説明

二酸化炭素ガスを使用する低エネルギー4セル電気化学システム

イオンを生成するために従来のアノードとカソードとの間に使用される典型的な3Vよりもはるかに少ない値を使用して水酸化物イオンおよび/または重炭酸イオンおよび/または炭酸イオンを生成する低電圧で低エネルギーの電気化学システムおよび方法;その結果、本発明のシステムおよび方法に起因する二酸化炭素の放出が大幅に減少する。一実施形態において、本発明のシステムは:カソードに接触する第1の電解質と;アノードに接触する第2の電解質と;第1のイオン交換膜によって第1の電解質から分離された第3の電解質と;第2のイオン交換膜によって第2の電解質から分離された第4の電解質と;第3および第4の電解質を分離する第3のイオン交換膜と含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
35 U.S.C.§119(e)に基づき、本出願は、2008年7月16日に出願され発明の名称が「水素吸収金属触媒を使用した炭素隔離のための低エネルギーpH調節」(Low Energy pH Modulation for Carbon Sequestration Using Hydrogen Absorptive Metal Catalysts)である、本願と同一の譲受人に譲渡された米国仮特許出願第61/081,299号明細書、;および2008年8月25日に出願され発明の名称が「電解質溶液から固体材料中への水素イオンの低エネルギー吸収」(Low Energy Absorption of Hydrogen Ion from an Electrolyte Solution into a Solid Material)である、本願と同一の譲受人に譲渡された米国仮特許出願第61/091,729号明細書の優先権を主張し、どちらもそれらの記載内容全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
35U.S.C.§119(a)および35U.S.C.§365に基づき、本出願は、2008年12月23日に出願された「低エネルギー電気化学的水酸化物システムおよび方法」(Low−energy Electrochemical Hydroxide System and Method)と題される、本願と同一の譲受人に譲渡されたPCT特許出願PCT/US08/88242号明細書;および2009年1月28日に出願され「低エネルギー電気化学的重炭酸イオン溶液」(Low−energy Electrochemical Bicarbonate Ion Solution)と題される、本願と同一の譲受人に譲渡されたPCT特許出願PCT/US09/32301号明細書の優先権を主張し、どちらもそれらの記載内容全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
水酸化物イオン、炭酸イオン、および/または重炭酸イオンの溶液は、プロトンを溶液から除去するため、または溶液のpHを緩衝するため、または不溶性水酸化物および/またはカーボネートおよび/またはバイカーボネートを溶液から沈殿させるために多くの場合に必要とされる。従来、水酸化物イオンは、塩基の加水分解、たとえば消石灰の消和によって;あるいは塩溶液の電気分解、たとえば、塩素アルカリ法の場合のような塩化ナトリウム水溶液の電気分解によって生成することができる。従来、炭酸イオンまたは重炭酸イオンは、二酸化炭素ガスを水中に溶解させることによって、あるいは可溶性炭酸塩または重炭酸塩、たとえば、重炭酸ナトリウムを水中に溶解させることによって生成することができる。
【0004】
塩基の加水分解または塩溶液の電気分解によって水酸化物イオンを生成することができるが、水酸化物イオンの従来の生成では大量のエネルギーを消費し;従来方法では大量の二酸化炭素も環境中に放出する。したがって、たとえば生石灰の製造において、大量の化石燃料を燃焼させて石灰石を焼成して酸化カルシウムに変換し、その結果大量の二酸化炭素が環境中に放出される。同様に、塩素アルカリ法による水酸化物イオンの生成では、反応を進行させるためにアノードとカソードとの間に典型的には少なくとも3Vが必要となるため、大量のエネルギーが使用される。このエネルギーは典型的には化石燃料発電プラントから得られるため、この方法によって大量の二酸化炭素も環境中に放出される。同様に、二酸化炭素を水溶液中に溶解させることによる炭酸イオンおよび重炭酸イオンの生成においては、溶解性を改善するためにガスを加圧するのに大量のエネルギーが必要であり、その結果として使用されたエネルギーに起因する大量の二酸化炭素が環境中に放出される。したがって、水酸化物イオン、炭酸イオン、および重炭酸イオンのエネルギー効率の良い製造が非常に望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
種々の実施形態において、本発明のシステムおよび方法は、水酸化物イオンおよび/または重炭酸イオンおよび/または炭酸イオンを生成する低電圧で低エネルギーの電気化学システムおよび方法に関する。種々の実施形態において、本発明のシステムおよび方法は、イオンの生成のために従来のアノードとカソードとの間に使用される典型的な3Vよりも顕著に低い値を使用し、その結果、本発明のシステムおよび方法に起因する二酸化炭素の放出が顕著に減少する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態において、本発明のシステムは:カソードに接触する第1の電解質と;アノードに接触する第2の電解質と;第1のイオン交換膜によって第1の電解質から分離された第3の電解質と;第2のイオン交換膜によって第2の電解質から分離された第4の電解質と;第3および第4の電解質を分離する第3のイオン交換膜と含む。
【0007】
一実施形態において、本発明の方法は:カソードに接触させて第1の電解質を配置するステップと;アノードに接触させて第2の電解質を配置するステップと;第1のイオン交換膜によって第1の電解質から分離するように第3の電解質を配置するステップと;第3のイオン交換膜によって第3の電解質から分離し、第2のイオン交換膜によって第2の電解質から分離するように第4の電解質を配置するステップと;アノードとカソードとの間に電圧を印加することによって第1の電解質中に水酸化物イオンを形成するステップとを含む。
【0008】
別の一実施形態において、本発明の方法は:カソードに接触させて第1の電解質を配置するステップと;アノードに接触させて第2の電解質を配置するステップと;第1のイオン交換膜によって第1の電解質から分離するように第3の電解質を配置するステップと;第3のイオン交換膜によって第3の電解質から分離し、第2のイオン交換膜によって第2の電解質から分離するように第4の電解質を配置するステップと;二酸化炭素ガスを第1の電解質に供給するステップとを含む。
【0009】
種々の実施形態において、第1のイオン交換膜は陽イオン交換膜を含み;第2のイオン交換膜は陽イオン交換膜を含み;第3のイオン交換膜は陰イオン交換膜を含む。種々の実施形態において、第1の電解質はカソードに接触するカソード電解質であり、第2の電解質はアノードに接触するアノード電解質である。
【0010】
種々の実施形態において、本発明のシステムおよび方法は、流出流を介してカソード電解質の一部または全てを抜き取ったり、および/または流入流を介してこの電解質をカソード電解質室に補充したりするのに適合している。種々の実施形態において、本発明のシステムおよび方法は、第4の電解質の一部または全てが流出流から抜きとられ、このエレクトロライトが第4の電解質室の流入流を介して補充されるよう適合している。種々の実施形態において、本発明のシステムおよび方法は、システム中の電解質の抜き取りおよび補充を行うまたは行わない、バッチ、セミバッチ、または連続流操作に適合している。
【0011】
種々の実施形態において、本発明のシステムは、カソードで発生した水素ガスをアノードに誘導するに適合した水素ガス移送システムを含む。別の一実施形態において、システムは、二酸化炭素ガスをカソード電解質中に送出するのに適合した二酸化炭素送出システムを含み、カソード電解質中で二酸化炭素は溶解して、電解質のpHに依存して重炭酸イオンおよび/または炭酸イオンを形成することができる。カソード電解質中にガスを溶解させることによってカソード電解質に二酸化炭素が供給される実施形態において、この溶解は、ある実施形態では、流出流中、または流入流中、またはそれらの間に配置された1つ以上の室で起こりうる。種々の実施形態において、本発明のシステムは、ガス、たとえば二酸化炭素をカソード電解質に供給するための燃焼ガスを含む産業排ガス流に操作可能に接続される。種々の実施形態において、排ガス流は、化石燃料発電プラント、セメント製造プラント、および/またはその他の工業プラントからの燃焼ガスを含む。種々の実施形態において、排ガスは、カソード電解質中に溶解して陰イオンを形成する酸性ガス類、たとえば、窒素酸化物類(亜酸化窒素、酸化窒素)および硫黄ガス類(二酸化硫黄、硫化水素)を含む。ある実施形態においては、カソードエレクトロライトと接触する前に、排ガスは、その非二酸化炭素成分の一部または全てを除去する処理が行われる。
【0012】
種々の実施形態において、水酸化物イオン、重炭酸イオン、炭酸イオン、塩酸、ならびに特定の陽イオンおよび陰イオンが除去されている部分的に脱塩された水を含む本発明のシステムおよび方法の生成物を使用して、排ガスを、二価の陽イオン、ならびに水酸化物イオン、重炭酸イオン、および/または炭酸イオンを含む溶液と接触させて、二価の陽イオンの炭酸塩および重炭酸を沈殿させることによって、二酸化炭素および産業排ガスの他の成分、たとえば、硫黄ガス類、酸化窒素ガス類、およびその他の燃焼ガスが隔離され、このことは、2008年12月24日に出願され本願と同一の譲受人に譲渡された米国特許出願第12/344,019号明細書に記載されており、その記載内容全体が参照により本明細書に援用される。たとえば、カルシウムおよびマグネシウムの炭酸塩および重炭酸塩を含む沈殿物は、種々の実施形態において、建築材料として、たとえば、セメントおよび骨材として利用され、このことは2008年5月23日に出願され本願と同一の譲受人に譲渡された米国特許出願第12/126,776号明細書に記載されており、その記載内容全体が参照により本明細書に援用される。
【0013】
別の用途では、陽イオンおよび陰イオンが除去されている部分的に脱塩された水、たとえば、ナトリウムイオンおよび塩化物イオンを第3の電解質から除去することによって形成された部分的に脱塩された水が、脱塩システム中の給水として使用され、この水は、その記載内容全体が参照により本明細書に援用される2008年6月27日に出願され本願と同一の譲受人に譲渡された米国特許出願第12/163,205号明細書に記載のようにさらに処理される。
【0014】
別の一実施形態において、第4の電解質中で生成される酸、および/またはカソード電解質中で生成される塩基溶液を使用して、二価陽イオン、たとえば、Ca++およびMg++を含む無機物および廃棄物を溶解させて、二価陽イオン溶液を生成し、この溶液は、本発明のカソードエレクトロライトを使用した二価金属イオン炭酸塩沈殿物の生成に使用される。種々の実施形態において、この沈殿物は、その記載内容全体が参照により本明細書に援用される本願と同一の譲受人に譲渡された米国特許出願第12/126,776号明細書に記載されるように建築材料、たとえばセメントおよび骨材として使用される。
【0015】
以下の図面は、例として示されるものであり、本発明のシステムおよび方法の実施態様を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のシステムの一実施形態の図である。
【図2】本発明の方法の一実施形態のフローチャートである。
【図3】本発明の方法の一実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の方法およびシステムを詳細に説明する前に、本発明のシステムおよび方法は、それ自体が変化しうる本明細書に記載され例示される特定の実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書において使用される専門用語は特定の実施形態の説明のみを目的としており、限定的なものではないことも理解されたい。
【0018】
