説明

二酸化炭素回収装置

【課題】排ガスが流入する容器を劣化させることなく、効率的に二酸化炭素を回収できる二酸化炭素回収装置を提供すること。
【解決手段】排ガス中に含まれる二酸化炭素を固化させて回収する二酸化炭素回収装置であって、内部を排ガスが流通する回収装置本体と、前記回収装置本体の内部に水平方向に延びるように配置され、内部を冷媒が流通する伝熱管と、前記伝熱管に近接して配置され、水平方向に移動して前記伝熱管の周面に付着した固化された二酸化炭素を掻き落とす掻き落とし手段と、前記回収装置本体の下方に配置され前記掻き落とし手段により掻き落とされた二酸化炭素を収容する収容部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を含むガスから効率的に二酸化炭素を回収する二酸化酸素回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、火力発電所や化学プラント等において、石炭、石油又はLNG等の化石燃料を燃焼させることで発生する排ガス中には、多量の二酸化炭素が含まれており、環境面を考慮すると排ガス中に含まれる二酸化炭素を効率的に回収する必要がある。
【0003】
排ガス中に含まれる二酸化炭素を回収する手法として、排ガス中の二酸化炭素をドライアイスとして固化させて分離する手法が知られている。例えば、特許文献1には、二酸化炭素回収容器の内部に排ガスを供給し、この二酸化炭素回収容器の内部を冷却することで、排ガス中に含まれる二酸化炭素を二酸化炭素回収容器の内面にドライアイスとして付着させる手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−69057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で対案された手法では、二酸化炭素回収容器の内面に付着したドライアイスを回収するために、二酸化炭素回収容器自体に振動を加えて、この振動により二酸化炭素回収容器に付着したドライアイスを分離させる必要があった。そのため、二酸化炭素回収容器に過度の力が恒常的に加えられることになり、二酸化炭素回収容器が疲労してしまう。そして、このような疲労によって二酸化炭素回収容器の気密性が損なわれて、この二酸化炭素回収容器から排ガスが漏洩するおそれがあった。
【0006】
つまり、従来の手法においては、経年的に二酸化炭素回収容器に振動が加えられる結果、二酸化炭素回収容器が劣化して破損する場合があり、効率的に二酸化炭素の回収を行えなくなってしまうことがある。
【0007】
従って、本発明は、排ガスが流入する容器を劣化させることなく、効率的に二酸化炭素を回収できる二酸化炭素回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の二酸化炭素回収装置は、排ガス中に含まれる二酸化炭素を固化させて回収する二酸化炭素回収装置であって、内部を排ガスが流通する回収装置本体と、該回収装置本体の内部に水平方向に延びるように配置され、内部を冷媒が流通する伝熱管と、前記伝熱管に近接して配置され、水平方向に移動して前記伝熱管の周面に付着した固化された二酸化炭素を掻き落とす掻き落とし手段と、前記回収装置本体の下方に配置され前記掻き落とし手段により掻き落とされた二酸化炭素を収容する収容部と、を備える。
【0009】
(2)前記伝熱管は、前記回収装置本体の高さ方向における下部に配置される第1伝熱管と、該第1伝熱管よりも上部に配置される第2伝熱管と、を備え、前記第1伝熱管における冷媒の流通方向は、前記第2伝熱管における冷媒の流通方向と逆方向であることが好ましい。
【0010】
(3)前記第1伝熱管において前記冷媒を第1方向に流通させると共に、前記第2伝熱管において該冷媒を前記第1方向とは逆方向の第2方向に流通させる第1状態と、前記第1伝熱管において前記冷媒を前記第2方向に流通させると共に、前記第2伝熱管において該冷媒を前記第1方向に流通させる第2状態と、を切り替える流路切り替え手段をさらに備えることが好ましい。
【0011】
(4)前記回収装置本体は、該回収装置本体の上部に設けられ排ガスが導入される排ガス導入口と、前記排ガス導入口から導入された排ガスを下方に流通させる第1排ガス流通室と、前記第1排ガス流通室の下部に連続して設けられ、前記第1排ガス流通室を流通した排ガスを上方に流通させる第2排ガス流通室と、前記第2排ガス流通室の上部に設けられ前記第2排ガス流通室を流通した排ガスを排出する排ガス排出口と、を備えることが好ましい。
【0012】
