説明

二酸化硫黄によって減極される陽極を備えた電解槽および水素生成における同電解槽の使用方法

電解槽および水素生成における同電解槽の使用方法。一実施態様によると、この電解槽は内部を有する枠体を備える。この内部を2つの室に分割するために、枠体の内部に陽子交換膜(PEM)が設けられる。枠体の内部にはガス拡散電極の形態の陽極がPEMから離して設けられ、陽極とPEMとの間の空間は硫酸水溶液で満たされる。枠体の内部には陰極が設けられ、PEMにイオン結合される。使用時、陽極の硫酸溶液側とは反対の側に亜硫酸ガスが供給され、電流が電解槽に供給される。この結果、陽極において二酸化硫黄が酸化され、陰極において分子状水素が発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には電解槽に関し、特に、二酸化硫黄によって減極される陽極を備えた新規の電解槽と、水から分子状水素を発生させるために同電解槽を使用する方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
利用可能な石油および天然ガス埋蔵量の減少と地球規模の気候変動の懸念の深まりとに伴い、代替エネルギー源および燃料の探求への関心が高まってきた。このような代替エネルギー源の例として、水力発電、原子力、太陽光発電、風、および地熱が挙げられる。これらの代替エネルギー源は、新規供給源または拡張供給源としてさまざまな度合いの将来性を有するものの、容易に貯蔵および輸送可能なエネルギー源としての炭化水素燃料の能力に匹敵するものはない。したがって、上記エネルギー源からのエネルギーを必要時まで保存しておける方法を開発することが望ましい。このようなエネルギーを保存する手段の例として、電池、フライホイール、および揚水システムが既に存在する。それにもかかわらず、このようなエネルギーを保存するために最も有望な方法は、エネルギーを圧縮ガスまたは低温液体のどちらかとして分子状水素の形態で保存する方法と思われる。ただし、分子状水素の形態でのエネルギーの保存を実用化するには、その後の保存のために効率的な分子状水素の生成方法が必要とされる。
【0003】
現在の原子炉は、一般に水を伝熱媒体として利用するが、第IV世代と称される将来の原子炉はより高温で運転され、ガスが冷却剤として使用される。このような高温ガス冷却(high temperature gas−cooled:HTGC)型原子炉は、加熱されたガス、恐らくヘリウム、の熱エネルギーを分子状水素の形態で保存するためにいくつかの新規プロセスを利用できる。このようなプロセスの1つは、当該技術分野においては「硫黄−ヨウ素プロセス」とも称され、原子炉からの加熱されたヘリウムガスの熱エネルギーを最初に硫酸の熱分解に用いる。この熱分解は次のように表される。
SO→HO+SO(1)
【0004】
その後、上記反応(1)の三酸化硫黄は、次のように分解される。
【0005】
【化1】

【0006】
その後、上記反応(2)の二酸化硫黄は、次のように分子状ヨウ素の還元に用いられる。 SO+I+2HO→2HI+HSO(3)
【0007】
最後に、上記反応(3)のヨウ化水素は、高温下で次のように分解される。
2HI→I+H(4)
【0008】
上記反応(1)から反応(4)の正味の反応は次のようになる(硫酸およびヨウ素反応物質は反応(3)および反応(4)においてそれぞれ再生される)。
【0009】
【化2】

【0010】
したがって、見て分かるように、上記の硫黄−ヨウ素プロセスは、エネルギーを分子状水素の形態で保存するために核反応からの熱エネルギーを用いる。ただし、残念なことに、この硫黄−ヨウ素プロセスは、エネルギーを分子状水素の形態で保存する方法としてのその潜在力を十分に発揮していない。この大きな原因は、このプロセスのヨウ素反応における難しさにある。
【0011】
硫黄−ヨウ素プロセスに代わるプロセスの1つは、「ハイブリッド硫黄プロセス」とも称されるプロセスである。以下に示すように、ハイブリッド硫黄プロセスは、最初は硫黄−ヨウ素プロセスのように硫酸を水と三酸化硫黄とに分解し、その後、三酸化硫黄を分子状酸素と二酸化硫黄とに分解する。
【0012】
【化3】

【0013】
ただし、ハイブリッド硫黄プロセスは、その後は硫黄−ヨウ素プロセスと異なり、電解槽を用いてその陽極および陰極において以下の反応をそれぞれ起こさせる。
SO+2HO→HSO+2H+2e(8)
2H+2e→H(9)
【0014】
硫黄−ヨウ素プロセスのように、ハイブリッド硫黄プロセスの正味の結果は次のようになる(最初の硫酸反応物質は反応(8)において再生される)。
【0015】
【化4】

【0016】
次に図1を参照すると、上記の反応(8)および(9)を行うための第1の従来型ハイブリッド硫黄電解槽が模式的に示されている。この第1の従来型ハイブリッド硫黄電解槽は、その全体が参照符号11で示されている。(簡単かつ明確にするために、電解槽11の特定の標準的な構成要素は、図示していないか、または本願明細書で説明していない。)
【0017】
電解槽11は、枠体13を備える。陽子交換膜(proton exchange membrane:PEM)15が枠体13の内部に適切に配置され、陽極17と陰極19とがPEM15の両面に接して配置されている。陽極17および陰極19はそれぞれ、一般に、金属材料または別の導電性構造で構成されている。PEM15と、陽極17と、陰極19とによって電極膜組立体21が画成され、この組立体21によって、枠体13の内部が陽極室13−1と陰極室13−2とに分割されている。陽極室13−1は入口23と出口25とを備え、陰極室13−2は出口27を備える。使用時、入口23は亜硫酸ガスを溶かした硫酸水溶液を陽極室13−1に導入するために用いられ、出口25は余剰硫酸水溶液を、余剰二酸化硫黄があればこれも、陽極室13−1から排出するために用いられる。同時に、出口27は、陰極19で発生した分子状水素を、余剰水があればこれも、陰極室13−2から排出するために用いられる。
