説明

二酸化炭素(CO2)および/または一酸化炭素(CO)の還元によってCXHYOZタイプの化合物を製造するための方法

本発明は、蒸気下でプロトン化種をこの膜に導入することができる材料から製造されたプロトン伝導膜(31)を備える電解槽(30)の陽極室(32)中に加圧下で導入された蒸気を電解するための方法であって、蒸気の形態で注入された水が陽極(32)において酸化されて前記膜に、この同じ膜内で移動し、二酸化炭素および/または一酸化炭素を還元しうる反応性水素原子の形態の、陰極(33)の表面において還元されるプロトン化種を発生させる方法に関し、前記方法が、以下の工程:電解槽(30)の陰極室(33)中に加圧下でCO2および/またはCOを注入する工程と、発生された前記反応性水素原子によって、陰極室(33)中に注入されたCO2および/またはCOを還元し、その結果、CO2および/またはCOがCxyzタイプの化合物(x≧1であり、yが0〜2x+2であり、zが0〜2xである)を形成する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に水の電解によって発生した非常に反応性の水素種から、二酸化炭素(CO2)および/または一酸化炭素(CO)の還元によってCxyzタイプの化合物(特にx≧1、yが0〜2x+2であり、zが0〜2xである)を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、セラミック伝導膜は、それらの性能を向上させる多くの研究の主題であり、これらの膜は、とりわけ、次の分野において特に興味深い用途がある。すなわち:
− 水素を製造するための高温での水の電解
− Cxyzタイプの化合物(x≧1であり、yが0〜2x+2であり、zが0〜2xである)を得るための電気化学的水素化によ炭素含有ガス(CO2、CO)の処理。
【0003】
現在、水素(H2)は、非常に興味深いエネルギーキャリアであると思われ、他の物質のなかで、石油、油および潤滑剤を処理するためにますます重要性をもつと考えられ、結局、有利には、その埋蔵量が今後数十年の間に急激に減少するであろう石油および化石エネルギーの代わりに用いられてもよい。しかしながら、この見地から、製造方法を発展させることが必要である。
【0004】
明らかに、多くの水素の製造方法が様々なソースに記載されているが、多数のこれらの方法は、水素の大規模工業生産に適していないことがわかっている。
【0005】
この場合、例えば、炭化水素の水蒸気改質により水素を合成することが挙げられる。この合成経路の主な問題の一つは、それが副産物としてかなりの量のCO2タイプの温室効果ガスを生じるということである。実際、1トンの水素を生じるのに8〜10トンのCO2を放出する。
【0006】
したがって、次の2つが今後の課題として残されている。すなわち、水素など、我々の環境に危険を及ぼさずに有用である新規なエネルギーキャリアを探すことと、二酸化炭素の量を低減することである。
【0007】
工業方法の技術的、経済的評価は現在、後者のデータを考慮する。しかしながら、それは本質的に、古い油層に必ずしも対応しない亀裂内の隔離、特に地下隔離であり、結局、危険を伴わざるをえない。
【0008】
化学分野においてまたはエネルギー製造分野において有用な化合物の形態でこの二酸化炭素を再循環させることが賢明であると思われる。この変換に必要なエネルギーは、例えば、原子力からの電気、特に、HTR「高温原子炉」タイプの原子炉あるいはEPR(登録商標)欧州加圧水炉などの原子炉からの電気である。
【0009】
水素の工業的製造のための有望な経路は、例えば高温において(EHT)、中温、典型的に200℃超において、またはさらに200℃〜1000℃の中間温度においての蒸気電解として公知の技術である。
【0010】
2つの蒸気電解製造方法が現在、知られている。
【0011】
図1に示された第1の方法によって、O2-イオンを輸送することができかつ一般に750℃〜1000℃の温度で作用することができる電解質が利用される。
【0012】
より正確には、図1は、電解質が陽極3と陰極4とを分離するように機能することを確実にする、O2-イオンの導体であるセラミック膜2を含む電解槽1を図解的に示す。
【0013】
陽極3と陰極4との間に電位差を印加することによって、陰極4側のH2O蒸気が還元される。この還元は、反応:
【化1】