(5)前記伝熱管及び前記掻き落とし手段は、前記第1排ガス流通室に設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、伝熱管に付着し固化した二酸化炭素を掻き落として収容部に回収するようにしたので、回収装置本体に振動を加える必要がない。よって、疲労等によって回収装置本体の気密性が損なわれることがなく、効率的に二酸化炭素の回収を行える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る二酸化炭素回収装置を説明する模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る回収装置本体を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る伝熱管を示す平面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る掻き落とし部材を示す正面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る掻き落とし部材及び駆動部を示す側面図である。
【図6】図1に示す二酸化炭素回収装置における掻き落とし部材が待機位置にある状態を一部破断して概略的に示す図である。
【図7】図1に示す二酸化炭素回収装置における掻き落とし部材が待機位置と駆動位置との間に位置する状態を一部破断して概略的に示す図である。
【図8】図1に示す二酸化炭素回収装置における掻き落とし部材が駆動位置にある状態を一部破断して概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の二酸化炭素回収装置の好ましい一実施形態について図面を参照ながら説明する。
【0016】
図1に示すように、二酸化炭素回収装置1は、例えば、石炭、石油又はLNG等を燃料として用いる火力発電所で用いられ、当該火力発電所からの排ガス中に含まれる二酸化炭素を固化させて回収する。
【0017】
二酸化炭素回収装置1は、回収装置本体10と、回収装置本体10の内部に配置される伝熱管20を含んで構成され冷媒が流通される冷媒流通部24と、伝熱管20の周面に付着した固化された二酸化炭素(ドライアイス)を掻き落とす掻き落とし手段30と、伝熱管20を流通する冷媒の流路を切り替える流路切替手段40(図2参照)と、掻き落とされたドライアイスを回収する回収部50と、回収装置本体10の下方に配置される収容部60と、回収部50及び収容部60の圧力を調整するポンプ70と、制御装置80と、を備える。
【0018】
図2に示すように、回収装置本体10は、排ガス導入口11と、第1排ガス流通室12と、第2排ガス流通室14と、排ガス排出口13と、を備え、内部を排ガスが流通する。
排ガス導入口11は、回収装置本体10の上部に設けられる。回収装置本体10には、この排ガス導入口11から排ガスが導入される。
第1排ガス流通室12は、排ガス導入口11から下方に延びる。この第1排ガス流通室12では、排ガス導入口11から導入された排ガスが上方から下方に向けて流通する。
第2排ガス流通室14は、第1排ガス流通室12の下部に連続して設けられる。この第2排ガス流通室14は、上方に延びて形成される。第2排ガス流通室14では、第1排ガス流通室12を流通した排ガスが下方から上方に向けて流通する。
排ガス排出口13は、第2排ガス流通室14の上部に設けられる。この排ガス排出口13からは、第2排ガス流通室14を流通した排ガスが排出される。排ガス排出口13は、排ガス導入口11よりも低い位置に配置される。
【0019】
回収装置本体10は、第1排ガス流通室12と第2排ガス流通室14とが連続する部分において、水平方向における断面の面積が下方に向かって徐々に小さくなるようにすぼまっている。つまり、第1排ガス流通室12と第2排ガス流通室14とが連続する部分における回収装置本体10の壁面は、回収装置本体10の水平方向における断面の中心に向かって下り傾斜した傾斜面となっており、下方に突出した突出部16を形成している。この突出部16には、開口が設けられている。第1排ガス流通室12の容積は、第2排ガス流通室14の容積よりも大きく、回収装置本体10に設けられた開口は、第1排ガス流通室12側に位置している。
【0020】
冷媒流通部24は、冷媒が略水平に流通される第1冷媒流通部24aと、この第1冷媒流通部の上方に、第1冷媒流通部と略平行に配置される第2冷媒流通部24bと、第1冷媒流通部24aと第2冷媒流通部24bとを連結する一対の連結部24cと、を備える。冷媒流通部24は、回収装置本体10の内部に水平方向に延びるようにして配置され、内部を冷媒が流通する伝熱管20を有する。伝熱管20の内部には、液体窒素等の冷媒が流通する。
【0021】
