説明

二酸化炭素の回収システム及び方法

【課題】ボイラやスチームタービンの運転負荷変動があっても、二酸化炭素吸収液の再生を確実に行うことができる二酸化炭素の回収システム及び方法を提供する。
【解決手段】高圧、中圧、低圧タービンと、これらを駆動する蒸気を発生させるボイラ15と、ボイラからの燃焼排ガス16中の二酸化炭素を二酸化炭素吸収液により除去する吸収塔18と、吸収液を再生する再生塔19とからなる二酸化炭素回収装置と、低圧タービン13の入口から蒸気14Lを抜出し、抜出蒸気14Lを用いて動力を回収する第1の補助タービン22Lと、第1の補助タービンからの排出蒸気23Lを用いて、再生塔のリボイラ24に加熱源として供給する第1の蒸気送給ライン25Lと、ボイラの運転負荷変動に対応して、リボイラ24に供給する排出蒸気の圧力をリボイラ最適圧力の許容値となるように維持しつつ第1の補助タービン22Lを駆動する制御を行う制御装置とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電システムのボイラやスチームタービンの運転負荷変動があった場合においても、二酸化炭素吸収液の再生を確実に行うことができる二酸化炭素の回収システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の温暖化現象の原因の一つとして、CO2による温室効果が指摘され、地球環境を守る上で国際的にもその対策が急務となってきた。CO2の発生源としては化石燃料を燃焼させるあらゆる人間の活動分野に及び、その排出抑制への要求が一層強まる傾向にある。これに伴い大量の化石燃料を使用する火力発電所などの動力発生設備を対象に、ボイラの燃焼排ガスをアミン系CO2吸収液と接触させ、燃焼排ガス中のCO2を除去、回収する方法及び回収されたCO2を大気へ放出することなく貯蔵する方法が精力的に研究されている。また、前記のようなCO2吸収液を用い、燃焼排ガスからCO2を除去・回収する工程としては、吸収塔において燃焼排ガスとCO2吸収液とを接触させる工程、CO2を吸収した吸収液を再生塔において加熱し、CO2を遊離させると共に吸収液を再生して再び吸収塔に循環して再使用する二酸化炭素の回収システムが採用されている。
【0003】
この二酸化炭素の回収システムにおいては、吸収塔においてガス中に存在する二酸化炭素を吸収液に吸収させ、その後再生塔で加熱することで吸収液から二酸化炭素を分離し、分離した二酸化炭素は別途回収すると共に、再生された吸収液は再度吸収塔で循環利用するものである。
【0004】
ここで、前記再生塔にて二酸化炭素を分離・回収するためには、リボイラにて吸収液を加熱する必要があり、加熱用の所定圧力の蒸気を供給する必要がある。
従来においては、この蒸気を発電所における蒸気の一部を利用して、再生することが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−193116号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「エネルギーと地球環境」 http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=01-04-01-02
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、化学プラントに併設する二酸化炭素回収設備の場合においては、常に所定の蒸気を取り出すことができるものの、発電所に二酸化炭素回収設備を設置して蒸気を取出す場合には、電力需要に応じて運転負荷が変化するが、このときタービン蒸気の圧力も変動するため、二酸化炭素回収設備のリボイラに安定した圧力条件で蒸気を供給できなくなる、という問題がある。
【0008】
すなわち、電源を供給力の面からみると、一般に大別して、(1)常にほぼ一定の出力で運転を行うベース供給力、(2)電力需要の変動に対応して稼働し、主としてピーク時に必要な供給を行うピーク供給力、(3)両者の中間の役割をもつミドル供給力の三つのタイプに分類されており、ベース供給力は利用率が高くなるので、長期的な経済性及び燃料調達の安定性の両面において優れた電源を、ピーク供給力は年間の利用率が低く負荷追従性が要求されるため、資本費が安く、負荷追従性に優れた電源を、ミドル供給力は両者の中間的な特性を有する電源をそれぞれ充て効率的運用が行われている(非特許文献1参照)。
【0009】
このため、ピーク供給力又はミドル供給力用の発電所においては、ボイラの運転負荷変動があった場合においても、負荷変動を加味して二酸化炭素吸収液の再生を確実に行うことができる二酸化炭素の回収システムの提案が切望されている。
【0010】