によって陰極4の表面に水素H2およびイオンO2-(クレーガー=ビンクの表記法では
【化2】

)を形成する。
【0014】
2-イオン、より正確には酸素空孔
【化3】

が電解質2中を移動して陽極3の表面において酸素O2を形成し、電子eが酸化反応:
【化4】

によって放出される。
【0015】
したがって、電解槽1の出力から、第1の方法は、酸素−陽極室−および蒸気と混合された水素−陰極室−を発生させることができる。
【0016】
図2に示された第2の方法によって、プロトンを輸送することができかつ上に記載された第1の方法のために必要とされたよりも低い温度、一般に200℃〜800℃で作用することができる電解質が利用される。
【0017】
より正確には、この図2は、プロトン伝導セラミック膜11を含む電解槽10を図解的に示し、電解質が陽極12と陰極13とを分離するように機能するのを確実にする。
【0018】
陽極12と陰極13との間に電位差を印加することによって、陽極側12のH2O蒸気が酸化される。したがって、陽極12に注入された蒸気が酸化されて酸素O2およびH+イオン(またはクレーガー=ビンクの表記法では
【化5】

)を形成し、この反応は、式:
【化6】

によって電子e-を放出する。
【0019】
+イオン(またはクレーガー=ビンクの表記法では
【化7】

)は、電解質11中を移動して式:
【化8】

によって陰極13の表面に水素H2を形成する。
【0020】
したがって、この方法は、電解槽10の出力から高純度水素−陰極室−および蒸気と混合された酸素−陽極室を提供する。
【0021】
より正確には、H2の形成は、可変エネルギーおよび相互作用度によって陰極の表面において吸収された水素原子および/または水素原子ラジカル
【化9】

(またはクレーガー=ビンクの表記法では
【化10】

Electrode:電極
)である中間化合物の形成を経る。これらの種が高反応性であるとき、それらは通常、式:
【化11】

Electrode:電極
によって再結合して水素H2を形成する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、存在する二酸化炭素の量を、例えば、この二酸化炭素を化学分野においてまたはエネルギー製造分野において有用な化合物の形態で再循環させることによって低減することを目的とする。
【0023】
この目的のために、本発明は、蒸気下でプロトン化種をこの膜に導入することができる材料から製造されたプロトン伝導膜を備える電解槽の陽極室中に加圧下で注入された水蒸気を電解するための方法であって、蒸気の形態で注入された水の酸化が陽極において行なわれて前記膜中に、この同じ膜内で移動し、二酸化炭素CO2および/または一酸化炭素COを還元しうる反応性水素原子の形態の、陰極の表面において還元されるプロトン化種を発生させる方法を提案し、前記方法が、以下の工程:
− 電解槽の陰極室中に加圧下でCO2および/またはCOを注入する工程と、
− 発生された前記反応性水素原子によって、前記陰極室中に注入された前記CO2および/またはCOを還元し、その結果、前記CO2および/または前記COがCxyzタイプの化合物(x≧1であり、yが0〜2x+2であり、zが0〜2xである)を形成する工程と
を含む。
【0024】
上に説明したように、反応性水素原子は、可変エネルギーおよび相互作用度によって陰極の表面において吸収された水素原子および/または水素原子ラジカル
【化12】

(またはクレーガー=ビンクの表記法では
【化13】

Electrode:電極
)を指すと理解される。
【0025】
本発明は、上に記載された第2の方法が電解槽の陰極において高反応性水素(特に電極の表面において吸収された水素原子および/または水素原子ラジカル)を発生させるという観察から得られる。
【0026】
これらの高反応性水素原子
【化14】