本明細書において、ある範囲の値が提供される場合、(文脈が明確に他のことを示すのでない限り)その範囲の上限と下限との間の下限の単位の10分の1までの介在するそれぞれの値、ならびにその記載の範囲内のあらゆる他の記載の値または介在する値が、本発明のシステムおよび方法に含まれるものと理解されたい。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立してより小さな範囲内に含まれて良いし、それらも本発明のシステムおよび方法に含まれ、これらの範囲は、記載の範囲内のいずれかの具体的に排除される制限値に従う。記載の範囲が制限値の一方または両方を含む場合、含まれるこれらの制限値のいずれかまたは両方を排除する範囲も、本発明のシステムおよび方法に含まれる。
【0019】
本明細書において、範囲は、用語「約」が前に付けられる数値で表される。本明細書において、用語「約」は、この用語が前に付けられる正確な数値、ならびにこの用語が前に付けられる数値に近いまたはほぼ同じ数値を文字通り支持するために使用される。具体的に列挙される数値に近いまたはほぼ同じであるかどうかの決定において、近いまたはほぼ同じである列挙されていない数値は、その数値が提示されている状況において、具体的に列挙されている数値と実質的に同等となる数値であってよい。
【0020】
特に定義しない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または同等であるあらゆる方法、システム、および材料も本発明のシステムおよび方法の実施に使用することができるが、代表的な方法、システム、および材料のみを本明細書において説明する。
【0021】
本明細書に引用されるすべての刊行物および特許は、それぞれの個別の刊行物または特許が具体的および個別に参照により援用されることが示されかのように参照により本明細書に援用され、引用される刊行物と関連する方法および/または材料を開示および説明するために参照により本明細書に援用される。あらゆる刊行物の引用は、本願出願日前のその刊行物の開示のためのものであり、先行発明の理由でこのような刊行物に先行する権利を本発明が有さないことを認めるものと解釈すべきではない。さらに、提供される刊行物の日付は、別個に確認する必要が生じうる実際の刊行日とは異なる場合がある。
【0022】
本明細書中および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に他のことを示しているのでなければ、複数への言及を含んでいる。また、特許請求の範囲は、あらゆる任意選択の要素を排除するように作成される場合がある。そのようなものなので、この言明は、「単独の」、「唯一の」などの排他的な用語と請求要素の詳述との併用、または「消極的な」限定の使用に関する先行する基準として機能することを意図している。
【0023】
当業者には明らかなように、本明細書で説明され例示される各実施形態は、本発明の範囲から逸脱することなく他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴と容易に分離したり組み合わせたりすることができる別個の成分および特徴を含む。列挙されるあらゆる方法は、列挙される事象の順序で行うことができるし、可能性のあるあらゆる論理的な順序で行うこともできる。
【0024】
種々の実施形態において、本発明のシステムおよび方法は、低電圧で低エネルギーの電気化学的方法による、水溶液中での水酸化物イオンおよび/または重炭酸イオンおよび/または炭酸イオンの生成に関する。一実施形態において、図1を参照すると、カソード104とアノード108との間に3V未満の電圧を印加することによって、水酸化物イオンがカソード電解質102中で生成し、同時に:i)水素ガスがアノード108において酸化されてプロトンを生成し;ii)プロトンが、アノード108からアノード電解質106を介し、第2の陽イオン交換膜118を通過して、第4の電解質116まで移動し;iii)アノード108とカソード104との間の電圧が、アノード108においてガスが生成しない電圧に維持され;iv)水がカソード104において還元されて水酸化物イオンおよび水素ガスを形成し;v)第1の陽イオン交換膜112をカソード電解質102と第3の電解質110との間に配置することによって、カソード電解質102中の水酸化物イオンが、カソード電解質102から隣接する第3の電解質110まで移動するのが防止され;vi)ナトリウムイオンが第3の電解質110からカソード電解質102に移動し、そこで水酸化物イオンと結合して、カソード電解質102中に水酸化ナトリウムを形成し;vii)塩化物イオンが第3の電解質110から陰イオン交換膜120を通過して第4の電解質116まで移動し、そこでアノード108から移動したプロトンと結合して塩酸を形成し;vii)第2の陽イオン交換膜118によって、アノード電解質106を第4の電解質116から分離する。
【0025】
種々の実施形態において、カソードにおいて得られる水素ガスは、アノードに誘導され、そこで水素ガスは酸化される。種々の実施形態において、カソード電解質中で生成した水酸化ナトリウムおよび第4の電解質中で生成した塩酸は、システムから絶えず除去され、一方、カソード電解質と第3の電解質中の塩化ナトリウムとは、絶えず水が補充されることで、システムの連続生成運転が維持される。別の実施形態において、本発明のシステムおよび方法は、他の操作方式、たとえば、バッチまたはセミバッチ流に適合している。
【0026】
別の一実施形態においては、二酸化炭素ガスをカソード電解質中に溶解させ、アノードとカソードとの間に3V未満の電圧を印加することによって、重炭酸イオンおよび/または炭酸イオンがカソード電解質中に生成される。二酸化炭素ガスは、カソード電解質中に溶解させることができるし、またはカソード電解質室122に接続された別個の二酸化炭素室152中で溶解させることで、溶液中に溶解した二酸化炭素をカソード電解質室に供給することもできる。この実施形態において、二酸化炭素がカソード電解質中に溶解するため、以下の3つの反応が起こる:
2HO+2e=H+2OH
(水がカソードにおいて還元される)
O+CO=HCO=H+HCO=H+CO2−
(電解質のpHに依存して、炭酸イオンおよび/または重炭酸イオンがカソード電解質中で形成される)、および
+OH→H
これらの反応はpHに依存するため、全体的なカソード反応は、カソード電解質のpHに依存して:
2HO+2CO+2e=H+2HCO
または HO+CO+2e=H+CO2−
または両方の反応の組み合わせのいずれかとなる。
【0027】
この実施形態において、図1を参照すると、カソード104とアノード108との間に3V未満の電圧を印加することによって、重炭酸イオンおよび/または炭酸イオンがカソード電解質102中で生成し、同時に:i)水素ガスがアノード108において酸化されてプロトンがアノード108において生成し;ii)アノード108において形成されたプロトンは、アノード108からアノード電解質106を介し、第2の陽イオン交換膜118を通過して、第4の電解質116まで移動することができ;iii)アノード108においてガスが発生しないように、アノード108とカソード104との間に電圧が印加され;iv)水素ガスがカソード104において生成し、場合によりこのガスをアノード108まで循環させ;v)第1の陽イオン交換膜112をカソード電解質102と第3の電解質110との間に配置することによって、カソード電解質102中で生成した炭酸イオンおよび/または重炭酸陰イオンが、隣接する第3の電解質110に移動するのが防止され、この陽イオン交換膜は、陰イオンのカソード電解質102からの移動を阻止するように選択され;vi)ナトリウムイオンが、第3の電解質110から、第1の陽イオン交換膜112を介して、カソード電解質102まで移動し;vii)カソード電解質102中で、ナトリウムイオンと炭酸イオンおよび/または重炭酸イオンとが結合して、炭酸ナトリウムおよび/または重炭酸ナトリウムをカソード電解質102中に形成し;viii)塩化物イオンが、第3の電解質110から、陰イオン交換膜120を通過して、第4の電解質116まで移動し;ix)第4の電解質116中で、塩化物イオンが、アノード電解質106から移動したプロトンと結合して塩酸を形成し;x)第2の陽イオン交換膜を第4の電解質116とアノード電解質106との間に配置することによって塩化物イオンの第4の電解質116からアノード電解質106への移動が防止され、この第2の陽イオン交換膜118は、陰イオンの、第4の電解質116からアノード電解質106への移動を阻止するように選択される。
【0028】
本発明のシステムのこの実施形態において、前述の水酸化物イオンを生成する実施形態と同様に、カソードにおいて生成した水素ガスは、場合によりアノードまで誘導され、そこで酸化されるか、またはそのガスは排出される。水素ガスが排出される実施形態においては、別の水素ガス源によって水素ガスがアノードに供給される。このシステムの種々の実施形態において、水酸化物イオンの生成と同様に、カソード電解質中で生成した炭酸イオンおよび/または重炭酸イオンは、システムから絶えず除去され、一方、カソード電解質および第3の電解質中の塩化ナトリウムには、絶えず水が補充されることで、システムの連続運転が維持される。種々の実施形態において、本発明のシステムおよび方法は、他の操作方式、たとえば、バッチまたはセミバッチ流に適合可能である。
【0029】
種々の実施形態において、当業者には明らかなように、アノードとカソードとの間の電圧は、アノード電解質およびカソード電解質のpH、ならびにこれらの電解質の間のpH差に依存する。したがって、種々の実施形態において、アノードとカソードとの間に印加される電圧が、3未満、2.9 2.8、2.7、2.6 2.5、2.4、2.3、2.2、2.1、2.0、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、または0.1V以下であり、同時に、アノード電解質とカソード電解質との間のpH差が、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14pH単位、またはそれを超え;同時に、アノード電解質のpHが1〜7pH単位を変動し、およびカソード電解質のpHが7〜14pH単位またはそれを超える値で変動する場合に、水酸化物イオン、炭酸イオン、および/または重炭酸イオンがカソードエレクトロライト中で生成される。
【0030】
種々の実施形態において、図1を参照すると、アノード電解質106と第4の電解質116との間に第2の陽イオン交換膜118を選択的に配置し、アノード108とカソード104との間に本発明の電圧を印加することによって、アノード108において水素ガスの酸化によって形成されたプロトンは、アノード電解質106中に移動し、そこからプロトンは第2の陽イオン交換膜118を介して第4の電解質116まで移動する。しかし、第4の電解質116は、陰イオン交換膜120によって第3の電解質110から分離されているので、第4の電解質116から第3の電解質110を介してカソードに向かうプロトンのさらなる移動は阻止され;したがって、プロトンは第4の電解質116中で蓄積して酸、たとえば塩酸を形成する。
【0031】
同様に、図1を参照すると、カソード電解質102と第3の電解質110との間に第1の陽イオン交換膜112を選択的に配置し、アノード108とカソード104との間に低電圧を印加することによって、水酸化物イオンまたは炭酸イオンまたは重炭酸イオンがカソード電解質102中で形成され、それらの電解質102から第3の電解質110への移動は第1の陽イオン交換膜112によって阻止される。したがって、水酸化物イオン、または炭酸イオン、または重炭酸イオンは、カソード電解質102中に含まれる。同時に、カソード104における水の還元からカソード104において形成される水素ガスは、排出されるか、またはアノードにおいてガスを酸化するためにアノードに誘導される。水素が排出される場合、別の外部の水素源が、水素ガスをアノードに供給するために使用される。
【0032】
種々の実施形態において、図1を参照すると、第1の陽イオン交換膜112は、第3の電解質110からカソード電解質102への陽イオンの移動を可能にし、陰イオン交換膜120は、第3の電解質110から第4の電解質116への陰イオンの移動を可能にするので、アノードとカソードとの間に電圧を印加することによって、陽イオン、たとえばナトリウムイオンは、第3の電解質110からカソード電解質102に移動し、陰イオン、たとえば塩化物イオンは、第3の電解質110から第4の電解質116に移動する。
