説明

二酸化炭素含有量を低減するためのガスの処理方法

本発明は、二酸化炭素含有量を低減するためにガスを処理するための方法に関し、この方法は、ガスを少なくとも1つの希土類元素の化合物と接触させることによって、二酸化炭素をこの化合物上に吸着させ、二酸化炭素が欠失したガスを得ることを特徴とする。化合物は、より詳細には酸化物を含有し、希土類元素は、特に、セリウム、ランタンまたはプラセオジミウムから選択できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素含有量を低減するためのガスの処理プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素(CO)は、温室効果に寄与するガスの1つであることが知られている。環境保護の理由から、この生成量を制限することがますます望まれている。
【0003】
ガス、特にガスタービンまたはボイラーのような工場から放出される排煙中のCOを捕捉できるプロセスが既に存在する。
【0004】
これらのプロセスの一部は、溶媒媒体中でアミンを使用する。これらのプロセスの欠点は、アミンのコストが高く、これらが高温で不安定であることである。他のプロセスは、バリウムもしくはカルシウムなどのアルカリ土類金属、またはカリウムなどのアルカリ金属に基づく無機材料を使用する。これらの材料は、COを捕捉するのに有効であるが、例えば350℃を超える高温においてのみCOを放出できるという欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
故に、COを捕捉するために使用される化合物が、温度に対して安定であり、好ましくは既知のプロセスよりも低温にてCOを放出できるプロセスが必要とされている。
【0006】
本発明の目的は、こうした化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的に関して、二酸化炭素含有量を低減するためにガスを処理するための本発明のプロセスは、ガスを少なくとも1つの希土類金属の化合物と接触させることによって、二酸化炭素をこの化合物上に吸着させ、二酸化炭素が欠失したガスを得ることを特徴とする。
【0008】
希土類金属化合物の使用は、特に、300℃未満、さらには最大250℃であることができる温度にて、さらに、先行技術のプロセスの場合よりも狭い温度範囲内にて、即ち300℃未満であることができる規模の範囲にて、吸着されたCOの最大放出が可能であるという利点を有する。
【0009】
本発明の他の特徴、詳細および利点は、次の説明およびこれを例示することを目的とした種々の具体的ではあるが限定ではない例を読むことによって、さらにより完全に明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
「希土類金属」という用語は、この後の説明において、イットリウムおよび57から71の原子数を含む周期表の元素から成る群の元素を意味することが理解される。
【0011】
「比表面」という用語は、雑誌「The Journal of the American Chemical Society,60,309(1938)」に記載されるブルナウアーエメットテラー方法から立案されたASTM標準D3663−78に従う窒素吸着によって決定されるB.E.T.比表面を意味することが理解される。
【0012】
さらに、結果として表面値が与えられる焼成は、空気下での焼成である。さらに、所与の温度および所与の期間にて示される比表面値は、特に指示がない限り、示された期間にわたる静的温度での焼成に対応する。
【0013】
本発明の主要な特徴は、処理されるべきガスに存在するCOを捕捉または吸着するための希土類金属化合物の使用である。この化合物は、酸化物、オキシ水酸化物、硝酸塩または炭酸塩に基づくことができる。
【0014】