Electrode:電極
は、反応:
【化15】

Electrode:電極
によって陰極の表面において形成される。
【0027】
実際、陰極側にCO2および/またはCOが存在するときに、高反応性水素
【化16】

Electrode:電極
が電極上の炭素化合物と反応して、Cxyz(x≧1であり、yが0〜2x+2であり、zが0〜2xである)タイプの還元された二酸化炭素および/または一酸化炭素化合物を生じる。
【0028】
例として、これらの化合物は、パラフィンCn2n+2、オレフィンC2n2n、アルコールCn2n+2OHまたはCn2n-1OH、アルデヒドおよびケトンCn2nO、酸Cn-12n+1COOH(n≧1)である。
【0029】
したがって、本発明は、次に説明されるように二酸化炭素および/または一酸化炭素の総合電解還元によって蒸気を電解することができる。
【0030】
また、本発明の方法は、個別にまたはすべての技術的に可能な組み合せによって考えられた、以下の特性の一つまたは複数を示す場合がある。
− この方法は、陰極に印加された電圧・電流ペアによって形成されたCxyzタイプの化合物の性質を制御する工程を含む。
− この方法は、酸素O2およびH2の拡散に対して不透過性であり蒸気圧力下で膜へのプロトン化種の注入を可能にするプロトン伝導膜を利用する工程を含む。
− この方法は、欠損型ペロブスカイト(perovskite vacancies)、不定比ペロブスカイトおよび/または一般式ABO3のドープトペロブスカイト、ホタル石、パイロクロアA227、アパタイトMe10(XO462、オキシアパタイトMe10(XO462構造、ヒドロキシルアパタイトMe10(XO46(OH)2構造、シリケート、アルミノシリケート(フィロシリケートまたはゼオライト)構造、酸素酸でグラフトされたシリケートまたはホスフェートでグラフトされたシリケートのタイプのプロトン伝導膜を利用する工程を含む。
− この方法は、陰極によってまたは陽極によって支持された電解質を利用して、その機械的強度を増加させるためにその厚さを低減する工程を含む。
− この方法は、1バール以上で接合体の破断圧以下であり、後者が少なくとも100バール以上である蒸気の相対分圧を利用する工程を含む。
− 蒸気の相対分圧は有利には50バール以上である。
− CO2および/またはCOの相対圧力は1バール以上で接合体の破断圧以下であり、後者が少なくとも100バール以上である。
− 電解温度が200℃以上かつ800℃以下であり、有利には350℃〜650℃である。
− 多孔質構造の電極は、電子伝導およびイオン伝導混在のセラミック−金属材料または「セラミック」電極のどちらかであり、
− 陰極については、セラミック−金属材料は、分散された金属の性質が有利には、コバルト、銅、モリブデン、銀、鉄、亜鉛、貴金属(金、白金、パラジウム)および/または遷移元素などの金属が挙げられる金属およびまたは金属合金である、電解質と相溶性のセラミックであり、
− 陽極については、セラミック−金属材料は、分散された金属の性質が有利には金属合金または不動態化可能な金属である、電解質と相溶性のセラミックである。
【0031】
また、本発明は、酸化後に蒸気下でこの膜へのプロトン化種の注入を可能にする材料から製造されたプロトン伝導膜を備える電解槽の陽極室中に加圧下で導入された水蒸気を電解するための蒸気電解装置であって、
− 水圧の影響下で膜へのプロトン化種の注入を可能にする前記材料から製造されたイオン伝導膜の形態の電解質と、
− 陽極と、
− 陰極と、
− 電流を発生させて前記陽極と前記陰極との間に電位差を印加することができる発電機と
を含む蒸気電解装置に関し、それが、
− 前記陽極経由で前記電解質への加圧下での蒸気の導入のための手段と、
− 電解槽の陰極室中に加圧下でCO2および/またはCOを注入する手段と、
− 先行の実施形態の一つによる方法によって陰極室に導入されたCO2および/またはCOを還元する手段と
を含むことを特徴とする。
【0032】
また、本発明の装置は、個別にまたはすべての技術的に可能な組み合せによって考えられた、以下の特性の一つまたは複数を示すことがある。
− プロトン化種の注入を可能にする材料が、O2およびH2ガスに対して不透過性である。
− プロトン化種の注入を可能にする材料が、88%超、好ましくは少なくとも94%の高密度化レベルを有する。
− プロトン化種の注入を可能にする材料が、プロトン導体として作用する酸素欠損型ペロブスカイトなどの酸素原子欠損型酸化物である。この場合、酸素原子欠損型酸化物は、化学量論的間隔を示すことがあり、および/またはドープされてもよい。
【0033】
本発明の他の特性および利点は、添付した図を参照して以下の記載から明らかにされるが、説明のためであり限定目的ではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】水蒸気電解槽の簡略図である。
【図2】水蒸気電解槽の簡略図である。
【図3】CO2および/またはCOの総合電解還元を実施する蒸気電解槽の簡略図である。
【0035】
図3は、本発明によるCO2および/またはCOの総合電解還元方法を実施する水素の製造のための電解装置の実施態様を図解的に簡単に示す。
【0036】
この電解装置は、図2の装置の構造と同様な構造を有する。したがって、それは、
− 陽極32と、
− 陰極33と、
− 電解質31と、
− 陽極32と陰極33との間の電位差を確実にする発電機34と、
− 蒸気の圧力pH2O下で陰極33経由で膜31への導入を可能にする手段35(蒸気の相対分圧は1バール以上で接合体の破断圧以下であり、この後者は少なくとも100バール以上である)と
を含む。
【0037】
本発明によって、装置はまた、ガスの圧力(pCO2および/またはCO)下で陰極室33への導入を可能にする手段36を含む。
【0038】
蒸気の注入は、陽極32側で手段35によって行なわれ、他方、ガスCO2および/またはCOの注入は陰極33側で手段36によって行なわれる。
【0039】
陽極32において、水は、(
【化17】

