説明

二酸化炭素回収装置

【課題】排ガスが流入する容器を劣化させることなく、効率的に二酸化炭素を回収できる二酸化炭素回収装置を提供すること。
【解決手段】二酸化炭素回収装置は、排ガス中に含まれる二酸化炭素を固化させて回収する二酸化炭素回収装置であって、筒状に構成されると共に高さ方向が鉛直方向に沿うように配置され、前記排ガスが導入される回収装置本体と、該回収装置本体の内部に略鉛直方向に延びて配置され、内部を冷媒が流通する伝熱管と、前記伝熱管の周面に近接して配置され、上下に移動して前記伝熱管の周面に付着した固化された二酸化炭素を掻き落とす掻き落とし手段と、前記掻き落とし手段と共に移動し、前記伝熱管の周面に向かってガスを噴出するガス噴出手段と、前記回収装置本体の下方に配置され前記掻き落とし手段により掻き落とされた固化された二酸化炭素を収容する収容部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を含むガスから効率的に二酸化炭素を回収する二酸化酸素回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、火力発電所や化学プラント等において、石炭、石油又はLNG等の化石燃料を燃焼させることで発生する排ガス中には、多量の二酸化炭素が含まれており、環境面を考慮すると排ガス中に含まれる二酸化炭素を効率的に回収する必要がある。
【0003】
排ガス中に含まれる二酸化炭素を回収する手法として、排ガス中の二酸化炭素をドライアイスとして固化させて分離する手法が知られている。例えば、特許文献1には、二酸化炭素回収容器の内部に排ガスを供給し、この二酸化炭素回収容器の内部を冷却することで、排ガス中に含まれる二酸化炭素を二酸化炭素回収容器の内面にドライアイスとして付着させる手法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−69057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で対案された手法では、二酸化炭素回収容器の内面に付着したドライアイスを回収するために、二酸化炭素回収容器自体に振動を加えて、この振動により二酸化炭素回収容器に付着したドライアイスを分離させる必要があった。そのため、二酸化炭素回収容器に過度の力が恒常的に加えられることになり、二酸化炭素回収容器が疲労してしまう。そして、このような疲労によって二酸化炭素回収容器の気密性が損なわれて、この二酸化炭素回収容器から排ガスが漏洩するおそれがあった。
【0006】
つまり、従来の手法においては、経年的に二酸化炭素回収容器に振動が加えられる結果、二酸化炭素回収容器が劣化して破損する場合があり、効率的に二酸化炭素の回収を行えなくなってしまうことがある。
【0007】
従って、本発明は、排ガスが流入する容器を劣化させることなく、効率的に二酸化炭素を回収できる二酸化炭素回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明者の二酸化炭素回収装置は、排ガス中に含まれる二酸化炭素を固化させて回収する二酸化炭素回収装置であって、筒状に構成されると共に高さ方向が鉛直方向に沿うように配置され、前記排ガスが導入される回収装置本体と、前記回収装置本体の内部に略鉛直方向に延びて配置され、内部を冷媒が流通する伝熱管と、前記伝熱管の周面に近接して配置され、上下に移動して前記伝熱管の周面に付着した固化された二酸化炭素を掻き落とす掻き落とし手段と、前記掻き落とし手段と共に移動し、前記伝熱管の周面に向かってガスを噴出するガス噴出手段と、前記回収装置本体の下方に配置され前記掻き落とし手段により掻き落とされた固化された二酸化炭素を収容する収容部と、を備える。
【0009】
(2)前記伝熱管における冷媒の流通方向の下流側に連結される連結管をさらに備え、
