説明

二酸化炭素回収型汽力発電システム及びその運転方法

【課題】タービンの性能低下を防止しつつ、二酸化炭素の分離回収を行う。
【解決手段】二酸化炭素回収型汽力発電システムは、ボイラ6で発生した排ガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させる吸収塔403と、二酸化炭素を吸収した吸収液から二酸化炭素ガスを放出させて排出する再生塔405と、再生塔405からの吸収液を加熱し、発生させた蒸気を再生塔405に供給するリボイラ41と、ボイラ6から蒸気が供給されて回転駆動するタービンと、前記タービンからの排気蒸気を冷却して復水を生成する復水器26と、復水を加熱する加熱器32と、加熱された復水をボイラ6へ給水する給水ポンプ34と、前記タービンから抽気された蒸気をリボイラ41及び加熱器32へ供給するラインと、前記タービンから抽気される蒸気の量を一定に保つ蒸気流量調整手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素回収型汽力発電システム及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の消費量増大により、その燃焼生成物である二酸化炭素による温室効果が原因と考えられる地球温暖化の問題が大きくなっている。このような中、大量の化石燃料を使用する火力発電所等を対象に、燃焼排ガスとアミン系吸収液を接触させ、燃焼ガス中の二酸化炭素を分離回収する方法、及び回収された二酸化炭素を大気へ放出することなく貯蔵する方法が研究されている。
【0003】
二酸化炭素を分離回収する具体的なシステムとしては、排ガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させる吸収塔と、吸収塔から供給された二酸化炭素吸収後の吸収液(リッチ液)をリボイラにより加熱し、二酸化炭素を放出させるとともに吸収液を二酸化炭素放散後の吸収液(リーン液)に再生し、その後、吸収塔に循環させるシステムが知られている。
【0004】
このようなシステムにおいて、リボイラの熱源として、ボイラの蒸気により駆動される低圧タービンからの抽気蒸気又は第2中圧タービンの排出蒸気を用いる手法や、二酸化炭素の圧縮または冷却用コンプレッサを駆動するタービンの排気蒸気又は抽気蒸気を用いる手法、タービン中間段からの抽気蒸気を用いる手法などが提案されている(例えば特許文献1〜8参照)。
【0005】
また、既設の発電プラントに新たなタービンを追設し、出力を増加させる場合に、既設タービンの中間段からの抽気蒸気を追設タービンに供給するシステムが提案されている(例えば特許文献9参照)。
【0006】
二酸化炭素分離回収システムは、ボイラ、タービン、発電機等からなる発電システムと同時に設置される場合と、既設の発電システムに追設として設置される場合とが考えられる。
【0007】
二酸化炭素分離回収システムを既設の発電システムへ追設する場合、二酸化炭素分離回収システムのリボイラへの熱源を既設発電システムのどこから供給するかが大きな問題となる。上述した従来技術は、いずれも、リボイラへの熱源供給のために、新たな蒸気ライン、または、新たな第2中圧タービン、または、新たな二酸化炭素圧縮、冷却用コンプレッサ駆動用タービンを用意する必要があり、そのための改造は容易ではない。
【0008】
また、既設タービンの中間段から蒸気を抽気してリボイラに供給する場合、既設タービンの圧力バランスを崩し、二酸化炭素分離回収システム追設前のタービンの性能を保つことが困難になる。
【0009】
さらに、一般の発電システムの制御においては、給電指令に対する電気出力を保つことが重要であるが、上述した従来技術では、二酸化炭素分離回収システムのリボイラへの蒸気供給量が変化することによって、発電機を駆動するタービンへの蒸気供給量が変化し、結果として電気出力が変化していた。このように、従来は、タービンの性能低下を防止して給電指令に従った電気出力を保ちつつ、二酸化炭素を分離回収することが困難であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平3−193116号公報
【特許文献2】特許第2809381号公報
【特許文献3】特許第2792777号公報
【特許文献4】特許第2544554号公報
【特許文献5】米国特許第6,883,327号
【特許文献6】特開2006−213580号公報
