って下方に向かって傾斜する第1ガイド部材(23)と
を備えるテープ状物折返し装置(20)。
【請求項3】
前記押さえ具は、前記テープ状物の幅方向と平行な方向に沿った回転軸(AX1a,AX1b)を有する第1ガイドローラであり、
前記第1ガイド部材は、前記テープ状物送り方向下流側から前記テープ状物の通過路に沿って見た場合において前記押さえ具の内側から外側に向かうに従って下方に向かって傾斜する方向に沿った回転軸(AX3)を有する第2ガイドローラである
請求項2に記載のテープ状物折返し装置。
【請求項4】
前記押さえ具の少なくとも幅方向片側に前記押さえ具と近接して配置され、前記テープ状物送り方向下流側から前記テープ状物の通過路に沿って見た場合において前記押さえ具の側面(SS)と平行な方向に沿って延びる第2ガイド部材(22)をさらに備える
請求項2又は3に記載のテープ状物折返し装置。
【請求項5】
前記第2ガイド部材は、前記テープ状物の幅方向を含む面と直交する方向に沿った回転軸(AX2)を有する第3ガイドローラである
請求項4に記載のテープ状物折返し装置。
【請求項6】
前記押さえ具は、前記テープ状物の幅方向と平行な方向に沿った回転軸(AX1)を有する第1ガイドローラであり、
前記第3ガイドローラは、前記第1ガイドローラの回転軸よりも第1ガイド部材側に配置されており、且つ、回転軸が前記テープ状物の通過路に直交するように配置されている
請求項5に記載のテープ状物折返し装置。
【請求項7】
前記押さえ具と前記第1ガイド部材との間に配置され、前記テープ状物送り方向下流側から前記テープ状物の通過路に沿って見た場合において一部が前記押さえ具と重なっており前記押さえ具の外側から内側に向かうに従って先細り形状となる第3ガイド部材(24)をさらに備える
請求項2から6のいずれかに記載のテープ状物折返し装置。
【請求項8】
前記第3ガイド部材は、前記テープ状物の幅方向と平行な方向を含む面と直交する方向に沿った回転軸(AX4)を有する第4ガイドローラであり、
前記第4ガイドローラは、回転軸を含む面で切ったときに断面が半径方向外側に向かうに従って先細りとなる外周先端部(PR)を有する
請求項7に記載のテープ状物折返し装置。
【請求項9】
前記テープ状物に、前記テープ状物の長手方向に沿って一定の張力をかける張力形成機構(25)をさらに備える
請求項2から8のいずれかに記載のテープ状物折返し装置。
【請求項10】
前記ガイド部材は、前記テープ状物送り方向下流側から前記テープ状物の通過路に沿って見た場合において前記押さえ具の幅方向両側にそれぞれ一対ずつ設けられ、
前記押さえ具の幅方向片側に設けられる前記ガイド部材をまとめて保持する一対の保持部材(26)と、
前記保持部材の中間点(MP)が常に一定となるように保持しながら前記保持部材を前記押さえ具の幅方向と平行な方向に沿って移動させることが可能である保持部材間距離調節機構(27)と
をさらに備える
請求項4から9のいずれかに記載のテープ状物折返し装置。
【請求項11】
異なる幅を有する複数の押さえ具を保持し、前記テープ状物を押さえつける前記押さえ部を切り換えることが可能である押さえ具切換機構(28)をさらに備える
請求項2から10のいずれかに記載のテープ状物折返し装置。
【請求項12】
未延伸テープ状物(UT)を未延伸テープ状物の長手方向に延伸して第1延伸テープ状物(1ST)を作製する第1延伸装置(10)と、
前記第1延伸テープ状物の幅方向の片端部又は両端部を1回又は複数回折り返して所定幅の第1延伸テープ状物(以下「改幅第1延伸テープ状物(IW−1ST)」という)を作製する請求項2から9のいずれかに記載のテープ状物折返し装置(20)と、
前記改幅第1延伸テープ状物の折返し部分の一部又は全部を把持して前記改幅第1延伸テープ状物を前記改幅第1延伸テープ状物の幅方向に延伸して第2延伸テープ状物(2ST)を作製する第2延伸装置(50)と
を備える二軸延伸テープ状物製造装置(1,101)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−90552(P2009−90552A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263537(P2007−263537)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】