本説明に関して、「酸化物」という用語は、希土類金属化合物に関して使用される場合、酸化物の意味の範囲内だけでなく、酸化物は多くの場合空気と単に接触することによって炭酸化され得るので、炭酸化された酸化物の意味の範囲内でもあることが理解されるべきであり、これらは硝酸塩を含むこともできることに留意すべきである。この場合、表面から硝酸塩および炭酸塩を少なくとも部分的に除去するために、化合物を第1の再生熱処理に供するのが好ましい。この処理は、COの貯蔵後に材料を再生するためのプロセスにおいて使用される温度以上の温度にて、ガスストリーム、特に空気のストリーム下で加熱することによって行うことができ、この空気は水蒸気を含む。プロセスの経済性に関する問題のために、温度は、可能な限り低く、通常500℃未満、好ましくは300℃未満である。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれば、化合物は、セリウム、ランタンまたはプラセオジミウムから選択される少なくとも1つの希土類金属に基づく。この実施形態は、より詳細には、化合物が酸化物形態である場合に適用される。より詳細には、セリウムおよびランタンに基づく化合物、セリウムおよびプラセオジミウムに基づく化合物、またはセリウム、ランタンおよびプラセオジミウムに基づく化合物を挙げることができ、これらの元素は、さらにより詳細には化合物中では酸化物の形態である。
【0016】
別の実施形態によれば、さらにジルコニウムを含む少なくとも1つの希土類金属の化合物を使用する。この化合物は、1つ以上の希土類金属を含むことができる。
【0017】
特に、この実施形態の内容において、セリウムおよびジルコニウムに基づく化合物、セリウム、ジルコニウムおよびプラセオジミウムに基づく化合物、セリウム、ジルコニウムおよびランタンに基づく化合物、またはセリウム、ジルコニウム、プラセオジミウムおよびランタンに基づく化合物を挙げることができる。
【0018】
この実施形態において、化合物は、より詳細には、記述した元素(セリウム、ジルコニウムおよびその他の希土類金属)の酸化物に基づくことができる。
【0019】
一般に、セリウムおよびジルコニウムおよび希土類金属から選択される少なくとも1つの他の元素に基づく化合物の場合、セリウムの割合は、特に少なくとも50%、より詳細には少なくとも70%であることができ、この割合は、化合物において、酸化物として表現されるセリウムおよび他の元素の総重量に関して酸化セリウムCeO当量として表現される。セリウム含有量は、さらにより詳細には少なくとも80%であり、さらに実際には少なくとも90%であることができる。
【0020】
上記で与えられた割合は、より詳細には、セリウムおよび他の元素が化合物中で酸化物の形態である場合に適用される。
【0021】
これらの割合は、より詳細にはセリウム以外の希土類金属がランタンおよび/またはプラセオジミウムである場合に適用できる。
【0022】
セリウム以外の希土類金属またはジルコニウムの割合(上記のように表現される。)は、通常、少なくとも0.5%、より詳細には少なくとも1%である。
【0023】
別の好ましい実施形態に従って、本発明のプロセスでは、ジルコニウムを追加的に含む少なくとも1つの希土類金属の化合物、または少なくとも2つの希土類金属の化合物のいずれかを使用し、この場合、この化合物は固溶体の形態で提供される。
【0024】
「固溶体」という用語は、化合物のX線回折図が、化合物内において、単一の均一相の存在を示すこと意味すると理解される。例えば、セリウムが最も豊富な化合物に関して、この相は実際、結晶性の酸化セリウムCeOの相に対応し、この単位セルパラメータは、純粋な酸化セリウムに対して多少偏っており、故に酸化セリウムの結晶格子中への他の元素、ジルコニウムまたは希土類金属の組み込みを反映しており、真の固溶体の生成を反映している。
【0025】
また、化合物の表面におけるセリウムおよび場合により少なくとも1つの他の希土類金属の含有量が、セリウムおよび適切な場合には少なくとも他の希土類金属の平均含有量よりも高く、反対に、この同じ化合物の内部におけるセリウムおよび適切な場合には少なくとも他の希土類金属の含有量が、この平均含有量よりも低い、セリウム、ジルコニウムおよび場合により少なくとも1つの他の希土類金属に基づく化合物を使用するのが有利な場合がある。
【0026】
高い比表面を有する化合物を使用するのが好ましい。故に、少なくとも40m/g、より詳細には少なくとも70m/g、さらにより詳細には少なくとも100m/gの比表面を示す化合物を使用でき、これらの表面値は、この調製中に少なくとも500℃に等しい温度での焼成に供された化合物に適用される。
【0027】
本発明に使用できる化合物の幾つかの例を以下に示す。
【0028】
このように、安定化された比表面を有する酸化セリウムを特に使用できる。これは、高温に曝された後でさえも高い比表面を示す酸化セリウムを意味すると理解される。