本発明は、前記問題に鑑み、ボイラ及びスチームタービンの運転負荷変動があった場合においても、二酸化炭素吸収液の再生を確実に行うことができる二酸化炭素の回収システム及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、高圧タービン、中圧タービン及び低圧タービンと、これらを駆動する蒸気を発生させるためのボイラと、該ボイラから排出される燃焼排ガス中の二酸化炭素を二酸化炭素吸収液により吸収除去する二酸化炭素吸収塔と、二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収液を再生し、再生二酸化炭素吸収液とする二酸化炭素再生塔とからなる二酸化炭素回収装置と、前記低圧タービンの入口から蒸気を抜出す第1の蒸気抜出しラインと、該第1の蒸気抜出しラインと連結し、抜出した蒸気を用いて動力を回収する第1の補助タービンと、該第1の補助タービンから排出される排出蒸気を用いて、前記二酸化炭素再生塔において二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収液を再生する際に用いるリボイラに加熱源として供給する第1の蒸気送給ラインと、発電システムのボイラやスチームタービンの運転負荷変動に対応して、前記リボイラに供給する前記排出蒸気の圧力をリボイラ最適許容値となるように維持しつつ第1の補助タービンを駆動する制御を行う制御装置とを備えたことを特徴とする二酸化炭素の回収システムにある。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、前記第1の蒸気抜出しラインから第1の補助タービンを迂回して、直接リボイラに蒸気を供給するバイパスラインを備えたことを特徴とする二酸化炭素の回収システムにある。
【0013】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記低圧タービンの出口蒸気の一部を抜き出し、リボイラの加熱源として供給する出口蒸気抜出しラインを備えたことを特徴とする二酸化炭素の回収システムにある。
【0014】
第4の発明は、第1乃至3のいずれか一つの発明において、該第1の蒸気抜出しラインと連結し、抜出した蒸気を用いて動力を回収する第1の補助タービンを複数台備えたことを特徴とする二酸化炭素の回収システムにある。
【0015】
第5の発明は、第1の発明において、前記中圧タービンの入口から蒸気を抜出す第2の蒸気抜出しラインと、該第2の蒸気抜出しラインと連結し、抜出した蒸気を用いて動力を回収する第2の補助タービンと、該第2の補助タービンから排出される排出蒸気をリボイラの加熱源として供給する第2の蒸気送給ラインとを備えたことを特徴とする二酸化炭素の回収システムにある。
【0016】
第6の発明は、第1乃至5のいずれか一つの発明において、該第1の補助タービン又は第2の補助タービンにより、二酸化炭素の回収システムで使用するポンプ、ブロア及びコンプレッサ用のいずれかの動力を回収することを特徴とする二酸化炭素の回収システムにある。
【0017】
第7の発明は、第1乃至6のいずれか一つの二酸化炭素の回収システムを用いて前記二酸化炭素吸収液中に吸収された二酸化炭素を回収することを特徴とする二酸化炭素の回収方法にある。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、発電システムのボイラやスチームタービンの運転負荷変動があった場合においても、負荷変動を加味して二酸化炭素吸収液の再生のためのリボイラ用の蒸気を安定して供給することができ、吸収液の再生を確実に行うことができ、この結果、安定した二酸化炭素の回収を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、二酸化炭素の回収システムの概略図である。
【図2】図2は、実施例1における蒸気配管システムの概念図である。
【図3】図3は、実施例2における蒸気配管システムの概念図である。
【図4】図4は、実施例3における蒸気配管システムの概念図である。
【図5】図5は、実施例4における蒸気配管システムの概念図である。
【図6】図6は、実施例5における蒸気配管システムの概念図である。
【図7】図7は、実施例6における蒸気配管システムの概念図である。
【図8】図8は、比較例1における蒸気配管システムの概念図である。
【図9】図9は、比較例2における蒸気配管システムの概念図である。
【図10】図10は、負荷変動と低圧タービン蒸気流量比との関係図である。
【図11】図11は、負荷変動と低圧タービン入口圧力比との関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0021】
