説明

二酸化炭素発泡により押出成形されたポリラクチド発泡体

本発明は高濃度のCOを用いたPLA樹脂を押出成形するための方法を提供する。優れた品質の低密度発泡体を、容易に再現性良く製造できる。通常の非結晶性のPLA樹脂を用いた場合でも、熱アニーリングにより、発泡体の結晶化度は顕著に亢進できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、押出成形された高分子発泡体及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
断熱材や包装容器を製造するための一般的で安価な方法は押出成形方法である。この方法によりポリスチレン断熱発泡体やポリエチレン包装容器用発泡体は大量生産されている。しかし、商業用の押出成形方法は、いかなる高分子にも容易に適用できるとはいえない。例えば、ポリスチレン、LDPE(高圧処理で作られた低密度ポリエチレン)及び幾つかの品質のポリプロピレンは押出成形方法で直ちに製造できるが、他の多くの一般的な高分子、特にLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)及びHDPE(高密度ポリエチレン)を押出成形方法により発泡体を製造するには、たとえできたとしても、困難を伴う。
【0003】
ポリラクチド高分子(PLA、時にはポリ乳酸とも呼ばれる。)は最近商業的規模の量が入手可能となってきた。この高分子を押出成形により発泡体を製造することが試みられたが、PLAの発泡は困難で、押出成形された良質の低密度PLA発泡体は入手できなかった。PLAを発泡する上での困難性は、そのレオロジー特性によるものと考えられており、このレオロジー特性は"溶融強度"と表される。安定な発泡体を発泡するためには、発泡剤が樹脂を拡張して気泡を形成できる程度に、樹脂の粘度が充分低くなければならない。同時に、発泡剤が急速に逃げずに、発泡体が壊れないように、樹脂は拡張されるに伴って急速に固化する必要がある。低い溶融強度を持つPLAのような樹脂は、通常、発泡するにしても、非常に狭い範囲の処理温度でのみ発泡されうる。商業的大量生産の条件下では、このような狭い範囲の製造条件を維持することは不可能である。
【0004】
溶融強度は幾つかの方法で改善しうる。分子量を増加させると溶融強度を増加させることができるが、一方でまた剪断粘度が増加し、その結果電力消費を増やし、処理速度を下げ及び/又はより重量のある高価な設備を必要となる。更に、分子量が増すと必要な処理温度が上昇する傾向がある。処理温度が上がると高分子の分解が促進され、このことは特にPLAの場合には問題となる。
他の改善法は、その分子量分布を広くすることである。これは、高分子に少量の長鎖分枝を導入することで得られる。PLAの場合、(1)ラクチドをエポキシ化した脂肪又は油と共重合すること(USP5,359,026)、(2)PLAを過酸化物と反応させること(USP5,594,095及び5,798,435)、(3)ある種の多機能性重合開始剤を用いること(USP5,210,108及び5,225,521、GB2277324及びEP632081)、及び(4)二環式ラクトンを用いること(WO02/100921)が試みられてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、不運なことに、これらどの方法も完全には満足のいくものではなく、押出成形による良質のPLA発泡体を提供することが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの側面として、本発明は、ポリラクチド(PLA)樹脂重量に対して約3〜15重量%の二酸化炭素を含む溶融して成形可能なPLA樹脂の加圧された融解混合物を形成する段階、及びこの溶融混合物を口金(die)を通して減圧領域に押し出すことで、二酸化炭素が膨張し、同時にPLA樹脂が冷却して安定な発泡体を形成する段階からなる方法である。