図2及び図3に示すように、第1冷媒流通部24aは、伝熱管20のうち互いに略平行に延びる複数の第1伝熱管21と、複数の第1伝熱管21の延びる方向に略垂直に延び、複数の第1伝熱管21それぞれの一端側に連結される第1連結管241と、第1連結管241に略平行に延び複数の第1連結管241それぞれの他端側に連結される第2連結管242と、一端側が第1連結管241に連結され、他端側が第2連結管242に連結される第3連結管243と、一端側が第3連結管243に連結される第4連結管244と、を備える。
【0022】
複数の第1伝熱管21は、第1排ガス流通室12を挿通して配置される。複数の第1伝熱管21の大部分は、第1排ガス流通室12の内部に位置する。複数の第1伝熱管21の一端側及び他端側は、第1排ガス流通室12の外部に位置する。
【0023】
第1連結管241は、第1排ガス流通室12の外部に配置される。この第1連結管241には、複数の第1伝熱管21それぞれの一端側が長手方向に所定の間隔をあけて連結される。
第2連結管242は、第1排ガス流通室12の外部に配置される。この第2連結管242には、複数の第1伝熱管21それぞれの他端側が長手方向に所定の間隔をあけて連結される。
【0024】
第3連結管243は、第1排ガス流通室12の外部に配置される。この第3連結管243は、第1排ガス流通室12の側面に沿って配置される。第3連結管243の一端側は、第1連結管241の長手方向の略中央部に連結され、第3連結管243の他端側は、第2連結管242の長手方向の略中央部に連結される。
第4連結管244は、第3連結管243の長手方向の略中央部に連結される。
【0025】
第2冷媒流通部24bは、伝熱管20のうち互いに略平行に延びる複数の第2伝熱管22と、複数の第2伝熱管22の延びる方向に略垂直に延び、複数の第2伝熱管22それぞれの一端側に連結される第5連結管245と、第5連結管245に略平行に延び複数の第2伝熱管22それぞれの他端側に連結される第6連結管246と、一端側が第5連結管245に連結され、他端側が第6連結管246に連結される第7連結管247と、一端側が第7連結管247に連結される第8連結管248と、を備える。
【0026】
複数の第2伝熱管22は、第1伝熱管21よりも上部に配置される。複数の第2伝熱管22は、複数の第1伝熱管21の延びる方向に沿うように第1排ガス流通室12を挿通して配置される。複数の第2伝熱管22の大部分は、第1排ガス流通室12の内部に位置する。複数の第2伝熱管22の一端側及び他端側は、第1排ガス流通室12の外部に位置する。
【0027】
第5連結管245は、第1排ガス流通室12の外部に配置される。この第5連結管245には、複数の第2伝熱管22それぞれの一端側が長手方向に所定の間隔をあけて連結される。
第6連結管246は、第1排ガス流通室12の外部に配置される。この第6連結管246には、複数の第2伝熱管22それぞれの他端側が長手方向に所定の間隔をあけて連結される。
【0028】
第7連結管247は、第1排ガス流通室12の外部に配置される。この第7連結管247は、第1排ガス流通室12の側面に沿って配置される。第7連結管247の一端側は、第5連結管245の長手方向の略中央部に連結され、第7連結管247の他端側は、第6連結管246の長手方向の略中央部に連結される。
第8連結管248は、第7連結管247の長手方向の略中央部に連結される。
【0029】
一対の連結部24cは、第1連結管241と第5連結管245とを連結する第9連結管249、及び第2連結管242と第6連結管246とを連結する第10連結管250により構成される。第9連結管249は、第1連結管241の長手方向の略中央部と第5連結管245の長手方向の略中央部とを連結する。第10連結管250は、第2連結管242の長手方向の略中央部と第6連結管246の長手方向の略中央部とを連結する。
【0030】
以上の冷媒流通部24では、冷媒は、第4連結管244から第1冷媒流通部24aに導入される。第1冷媒流通部24aを流通した冷媒は、連結部24cを通って第2冷媒流通部24bに流入される。そして第2冷媒流通部24bを流通した冷媒は、第8連結管248から導出される。
【0031】
流路切替手段40は、冷媒流通部24を流通する冷媒の流路を切り替える。この流路切替手段40は、第3連結管243の第1連結管241側に設けられる第1調節弁41と、第3連結管243の第2連結管242側に設けられる第1調節弁41と、第7連結管247の第5連結管245側に設けられる第3調節弁43と、第7連結管247の第6連結管246側に設けられる第4調節弁44と、第9連結管249に設けられた第5調節弁45と、第10連結管250に設けられた第6調節弁46と、を備える。
【0032】