【特許文献7】特開2008−23438号公報
【特許文献8】特開2009−247932号公報
【特許文献9】特開平6−10621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、タービンの性能低下を防止しつつ、二酸化炭素の分離回収を行う二酸化炭素回収型汽力発電システム及びその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様による二酸化炭素回収型汽力発電システムは、燃料を燃焼して蒸気を生成して排ガスを発生させるボイラと、前記ボイラから前記排ガスが供給され、この排ガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させる吸収塔と、前記吸収塔から二酸化炭素を吸収した吸収液が供給され、この吸収液から二酸化炭素ガスを放出させ、この二酸化炭素ガスを排出する再生塔と、前記再生塔からの吸収液を加熱し、発生させた蒸気を前記再生塔に供給するリボイラと、前記ボイラから蒸気が供給されて回転駆動するタービンと、前記タービンからの排気蒸気を冷却して復水を生成する復水器と、前記復水を第1ラインへ送り出す復水ポンプと、前記第1ラインに設けられ、前記復水を加熱する加熱器と、前記加熱器により加熱された前記復水を前記ボイラへ給水する給水ポンプと、前記タービンから抽気された蒸気を前記リボイラ及び前記加熱器へ供給する第2ラインと、前記第2ラインを介して前記タービンから抽気される蒸気の量を一定に保つ蒸気流量調整手段と、を備えるものである。
【0013】
本発明の一態様による二酸化炭素回収型汽力発電システムの運転方法は、ボイラが、タービンを駆動する蒸気を生成すると共に排ガスを発生させる工程と、吸収塔において、前記ボイラから排出される前記排ガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させる工程と、再生塔において、二酸化炭素を吸収した前記吸収液から二酸化炭素ガスを放出させ、この二酸化炭素ガスを排出する工程と、リボイラが、前記再生塔からの吸収液を加熱し、発生させた蒸気を前記再生塔に供給する工程と、復水器が前記タービンからの排気蒸気を冷却して復水を生成する工程と、加熱器が前記復水を加熱する工程と、ポンプが加熱された前記復水を前記ボイラに給水する工程と、前記タービンから一定量の蒸気を抽気する工程と、前記タービンから抽気した蒸気を前記加熱器及び/又は前記リボイラへ供給する工程と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、タービンの性能低下を防止しつつ、二酸化炭素の分離回収を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る二酸化炭素回収型汽力発電システムの概略構成図である。
【図2】二酸化炭素分離回収装置の概略構成図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る二酸化炭素回収型汽力発電システムの概略構成図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る二酸化炭素回収型汽力発電システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)図1に本発明の第1の実施形態に係る二酸化炭素回収型汽力発電システムの全体構成を示す。二酸化炭素回収型汽力発電システム1は、燃料を燃焼してタービン蒸気4を生成し、タービンを回転駆動させて発電を行う汽力発電プラント1aと、ボイラ6において生成された排ガス5から、この排ガス5に含まれる二酸化炭素を吸収する吸収液を用いて二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収プラント1bとから構成されている。
【0017】
ボイラ6には燃料及び燃焼用空気が供給され、火炉において燃料が燃焼し、タービン蒸気4が生成されるとともに、排ガス5が発生する。ボイラ6は、火炉における燃焼によりタービン蒸気4を加熱し主蒸気を発生させる過熱器9と、過熱器9に隣接して設けられ、過熱器9から後述する高圧蒸気タービン21を介して供給されるタービン蒸気4を再加熱して再熱蒸気とする再熱器10とを有する。
【0018】