前記掻き落とし手段は、前記回収装置本体の内部に水平方向に設けられる板状の掻き落とし部材と、前記掻き落とし部材を上下に駆動させる駆動部と、を備え、前記ガス噴出手段は、基端側が前記連結管に連結される管状部と、該管状部の先端側に連結されると共に、前記掻き落とし部材の下方に配置され、先端側が前記伝熱管の周面を向くノズル部と、前記連結管と前記管状部との連結部に設けられ該連結管を流通する冷媒の流路を調節する第1調節弁と、を備えることが好ましい。
【0010】
(3)前記駆動部は、前記回収装置本体の上面を貫通して配置されるシリンダと、該シリンダに摺動可能に収容され先端側が前記掻き落とし部材に連結されるピストンと、前記シリンダ及び前記連結管を接続し、該連結管を流通する冷媒の一部を前記シリンダに流通させるシリンダ接続管と、前記連結管と前記シリンダ接続管との連結部に設けられ、該連結管を流通する冷媒の流路を調節する第2調節弁と、を備えることが好ましい。
【0011】
(4)前記掻き落とし部材は、前記回収装置本体における水平方向の断面形状と略同形に形成され、前記伝熱管が挿通される複数の伝熱管挿通穴を備え、前記ガス噴出手段は、複数のノズル部を有し、前記複数のノズル部は、前記伝熱管挿通穴のそれぞれの近傍に配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、伝熱管に付着し固化した二酸化炭素を掻き落として収容部に回収するようにしたので、回収装置本体に振動を加える必要がない。よって、疲労等によって回収装置本体の気密性が損なわれることがなく、効率的に二酸化炭素の回収を行える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る二酸化炭素回収装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る二酸化炭素回収装置の部分の概略図である。
【図3】図1に示す二酸化炭素回収装置における掻き落とし部材が待機位置にある状態を一部破断して概略的に示す図である。
【図4】図1に示す二酸化炭素回収装置における掻き落とし部材が待機位置と駆動位置との間に位置する状態を一部破断して概略的に示す図である。
【図5】図1に示す二酸化炭素回収装置における掻き落とし部材が駆動位置にある状態を一部破断して概略的に示す図である。
【図6】掻き落とし部材の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の二酸化炭素回収装置の好ましい一実施形態について図面を参照ながら説明する。
【0015】
図1は本発明の二酸化炭素回収装置10の一実施形態を示す斜視図である。
二酸化炭素回収装置10は、例えば、石炭、石油又はLNG等を燃料として用いる火力発電所で用いられ、当該火力発電所からの排ガス中に含まれる二酸化炭素を固化させて回収する。
【0016】
二酸化炭素回収装置10は、回収装置本体11と、回収装置本体11の内部に配置される伝熱管14と、伝熱管14の周面に付着した固化された二酸化炭素(ドライアイス2)を掻き落とす掻き落とし手段7と、伝熱管14の周面にガスを吹きつけるガス噴出手段9と、掻き落とし手段7を駆動する駆動部としての駆動装置18と、伝熱管14をガス噴出手段9及び駆動装置18に連結する連結管16と、回収装置本体11の下方に配置される収容部19と、制御装置30と、を備える。
【0017】
回収装置本体11は、鉛直方向に沿って延びる円筒形状を有している(つまり、回収装置本体11は、その高さが鉛直方向に沿うように配置されている)。
回収装置本体11の上端近傍における側面には、排ガス導入管12が連結され、回収装置本体11の下端近傍における側面には、排ガス導出管13が連結されている。排ガス導入管12から回収装置本体11の内部に導入された排ガスは、二酸化炭素が取り除かれた二酸化炭素除去排ガス(以下、除去排ガスと呼ぶ)として排ガス導出管13から導出される。
【0018】
伝熱管14は、回収装置本体11の内部に複数本(本実施形態においては5本)配置されている。これら複数本の伝熱管14は、回収装置本体11の内部においては、略鉛直方向に延びている。伝熱管14の内部には、液体窒素等の冷媒が流通する。なお、これら伝熱管14は、回収装置本体11の中心軸を中心として、等角度間隔で配列することが好ましい。伝熱管14の表面には、伝熱効率を高めるため、微小な凹凸が形成されている。