流路切替手段40は、第1伝熱管21における冷媒の流通方向と、第2伝熱管22における冷媒の流通方向とを、逆方向となるよう切り替える。流路切替手段40は、第1伝熱管21において冷媒を第1方向(図2の矢印A方向)に流通させると共に、第2伝熱管22において冷媒を第1方向とは逆方向の第2方向に流通させる第1状態と、第1伝熱管21において冷媒を第2方向に流通させると共に、第2伝熱管22において冷媒を第1方向に流通させる第2状態と、を切り替える。
【0033】
より具体的には、第1状態で冷媒を流通させる場合には、第2調節弁42を開放すると共に第1調節弁41を閉鎖する。これにより、第4連結管244から導入された冷媒は、第3連結管243を第2連結管242側に流通し、複数の第1伝熱管21を第2連結管242側から第1連結管241側に流通する。第1連結管241側に流通された冷媒は、第1調節弁41が閉鎖されているため、第9連結管249を通って複数の第2伝熱管22に流通する。冷媒は、複数の第2伝熱管22の第5連結管245側から第6連結管246側に流通する。第6連結管246側に流通した冷媒は、第7連結管247を流通し、第3調節弁43が閉鎖されているため第5連結管245側に流通せずに、第8連結管248を流通して導出される。
【0034】
また、第2状態で冷媒を流通させる場合には、第1調節弁41を開放すると共に第2調節弁42弁を閉鎖する。これにより、第4連結管244から導入された冷媒は、第3連結管243を第1連結管241側に流通し、複数の第1伝熱管21を第1連結管241側から第2連結管242側に流通する。第2連結管242側に流通された冷媒は、第2調節弁42が閉鎖されているため、第10連結管250を通って複数の第2伝熱管22に流通する。冷媒は、複数の第2伝熱管22の第6連結管246側から第5連結管245側に流通する。第5連結管245側に流通した冷媒は、第7連結管247を流通し、第4調節弁44が閉鎖されているため第6連結管246側に流通せずに、第8連結管248を流通して導出される。
【0035】
図4及び5に示すように、掻き落とし手段30は、第1排ガス流通室12の内部に配置される略長方形の板状の掻き落とし部材31と、掻き落とし部材31を水平方向に移動させる駆動部としての駆動装置32と、を備える。掻き落とし手段30は、伝熱管20の周面に近接して配置され、水平方向に移動して伝熱管20の周面に付着した固化された二酸化炭素(ドライアイス)を掻き落とす。
【0036】
掻き落とし部材31は、その板面が伝熱管20の延びる方向に直交し、板面の厚さ方向が鉛直方向に沿うように配置される。この掻き落とし部材31には、複数の伝熱管20が挿通される複数の伝熱管挿通穴33が形成されている。複数の伝熱管挿通穴33の内周面と伝熱管20の外周面との間には、適度なクリアランス(例えば、1mm〜3mm)が形成されている。すなわち、複数の伝熱管挿通穴33の内周面は、伝熱管20の外周面に近接して配置されている。
【0037】
図5に示すように、掻き落とし部材31は、一対の第1板状部材31aと、一対の第1板状部材31aの間に配置される第2板状部材31bと、を備える。一対の第1板状部材31aは、フッ素樹脂により形成されており、第2板状部材31bは、ステンレス鋼板により形成されている。
【0038】
駆動装置32は、歯切りされたラック部34と、ラック部34に設けられた歯に噛み合うピニオン部35と、これらを駆動する電動機36と、を備える。ラック部34は、掻き落とし部材31の板面の重心に接続されて、この板面から略水平方向に延びる。ピニオン部35は、電動機36に設けられ、ラック部34の歯に噛み合った状態で回転する。電動機36は、ピニオン部35を回転させることでラック部34を駆動し、これによりラック部34に接続された掻き落とし部材31を水平方向に駆動する。
【0039】
図1に示すように、回収部50は、第1排ガス流通室12の下方に配置される。回収部50は、第1排ガス流通室12を流通して落下するドライアイスを回収するロータリーバルブ51と、ロータリーバルブ51の上方に設けられ、ロータリーバルブ51にかかる圧力を低減する圧力低減板52と、ロータリーバルブ51の下方に設けられる回収容器53と、ロータリーバルブ51と回収容器53との間に設けられ、回収容器53へドライアイスを流通させる配管の遮断及び開放を行うを切り替え装置54と、を備える。
【0040】
ロータリーバルブ51は、回収装置本体10の突出部16に接続される。ロータリーバルブ51の上方には開口部が設けられている。回収装置本体10の突出部16に設けられる開口とロータリーバルブ51の開口部とが合うように接合される。これにより、第1排ガス流通室12を流通して落下するドライアイスは、ロータリーバルブ51の開口部を介して、ロータリーバルブ51に回収される。
