説明

二輪電動車

【課題】二輪電動車が急発進することを防ぐことを課題とする。
【解決手段】車輪を直接駆動する電気モータと、該電気モータに電力を供給するバッテリーと、操作量に応じて前記電気モータに供給する電力量を増減させるアクセル装置と、前記車輪を制動するブレーキ手段とを備え、ブレーキ手段が操作されている間、バッテリーから電気モータへの電力供給を停止するように構成されている二輪電動車において、前記バッテリーから電気モータに供給する電力量を制御する電力量制御手段を備え、該電力量制御手段は、停車中にブレーキ手段に対する操作が解除されている状態でアクセル装置が操作されると、バッテリーから電気モータに供給する電力量を所定の時間をかけてアクセル装置の操作量に応じた電力量に到達させるように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気モータで車輪を駆動させて走行する二輪電動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車輪を駆動させる電気モータと、該電気モータに電力を供給するバッテリーとを備えた二輪電動車が提供されている。
【0003】
この種の二輪電動車は、運転者が操作するアクセル装置を備えている。該アクセル装置は、電気モータの駆動状態を変更させるもので、運転者による操作量に応じてバッテリーから電気モータに供給する電力量を増減させるように構成されている。すなわち、前記二輪電動車は、アクセル装置の操作量が大きくなるほどバッテリーから電気モータに供給する電力量が増加し(増速し)、アクセル装置の操作量が小さくなるほどバッテリーから電気モータに供給する電力量が減少する(減速する)ように構成されている。これにより、前記二輪電動車は、運転者がアクセル装置に対する操作量を変更することで加減速できるように構成されている。
【0004】
そして、この種の二輪電動車は、車輪を制動させるブレーキ手段を備えており、運転者によって該ブレーキ手段が操作されている間、バッテリーから電気モータへの電力供給を停止するように構成されている。すなわち、この種の二輪電動車は、ブレーキ手段を操作しているときに電気モータが駆動していると、該電気モータの駆動力の影響で車輪の回転運動が抑制されにくくなる虞があるため、電気モータの駆動力が減速の妨げとならないようにすべく、ブレーキ手段が操作されている間、バッテリーから電気モータへの電力供給を停止させて電気モータが車輪と同調するように構成されている。そして、前記二輪電動車は、停車中及び走行中に、ブレーキ手段に対する操作が解除された後にアクセル装置が操作されると、再びバッテリーから電気モータへ電力供給されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−204008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種の二輪電動車は、自重に加えて、乗車する運転者の体重等が電気モータに対する負荷として働くため、電気モータのトルクが負荷を上回るトルクに達しなければ走行を開始することができないとして、走行を開始する際に、電気モータが大きなトルクを発生させるようになっている。そのため、例えば、走行を開始する際に、運転者が誤ってアクセル装置を大きく操作すると、電気モータが膨大なトルクを発生させて急発進する虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、かかる実情に鑑み、急発進することを防ぐことのできる二輪電動車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る二輪電動車は、車輪を直接駆動する電気モータと、該電気モータに電力を供給するバッテリーと、操作量に応じて前記電気モータに供給する電力量を増減させるアクセル装置と、前記車輪を制動するブレーキ手段とを備え、ブレーキ手段が操作されている間、バッテリーから電気モータへの電力供給を停止するように構成されている二輪電動車において、前記バッテリーから電気モータに供給する電力量を制御する電力量制御手段を備え、該電力量制御手段は、停車中にブレーキ手段に対する操作が解除されている状態でアクセル装置が操作されると、バッテリーから電気モータに供給する電力量を所定の時間をかけてアクセル装置の操作量に応じた電力量に到達させるように構成されていることを特徴とする。
【0009】
上記構成の二輪電動車によれば、走行を開始する際に、運転者によってアクセル装置が大きく操作されても、所定の時間を経過したときにバッテリーから電気モータに供給する電力量がアクセル装置の操作量に応じた電力量に到達することになる。これにより、前記二輪電動車は、走行を開始する際に、運転者がアクセル装置を大きく操作しても、電気モータが瞬時に膨大なトルクを発生させることを防止することができる。