【0019】
伝熱管14の下端側は、複数の冷媒供給管4の一端に接続されている。複数の冷媒供給管4の他端は、放射状に径方向外側に延びており、回収装置本体11の側面を貫通して、不図示の冷媒供給装置に接続されている。複数の冷媒供給管4は、不図示の冷媒供給装置から供給される冷媒を複数本の伝熱管14に供給する。伝熱管14の下端側には、複数(本実施形態においては5個)の温度センサ5及び複数(本実施形態においては5個)の流量調整バルブ6が取り付けられている。複数の温度センサ5は、複数本の伝熱管14の温度を測定する。複数の流量調整バルブ6は、不図示の冷媒供給装置から供給され、複数本の伝熱管14を流通する冷媒の流量を調整する。
【0020】
伝熱管14の上端側は、回収装置本体11の上面を貫通して、環状の連結管16に接続されている。そして、伝熱管14の内部を流通する冷媒は、連結管16を介して導出される。つまり、冷媒は冷媒供給管4、伝熱管14、及び連結管16を通って流れる。連結管16を通った冷媒の一部は、冷却装置(図示せず)で再度所定の温度(例えば、−110℃〜−120℃:この温度は二酸化炭素が固化されてドライアイス2となる温度である)に冷却され、再び冷媒供給管4から伝熱管14に導入される。
【0021】
連結管16は、伝熱管14を流通する冷媒の流通方向の下流側に連結される。連結管16は、個々の伝熱管14を連結した環状の環状部161と、個々の伝熱管14を流通した冷媒が合流して一本に延びる合流部162と、を備える。連結管16の合流部162には、連結管16を流通する冷媒の流路を調節する第1調節弁24と、連結管16を流通する冷媒の流路を調節する第2調節弁25と、が設けられる。
【0022】
掻き落とし手段7は、回収装置本体11の内部に水平方向に設けられる板状の掻き落とし部材17と、掻き落とし部材17を上下に駆動させる駆動部としての駆動装置18と、を備える。掻き落とし手段7は、伝熱管14の周面に近接して配置され、上下に移動して伝熱管14の周面に付着した固化された二酸化炭素(ドライアイス2)を掻き落とす。
【0023】
掻き落とし部材17は、回収装置本体11の水平方向断面形状と略同形の円形板状部材である。この掻き落とし部材17には、複数本の伝熱管14が挿通される複数の伝熱管挿通穴20と、回収装置本体11の内部に導入された排ガスが流通する複数のガス流通穴21とが形成されている。複数の伝熱管挿通穴20の内周面と伝熱管14の外周面との間には、適度なクリアランス(例えば、1mm〜3mm)が形成されている。すなわち、複数の伝熱管挿通穴20の内周面は、伝熱管14の外周面に近接して配置されている。複数のガス流通穴21は、掻き落とし部材17の中心から略同心円上に、略等間隔で設けられている。
【0024】
駆動装置18は、シリンダ22と、このシリンダ22に摺動可能に収容されるピストン23と、シリンダ22及び連結管16を接続するシリンダ接続管26と、連結管16とシリンダ接続管26との連結部に設けられる第2調節弁25と、を備える。この駆動装置18は、掻き落とし部材17を鉛直方向に沿って駆動させる。
【0025】
シリンダ22は、回収装置本体11の上面を貫通して配置されている。シリンダ22は略円筒形の形状を備え、シリンダ22の長手方向が鉛直方向に沿うように配置される。
ピストン23は、シリンダ22の内部に収容され、シリンダの内部を摺動して上下に移動する。ピストン23の先端側は、掻き落とし部材17に連結されている。
シリンダ接続管26は、一端側が連結管16の合流部162に接続され、他端側がシリンダ22の長手方向の上方の端部に接続される配管である。
第2調節弁25は、連結管16の合流部162とシリンダ接続管26との連結部を開閉する弁である。第2調節弁25は、連結管16を流通する冷媒の流路を調節する。
【0026】