汽力発電プラント1aは、ボイラ6の過熱器9から供給されるタービン蒸気4(主蒸気)により回転駆動する高圧蒸気タービン(高圧タービン)21と、この高圧タービン21にタービン軸20を介して連結され、高圧タービン21からボイラ6の再熱器10を介して供給されるタービン蒸気4(再熱蒸気)により回転駆動する中圧蒸気タービン(中圧タービン)22とを有している。また、この中圧タービン22にタービン軸20を介して低圧蒸気タービン(低圧タービン)23が連結され、この低圧タービン23は中圧タービン22から供給されるタービン蒸気4(中圧タービン22からの排気蒸気)により回転駆動するように構成されている。さらに、タービン軸20に、タービン軸20の回転により発電を行う発電機24が連結されている。
【0019】
なお、本実施形態では、高圧タービン21、中圧タービン22、低圧タービン23、及び発電機24の回転軸が連結されて1つのタービン軸20を構成する形としているが、このような構成に限定されず、それぞれ少なくとも1つの蒸気タービンを備える2軸以上のタービン軸と、各タービン軸に連結された複数の発電機により汽力発電プラント1aを構成してもよい。
【0020】
低圧タービン23の下部に、低圧タービン23から排出されるタービン蒸気(低圧タービン23からの排気蒸気)を、海水等の冷却水を用いて冷却し凝縮させて復水27とする復水器26が設けられている。
【0021】
復水器26から排出された復水27は、復水ポンプ31によりライン28の下流側へ送られ、加熱器32により加熱されてから、給水ポンプ34によりライン33を介してボイラ6へ送られる。加熱器32は、ボイラ給水の温度をあらかじめ高めることにより、ボイラ6での蒸気発生に使われる燃料の消費量を低減し、汽力発電プラント1aの熱効率を高める役割を有する。
【0022】
加熱器32には、ライン51及びライン52を介して、低圧タービン23から抽気された蒸気(低圧蒸気)が供給される。ライン52には弁54が設けられており、加熱器32への低圧蒸気の供給量を調整できるようになっている。加熱器32はこの低圧蒸気を熱源として復水27を加熱する。加熱器32からのドレンはライン56を介して復水器26に供給される。
【0023】
また、ライン51はライン52及びライン53に分岐しており、低圧タービン23から抽気された低圧蒸気は、ライン51及びライン53を介して、後述するリボイラ41に供給される。ライン53には弁55が設けられており、リボイラ41への低圧蒸気の供給量を調整できるようになっている。リボイラ41からのドレンは、ライン57を介して復水器26に供給される。
【0024】
ライン51には蒸気の流量を測定する流量計60が設けられている。流量計60は、測定結果を制御部70に通知する。制御部70は、流量計60の測定結果に基づいて、低圧タービン23から抽気される蒸気量が一定となるように、弁54及び弁55の開度を制御する。流量計60、制御部70、弁54及び弁55からなる蒸気流量調整手段を用いて、低圧タービン23からの抽気蒸気量を制御する方法については後述する。
【0025】
図1に示すように、二酸化炭素回収プラント1bには、ボイラ6から排ガス5が供給され、この排ガス5に含まれる二酸化炭素を分離して回収する二酸化炭素分離回収装置40が設けられている。
【0026】
図2に二酸化炭素分離回収装置40の概略構成を示す。二酸化炭素分離回収装置40は、排ガス5に含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させる吸収塔403と、吸収塔403から二酸化炭素を吸収した吸収液(以下、リッチ液404aと記す)が供給され、このリッチ液404aを加熱し、吸収液から水蒸気を含む二酸化炭素ガスを放出させて、二酸化炭素ガスと水蒸気とを含む排出ガス402dを排出し、吸収液を再生する再生塔405とを備える。
【0027】
吸収塔403の下部に、排ガス導入ライン408を介してボイラ6から排ガス5が供給され、吸収塔403の頂部から二酸化炭素が取り除かれた排ガス402bが排出されるようになっている。
【0028】
吸収塔403は、吸収液が二酸化炭素を吸収することにより生成されたリッチ液404aを貯留する吸収塔スチル(タンク)403aを有する。同様に、再生塔405は、リッチ液404aが二酸化炭素ガスを放出することにより再生された吸収液(以下、リーン液404bと記す)を貯留する再生塔スチル(タンク)405aを有する。
【0029】
ここで、二酸化炭素を吸収可能な吸収液には、例えばアミン化合物を水に溶かしたアミン化合物水溶液が使用される。