【0018】
上記のように、電解槽11は、溶解した二酸化硫黄を陽極の電気活性種として利用する。ただし、残念なことに、二酸化硫黄は硫酸水溶液に溶解しにくい。この結果、溶剤が電気活性種を電極に十分に運べないために、限界電流が低い。この問題を解消するために用いられてきた手法の1つは、支持電解質上のガス種の圧力を高めることである。したがって、図1に示すように、二酸化硫黄は、一般に20バールなどの高圧で導入される。ただし、このような高圧で二酸化硫黄を導入するには、このような高圧でガスを安全に収容するように電解槽システム11、特に枠体13、を設計する必要がある。ただし、残念なことに、電解槽11、特に枠体13、の運転は安全性およびコスト上の限界を示し、この欠点を軽減する対策は現時点では商業的に実現可能ではない。さらに、電解槽11の上記運転に伴う別の問題は、溶解した二酸化硫黄がPEM15に浸透して陰極19に到達し、陰極19において元素状硫黄および/または硫化水素に還元されうることである。元素状硫黄の形成は、陰極の性能、二酸化硫黄の利用、およびプロセス硫黄の節約に深刻な問題をもたらす。
【0019】
次に図2を参照すると、上記の反応(8)および(9)を行うための第2の従来型ハイブリッド硫黄電解槽が模式的に示されている。この第2の従来型ハイブリッド硫黄電解槽は、その全体が参照符号51で示されている。(簡単かつ明確にするために、電解槽51の特定の標準的な構成要素は、図示していないか、または本願明細書で説明していない。)
【0020】
電解槽51は、構造的には電解槽11と同様である。この2つの電解槽の構造上の主な違いは、電解槽51は組立体21によって陽極室53−1と陰極室53−2とに分割された枠体53を備え、陽極室53−1は入口55と出口57とを備え、陰極室53−2は入口59と出口61とを備える点である。使用時、入口55は亜硫酸ガスを陽極室53−1に導入するために用いられ、出口57は陽極17で発生した硫酸水溶液を、余剰二酸化硫黄があればこれも、陽極室53−1から排出するために用いられる。同時に、入口59は水を陰極室53−2に導入するために用いられ、出口61は陰極19で発生した分子状水素を、余剰水が陰極室53−2内にあればこれも、陰極室53−2から排出するために用いられる。
【0021】
見れば分かるように、電解槽51を上記方法で用いると、陽極17での反応に必要な水は、陰極室53−2からPEM15を通って陽極17に拡散する水によって供給する必要がある。ただし、陰極19での分子状水素の形成を可能にするには、陽極17で形成された陽子を同時に反対方向にPEM15を通して移送する必要がある。これらの陽子は水和形態でPEM15を通して陰極19に移送されるので、PEMを通しての陽極17への水の移送効果が下がる。この結果、陽極17で利用可能な水が制限されるため、電流密度が制限される。さらに、電解槽11に関して説明したのと同様に、陽極室53−1からの未反応の二酸化硫黄がPEM15を通って陰極19に達しうるという欠点を電解槽51も有する。陰極19において、未反応の二酸化硫黄は元素状硫黄および/または硫化水素に還元されうる。
【0022】
着目される特許および刊行物として、それぞれの内容全体を参照により本願明細書に組み込んだものとする以下のものが挙げられる。2007年8月28日発行の発明者ラホダ(Lahoda)らの米国特許第7,261,874B2号明細書、2007年1月11日公開の発明者ラホダ(Lahoda)の米国特許出願公開第2007/0007147A1号、1996年4月30日発行の発明者スタウファ(Stauffer)の米国特許第5,512,144号明細書、1982年11月2日発行の発明者ハードマン(Hardman)らの米国特許第4,357,224号明細書、1982年5月18日発行の発明者ボルターズドルフ(Boltersdorf)らの米国特許第4,330,378号明細書、1980年3月4日発行の発明者ストラック(Struck)の米国特許第4,191,619号明細書、1977年11月22日発行の発明者シュルテン(Schulten)らの米国特許第4,059,496号明細書、1975年6月10日発行の発明者ブレッヒャ(Brecher)らの米国特許第3,888,750号明細書、1974年7月16日発行の発明者マゲット(Maget)の米国特許第3,824,163号明細書、2006年10月19日公開のPCT国際公開第WO2006/110780A2号、シバスブラマニアン(Sivasubramanian)ら著「陽子交換膜電解槽を用いた熱化学サイクルからの水素の電気化学的製造(Electrochemical hydrogen production from thermochemical cycles using a proton exchange membrane electrolyzer)」、国際水素エネルギー学会誌(International Journal of Hydrogen Energy)、第32巻(4号):p.463−468(2007年)、およびステイザー(Staser)ら著「H製造のためのPEM電解槽における気相SOの電気化学的酸化に対する水の影響(Effect of Water on the Electrochemical Oxidation of Gas−Phase SO in a PEM Electrolyzer for H Production)」、エレクトロケミカル・アンド・ソリッドステート・レターズ(Electrochemical and Solid−State Letters)、第10巻(11号):p.E17−E19(2007年)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の目的は、二酸化硫黄の酸化と分子状水素の生成とを同時に行うための新規な電気化学的手法を提供することである。