この駆動装置18によれば、第2調節弁25を開くと、連結管16を流通する冷媒がシリンダ接続管26に流入して気化する。シリンダ接続管26は、連結管16を流通する冷媒の一部をシリンダ22の上方の端部からシリンダ22の内部に供給し、シリンダ22に流通させる。シリンダ22の内部に冷媒が気化された状態で供給されると、ピストン23は鉛直方向下方に移動する。これにより、掻き落とし部材17は、鉛直方向下方に移動する。また、シリンダ22内から冷媒が排出されると、ピストン23は鉛直方向上方に移動する。これにより、掻き落とし部材17は、鉛直方向上方に移動する。
【0027】
ガス噴出手段9は、基端側が連結管16に連結される管状部91と、管状部91の先端側に連結される複数のノズル部92と、連結管16と管状部91との連結部に設けられる第1調節弁24と、を備える。ガス噴出手段9は、掻き落とし手段7と共に移動し、伝熱管14の周面に向かって窒素ガスを噴出する。
【0028】
図2に示すように、管状部91は、可撓性の管で構成される。また、管状部91は、例えば、じゃばら状(ベローズ)等の伸縮性を有する形状を有し、駆動装置18におけるシリンダ22の移動に追従できる。管状部91は、連結管16から延びて駆動装置18の内部を通り、ピストン23と掻き落とし部材17とが接続されるピストン23の根元付近に固定される。管状部91の先端側は、分岐している。分岐した管状部91のそれぞれは、複数のガス流通穴21を挿通する。
【0029】
ノズル部92は、管状部91の延びる方向に対して屈曲可能に連結される。例えば、ノズル部92は、管状部91の先端側の外径よりもわずかに大きい内径を備える。管状部91の先端側は、ノズル部92に嵌めこまれる。
【0030】
ノズル部92は、複数の伝熱管挿通穴20それぞれの近傍に配置される。ノズル部92は、掻き落とし部材17の下方に配置され、ノズル部92の先端部は、複数の伝熱管挿通穴20を挿通する複数本の伝熱管14の周面を向くように配置される。ノズル部92の材質としては、金属や樹脂等が例示できる。ノズル部92は、上述の通り、管状部91に連結されて掻き落とし部材17の下方に配置されているため、掻き落とし部材17と共に、駆動装置18により上下に駆動される。
【0031】
第1調節弁24は、連結管16の合流部162と管状部91との連結部を開閉する弁である。第1調節弁24は、連結管16を流通する冷媒の流路を調節する。
【0032】
このガス噴出手段9によれば、第1調節弁24を開くと、連結管16を流通する冷媒が管状部91に流通して気化する。これにより、冷媒は、気化された状態で、管状部91の先端に連結されたノズル部92から伝熱管14の周面に噴出される。
【0033】
収容部19は、掻き落とし部材17により掻き落とされた固化された二酸化炭素(ドライアイス2)を収容する。収容部19は、密閉性及び耐圧性を有している。また、収容部19には、開閉弁19aが設けられている。これら開閉弁19aの開閉操作により収容部19の内部に収容された二酸化炭素は、配管19bを通って導出される。
【0034】
制御装置30は、駆動装置18を制御して、掻き落とし部材17を回収装置本体11における上方側の待機位置A(図3参照)と、この待機位置Aよりも下側に位置する駆動位置B(図5参照)との間で移動させる(図3参照)。
また、制御装置30は、駆動装置18を制御して、掻き落とし部材17を所定の時間間隔で移動させると共に、待機位置Aから駆動位置Bに前記掻き落とし部材17を駆動させた後、直ちに掻き落とし部材17を駆動位置Bから待機位置Aに復帰させる。
また、制御装置30は、掻き落とし部材17を待機位置Aから駆動位置Bに駆動させ、駆動位置Bから待機位置Aに復帰させる間、ガス噴出手段9により窒素ガスを伝熱管14の周面に噴出させる。
【0035】
具体的には、制御装置30は、掻き落とし部材17を待機位置Aから駆動位置Bに駆動させる間、第2調節弁25を制御して、連結管16を流通する冷媒の一部をシリンダ接続管26側に流通させる。冷媒が連結管16からシリンダ接続管26に流通すると、冷媒の温度が上昇することでこの冷媒が気化し、気体の状態でシリンダ22の内部に供給される。制御装置30は、掻き落とし部材17を駆動位置Bから待機位置Aに復帰させる間、シリンダ22の上方の端部側に設けられるガス排出口(図示せず)から排出させる。また、制御装置30は、上記の掻き落とし部材17を待機位置Aから駆動位置Bに駆動させ、駆動位置Bから待機位置Aに復帰させる間、第1調節弁24を制御して、連結管16を流通する冷媒の一部を、気化した状態で管状部91に流通させる。