他の側面として、本発明は、融解して成形可能な非結晶性ポリラクチド(PLA)と二酸化炭素の加圧された溶融混合物を形成する段階、この混合物の温度を凝固温度より上で、120℃より上でない温度に調節する段階、及びこの溶融混合物を口金を通して減圧領域に押し出すことで、二酸化炭素が膨張し、同時にPLA樹脂が冷却して安定な発泡体を形成する段階からなる方法である。
この方法において、二酸化炭素が有効に導入され、二酸化炭素が、溶融樹脂への混合時から溶融混合物が押出成形の口金に到達するまで、超臨界状態に維持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の方法においては、非常に高品質の押出成形発泡体が製造される。1〜2ポンド/立方フィート(pcf)程低密度の良好の気泡構造、良好の外観、一定の品質をもった発泡体が得られる。このような結果は、典型的な低溶融強度を持つ、直鎖状で非結晶型品質のPLA樹脂の場合であっても、本発明の方法を用いれば得ることができる。より高い溶融強度を持つ、半結晶状態のPLA樹脂、又は僅かに分枝した非結晶型PLAの場合には、より大きな製造上の許容範囲が得られる。
【0008】
ここで用いるPLA樹脂は、重合体又は少なくとも50重量%の重合した乳酸反復単位を持つ共重合体である。このPLA樹脂は、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%重量の重合した乳酸単位を持ってもよい。PLA樹脂が乳酸と他のモノマーとの共重合体の場合、他のモノマーはラクチドと共重合するものであればいかなるものでもよい。他のモノマーとしては、グリコール酸のようなヒドロキシカルボン酸が好ましい。
【0009】
乳酸反復単位はL−又はD−エナンチオマー、又はそれ等の混合物である。乳酸エナンチオマーの割合、及びこれらが共重合する様態(即ち、ランダム、ブロック、マルチブロック、グラフト等)は、高分子の結晶状態に大きな影響を与える。単一のエナンチオマーの割合が非常に高い(即ち、単一エナンチオマーが95%又はそれ以上、特に98%又はそれ以上)高分子は半結晶体になる傾向がある。各エナンチオマーを5%又はそれ以上含む高分子はより非結晶性となる傾向がある。
【0010】
好ましいPLA樹脂は、L−乳酸又はD−乳酸のいずれかのホモポリマー(他の分枝的試薬なしの)、L−乳酸及びD−乳酸のランダム共重合体、L−乳酸とD−乳酸のブロック共重合体、又はこれらの2種又はそれ以上の混合物である。一方の乳酸エナンチオマーを75〜98%含み、他方の乳酸エナンチオマーを2〜25%含む共重合体は、本発明で用いるために極めて適切なPLA樹脂である。より好ましい非結晶性共重合体は、一方のエナンチオマーを85〜96%含み、他方のエナンチオマーを4〜15%含む。特に好ましい非結晶性共重合体は、一方のエナンチオマーを93〜88%含み、他方のエナンチオマーを7〜12%含む。エナンチオマー比は乳酸含量で表すことができる。非結晶性PLA樹脂を少量の半結晶性PLA樹脂(即ち、一方の乳酸エナンチオマーを好ましくは2%以下にして作製できる)と混ぜ合わせて、融解レオロジーを改良することができる。
【0011】
PLA樹脂が溶融処理可能であるために、PLA樹脂の分子量は充分大きい。10,000〜200,000の数平均分子量であることが一般的に望ましい。30,000〜100,000の数平均分子量はより好ましい。重量平均分子量については、Mw/Mn比が1.5〜約2.5の範囲にあることが望ましい。
【0012】
PLA樹脂は直鎖状又は分枝状であってもよい。分枝の場合、充分な分枝を導入すると、クロロホルム中の濃度1g/dL及び30℃における相対粘度は、約1.5〜約5の範囲である。適切な相対粘度範囲は約2〜約3.5である。好ましい相対粘度は約2.3〜約3.2である。分枝は、当業者に既知の方法も含め、様々な方法で導入できる。例えば、USP5,359,026に記載されたように、ラクチドはエポキシ化した脂肪又は油と共重合できる。USP5,594,095及び5,798,435に記載されたように、PLA樹脂は過酸化物と反応させ、分枝を導入できる。USP5,210,108及び、5,225,521,GB2277324及びEP632081に記載されたように、ラクチドは特定の多機能性イニシエーターを用いて高分子化できる。WO02/100921A1に記載されたように、ラクチドは二環式ラクトンと共重合できる。PLA樹脂は、PLA樹脂上のヒドロキシ又はカルボキシ末端基と反応して個々の高分子を連結させる、多機能性分枝試薬と反応することができる。このような物質の例としては、3又はそ以上のエポキシ、無水物、オキサゾリン、イソシアネート、カルボジイミド、ヒドロキシ、3級リン酸、フタルイミド、あるいは同様の反応基/分子を含む物質である。