【0033】
したがって、第3の電解質110に最初に塩化ナトリウムが投入される実施形態においては、ナトリウムイオンは、第3の電解質からカソード電解質102に移動して、カソード電解質102のpHに依存して水酸化ナトリウムまたは重炭酸ナトリウムまたは炭酸ナトリウムを形成する。同様に、塩化物イオンは、第3の電解質110から第4の電解質に移動して、アノード電解質106から移動するプロトンとともに塩酸148を形成する。したがって、種々の実施形態において、ナトリウムイオンおよび塩化物が除去された部分的に脱塩された水150が、第3の電解質110中で生成する。
【0034】
水素ガスが、アノードにおける酸化のために供給されない種々の実施形態においては、本発明のシステムおよび方法は、アノードにおいてガス、たとえば酸素または塩素を生成し、同時に、カソード電解質中に水酸化物イオン、重炭酸イオン、および炭酸イオンを生成し、カソードにおいて水素ガスを生成するように適合させることができる。別の実施形態と同様に、この実施形態において、本発明のシステムおよび方法は、第4の電解質中で酸を形成し、第3の電解質中で部分的に脱塩された水を形成し、同時に、アノードにおいてガス、たとえば酸素または塩素を形成するように適合させることができる。この実施形態において、しかし、水素ガスがアノードにおいて酸化されないので、システム中の電気化学反応を進行させるために、カソードとアノードとの間に一般により高い電圧が必要となる。
【0035】
種々の実施形態において、図1を参照すると、カソード104とアノード108との間に印加される本明細書に記載の電圧を使用すると、アノードにおいて形成され、アノード電解質106中に移動し、第2の陽イオン交換膜118を通過して第4の電解質116まで移動するプロトンによって、システムを流れる電解質の流れに依存して、アノード電解質106および第4の電解質116のpHを調整することができる。同時に、カソード電解質102中で形成される水酸化物イオン、重炭酸イオン、または炭酸イオンが、カソード電解質から第1の陽イオン交換膜を通過して移動するのが阻止されるので、システムを流れる電解質の流れに依存して、カソード電解質102のpHを調整することができる。したがって、種々の実施形態において、システムを流れる電解質の流れに依存して、カソード電解質102とアノード電解質106との間にpH差、たとえば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14pH単位、あるいはそれを超える差が得られる。同様に、プロトンがアノード電解質106から第4の電解質116に移動するため、システムを流れる電解質の流れに依存して、第4の電解質116とカソード電解質102との間にpH差、たとえば、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14pH単位あるいはそれを超える差が得られる。
【0036】
説明を目的とした、本発明のシステムおよび方法の特定の実施形態の以下の例示的な説明において、あるシステムが図1中のように構成され、ここで塩化ナトリウムの濃厚水溶液142が、第1の陽イオン交換膜112と陰イオン交換膜120との間の初期の第3の電解質110として使用される。またこのシステムにおいて、導電性の水あるいは低濃度の水酸化ナトリウム溶液または重炭酸ナトリウム溶液または炭酸ナトリウム溶液が、初期のカソード電解質102として使用され;このシステムにおいて、導電性の水がアノード電解質106として使用され;さらにこのシステムにおいて、第4の電解質116中で生成される低濃度の塩酸が初期の第4の電解質として使用される。
【0037】
したがって、このシステムにおいて、アノード108とカソード104との間に電圧を印加すると、ナトリウムイオンが第3の電解質110からカソード電解質102に移動し、塩化物イオンが第3の電解質から第4の電解質116に移動し;水酸化物イオン、あるいは炭酸イオンまたは重炭酸イオンがカソード電解質102中で生成し(二酸化炭素ガスが電解質に加えられるかどうかに依存する);水素ガスがカソード104において生成し;アノード108に供給される水素ガスはアノードにおいて酸化されてプロトンになり;プロトンは、アノード電解質106中に移動し、そこから第2の陽イオン交換膜118を通過して第4の電解質116まで移動し、陰イオン交換膜120によって第3の電解質110へのさらなる移動は阻止されるため、プロトンはそこで蓄積される。
【0038】
したがって、種々の実施形態において、このシステム中のアノードとカソードとの間に電圧を印加すると、水酸化ナトリウムがカソード電解質中で生成し;塩酸が第4の電解質中で生成し;第3の電解質中の塩化ナトリウム濃度が低下し;水素ガスがアノードにおいて酸化され;水素ガスがカソードにおいて発生する。
【0039】
二酸化炭素ガスがカソード電解質中に溶解されるこのシステムの一実施形態においては、本発明のシステムおよび方法は、カソード電解質中で重炭酸イオンおよび/または炭酸イオンをさらに生成し;したがって、この実施形態においては、カソード電解質のpHに依存して、重炭酸ナトリウムおよび/または炭酸ナトリウムがカソード電解質中で生成する。この実施形態においては、二酸化炭素がカソード電解質中に溶解されない実施形態と同様に、本発明のシステムおよび方法では、塩酸が第4の電解質中で生成し;第3の電解質中の塩化ナトリウム濃度が低下し;水素ガスがアノードにおいて酸化され;水素ガスがアノードにおいて発生する。
【0040】
当業者には明らかなように、本発明のシステムおよび方法は、第3の電解質としてのこの塩化ナトリウム溶液の代表的な使用に限定されるものではなく、第3の電解質中での同等のイオン性塩溶液、たとえば、硫酸カリウムの使用に適合させることもできる。したがって、たとえば、硫酸カリウムが使用される場合、硫酸が第4の電解質中で生成し、水酸化カリウム、重炭酸カリウム、および/または炭酸カリウムがカソード電解質中で生成する。理解できるように、硫酸カリウムを第3の電解質として使用する本発明のシステムおよび方法では、アノードに供給される水素ガスが酸化されることによってアノードにおいてプロトンが生成し;水素ガスがカソードにおいて形成され;第3の電解質はカリウムイオンおよび硫酸イオンが欠乏する。二酸化炭素ガスがカソード電解質中に溶解される実施形態においては、硫酸カリウムが第3の電解質として使用される本発明のシステムおよび方法では、重炭酸イオンおよび炭酸イオンがカソード電解質中で生成する。したがって、この同等のシステムにおいては、カソード電解質のpHに依存して、水酸化カリウム、重炭酸カリウム、および/または炭酸カリウムがカソード電解質中に生成する。本発明のシステム中の電解質の生成に使用可能な他の電解質としては、海水、汽水、およびブラインが挙げられる。したがって、このような同等のシステムおよび方法は、本発明のシステムおよび方法の範囲内にある。
【0041】
これも当業者には明らかなように、二酸化炭素がカソード電解質中に溶解して重炭酸陰イオンおよび炭酸陰イオンを生成する実施形態において、水中で反応溶解およびイオン化する他の同等のガスでも同等の結果が得られるであろう。したがって、たとえば、カソード電解質中に可溶性である二酸化硫黄および窒素酸化物類などの酸性ガスによって、カソード電解質中に同等の陰イオンが生成されるであろう。したがって、同等のガスが第3の電解質中に溶解して、二酸化炭素の場合と同様に同等の陰イオンを生成する範囲において、このようなシステムおよび方法もまた本発明のシステムおよび方法の範囲内である。
【0042】
種々の実施形態において、本発明のシステムおよび方法は、一部またはすべてのカソード電解質をカソード室の流出流から流入流に抜き取るのに適合している。また、本発明のシステムおよび方法は、一部またはすべての第4の電解質を第4の電解質の流出流から流入流に抜き取るのに適合している。種々の実施形態において、本発明のシステムおよび方法は、カソードで発生した水素ガスをアノードで酸化するために誘導する場合または誘導しない場合、ならびにシステム中の電解質の抜き取りおよび補充を行う場合または行わない場合の、バッチ、セミバッチ、または連続流操作に適合している。
【0043】
種々の実施形態において、本発明のシステムは、水素ガスをカソードからアノードに循環させるための水素ガス移送システムを含む。別の一実施形態において、本発明のシステムは、二酸化炭素ガスをカソード電解質中に溶解させるための二酸化炭素送出システムを含む。種々の実施形態において、本発明のシステムは、ガス、たとえば二酸化炭素をカソード電解質に供給するための燃焼ガスを含む産業排ガス流に操作可能に接続される。種々の実施形態において、排ガス流は、化石燃料発電プラント、セメント製造プラント、およびその他の工業プラントからの燃焼ガスを含む。種々の実施形態において、排ガスは、カソード電解質中に溶解して陰イオンを形成する酸性ガス、たとえば、窒素酸化物類(亜酸化窒素、酸化窒素)および硫黄ガス類(二酸化硫黄、硫化水素)を含み、このことは、二酸化炭素がカソード電解質中に溶解する場合に重炭酸イオンおよび炭酸イオンを生成するのと類似している。
【0044】
図1を参照すると、一実施形態において、システム100は:カソード104に接触するカソード電解質102である第1の電解質;アノード108に接触するアノード電解質106である第2の電解質;第1の陽イオン交換膜112によってカソード電解質102から分離された第3の電解質110;第2の陽イオン交換膜118によってアノード電解質106から分離された第4の電解質116;第3の電解質110と第4の電解質116とを分離する第3のイオン交換膜120を含む。種々の実施形態において、第1のイオン交換膜は陽イオン交換膜を含み;第2のイオン交換膜は陽イオン交換膜を含み;第3のイオン交換膜は陰イオン交換膜を含む。
【0045】
図1中に示されるシステムにおいて、カソード電解質102はカソード104に流体接触し、どちらも第1の陽イオン交換膜112および第1の側壁124によって画定される第1のセル122中に収容される。同様に、アノード電解質106はアノード108に流体接触し、どちらも第2の陽イオン交換膜118および第2の側壁128によって画定される第2のセル126中に収容される。第3の電解質110を収容する第3のセル130は、第1の陽イオン交換膜112および陰イオン交換膜120によって画定され;第4の電解質116を収容する第4のセル132は、陰イオン交換膜120および第2の陽イオン交換膜118によって画定される。
【0046】
また、図1を参照すると、種々の実施形態におけるシステム100は、アノード108とカソード104との間に電圧を印加することができる電圧源134を含む。種々の実施形態において、システム中のカソードおよびアノードは、ニッケルまたは白金などの非反応性導電性材料で構成される。本発明のシステムは、カソード104において発生した水素ガスを、アノード108における酸化のために循環させるのに適合した水素ガス循環システム136を含む。種々の実施形態において、水素ガスが外部水素源(図示せず)に操作可能に接続されることで、水素ガスがアノードに供給され、たとえばカソードからの水素供給では不十分である場合に運転が開始される。
【0047】
種々の実施形態において、本発明のシステムは、カソード電解質を収容する第1のセル122からカソード電解質102の全てまたは一部を抜き取るのに適合したカソード電解質抜き取りおよび補充システム138を含む。種々の実施形態において、本発明のシステムは、第4の電解質を収容する第4のセル132に対して第4の電解質116のすべてまたは一部の抜き取りおよび補充を行うための第4の電解質抜き取りおよび補充システム140を含む。種々の実施形態において、本発明のシステムは、塩溶液142、たとえば濃厚塩化ナトリウムを第3の電解質セル130に供給するための塩供給システムを含む。種々の実施形態において、本発明のシステムは、ガス、たとえば二酸化炭素をカソード電解質102に供給するためのガス供給システム144を含む。種々の実施形態において、本発明のシステムは、流出流中、または流入流中、またはそれらの間に配置された1つ以上の室中のカソード中にガスを溶解させることによって、二酸化炭素をカソード電解質に供給する二酸化炭素混合システム152を含む。種々の実施形態において、本発明のシステムは、流体をセル(122、126、130、132)中に導入するための入口(図示せず)、およびセルから流体を取り出すための出口(図示せず)を含む。
【0048】