【0036】
また、制御装置30は、複数本の伝熱管14の下端部近傍に接続されている複数の温度センサ5によって測定された複数本の伝熱管14の温度に基づいて、複数の流量調整バルブ6を制御する。つまり、複数の流量調整バルブ6の開度を制御して、複数本の伝熱管14を流通する冷媒の流量を調節し、複数本の伝熱管14の温度を制御する。
【0037】
次に、本実施形態の二酸化炭素回収装置10の動作について、図3〜図5を参照しながら(なお、図3〜図5においては、制御装置30等は省略されている)説明する。
【0038】
まず、駆動装置18を駆動し、掻き落とし部材17を、排ガス導入管12の取り付け位置よりも僅かに下側の所定の位置である待機位置Aに位置させる。
この状態で、回収装置本体11の内部には、排ガス導入管12を介して二酸化炭素を含む排ガスが供給される。回収装置本体11の内部に導入された排ガス中に含まれる二酸化炭素は、伝熱管14の内部を流通する冷媒によって冷却され、伝熱管14の周面で固化しドライアイス2となって付着する(図3参照)。二酸化炭素が除去された除去排ガスは、排ガス導出管13を介して外部に排出される。
【0039】
制御装置30は、予め設定された時間間隔で駆動装置18を駆動制御する。制御装置30は、連結管16から流通する冷媒の一部をシリンダ接続管26へ流通させるよう第2調節弁25を調節する。すると、シリンダ接続管26を流通する冷媒としての液体窒素は、気化して窒素ガスとなり、シリンダ22の内部に供給される。また、この際、制御装置30は、圧力調整機構を作動させてシリンダ接続管26へ流れる窒素ガスの圧力を上昇させる。シリンダ接続管26を流通する窒素ガスの圧力が上昇すると、圧力の上昇した窒素ガスがシリンダ22内に供給され、ピストン23が鉛直方向下方に移動する。これにより、掻き落とし部材17は、駆動位置Bまで鉛直方向下方に移動する(図4及び図5参照)。ここで、伝熱管14の表面側には、適度なクリアランスをあけて伝熱管挿通穴20の内周面が位置しているから、伝熱管14の周面に付着したドライアイス2は、掻き落とし部材17の下向きへの移動によって、伝熱管14の周面から掻き落とされて、下方に落下する。
【0040】
また、制御装置30は、掻き落とし部材17が駆動位置Bに到達すると、直ちに、シリンダ22内の窒素ガスをガス排出口(図示せず)からシリンダ22の外部に放出する。すると、ピストン23が後退する。これにより、掻き落とし部材17は、鉛直方向上方に移動して待機位置Aに復帰する。ここで、制御装置30は、掻き落とし部材17が駆動位置Bに到達すると、直ちに掻き落とし部材17を待機位置Aまで復帰させるので、掻き落とし部材17が駆動位置Bから待機位置Aに復帰するときには、伝熱管14の周面にはドライアイス2は付着しない。
【0041】
制御装置30は、タイマー(図示せず)を内蔵しており、所定の時間間隔で駆動装置18に上述の処理を実行させる。
【0042】
また、制御装置30は、掻き落とし部材17を待機位置Aから駆動位置Bに駆動させ、駆動位置Bから待機位置Aに復帰させる間、連結管16の第1調節弁を制御して、連結管16から冷媒の一部をガス噴出手段9の管状部91に流通させる。冷媒は気化して窒素ガスとなり、窒素ガスは、基端側が連結管16に接続された管状部91を流通し、管状部91の先端側に接続されたノズル部92から伝熱管14の周面に向けて噴出される。
【0043】
伝熱管14の側面には、伝熱効率を向上させるため、フィンやエンボス加工等による微小な凹凸が形成されている。凹凸の凸部が伝熱管14の断面視における外周を規定し、凹部は伝熱管14の外周よりも内側に形成される。このため、掻き落とし部材17が上述のように昇降しても、掻き落とし部材17は、凹部に接触しない。よって、ドライアイス2が、伝熱管14の側面に形成される細かい凹部に詰まる場合がある。ノズル部92から噴出される窒素ガスは、伝熱管14の側面に形成された凹凸の凹部に詰まったドライアイス2を吹き飛ばして除去する。