【0030】
図2に示すように、再生塔405にはリボイラ41が設けられている。リボイラ41は、低圧タービン23から抽気された蒸気を熱源として、再生塔スチル405aに貯留されていたリーン液404bの一部を加熱してその温度を上昇させて蒸気を生成し、再生塔405に供給する。
【0031】
リボイラ41においてリーン液404bを加熱する際、リーン液404bから二酸化炭素ガスが放出され、吸収液蒸気とともに再生塔405に供給される。この吸収液蒸気は、充填層405bを介して再生塔405内を上昇し、リッチ液404aを加熱する。これによりリッチ液404aから二酸化炭素ガスが放出される。充填層405bは、例えば、多孔構造、ハニカム構造等を有するもので構成され、充填層405bを通過する吸収液を撹乱する作用を有するものであればよい。
【0032】
再生塔405から排出された二酸化炭素ガスと吸収液蒸気とを含む排出ガス402dは、ガスライン435を通り、ガス冷却器431によって水分凝縮した後、気液分離器432によって二酸化炭素ガスと吸収液成分を含む還流水とに気液分離される。気液分離器432からの二酸化炭素ガス402eは回収二酸化炭素導出ライン433を介して排出され、貯蔵設備(図示せず)で貯蔵される。また、気液分離器432からの還流水は還流ライン434を介して再生塔405に戻される。
【0033】
吸収塔403と再生塔405との間に、再生塔405から吸収塔403に供給されるリーン液404bを熱源として、吸収塔403から再生塔405に供給されるリッチ液404aを加熱する再生熱交換器407が設けられ、リーン液404bの熱を回収するように構成されている。ここで、上述したように、再生塔405においてリッチ液404aから二酸化炭素ガスを放出させる際、リッチ液404aはリボイラ41からの高温の蒸気を熱源として加熱される。従って、再生熱交換器407に供給されるリーン液404bの温度は比較的高く、このリーン液404bが熱源として用いられている。
【0034】
吸収塔403と再生熱交換器407との間に、吸収塔タンク403aの底部から再生熱交換器407にリッチ液404aを供給するリッチ液ライン411が連結されている。このリッチ液ライン411に、吸収塔403からのリッチ液404aを再生熱交換器407に送り込むリッチ液ポンプ412が設けられている。
【0035】
再生熱交換器407と再生塔405との間に、再生熱交換器407から再生塔405の上部にリッチ液404aを供給するリッチ液ライン413が連結されている。
【0036】
再生塔405と再生熱交換器407との間に、再生塔タンク405aの底部から再生熱交換器407にリーン液404bを供給するリーン液ライン414が連結されている。このリーン液ライン414に、再生塔405からのリーン液404bを再生熱交換器407に送り込むリーン液ポンプ415が設けられている。
【0037】
再生熱交換器407からのリーン液404bは、吸収塔403の上部へ送り込まれる。
【0038】
吸収塔403の上部に供給された吸収液は、吸収塔403内において上部から吸収塔タンク403aに向けて下降する。一方、吸収塔403に供給された排ガス5は、吸収塔403内において下部から頂部に向けて上昇する。そのため、二酸化炭素を含む排ガス5と吸収液とが充填層403bにおいて向流接触(直接接触)し、吸収液が排ガス5中の二酸化炭素を吸収し、リッチ液404aが生成される。二酸化炭素が取り除かれた燃焼排ガス402bは、吸収塔403の頂部から排出され、リッチ液404aは吸収塔403の吸収塔タンク403aに貯留される。充填層403bは、例えば、多孔構造、ハニカム構造等を有するもので構成され、充填層403bを通過する吸収液を撹乱する作用を有するものであればよい。
【0039】
吸収塔403の頂部から排出された燃焼排ガス402bは、ガス冷却器421によって冷却されて水分凝縮した後、気液分離器422によって排ガスと吸収液成分を含む還流水とに気液分離される。気液分離器422からの排ガス402cは排ガス導出ライン423を介して系外に排出され、還流水は還流ライン424を介して吸収塔403に戻される。
【0040】
次に、図1を用いて、制御部70による弁54及び弁55の開度の調整方法について説明する。本実施の形態において、制御部70は、弁54および弁55の開度を変化させる際に、当該弁54および弁55の開度変化の前後で低圧タービン23から抽気される蒸気の量が大きく変化しないように弁54および弁55の開度を調節する。