種々の運転方式、たとえば、連続流、バッチ流、または混合方式において、塩化ナトリウム溶液142が投入される場合の本発明のシステムによって、水酸化ナトリウム溶液146がカソード電解質102中で生成され、塩酸148が第4の電解質116中で生成され、陽イオンおよび陰イオンの含有率が減少した部分的に脱塩された水溶液150が生成される。種々の実施形態において、部分的に脱塩された水溶液150は、脱塩水処理プラント(図示せず)への給水に利用されて、たとえば、溶液中に存在する他のイオンを除去するためにさらに処理される。別の実施形態において、水溶液150は、第1のセル122、第2のセル126、第3のセル130、および第4のセル132に投入される初期電解質溶液のために電解質とともに使用される。
【0049】
種々の実施形態および図1を参照すれば理解できるように:i)カソード電解質102は第1の陽イオン交換膜112によって第3の電解質110から分離しており;ii)第4の電解質116は第2の陽イオン交換膜118によってアノード電解質106から分離しており;iii)第4の電解質116は陰イオン交換膜120によって第3の電解質110から分離しているが;にもかかわらず、電圧134がアノード108とカソード104との間に印加されると、電解質中の負に帯電した陰イオンは正のアノード108に向かって移動しようとし、正に帯電した陽イオンは、第1の陽イオン交換膜112、第2の陽イオン交換膜118、および陰イオン交換膜120を介して負のカソード104に向かって移動しようとする。
【0050】
たとえば、図1を参照すると、カソード電解質102およびアノード電解質106が、それぞれ少量の水酸化ナトリウムおよび塩酸を電解質に加えることによって最初に導電性にされており;第4の電解質116が、少量の塩酸を溶液に加えることによって最初に導電性にされた水溶液であり;最初に塩化ナトリウムの濃厚溶液が第3の電解質110中に入れられ;最初に水素ガス流136が、アノード電解質106を介して、アノード108における酸化のためにアノード108まで誘導される場合、アノード108とカソード104との間に電圧134を印加すると、以下に示すように、アノードに供給された水素ガス136が酸化されることによってプロトンがアノード108において形成され、同時に、水が還元されることによって水酸化物イオンおよび水素ガス138がカソード電解質116において形成される:
=2H+2e (アノード、酸化反応)
2HO+2e=H+2OH (カソード、還元反応)
【0051】
当業者には明らかなように、図1を参照すると、アノード108に供給された水素ガス136からプロトンがアノード108において形成され;酸素などのガスはアノード108において形成されず;水がカソード電解質中で電気分解されて水酸化物イオンおよび水素ガス138がカソード104において形成されるため、アノード108とカソード104との間に電圧を印加すると、本発明のシステムは、水酸化物イオンをカソード電解質102で生成し、プロトンをアノード電解質106中で生成する。
【0052】
さらに、当業者には明らかなように、本発明のシステムにおいて、アノードにおいてガスが形成されないため、本発明のシステムは、3V未満がアノードとカソードとの間に印加される場合に、水酸化物イオンをカソード電解質中で生成し、水素ガスをアノードにおいて生成し、このことは、ガス、たとえば塩素をアノードにおいて発生する従来のシステムにおいて必要なより高い電圧とは対照的である。たとえば、種々の実施形態において、2.0未満、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1V以下がアノードとカソードとの間に印加される場合に、水酸化物イオンが生成する。
【0053】
さらに、当業者にはあきらかなように、図1を参照すると、アノード108とカソード104との間に電圧を印加すると、アノードにおいて形成された正に帯電したプロトンは、アノード電解質106を介してカソード104の方へ移動しようとし、一方、カソード104において形成された負に帯電した水酸化物イオンは、カソード電解質102を介してアノード108の方へ移動しようとする。
【0054】
しかし、図1中に示されるように、カソード電解質102中の水酸化物イオンに関して、第1の陽イオン交換膜112は、第1のセル122内のカソード電解質102を含有し、第1の陽イオン交換膜112によって、陰イオンのカソード電解質102から第3の電解質110への移動が防止されるため、カソード電解質102において生成した水酸化物イオンは、第1の陽イオン交換膜112を介したカソード電解質からの移動が妨害される。したがって、アノードとカソードとの間に電圧134を印加すると、カソードにおいて生成した水酸化物イオンはカソード電解質102中に含まれる。したがって、カソード電解質を出入りする流体の流量に依存して、カソード電解質のpHが調整され、たとえば、pHは増加したり、減少したり、または同じ値を維持したりすることができる。
【0055】
同様に、アノード108において生成したプロトンに関して、カソード104とアノード108との間に電圧134を印加すると、プロトンはアノード電解質106に入って、第2の陽イオン交換膜118を介して第4の電解質まで移動する。しかし、第4の電解質116と第3の電解質110との間の陰イオン交換膜120が、第4の電解質116から第3の電解質116への陽イオンの移動を阻止するため、第4の電解質116中のプロトンの第4の電解質から第3の電解質110への移動が妨害される。したがって、アノードとカソードとの間に電圧134を印加すると、アノードにおいて生成したプロトンは第4の電解質116中に含まれる。したがって、第4の電解質を出入りする流体の流量に依存して、第4の電解質のpHが調整され、たとえば、pHは増加したり、減少したり、または同じ値を維持したりすることができる。
【0056】
ナトリウムイオンおよび塩化物イオンの濃厚溶液が最初に投入され、陰イオン交換膜120および第1の陽イオン交換膜112によって第3のセル130中に収容される第3の電解質110に関して、アノード108とカソード104との間に電圧を印加すると、第3の電解質110中の陰イオン、たとえば塩化物イオンは、アノード108の方へ移動しようとし、一方、第3の電解質中の陽イオン、たとえばナトリウムイオンはカソード104の方へ移動しようとする。陰イオン交換膜120によって、陰イオンの第3の電解質110から第4の電解質116への移動が可能となるので、第3の電解質110中に存在する塩化物イオンは第4の電解質まで移動し、そこで、アノードからのプロトンとともに酸、たとえば塩酸を形成する。
【0057】
さらに、第1の陽イオン交換膜112によって、陽イオンの第3の電解質110からカソード電解質102への移動が可能となるので、第3の電解質110中に存在するナトリウムイオンはカソード電解質102まで移動し、そこで、カソード104において生成した水酸化物イオンとともに水酸化ナトリウムを形成する。したがって、図1中に示されるように、アノード108とカソード104との間に電圧を印加すると、陽イオン、たとえばナトリウムイオン、および陰イオン、たとえば塩化物イオンは、第3の電解質110から移動して、それによって脱塩水が第3の電解質中に形成される。
【0058】
種々の実施形態において、図1に示されるように、カソード電解質中で水が還元されることによって、水素ガス120がカソード104において発生する。このガスは、カソードから排出することができるし、または、本明細書に記載されるように、アノード108まで誘導して、そこで酸化してプロトンにすることもできる。
【0059】
別の実施形態において、所望のイオン種に依存して、別の反応物質をカソード電解質中に溶解させて所望のイオンを生成することができる。したがって、たとえば、種々の実施形態において、二酸化炭素をカソード電解質に加えることで、炭酸イオンおよび重炭酸イオンが生成される。二酸化炭素ガスは、電解質中に直接バブリングすることによって電解質に加えることができるし;あるいは、二酸化炭素ガスをカソード電解質中に溶解させることができるし、または前述したように、導管によってカソード室に接続した別の室152中で溶解させて、溶解した二酸化炭素を含有する溶液をカソード室中に供給することもできる。
【0060】
二酸化炭素がカソード電解質中で溶解される実施形態においては、前述したように、図1を参照すると、アノード108とカソード104との間に電圧を印加すると、以下のようにシステム100によって、水酸化物イオン、重炭酸イオン、炭酸イオン、および水素ガスが生成される:
カソード104において、以下のように水は還元されて水酸化物イオンおよび水素ガスになる:
2HO+2e=H+2OH(水がカソードにおいて還元される)。
カソード電解質102中で、以下のように、二酸化炭素ガスが溶解することで、電解質のpHに依存して、炭酸、プロトン、重炭酸イオン、および炭酸イオンを形成する:
O+CO=HCO=H+HCO=2H++CO2−
二酸化炭素の溶解、カソード電解質102中の重炭酸イオンおよび炭酸イオンの濃度はpHに依存するので、第1の(カソード)セル122中の全体的な反応は、カソード電解質102のpHに依存して:
シナリオ1:2HO+2CO+2e=H+2HCO;または
シナリオ2:HO+CO+2e=H+CO2−
またはこれらの組み合わせのいずれかであり、以下のカーボネートのスペシエーション図に示される通りである:
【0061】
【表1】

いずれのシナリオの場合の、全体的なセルの電位は式:
cell=−ΔG/nF
による反応のギブスエネルギー変化によって求めることができる。または、標準温度および圧力条件において:
E°cell=−ΔG°/nF
であり、式中、Ecellはセル電圧であり、ΔGは反応のギブスエネルギーであり、nは移動した電子の数であり、Fはファラデー定数(96485J/Vmol)である。これらの反応のそれぞれのEcellは、以下のようにシナリオ1の場合に示されるようにネルンストの式に基づいてpHに依存する:
【0062】
【表2】

いずれのシナリオの場合も、全体のセル電位は、各半電池反応の場合のネルンストの式の組み合わせによって求めることができ:
E=E−RTln(Q)/nF
(式中、Eは標準還元電位であり、Rは一般ガス定数であり(8.314J/molK)、Tは絶対温度であり、nは半電池反応に関与する電子数であり、Fはファラデー定数(96485J/Vmol)であり、Qは反応商である)、そのため:
total=Ecathode+Eanode
となる。以下のように:
=2H+2e
アノードにおいて水素が酸化されてプロトンとなる場合、Eは0.00Vであり、nは2であり、QはHの活性の2乗であるので:
anode=−0.059pH
となり、式中、pHはアノード電解質のpHである。
以下のように:
2HO+2e=H+2OH
カソードにおいて水が還元されて水酸化物イオンおよび水素ガスになる場合、Eは−0.83Vであり、nは2であり、QはOHの活性の2乗であるので:
cathode=−0.059pH
となり、式中、pHはカソード電解質のpHである。
【0063】
いずれのシナリオの場合も、カソード反応およびアノード反応のEはアノード電解質およびカソード電解質のpHとともに変動する。したがって、シナリオ1の場合、酸性環境で起こるアノード反応がpH0である場合、その反応のEは半電池反応で0Vとなる。カソード反応の場合、重炭酸イオンの生成がpH7で起こる場合、理論的なEは、半電池反応で7×(0.059V)=0.413Vとなり、ここで負のEは、反応が進行する半電池または全電池に投入する必要があるエネルギーを意味する。したがって、アノードpHが0でありカソードpHが7である場合、全体のセル電位は0.413Vとなり:
total=0.059(pH−pH)=0.059ΔpH
である。
【0064】
炭酸イオンが生成するシナリオ2の場合、アノードpHが0でありカソードpHが10であると、これはEが0.59Vであることを表している。
【0065】
したがって、種々の実施形態において、COがカソード電解質中に誘導される効果(カソード電解質のpHを減少させるため、重炭酸イオンおよび/または炭酸イオンをカソード電解質中で生成するため)は、水酸化物、カーボネート、およびバイカーボネートをカソード電解質中で生成するためにシステムのアノードとカソードとの間に必要な電圧が低下することである。シナリオ1において、カソード電解質を14以上のpHまで増加させることができると、アノード半電池電位(細い水平の破線で示される)とカソード半電池電位(太いベタの傾斜した線で表される)との間の差が0.83Vまで増加すること分かるであろう。COの添加および水による希釈などの他の介入を行わないセルの動作時間が長くなると、必要なセル電位は増加し続ける。したがって、カソードpHを7以上で電気化学セルを動作させると、大きくエネルギーが節約されることが分かる。