の形の)H+イオンが図2を用いて説明された方法と同様な方法によって発生される間に電子を放出することによって酸化される。
【0040】
これらのH+イオンが電解質31中を移動し、CO2および/またはCOタイプの炭素化合物が陰極33においてこれらのH+イオンと反応してCxyzタイプの化合物(x≧1であり、yが0〜2x+2であり、zが0〜2xである)および水を陰極において形成する。
【0041】
特に、様々な反応の化学反応式を次にように書くことができる。
【化18】

Electrode:電極
【0042】
形成された化合物の性質は作業条件に依存するので、したがって、Cxyzの全形成反応を
【化19】

Electrode:電極
として記載することができる。
【0043】
陰極において合成されたCxyz化合物の性質は、例えば、下に記載されたようなガス圧力、作業温度T1および陰極に印加された電圧・電流ペアなどの多くの方法パラメータに依存する。
【0044】
ガス圧力に関して、CO2および/またはCOの相対圧力は1バール以上で接合体の破断圧以下であり、後者が少なくとも100バール以上である。
【0045】
ここで相対圧力という用語は、大気圧に対する導入圧を意味することが指摘される。
【0046】
蒸気だけを含有するガス流または蒸気を部分的に含有するガス流のどちらかを使用できることが指摘される。したがって、場合により、用語「分圧」は、ガス流が蒸気だけ構成される場合にガス流の全圧を意味するか、または蒸気以外のガスを含む場合に蒸気の分圧を意味するかのどちらかである。
【0047】
さらに付言すると、陰極室または陽極室にかかった全圧は、他方の室の全圧に対する補償を受けることができ、2つの室の間に圧力差を有し、その耐破断性が非常に低い場合に膜、電極支持体接合体の破断を防ぐ。
【0048】
装置の作業温度T1に関して、これは、膜31のために利用された材料のタイプに依存する。いかなる場合でも、この温度は200℃超、一般に800℃未満、またはさらに600℃未満である。この作業温度は、H+プロトンによって確実にされた伝導に相応する。
【0049】
また、装置の作業温度T1は、生じさせたいCxyz炭素化合物の性質によって、200〜800℃の範囲内である。
【0050】
実際、メタン、メタノール、ホルムアルデヒド、カルボン酸(ギ酸等)および長鎖を有する他の化合物などの多種多様な化合物を得ることができ、それらは合成燃料を形成することもできる。
【0051】
例えば、陰極において以下の反応を有することができる。
【化20】

Electrode:電極
【0052】
陰極に印加された電圧・電流ペアに関して、形成された炭素化合物の性質もまた、この電圧に依存するということに留意しなければならない。実際、以下の図式に示されるように、陰極媒体がより還元性が高くなると(酸化還元電位Eが低い)、発生した炭素化合物はより水素化される(Rは例えばアルキル基である)。
【化21】