【0041】
圧力低減板52は、中央側が膨出した略三角錐状の形状を有し、回収装置本体10の下方で、かつ、ロータリーバルブ51の上方に、ロータリーバルブ51と間隔をあけて設けられる。圧力低減板52の水平方向の断面の形状は、回収装置本体10における圧力低減板52が設けられる位置の断面の形状より小さく、回収装置本体10の下方の壁面と圧力低減板52との間に隙間が形成される。回収装置本体10の下方における傾斜した壁面には、内側に突出する突起が設けられる。圧力低減板52は、この突起の上に載置され、突起に支持される。ドライアイスは、圧力低減板52と回収装置本体10の下方の壁面との間に形成された隙間から突出部16の開口に落ちて回収される。
【0042】
回収容器53は、ロータリーバルブ51の下方に設けられる。回収容器53は、蒸気が流通する蒸気管が通る耐圧器531を、例えば、2つ備える。回収容器53は、耐圧器531のそれぞれの上方、すなわちロータリーバルブ51側に設けられる入口調節弁532と、耐圧器531それぞれの下方に設けられる出口調節弁533と、を備える。耐圧器531は、内部を二酸化炭素が個体から液体に状態を変えるマイナス56.6℃以上31.1℃未満に調整され、加圧される。
【0043】
切り替え装置54は、ドライアイスをロータリーバルブ51から耐圧器531へ流通させる配管に設けられる切替ダンパである。耐圧器531が2つ設けられている場合、配管はロータリーバルブ51の下方から延び、それぞれの耐圧器531に向かって分岐する。切り替え装置54は、配管の分岐した部分に設けられ、耐圧器531の温度及び圧力や、耐圧器531内の液化した二酸化炭素の量等の状況に応じて配管を遮断又は開放し、ロータリーバルブ51により回収されたドライアイスを適切な耐圧器531へ誘導する。
【0044】
収容部60は、掻き落とし手段30により掻き落とされ、回収部50から収容部60へ液化した二酸化炭素が流通する通路62と、通路62を流通した液化した二酸化炭素を収容する収容容器61と、を備える。出口調節弁533を通過した液化した二酸化炭素は、通路62を流通し、収容容器61に収容される。収容容器61は、密閉性及び耐圧性を有する容器により構成されている。
【0045】
ポンプ70は、耐圧器531及び通路62の圧力を調整する。ポンプ70は、耐圧器531及び通路62の圧力を、例えば10Mpa以上に昇圧する。
【0046】
制御装置80は、駆動装置32を制御して、掻き落とし部材31を伝熱管20の長手方向における一方側と他方側との間で移動させる。具体的には、制御装置80は、電動機36を駆動させて、電動機36に設けられたピニオン部35(図示せず)を、ラック部34の歯に噛み合った状態で回転させる。これにより、ラック部34に接続された掻き落とし部材31が、水平方向に移動する。
【0047】
制御装置80は、冷媒流通部24に設けられた流路切替手段40を制御して、第1伝熱管21及び第2伝熱管22を流通する冷媒の方向を切り替える。
具体的には、制御装置80は、流路切替手段40を第1状態にする。すなわち、制御装置80は、第1調節弁41、第3調節弁43、第6調節弁46を閉じた状態に、第2調節弁42、第4調節弁44、第5調節弁45を開いた状態にする。そして、制御装置80は、図示しない冷媒供給装置から第1冷媒流通部24aへ冷媒を流通させる。すると、冷媒は、第4連結管244から、開放されている第2調節弁42を介して第2連結管242側へ流通し、第1伝熱管21を第2連結管242側から第1連結管241側へ流通する。第1連結管241側に流通した冷媒は、開放されている第5調節弁45を介して第9連結管249を流通し、複数の第2伝熱管22に流通する。そして冷媒は、複数の第2伝熱管22の第5連結管245側から第6連結管246側に流通する。第6連結管246側に流通した冷媒は、第7連結管247を流通し、第8連結管248を流通して導出される。
【0048】
制御装置80は、流路切替手段40を第2状態にする。すなわち、制御装置80は、第2調節弁42、第4調節弁44、第5調節弁45を閉じた状態に、第1調節弁41、第3調節弁43、第6調節弁46を開いた状態にする。そして、制御装置80は、図示しない冷媒供給装置から第1冷媒流通部24aへ冷媒を流通させる。すると、冷媒は、第4連結管244から、開放されている第1調節弁41を介して第1連結管241側へ流通し、第1伝熱管21を第1連結管241側から第2連結管242側へ流通する。第2連結管242側に流通した冷媒は、開放されている第6調節弁46を介して第10連結管250を流通し、複数の第2伝熱管22に流通する。冷媒は、複数の第2伝熱管22の第6連結管246側から第5連結管245側に流通する。そして、第5連結管245側に流通した冷媒は、第7連結管247を流通し、第8連結管248を流通して導出される。