【0066】
したがって、当業者には理解できるように、カソード電解質中とアノード電解質中とでpH値が異なる場合、アノードとカソードとの間に印加される電圧が3未満、2.9 2.8、2.7、2.6 2.5、2.4、2.3、2.2、2.1、2.0、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、または0.1V以下であり、アノード電解質とカソード電解質との間のpH差が0を超える、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、またはそれを超えるときに、水酸化物イオン、炭酸イオン、および/または重炭酸イオンがカソード電解質中で生成される。
【0067】
また、当業者には明らかなように、重炭酸イオンおよび/または炭酸イオンが生成することが望ましい実施形態において、図1中に示されるシステムは、水酸化物イオンの生成に関して前述したように、二酸化炭素をカソード電解質102中に溶解させ、3V未満、または2.5V未満、または2V未満、または1.5V未満の電圧をカソード104とアノード108との間に印加することによって、重炭酸イオンおよび/または炭酸イオンをカソード電解質102中で生成するのに適合可能であり、ここで同時に:i)水素ガスがアノード108において酸化されて、プロトンをアノード108において生成し;ii)アノード108において形成されたプロトンは、アノード108から、アノード電解質106を介し、第2の陽イオン交換膜118を通過して、第4の電解質116まで移動することができ;iii)アノード108において形成されないように、アノード108とカソード104との間に電圧が印加され;iv)水素ガスがカソード104において生成され、場合によりそのガスをアノード108まで循環し;v)第1の陽イオン交換膜112をカソード電解質102と第3の電解質110との間に配置することによって、カソード電解質102中で生成した炭酸イオンおよび/または重炭酸陰イオンが、隣接する第3の電解質110まで移動するのが防止され、ここで陽イオン交換膜は、陰イオンがカソード電解質102から移動するのを阻止するように選択され;vi)ナトリウムイオンが、第3の電解質110から、第1の陽イオン交換膜112を介して、カソード電解質102まで移動し;vii)カソード電解質102中、ナトリウムイオンが炭酸イオンおよび/または重炭酸イオンと結合して、炭酸ナトリウムおよび/または重炭酸ナトリウムをカソード電解質102中に形成し;viii)塩化物イオンが第3の電解質110から、陰イオン交換膜120を介して、第4の電解質116まで移動し;ix)第4の電解質116中、塩化物イオンが、アノード電解質106から移動してきたプロトンと結合して、塩酸を形成し;x)第2の陽イオン交換膜を第4の電解質116とアノード電解質106との間に配置することによって、塩化物イオンが第4の電解質116からアノード電解質106まで移動するのが防止され、ここで第2の陽イオン交換膜118は、陰イオンが第4の電解質116からアノード電解質106まで移動するのを阻止するように選択される。
【0068】
したがって、炭酸イオン/重炭酸イオンのカソード電解質102中での生成において、前述のような二酸化炭素をカソード電解質に加えずに水酸化物イオンがカソードエレクトロライト中で生成する実施形態と同様に、アノード108、第1の陽イオン交換膜118、陰イオン交換膜120、第1の陽イオン交換膜112、アノード電解質、第4の電解質、および第3の電解質は機能的に同一である。
【0069】
水酸化物イオンの生成と同様に、カーボネートおよびまたはバイカーボネートの生成において、カソード104において生成した水素ガス136は、場合によりアノード108における水素ガスの酸化のために誘導され;塩化ナトリウムが欠乏した脱塩水150が第3の電解質110から得られ、塩酸148が第4の電解質中で生成される。また、種々の実施形態において、水酸化物イオンの生成と同様に、カソード電解質中で生成された炭酸イオンまたは重炭酸イオンは、システムから絶えず除去することができ、同時に、システムの連続運転を維持するために、カソード電解質中の水および第3の電解質中の塩化ナトリウムが絶えず補充される。種々の実施形態において、本発明のシステムおよび方法は、他の運転方式、たとえば、バッチまたはセミバッチ流に適合させることができる。
【0070】
当業者には明らかなように、種々の実施形態において、本発明のシステムは、バッチ方式、セミバッチ方式、連続流方式などの種々の生成方式において、カソード電解質中で生成した水酸化ナトリウムの一部を抜き取る、または第4の電解質中で生成した酸の全てまたは一部を抜き取る、またはカソードにおいて生成した水素ガスを、水素ガスを酸化できるアノードまで案内するという選択を有してまたは有さずに、運転するよう構成することができる。
【0071】
種々の実施形態において、アノードとカソードとの間に印加される電圧が3未満、2.9以下、2.8以下、2.7以下、2.6以下、2.5以下、2.4以下、2.3以下、2.2以下、2.1以下、2.0以下、1.9以下、1.8以下、1.7以下、1.6以下、1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下、1.0以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下、または0.1V以下である場合に、水酸化物イオン、重炭酸イオン、および/または炭酸イオンの溶液がカソード電解質中で生成する。
【0072】
別の一実施形態において、本発明のシステムおよび方法は、ガス、たとえば、酸素または塩素をアノードにおいて形成でき、一方、水酸化物イオン、炭酸イオン、および重炭酸イオンがカソード電解質中で生成し、水素ガスがカソードにおいて発生するように適合可能である。しかし、この実施形態において、水素ガスはアノードに供給されない。この実施形態では、プロトンがアノードにおいて生成し、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、および/または重炭酸ナトリウムがカソード電解質中で生成するが、一般に、アノードではガスが形成されないが、その代わりにアノードにおいて水素ガスが酸化される実施形態と比較して、アノードとカソードとの間の電圧が高くなる。
【0073】
種々の実施形態において、図1を参照すると、使用可能な陰イオン交換膜120としては、従来の陰イオン交換イオン交換膜が挙げられる。好ましくは、このような膜は、酸性および/または塩基性の電解質溶液中、約0℃〜約100℃以上の範囲内の温度において使用可能となるべきである。同様に、第1の陽イオン交換膜112および第2の陽イオン交換膜118は、従来の陽イオンイオン交換膜から選択することができ、酸性および/または塩基性の電解質溶液中約0℃〜約100℃以上の範囲内の温度において使用可能となるべきである。
【0074】
好適な陽イオン交換膜の例としては、たとえば、東京の旭化成より入手可能なTeflon(商標)系の膜が挙げられる。一般に、代表的な陽イオン交換膜は、強塩基性溶液中約0℃〜約120℃以上の温度範囲で使用可能となるべきである。しかし、図1を参照すると、理解できるように、本発明のシステムは低電圧および低温で運転されるため、他の低コストの炭化水素系陽イオン交換膜をも利用することができる。このような炭化水素系膜は、たとえばGlen Rock(NJ,USA)のMembrane Internationalより入手可能である。
【0075】
同様に、典型的な炭化水素系陰イオン交換膜も、Glen Rock(NJ,USA)のMembrane Internationalより入手可能である。一般に、このような陰イオン交換膜は、酸性電解質溶液中約0℃〜約100℃以上の範囲内の温度で高イオン選択性、低イオン抵抗性、高破裂強度、および高安定性を示すべきである。
【0076】
当業者には明らかなように、陽イオン交換膜は、2つの隣接する電解質の間での陽イオンの移動に対して選択的であるので、陽イオン交換膜が、図1に示されるような電気化学システム中の2つの電解質の間に配置される場合、この膜によって、カソードの方向での一方の電解質から隣接する電解質への陽イオンの移動が可能となる。したがって、たとえば、図1を参照すると、カソード104とアノード108との間に電圧を印加すると、陽イオン、たとえばナトリウムイオンは、第3の電解質110から第1の陽イオン交換膜112を通過してカソード電解質102まで移動する。また明らかなように、同時に、陽イオンに対して選択的である第1の陽イオン交換膜112は、アノード108の方向での陰イオンのカソード電解質から第3の電解質110への移動を阻止する。
【0077】
また、当業者には明らかなように、陰イオン交換膜は、2つの隣接する電解質の間での陰イオンの移動に対して選択的であるので、陰イオン交換膜が、図1に示されるような電気化学システム中の2つの電解質の間に配置される場合、この膜によって、アノードの方向での一方の電解質から隣接する電解質への陰イオンの移動が可能となる。
【0078】
したがって、たとえば、図1を参照すると、カソード104とアノード108との間に電圧を印加すると、陰イオン、たとえば塩化物イオンは、第3の電解質110から陰イオン交換膜120を通過して第4の電解質116まで移動する。また明らかなように、同時に、陰イオンに対して選択的である陰イオン交換膜120は、カソード104の方向での陽イオンの第4の電解質116から第3の電解質110への移動を阻止する。
【0079】
図1および2を参照すると、一実施形態における方法200は、たとえば第1の電解質を配置し、アノードに接触するアノード電解質である第2の電解質を配置するステップ202と;たとえば、第1の陽イオン交換膜によってカソード電解質から分離されるように第3の電解質を配置するステップ204と;たとえば、陰イオン交換膜によって第3の電解質から分離され、第2の陽イオン交換膜によってアノード電解質から分離されるように第4の電解質を配置するステップ206と;たとえば、アノードとカソードとの間に電圧を印加することによって水酸化物イオンをカソード電解質中に形成するステップ208とを含む。種々の実施形態において、アノードとカソードとの間に印加される電圧が、3以下、2.9以下、2.8以下、2.7以下、2.6以下、2.5以下、2.4以下、2.3以下、2.2以下、2.1以下、2.0以下、1.9以下、1.8以下、1.7以下、1.6以下、1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.1以下、1.0以下、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下、または0.1V以下であり、水素ガスがアノードに供給され、そこで酸化されてプロトンとなる場合に、方法200によってアノードにおいてガスが形成されない。当業者には明らかなように、アノードにおいてガスが形成されず、アノードにおいて酸化するためにアノードに水素ガスを供給し、システム中の抵抗のその他の制御を行うことによって、本発明のより低い電圧で、水酸化物イオンをカソード電解質中で生成することができる。
【0080】