本発明による実施例に係る二酸化炭素の回収システムについて、図面を参照して説明する。図1は、二酸化炭素の回収システムの概略図である。図2は、本実施例における蒸気配管システムの概念図であり、タービンは同軸で同一発電機を駆動するものである。なお、タービンは多軸で異なる発電機を駆動してもよい。
図1及び図2に示すように、本実施例に係る二酸化炭素の回収システムは、高圧タービン11、中圧タービン12及び低圧タービン13と、これらを駆動する蒸気14を発生させるためのボイラ15と、該ボイラ15から排出される燃焼排ガス16中の二酸化炭素を二酸化炭素吸収液17により吸収除去する二酸化炭素吸収塔(吸収塔)18と、二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収液17Aから二酸化炭素を放出して再生し、再生二酸化炭素吸収液17Bとする二酸化炭素再生塔(再生塔)19とからなる二酸化炭素回収装置20と、前記低圧タービン13の入口から蒸気14Lを抜出す第1の蒸気抜出しライン21Lと、該第1の蒸気抜出しライン21Lと連結し、抜出した蒸気14Lを用いて動力を回収する第1の補助タービン22Lと、該第1の補助タービン22Lから排出される排出蒸気23を用いて、前記二酸化炭素再生塔19において二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収液17Aを再生する際に用いるリボイラ24に加熱源として供給する第1の蒸気送給ライン25Lと、ボイラ15やタービン(高圧タービン11、中圧タービン12、低圧タービン13)の運転負荷変動に対応して、前記リボイラ24に供給する前記排出蒸気23の圧力をリボイラ最適圧力の許容値(0.33MPa±0.05MPa程度)となるように維持しつつ第1の補助タービン22Lを駆動する制御を行う制御装置とを備えている。
【0022】
ここで、前記二酸化炭素吸収液17は、吸収塔18で二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収液(リッチ溶液)17Aと、再生塔19において二酸化炭素を放出して再生された再生二酸化炭素吸収液(リーン溶液)17Bとから構成されており、吸収塔18と再生塔19とを循環再利用するようにしている。
【0023】
図1において、ボイラ15よりの二酸化炭素(CO2)を含んだ燃焼排ガス16はボイラ燃焼排ガス送風機31により昇圧された後、燃焼排ガス冷却器32に送られ、冷却水33aにより冷却され、吸収塔18に送られ、冷却排水33bは系外に放出される。吸収塔18において、燃焼排ガス16は例えばアルカノールアミンをベースとする再生された吸収液17と交流接触し、燃焼排ガス16中のCO2は化学反応により吸収液に吸収される。CO2を除去された燃焼排ガス34は系外へ放出される。
一方、CO2を吸収した吸収液(リッチ溶液)17Aはリッチソルベントポンプ35aにより昇圧され、リッチ/リーンソルベント熱交換器36にて再生された吸収液(リーン溶液)17Bにて加熱され、再生塔19に供給される。
【0024】
再生塔19の下部において、 吸収液はリボイラ24にて供給された排出蒸気(0.33MPa)23Lにて加熱される。水蒸気を伴ったCO2は再生塔19の塔頂部よりオーバーヘッドコンデンサ38へと導かれる。
リボイラ24にて凝縮された低圧蒸気の凝縮水はリボイラ復水ポンプ45にて昇圧され、予熱されたボイラ給水43と混合され、ボイラ給水を昇温する。そして、昇温されたボイラ給水43はボイラ15へ供給される。
再生塔19より放出された水蒸気を伴ったCO2は、ボイラ給水ポンプ44により昇圧されたボイラ給水43をオーバーヘッドコンデンサ38により予熱した後、オーバーヘッドクーラ39により冷され、分離器40で水を分離され、CO2は別工程へ導かれて、図示しないコンプレッサにより圧縮され、液化回収される。
分離器40により分離された水は凝縮水循環ポンプ41により再生塔19に供給される。吸収液(リーン溶液)17Bはリーンソルベントポンプ35bにて昇圧され、リッチ/リーンソルベント熱交換器36にてCO2を吸収したCO2吸収液(リッチ溶液)17Aにて冷却され、リーンソルベントクーラ37にてさらに冷却されて吸収塔18に供給される。
【0025】
一方、ボイラ15により発生し、加熱された高圧、高温の蒸気14は高圧タービン11を駆動した後、高圧タービン排気としてボイラ15中の再加熱器15aにより再加熱され、再加熱された中圧蒸気として中圧タービン12、続いて低圧タービン13に送られる。
