説明

二軸異方向非噛み合い押出機におけるスクリュ軸先端部の軸受け構造

【課題】本発明は、スクリュ軸の先端部とテーパスリーブとカバーをボルトを介して一体化し、大幅な部品点数の削減を行うことを目的とする。
【解決手段】本発明による二軸異方向非噛み合い押出機におけるスクリュ軸先端部の軸受け構造は、スクリュ軸(1)の先端部(1a)の端面に第1ボルト(30)を介して固定されたカバー(6)と、前記カバー(6)の鍔部(33)とテーパスリーブ(4)を固定するための第2ボルト(5)とを備え、前記先端部(1a)とカバー(6)とテーパスリーブ(4)は、互いに第1、第2ボルト(30,5)を介して一体状に固定されている構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸異方向非噛み合い押出機におけるスクリュ軸先端部の軸受け構造に関し、特に、スクリュ軸の先端部とテーパスリーブとカバーをボルトを介して一体化し、大幅な部品点数の削減を行うための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の二軸方向非噛み合い押出機におけるスクリュ軸先端部の軸受け構造としては、社内製作のみで特に特許出願を行っていないため、軸受け構造を示す特許文献は開示していないが、本発明に用いられる二軸異方向非噛み合い押出機としては、例えば、特許文献1及び2を挙げることができる。
【0003】
前述の特許文献1及び2の二軸異方向非噛み合い押出機に採用されているスクリュ軸先端部の軸受け構造としては、例えば、図4で示される構成を挙げることができる。
すなわち、図4において符号1で示されるものは、ハウジング2を有するシリンダ3内に回転自在に内設されたスクリュ軸であり、このスクリュ軸1の先端部1aの外周には、テーパスリーブ4が嵌合され、このテーパスリーブ4の端部にはボルト5を介してカバー6が一体状に固定されている。
【0004】
前記ハウジング2とテーパスリーブ4との間には、ベアリング外輪7、ベアリング8及びベアリング内輪9で構成された軸受体10が設けられ、前記スクリュ軸1、カバー6及びテーパスリーブ4は、前記軸受体10を介して回転自在に設けられている。
【0005】
前記軸受体10のベアリング内輪9は前記テーパスリーブ4の外周に固定されていると共に、前記ベアリング外輪7の外面7aと前記ハウジング2の内面2aとはベアリングスライド面8Aを形成するように前記ベアリング外輪7が軸方向移動可能に構成されている。
【0006】
前記ハウジング2の端板11と前記ベアリング外輪7との間には圧縮したバネ12が介装され、前記ベアリング外輪7に対して常時矢印Aの方向の予圧が付加されている。
前記バネ12は、図4では2個のみしか示されていないが、前記軸受体10のリング形状に沿って、例えば、二軸で68個配設され、輪状のベアリング外輪7に対して全周にわたり均一な予圧が付加されるように構成されている。
【0007】
前述の構成において、押出機を運転しない前記スクリュ軸1の冷間時には、その全長が縮むため、バネ12が最も伸びる状態となり、この状態で、テーパスリーブ4とスクリュ軸1の先端部1aとがスリップを発生することのないようにした最適なばね荷重となるように設定されている。
【0008】
また、押出機の運転時には、図3で示されるように、スクリュ軸1を駆動する減速機20が固定点となり、スクリュ軸1は、先端部1aの前記軸受体10までの距離Aだけ熱膨張により伸びる。
同様に、シリンダ3側は、その先端のサポート部21が固定点となっており、このサポート部21から前記先端部1aの軸受体20までの距離Bだけ熱膨張により伸びる。
【0009】
この結果、前記シリンダ3側の熱膨張量Bよりもスクリュ軸1側の熱膨張量Aの方が大となっていた。
【0010】
【特許文献1】特開2006−240240号公報
【特許文献2】特開平10−272623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の二軸異方向非噛み合い押出機におけるスクリュ軸先端部の軸受け構造は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、シリンダ側よりもスクリュ軸側の熱膨張量Aが大きくなり、この時にバネが最も圧縮する状態であり、そのバネ荷重は最も大となる。
このため、前述の状態では、スクリュ軸の先端部に対してテーパスリーブが、前記バネのバネ力によって強嵌合することになり、テーパスリーブからスクリュ軸を引き抜くことができなくなることもあった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による二軸異方向非噛み合い押出機におけるスクリュ軸先端部の軸受け構造は、ハウジング内に設けられたスクリュ軸の先端部のテーパスリーブを、前記ハウジング側との間にすべり面を介して配設された軸受体を介して前記スクリュ軸と共に回転自在とした二軸異方向非噛み合い押出機におけるスクリュ軸先端部の軸受構造において、前記先端部の端面に第1ボルトを介して固定されたカバーと、前記カバーの鍔部と前記テーパスリーブを固定するための第2ボルトと、を備え、前記先端部とカバーとテーパスリーブは、互いに前記第1、第2ボルトを介して一体状に固定されている構成であり、また、前記カバーに形成され前記第1ボルトを貫通させるボルト穴は、長穴で形成されている構成である。
【発明の効果】
【0013】