【0029】
従って、特許出願EP−A−153227、EP−A−153228、EP−A−239478およびEP−A−275733に記載される酸化セリウムを挙げることができる。これらの酸化物は、例えば6時間にわたって350から450℃の温度にて焼成された後、少なくとも85m/g、特に少なくとも100m/gの比表面を示し得る。
【0030】
800℃から900℃の温度で少なくとも2時間の焼成後少なくとも15m/gの比表面を示す、EP−A−300852に記載される酸化セリウム、または350℃から450℃の温度にて2時間焼成後に少なくとも190m/gの表面を示し、さらに800℃から900℃の温度にて同じ期間焼成した後に少なくとも15m/gの比表面を示す、EP−A−388567に記載される同じ酸化物を使用することもできる。上記パラグラフに記載された酸化物は、有利なことには、これらが使用される前に空気下で500℃のさらなる焼成に供されてもよい。
【0031】
高い比表面も有する有利な化合物として、酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムに基づく組成物、より詳細には少なくとも1のセリウム/ジルコニウム原子割合を示す組成物も使用できる。
【0032】
従って、900℃の温度までで10m/gより大きい比表面を示すEP−A−207857に記載される酸化セリウムを挙げることができる。この酸化物は、酸化セリウムの重量に関して特に1から20%の酸化ジルコニウム含有量を示し得る。また、ジルコニウムが酸化セリウムの固溶体中にある、EP−A−605274の主題を形成する酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムに基づく組成物を挙げることもできる。この組成物は、800℃で6時間の焼成後、少なくとも30m/gの比表面を示すことができる。
【0033】
また、支持体として、酸化セリウムおよび酸化ジルコニウムおよびセリウム以外の希土類金属酸化物から選択される少なくとも1つの酸化物に基づくタイプの高い比表面を有する組成物を使用することもできる。
【0034】
こうした組成物は、特にEP−A−906244に記載されている。この文献において、組成物は、少なくとも1のセリウム/ジルコニウム原子割合、および900℃にて6時間焼成後に少なくとも35m/gの比表面を示す。この表面は、より詳細には、少なくとも40m/gであることができる。これは、より詳細にはさらに少なくとも45m/gであることができる。これらの組成物は、液体媒体中の混合物が、セリウム化合物、特に炭酸ジルコニウムへの硝酸の攻撃により得られる硝酸ジルコニウムであることができるジルコニウム化合物、および希土類金属化合物を含むように調製され、この混合物を加熱し、得られた沈殿を回収し、この沈殿を焼成するプロセスによって調製される。出発混合物はジルコニウム溶液を用いることによって調製されるが、この溶液は、溶液の酸/塩基滴定中に当量点に到達するのに必要な塩基の量が、条件OH/Zrモル比≦1.65に近くなるようなものである。
【0035】
使用できる化合物は、酸化セリウムおよび酸化プラセオジミウムに基づくものであり、プラセオジミウムの割合が、酸化セリウムに関して酸化プラセオジミウムとして表される重量比が50%までの範囲であることができるものである。この割合は、通常、少なくとも0.5%である。故にこの割合は1から40%、特に1から20%、より詳細には1から10%であることができる。代替形態によれば、組成物はさらにジルコニウムを含むことができる。このタイプの組成物は、FR2729309A1に記載され、400℃で6時間焼成後に、少なくとも10m/g、好ましくは少なくとも60m/g、より詳細には少なくとも80m/gの比表面を示す。
【0036】
上記で記載されたもので、セリウムおよび希土類金属の濃度が化合物の表面と内部とで異なるセリウム、ジルコニウムおよび場合により少なくとも1つの他の希土類金属に基づく化合物に関して、こうした生成物は、適切な場合には上述の特許出願の1つの教示に従って予め調製された、セリウム、ジルコニウムおよび適切な場合には希土類金属に基づく化合物を、セリウム化合物および場合により希土類金属の化合物を含む溶液を用いて含浸することにより得ることができる。
【0037】