種々の実施形態において、方法200は、たとえば、二酸化炭素144ガスをカソード電解質102中まで誘導するステップ;たとえば、カソード電解質をカソード104に接触させて配置する前または後に二酸化炭素ガス144をカソード電解質中まで誘導するステップ;たとえば、カソード104とアノード108との間に3V未満、または2V未満、または1.5V未満、または1V未満、または0.5V未満の電圧134を印加するステップ;たとえば、水素ガス136をカソードにおいて形成するステップ;たとえば、アノード108において水素を形成し酸化してプロトンを形成するステップ;たとえば、3V未満、または2V未満、または1.5V未満、または1V未満、または0.5V未満の電圧をアノードとカソードとの間に印加することによって、アノードにおいてガスを形成することなく、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14pH単位、またはそれを超えるpH差をアノード電解質とカソード電解質との間に生じさせるステップ;3V以下、または2V未満、または1.5V未満、または1.0V未満、または0.5V未満の電圧をアノードとカソードとの間に印加することによって、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14pH単位、またはそれを超える間のpH差を第4の電解質116とカソード電解質102との間に生じさせるステップ;たとえば、水酸化物イオン、重炭酸イオン、炭酸イオン、および/またはそれらの組み合わせをカソード電解質102中に形成するステップ;たとえば、水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、または炭酸ナトリウムをカソード電解質102中に形成するステップ;たとえば、プロトンを、アノード電解質106から第2の陽イオン交換膜118を通過して第4の電解質116まで移動させるステップ;たとえば、陰イオンを、第3の電解質110から陰イオン交換膜120を通過して第4の電解質116まで移動させるステップのステップ;たとえば、塩化物イオンを、第3の電解質110から陰イオン交換膜120を通過して第4の電解質116まで移動させるステップ;たとえば、酸148を第4の電解質中に形成するステップ;たとえば、塩酸148を第4の電解質中に形成するステップ;たとえば、陽イオンを、第3の電解質110から第1の陽イオン交換膜112を通過してカソード104まで移動させるステップ;たとえば、ナトリウムイオンを、第3の電解質110から第1の陽イオン交換膜112を通過してカソード電解質102まで移動させるステップ;たとえば、カソード104において形成された水素ガスを、アノード108におけるガスの酸化のために誘導するステップ;たとえば、流出流を介してカソード電解質102を除去し、カソード電解質への流入流を介してカソード電解質を補充するステップ;たとえば、流出流を介して第4のカソード電解質116を除去し、第4の電解質の流入流を介して第4の電解質を補充するステップをさらに含む。
【0081】
図3および1を参照すると、別の一実施形態において、方法300は、たとえば、カソード104に接触させてカソード電解質102を配置し、アノード108に接触させてアノード電解質106を配置する302のステップ;たとえば、第1の陽イオン交換膜112によってカソード電解質102から分離するように第3の電解質110を配置するステップ304;たとえば、陰イオン交換膜120によって第3の電解質110から分離し、第2の陽イオン交換膜118によってアノード電解質106から分離するように第4の電解質116を配置するステップ306;およびたとえば、アノードとカソードとの間に電圧を印加することによって水酸化物イオンをカソード電解質102中に形成するステップ308を含む。
【0082】
種々の実施形態において、方法300は、方法200と同様に、アノードとカソードとの間に印加される電圧が3未満、2.9、2.8、2.7、2.6、2.5、2.4、2.3、2.2、2.1、2.0、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、または0.1V以下であり、水素ガスがアノードに供給され、そこで酸化されてプロトンとなる場合に、アノード108においてガスを形成しない。当業者には明らかなように、ガスがアノードにおいて形成されず、アノードにおける酸化のために水素ガスがアノードに供給されることによって、本発明の電圧で、水酸化物イオンがカソード電解質中に生成される。種々の実施形態において、図1のシステムととともに方法300は:たとえば、ガス、たとえば、酸素または塩素がアノードにおいて形成されるのが防止されるように、アノード108とカソード104との間に電圧を印加するステップ;たとえば、重炭酸イオン、炭酸イオン、または重炭酸イオンと炭酸イオンとの混合物をカソード電解質102中に形成するステップ;たとえば、アノード108に水素ガスを供給して酸化させるステップ;3、2.9、2.8、2.7、2.6、2.5、2.4、2.3、2.2、2.1、2.0、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、または0.1V以下の電圧をカソードとアノードとの間に印加するステップ;たとえば、水素ガスをカソード104において形成するステップ;たとえば、水素ガスをアノードにおいて酸化してプロトンをアノードにおいて形成するステップ;たとえば、ガスをアノードにおいて形成させずに、1、2、3、4、、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14pH単位、またはそれを超えるpH差をアノード電解質とカソード電解質との間に生じさせるステップ;たとえば、ガスをアノードにおいて形成させずに、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14pH単位、またはそれを超えるpH差のpH勾配を第4の電解質とカソード電解質との間に生じさせるステップ;たとえば、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、または炭酸ナトリウムと重炭酸ナトリウムとの混合物をカソード電解質102中に形成するステップ;たとえば、プロトンを、アノード電解質106から第2の陽イオン交換膜118を通過して第4の電解質116まで移動させるステップ;陰イオンを、第3の電解質110から陰イオン交換膜を通過して第4の電解質116まで移動させるステップ;たとえば、塩化物イオンを、第3の電解質110から陰イオン交換膜120を通過して第4の電解質116まで移動させるステップ;たとえば、酸148を第4の電解質中に形成するステップ;たとえば、塩酸148を第4の電解質中に形成するステップ;たとえば、陽イオンを、第3の電解質110から第1の陽イオン交換膜112を通過してカソード電解質102まで移動させるステップ;たとえば、ナトリウムイオンを、第3の電解質110から第1の陽イオン交換膜112を通過してカソード電解質102まで移動させるステップ;たとえば、カソード104において形成された水素ガス136を、アノード108における酸化のために循環させるステップ;たとえば、カソード電解質102の少なくとも一部を、カソード電解質の流出流から流入流に循環させるステップ;およびたとえば、第4の電解質116の一部を流出流から流入流に循環させるステップをさらに含む。
【0083】
種々の実施形態において、アノードとカソードとの間に印加される電圧が3.0未満、2.9、2.8、2.7、2.6、2.5、2.4、2.3、2.2、2.1、2.0、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1V以下であり、ガスがアノードにおいて形成されない場合に、重炭酸イオンおよび炭酸イオンが生成する。種々の実施形態において、本発明の方法は、カソード電解質および第4の電解質中の酸の少なくとも一部の抜き取りおよび補充を行って、バッチ、セミバッチ、または連続の運転方式のシステムに戻すのに適合している。
【0084】
図1を参照すると、電圧がアノードとカソードとの間に印加されると、水酸化物イオン、あるいは炭酸イオンおよび/または重炭酸イオンがカソード電解質中で形成され、その結果としてカソード電解質のpHが調整される。一実施形態において、約0.1V以下、0.2V以下.0.4V以下、0.6V以下、0.8V以下、1.0V以下、1.5V以下、または2.0V以下の電圧、たとえば、0.8V以下の電圧がアノードとカソードとの間に印加される場合に、カソード電解質溶液のpHが増加し;別の一実施形態において、0.01〜2.5V、または0.01V〜2.0V、または0.1V〜2.0V、または0.1〜2.0V、または0.1V〜1.5V、または0.1V〜1.0V、または0.1V〜0.8V、または0.1V〜0.6V、または0.1V〜0.4V、または0.1V〜0.2V、または0.01V〜1.5V、または0.01V〜1.0V、または0.01V〜0.8V、または0.01V〜0.6V、または0.01V〜0.4V、または0.01V〜0.2V、または0.01V〜0.1Vの電圧、たとえば、0.1V〜2.0Vの電圧がアノードとカソードとの間に印加される場合に、カソード電解質のpHが増加し;さらに別の一実施形態では、約0.1〜1Vの電圧がアノードとカソードとの間に印加される場合にカソード電解質溶液のpHが増加する。電極間の電圧が0.1〜0.8V;0.1〜0.7V;0.1〜0.6V;0.1〜0.5V;0.1〜0.4V;および0.1〜0.3Vの場合に同様の結果が実現可能である。
【0085】
本発明のシステムによって達成される代表的な結果を以下の表1にまとめている。270cmの20メッシュNi金網をカソードに、50cmの100メッシュPt金網をアノードとして使用して、アノードへの水素ガス流は室温において20mL/分の流量に制御し、同時に種々の電圧をアノードとカソードとの間に印加して、数回の24時間の実験を行った。Solartron(商標)ポテンシオスタットを電気化学的測定に使用し、ドイツのGMbH(商標)MembranesのPC AcidおよびPC SKイオン交換膜を、それぞれ陰イオン交換膜および陽イオン交換膜として選択した。
【0086】
【表3】

たとえば、特定の実施形態において、本発明の方法およびシステムは、3V以下、2.9V以下、または2.5V以下、または2V以下の電圧をアノードとカソードとの間に印加すると、0.5pH単位を超えるpH差をアノード電解質溶液とカソード電解質溶液との間に生じさせることが可能であり、2つの電解質溶液が、たとえば1つ以上のイオン交換膜によって分離される。ある実施形態においては、第1の電解質溶液がアノードに接触し、第2の電解質溶液がカソードに接触し、2つの電解質溶液が、たとえば1つ以上のイオン交換膜によって分離される場合に、本発明の方法およびシステムは、0.1V以下の電圧をアノードとカソードとの間に印加すると、1.0pH単位を超える、または2pH単位、または4pH単位、または6pH単位、または8pH単位、または10pH単位、または12pH単位、または14pH単位のpH差を第1の電解質溶液と第2の電解質溶液との間に生じさせることができる。ある実施形態においては、本発明は、第1の電解質溶液がアノードに接触し、第2の電解質溶液がカソードに接触し、2つの電解質溶液が、たとえば1つ以上のイオン交換膜によって分離される場合に、0.2V以下の電圧がアノードとカソードとの間に印加すると、2.0pH単位を超えるpH差を第1の電解質溶液と第2の電解質溶液との間に生じさせることが可能なシステムを提供する。
【0087】
別の実施形態において、本発明の方法およびシステムは、第1の電解質溶液がアノードに接触し、第2の電解質溶液がカソードに接触し、2つの電解質溶液が、たとえば1つ以上のイオン交換膜によって分離される場合に、0.4V以下の電圧をアノードとカソードとの間に印加すると、4.0pH単位を超えるpH差を第1の電解質溶液と第2の電解質溶液との間に生じさせることができる。ある実施形態においては、本発明は、第1の電解質溶液がアノードに接触し、第2の電解質溶液がカソードに接触し、2つの電解質溶液が、たとえば1つ以上のイオン交換膜によって分離される場合に、0.6V以下の電圧をアノードとカソードとの間に印加すると、第1の電解質溶液と第2の電解質溶液との間に6pH単位を超えるpH差を生じさせることが可能なシステムを提供する。ある実施形態においては、本発明は、第1の電解質溶液がアノードに接触し、第2の電解質溶液がカソードに接触し、2つの電解質溶液が、たとえば1つ以上の交換膜によって分離される場合に、0.8V以下の電圧をアノードとカソードとの間に印加すると、8pH単位を超えるpH差を第1の電解質溶液と第2の電解質溶液との間に生じさせることが可能なシステムを提供する。特定の実施形態において、本発明は、第1の電解質溶液がアノードに接触し、第2の電解質溶液がカソードに接触し、2つの電解質溶液が、たとえば1つ以上のイオン交換膜によって分離され、1.0V以下の電圧をアノードとカソードとの間に印加すると、8pH単位を超えるpH差を第1の電解質溶液と第2の電解質溶液との間に生じさせることが可能なシステムを提供する。ある実施形態においては、本発明は、第1の電解質溶液がアノードに接触し、第2の電解質溶液がカソードに接触し、2つの電解質溶液が、たとえば1つ以上のイオン交換膜によって分離される場合、1.2V以下の電圧をアノードとカソードとの間に印加すると、第1の電解質溶液と第2の電解質溶液との間に10pH単位を超えるpH差を生じさせることが可能なシステムを提供する。