Hydrogenation:水素化
【0053】
これらの反応の有利な実施態様については、多数の三接触点、すなわち、イオン伝導体、電子伝導体および気相の間の点または接触面を示す電極を有することが必要である。
【0054】
例えば、検討される電極は優先的に、イオン伝導セラミックと電子伝導金属との混合物によって形成されたセラミック−金属材料である。
【0055】
しかしながら、セラミック−金属材料ではなく「全セラミック」電子伝導電極の利用も、考慮されてよい。
【0056】
所定の電解質は適用された蒸気の温度および圧力によってO2-プロトンまたはイオン導体であってもよい。
【0057】
しかしプロトン伝導膜の利用は、H2水素(または二水素)よりもずっと反応性である(多かれ少なかれ陰極の表面において吸収された水素原子の形の)水素を発生させ、したがって、(H2の存在下の)通常の水素化方法に比べてCO2およびCOのより良い水素化を可能にする。
【0058】
さらに、中温において作用するH+イオン伝導膜の利用は、Cxyzタイプの錯化合物(x、yおよびzは1より大きい)の合成を可能にし、他方、もっと高い温度において作用するO2-伝導膜の利用は、優先的にCO、すなわち、高温において安定している生成物を発生する。
【0059】
実施された研究の目的は、水素の製造および/またはCO2および/またはCOの水素化の最大収量を得ることである。これを実施するために、利用された電流の大部分はファラデープロセスに関与しなければならず、すなわち、水の還元、従って高反応性水素の製造のために利用されなければならない。
【0060】
したがって、分極のために利用された電圧は、少なくとも、
− 電極においての過電圧
− 電極/電解質の界面の接触抵抗
− 材料中、特に電解質中の抵抗降下
− 電極においての標準熱力学反応電圧
によって影響を受けるはずである。
【0061】
この場合、本発明は、水素の製造のための高温での水の電解のために、ならびに陰極におけるCO2および/またはCOの電解還元のために、蒸気圧力下でプロトン伝導電解質を利用することを提案する。
【0062】
したがって、この方法は、以下の工程:
− 蒸気を含有するガス流の圧力の影響下でのプロトン化種の前記膜への導入工程、
− 蒸気の電解および陰極室においてのガス(CO2および/またはCO)の還元工程
を含む。
【0063】
蒸気を含有するガス流のため、膜のプロトン化は加圧蒸気によって促進され、この圧力を有利に利用して、所定の温度において所望の伝導率を得る。このような方法は、例えば、2007年6月1日に出願された仏国特許出願第07/55418号明細書に記載されている。
【0064】
この出願に示されているように、出願人は、蒸気の相対分圧の増加は膜のイオン伝導率の増加につながることを観察した。
【0065】
相対分圧の増加と伝導率の増加との間のこの相関関係は、適した材料をより低い温度において機能させることができる。換言すれば、より低い温度において作用することによって促進された伝導率の低下は、蒸気の相対分圧の増加によって補償される。
【0066】
本発明によって、「高反応性」水素が陰極において製造され、還元性化合物の存在しないときに水素(H2)を発生させるか、またはCO2および/またはCOの存在するときにCxyzタイプの化合物(x≧1であり、yが0〜2x+2であり、zが0〜2xである)を発生させることができる。
【0067】
プロトン伝導膜は、一般式
【化22】