【0041】
制御部70が、弁54を開け、弁55を閉じる場合、低圧タービン23から抽気される蒸気が全て加熱器32に供給される。この場合、ボイラ給水の温度は最も高くなり、汽力発電プラント1aの熱効率を最も高めることができる。
【0042】
制御部70が、弁55の開度を段階的に大きくするとともに、流量計60の測定結果に基づいて、低圧タービン23から抽気される蒸気の量が一定となるように弁54の開度を段階的に小さくすることにより、高圧タービン21、中圧タービン22、低圧タービン23を通過する蒸気量をほぼ一定に保ちながら、二酸化炭素回収プラント1b(二酸化炭素分離回収装置40)での二酸化炭素回収量を段階的に増やすことが可能である。
【0043】
弁54を閉じて、低圧タービン23から抽気される蒸気をすべてリボイラ41に導くことで、二酸化炭素分離回収装置40での二酸化炭素回収量を最も多くすることができる。
【0044】
なお、低圧タービン23から抽気される蒸気の温度、圧力条件を推定することは容易に可能であり、弁54および弁55の開度と、それぞれの流量との関係を事前に知ることも容易にできる。従って、低圧タービン23から抽気される蒸気量をほぼ一定に保つための弁54および弁55の調整を容易に行うことができるため、流量計60を省略する構成にしてもよい。
【0045】
一般に、タービンからの抽気蒸気量が変化すると、蒸気流量に対して最適に設計されたタービン翼との関係が崩れ、結果的にタービンの性能が低下する。しかし、本実施形態では、低圧タービン23から抽気される蒸気量をほぼ一定に保つことができるため、低圧タービン23は設計通りの運転が可能となる。従って、低圧タービン23の性能低下を防止しつつ、低圧タービン23から二酸化炭素分離回収装置40のリボイラ41に蒸気を供給することができる。
【0046】
このような構成によれば、既設低圧タービンの性能を低下させることなく、給電指令による電気出力を保ちながら、二酸化炭素回収プラント1bでの二酸化炭素回収量と、汽力発電プラント1aの熱効率とを変化させる制御が容易に可能である。
【0047】
また、復水27を加熱する加熱器32は、汽力発電プラントにおいては一般的に設置されるものである。このため、既設の汽力発電プラント1aへの二酸化炭素回収プラント1bの追設は、弁55を有するライン53を、ライン51から分岐設置してリボイラ41へと接続し、リボイラ41からのドレンを復水器26へと導くライン57を設置するだけで容易に可能である。
【0048】
(第2の実施形態)図3に本発明の第2の実施形態に係る二酸化炭素回収型汽力発電システムの概略構成を示す。本実施形態は、図1に示す第1の実施形態と比較して、中圧タービン22から蒸気を抽気する点が異なる。図3において、図1に示す第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0049】
二酸化炭素分離回収装置40において吸収液として用いられるアミン化合物水溶液は、二酸化炭素の吸収および放出に関して温度特性を有する。特に、二酸化炭素の放出に関しては、吸収液の温度を高くすることが好ましい。低圧タービン23から抽気する低圧蒸気よりも中圧タービン22から抽気する中圧蒸気の方が高温であり、この中圧蒸気をリボイラ41に供給することにより吸収液の性能が高められる場合には、本実施形態のようにリボイラ41への供給蒸気を中圧タービン22から抽気する。
【0050】
中圧タービン22から抽気される蒸気の量は、制御部70による弁54、弁55の開度の調整により、一定に保たれている。従って、本実施形態に係る二酸化炭素回収型汽力発電システムにより、タービンの性能低下を防止しつつ、二酸化炭素の分離回収を行うことができる。また、二酸化炭素分離回収装置40における吸収液の性能を向上させることができる。
【0051】
なお、二酸化炭素分離回収装置40における吸収液は熱劣化特性を有するため、リボイラ41に供給する蒸気の温度は、このような吸収液の二酸化炭素放出特性、熱劣化特性により決定することが好ましい。
【0052】
上記第1の実施形態では、低圧タービン23から蒸気を抽気する構成を示し、上記第2の実施形態では、中圧タービン22から蒸気を抽気する構成を示したが、高圧タービン23から蒸気を抽気してもよい。
【0053】