【0049】
制御装置80は、タイマー(図示せず)を内蔵しており、所定の時間間隔で駆動装置32及び流路切替手段40に上述の処理を実行させる。
【0050】
また、制御装置80は、回収部50を制御して、第1排ガス流通室12を流通して落下するドライアイスを回収する。具体的には、制御装置80は、ロータリーバルブ51を回転させる。そして、制御装置80は、ロータリーバルブ51の下方に設けられた切り替え装置54を制御して、ロータリーバルブ51と耐圧器531との間に設けられる配管を遮断又は開放させる。これにより、ドライアイスは、ロータリーバルブ51により回収された後、開放された配管を流通し、耐圧器531の上方に設けられた入口調節弁532から耐圧器531へ流入する。耐圧器531は、内部にドライアイスを収容した状態で加圧される。
【0051】
また、制御装置80は、ポンプ70を制御して、耐圧器531及び通路62の圧力を調整する。
【0052】
次に、本実施形態の二酸化炭素回収装置1の動作について、図6から8を参照しながら説明する。
まず、駆動装置32を駆動し、掻き落とし部材31を、伝熱管20の長手方向における一方の端部側の待機位置A(図6参照)に位置させる。
この状態で、回収装置本体10の内部には、排ガス導入口11から二酸化炭素を含む排ガスが供給される。排ガス導入口11から第1排ガス流通室12の内部に導入された排ガス中に含まれる二酸化炭素は、第1排ガス流通室12の内部に水平方向に配置される伝熱管20の内部を流通する冷媒によって冷却され、伝熱管20の周面で固化しドライアイスとなって付着する。
【0053】
制御装置80は、予め設定された時間間隔で駆動装置32を駆動制御する。制御装置80は、電動機36を駆動させて、電動機36に設けられたピニオン部35(図示せず)を、ラック部34の歯に噛み合った状態で回転させる。これにより、ラック部34に接続された掻き落とし部材31が、水平方向に移動する(図7参照)。これにより、掻き落とし部材31は、待機位置Aから伝熱管20の長手方向における他方側の駆動位置B(図8参照)へ移動する。ここで、伝熱管20の表面側には、適度なクリアランスをあけて伝熱管挿通穴33の内周面が位置しているから、伝熱管20の周面に付着したドライアイスは、掻き落とし部材31の水平方向の移動によって、伝熱管20の周面から掻き落とされて、下方に落下する。
【0054】
制御装置80は、掻き落とし部材31が駆動位置Bに到達すると、掻き落とし部材31を待機位置Aまで復帰させる。
なお、掻き落とし部材31は、その板面が伝熱管20の延びる方向に直交するように配置されているので、排ガスは、掻き落とし部材31に妨げられずに流通する。
【0055】
制御装置80は、第1伝熱管21において冷媒を第1方向に流通させると共に、第2伝熱管22において冷媒を第1方向とは逆方向の第2方向に流通させる第1状態と、第1伝熱管21において冷媒を第2方向に流通させると共に、第2伝熱管22において冷媒を第1方向に流通させる第2状態と、を定期的に切り替える。冷媒は、上流から下流に流通するにしたがって温度が上昇するが、第1状態と第2状態が定期的に切り替わるため、第1伝熱管21及び第2伝熱管を流通する冷媒の温度が偏らない。
【0056】
具体的には、制御装置80は、冷媒流通部24に設けられた流路切替手段40を制御して、第1伝熱管21及び第2伝熱管22を流通する冷媒の方向を切り替える。
制御装置80は、流路切替手段40を第1状態にする。すなわち、制御装置80は、第1調節弁41、第3調節弁43、第6調節弁46を閉じた状態に、第2調節弁42、第4調節弁44、第5調節弁45を開いた状態とし、図示しない冷媒供給装置から第1冷媒流通部24aへ冷媒を流通させる。第1状態により、冷媒は、下方に配置される第1伝熱管21を第1方向へ流通し、連結部24cを流通して、上方に配置される第2伝熱管22を第2方向へ流通し、第2冷媒流通部24bを流通する。
【0057】
また、制御装置80は、流路切替手段40を第2状態にする。すなわち、制御装置80は、第2調節弁42、第4調節弁44、第5調節弁45を閉じた状態に、第1調節弁41、第3調節弁43、第6調節弁46を開いた状態とし、図示しない冷媒供給装置から第1冷媒流通部24aへ冷媒を流通させる。第2状態により、冷媒は、下方に配置される第1伝熱管21を第2方向へ流通し、連結部24cを流通して、上方に配置される第2伝熱管22を第1方向へ流通し、第2冷媒流通部24bを流通する。
【0058】