【0024】
本発明の別の目的は、二酸化硫黄の酸化と分子状水素の生成とを同時に行うための従来の手法に伴う欠点の少なくとも一部を解決する上記のような手法を提供することである。
【0025】
本発明の一側面によると、陽極での二酸化硫黄の酸化と陰極での分子状水素の発生とに適した電解槽が提供される。この電解槽は、(a)内部を有する枠体と、(b)上記内部を複数の室に分割するために上記枠体の内部に配設されたイオン伝導性のセパレータであって、陽極側表面と陰極側表面とを有するセパレータと、(c)上記枠体の内部に上記セパレータの上記陽極側表面から離して配設されて上記セパレータの上記陽極側表面との間に第1の電解質室を形成する陽極であって、流体拡散電極を備える陽極と、(d)上記第1の電解質室に存在する第1の電解液と、(e)上記枠体の内部に配設された陰極であって、上記セパレータの上記陰極側表面にイオン結合される陰極と、を備える。
【0026】
本発明の別の側面によると、陽極での二酸化硫黄の酸化と陰極での分子状水素の生成とに適した電解槽が提供される。この電解槽は、(a)内部を有する枠体と、(b)上記枠体の内部に配設された陽極であって、流体拡散電極である陽極と、(c)上記枠体の内部に上記陽極から離間して配設されて上記陽極との間に電解質室を画成するガス拡散電極である陰極であって、上記陽極の反対側に二酸化硫黄室が形成され、上記陰極の反対側に水素室が形成される、陰極と、(d)上記電解質室内に存在する電解液とを備える。
【0027】
本発明のさらに別の側面によると、分子状水素を発生させる方法が提供される。この方法は、(a)電解槽を用意するステップであって、(i)イオン伝導性のセパレータであって、陽極側表面と陰極側表面とを有するセパレータと、(ii)第1の空間を形成するために上記セパレータの上記陽極側表面から離隔された陽極であって、流体拡散電極を備える陽極と、(iii)セパレータの陰極側表面にイオン結合される陰極とを備える電解槽を用意するステップと、(b)上記陽極と上記セパレータとの間の第1の空間を電解質水溶液で満たすステップと、(c)この電解質水溶液とは反対の側から陽極に二酸化硫黄を供給するステップと、(d)電流を電解槽に供給することによって、陽極において二酸化硫黄を酸化させ、陰極において分子状水素を発生させるステップとを含む。
【0028】
本発明のさらに別の側面によると、分子状水素を発生させる方法が提供される。この方法は、(a)電解槽を用意するステップであって、電解質水溶液で満たされた空間によって相隔てられた陽極と陰極とを備え、陽極は流体拡散電極を備え、陰極はガス拡散電極を備える電解槽を用意するステップと、(b)電解質水溶液とは反対の側から陽極に二酸化硫黄を供給するステップと、(c)電流を電解槽に供給し、これによって陽極において二酸化硫黄を酸化させ、陰極において分子状水素を発生させるステップと、を含む。
【0029】
本発明のさらなる目的、並びに側面、特徴、および利点は、一部は以下の説明に記載されているが、一部は以下の説明から明らかになるか、または本発明を実施することによって習得されるであろう。以下の説明においては、本発明を実施するためのさまざまな実施形態を実例として示して説明の一部を構成する添付図面を参照する。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施できる程度に詳細に説明するが、他の実施形態も利用しうること、および本発明の範囲から逸脱せずに構造を変更しうることを理解されたい。したがって、以下の詳細な説明は限定の意味で解釈されるべきではなく、本発明の範囲は添付の請求項によって最も良く定義される。
【0030】
添付図面は、本願明細書に組み込まれて本願明細書の一部を構成するものであり、本発明のさまざまな実施形態を図示し、説明と併せて本発明の原理を説明するために役立つ。図面中、同様の参照符号は同様の部品を示す。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】二酸化硫黄/硫酸水溶液の液状電解質の供給を用いる従来型ハイブリッド硫黄電解槽の第1の例の概略図である。
【図2】二酸化硫黄ガスの直接供給を用いる従来型ハイブリッド硫黄電解槽の第2の例の概略図である。
【図3】本発明の教示により構成されたハイブリッド硫黄電解槽の第1の実施形態の概略図である。
【図4】本発明の教示により構成されたハイブリッド硫黄電解槽の第2の実施形態の概略図である。
【図5】本発明の教示により構成されたハイブリッド硫黄電解槽の第3の実施形態の概略図である。
【図6】本発明の教示により構成されたハイブリッド硫黄電解槽の第4の実施形態の概略図である。
【図7】本発明の教示により構成されたハイブリッド硫黄電解槽の第5の実施形態の概略図である。
【図8】実施例1に記載の電解槽の性能を示す電流−電圧線図である。
【図9】(a)、(b)は、実施例2で用いた電解槽の夫々分解側面図及び側面図である。