以下では、酸化セリウムおよび別の希土類金属の少なくとも1つの酸化物に基づく組成物を使用し、比表面が1000℃で5時間の焼成後に少なくとも20m/gであるので、特に高い比表面を示す特徴を有する本発明の特定の実施形態について説明する。
【0038】
この特定の実施形態の組成物は、酸化セリウムおよび希土類金属の1つ以上の酸化物から本質的に構成される。
【0039】
「本質的に構成される」という用語は、検討中のこれらの組成物が、上述の元素であるセリウムおよび他の希土類金属の酸化物だけを含み、組成物の比表面の安定性に正の影響を与えることができる別の元素、例えば特にジルコニウムの酸化物を含んでいないことを意味すると理解される。他方で、組成物は、特にこの調製プロセス、例えば使用される出発材料または出発反応体に由来し得る元素、例えば不純物を含み得る。
【0040】
希土類金属は、より詳細には、イットリウム、ネオジミウム、ランタン、またはプラセオジミウムであることができる。代替形態によれば、ランタンおよびプラセオジミウムが組成物中で組み合わされて存在する。
【0041】
希土類金属酸化物の含有量は、一般に最大25重量%であり、好ましくは希土類金属がランタンである場合には、より詳細には最大20重量%、好ましくは最大15重量%である。最小含有量は、重要ではないが、一般に少なくとも1重量%、より詳細には少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも5重量%である。この含有量は、組成物全体の重量に関して、希土類金属の酸化物として表現される。
【0042】
本発明のこの特定実施形態の組成物はさらに、1000℃で5時間の焼成後、少なくとも22m/gの比表面を示すことができる。より一般的には、少なくともおよそ25m/gの値を、同じ焼成条件下で得ることができる。
【0043】
本発明のこの特定実施形態の組成物の比表面は、さらに高温であっても高いままであることができる。故に、これらの表面は、1100℃で5時間の焼成後、少なくとも10m/g、より詳細には少なくとも14m/gであることができる。
【0044】
最後に、この実施形態の組成物は、900℃で5時間の焼成後に少なくとも30m/gの比表面を示すことができる。より一般的には、少なくともおよそ35m/gの値は、同じ焼成条件下で得ることができる。
【0045】
これらの組成物は、ここで説明される特定のプロセスによって調製される。
【0046】
このプロセスは、次の段階を含むことを特徴とする:
−セリウム化合物を含む液体媒体を形成する;
−この媒体を少なくとも100℃の温度に加熱する;
−先行する段階の結果として得られる沈殿物を、液体媒体から分離し、他の希土類金属化合物をそこに添加し、別の液体媒体を形成する;
−こうして得られた媒体を少なくとも100℃の温度に加熱する;
−先行する加熱操作の結果として得られた反応媒体を塩基性pHにする;
−先行する段階から得られた沈殿物を分離し、焼成する。
【0047】
故にこうしたプロセスの初期段階は、セリウム化合物を含む液体媒体を形成することで構成される。
【0048】
液体媒体は一般に水である。
【0049】
セリウム化合物は、可溶性の化合物から選択されるのが好ましい。これは、特に有機または無機酸塩、例えば硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物または硝酸セリウムアンモニウムであることができる。
【0050】
好ましくは硝酸セリウムを使用する。少なくとも99.5%、より詳細には少なくとも99.9%の純度を有する塩を使用するのが有利である。硝酸セリウム水溶液は、例えば、過酸化水素水溶液の存在下でセリウム塩、例えば硝酸セリウムの溶液とアンモニウム水溶液との反応により従来通り調製される酸化セリウム水和物と、硝酸を反応させることによって得ることができる。文献FR−A−2570087に記載されるように、硝酸セリウム溶液の電解酸化のためのプロセスに従って得られる硝酸セリウム溶液を使用するのも好ましい場合があり、本明細書においてこれは有利な出発材料を構成する。
【0051】