前記低圧タービン13の入口から蒸気14Lを第1の蒸気抜出しライン21Lから抜きだし、抜出した蒸気14Lを用いて第1の補助タービン22Lで動力を回収する。その後該第1の補助タービン22Lから排出される排出蒸気23Lを用いて、前記二酸化炭素再生塔19において二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収液17Aを再生する際に用いるリボイラ24に加熱源として第1の蒸気送給ライン25を介して供給する。
この第1の補助タービン22Lでは、発電システムのボイラ15やスチームタービン(高圧タービン11、中圧タービン12、低圧タービン13)の運転負荷変動に対応して、前記リボイラ24に供給する前記排出蒸気23Lの圧力をリボイラ最適許容値(例えば0.33MPa±0.05MPa程度)となるように維持しつつ、発電機51を備えた第1の補助タービン22Lの駆動制御を図示しない制御装置により行うようにしている。なお、前記リボイラ最適許容値は一例であり、吸収液組成や再生塔設備等の諸条件により適宜変動する。
【0026】
低圧タービン13からの排気は復水器42にて凝縮され、凝縮水はボイラ給水43としてボイラ給水ポンプ44によりオーバーヘッドコンデンサ38に送られる。
【0027】
なお、CO2を吸収する二酸化炭素吸収液17としては、例えばアミン系吸収液を例示することができ、具体的にはアルカノールアミンとしてはモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ジグリコールアミンなど、更にはヒンダードアミン類が例示され、これらの各単独水溶液、あるいはこれらの二以上の混合水溶液をあげることができるが、通常モノエタノールアミン水溶液が好んで用いられる。
【0028】
本実施例に係る二酸化炭素の回収システムについて、実際の負荷に対応して制御する一例の工程について、説明する。
1) 先ず、図示しない制御装置に、現在の発電の運転負荷情報が入力される。
2) 次に、この負荷情報に基づき、図示しない制御装置により第1の補助タービン22Lに供給される低圧タービン13の入口に供給される蒸気14Lの流量情報が入力される。
3) 次に、蒸気14Lにより第1の補助タービン22Lが駆動され、電力を得る。この際、リボイラ24に供給する排出蒸気23Lの圧力をリボイラ最適圧力の許容値(例えば0.33MPa程度)となるように維持しつつ第1の補助タービン22Lを駆動する制御を制御装置により行う。
4) その後、ボイラ負荷変動の情報が制御装置に入力された時点において、例えば負荷が75%となった場合には、吸収液の再生に必要な蒸気量から低圧タービン13の入口に供給される蒸気14Lの流量情報が入力される。この情報をもとに、リボイラ24に供給する排出蒸気23Lの圧力をリボイラ最適圧力の許容値(例えば0.33MPa程度)となるように維持しつつ第1の補助タービン22Lを駆動する制御を制御装置により行う。この結果、第1の補助タービン22Lにおいては、発電出力が負荷100%の場合に33MWであったものが、負荷75%の場合に18MWに低下するが、リボイラ24に供給する排出蒸気23Lの圧力をリボイラ最適圧力の許容値(例えば0.33MPa程度)となるように維持することが出来る結果、安定した吸収液の再生が可能となる。
【0029】
このように、本実施例によれば、発電システムの全負荷帯において、二酸化炭素回収設備を組み込んだ場合においても、最も効率的な発電システムを提供することができる。
すなわち、低圧タービン13の入口から抜出した蒸気14Lを、再生塔19のリボイラ24に適した蒸気条件(0.33MPa程度)まで第1の補助タービン22Lにて動力を回収する際、低圧タービン13の入口の蒸気14Lの蒸気圧力は、発電システムの負荷変動に応じて変化するが、補助タービンを設置すると共に、その駆動制御をリボイラ24に供給する蒸気の圧力を一定に保つようにすることで、吸収液再生のためのリボイラ24用の蒸気を安定して供給することができる。この結果、吸収液の再生を確実に行うことができる。この結果、二酸化炭素回収設備において、常に安定した二酸化炭素の回収を行うことができる。
【0030】
このように、本発明によれば、発電システムの蒸気システム構成を変更することなく、二酸化炭素回収設備を組み込むことができると共に、低圧タービン入口蒸気を第1の補助タービン22Lにて動力回収することで、発電システムの出力減を低減できる。
また、ボイラ15及びスチームタービン(高圧タービン11、中圧タービン12、低圧タービン13)の負荷変動(100%〜50%)があった場合においても、第1の補助タービン22Lを定格で駆動するのではなく、蒸気の圧力と流量に追従して駆動を制御し、第1の補助タービン22Lからの蒸気23Lの出口圧力を一定に保つように制御することで、プラントの全負荷帯において、二酸化炭素回収設備のリボイラ24に対する最適圧力の許容値(例えば0.33MPa±0.05MPa程度)とすることで、常に安定した吸収液の再生が可能となる。