【図10】実施例2に記載の電解槽の性能を示す電流−電圧線図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、二酸化硫黄を酸化させ、それとほぼ同時に分子状水素を発生させる種類の電解槽の性能の向上は、多孔質の流体拡散電極(すなわち、ガス拡散電極または液体−液体電極)を陽極として利用し、この陽極にその片側から純粋な二酸化硫黄を供給すると同時に、その反対側、すなわち陽極と陰極との間にある側、に二酸化硫黄を実質的に含まない電解質と水とを供給することによって実現できるという発見に、少なくとも部分的に、基づく。この方法によって、最終的に陰極に到達する二酸化硫黄を制限しうる。さらに、ほぼ純粋な二酸化硫黄を陽極に供給することによって、二酸化硫黄を水溶液として供給した場合に達成される電流密度より実質的に高い電流密度を達成できる。本発明の各電解槽は、分割された電解質室でも分割されていない電解質室でも使用しうる。セパレータを使用する場合、セパレータとして、組み立て時に据え付けるか、または現場で形成される、陽イオン交換膜、陰イオン交換膜、および電解質を含む多孔質の隔壁が挙げられるが、これだけに限定されるものではない。
【0033】
次に図3を参照すると、本発明の教示により構成されたハイブリッド硫黄電解槽の第1の実施形態が模式的に示されている。このハイブリッド硫黄電解槽は、その全体が参照符号111で示されている。(簡単かつ明確にするために、電解槽111の特定の標準的な構成要素は、図示していないか、または本願明細書で説明していない。)
【0034】
電解槽111は、枠体113を備える。枠体113の内部を一対の室に分割するためにセパレータ115が枠体113の内部に適切に配置されている。この2つの室の一方は陰極室113−1である。セパレータ115は、イオン交換膜でもよく、イー・アイ・デュポン・ド・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company(米国デラウェア州ウィルミントン)からNAFION(登録商標)膜として市販されている種類の過フッ化イオン交換膜などの陽子交換膜(PEM)であることが好ましい。あるいは、セパレータ115は、イオン種が孔を通って一方の室からもう一方の室に導かれるように孔が電解質で満たされた化学的に不活性の非導電性多孔質材料でもよい。
【0035】
陽極として機能する多孔質ガス拡散電極117が陰極室113−1とは反対の側に位置する室に配置されている。非陰極室をさらに電解質室113−2と二酸化硫黄室113−3とに分割するために、多孔質ガス拡散電極117はセパレータ115から離間して置かれている。ガス拡散電極117は、従来のガス拡散電極でもよいが、これだけに限定されるものではない。電極117は、以下の特性の一部または全部を有することが好ましい。すなわち、(1)機械的に安定し、遭遇する如何なる動作差圧にも耐えられる。(2)槽電圧を実質的に上げずに電流コレクタとして機能するために十分な導電性を有する。(3)内部が部分的に濡れるように電解質によって十分に濡らすことができる。(4)電解質が電極のガス側まで濡らさないように電解質による濡れに対して耐性がある。(5)二酸化硫黄の酸化を有意な速度で促進するために十分な触媒活性がある。および(6)遭遇する動作条件および電圧下で寸法的に安定している。
【0036】
電解槽111内での使用に適しうる種類のガス拡散電極の例は、それぞれの内容全体を参照により本願明細書に組み込んだものとする、以下の特許明細書に開示されている。すなわち、1991年9月10日発行の発明者アレン(Allen)の米国特許第5,047,133号明細書、1989年10月31日発行の発明者ソロモン(Solomon)らの米国特許第4,877,694号明細書、1984年7月10日発行の発明者ソロモンの米国特許第4,459,197号明細書、1984年4月3日発行の発明者ソロモンの米国特許第4,440,617号明細書、1984年2月14日発行の発明者ゲシュタウト(Gestaut)らの米国特許第4,431,567号明細書、1983年3月22日発行の発明者ソロモンの米国特許第4,377,496号明細書、1983年1月25日発行の発明者ソロモンの米国特許第4,370,284号明細書、1981年10月6日発行の発明者アレンらの米国特許第4,293,396号明細書、および1981年2月3日発行の発明者リンドストロム(Lindstrom)らの米国特許第4,248,682号明細書。
【0037】
なお、ガス拡散電極117は、電気分解の工業用途のための陽極構造には通常使用されない炭素などの材料を含みうることに注目されたい。水電解または塩素アルカリ生成などの用途においては、陽極電位は、炭素が二酸化炭素に直接酸化されうる点まで上昇する。したがって、このような用途においては、寸法安定性のある触媒構造を設けるために特殊なバルブメタル系電極が使用される。ただし、二酸化硫黄の酸化は炭素の酸化より低い陽電位で発生するので、そのような状況下においては炭素は許容しうる構造材料である。
【0038】
陰極119は、陰極室113−1の内部に配置され、セパレータ115の陰極側表面にイオン結合される。陰極119は、従来の自立型金属電極でもよく、あるいは陰極119はセパレータ115の表面に圧力または接着によって貼られた触媒シールまたは構造の形態をとってもよい。あるいは、陰極119はガス拡散電極でもよく、例えば白金および/または炭素を含む多孔質の接着構造でもよい。陰極119がガス拡散電極の場合、このような電極は、以下の特性の一部または全部を有するように製造されることが好ましい。すなわち、(a)機械的に安定し、遭遇する如何なる動作差圧にも耐えられる。(b)槽電圧を実質的に上げずに電流コレクタとして機能するために十分な導電性を有する。(c)内部が部分的に濡れるように電解質によって十分に濡らすことができる。(d)電解質が電極のガス側まで濡らさないように電解質による濡れに対して十分な耐性がある。(e)GDEによって生成された水素ガスがGDEの膜/セパレータとは反対の側に放出されるようにGDEの膜/セパレータとは反対の側までガス経路を設けることができる。(f)水素の電気化学的発生を有意な速度で促進するために十分な触媒活性を有する。および(g)遭遇する動作条件および電圧下で寸法的に安定している。