(第3の実施形態)図4に本発明の第3の実施形態に係る二酸化炭素回収型汽力発電システムの概略構成を示す。本実施形態は、図1に示す第1の実施形態と比較して、さらに高圧タービン21から蒸気を抽気し、抽気した蒸気を、復水27(ボイラ給水)を加熱する加熱器80の熱源及びリボイラ41の熱源とする点が異なる。図4において、図1に示す第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0054】
図4に示すように、高圧タービン21から抽気された蒸気(以下、高圧蒸気という)が流れるライン81は、ライン82及びライン83に分岐している。ライン82は、ライン33に設けられた加熱器80に高圧蒸気を供給する。ライン82には弁85が設けられており、加熱器80への高圧蒸気の供給量を調整できるようになっている。加熱器80から排出されるドレンは、ライン86を介して復水器26に供給される。
【0055】
加熱器80がボイラ給水を加熱することで、ボイラ6で蒸気発生に使われる燃料を減らし、汽力発電プラント1aの熱効率を高めることができる。
【0056】
ライン83は、ライン53に接続され、高圧蒸気と低圧蒸気との混合蒸気がリボイラ41に供給される。ライン83には弁(減圧弁)85が設けられており、低圧蒸気と混合される高圧蒸気の量が調整できるようになっている。
【0057】
制御部70は、高圧タービン21から抽気される蒸気の量が一定となるように、弁84及び弁85の開度を制御する。ライン81に、高圧タービン21から抽気される蒸気の量を測定する流量計(図示せず)を設け、制御部70が、この流量計の測定結果に基づいて、弁84及び弁85の開度を制御するようにしてもよい。
【0058】
低圧蒸気と、低圧蒸気よりも高温の高圧蒸気との混合蒸気をリボイラ41に供給することにより、上記第1の実施形態と比較して、二酸化炭素分離回収装置40における吸収液の二酸化炭素放出性能を高めることができる。
【0059】
また、複数のタービンからの蒸気の混合比を変えることで、混合蒸気の温度を変えることができる。二酸化炭素分離回収装置40で使用される吸収液を変更した場合、混合蒸気の温度を吸収液の種類に応じた好適な温度にすることで、吸収液の性能を高めることができる。
【0060】
本実施形態では、高圧タービン21から抽気した蒸気と、低圧タービン23から抽気した蒸気とを混合してリボイラ41に供給するにあたり、弁54、弁55、弁84、弁85の開度を調整し、高圧タービン21及び低圧タービン23から抽気される蒸気の量を一定にしている。そのため、高圧タービン21、中圧タービン22、低圧タービン23を通過する蒸気量を一定にしつつ、リボイラ41への供給蒸気流量を変化させることができる。
【0061】
従って、本実施形態に係る二酸化炭素回収型汽力発電システムにより、タービンの性能低下を防止しつつ、二酸化炭素の分離回収を行うことができる。
【0062】
上記第3の実施形態では、高圧タービン21及び低圧タービン23から蒸気を抽気していたが、中圧タービン22及び低圧タービン23から蒸気を抽気してもよいし、高圧タービン21及び中圧タービン22から蒸気を抽気してもよい。また、高圧タービン21、中圧タービン22、及び低圧タービン23から蒸気を抽気するようにしてもよい。
【0063】
上記第1〜第3の実施形態では、高圧タービン21から排気される蒸気がボイラ6において加熱されてから中圧タービン22に供給される、いわゆる再熱サイクルになっているが、高圧タービン21から排気される蒸気を直接中圧タービン22に供給するようにしてもよい。
【0064】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 二酸化炭素回収型汽力発電システム
1a 汽力発電プラント
1b 二酸化炭素回収プラント
4 タービン蒸気
5 排ガス
6 ボイラ
9 過熱器
10 再熱器
20 タービン軸
21 高圧タービン
22 中圧タービン
23 低圧タービン
24 発電機
26 復水器
27 復水
31 復水ポンプ
32 加熱器
34 給水ポンプ
40 二酸化炭素分離回収装置
41 リボイラ
52、53 弁
60 流量計
70 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼して蒸気を生成して排ガスを発生させるボイラと、
前記ボイラから前記排ガスが供給され、この排ガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させる吸収塔と、
前記吸収塔から二酸化炭素を吸収した吸収液が供給され、この吸収液から二酸化炭素ガスを放出させ、この二酸化炭素ガスを排出する再生塔と、