【0088】
当業者には明らかなように、電圧は一定に維持する必要はなくアノードとカソードとの間に印加される電圧は、2つの電解質が同じpHまたは同様のpHである場合、非常に低く、たとえば、0.05V以下とすることができ、pH差が増加するとともに必要に応じて電圧を増加させることができる。このように、所望のpH差、あるいは水酸化物イオン、炭酸イオン、および重炭酸イオンの生成が、最低限の平均電圧で得ることができる。したがって、先行する段落中に記載されるある実施形態においては、平均電圧は、特定の実施形態に関して先行する段落に記載される電圧の80%未満、70%未満、60%未満、または50%未満とすることができる。
【0089】
種々の実施形態において、図1を参照すると、カソード104において形成される水素ガスは、アノード108まで誘導される。なんらかの理論によって束縛しようとするものではないが、水素ガスは、アノード中に吸着および/または吸収され、その後、アノードにおいて酸化されてプロトンを形成すると考えられる。
【0090】
ある実施形態においては、電解質がイオン交換膜に接触するプロセスの一部の間に、たとえばマグネシウムまたはカルシウムの二価陽イオンが電解質溶液から除去される。これは、その特定の膜に対して必要であれば、膜のスケーリングを阻止するために行われる。したがって、種々の実施形態において、電解質溶液が長時間イオン交換膜に接触する場合の電解質溶液中の二価陽イオンの全濃度は、0.06mol/kg溶液未満、または0.06mol/kg溶液未満、または0.04mol/kg溶液未満、または0.02mol/kg溶液未満、または0.01mol/kg溶液未満、または0.005mol/kg溶液未満、または0.001mol/kg溶液未満、または0.0005mol/kg溶液未満、または0.0001mol/kg溶液未満、または0.00005mol/kg溶液未満である。
【0091】
二酸化炭素ガスがカソード電解質中に溶解する実施形態において、プロトンがカソード電解質から除去されるので、より多くの二酸化炭素が溶解して重炭酸イオンおよび/または炭酸イオンを形成することができる。カソード電解質のpHに依存して、バランスがバイカーボネートまたはカーボネートに向かってシフトし、このことは当技術分野において周知であり、前述のカーボネートのスペシエーション図に示す通りである。これらの実施形態において、二酸化炭素の導入速度に対するプロトンの除去速度に依存して、カソード電解質溶液のpHは、減少する場合も、同じ値で維持される場合も、増加する場合もある。水酸化物イオン、炭酸イオン、および重炭酸イオンはこれらの実施形態においては形成されず、あるいは水酸化物、カーボネート、バイカーボネートはある期間には形成され別の期間には形成されないこともあることは理解されるであろう。
【0092】
別の一実施形態において、本発明のシステムおよび方法は、カーボネートおよび/またはバイカーボネート沈殿システム(図示せず)と一体化され、二価陽イオンの溶液が、本発明のカソード電解質に加えられると、二価のカーボネートおよび/またはバイカーボネート化合物、たとえば、炭酸カルシウムまたは炭酸マグネシウムおよび/またはそれらのバイカーボネートの沈殿が形成される。種々の実施形態において、沈殿した二価のカーボネートおよび/またはバイカーボネート化合物は、たとえば、その記載内容全体が参照により本明細書に援用される2008年5月23日に出願され本願と同一の譲受人に譲渡された米国特許出願第12/126,776号明細書に記載されるように建築材料、たとえば、セメントおよび骨材として利用される。
【0093】
別の実施形態において、本発明のシステムおよび方法は、鉱物および/または材料溶解および回収システム(図示せず)と一体化され、酸性の第4の電解質溶液116または塩基性のカソード電解質102を使用して、カルシウムおよび/またはマグネシウムに富む鉱物、たとえば蛇絞石またはカンラン石、あるいは廃棄物、たとえば、フライアッシュ、赤泥などを溶解させて、二陽イオン溶液を形成し、それらが本明細書に記載のようにカーボネートおよび/またはバイカーボネートの沈殿に使用される。種々の実施形態において、沈殿した二価のカーボネートおよび/またはバイカーボネート化合物は、たとえば、その記載内容全体が参照により本明細書に援用される2008年5月23日に出願され本願と同一の譲受人に譲渡された米国特許出願第12/126,776号明細書に記載されるように建築材料、たとえば、セメントおよび骨材として利用される。
【0094】
別の実施形態において、本発明のシステムおよび方法は、二酸化炭素、ならびに産業排ガスの他の成分、たとえば、硫黄ガス類、酸化窒素ガス類、金属、および粒子を隔離する産業排ガス処理システム(図示せず)と一体化され、燃料排ガスと二価陽イオンを含む溶液と、水酸化物イオン、重炭酸イオン、および/または炭酸イオンを含む本発明のカソード電解質とを接触させることによって、その記載内容全体が参照により本明細書に援用される2008年12月24日に出願され本願と同一の譲受人に譲渡された米国特許出願第12/344,019号明細書に記載されるように、二価陽イオンのカーボネートおよび/またはバイカーボネートが沈殿する。たとえばカルシウムおよび/またはマグネシウムの炭酸塩および重炭酸塩を含む沈殿物は、種々の実施形態において、たとえば、その記載内容全体が参照により本明細書に援用される2008年5月23日に出願され本願と同一の譲受人に譲渡された米国特許出願第12/126,776号明細書に記載されるように建築材料、たとえば、セメントおよび骨材として利用される。
【0095】
別の一実施形態において、本発明のシステムおよび方法は、水性脱塩システム(図示せず)と一体化され、その記載内容全体が参照により本明細書に援用される2008年6月27日に出願され本願と同一の譲受人に譲渡された米国特許出願第12/163,205号明細書に記載されるように、本発明のシステムの第3の電解質の部分的に脱塩された水150が、脱塩システムの給水として使用される。
【0096】
別の実施形態において、本発明のシステムおよび方法は、カーボネートおよび/またはバイカーボネート溶液廃棄システム(図示せず)と一体化され、二価陽イオン溶液を第1の電解質溶液と接触させて沈殿物を形成することによって沈殿物を製造するのではなく、このシステムはカーボネートおよび/またはバイカーボネートを含むスラリーまたは懸濁液を製造する。その記載内容全体が参照により本明細書に援用される2008年12月24日に出願された米国特許出願第12/344,019号明細書に記載されるように、種々の実施形態において、このスラリー/懸濁液は、長期間安定に維持される場所に廃棄され、たとえば、スラリー/懸濁液は、スラリーが無期限で安定に維持されるのに十分な温度および圧力となる深さで海中に廃棄される。
【0097】
本発明のシステムおよび方法のいくつかの実施形態を本明細書において示し説明してきたが、このような実施形態が例として提供されており、限定のために提供されたものではないことは当業者には明らかであろう。したがって、添付の特許請求の範囲内にある変形、変更、および置換は当業者には明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードに接触するカソード電解質である第1の電解質と;
アノードに接触するアノード電解質である第2の電解質と;
第1のイオン交換膜によって前記カソード電解質から分離された第3の電解質と;
第2のイオン交換膜によって前記アノード電解質から分離された第4の電解質と;
前記第3および第4の電解質を分離する第3のイオン交換膜とを含む、電気化学システム。
【請求項2】
前記第1のイオン交換膜が陽イオン交換膜を含み;前記第2のイオン交換膜が陽イオン交換膜を含み;前記第3のイオン交換膜が陰イオン交換膜を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
ガスを前記アノードまで誘導するよう構成されたガス移送システムをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記ガスが水素を含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記ガス移送システムが、ガスを前記カソードから前記アノードまで誘導するように構成される、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記ガスが水素を含む、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記アノードにおいて前記ガスを酸化するために、前記ガス移送システムが、水素ガスを前記アノード電解質中、または前記アノード上、またはそれらの組み合わせに誘導するように構成される、請求項3または4に記載のシステム。
【請求項8】
外部ガスを前記電気化学システムの電解質中に送出するように構成された外部ガス送出システムをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記外部ガスが二酸化炭素を含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記外部ガス送出システムが、前記ガスを前記カソード電解質中に送出するよう構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
二酸化炭素を前記カソード電解質中に吸収させるように操作可能に構成されたガス吸収システムをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記外部ガス送出システムが、燃焼ガスを含む産業排ガス流システムに操作可能に接続される、請求項8に記載のシステム。
【請求項13】
前記外部ガス送出システムが、化石燃料発電プラントまたはセメントプラントガス排出システムに操作可能に接続される、請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
前記電極間に電圧を印加すると、前記アノードにおいてガスを形成することなく、水酸化物イオンを前記カソード電解質中に形成することができる、請求項1または5に記載のシステム。
【請求項15】
前記アノードとカソードとの間に3V未満の電圧を印加すると、水酸化物イオンが形成される、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記水酸化物イオンが形成され、同時に水素ガスが前記アノードにおいて酸化される、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記アノード電解質とカソード電解質との間に、7〜14pH単位の間またはそれを超えるpH差を発生させることができる、請求項14に記載のシステム。
【請求項18】
前記pH差が発生し、同時に水素ガスが前記アノードにおいて酸化される、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記電極間に電圧を印加すると、前記アノードにおいてガスを形成することなく、水酸化物イオン、重炭酸イオン、および/または炭酸イオンを前記カソード電解質カソード中に形成することができる、請求項1または5に記載のシステム。
【請求項20】
前記電極間の前記電圧が3V未満である、請求項14または19に記載のシステム。
【請求項21】
前記水酸化物イオン、重炭酸イオン、および/または炭酸イオンが形成され、同時に前記システムは水素ガスを前記アノードにおいて酸化する、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記アノードとカソードとの間に3V未満の電圧を印加すると、プロトンを前記アノード電解質中に形成することができる、請求項1または5に記載のシステム。
【請求項23】
前記アノードとカソードとの間に3V未満の電圧を印加すると、前記アノードにおいてガスを発生することなく、水素ガスを前記カソードにおいて形成することができる、請求項1または5に記載のシステム。
【請求項24】
前記アノードとカソードとの間に3V未満の電圧を印加すると、前記アノードにおいてガスを形成することなく、ナトリウムイオンおよび塩化物イオンを前記第3の電解質から除去することができる、請求項1または5に記載のシステム。
【請求項25】