【0039】
上記の特徴を有するほか、電解槽111の構成要素は、遭遇する各環境で安定していなければならず、持続期間中、腐食または特別な保守なしに運転可能である必要がある。
【0040】
陰極室113−1は出口123を備え、電解質室113−2は入口125と出口127とを備え、二酸化硫黄室113−3は入口129を備える。使用時、入口129は、二酸化硫黄ガスを二酸化硫黄室113−3に導入するために用いられ、入口125は硫酸水溶液を電解質室113−2に導入するために用いられる。電解質室113−2からの水と、二酸化硫黄室113−3からの二酸化硫黄とはガス拡散電極117の孔の内部で反応し合い、これにより硫酸と、陽子と、電子とが(上記の反応(8)で説明したように)生成される。これらの生成物は、次にガス拡散電極117から電解質室113−2に移され、硫酸の一部は最終的には電解質室113−2の出口127から排出される。陽子はセパレータ115を横切って陰極119に移送され、そこで分子状水素に変換される。このようにして形成された分子状水素は、余剰水と共に、陰極室113−1の出口123から排出される。
【0041】
容易に分かるように、電解槽111は、電解槽11および51に勝る利点をいくつか有する。これらの利点として、以下が挙げられる。第1に、電解槽111においては、純粋な亜硫酸ガスが高表面積の多孔質ガス拡散電極117に供給され、その内部の反応域に拡散する。したがって、硫酸水溶液電解質への二酸化硫黄の溶解に関連する限界が解消される。第2に、供給される二酸化硫黄に不活性種(溶剤など)が含まれないため、二酸化硫黄の消費によって圧力損失が発生し、拡散が制限されることなく追加の二酸化硫黄が活発に補給される。第3に、ガス拡散電極117とセパレータ115との間のギャップは、陰極119への未反応の二酸化硫黄のクロスオーバを防ぐ追加の隔壁となる。
【0042】
次に図4を参照すると、本発明の教示により構成されたハイブリッド硫黄電解槽の第2の実施形態が模式的に示されている。このハイブリッド硫黄電解槽は、その全体が参照符号211で示されている。(簡単かつ明確にするために、電解槽211の特定の標準的な構成要素は、図示していないか、または本願明細書で説明していない。)
【0043】
電解槽211は、大半の点で電解槽111と同様であり、この2つの電解槽間の主な違いは、電解槽111の多孔質ガス拡散電極117の代わりに、電解槽211には多孔質の液体−液体電極217が用いられている点である。液状二酸化硫黄がガス拡散電極117に部分的に浸透可能であれば、多孔質の液体−液体電極217を構造的に電極117と同様に、または同一にさえ、しうる。
【0044】
電解槽211は、ガス状の二酸化硫黄ではなく、液状の二酸化硫黄を入口129から二酸化硫黄室113−3に供給する点以外は、電解槽111に関して上で説明した方法で使用しうる。
【0045】
電解槽211の内部の流体は、好ましくは均衡のとれた方法で、加圧しうる。圧力の封じ込めによってさらなる複雑さが生じうるものの、電解槽211にはさらなる利点がある。第1に、セパレータ115の両側の圧力差をゼロ近くにすることができる。第2に、液状二酸化硫黄の供給により、陽極反応へのその供給に伴う物質移動の制約がさらに低減される。
【0046】
次に図5を参照すると、本発明の教示により構成されたハイブリッド硫黄電解槽の第3の実施形態が模式的に示されている。このハイブリッド硫黄電解槽は、その全体が参照符号311で示されている。(簡単かつ明確にするために、電解槽311の特定の標準的な構成要素は、図示していないか、または本願明細書で説明していない。)
【0047】
電解槽311は、枠体313を備える。セパレータ315は、電解槽111のセパレータ115と同一でもよく、枠体313の内部を一対の室に分割するために枠体313の内部に適切に配置されている。
【0048】
セパレータ315によって画成された2つの室の一方に、陽極として機能する多孔質の流体拡散電極317がセパレータ315から離して配置されてこの室を二酸化硫黄室313−1と電解質室313−2とにさらに分割している。流体拡散電極317に供給される二酸化硫黄の形態がガス状か液状かに応じて、流体拡散電極317をガス拡散電極117のようなガス拡散電極にすることも、あるいは液体−液体電極217のような液体−液体電極にすることもできる。
【0049】
セパレータ315によって画成されたもう一方の室の内部に、陰極として機能するガス拡散電極319がセパレータ315から離して配置され、この室を電解質室313−3と水素室313−4とにさらに分割している。ガス拡散電極319は、電極117と同様または同じでもよい。
【0050】
二酸化硫黄室313−1は入口323を備え、電解質室313−2は入口325と出口327とを備え、電解質室313−3は入口329と出口331とを備え、水素室313−4は出口333を備える。使用時、入口329は、二酸化硫黄を二酸化硫黄室313−1に導入するために用いられ、入口325は硫酸水溶液を電解質室313−2に導入するために用いられる。電解質室313−2からの水と二酸化硫黄室313−1からの二酸化硫黄とは流体拡散電極317の孔の内部で反応し合い、これにより硫酸と、陽子と、電子とが(上記の反応(8)で説明したように)生成される。これらの生成物は、次にガス拡散電極317から電解質室313−2に移される。硫酸の一部は最終的には電解質室313−2の出口327から排出される。陽子はセパレータ315を横切って電解質室313−3に移送される。電解質室313−3は、入口329から入って出口331から排出される硫酸水溶液で満たされる。電解質室313−3を通ってガス拡散電極319に達した陽子は、ガス拡散電極319において還元されて分子状水素を形成する。この分子状水素は次にガス拡散電極319の濡れていない側から水素室313−4に放出される。