二酸化炭素は、伝熱管20により冷却され、固化して排ガスから除去される。二酸化炭素が除去された除去排ガスは、第1排ガス流通室12の下方から連続する第2排ガス流通室14へ流通し、第2排ガス流通室14を上方に流通する。そして、第2排ガス流通室14の上方に設けられた排ガス排出口13から排出される。ドライアイスは比重が重いため、第2排ガス流通室14を上方に流通せず、第1排ガス流通室12の下方に設けられた突出部16の開口に落下する。
【0059】
制御装置80は、排ガスが第1排ガス流通室12を流通する間、回収部50のロータリーバルブ51を回転させている。このため、突出部16の開口に落下したドライアイスは、突出部16の開口に接続されているロータリーバルブ51の上部開口部から回収される。
また、ロータリーバルブ51の上方には、圧力低減板52が配置されている。このため、伝熱管20の周面から掻き落とされて落下したドライアイスの一部は、圧力低減板52により受け止められる。圧力低減板52は、落下したドライアイスによりロータリーバルブ51にかかる負荷を低減する。
【0060】
ドライアイスは、ロータリーバルブ51により回収された後、回収容器53へ流通する。回収容器53には、例えば、2つ耐圧器531が設けられている。ロータリーバルブ51により回収されたドライアイスを耐圧器531へ送る配管には、切り替え装置54が設けられている。制御装置80は、耐圧器531それぞれの温度や、耐圧器531にすでに収容している二酸化炭素の量等に応じて、切り替え装置54に配管を遮断又は開放させる。回収されたドライアイスは、切り替え装置54により開放された配管を流通して耐圧器531に流通する。
【0061】
ドライアイスは、耐圧器531の上方に設けられた入口調節弁532を介して耐圧器531に流通する。耐圧器531の内部には、蒸気が流通する配管が設けられている。ドライアイスは、耐圧器531で加圧され、液体の状態に変化する。液体となった二酸化炭素は、耐圧器531の下方に設けられた出口調節弁533より排出され、通路62を流通して収容部60における収容容器61に収容される。
【0062】
以上の二酸化炭素回収装置1によれば、以下のような効果を奏する。
【0063】
排ガス中に含まれる二酸化炭素を、伝熱管20の周面にドライアイスとして付着させ、掻き落とし部材31を伝熱管20に沿って移動させると共に、伝熱管20の周面に付着したドライアイスを掻き落とし手段により掻き落として収容部60に収容させた。これにより、回収装置本体10に振動を加えることなく、二酸化炭素を回収できるので、回収装置本体10が疲労しない。つまり、疲労によって回収装置本体10の気密性が損なわれて、回収装置本体10から排ガスが漏洩することはない。その結果、常に効率的に二酸化炭素の回収を行うことができる。
【0064】
伝熱管20を水平方向に延びるように配置すると共に、掻き落とし手段30を水平方向に移動させた。掻き落とし手段30を鉛直方向に移動させた場合における高所の点検や修理を考慮すると、掻き落とし手段30の修理や点検等のメンテナンスが容易になる。掻き落とし手段30はラック部34及びピニオン部35により構成される電動機36で駆動される。このため、掻き落とし手段30が大型化されても、高い駆動トルクによる安定した駆動が可能となる。
また、掻き落とし部材31の板面が伝熱管20の延びる方向に直交するように配置され、板の厚さ方向が鉛直方向を向くように配置されている。このため、第1排ガス流通室12の上部から導入される排ガスが、掻き落とし部材31の板面によって遮られず、掻き落とし部材31が排ガスの流通に与える影響が少ない。
【0065】
流路切替手段40により、第1伝熱管21において冷媒を第1方向に流通させると共に、第2伝熱管22において冷媒を第1方向とは逆方向の第2方向に流通させる第1状態と、第1伝熱管21において冷媒を第2方向に流通させると共に、第2伝熱管22において冷媒を第1方向に流通させる第2状態と、を切り替えた。冷媒は、冷媒供給装置に近い上流側の温度が低く、下流に流通するにしたがって温度が上昇する。しかしながら、第1伝熱管21と、第1伝熱管21よりも上部に第2伝熱管22を配置し、これらの内部を流れる冷媒の方向が互いに逆方向となるよう定期的に切り替えた。このため、第1伝熱管21及び第2伝熱管22のどちらか一方の端部側に偏って温度が低下するということがなく、ドライアイスが第1伝熱管21及び第2伝熱管22に偏って付着しない。
【0066】