本明細書において、セリウム塩の水溶液は、塩基または酸の添加によって調節できる、ある程度の初期の遊離酸性度を示し得ることに注目すべきである。しかし、実際、多少徹底した様式で予め中和された溶液として上述されたような程度の遊離酸性度を示すセリウム塩の初期溶液を使用することも可能である。この中和は、こうした酸性度を制限するために、上述の混合物に塩基性化合物を添加することによって行われ得る。この塩基性化合物は、例えば、アンモニア水溶液またはアルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)の水酸化物であることができるが、アンモニウム水溶液であるのが好ましいことに注目すべきである。
【0052】
最後に、出発混合物が本質的にIII形態にてセリウムを含む場合、プロセスの過程において、酸化剤、例えば過酸化水素水溶液を含むことが好ましい。
【0053】
出発セリウム化合物としてゾルを使用することもできる。「ゾル」という単語は、コロイド状寸法を有する微細な固体粒子で構成されるいずれかの系を示し、即ちセリウム化合物に基づいて約1nmから約500nmの寸法であり、この化合物は一般に酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物が水性液相に懸濁しており、さらにこの粒子は、例えば硝酸塩、酢酸塩、塩化物またはアンモニウムのような残存量の結合または吸着イオンを場合により含むことができる。こうしたゾルにおいて、セリウムは、完全にコロイドの形態であるか、またはイオン形態とコロイド形態を同時に生じることができることに注目すべきである。
【0054】
混合物は、例えば後で水ベシクルに導入されるような初期に固体状態の化合物から、または直接これらの化合物の溶液から区別されることなく得ることができる。
【0055】
プロセスの第2の段階は、少なくとも100℃の温度にて先行する段階で調製された媒体を加熱することで構成される。
【0056】
媒体が加熱される温度は、一般に100℃から150℃、より詳細には110℃から130℃である。加熱操作は、液体媒体を閉じたチャンバー(オートクレーブタイプの閉じた反応器)に導入することによって行われることができる。故に、上記で与えられる温度条件下、水性媒体中にて、閉じた反応器中の圧力は、1bar(10Pa)超過から165bar(1.65×10Pa)、好ましくは5bar(5×10Pa)から165bar(1.65×10Pa)の値で変動し得ることを例として記載できる。100℃に近い温度に関して開いた反応器での加熱を行うこともできる。
【0057】
加熱は、空気または不活性ガス雰囲気、好ましくは窒素下のいずれかで行うことができる。
【0058】
加熱期間は、広範囲、例えば30分から48時間、好ましくは1から5時間以内で変動し得る。同様に、温度の上昇は重要でない速度で生じ、故に、例えば30分から4時間の間媒体を加熱することによって設定反応温度に到達でき、これらの値は完全に指標のために与えられる。
【0059】
加熱操作の結果として沈殿物が得られ、この沈殿物はいずれかの好適な手段によって、例えば水性母液から引き出すことによって液体媒体から分離される。他の希土類金属の化合物をこうして分離された沈殿物に添加して、第2の液体媒体を形成する。
【0060】
希土類金属化合物が、プロセスの第1の段階において使用されるセリウム化合物と同じ特性を有することができる。故に、この化合物に関して上述したことは、本明細書において、より詳細には硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩または塩化物から選択できる希土類金属化合物に適用される。
【0061】
プロセスの別の段階において、この第2の液体媒体は少なくとも100℃の温度に加熱される。
【0062】
ここで再び、第1の加熱操作に関して上述したことは、本明細書において第2の加熱操作にも適用される。
【0063】
この第2の加熱操作の結果として、得られた反応媒体を塩基性pHにする。これに関して、塩基性化合物が反応媒体に導入される。塩基または塩基性化合物として水酸化物タイプの生成物を使用することもできる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物を挙げることができる。二級、三級または四級アミンも使用できる。しかし、アミンおよびアンモニア水溶液は、これらがアルカリ金属またはアルカリ土類金属カチオンによって汚染のリスクを低減する限りは、好ましい場合がある。尿素を挙げることもできる。塩基性化合物は、より詳細には溶液の形態で使用できる。
【0064】
媒体がもたらされるpHの値は、より詳細には8から10、より詳細には8から9であることができる。