【0051】
容易に分かるように、電解槽311の設計により、形成された分子状水素はガス拡散電極319のセパレータ315とは反対の側に放出される。このような設計は、分子状水素の現場分離を槽311の内部で可能にする。
【0052】
次に図6を参照すると、本発明の教示により構成されたハイブリッド硫黄電解槽の第4の実施形態が模式的に示されている。このハイブリッド硫黄電解槽は、その全体が参照符号411で示されている。(簡単かつ明確にするために、電解槽411の特定の標準的な構成要素は、図示していないか、または本願明細書で説明していない。)
【0053】
電解槽411は、枠体413を備える。枠体413の内部には、陽極として機能する多孔質の流体拡散電極417と陰極として機能するガス拡散電極419とが、枠体413の内部を二酸化硫黄室413−1と、電解質室413−2と、水素室413−3とに分割するように適切に配置されている。流体拡散電極417に供給される二酸化硫黄の形態がガス状か液状かに応じて、流体拡散電極417をガス拡散電極117のようなガス拡散電極にすることも、あるいは液体−液体電極217のような液体−液体電極にすることもできる。
【0054】
二酸化硫黄室413−1は入口423を備え、電解質室413−2は入口425と出口427とを備え、水素室413−3は出口433を備える。使用時、入口423は、二酸化硫黄を二酸化硫黄室413−1に導入するために用いられる。入口425は、硫酸水溶液を電解質室413−2に導入するために用いられる。電解質室413−2からの水と二酸化硫黄室413−1からの二酸化硫黄とは流体拡散電極417の孔の内部で反応し合い、これにより硫酸と、陽子と、電子とが(上記の反応(8)で説明したように)生成される。これらの生成物は、次にガス拡散電極417から電解質室413−2に移される。硫酸の一部は最終的には電解質室413−2の出口427から排出される。陽子は硫酸溶液を通ってガス拡散電極419に移送される。ガス拡散電極419において陽子は還元されて分子状水素を形成する。その後、この分子状水素はガス拡散電極419の濡れていない側から水素室413−3に放出される。
【0055】
察知できるように、槽411の陰極がガス拡散電極であると、電解質に放出された水素が陽極において再酸化される機会があるという点で好都合である。
【0056】
セパレータを備える上記の各電解槽に比べ、電解槽411の利点の1つは、セパレータがないために槽内部の主な抵抗源がなくなったことである。この結果、槽の運転に必要な電圧が低下する。このような低下は、プロセス全体の経済性にとって大きな利点となる。
【0057】
次に図7を参照すると、本発明の教示により構成されたハイブリッド硫黄電解槽の第5の実施形態が模式的に示されている。このハイブリッド硫黄電解槽は、その全体が参照符号511で示されている。(簡単かつ明確にするために、電解槽511の特定の標準的な構成要素は、図示していないか、または本願明細書で説明していない。)
【0058】
電解槽511は、大半の点で電解槽111と同様であり、ほぼ同じように動作する。したがって、電解槽511は、膜/セパレータ543に隣接した陰極544と共に用いられるガス拡散陽極541を備える。陽極541の膜/セパレータ543とは反対の側と陽極流路板545とによって形成された室にガス状の二酸化硫黄が供給される。二酸化硫黄は、上記の反応(8)に従って陽極内で酸化される。このようにして生成された硫酸は、ギャップ支持体542の内部の硫酸水溶液電解質に蓄積され、ギャップ支持体542の周囲のガスケット、または陽極流路板545、の複数の流路経由で排出され、水素イオンは膜/セパレータ543を通って移送され、陰極544において上記の反応9に従って還元される。これにより、次の正味の反応が起きる。
SO(気体)+2HO→HSO(液体)+H(気体)(11)
【0059】
陰極流路板547は次の機能を果たす。すなわち、(i)任意使用(膜の水和用)の水の流れを槽の陰極入口から陰極活性領域全体に導く。(ii)生成物である水素と余剰水とを陰極活性領域全体に導き、さらに槽の陰極出口に導く。(iii)組立体全体の負端子として機能する陰極コレクタ548に導電性をもたらす。陽極コレクタ546は正端子として機能し、陽極流路板545に機械的および電気的に接触することによって、陽極541と陽極コレクタ546との間に導電性をもたらす。
【0060】
以下の実施例は単に例示のためであり、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0061】
NAFION(登録商標)(1100EW)イオノマー含有媒質に懸濁させた4mg/cmの白金黒(エンゲルハード(Engelhard)社製)を疎水性炭素質の織地バッキングに堆積することによって、ガス拡散陽極として用いる多孔質ガス拡散電極を作製した(イーテック(E−TEK)社のエラット(ELAT))。このバッキングを高温および高圧下で積層することによってガス拡散陽極を形成した。この陽極を白金めっきチタン陰極が設けられている分割前の槽に配置した。
【0062】
水素を減極ガスとして、この構成をコントロールとして作動させた。ガス拡散陽極の膜とは反対の側に水素を供給して電流−電圧曲線を得た。こうして得られた電流−電圧曲線は、水素電極反応の低分極化のために、槽内の抵抗損失に近似している。