【実施例2】
【0031】
本発明による実施例に係る二酸化炭素の回収システムについて、図面を参照して説明する。図3は、本実施例における蒸気配管システムの概念図である。
また、図3に示すように、前記第1の蒸気抜出しライン21Lから第1の補助タービン22Lを迂回して、直接リボイラ24に蒸気14Lを供給するバイパスライン26を設け、第1の補助タービン22Lにて発電できない運転負荷の場合は、バイパスライン26とバルブV1、V2にてリボイラ24に供給する蒸気圧力を許容値に保つようにしている。なお、このバイパスライン26は後述する実施例3乃至6のいずれに対しても適用することができる。
【実施例3】
【0032】
本発明による実施例に係る二酸化炭素の回収システムについて、図面を参照して説明する。図4は、本実施例における蒸気配管システムの概念図である。
また、図4に示すように、第1の補助タービン22Lにコンプレッサ52を設け、該コンプレッサ52を駆動させ、電力不足分は、モータ53でその一部を賄うようにしてもよい。
【実施例4】
【0033】
本発明による実施例に係る二酸化炭素の回収システムについて、図面を参照して説明する。図5は、本実施例における蒸気配管システムの概念図である。
また、図5に示すように、第1の補助タービン22Lを複数台設け、各々の第1の補助タービン22Lにブロア54、ポンプ55を設け、これらを駆動させ、電力不足分は、モータ53でその一部を賄うようにしてもよい。この際、排出蒸気23Lをリボイラ最適圧力の許容値(0.33MPa±0.05MPa程度)となるように第1の補助タービン22Lの運転を制御している。
【実施例5】
【0034】
本発明による実施例に係る二酸化炭素の回収システムについて、図面を参照して説明する。図6は、本実施例における蒸気配管システムの概念図である。
また、図6に示すように、前記低圧タービン13の出口蒸気の一部60を抜き出し、リボイラ24の加熱源として供給する出口蒸気抜出しライン61を設け、第1の補助タービン22Lからの排出蒸気23Lと合流させて、リボイラ24に供給するようにしている。この際、合流した蒸気をリボイラ最適圧力の許容値(0.33MPa±0.05MPa程度)となるように第1の補助タービン22Lの運転を制御している。
【実施例6】
【0035】
本発明による実施例に係る二酸化炭素の回収システムについて、図面を参照して説明する。図7は、本実施例における蒸気配管システムの概念図である。
また、図7に示すように、本実施例では、実施例1において、さらに、前記中圧タービン12の入口から蒸気14Mを抜出す第2の蒸気抜出しライン21Mと、該第2の蒸気抜出しライン21Mと連結し、抜出した蒸気14Mを用いて動力を回収する第2の補助タービン22Mと、該第2の補助タービン22Mから排出される排出蒸気23Mをリボイラ24の加熱源として供給する第2の蒸気送給ライン25Mとを備えるものである。
第2の補助タービン22Mにコンプレッサ52を設け、該コンプレッサ52を駆動させている。なお、負荷変動により抽出した蒸気14Mの圧力が低下した場合には、モータ53でその不足の電力の一部を賄うようにしてもよい。
【0036】
本実施例では、中圧タービン12の入口から抜出した蒸気14Mを、リボイラ24に適した蒸気条件(0.33MPa)までコンプレッサ用の第2の補助タービン22Mにて動力を回収し、回収した二酸化炭素を液化するコンプレッサに利用することができる。同様に、低圧タービン13入口から抜出した蒸気14Lを、リボイラ24に適した蒸気条件(0.33MPa)まで第1の補助タービン22Lにて動力を回収することができる。
【0037】
このとき、発電システム内の蒸気圧力は負荷変動に応じて変化するが、第1及び第2の補助タービン22L、22Mを設置することにより、リボイラ24の供給する蒸気の圧力を一定に保つことができる。
なお、第1の補助タービン22Lにて発電できない運転負荷の場合は、併設したバイパスライン26とバルブVにてリボイラ24に供給する蒸気圧力を一定に保つように制御する。
【0038】
以下、本発明の効果を示す例について、説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
発電能力900MWの石炭焚き火力発電設備に、図1のプロセスを適用した本発明の方法を適用したプロセスの送電量低減率を「表1」に示す。
比較として、蒸気を供給しない場合(主機タービン発電出力:900MW)を比較例1として基準とし(図8参照)、低圧タービン入口から直接抽気した従来技術を比較例2とした(図9参照)。
【0039】