【0013】
PLA樹脂はラクチドを重合して形成できる。ラクチドは乳酸の二量体型であり、2分子の乳酸分子が縮合して環状ジエステルを形成したものである。乳酸同様、ラクチドも様々なエナンチオマー型が有る。例えば、"L−ラクチド"は2分子L−乳酸の2量体であり、"D−ラクチド"は2分子D−乳酸の2量体型であり、"メソ−ラクチド"は1分子のL−乳酸と1分子のD−乳酸から形成した2量体である。更に、融解温度が126℃であるL−ラクチドとD−ラクチドの50/50混合物はしばしば"D,L−ラクチド"と呼ばれる。これらどの形のラクチド又はこれらの混合物も共重合して、本発明で用いるPLA樹脂を形成できる。PLA樹脂中のL/D比は、重合で用いたラクチドのエナンチオマー型の比を変えることで制御できる。特に好ましい方法において、L−ラクチドとメソ−ラクチドの混合物を重合させ、制御された量のD−乳酸エナチオマー単位を有する高分子を形成できる。ラクチドを重合させ制御されたL/D比を有するPLAを形成する適切な方法は、例えば、USP5,142,023及び5,247,059に記載されており、両文献は本明細書において参考文献として引用される。共重合した分枝試薬は重合過程に加えることができる。
【0014】
もしPLA樹脂が重合化後分枝するのであれば、これを成し遂げる便利な方法はPLAを押出成形機の中で融解し、融解したPLA樹脂に分枝試薬を押出口から加える方法である。これにより押出成形機のシリンダーの中で冷却前に分枝反応が起こる。分枝試薬は発泡体押出過程の間に押出成形機に加えることもできる。
【0015】
本発明で用いる発泡剤は二酸化炭素である。二酸化炭素は好ましくは唯一の発泡剤である。しかし、二酸化炭素と他の発泡剤の混合物も用いることが可能で、異なる発泡体特性が得られる。二酸化炭素は、好ましくは、加圧した気体又は液体として押出成形機のシリンダー内に導入することにより、供給される。低度に好ましいが、炭酸水素ナトリウム、及び炭酸水素塩とクエン酸の混合物のような、様々な種類の化学発泡剤の熱分解産物として、二酸化炭素を発生させてもよい。気体状又は液体CO、及びCO−発生化学発泡剤のコンビネーションも同様に用いることができる。
【0016】
二酸化炭素は、超臨界液としての発泡体混合物に最も適切に導入でき、またこの混合物が口金から出るまで、又は口金から出る直前まで、超臨界状態に維持される。二酸化炭素は、温度と圧力が同時に〜31.1℃又はそれ以上及び〜72.9気圧(〜1071psi又は〜7392kPa)又はそれ以上である時、超臨界流体である。溶融混合物の温度及び圧力は、二酸化炭素と樹脂が最初に混合された時から口金から放出されるまで少なくともこの状態に維持されることが好ましい。溶融混合物は冷却した口金を通過するので、混合物が口金を通過する時に超臨界状態以下の温度(即ち、31.1℃以下)に低下することもありうる。大部分の場合、超臨界状態は混合物が口金から放出され膨張始めるまで維持される。
【0017】
樹脂重量に対して少なくとも3重量%のCOを用いることが好ましい。樹脂重量に対して少なくとも5重量%のCOを用いることがより好ましい。15重量%まで、又はそれ以上のCOを用いることができる。好ましいCOの上限は13.5重量%である。特に好ましいCOの範囲は7〜11重量%である。
【0018】
上述のように高濃度のCOの使用は、良質で低密度の押出発泡体(押出成形による発泡体)を製造するために重要であると考えられる。本発明は如何なる理論にも制限されてないが、COはPLA樹脂に僅かながら溶解するので、少なくとも押出成形機内の圧力と温度において、溶解COはPLA樹脂に可塑性を与え、それにより融解レオロジーに影響を与える。この可塑性化の一つの長所は、口金での測定された場合のより低い融解温度で発泡体を押し出すことができることである。押出成形機の中でいくらかPLA樹脂に可溶であっても、融解混合物が口金の出口から出る際の圧力低下と急激な冷却により、COは急速に放出されて膨張し、良好な発泡体ができ上がる。