【0065】
プロセスの最終段階において、回収された沈殿物は続いて焼成される。この焼成は、形成された生成物の結晶化度を発展させることができ、また、本発明のこの特定の実施形態の組成物に関して目的とする後続操作温度の関数として調節および/または選択でき、これは使用される焼成温度が上昇するにつれて生成物の比表面が低下するという事実を考慮しながら行われる。こうした焼成は、一般に空気下で行われるが、例えば不活性ガス下、もしくは制御された雰囲気(酸化または還元)下にて行われる焼成も排除されないことは全く明らかである。
【0066】
実際、焼成温度は、一般に300℃から1000℃の値の範囲に限定される。
【0067】
本発明のプロセスは、COを含むガスのいずれかのタイプの処理のために使用できる。
【0068】
これは、例えばCOを生成する炭化水素、石炭またはいずれかの燃料が燃焼されるような工場、例えばボイラーまたはガスタービンによって生成されるガスであることができる。これはまた、石油化学精錬プロセスから得られるガス、例えば触媒クラッキング装置から得られるガス、またはセメント作業から得られるガスであることもできる。最後に、本発明のプロセスはまた、家庭内、例えばガスまたは燃料油ボイラーによって生成されるガスにも使用できる。
【0069】
これらのガスは、例えば50%から80%の窒素、5%から20%の二酸化炭素(CO)、2%から10%の酸素(O)および場合により他の不純物、例えばSO、NO、埃およびその他の粒子を含むことができる。
【0070】
これらのガスは、周囲温度(即ち15℃から25℃)から850℃、特に40℃から500℃の範囲の温度を示すことができ、これらの温度は限定するものではなく、単に例として与えられるだけである。
【0071】
既知の方法において、不純物、例えばSO、NO、埃または他の粒子を除去するために、またはこれらの量を低減するために、ガスを前処理に供することができる。
【0072】
ガスの処理は、上述の希土類金属化合物とガスを接触させることによって行われる。この接触操作は、この操作のために特別に提供された反応器にて、またはガスが通過する工場の交換機もしくはコンプレッサもしくは場合によりいずれかの他の装置にて行うことができる。
【0073】
化合物は成形されていなければならない。
【0074】
これは、例えば押出成形またはビーズ形態で与えられることができる。成形された化合物は、さらにバインダーを含むことができる。このバインダーは、通常押出成形技術に使用されるもの、例えばシリカ、アルミナ、ベーマイト、粘土、シリカート、アルミノシリカート、硫酸チタン、またはセラミック繊維から選択される。これらのバインダーは、一般に使用される割合、即ち約30重量%まで、より詳細には最大約15重量%までで存在する。
【0075】
化合物はまた、セラミックもしくは金属基板または反応器の内部部品:壁または分配プレート、または交換機の内部部品、コンプレッサもしくは処理されるべきガスが通過し得るいずれかの装置上でのコーティングの形態であることもできる。
【0076】
処理されるべきガスを希土類金属に基づく化合物と接触させる操作中、ガスのCOは化合物に吸収され、こうしてCOが欠失したガスが回収される。
【0077】
本発明のプロセスは、二酸化炭素が回収された結果として、希土類金属化合物からの二酸化炭素の追加の脱着段階を含むことができる。この脱着は、この化合物にわたって熱ガスを通過させることによって行うことができる。このガスは、例えば中性ガスまたは空気であることができる。
【0078】
熱ガスの温度は、COの有効な脱着を可能にする温度である。本発明の重要な利点はこのガスの温度を相対的に低くできることである。このガスの温度は、特に最大350℃、より詳細には最大300℃、さらにより詳細には最大250℃であることができる。
【0079】
ここで実施例を示す。
【0080】
(実施例1)
この実施例は、本発明のプロセスに使用できる希土類金属に基づく化合物の調製に関する。
【0081】
4つの化合物を調製し、この組成を以下の表1に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
種々の化合物の調製を以下に示す。
【0084】
(実施例1−A)
この実施例は、式CeO−ZrO−Pr11の混合酸化物の調製を示し、これは表1の組成を有し、上述され、参考として組み込まれるEP−A−906244に記載されるタイプのプロセスによって得られる。