前記アノードとカソードとの間に3V未満の電圧を印加すると、前記アノードにおいてガスを形成することなく、酸溶液を前記第4の電解質中に形成することができる、請求項1または5に記載のシステム。
【請求項26】
前記カソード電解質の一部を、前記カソード電解質の流出流から流入流まで循環させるのに適合した循環システムをさらに含む、請求項1または5に記載のシステム。
【請求項27】
前記第4の電解質の一部を、前記第4の電解質の流出流から流入流まで循環させるのに適合した循環システムをさらに含む、請求項1または5に記載のシステム。
【請求項28】
バッチ、セミバッチ、または連続流操作に適合している、請求項1に記載のシステム。
【請求項29】
連続流操作に適合している、請求項1に記載のシステム。
【請求項30】
前記カソード電解質が溶存二酸化炭素を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項31】
前記カソード電解質が水酸化物イオン、重炭酸イオン、および/または炭酸イオンを含む、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記カソード電解質が重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせを含む、請求項30に記載のシステム。
【請求項33】
前記第4の電解質がプロトンおよび塩化物イオンを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項34】
前記アノード電解質がプロトンを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項35】
電気化学的方法であって:
カソードに接触するカソード電解質である第1の電解質を配置するステップと;
アノードに接触するアノード電解質である第2の電解質を配置するステップと;
第1のイオン交換膜によって前記カソード電解質から分離されるように第3の電解質を配置するステップと;
第3のイオン交換膜によって前記第3の電解質から分離され、第2のイオン交換膜によって前記アノード電解質から分離されるように第4の電解質を配置するステップと;
前記アノードとカソードとの間に電圧を印加することによって、水酸化物イオンを前記カソード電解質中に形成するステップとを含む、方法。
【請求項36】
前記第1のイオン交換膜が陽イオン交換膜を含み;前記第2のイオン交換膜が陽イオン交換膜を含み;前記第3のイオン交換膜が陰イオン交換膜を含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記アノードにおいてガスが形成されない、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
水素ガスを前記アノードにおいて酸化するステップをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
二酸化炭素ガスを前記カソード電解質中に誘導するステップをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記カソード電解質を前記カソードに接触させて配置する前または後に、前記二酸化炭素を前記カソード電解質中に誘導する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記カソードとアノードとの間に3V未満の電圧を印加するステップを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
水素ガスを前記カソードにおいて形成するステップを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
プロトンを前記アノードにおいて形成するステップを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項44】
3V未満の電圧を前記アノードと前記カソードとの間に印加することによって、前記アノードにおいてガスを形成することなく、前記アノード電解質とカソード電解質との間に7〜14pH単位の間またはそれを超えるpH差を発生させるステップを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項45】
水酸化物イオン、重炭酸イオン、炭酸イオン、および/またはそれらの組み合わせを前記カソード電解質中に形成するステップを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、または炭酸ナトリウムを前記カソード電解質中に形成するステップを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
プロトンを、前記アノード電解質から前記第2の陽イオン交換膜を通過して前記第4の電解質まで移動させるステップを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項48】
陰イオンを、前記第3の電解質から前記陰イオン交換膜を通過して前記第4の電解質まで移動させるステップを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
塩化物イオンを、前記第3の電解質から前記陰イオン交換膜を通過して前記第4の電解質まで移動させるステップを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
酸を前記第4の電解質中に形成するステップを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
塩酸を前記第4の電解質中に形成するステップを含む、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
陽イオンを、前記第3の電解質から前記第1の陽イオン交換膜を通過して前記カソードまで移動させるステップを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
ナトリウムイオンを、前記第3の電解質から前記第1の陽イオン交換膜を通過して前記カソード電解質まで移動させるステップを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項54】
前記カソードにおいて形成された水素ガスを、前記アノードにおいて前記ガスを酸化させるために循環させるステップを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項55】
前記カソード電解質の流出流から流入流までカソード電解質を循環させるステップを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項56】
前記第4の電解質の流出流から流入流まで第4のカソード電解質を循環させるステップを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項57】
電気化学的方法であって:
カソードに接触するカソード電解質である第1の電解質を配置するステップと;
アノードに接触するアノード電解質である第2の電解質を配置するステップと;
第1のイオン交換膜によって前記カソード電解質から分離されるように第3の電解質を配置するステップと;
第3のイオン交換膜によって前記第3の電解質から分離され、第2のイオン交換膜によって前記アノード電解質から分離されるように第4の電解質を配置するステップと;
二酸化炭素ガスを前記カソード電解質に供給するステップとを含む、方法。
【請求項58】
前記第1のイオン交換膜が陽イオン交換膜を含み;前記第2のイオン交換膜が陽イオン交換膜を含み;前記第3のイオン交換膜が陰イオン交換膜を含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記アノードにおいてガスが形成されない、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
重炭酸イオン、炭酸イオン、または重炭酸イオンと炭酸イオンとの混合物を前記カソード電解質中に形成するステップを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
水素ガスを前記アノードにおいて酸化するステップをさらに含む、請求項57に記載の方法。
【請求項62】
前記カソードとアノードとの間に3V未満の電圧を印加するステップを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項63】
水素ガスを前記カソードにおいて形成するステップを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項64】
前記アノードおよび前記アノード電解質においてプロトンを形成するステップを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項65】
前記アノードにおいてガスを形成することなく、前記アノード電解質とカソード電解質との間に7〜14pH単位の間またはそれを超えるpH勾配を発生させるステップを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、または炭酸ナトリウムと重炭酸ナトリウムとの混合物を前記カソード電解質中に形成するステップを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項67】
プロトンを、前記アノード電解質から前記第2の陽イオン交換膜を通過して前記第4の電解質まで移動させるステップを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項68】
陰イオンを、前記第3の電解質から前記陰イオン交換膜を通過して前記第4の電解質まで移動させるステップを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項69】
塩化物イオンを、前記第3の電解質から前記陰イオン交換膜を通過して前記第4の電解質まで移動させるステップを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項70】
酸を前記第4の電解質中に形成するステップを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項71】
塩酸を前記第4の電解質中に形成するステップを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項72】
陽イオンを、前記第3の電解質から前記第1の陽イオン交換膜を通過して前記カソード電解質まで移動させるステップを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項73】
ナトリウムイオンを、前記第3の電解質から前記第1の陽イオン交換膜を通過して前記カソード電解質まで移動させるステップを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項74】
前記カソードにおいて形成された水素ガスを、前記アノードにおいて酸化させるために循環させるステップを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項75】
前記カソード電解質の少なくとも一部を前記カソード電解質の流出流から流入流に循環させるステップを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項76】
前記第4のカソード電解質の一部を前記第4の電解質の流出流から流入流に循環させるステップを含む、請求項57に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−528405(P2011−528405A)
【公表日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518768(P2011−518768)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2009/048511
【国際公開番号】WO2010/008896
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(309032278)カレラ コーポレイション (5)
【Fターム(参考)】