【0019】
望むならば、二酸化炭素とフッ化炭素、ヒドロフッ化炭素炭化水素、ヒドロクロロフッ化炭素、低級アルカノール、塩化アルキル、又はアルキルエーテルのような、他の発泡剤の混合物を用いることもできる。特定の例として、R−134a、R−142a、R−153a、イソブタン、及びペンタンが挙げられる。しかし、通常、COに加えて他の発泡剤を用いることに利点は少ない。CO以外に、窒素又は他の気体を発生させる化学発泡剤を、COに加えて用いることもできるが、通常その必要はない。
【0020】
PLA樹脂は二酸化炭素とともに、加圧した融解混合物を作り、この融解混合物を押出口金を通して減圧領域に押出し、融解混合物を膨張させ冷却させる、融解成形法によって押出され発泡体となる。通常使われる発泡体押出装置は発泡体を押し出すために良く適している。従って、スクリュー押出成形機、2枚羽スクリュー押出成形機及び集められた押出成形機の全てを使うことができる。樹脂/発泡剤混合物から押出発泡体を作るための適切な方法はUSP2,409,910;2,515,250;2,669,751;2,848,428;2,928,130;3,121,130;3,121,911;3,770,688;3,815,674;3,960,792;3,966,381;4,085,073;4,146,563;4,229,396;4,302,910;4,421,866;4,438,224;4,454,086及び4,486,550.に記載されている。これら全ての方法は本発明の押出発泡体を製造するために一般的に適用できる。
【0021】
押出成形方法において、PLA樹脂はそのガラス転移温度又は融点又はそれ以上の温度に加熱される。適切な温度は少なくとも140℃、好ましくは少なくとも160℃であるが、より好ましくは240℃を超えず、更に好ましくは200℃を超えない。COは圧力下(好ましくは、上記のように超臨界条件下)で導入され、加熱したPLA樹脂と混合される。以下に記載する補助的な発泡助剤もまた、この溶融物に混合される。この混合段階の圧力は、融解混合物が押出口金を通過するまで発泡体膨張が始まらないように、十分高圧に維持される。前記のように、超臨界状態は押出成形方法の間維持されることが好ましい。
【0022】
発泡体産物を形成させるために、通常、全成分を混合後、押出口金を通過させる前に、溶融混合物を押出温度に合わせる。非結晶性PLA樹脂(即ち、10%以下の結晶化度)の場合、この押出温度は、一般的に純粋な樹脂のガラス転移温度より15〜30℃高い。この押し出し温度は一般的に構成物を混合させる場所での温度よりいくらか低温である。半結晶性PLA樹脂(結晶化度10%以上)の場合、押出温度は、通常ガラス転移温度より50℃高い。樹脂の光学的純度が非常に高い場合、要求される溶融温度はPLA樹脂の融解温度に近い。前記のように、混合段階の圧力は二酸化炭素が超臨界状態に留まるよう適切に維持される。
【0023】
本発明により、非結晶性PLA樹脂から高品質の発泡体を製造するために、特に低い押出温度が用いられることが分かった。押出温度(即ち、口金における溶融温度)は低く、約70℃〜約140℃ぐらいである。好ましい押出温度は少なくとも約80℃である。より好ましい押出温度は少なくとも85℃である。好ましい最高押出温度は約120℃である。より好ましい最高押出温度は約110℃である。最も好ましい押出温度は85〜105℃である。
【0024】
これらの低温の押出温度は幾つかの利点を持つ。低温により高分子粘性と融解力が改善される。このことにより、この低温においてより広い成形条件が可能になり、容易で再現性のある発泡体形成が可能になる。樹脂の分解もまた顕著に減少する。更に、低温加熱を供給することで電力消費も少ない。
【0025】