【0010】
また、本発明の一態様として、前記電力量制御手段は、走行中にアクセル装置を操作した状態のままでブレーキ手段に対する操作が解除されると、バッテリーから電気モータに供給する電力量を前記所定時間よりも短い時間でアクセル装置の操作量に応じた電力量に到達させるように構成されていてもよい。
【0011】
このようにすれば、前記二輪電動車は、走行中のブレーキ手段に対する操作が解除されたときに、操作した状態となっているアクセル装置の操作量に応じた電力量が瞬時にバッテリーから電気モータに供給されて走行がスムーズでなくなることを防止することができる。また、急加速によるモータ軸に対する衝撃を和らげることができ、モータ軸の耐久性を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の他態様として、前記電力量制御手段は、ブレーキ手段を操作して停車している状態でかつアクセルが閉じられている状態(アクセル装置を操作していない状態)からアクセル装置が操作されると、バッテリーから電気モータにアクセル装置の操作量に応じた電力量を所定時間だけ供給するように構成されていても良い。この所定時間は、好ましくは0.5秒から1.5秒の間、より好ましくは、0.8から1.2秒の間が良い。また、アクセル装置の操作量に応じた電力量の供給は、所定の時間をかけて操作量に応じた電力量に到達させるようにするのが好ましく、発進時の場合の所定時間よりも短い時間とするのが好ましい。
【0013】
一般的に、二輪電動車は、坂道で停車するにあたって、運転者がブレーキ手段を操作することで停車状態を維持する。そして、前記二輪電動車は、坂道で停車している状態から坂道を上るべく走行を開始する場合、ブレーキ手段を操作しながらアクセル装置を操作(いわゆる坂道発進)することになる。
【0014】
そのため、ブレーキ手段が操作されている間バッテリーから電気モータへの電力供給を停止するように構成されている二輪電動車の場合、ブレーキ操作をしている限りモータが回転することがなく、発進することができない。また、ブレーキ手段に対する操作を解除した後、アクセル装置を操作すると、坂道を登るに要するトルクまで電気モータのトルクが上昇するまでに時間を要するため、この間に二輪電動車が走行したい方向とは逆の方向に移動することになる。これに対し、上記構成の二輪電動車によれば、ブレーキ手段を操作していても所定時間だけバッテリーから電気モータにアクセル装置の操作量に応じた電力量が供給されるため、逆方向にずり落ちることなく坂道発進が可能となる。さらに、所定の時間だけしか電力が供給されないため、不用意にアクセル装置を操作してもブレーキ手段を操作している限り動き出すことはない。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明の二輪電動車によれば、急発進することを防ぐことができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る二輪電動車の斜視図を示す。
【図2】同実施形態に係る二輪電動車の側面図を示す。
【図3】同実施形態に係る二輪電動車の正面図を示す。
【図4】同実施形態に係る二輪電動車の電力系統図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る二輪電動車について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0018】
本実施形態に係る二輪電動車は、図1及び図2に示す如く、前輪2及び後輪3を一輪ずつ備えるとともに、後輪3の両側に上下動可能な一対の補助輪4,4を備えている。そして、該二輪電動車1は、前輪2及び後輪3のうち、少なくとも前輪2が電気モータM1,M2で駆動するように構成され、ハンドル(後述するハンドルバー7)の操作で前輪2を操舵するように構成され、本実施形態では、前輪2及び後輪3がインホイールモータM1,M2で駆動するように構成されている。
【0019】
また、本実施形態に係る二輪電動車1は、操作量に応じてインホイールモータM1,M2に供給する電力量を増減させるアクセル装置12と、前記車輪(前輪2及び後輪3)を制動するブレーキ手段13とを備えている。そして、本実施形態に係る二輪電動車1は、図4に示す如く、走行速度を検知する速度検知手段14を備えている。さらに、本実施形態に係る二輪電動車は、該アクセル装置12及びブレーキ手段13の操作されている状態や、速度検知手段14が検知した走行速度に応じてインホイールモータM1、M2の駆動状態を設定する駆動制御手段15を備えている。