【0063】
さらなるコントロールとして、電流を槽に印加したときに硫酸水溶液内の水が酸化されて酸素が発生するように、反応ガスを陽極から排除した。このようにして、水の酸化反応の電流−電圧曲線を得た。
【0064】
その後、ガス拡散陽極の膜とは反対の側に二酸化硫黄を供給して電圧−電流曲線を得た。実験的に得られた二酸化硫黄の酸化電圧および水の酸化電圧から水素ポンプ電圧を減じると、これらの反応の抵抗修正電圧になる。これらの修正された電流−電圧曲線が図8に示されている。
【0065】
二酸化硫黄ガス拡散陽極の使用の成功は、水の酸化と比べ、ほぼ1ボルトの電位低下によって実証されている。
【実施例2】
【0066】
NAFION(1100EW)イオノマー含有媒質に懸濁させた4mg/cmの白金黒(エンゲルハード社製)を疎水性炭素質の織地バッキングに堆積することによって、ガス拡散陽極として用いる多孔質ガス拡散電極を作製した(イーテック社のエラット)。このバッキングを高温および高圧下で積層することによってガス拡散陽極を形成した。この陽極を、a)プラスチック製の電解質ギャップ枠(ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK))と、b)プラスチック製の粗目ギャップ支持体(高密度ポリエチレン(HDPE))と、c)NAFION(登録商標)117膜と、d)白金めっき陰極とを備えた試験槽(図9(a)および図9(b)を参照)に配置した。コントロールとして、この構成を上記実施例1で行ったように水素を減極ガスとして作動させた。すなわち、ガス拡散陽極の膜とは反対の側に水素を供給して電流−電圧曲線を得た。この曲線は図10に示されている。
【0067】
その後、ガス拡散陽極の膜とは反対の側に二酸化硫黄を供給して電圧−電流曲線を得た。この曲線は図10に示されている。
【0068】
図10に示すこれらの曲線は、二酸化硫黄の酸化と、それに伴う水の電解電位より低い電位での陰極における水素発生を実証している。
【実施例3】
【0069】
実施例2と同様に、減極される液体−液体陽極を膜電解槽に組み込むこともできる。膜電解槽をほぼ5気圧まで加圧し、液状二酸化硫黄を陽極の非電解質側に導入することもできる。液状二酸化硫黄は多孔質の液体−液体陽極に浸透する。電気分解が開始され、水素ガスの発生により陰極液に対する圧力が上昇する。陽極液の圧力に等しい圧力に達すると、陰極液は槽から排出され、これにより膜の両側の圧力が均衡する。
【実施例4】
【0070】
白金めっきチタン陰極の代わりに非対称のガス拡散陰極を使用しうる点を除けば、実施例2で説明したのと同じ方法で槽を構成することもできる。この非対称の陰極は、多孔質の親水性炭素高分子層を多孔質の疎水性導電層に積層し、親水層に接合される側に高表面積の白金層を堆積することによって作製することもできる。このように作製された積層ガス拡散陰極は、生成された水素がこの構造から陰極の非電極側に漏出することによって、水素ガスを電解質から相分離させるように作動させることもできる。
【実施例5】
【0071】
膜を一切備えない点以外は、実施例4で説明したように槽を作製することもできる。この場合、共通の硫酸電解質を陽極と陰極との間に設ける。陽極を減極化するために用いた二酸化硫黄をガス拡散陽極の非電極側に供給してゆくと、陰極で生成された水素が非電極側に放出されるので、セパレータなしで電気分解が進行する。
【0072】
上記の本発明の各実施形態は、単なる例示を目的としており、当業者は、本発明の精神から逸脱することなく、本発明に多数の変形および変更を行いうるであろう。このような変形および変更は、添付の特許請求の範囲に定義された本発明の範囲に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極において二酸化硫黄を酸化させ、陰極において分子状水素を発生させるために適した電解槽であって、
(a)枠体であって、内部を有する枠体と、
(b)前記内部を複数の室に分割するために前記枠体の前記内部に配設されたイオン伝導性のセパレータであって、陽極側表面と陰極側表面とを有するセパレータと、
(c)前記枠体の前記内部に前記セパレータの前記陽極側表面から離間して配設されて前記セパレータの前記陽極側表面との間に第1の電解質室を形成する陽極であって、流体拡散電極を備える陽極と、
(d)前記第1の電解質室に存在する第1の電解液と、
(e)前記枠体の前記内部に配設されて前記セパレータの前記陰極側表面にイオン結合される陰極と、
を備える電解槽。
【請求項2】
前記セパレータはイオン交換膜である、請求項1に記載の電解槽。
【請求項3】
前記イオン交換膜は陽子交換膜である、請求項2に記載の電解槽。
【請求項4】
前記流体拡散電極はガス拡散電極である、請求項1に記載の電解槽。
【請求項5】
前記流体拡散電極は液体−液体電極である、請求項1に記載の電解槽。
【請求項6】
前記第1の電解液は硫酸水溶液である、請求項1に記載の電解槽。
【請求項7】
前記陰極は前記セパレータの前記陰極側表面に直接接触している、請求項1に記載の電解槽。
【請求項8】
第2の電解質室を画成するために前記陰極は前記セパレータの前記陰極側表面から離隔されており、前記電解槽は前記第2の電解質室に第2の電解液をさらに備える、請求項1に記載の電解槽。
【請求項9】
前記第2の電解液は硫酸水溶液である、請求項8に記載の電解槽。
【請求項10】
前記陰極はガス拡散電極を備える、請求項8に記載の電解槽。
【請求項11】
前記枠体と前記陽極とは二酸化硫黄室を形成し、前記枠体は、二酸化硫黄を前記二酸化硫黄室に導入するために前記二酸化硫黄室に開口した入口を備える、請求項1に記載の電解槽。
【請求項12】