大部分の商業用押出成形機は、独立に異なる温度で操作できる一連の分離した加熱ゾーンを持つ。一般的には、構成成分が混ぜ合わされる上流ゾーンはより高温に操作されており、下流ゾーンは溶融混合物を押出温度まで冷却するためにより低温に設定されている。口金ヘッド自体の温度を制御するために口金冷却器を使ってもよい。混合ゾーンの温度設定は約190℃〜約240℃の間に便宜上設定されており、冷却ゾーン温度は約40〜約130℃に便宜上設定されており、特に、約50〜約110℃に設定されている。これらの温度設定は、融解物の温度を反映するものでないので、混合ゾーンではいくらか低い温度に、冷却ゾーンではいくらか高い温度になる傾向があることに注意して欲しい。
【0026】
融解混合物の温度を押出温度に調節した後、混合物を押出口金から減圧領域(通常大気圧)に放出する。圧力が無くなるのでCOは急激に膨張する。発泡剤の膨張は急速にPLA樹脂を冷却させ、樹脂は膨張するに従い固化し、安定した発泡体ができ上がる。
【0027】
発泡体を様々な形に押出成形することができるが、最も一般的にはシート(通常13mm又はそれ以下の厚み)、厚板(通常13mm以上の厚み)又は棒状の産物に押出す。シート産物は、通常、輪状スリット口金を用いてチューブ状の発泡体を作り、これを縦方向に細長く切断して、平らなシートを形成することにより製造される。厚板産物の製造には通常直角又は"ドッグボーン(犬の骨)"型口金が使われる。棒産物は円形又は楕円形口金を用いて作られる。発泡性混合物は、以後の様々な成形を行う前に、好ましくは少なくとも断面厚さ1mm、より好ましくは少なくとも3mm、最も好ましくは少なくとも5mm〜200mm又はそれ以上までの発泡体を形成するように押出される。
【0028】
更に、発泡体形成方法において隣り合った融解放出物の間で接触するように配置した多重の開口部を持つ口金から、融解混合物を押出すこともできる。このことにより接触した表面は互いに接着し一体化した構造ができる。このような束合体型発泡体の作成方法は、参考文献として引用したUSP6,213,540及び4,824,720に記載されている。この様な束合体型発泡体は高度な異方性を持ち、一般に押出方向で最大の圧縮力が観察される。この束合体型発泡体は、参考文献として引用したUSP4,801,484に記載されているように、意図的に欠けた束、又は設計された空隙を保持することもできる。
【0029】
発泡成形工程では様々な補助的な材料を用いることができる。その様な補助的材料として一般的なものとしては、核形成剤、気泡拡大試薬、安定性制御試薬(透過性変性剤)、静電気防止剤、架橋剤、処理助剤(スリップ剤)、安定化剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸スカベンジャー、分散助剤、押出助剤、抗酸化剤、着色剤、無機充填剤その他がある。核形成剤及び安定性制御剤は好ましい。
【0030】
好ましい核形成剤としては、クエン酸又はクエン酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの混合物のような押出条件下で反応して気体になる少量の化学物質の他、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、インディゴ、滑石、白土、雲母、陶土、二酸化チタン、シリカ、ステアリン酸カルシウム、又は珪藻土のような細粒子状の無機物質などが挙げられる。使われる核形成剤の量は高分子樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部でもよい。好ましい範囲は0.1〜3重量部であり、特に0.25〜0.6重量部である。
【0031】
膨張した発泡体の密度は、ASTM D−1622による測定によると、一般的に18ポンド/立方フィート(pcf)(288kg/m)であり、多くの場合、5pcf(80kg/m)以下である。約1〜約3.5pcf(16〜54kg/m)の密度が好ましい。約1.3〜約2.5pcf(20.8〜40kg/m)の密度が梱包及び緩衝作用の用途には好ましい。一般的に、発泡体の平均気泡サイズは、ASTM D3576による測定により、少なくとも0.01mmであり、好ましくは少なくとも0.05mmで、より好ましくは、0.1mmであり、5mmより大きくないことが有利であり、好ましくは4mmより大きくなく、より好ましくは3mmより大きくないことである。