前記再生塔からの吸収液を加熱し、発生させた蒸気を前記再生塔に供給するリボイラと、
前記ボイラから蒸気が供給されて回転駆動するタービンと、
前記タービンからの排気蒸気を冷却して復水を生成する復水器と、
前記復水を第1ラインへ送り出す復水ポンプと、
前記第1ラインに設けられ、前記復水を加熱する加熱器と、
前記加熱器により加熱された前記復水を前記ボイラへ給水する給水ポンプと、
前記タービンから抽気された蒸気を前記リボイラ及び前記加熱器へ供給する第2ラインと、
前記第2ラインを介して前記タービンから抽気される蒸気の量を一定に保つ蒸気流量調整手段と、
を備える二酸化炭素回収型汽力発電システム。
【請求項2】
前記ボイラは主蒸気を発生させる過熱器及び再熱蒸気を発生させる再熱器を有し、
前記タービンは、前記主蒸気が供給されて回転駆動する高圧タービン、前記再熱蒸気が供給されて回転駆動する中圧タービン、及び前記中圧タービンからの排気蒸気が供給されて回転駆動する低圧タービンを有し、
前記リボイラ及び前記加熱器には、前記高圧タービン、前記中圧タービン、及び前記低圧タービンの少なくともいずれか1つから抽気された蒸気が供給されることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素回収型汽力発電システム。
【請求項3】
前記タービンは、前記ボイラが発生させる蒸気が供給されて回転駆動する高圧タービン、前記高圧タービンからの排気蒸気が供給されて回転駆動する中圧タービン、及び前記中圧タービンからの排気蒸気が供給されて回転駆動する低圧タービンを有し、
前記リボイラ及び前記加熱器には、前記高圧タービン、前記中圧タービン、及び前記低圧タービンの少なくともいずれか1つから抽気された蒸気が供給されることを特徴とする請求項1に記載の二酸化炭素回収型汽力発電システム。
【請求項4】
前記蒸気流量調整手段は、
前記第2ラインに設けられ、開度に応じて前記第2ラインの蒸気流量を調整する弁と、
前記弁の開度を制御する制御部と、
を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二酸化炭素回収型汽力発電システム。
【請求項5】
前記蒸気流量調整手段は、前記第2ラインに設けられ、蒸気の流量を測定する流量計をさらに有し、前記制御部は、前記流量計の測定結果に基づいて前記弁の開度を制御することを特徴とする請求項4に記載の二酸化炭素回収型汽力発電システム。
【請求項6】
ボイラが、タービンを駆動する蒸気を生成すると共に排ガスを発生させる工程と、
吸収塔において、前記ボイラから排出される前記排ガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させる工程と、
再生塔において、二酸化炭素を吸収した前記吸収液から二酸化炭素ガスを放出させ、この二酸化炭素ガスを排出する工程と、
リボイラが、前記再生塔からの吸収液を加熱し、発生させた蒸気を前記再生塔に供給する工程と、
復水器が前記タービンからの排気蒸気を冷却して復水を生成する工程と、
加熱器が前記復水を加熱する工程と、
ポンプが加熱された前記復水を前記ボイラに給水する工程と、
前記タービンから一定量の蒸気を抽気する工程と、
前記タービンから抽気した蒸気を前記加熱器及び/又は前記リボイラへ供給する工程と、
を備える二酸化炭素回収型汽力発電システムの運転方法。
【請求項7】
前記タービンを構成する高圧タービン、中圧タービン、及び低圧タービンの少なくともいずれか1つから一定量の蒸気を抽気することを特徴とする請求項6に記載の二酸化炭素回収型汽力発電システムの運転方法。
【請求項8】
前記タービンから抽気された蒸気の流量を測定する工程と、
前記流量の測定結果に基づいて、前記タービンと前記加熱器及び前記リボイラとの間で蒸気を流す配管に設けられた弁の開度を制御する工程と、
をさらに備えることを特徴とする請求項6又は7に記載の二酸化炭素回収型汽力発電システムの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−202217(P2012−202217A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64499(P2011−64499)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】