【0020】
具体的に説明すると、本実施形態に係る二輪電動車1は、図1及び図2に示す如く、運転者が着座するシート部50の取り付けられた車体フレーム5と、該車体フレーム5の前部に対して縦方向に延びる軸線回りで回転自在に取り付けられたフロントフォーク6と、該フロントフォーク6の上端側に連結されたハンドルバー7と、前記フロントフォーク6の下端部に対して前記縦方向と直交する方向(以下、横方向)に延びる軸線回りで回転可能に取り付けられた前輪2と、前記車体フレーム5の後部に対して横方向に延びる軸線を支点にして上下方向に揺動可能に取り付けられたスイングアーム8と、車体フレーム5及びスイングアーム8に懸架されたリアサスペンション9と、前記スイングアーム8に対して横方向に延びる軸線回りで回転可能に取り付けられた後輪3とを備えている。
【0021】
そして、前記二輪電動車1は、上述の如く、一対の補助輪4,4を備えており、各補助輪4,4はスイングアーム8に対して上下方向に揺動可能に取り付けられた補助アーム80に支持されている。該補助アーム80は、スイングアーム8の回転軸と略平行な回転軸を中心にして回転可能に構成されている。そして、補助輪4,4は、前記補助アーム80に対して横方向に延びる軸回りで回転自在に構成されている。
【0022】
さらに、前記二輪電動車1は、図1及び図3に示すように補助アーム80とスイングアーム8との間に独立懸架装置(以下、補助サスペンションという)81が介装され、一対の補助輪4,4のそれぞれが補助サスペンション81の付勢力で下方に押し下げられて路面に接触し、また、路面の起伏に応じて上下動するようになっている。
【0023】
これにより、前記二輪電動車1は、旋回等を円滑に行えるようにした上で転倒防止が図られている。なお、本実施形態に係る二輪電動車1は、一対の補助輪4,4が後輪3の両側に配置されることで、後輪3が三つあるように見えるが(図1参照)、ここで言う後輪3は駆動を受ける車輪のことを意味しており、回転自在な補助輪4,4は後輪3には含まれない。
【0024】
そして、本実施形態に係る二輪電動車1は、図1、図2、及び図4に示す如く、前記車輪(前輪2、及び後輪3)を駆動させる電気モータM1,M2と、該電気モータM1,M2に電力を供給するバッテリー10とを備えている。本実施形態に係る二輪電動車1は、該バッテリー10が後輪3の上方に配置されバッテリーボックス11に収容されている(図1及び図2参照)。
【0025】
前記電気モータM1,M2は、前輪2及び後輪3の回転中心に組み込まれたインホイールモータによって構成されている。該インホイールモータM1,M2は、バッテリー(直流電源)10からの電力供給で制御駆動できれば、直流モータ又は交流モータの何れであってもよく、出力を考慮すれば、モータ効率が高効率で出力が高出力な永久磁石型同期モータを採用することが好ましい。
【0026】
前記アクセル装置12は、ハンドルバー7に取り付けられている。そして、前記アクセル装置12は、ハンドルバー7の一端部に装着されたスロットル120を備えており、該スロットル120をハンドルバー7の一端部の延びる方向の軸線回りで回転可能に構成されている。本実施形態に係る二輪電動車1は、スロットル120を回転させると、スロットル120の回転量(操作量)に応じて駆動制御手段15(後述する電力量制御手段150)がバッテリー10からインホイールモータM1、M2に供給する電力量を増減させるように構成されている。
【0027】
前記ブレーキ手段13は、ハンドルバー7に取付けられたブレーキレバー130a,130bと、該ブレーキレバー130a,130bを引き操作することで前輪2及び後輪3を制動するように構成された制動機構131a,131bとを備えている。
【0028】
本実施形態に係る制動機構131a,131bは、前記インホイールモータM1,M2内に組み込まれたドラムブレーキで構成されている。本実施形態では、制動機構131aがインホイールモータM1に組み込まれ、制動機構131bがインホイールモータM2に組み込まれている。本実施形態に係るブレーキ手段13は、ブレーキレバー130aを操作すると制動機構131aを操作することができ、ブレーキレバー130bを操作すると制動機構131bを操作することができるように構成されている。
【0029】
本実施形態に係るブレーキ手段13は、図4に示す如く、前輪2及び後輪3の制動を行なっていることを駆動制御手段15に通知するための制動通知手段132を備えている。本実施形態に係る制御通知手段132は、前記ブレーキレバー130a,130bの少なくとも何れか一方が引き操作されている間、駆動制御手段15に信号を送信し続けるように構成されている。