【0032】
発泡体の独立気泡量は最終目的とする用途により異なる。断熱及び多くの梱包用のためには、発泡体は少なくとも70%、好ましくは少なくとも85%の独立気泡を有する独立気泡発泡体が有利である。断熱の用途のためには、独立気泡量は最も好ましくは少なくとも約95%である。梱包及び/又は断熱の用途のためには、発泡体は薄いスキン層を持つことが有利である。防音のような他の用途のため、又はソフト発泡体が必要な場合、独立気泡量は70%以下が有利で、好ましくは50%以下で、本質的にゼロまで下げることもできる。開放(及び独立)気泡量はASTM D2856−Aにより測定される。
【0033】
望むなら、発泡体に後から様々の追加の加工を行うことができる。気泡中の発泡剤を空気への置き換えを加速するために、独立気泡を加工することがしばしば要求される。これにより発泡体の収縮を防ぎ、寸法安定性を保つ。加工時間を減らすためのプロセス方法としてはUSP5,424,016に記載されているように、穿孔、発泡体を僅か上昇した温度(100〜130Fo(38〜73℃))で数日〜数週間の加熱、又は両者のコンビネーションがある。更に、発泡体をクラッシュ(押しつぶし)して開放気泡にすることができる。
【0034】
もし架橋していなければ、発泡体は熱成形が容易で、又はそうでなくとも、用途に応じて、熱と機械的力により望みの形又は輪郭に形作ることができる。望むならば、(加熱可塑性繊維で織った織物層のような)化粧層が熱で溶接でき、又はそうでなくとも、熱成形方法の間又は後に発泡体に接着できる。発泡体は他の発泡構造又はフィルム、又は他の物質に薄板として被せることができる。
【0035】
本発明による非結晶性PLA樹脂を用いて造られた発泡体は、成型後の熱処理又は熱アニーリングにより半結晶化できる。これは特に、発泡体作製のために低融解温度を用いる場合に多く見られる。二酸化炭素の可塑化効果と共に、低融解温度を使うことで、PLA樹脂は気体膨張の過程で、非結晶性PLA樹脂から通常得られるよりも、より大きな配向性を持つようになる。この配向性により、本来備わった発泡体構造の強度が増し、更なる熱アニーリング又は熱処理により、発泡体の更なる結晶化を可能にする核形成サイトができる。
【0036】
熱アニーリングは通常高温で行われ、即ち、ガラス転移温度以上かつPLA樹脂の融解温度以下で、要求する結晶化度の量に応じて、約1分〜約24時間処理される。好ましい熱アニーリング温度は約60℃から、好ましくは90℃から、150℃まで、特に135℃までである。この様にして、24J/g又はそれ以上の結晶化レベルを発泡体に与えられることが見出された。これは、4〜15%又はそれ以上の各エナチオマーを持つ非結晶性PLA樹脂を用いて発泡体を作る場合にさえ見られる。一般的に、2〜20分の加熱により10J/gのレベルの結晶化度が得られ、更に結晶化度は約20J/gまでゆっくりと増加する。20J/g以上の結晶化度の増加は更にゆっくりである。一般的に、約24J/gまでの結晶化度が好ましく、特に、約13〜約20J/gが好ましい。熱アニーリング前の結晶化度は通常12J/gより大きくなく、より一般的には5J/g以下であり、大部分の場合約2J/gかそれ以下である。結晶化度は通常示差走査熱量計(DSC)を用いて測定する。DSC測定をするための一般的なテストプロトコールは、5〜10mg試料を空気中、25〜225℃、20℃/分でStarV6.0ソフトウェアを用いたMetteler Toledo DSC821e熱量計を用いて加熱する。
【0037】
以前述べたように、本発明の発泡体は様々な用途に用いるよう改変できる。本発明による独立気泡発泡体パネルは、建物断熱材として有用であり、又は屋根、立入り型の大きさの冷蔵庫及び冷凍庫、輸送装置、給湯装置、貯蔵タンク、その他を断熱するのに有用である。これらは、他の断熱の用途にも使われる。本発明による独立及び開放気泡発泡体は、エレクトロニクス、消費者の商品の梱包の様な、様々な梱包、緩衝の用途にも用いられる。本発明による、より柔らかな発泡体は防音剤として有用である。固い発泡体は合成構造構成物、軽量パネル他に有用である。