また、回収装置本体10の鉛直方向における上方に排ガス導入口11を設け、排ガス導入口11から導入された排ガスが流通する第1排ガス流通室12と、第1排ガス流通室12に連続して設けられ第1排ガス流通室12を流通した排ガスを上方へ流通させる第2排ガス流通室14と、第1排ガス流通室12の下方に連続して設けられ、第1排ガス流通室12を流通した排ガスを上方へ流通させる第2排ガス流通室14と、第2排ガス流通室14に設けられ、第2排ガス流通室14と第1排ガス流通室12とが連続する部分よりも上方の位置に配置されて第1排ガス流通室12を流通した排ガスを排出する排ガス排出口13と、を設けた。ドライアイスは比重が重いため下方に落下するが、二酸化炭素が除去された排ガスは、第2排ガス流通室14を流通して、上方の排ガス排出口13から排出される。このため、掻き落とし部材31により掻き落とされたドライアイスが除去排ガスに混入したり、飛散することが防止される。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施例に記載されたものに限定されるものではない。
【0068】
例えば、本実施形態では、伝熱管20は下部に配置される複数の第1伝熱管21と、上部に配置される複数の第2伝熱管22とを備え、2段に配置されるが、これに限られない。上下方向に隣接する伝熱管が、互いに逆の方向に冷媒が流通することができれば、何段配置してもよい。
【0069】
また、本実施形態では、掻き落とし部材31として略長方形状のものを用いたが、掻き落とし部材31はこれに限られることなく、伝熱管20の周面に付着したドライアイスを効果的に掻き落とすことのできるものであれば、他の形状でもよい。
【0070】
また、本実施形態では、複数の伝熱管挿通穴33の内周面と伝熱管20の外周面との間に、適度なクリアランスを形成したが、これに限らない。すなわち、複数の伝熱管挿通穴の内周面と伝熱管の外周面とを接触させてもよい。この場合、伝熱管挿通穴の内周面をゴム等の弾性部材により構成することで、伝熱管と伝熱管挿通穴とが接触することによる伝熱管又は掻き落とし部材の破損を防止できる。
【符号の説明】
【0071】
1 二酸化炭素回収装置
10 回収装置本体
11 排ガス導入口
12 第1排ガス流通室
13 排ガス排出口
14 第2排ガス流通室
20 伝熱管
21 第1伝熱管
22 第2伝熱管
30 掻き落とし手段
40 流路切替手段
60 収容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中に含まれる二酸化炭素を固化させて回収する二酸化炭素回収装置であって、
内部を排ガスが流通する回収装置本体と、
前記回収装置本体の内部に水平方向に延びるように配置され、内部を冷媒が流通する伝熱管と、
前記伝熱管に近接して配置され、水平方向に移動して前記伝熱管の周面に付着した固化された二酸化炭素を掻き落とす掻き落とし手段と、
前記回収装置本体の下方に配置され前記掻き落とし手段により掻き落とされた二酸化炭素を収容する収容部と、を備える二酸化炭素回収装置。
【請求項2】
前記伝熱管は、前記回収装置本体の高さ方向における下部に配置される第1伝熱管と、該第1伝熱管よりも上部に配置される第2伝熱管と、を備え、
前記第1伝熱管における冷媒の流通方向は、前記第2伝熱管における冷媒の流通方向と逆方向である請求項1に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項3】
前記第1伝熱管において前記冷媒を第1方向に流通させると共に、前記第2伝熱管において該冷媒を前記第1方向とは逆方向の第2方向に流通させる第1状態と、
前記第1伝熱管において前記冷媒を前記第2方向に流通させると共に、前記第2伝熱管において該冷媒を前記第1方向に流通させる第2状態と、を切り替える流路切り替え手段をさらに備える請求項2に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項4】
前記回収装置本体は、該回収装置本体の上部に設けられ排ガスが導入される排ガス導入口と、
前記排ガス導入口から導入された排ガスを下方に流通させる第1排ガス流通室と、
前記第1排ガス流通室の下部に連続して設けられ、前記第1排ガス流通室を流通した排ガスを上方に流通させる第2排ガス流通室と、
前記第2排ガス流通室の上部に設けられ前記第2排ガス流通室を流通した排ガスを排出する排ガス排出口と、を備える請求項1から3のいずれかに記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項5】
前記伝熱管及び前記掻き落とし手段は、前記第1排ガス流通室に配置される請求項4に記載の二酸化炭素回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−190116(P2011−190116A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54808(P2010−54808)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】