【0030】
さらに、本実施形態に係る二輪電動車1は、パーキングブレーキレバー(図示しない)を備えており、該パーキングブレーキレバーに対する操作を行うことで前輪2又は後輪3(本実施形態においては後輪3)のブレーキ手段13が機能し、駐車時に前輪2又は後輪3(本実施形態においては後輪3)の回転を規制できるようになっている。
【0031】
前記速度検知手段14は、走行している間、前記駆動制御手段15に信号を送信し続けるように構成されている。
【0032】
前記駆動制御手段15は、フロントフォーク6(前輪2)の上方に配置された駆動制御ボックス16に収容されている(図1,図2参照)。また、前記駆動制御手段15は、バッテリー10からインホイールモータM1,M2に供給する電力量を制御する電力量制御手段150を備えている。
【0033】
前記電力量制御手段150は、アクセル装置12及びブレーキ手段13の操作状態に加えて、走行状態(走行している状態又は停車している状態)に応じてバッテリー10からインホイールモータM1,M2に供給する電力量を制御するように構成されている。
【0034】
具体的に説明すると、前記電力量制御手段150は、アクセル装置12が操作されると、バッテリー10からインホイールモータM1,M2に供給する電力量をアクセル装置12の操作量(回転量)に応じた電力量にするように構成されている。これにより、前記電力量制御手段150は、インホイールモータM1,M2をアクセル装置12の操作量(スロットル120の回転量)に応じたトルクで駆動させるように構成されている。
【0035】
また、前記電力量制御手段150は、制動通知手段132から送信された信号を受信すると、バッテリー10からインホイールモータM1,M2への電力供給を停止させるように構成されている。これにより、前記二輪電動車1は、ブレーキレバー130a,130bの少なくとも何れか一方が引き操作される間、電力量制御手段150がインホイールモータM1,M2を駆動させない状態にするように構成されている。
【0036】
本実施形態に係る電力量制御手段150は、速度検出手段14から送信される信号を基にして、走行している状態と停車している状態とを判断するように構成されている。具体的に説明すると、前記電力量制御手段150は、速度検知手段14から所定時間(本実施形態では、0.5s)以内に信号が送信されると走行中であると判断するように構成されている。また、前記電力量制御手段150は、速度検知手段14から所定時間(本実施形態では、0.5s)以上信号が送信されていなければ停車中であると判断するように構成されている。
【0037】
そして、本実施形態に係る電力量制御手段150は、停車中にブレーキ手段13に対する操作(ブレーキレバー130a及びブレーキレバー130bに対する引き操作)が解除されている状態でアクセル装置12が操作されると、バッテリー10からインホイールモータM1,M2に供給する電力量を所定の時間をかけてアクセル装置12の操作量に応じた電力量に到達させるように構成されている。すなわち、前記電力量制御手段150は、停車中であると判断しているときにブレーキ手段13(ブレーキレバー130a及びブレーキレバー130b)に対する操作が解除されている状態でアクセル装置12が操作されると、バッテリー10からインホイールモータM1,M2に供給する電力量を所定の時間をかけてアクセル装置12の操作量に応じた電力量に到達させるように構成されている。前記所定の時間は、1sから2sまでの間で設定されることが好ましく、より好ましくは1.3〜1.7秒が良い。本実施形態においては、1.5sで設定されている。
【0038】
さらに、前記電力量制御手段150は、アクセル装置を操作しつつ走行しているときにブレーキ手段13(ブレーキレバー130a及びブレーキレバー130b)に対する操作が解除されると、バッテリー10からインホイールモータM1,M2に供給する電力量を前記所定時間よりも短い時間でアクセル装置12の操作量に応じた電力量に到達させるように構成されている。アクセル装置を操作しつつ走行しているときにブレーキ手段13に対する操作が解除された場合、バッテリー10からインホイールモータM1,M2に供給する電力量をアクセル装置12の操作量に応じた電力量に到達させるまでの時間は、0.3sから0.6sまでの間で設定されることが好ましく、本実施形態では0.4sで設定されている。
【0039】