【実施例】
【0038】
以下、実施例にて本発明を例証するが本発明を限定することを意図するものではない。特に明記しない限り、全ての部及び%は重量部及び重量%を示す。
PLA発泡体を以下の一般的方法を用いて作製した:
10個の加熱ゾーンと2mm円形ロッド口金を装備した同時回転するLeistritz直径27mm二枚スクリュー押出成形機のホッパー末端に、PLA樹脂を仕込む。タルクと液体コーン油の混合物を別々にミキシングパドルで、外観上一様になり、混ざってないタルクが見えなくなるまで、混合する。タルク混合物を、樹脂100重量部あたり、0.5重量部(phr)の割合で樹脂に加える。液体二酸化炭素を以下に記す特定の速度で押出成形機のシリンダーに注入する。ゾーン1〜5の温度は高分子が融解し全ての成分が完全に混ざるように設定する。ゾーン6〜10の温度は溶融混合物を望みの押出温度に持って行くように、より低い温度に設定する。ゾーンと押出温度を以下に記載する。口金は、設定値1℃の冷却器を装備する。融解圧は下記に示す。
【0039】
以下の実施例で用いたPLA樹脂を表1に記載する。
【表1】

NatureWorks(R)樹脂はCargill Dow LLC,Minnetonka,MN.から入手可能。
NatureWorks(R)4060樹脂の高口金−膨張変性物。
PLA樹脂を過酸化水素と融解混和を行い、分枝を導入した。
分子量は標準ポリスチレンに相対的な値で、屈折率による検知で、テトラヒドロフラン移動層を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した。
【0040】
実施例1
実施例1の押出成形条件を表2に示す。二酸化炭素は用いた温度と圧力条件下では超臨界流体である。
【表2】

良好な外観と望みの独立気泡を持った良質の発泡体が得られた。
【0041】
実施例2A−2B
実施例2A−2Bの押出条件を表3に示す。二酸化炭素を再び超臨界状態に維持した。
【表3】

各発泡体作成方法は良好であった。これらの発泡体は容易にクラッシュされ、発泡体内部にいくらかの開放気泡を有する。
【0042】
実施例3
実施例3の押出条件を表4に示す。二酸化炭素を同じく超臨界状態に維持した。
【表4】

この発泡体作製方法も良好であった。この発泡体も発泡体内部に開放気泡が見られる。
【0043】
実施例4
5〜10ミリグラムの実施例1の発泡体サンプルを、室温で数週間放置後、空気中で20℃/分の速度で25℃〜225℃の間で加熱して、StarV.6.0ソフトを使ったMettler Toredo DSC821e熱量計を用いて、結晶化度を測定した。この発泡体の結晶化度は12J/gであった。
実施例1の発泡体サンプルを100℃で一晩加熱し、この熱処理したサンプルの結晶化度を同様に測定した。結晶化度は24.3J/gまで上昇した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリラクチド(PLA)樹脂重量に対して約3〜15重量%の二酸化炭素を含む溶融して成形可能なPLA樹脂の加圧された融解混合物を形成する段階、及びこの溶融混合物を口金を通して減圧領域に押し出すことで、二酸化炭素が膨張し、同時にPLA樹脂が冷却して安定な発泡体を形成する段階からなる方法。
【請求項2】
該PLA樹脂が少なくとも80重量%の重合乳酸を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該PLA樹脂が少なくとも99重量%の重合乳酸を含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該乳酸反復単位がL−及びD−エナンチオマー混合物である請求項2に記載の方法。
【請求項5】
該PLA樹脂が非結晶性である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