のドープトペロブスカイト材料など、水の導入を促進する材料から製造される。陽極および陰極のために利用された材料は、優先的にセラミック−金属材料(電解質のために利用された金属とペロブスカイト材料との混合物)である。膜は好ましくは、O2およびH2ガスに対して不透過性である。
【0068】
一般的には、膜は、欠損型ペロブスカイト、不定比ペロブスカイトおよび/または一般式ABO3のドープトペロブスカイト、ホタル石、パイロクロアA227、アパタイトMe10(XO462、オキシアパタイトMe10(XO462構造、ヒドロキシルアパタイトMe10(XO46(OH)2構造、シリケート構造、アルミノシリケート(フィロシリケートまたはゼオライト)、酸素酸でグラフトされたシリケートまたはホスフェートでグラフトされたシリケートのタイプであってもよい。
【0069】
より一般的には、電解質は有利には、それらのトンネルまたはシート構造によっておよび/または分子の大きさが小さいプロトン化種を導入することができる空孔の存在によってのどちらかで高温度または中間温度のプロトン伝導体として利用された化合物のすべてであってもよい。
【0070】
本発明は、多くの変型が可能である。特に、プロトン化種の導入を可能にする材料はO2およびH2ガスに対して不透過性である場合があり、および/または88%超、好ましくは少なくとも94%の高密度化レベルにおいてプロトン化種の導入を可能にすることができる。
【0071】
実際、(特に、電解質の機械的強度およびガスの透過について)可能な限り最も高い高密度化のレベルと、材料がプロトン化種を導入することができる能力との間の良い妥協点が見出されなければならない。プロトン化種を膜に導入させる蒸気の分圧を増加させることは、高密度化のレベルの増加を補償する。
【0072】
変型によって、水の注入を可能にする材料は、プロトン導体として作用する酸素欠損型ペロブスカイトなどの酸素原子欠損型酸化物である。さらに、酸素原子欠損型酸化物は化学量論的間隔を示すことがあり、および/またはドープされてもよい。
【0073】
実際、不定比性および/またはドープ処理は、酸素原子空孔を生じさせることができる。したがって、プロトン伝導の場合、化学量論的間隔を示すペロブスカイトおよび/またはドープされている(したがって酸素が欠乏している)ペロブスカイトを加圧下で蒸気に暴露することによって、プロトン化種を構造に導入させる。水の分子が酸素空孔を充填し、反応:
【化23】