また、前記電力量制御手段150は、アクセル装置が操作されておらず、ブレーキ手段13を操作して(ブレーキレバー130a又はブレーキレバー130bの少なくとも何れか一方を引き操作して)停車している状態でアクセル装置12が操作されると、所定時間の間バッテリー10からインホイールモータM1,M2にアクセル装置12の操作量に応じた電力量を供給するように構成されている。この所定時間は、好ましくは0.5秒から1.5秒の間、より好ましくは、0.8から1.2秒の間が良く、所定時間を越えると電力供給は停止する。本実施形態では、1sに設定されており、1秒経過時にブレーキが操作状態であればモータは停止する。
さらに、アクセル装置の操作量に応じた電力量の供給は、所定の時間をかけて操作量に応じた電力量に到達させるようにするのが好ましく、発進時の場合の所定時間よりも短い時間とするのが好ましく、より好ましくは、0.3〜0.6秒が良く、本実施形態では0.4秒に設定されている。
【0040】
本実施形態に係る二輪電動車1についての説明は、以上の通りであり、次に、該二輪電動車1(電力量制御手段150)の動作について説明する。
【0041】
本実施形態に係る二輪電動車1は、例えば、平坦な道で停車している状態(速度検知手段14から所定時間(本実施形態では、0.5s)以上信号が送信されていない状態)で走行を開始する場合、上述の如く、ブレーキ手段13に対する操作(ブレーキレバー130a及びブレーキレバー130bに対する引き操作)が解除されている状態でアクセル装置12が操作される。
【0042】
前記電力量制御手段150は、バッテリー10からインホイールモータM1,M2に供給する電力量をアクセル装置12が操作されてから所定時間(本実施形態では、1.5s)経過したときに、該アクセル装置12の操作量に応じた電力量に到達させる。これにより、前記二輪電動車1は、徐々に加速しながら走行を開始する。
【0043】
そして、前記二輪電動車は、走行中(速度検知手段14から所定時間(本実施形態では、0.5s)以上信号が送信され続けている状態)に減速する場合、ブレーキ手段13が操作される(ブレーキレバー130a及びブレーキレバー130bの少なくとも何れか一方が引き操作される)。これにより、前記二輪電動車は、電力量制御手段150によってバッテリー10からインホイールモータM1,M2への電力供給が停止されるとともに、前輪2及び後輪3の少なくとも何れか一方が制動されることで減速する。
【0044】
なお、前記二輪電動車1は、アクセル装置12が操作された状態でブレーキ手段13に対する操作が行われ、このままの状態でブレーキ手段13に対する操作(ブレーキレバー130a及びブレーキレバー130bに対する引き操作)が解除されるという操作が行われることもある。
【0045】
前記電力量制御手段150は、このような場合、バッテリー10からインホイールモータM1,M2に供給する電力量をアクセル装置12が操作されてから前記所定時間よりも短い時間(本実施形態では、0.4s)経過した時点で、該アクセル装置12の操作量に応じた電力量に到達させる。これにより、このような操作を行った場合にも、急加速による衝撃を感じることなく、スムーズに走行でき、モータへの負担も軽減される。
【0046】
次に、坂道で停車している状態から坂道を上るべく発進する場合について説明する。本実施形態では、前記二輪電動車1が運転者によってアクセル装置12が操作されておらず、ブレーキ手段13が操作されることによって(ブレーキレバー130a及びブレーキレバー130bの少なくとも何れか一方が引き操作されることで)坂道で停車している状態を維持していることを前提として説明を行う。
【0047】
本実施形態に係る二輪電動車1は、坂道で停車している状態で発進する(坂道を上り走行する)場合、アクセル装置12が操作されておらず、ブレーキ手段13を操作して(ブレーキレバー130a及び130bの少なくとも何れか一方を引き操作して)停車している状態でアクセル装置が操作される(所謂坂道発進が行なわれる)。前記電力量制御手段150は、アクセル装置12が操作されておらず、ブレーキ手段13を操作して(ブレーキレバー130a及び130bの少なくとも何れか一方を引き操作して)停車している状態でアクセル装置が操作されると、所定時間である1.0sの間、バッテリー10からインホイールモータM1,M2に電力が供給され、0.4秒かけてアクセル装置12の操作量に応じた電力量まで電力を供給する。これにより、前記二輪電動車1は、後退することなく坂道発進する。
【0048】
以上のように、本実施形態に係る二輪電動車1によれば、停車中にブレーキ手段13に対する操作(ブレーキレバー130a及びブレーキレバー130bに対する引き操作)が解除されている状態でアクセル装置12が操作されると、電力量制御手段150がバッテリー10からインホイールモータM1,M2に供給する電力量を所定の時間をかけてアクセル装置12の操作量に応じた電力量に到達させるように構成されているため、走行を開始する際に、運転者がアクセル装置12を大きく操作しても、インホイールモータM1,M2が瞬時に膨大なトルクを発生させることを防止することができる。従って、前記二輪電動車1は、走行を開始する際に急発進することを防ぐことができるという優れた効果を奏し得る。