該L−及びD−エナンチオマー混合物が一方のエナンチオマーの約85〜96重量%と、他方のエナンチオマーの4〜15重量%を含む、請求5に記載の方法。
【請求項7】
押出温度が約80℃〜約120℃である請求項5に記載の方法。
【請求項8】
二酸化炭素が超臨界流体である条件で、該溶融混合物が作製され、また該溶融混合物が口金に達するまで超臨界状態で維持される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
該PLA樹脂が約5〜約13.5重量%のCOを含む請求項7に記載の方法。
【請求項10】
該PLA樹脂がさらに核形成剤を含む請求項2に記載の方法。
【請求項11】
該PLA樹脂がさらに核形成剤を含む請求項7に記載の方法。
【請求項12】
該PLA樹脂が長鎖の分枝を含む請求項2に記載の方法。
【請求項13】
該PLA樹脂が、直鎖状PLA樹脂と、直鎖状PLA樹脂内の末端水酸基又はカルボキシル基と反応する反応性に富む、多機能性分枝試薬との反応産物である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
発泡体を加熱処理して結晶化度を亢進させる更なるステップからなる請求項5に記載の方法。
【請求項15】
融解して成形可能な非結晶性ポリラクチド(PLA)と二酸化炭素の加圧された溶融混合物を形成する段階、この混合物の温度を凝固温度より上で、120℃より上でない温度に調節する段階、及びこの溶融混合物を口金を通して減圧領域に押し出すことで、二酸化炭素が膨張し、同時にPLA樹脂が冷却して安定な発泡体を形成する段階からなる方法。
【請求項16】
該溶融混合物が二酸化炭素が超臨界流体である条件下で形成され、かつ該溶融混合物が口金に到達するまでこの超臨界状態に維持される請求項15に記載の方法。
【請求項17】
結晶化の亢進のために発泡体を加熱処理する更なるステップを伴う請求項15に記載の方法。
【請求項18】
約1〜約17ポンド/立方フィート(16〜272kg/m)の密度を持つ請求項1に記載の方法に従って作製されたPLA発泡体。
【請求項19】
約1〜約17ポンド/立方フィート(16〜272kg/m3)の密度を持つ請求項5に記載の方法に従って作製されたPLA発泡体。
【請求項20】
約1〜約17ポンド/立方フィート(16〜272kg/m)の密度を持つ請求項7に記載の方法に従って作製されたPLA発泡体。
【請求項21】
約1〜約17ポンド/立方フィート(16〜272kg/m)の密度を持つ請求項15に記載の方法に従って作製されたPLA発泡体。
【請求項22】
約1〜約17ポンド/立方フィート(16〜272kg/m)の密度を持つ請求項16に記載の方法に従って作製されたPLA発泡体。
【請求項23】
約1〜約17ポンド/立方フィート(16〜272kg/m)の密度を持つ請求項17に記載の方法に従って作製されたPLA発泡体。
【請求項24】
乳酸反復単位がL−及びD−エナンチオマーの混合物であるポリ乳酸樹脂の押出発泡体であって、このL−及びD−エナンチオマーの混合物が各エナンチオマーをそれぞれ少なくとも4%含み、かつこの発泡体が、示差熱量計で測定したときに少なくとも10J/gの結晶化度を持つポリ乳酸樹脂の押出発泡体。
【請求項25】
前記L−及びD−エナンチオマーの混合物が、一方のエナンチオマーを86〜95%含み、かつ他方のエナンチオマーを5〜14%含み、更に前記発泡体の結晶化度が約13〜24J/gである請求項24に記載の押出発泡体。

【公表番号】特表2007−530319(P2007−530319A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505190(P2007−505190)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【国際出願番号】PCT/US2005/009892
【国際公開番号】WO2005/097878
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(398074751)ネイチャーワークス・エル・エル・シー (8)
【Fターム(参考)】