「例1」は、実施例1に対応する発電システムであり、抜出した蒸気14Lを用いて第1の補助タービン22Lにより動力を回収し、該第1の補助タービン22Lから排出される排出蒸気23Lをリボイラ最適圧力の許容値(0.33MPa±0.05MPa程度)となるように第1の補助タービン22Lの運転を制御している。
この際、発電システム負荷100%、75%及び50%について、送電出力の減少を確認した。なお、図10に負荷変動と低圧タービン蒸気流量比との関係図、図11に負荷変動と低圧タービン入口圧力比との関係図を示す。負荷変動によりこれらの値は減少している。
【0040】
表1(100%負荷、75%負荷)及び表2(50%負荷)に示すように、例1の場合には、送電出力の減少が比較例2に較べて低く、19.6%の減少であった。なお、リボイラでは吸収液の再生が可能となる。
【0041】
「例2」は、実施例3に対応する発電システム(図4参照)であり、第1の補助タービン22Lによりコンプレッサ動力を回収しつつ、該第1の補助タービン22Lから排出される排出蒸気23Lをリボイラ最適圧力の許容値(0.33MPa±0.05Mpa程度)となるように第1の補助タービン22Lの運転を制御している。
表1及び2に示すように、例2の場合には、送電出力の減少が比較例2に較べて低く、19.6%の減少であった。なお、補助タービン22Lでは、出力が33MWしかないので、主機タービン発電出力から24MWはコンプレッサ用に供給している。
【0042】
「例3」は、実施例4に対応する発電システム(図5参照)であり、第1の補助タービン22Lを複数台設置し、ブロア及びポンプ動力を回収しつつ、該第1の補助タービン22Lから排出される排出蒸気23をリボイラ最適圧力の許容値(0.33MPa±0.05MPa程度)となるように第1の補助タービン22Lの運転を制御している。
表1に示すように、例3の場合には、送電出力の減少が比較例2に較べて低く、20.2%の減少であった。
【0043】
「例4」は、実施例5に対応する発電システム(図6参照)であり、前記低圧タービン13の出口蒸気の一部を抜き出し、リボイラ24の加熱源として供給する出口蒸気抜出しライン61を設け、第1の補助タービン22Lからの排出蒸気23Lと合流させて、合流した蒸気23をリボイラ最適圧力の許容値(0.33MPa±0.05MPa程度)となるように第1の補助タービン22Lの運転を制御している。
表1に示すように、例4の場合には、送電出力の減少が比較例2に較べて低く、19.8%の減少であった。
【0044】
「例5」は、実施例6に対応する発電システム(図7参照)であり、中圧タービン12の入口から抜出した蒸気14Mを、リボイラ24に適した蒸気条件(0.33MPa)までコンプレッサ用の第2の補助タービン22Mにて動力を回収し、回収した二酸化炭素を液化するコンプレッサに利用すると共に、第1の補助タービン22Lにおいても、リボイラ24に適した蒸気条件(0.33MPa)で動力を回収する制御をしている。
表1に示すように、例5の場合には、送電出力の減少が比較例2に較べて低く、19.4%の減少であった。
例2と異なり、コンプレッサ用の第2の補助タービン22Mでは、出力が57MWであるので、主機タービン発電出力から別途供給することなく、コンプレッサを駆動することができる。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
以上の例から明らかなように、本発明の方法を採用することにより、従来プロセスに比較して、発電設備の既存の蒸気ラインから抜き出した蒸気を効率的に用いることにより、動力を回収することができ、消費電力の低減を図ることができると共に、ボイラ及びスチームタービンの負荷変動があった場合においても、リボイラ24に安定して最適圧力の蒸気を供給でき、ボイラ15から排出される燃焼排ガス16中の二酸化炭素を回収する吸収液の再生を常に確実に行うことができることを確認することができた。
【0048】
図10及び図11に示すように、負荷が100%から50%に変動することに応じて、蒸気量比や入口圧力比が低下する。例えば表2に示す50%負荷の場合においても、例1及び5に示すように、対応することができることが確認できた。
また、例5の場合においては、中圧タービン12への入口の蒸気14Mを用いているので、補助タービン22Mからの排出蒸気23Mは、リボイラ24に適した蒸気条件(0.33MPa)とすることができる。この際、第2の補助タービン22Lへの蒸気抜出しライン21Lとバイパスライン26とにおいては、バルブV1、V2で閉塞し、その蒸気流れを停止しておく。