によって2つのヒドロキシル基(またはオキシド部位のH+プロトン)に解離する。
【0074】
不定比および/またはドープトペロブスカイト以外の材料が水の導入を促進しプロトン化種および/または水酸化物の形態でその解離を促進する材料として利用されてもよいことが指摘される。
【0075】
例えば、ホタル石構造、パイロクロアA227構造、アパタイトMe10(XO462構造、オキシアパタイトMe10(XO462構造、ヒドロキシルアパタイトMe10(XO46(OH)2構造、シリケート、アルミノシリケート、フィロシリケート、またはホスフェートなどの結晶構造を挙げることができる。
【0076】
これらの構造はおそらく、酸素酸基によってグラフトされてもよい。実際、水および/またはプロトンとの高い親和力を有する全ての構造を予想することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気下でプロトン化種をこの膜に導入することができる材料から製造されたプロトン伝導膜(31)を備える電解槽(30)の陽極室(32)中に加圧下で注入された蒸気を電解するための方法であって、蒸気の形態で注入された水の酸化が前記陽極(32)において行なわれて前記膜中に、この同じ膜内で移動し、二酸化炭素CO2および/または一酸化炭素COを還元しうる反応性水素原子の形態の、陰極(33)の表面において還元されるプロトン化種を発生させる方法が、以下の工程:
− 前記電解槽(30)の前記陰極室(33)中に加圧下でCO2および/またはCOを導入する工程と、
− 発生された前記反応性水素原子によって、前記陰極室(33)中に導入された前記CO2および/またはCOを還元し、その結果、前記CO2および/またはCOがCxyzタイプの化合物(x≧1であり、yが0〜2x+2であり、zが0〜2xである)を形成する工程と
を含む、電解方法。
【請求項2】
前記陰極に印加された電圧・電流ペアによって形成された前記Cxyzタイプの化合物の性質を制御する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の電解方法。
【請求項3】
酸素O2およびH2の拡散に対して不透過性であり蒸気圧力下でこの膜(31)へのプロトン化種の導入を可能にするプロトン伝導膜(31)を利用する工程を含むことを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の電解方法。
【請求項4】
欠損型ペロブスカイト、不定比ペロブスカイトおよび/または一般式ABO3のドープトペロブスカイト、ホタル石、パイロクロアA227、アパタイトMe10(XO462、オキシアパタイトMe10(XO462構造、ヒドロキシルアパタイトMe10(XO46(OH)2構造、シリケート構造、アルミノシリケート、フィロシリケート、ゼオライト、酸素酸でグラフトされたシリケートまたはホスフェートでグラフトされたシリケートのタイプのプロトン伝導膜(31)を利用する工程を含むことを特徴とする、請求項3に記載の電解方法。
【請求項5】
プロトン伝導膜(31)として、前記陰極(33)によってまたは前記陽極(32)によって支持された電解質を利用して、その機械的強度を増加させるためにその厚さを低減する工程を含むことを特徴とする、請求項4に記載の電解方法。
【請求項6】
1バール以上で接合体の破断圧以下であり、後者が少なくとも100バール以上である蒸気の相対分圧を利用する工程を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電解方法。
【請求項7】
蒸気の前記相対分圧が有利には50バール以上であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の電解方法。
【請求項8】
CO2および/またはCOの前記相対圧力が1バール以上で前記接合体の前記破断圧以下であり、後者が少なくとも100バール以上であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電解方法。
【請求項9】
電解温度が200℃以上かつ800℃以下であり、有利には350℃〜650℃であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の電解方法。
【請求項10】
多孔質構造の前記電極(32、33)が、電子伝導およびイオン伝導混在のセラミック−金属材料または「セラミック」電極のどちらかであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の電解方法。
【請求項11】
前記セラミック−金属材料が、前記陰極(33)については、セラミックが前記膜(31)を形成する前記電解質と相溶性であると共に、分散された金属の性質が有利にはコバルト、銅、モリブデン、銀、鉄、亜鉛、貴金属(金、白金、パラジウム)および/または遷移元素などの金属が挙げられる金属および/または金属合金であるセラミック−金属材料であることを特徴とする、請求項10に記載の電解方法。
【請求項12】
前記セラミック−金属材料が、前記陽極(32)については、セラミックが前記膜(31)を形成する前記電解質と相溶性であると共に、分散された金属の性質が有利には金属合金または不動態化可能な金属であるセラミック−金属材料であることを特徴とする、請求項10または11に記載の電解方法。
【請求項13】
酸化後に蒸気下でこの膜へのプロトン化種の注入を可能にする材料から製造されたプロトン伝導膜を備える電解槽の陽極室中に加圧下で導入された蒸気を電解するための蒸気電解装置(30)であって、
− 水圧の影響下で膜へのプロトン化種の注入を可能にする前記材料から製造されたイオン伝導膜の形態の電解質(31)と、
− 陽極(32)と、
− 陰極(33)と、
− 電流を発生させて前記陽極(32)と前記陰極(33)との間に電位差を印加することができる発電機(34)と
を含む蒸気電解装置が、
− 前記陽極(32)経由での加圧下での前記電解質(31)への蒸気の導入のための手段(35)と、
− 前記電解槽の前記陰極室中に加圧下でCO2および/またはCOを注入する手段(36)と、
− 先行の実施形態の一つによる方法によって前記陰極室に導入された前記CO2および/または前記COを還元する手段と
を含むことを特徴とする、蒸気電解装置。
【請求項14】
プロトン化種の注入を可能にする前記材料がO2およびH2ガスに対して不透過性であることを特徴とする、請求項13に記載の蒸気電解装置。
【請求項15】
プロトン化種の注入を可能にする前記材料が、88%超、好ましくは少なくとも94%の高密度化レベルを有することを特徴とする、請求項13または14のいずれか一項に記載の蒸気電解装置。
【請求項16】
プロトン化種の注入を可能にする前記材料が、プロトン導体として作用する酸素欠損型ペロブスカイトなどの酸素原子欠損型酸化物であることを特徴とする、請求項13〜15のいずれか一項に記載の蒸気電解装置。
【請求項17】
前記酸素原子欠損型酸化物が化学量論的間隔を提示し、および/またはドープされていることを特徴とする、請求項16に記載の蒸気電解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−521104(P2011−521104A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508988(P2011−508988)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【国際出願番号】PCT/FR2009/050909
【国際公開番号】WO2009/150352
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(510298322)
【氏名又は名称原語表記】AREVA
【住所又は居所原語表記】33,rue la Fayette,F−75009 Paris,France
【Fターム(参考)】