【0049】
また、前記二輪電動車1は、走行中にアクセル装置12を操作した状態のままでブレーキ手段13に対する操作(ブレーキレバー130a及びブレーキレバー130bに対する引き操作)が解除されると、電力量制御手段150がバッテリー10からインホイールモータM1,M2に供給する電力量を前記所定時間よりも短い時間でアクセル装置12の操作量に応じた電力量に到達させるように構成されているため、前記二輪電動車は、走行中のブレーキ手段13に対する操作が解除されたときに、操作した状態となっているアクセル装置12の操作量に応じた電力量が瞬時にバッテリー10からインホイールモータM1,M2に供給されて走行がスムーズでなくなることを防止することができる。また、急加速によるモータ軸に対する衝撃を和らげることができ、モータ軸の耐久性を向上させることができる。
【0050】
そして、前記二輪電動車1は、アクセル装置12が操作されておらず、ブレーキ手段13を操作して停車している状態でアクセル装置12が操作されると、電力量制御手段150が所定時間の間、バッテリー10からインホイールモータM1,M2にアクセル装置12の操作量に応じた電力量を供給するように構成されているため、ブレーキ手段13を操作していても所定時間だけバッテリー10からインホイールモータM1,M2にアクセル装置12の操作量に応じた電力量が供給されて、逆方向にずり落ちることなく坂道発進が可能となる。さらに、所定の時間だけしか電力が供給されないため、不用意にアクセル装置12を操作してもブレーキ手段13を操作している限り動き出すことはない。
【0051】
尚、本発明の二輪電動車は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更を行うことは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
1…二輪電動車、2…前輪、3…後輪、4…補助輪、5…車体フレーム、6…フロントフォーク、7…ハンドルバー、8…スイングアーム、9…リアサスペンション、10…バッテリー、11…バッテリーボックス、12…アクセル装置、13…ブレーキ手段、14…速度検知手段、15…駆動制御手段、16…駆動制御ボックス、50…シート部、80…補助アーム、81…補助サスペンション、120…スロットル、130a,130b…ブレーキレバー、131a,131b…制動機構、132…制動通知手段、150…電力量制御手段、M1,M2…インホイールモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を直接駆動する電気モータと、該電気モータに電力を供給するバッテリーと、操作量に応じて前記電気モータに供給する電力量を増減させるアクセル装置と、前記車輪を制動するブレーキ手段とを備え、ブレーキ手段が操作されている間、バッテリーから電気モータへの電力供給を停止するように構成されている二輪電動車において、前記バッテリーから電気モータに供給する電力量を制御する電力量制御手段を備え、該電力量制御手段は、停車中にブレーキ手段に対する操作が解除されている状態でアクセル装置が操作されると、バッテリーから電気モータに供給する電力量を所定の時間をかけてアクセル装置の操作量に応じた電力量に到達させるように構成されていることを特徴とする二輪電動車。
【請求項2】
前記電力量制御手段は、走行中にアクセル装置を操作した状態のままでブレーキ手段に対する操作が解除されると、バッテリーから電気モータに供給する電力量を前記所定時間よりも短い時間でアクセル装置の操作量に応じた電力量に到達させるように構成されている請求項1に記載の二輪電動車。
【請求項3】
前記電力量制御手段は、アクセル装置が操作されておらず、ブレーキ手段を操作して停車している状態でアクセル装置が操作されると、バッテリーから電気モータにアクセル装置の操作量に応じた電力量を所定時間だけ供給するように構成されている請求項1又は2に記載の二輪電動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−6468(P2013−6468A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139348(P2011−139348)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】