この結果、例5においては、負荷が50%以下となった場合においても、吸収液の再生のためのリボイラ24に適した蒸気条件(0.33MPa)とする制御が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明に係る二酸化炭素の回収システム及び方法によれば、ボイラ及びスチームタービンの運転負荷変動があった場合においても、負荷変動を加味して二酸化炭素吸収液の再生のためのリボイラ用の蒸気を安定して供給することができ、発電設備における燃焼排ガス中の二酸化炭素の処理をおこなった吸収液の再生を確実に行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
11 高圧タービン
12 中圧タービン
13 低圧タービン
14、14L、14M 蒸気
15 ボイラ
16 燃焼排ガス
17 二酸化炭素吸収液
17A 二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収液(リッチ溶液)
17B 再生二酸化炭素吸収液(リーン溶液)
18 二酸化炭素吸収塔(吸収塔)
19 二酸化炭素再生塔(再生塔)
20 二酸化炭素回収装置
21L 第1の蒸気抜出しライン
21M 第2の蒸気抜出しライン
22L 第1の補助タービン
22M 第2の補助タービン
23 排出蒸気
24 リボイラ
25L 第1の蒸気送給ライン
25M 第2の蒸気送給ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧タービン、中圧タービン及び低圧タービンと、
これらを駆動する蒸気を発生させるためのボイラと、
該ボイラから排出される燃焼排ガス中の二酸化炭素を二酸化炭素吸収液により吸収除去する二酸化炭素吸収塔と、二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収液を再生し、再生二酸化炭素吸収液とする二酸化炭素再生塔とからなる二酸化炭素回収装置と、
前記低圧タービンの入口から蒸気を抜出す第1の蒸気抜出しラインと、
該第1の蒸気抜出しラインと連結し、抜出した蒸気を用いて動力を回収する第1の補助タービンと、
該第1の補助タービンから排出される排出蒸気を用いて、前記二酸化炭素再生塔において二酸化炭素を吸収した二酸化炭素吸収液を再生する際に用いるリボイラに加熱源として供給する第1の蒸気送給ラインと、
発電システムのボイラやスチームタービンの運転負荷変動に対応して、前記リボイラに供給する前記排出蒸気の圧力をリボイラ最適許容値となるように維持しつつ第1の補助タービンを駆動する制御を行う制御装置とを備えたことを特徴とする二酸化炭素の回収システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の蒸気抜出しラインから第1の補助タービンを迂回して、直接リボイラに蒸気を供給するバイパスラインを備えたことを特徴とする二酸化炭素の回収システム。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記低圧タービンの出口蒸気の一部を抜き出し、リボイラの加熱源として供給する出口蒸気抜出しラインを備えたことを特徴とする二酸化炭素の回収システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つにおいて、
該第1の蒸気抜出しラインと連結し、抜出した蒸気を用いて動力を回収する第1の補助タービンを複数台備えたことを特徴とする二酸化炭素の回収システム。
【請求項5】
請求項1において、
前記中圧タービンの入口から蒸気を抜出す第2の蒸気抜出しラインと、
該第2の蒸気抜出しラインと連結し、抜出した蒸気を用いて動力を回収する第2の補助タービンと、
該第2の補助タービンから排出される排出蒸気をリボイラの加熱源として供給する第2の蒸気送給ラインとを備えたことを特徴とする二酸化炭素の回収システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つにおいて、
該第1の補助タービン又は第2の補助タービンにより、二酸化炭素の回収システムで使用するポンプ、ブロア及びコンプレッサ用のいずれかの動力を回収することを特徴とする二酸化炭素の回収システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一つの二酸化炭素の回収システムを用いて前記二酸化炭素吸収液中に吸収された二酸化炭素を回収することを特徴とする二酸化炭素の回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−20090(P2011−20090A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169322(P2009−169322)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】