【0044】
ノズル部92から噴出された窒素ガスは、二酸化炭素が取り除かれた二酸化炭素除去排ガスと共に、排ガス導出管13から導出される。
【0045】
回収装置本体11の底面側に落下したドライアイス2は、収容部19に収容される。収容部19は、密閉性及び耐圧性を有する容器により構成されている。このため、収容部19内に収容されたドライアイス2は、収容部19内部の温度上昇により、液体二酸化炭素となった状態で保管される。
【0046】
以上の二酸化炭素回収装置10によれば、以下のような効果を奏する。
【0047】
排ガス中に含まれる二酸化炭素を、伝熱管14の周面にドライアイス2として付着させ、掻き落とし部材17を伝熱管14に沿って移動させると共に、伝熱管14の周面にガス噴出手段9で窒素ガスを噴出しながら伝熱管14の周面に付着したドライアイス2を掻き落として収容部19に回収させた。これにより、回収装置本体11に振動を加えることなく、二酸化炭素を回収できるので、回収装置本体11が疲労しない。つまり、疲労によって回収装置本体11の気密性が損なわれて、回収装置本体11から排ガスが漏洩することはない。その結果、常に効率的に二酸化炭素の回収を行うことができる。
【0048】
また、ガス噴出手段9に、基端側が連結管16に連結される管状部91と、管状部91の先端側に連結されるノズル部92とを設けた。そして、ノズル部92を掻き落とし部材17ともに駆動装置18により駆動させて、窒素ガスを伝熱管14の周面に噴出させる構成とした。
上述の通り、伝熱管14の側面には、伝熱効率を向上させるための微小な凹凸が形成されている。このため、ドライアイス2が、伝熱管14の側面に形成される微小な凹部に詰まる場合がある。伝熱管14の周面にドライアイス2が詰まると、伝熱管14の周面がドライアイス2に覆われることとなり、伝熱管14の伝熱効率が低下する場合がある。そこで、伝熱管14の周面に付着したドライアイス2を吹き飛ばして除去することにより、伝熱管14の伝熱効率が向上する。また、ガス噴出手段9は、伝熱管14を流通した冷媒が流通する連結管16から、冷媒の一部を窒素ガスとして噴出するので、他の供給源から窒素ガスを供給する必要がない。
【0049】
また、伝熱管14を流通した冷媒の一部を、連結管16から駆動装置18のシリンダ接続管26に気化させた状態で流通させた。そして、シリンダ接続管26からシリンダ22の内部に流通する窒素ガスにより、ピストン23を前進させた。これにより、空気圧縮機等の、駆動装置18を駆動させる動力が不要となる。
【0050】
さらに、掻き落とし部材17に、伝熱管14が挿通する複数の伝熱管挿通穴20を設け、伝熱管挿通穴20それぞれの近傍に、複数のノズル部92のそれぞれを配置した。これにより、ノズル部92は掻き落とし部材17と共に移動し、複数の伝熱管14のそれぞれに窒素ガスを吹きつけることができる。よって、伝熱管14に付着したドライアイス2を均一に除去することができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限るものではない。また、本発明の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施例に記載されたものに限定されるものではない。
【0052】
例えば、本実施形態では、掻き落とし部材17として円板形状のものを用いたが、掻き落とし部材17はこれに限られることなく、伝熱管14の周面に付着したドライアイス2を効果的に掻き落とすことのできるものであれば、他の形状でもよい。
【0053】
すなわち、図6に示すように、掻き落とし部材17が複数のパイプ体17aを有し、伝熱管14のそれぞれをパイプ体17aに一対一で挿通する。掻き落とし部材17は、例えば、回収装置本体11の中心軸上に位置する連結体(小円板状)17bを備え、この連結体17bにパイプ体17aがそれぞれリンク部材17cによって連結される。そして、ピストン23の先端が連結体17bに連結されて、駆動装置18によって、連結体17b、つまり、パイプ体17aを鉛直方向に移動し、伝熱管14の周面に付着したドライアイス2を掻き落とす。