本発明による二軸異方向非噛み合い押出機におけるスクリュ軸先端部の軸受け構造は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、ハウジング内に設けられたスクリュ軸の先端部のテーパスリーブを、前記ハウジング側との間にすべり面を介して配設された軸受体を介して前記スクリュ軸と共に回転自在とした二軸異方向非噛み合い押出機におけるスクリュ軸先端部の軸受構造において、前記先端部の端面に第1ボルトを介して固定されたカバーと、前記カバーの鍔部と前記テーパスリーブを固定するための第2ボルトと、を備え、前記先端部とカバーとテーパスリーブは、互いに前記第1、第2ボルトを介して一体状に固定されているため、スクリュ軸とテーパスリーブが一体で、加熱時及び常温時でのスクリュ軸の温度変化が熱膨張量が変化しても追従でき、従来のバネが不要となる。また、部品点数の大幅削減となる。
また、スクリュ軸とカバーとテーパスリーブの分解等もボルトの除去のみで簡単に行うことができる。
また、前記カバーに形成され前記第1ボルトを貫通させるボルト穴は、長穴で形成されているため、各第1ボルトにはスクリュ軸側に押し付け力が常に一定となるように適正な締め付けトルク値で管理することができ、長穴により、スクリュ軸が円周方向にどの位置になってもカバーを取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、スクリュ軸の先端部とテーパスリーブとカバーをボルトを介して一体化し、バネを用いることなく、常温及び加熱時のスクリュ軸の動作を円滑化し、部品点数の削減を可能とするようにした二軸異方向非噛み合い押出機におけるスクリュ軸先端部の軸受け構造を提供することを目的とする。
【実施例】
【0015】
以下、図面と共に本発明による二軸異方向非噛み合い押出機におけるスクリュ軸先端部の軸受け構造の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には同一符号を付して説明する。
図1において符号1で示されるものは、ハウジング2を有するシリンダ3内に回転自在に内設されたスクリュ軸であり、このスクリュ軸1の先端部1aの外周には、テーパスリーブ4が嵌合され、この先端部1aの端面には、座金31を介して第1ボルト30が長穴32を貫通して先端部1aに螺入することによりカバー6が固定され、このカバー6に形成された鍔部33には前記先端部1aに嵌合されたテーパスリーブ4が当接し、前記鍔部33に設けられた第2ボルト5が前記テーパスリーブ4に螺入している。
従って、前述の先端部1a、カバー6及びテーパスリーブ4は、前記第1、第2ボルト30、5により、互いに一体状に結合されている。
【0016】
前記ハウジング2とテーパスリーブ4との間には、ベアリング外輪7、ベアリング8及びベアリング内輪9で構成された軸受体10が設けられ、前記スクリュ軸1、カバー6及びテーパスリーブ4は、前記軸受体10を介して回転自在に設けられている。
【0017】
前記軸受体10のベアリング内輪9は前記テーパスリーブ4の外周に固定されていると共に、前記ベアリング外輪7の外面7aと前記ハウジング2の内面2aとは、ベアリングスライド面としてのすべり面8Aを形成するように前記ベアリング外輪7が軸方向移動可能に構成されている。
【0018】
前述の構成においては、図4の従来構成と異なり、前述のバネ12が無くなり、スクリュ軸1の先端部1aとカバー6とテーパスリーブ4が互いに固定されているため、押出機運転時の加熱時及び押出機停止時の常温時でのスクリュ軸1の温度変化で熱膨張量が図3で示されるように変化した場合でも、前記軸受体10のすべり面8Aを介して前記スクリュ軸1の軸方向における軸受け位置変化に追従することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による二軸異方向非噛み合い押出機におけるスクリュ軸先端部の軸受け構造を示す断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明及び従来の軸受け構造のスクリュ軸とシリンダの熱膨張量の説明図である。
【図4】従来の軸受け構造の断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 スクリュ軸
2 ハウジング
3 シリンダ
4 テーパスリーブ
5 第2ボルト
6 カバー
7 ベアリング外輪
8 ベアリング
8A すべり面
9 ベアリング内輪
10 軸受体
20 減速機
30 第1ボルト
31 座金
32 長穴
33 鍔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(2)内に設けられたスクリュ軸(1)の先端部(1a)のテーパスリーブ(4)を、前記ハウジング(2)側との間にすべり面(8A)を介して配設された軸受体(10)を介して前記スクリュ軸(1)と共に回転自在とした二軸異方向非噛み合い押出機におけるスクリュ軸先端部の軸受構造において、
前記先端部(1a)の端面に第1ボルト(30)を介して固定されたカバー(6)と、前記カバー(6)の鍔部(33)と前記テーパスリーブ(4)を固定するための第2ボルト(5)と、を備え、
前記先端部(1a)とカバー(6)とテーパスリーブ(4)は、互いに前記第1、第2ボルト(30,5)を介して一体状に固定されていることを特徴とする二軸異方向非噛み合い押出機におけるスクリュ軸先端部の軸受け構造。
【請求項2】
前記カバー(6)に形成され前記第1ボルト(30)を貫通させるボルト穴は、長穴(32)で形成されていることを特徴とする請求項1記載の二軸異方向非噛み合い押出機におけるスクリュ軸先端部の軸受け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−17957(P2010−17957A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181342(P2008−181342)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】