【0085】
r=−0.22となるようにNHOHを添加することにより予め中和された硝酸セリウム溶液(文献FR−A−2570087に従って得られる。)、硝酸プラセオジミウム溶液および条件OH/Zrモル比が=1.17に合う硝酸ジルコニル溶液を、上記混合酸化物を製造するために必要とされる化学量論割合にて混合する。
【0086】
rは次の式によって規定されるセリウム溶液の中和度を表す:
【0087】
【数1】

式中、n1は中和後の溶液中に存在するCe(IV)の総モル数を表し、n2はセリウム(IV)塩の水溶液が寄与する初期遊離酸性度を中和するのに実際必要なOHイオンのモル数を表し、n3は塩基の添加が寄与するOHイオンの総モル数を表す。
【0088】
モル比OH/Zrは、硝酸ジルコニル溶液の酸/塩基滴定中に、当量点に到達するために添加する必要がある塩基の量に対応する。
【0089】
この混合物の濃度(種々の元素の酸化物として表される。)は、続いて80g/lに調節される。この混合物は、続いて4時間にわたって150℃にされる。
【0090】
アンモニア水溶液を続いて反応媒体に添加し、pHを8.5超過にする。こうして得られた反応媒体を2時間還流する。沈降による分離およびその後の引き出し後、この固体生成物を再懸濁させ、こうして得られた媒体を100℃で1時間処理する。生成物を続いてろ別した後、空気下700℃で2時間焼成する。
【0091】
(実施例1−B)
この実施例では、表1の組成を有する式CeO−ZrO−La−Pr11の混合酸化物の調製を示す。
【0092】
手順は実施例1−Aと同様であり、硝酸ランタンを他の前駆体と共にさらに添加する。最終的な焼成を、850℃で2時間行う。
【0093】
(実施例1−C)
この実施例は、表1の組成を有する式CeO−La−Pr11の混合酸化物の調製を示す。
【0094】
90モル%のセリウム(IV)イオンおよびCeO50gを含む硝酸セリウム溶液201.6mlを、25%アンモニア水溶液5.7mlで中和し、次いで純水792.7mlで希釈する。この溶液を、続いて100℃で0.5時間加熱する。水性母液を除去した後、La2.63gを含む硝酸ランタン溶液6.1mlおよびPr112.63gを含む硝酸プラセオジミウム溶液5.3mlを媒体に添加する。溶液の総体積を1リットルにするために純水を添加する。溶液を続いて120℃で2時間加熱する。溶液を85℃まで冷却した後、25%アンモニア水溶液を撹拌しながら添加し、pHを8.5に調節する。得られた懸濁液を沈殿を得るためにNutscheフィルターを通してろ過する。沈殿物を空気下で300℃にて10時間焼成し、次いで700℃で2時間焼成する。
【0095】
(実施例1−D)
この実施例は、表1の組成を有する式CeO−ZrO−Laの混合酸化物の調製を示す。
【0096】
手順は実施例1−Aと同じであり、硝酸ランタンは、硝酸プラセオジミウムの代替として添加される。
【0097】
(比較例2)
この実施例は、COを貯蔵するために既知のアルカリ土類金属元素を含む化合物の調製に関する。硝酸バリウム4.10g(Prolabo Rectapur99%)および脱塩水17.5gを含む溶液を、磁性棒を備えたビーカーにて80℃で加熱する。
【0098】
空気下850℃で2時間のベーマイトゲル(Sasol Pural SB1)の焼成によって得られたアルミナ15.69gを、80℃にてこの溶液に含浸させる。
【0099】
次いで含浸されたアルミナを、100℃にて3時間乾燥する。この手順を、硝酸バリウム溶液の同じ量で2回繰り返す。こうして得られたアルミナを100℃で3時間乾燥させる。得られた粉末を、空気下500℃で2時間焼成する。
【0100】
こうして得られた化合物2−Eは、80重量%のアルミナおよび20重量%の酸化バリウムBaOを含む。これは81m/gの比表面を示す。
【0101】
(実施例3)
この重量%は、先行する実施例の種々の化合物にて吸着されたCOの放出温度の比較を示す。
【0102】
COの吸着は、次の条件下で行った。空気中10%のCOを含む合成ガスを、各化合物1−Aから2−E 10gにわたって、周囲温度にて1l/hの流速にて続けて1時間通過させる。
【0103】