【0054】
また、本実施形態では、複数の伝熱管挿通穴20の内周面と伝熱管14の外周面との間に、適度なクリアランスを形成したが、これに限らない。すなわち、複数の伝熱管挿通穴の内周面と伝熱管の外周面とを接触させてもよい。この場合、伝熱管挿通穴の内周面をゴム等の弾性部材により構成することで、伝熱管と伝熱管挿通穴とが接触することによる伝熱管又は掻き落とし部材の破損を防止できる。
【0055】
また、本実施形態では、ガス噴出手段9の管状部91が分岐して複数のノズル部92に連結される構成としたが、これに限られない。例えば、連結管16に複数の管状部が連結され、管状部のそれぞれに複数のノズル部のそれぞれが連結されてもよい。この場合には、それぞれの管状部の基端側に流通させる窒素ガスの圧力を低く設定できる。
【符号の説明】
【0056】
7 掻き落とし手段
9 ガス噴出手段
10 二酸化炭素回収装置
11 回収装置本体
14 伝熱管
16 連結管
17 掻き落とし部材
18 駆動部(駆動装置)
19 収容部
20 伝熱管挿通穴
22 シリンダ
23 ピストン
24 第1調節弁
25 第2調節弁
26 シリンダ接続管
91 管状部
92 ノズル部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中に含まれる二酸化炭素を固化させて回収する二酸化炭素回収装置であって、
筒状に構成されると共に高さ方向が鉛直方向に沿うように配置され、前記排ガスが導入される回収装置本体と、
該回収装置本体の内部に略鉛直方向に延びて配置され、内部を冷媒が流通する伝熱管と、
前記伝熱管の周面に近接して配置され、上下に移動して前記伝熱管の周面に付着した固化された二酸化炭素を掻き落とす掻き落とし手段と、
前記掻き落とし手段と共に移動し、前記伝熱管の周面に向かってガスを噴出するガス噴出手段と、
前記回収装置本体の下方に配置され前記掻き落とし手段により掻き落とされた固化された二酸化炭素を収容する収容部と、を備える二酸化炭素回収装置。
【請求項2】
前記伝熱管における冷媒の流通方向の下流側に連結される連結管をさらに備え、
前記掻き落とし手段は、前記回収装置本体の内部に水平方向に設けられる板状の掻き落とし部材と、前記掻き落とし部材を上下に駆動させる駆動部と、を備え、
前記ガス噴出手段は、
基端側が前記連結管に連結される管状部と、
該管状部の先端側に連結されると共に、前記掻き落とし部材の下方に配置され、先端側が前記伝熱管の周面を向くノズル部と、
前記連結管と前記管状部との連結部に設けられ該連結管を流通する冷媒の流路を調節する第1調節弁と、を備える請求項1に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項3】
前記駆動部は、前記回収装置本体の上面を貫通して配置されるシリンダと、
該シリンダに摺動可能に収容され先端側が前記掻き落とし部材に連結されるピストンと、
前記シリンダ及び前記連結管を接続し、該連結管を流通する冷媒の一部を前記シリンダに流通させるシリンダ接続管と、
前記連結管と前記シリンダ接続管との連結部に設けられ、該連結管を流通する冷媒の流路を調節する第2調節弁と、を備える請求項2に記載の二酸化炭素回収装置。
【請求項4】
前記掻き落とし部材は、前記回収装置本体における水平方向の断面形状と略同形に形成され、前記伝熱管が挿通される複数の伝熱管挿通穴を備え、
前記ガス噴出手段は、複数のノズル部を有し、
前記複数のノズル部は、前記伝熱管挿通穴のそれぞれの近傍に配置される請求項2又は3に記載の二酸化炭素回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−190117(P2011−190117A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54809(P2010−54809)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】