前記枠体は、前記第1の電解質室に開口した入口と、前記第1の電解質室からの排出用出口とを備える、請求項1に記載の電解槽。
【請求項13】
陽極において二酸化硫黄を酸化させ、陰極において分子状水素を発生させるために適した電解槽であって、
(a)枠体であって、内部を有する枠体と、
(b)前記枠体の前記内部に配設された陽極であって、流体拡散電極である陽極と、
(c)前記枠体の前記内部に前記陽極から離間して配設されて前記陽極との間に電解質室を画成する陰極であって、前記陰極はガス拡散電極であり、前記陽極の反対側に二酸化硫黄室が形成され、前記陰極の反対側に水素室が形成される、陰極と、
(d)前記電解質室に存在する電解液と、
を備える電解槽。
【請求項14】
前記電解液は硫酸水溶液である、請求項13に記載の電解槽。
【請求項15】
前記枠体は、二酸化硫黄を前記二酸化硫黄室に導入するために前記二酸化硫黄室に開口した第1の入口を備え、前記枠体は、前記電解液を前記電解質室に導入するために前記電解質室に開口した第2の入口と、前記電解液を前記電解質室から排出する第1の出口とを備え、前記枠体は分子状水素を前記水素室から排出する第2の出口を備える、請求項14に記載の電解槽。
【請求項16】
前記陽極はガス拡散電極である、請求項13に記載の電解槽。
【請求項17】
前記陽極は液体−液体電極である、請求項13に記載の電解槽。
【請求項18】
分子状水素を発生させる方法であって、
(a)電解槽を用意するステップであって、前記電解槽は、
i.陽極側表面と陰極側表面とを有するイオン伝導性のセパレータと、
ii.第1の空間を形成するために前記セパレータの前記陽極側表面から離隔された陽極であって、流体拡散電極を備える陽極と、
iii.前記セパレータの前記陰極側表面にイオン結合される陰極と、
を備える、電解槽を用意するステップと、
(b)前記陽極と前記セパレータとの間の前記第1の空間を電解質水溶液で満たすステップと、
(c)前記陽極の前記電解質水溶液側とは前記反対の側から前記陽極に二酸化硫黄を供給するステップと、
(d)電流を前記電解槽に供給し、これにより前記陽極において二酸化硫黄を酸化させ、前記陰極において分子状水素を発生させるステップと、
を含む方法。
【請求項19】
前記陽極に供給される前記二酸化硫黄は液状であり、前記流体拡散電極は液体−液体電極である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記陽極に供給される前記二酸化硫黄はガス状であり、前記流体拡散電極はガス拡散電極である、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記陰極は前記セパレータの前記陰極側表面に直接接触している、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記陰極はガス拡散電極であり、第2の空間を形成するために前記陰極は前記セパレータの前記陰極側表面から離隔されており、前記方法は前記第2の空間を電解質水溶液で満たすステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記セパレータはイオン交換膜である、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記イオン交換膜は陽子交換膜である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記電解質水溶液は硫酸水溶液である、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
分子状水素を発生させる方法であって、
(a)電解槽を用意するステップであって、前記電解槽は陽極と陰極とを備え、前記陽極と前記陰極とは互いに空間によって隔てられ、前記空間は電解質水溶液で満たされ、前記陽極は流体拡散電極を備え、前記陰極はガス拡散電極を備える、ステップと、
(b)前記陽極の前記電解質水溶液側とは前記反対の側から前記陽極に二酸化硫黄を供給するステップと、
(c)電流を前記電解槽に供給し、これにより前記陽極において二酸化硫黄を酸化させ、前記陰極において分子状水素を発生させるステップと、
を含む方法。
【請求項27】
前記陽極に供給される前記二酸化硫黄は液状であり、前記流体拡散電極は液体−液体電極である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記陽極に供給される前記二酸化硫黄はガス状であり、前記流体拡散電極はガス拡散電極である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記電解質水溶液は硫酸水溶液である、請求項26に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−535942(P2010−535942A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519946(P2010−519946)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【国際出願番号】PCT/US2008/009331
【国際公開番号】WO2009/058170
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(506061794)ノース−ウエスト ユニヴァーシティ (9)
【出願人】(510030973)ジネー エレクトロケミカル システムズ,エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】