熱重量分析(TGA)技術を使用して、この温度測定を行う。この技術は、実際に計量された先行する実施例の化合物それぞれ約20mgを、合成空気流下、30ml/分の速度で加熱することで構成される。温度の上昇は、10℃/分の上昇速度にて周囲温度から700℃の間で適用され、これがCOの放出をもたらし、装置から出るガス中のCOの放出をもたらす。装置から出るガス中のCO含有量を質量分析により決定する。
【0104】
COの離脱に関する温度枠について以下の表2に比較を示すが、COが放出される最低温度と、COの放出が停止する最終温度により特徴付けられる。COは、これら2つの温度の間で連続的に放出される。最高温度と称される温度は、COの最大放出時の温度に対応し、これも列挙する。
【0105】
【表2】

【0106】
セリウムおよび場合によりジルコニウム、ランタンおよび/またはプラセオジミウム(1−Aから1−D)を含む本発明に従う4つの化合物は、狭い温度範囲、一般に50から250℃にわたってCOの放出をもたらすことがわかったが、比較例の化合物(2−E)は、結果として特に630℃までの、より広い枠にわたってCOを放出する。COの放出に関する最大温度はまた、化合物2−Eの240℃に対して、化合物1−Aから1−Dに関しては100℃から120℃まで低下する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素含有量を低減するためにガスを処理するためのプロセスであって、ガスを少なくとも1つの希土類金属の化合物と接触させることによって、二酸化炭素をこの化合物上に吸着させ、二酸化炭素が欠失したガスを得ることを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
酸化物、オキシ水酸化物、硝酸塩または炭酸塩に基づく少なくとも1つの希土類金属の化合物を使用することを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
セリウム、ランタンまたはプラセオジミウムから選択される少なくとも1つの希土類金属に基づく化合物を使用することを特徴とする、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
ジルコニウムをさらに含む少なくとも1つの希土類金属の化合物を使用することを特徴とする、請求項1から3の一項に記載のプロセス。
【請求項5】
セリウムと、ジルコニウムおよびセリウム以外の希土類金属から選択される少なくとも1つの元素とに基づく化合物を使用し、このセリウム含有量が、少なくとも50重量%、より詳細には少なくとも70重量%であることを特徴とする、請求項1から4の一項に記載のプロセス。
【請求項6】
上述の希土類金属がランタンまたはプラセオジミウムである化合物を使用することを特徴とする、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
少なくとも80%のセリウム含有量を有する化合物を使用することを特徴とする、請求項5または6に記載のプロセス。
【請求項8】
さらにジルコニウムを含む少なくとも1つの希土類金属の化合物、または少なくとも2つの希土類金属の化合物のいずれかを使用し、前記化合物が固溶体の形態で提供されることを特徴とする、請求項1から7に記載のプロセス。
【請求項9】
上述の元素の酸化物に基づく化合物を使用することを特徴とする、請求項1から8の一項に記載のプロセス。
【請求項10】
少なくとも1つの希土類金属の化合物から二酸化炭素の脱着の追加段階を含み、その結果として二酸化炭素が回収されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
脱着段階が、前記化合物にわたって、熱ガス、特に最大250℃の温度でのガスを通過させることによって行われることを特徴とする、請求項10に記載のプロセス。

【公表番号】特表2011−522692(P2011−522692A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510939(P2011−510939)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055838
【国際公開番号】WO2009/144143
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(508183151)ロデイア・オペラシヨン (70)
【Fターム(参考)】