説明

二重シールバルブ

【課題】二重シールバルブの連結筒の空間部と当該空間部と接続したドレイン管との間に弁体を設けることにより、常時、空間部が大気と連通しない二重シールバルブを提供することを目的とする。
【解決手段】 隣接した第1及び第2パイプに接続した連結筒の第1及び第2開口部に第1及び第2弁座を設け、第1及び第2弁座に密着又は離反自在な第1及び第2弁体を第1及び第2開口部を開閉するように構成し、連結筒に形成した第3開口部に外気に連通するドレイン管を接続し、第3弁座に密着又は離反自在な第3弁体を第3開口部を開閉するように構成し、連結筒に形成した第4開口部に第1パイプからの分岐パイプを接続し、第4弁座に密着又は離反自在な第4弁体を第4開口部を開閉するように構成することにより、連結筒内の空間部を介して、第1及び第2パイプ、ドレイン管、分岐パイプが相互に連通又は閉鎖自在となるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重シールバルブに関し、詳しくは、二重シールバルブの連結筒の空間部と当該空間部と接続したドレイン管との間に弁体を具備する二重シールバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品、乳業等の業界においては、需要の増大に伴い設備機器が大型化の傾向にあるとともに、品質管理の重要性が益々増大している。このため、設備機器の洗浄・殺菌に関しては、従来の分解洗浄方式では十分に対応できなくなっている。このため、このような設備機器の洗浄・殺菌においては、設備機器を分解せずに簡単な操作で安全に自動洗浄・殺菌を行うシステムであるCIP(Cleaning in Place)が行なわれている。CIPでは、設備機器を分解せずに洗浄・殺菌を行なうため、CIP洗浄液と製品との完全遮断及び異品種液の混合防止が重要な課題であり、この課題を解決するために二重シールバルブが通常用いられる。
【0003】
二重シールバルブ200は、図5に示すように、隣接して配置されている第1パイプ30と第2パイプ31の開口した円周面を連結筒32を介して相互に内部の流体が流出入可能に接続された当該連結筒32の第1開口部33及び第2開口部34にそれぞれ第一弁座35及び第2弁座36を形成すると共にこれら第1弁座35、第2弁座36に密着又は離反自在な第1弁体37及び第2弁体38を第1シリンダ(図示せず)及び第2シリンダ(図示せず)によって制御して前記第1開口部33及び第2開口部34を開閉するように構成し、更に、前記連結筒32内の空間部39から排出管40によって大気と連通させてなるものである。又、第1シリンダ(図示せず)及び第2シリンダ(図示せず)の下部にあり両シリンダを連結する第1第2シリンダ連結部41内を通過して連結筒32内の空間部39に洗浄液、温水又は蒸気を供給する供給源(図示ぜず)と連結する供給口42が第1第2シリンダ連結部41の近辺に設けられている(例えば、特許文献1)。
【0004】
上記構成からなる従来の二重シールバルブ200によると、第1パイプ30を流れる流体を第2パイプ31へ流す場合のように第1開口部33と第2開口部34を開放して連結筒32内に流体を通過させる時には、図5の(2)に示すように、まず、第2シリンダ(図示せず)を作動させて第1弁体37と第2弁体38を密着させて空間部39を閉鎖し、次に、図5の(3)に示すように、第1シリンダ(図示せず)及び第2シリンダ(図示せず)を同時に作動させて密着した第1弁体37と第2弁体38を連結筒32内から第1パイプ30内へと移動させて連結筒32内から第1パイプ30内へと移動させて連結筒32を開放することによって行う。これによって、第1パイプ30と第2パイプ31には同じ流体が流れ、あるいは2種の異なる流体が混合されることとなる。
【0005】
一日の作業の終了時などにおいて、洗浄を行う場合は、第1パイプ30側と第2パイプ31側は別の洗浄液を使用する。図5の(1)に示すように、第1パイプ30又は第2パイプ31に異なる種類の流体が流れていて仮に第1パイプ30の流体が第1弁座35と第1弁体37のシールが十分でなく第1開口部33から連結筒32内の空間部39へ漏れた場合であっても、第2弁座36と第2弁体38によって第2開口部34はシールされているので第2パイプ31内へ混入することはなく、排出管40を通って大気中へ放出される。
【0006】
又、殺菌済みの製品を扱う箇所は、細菌等の汚染を防ぐ目的で、一日の作業開始時には、殺菌のために前記洗浄の際に洗浄液を流したのと同様の方法で温水又は蒸気を流すことによって第1及び第2パイプ30、31及び二重シールバルブ200の殺菌を行っている場合もある。
【0007】
【特許文献1】特開平10−103590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来技術によると、殺菌済みの製品を扱う箇所では、大気に開放している排気管40は空間部39と連通しているので、空間部39内には常に外気から雑菌が侵入し繁殖している環境にある。この空間部39は前述のように、第1弁体37及び第2弁体38の内面、及び連結筒32の内周面によって囲まれて形成されているので、これらの全ての面にも雑菌が付着していることとなる。従って、図5の(3)のように、連結筒32を通じて流体が移動する場合には、これらの雑菌が流体に混合するため、当該流体が牛乳等の食品に係るものであると、衛生上不都合が生じる危惧がある。
【0009】
この発明はこのような問題点を解決すべくなされたものであって、その特徴とするところは、排出管にバルブを設けて、常時、空間部が大気と連通しないように構成したところにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
当該目的を達成するために、請求項1に記載の二重シールバルブは、隣接して配置されている第1パイプと第2パイプの開口した円周面を連結筒を介して相互に内部の流体が流出入可能に接続された当該連結筒の第1開口部及び第2開口部にそれぞれ第1弁座及び第2弁座を設けると共に、前記第1弁座及び前記第2弁座に密着又は離反自在な第1弁体及び第2弁体を前記第1パイプ及び前記第2パイプを貫通して設けられている第1シリンダ及び第2シリンダによって制御して前記第1開口部及び第2開口部を開閉するように構成し、前記連結筒に形成した第3開口部に外気に連通しているドレイン管を接続すると共に前記第3開口部に設けた第3弁座に密着又は離反自在な第3弁体を第3シリンダによって制御して前記第3開口部を開閉するように構成し、前記連結筒に形成した第4開口部に前記第1パイプから分岐した分岐パイプを接続すると共に、前記第4開口部に設けた第4弁座に密着又は離反自在な第4弁体を第4シリンダによって制御して前記第4開口部を開閉するように構成することによって、前記連結筒内の空間部を介して、前記第1パイプ、前記第2パイプ、前記ドレイン管、及び前記分岐パイプが相互に連通又は閉鎖自在となるものであることを特徴としている。
【0011】
請求項2に記載の二重シールバルブは、請求項1記載の二重シールバルブにおいて、前記連結筒の空間部を前記第1乃至第4弁体により密封状態にすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の二重シールバルブによれば、連結筒に形成した第3開口部に外気に連通しているドレイン管を接続すると共に第3開口部に設けた第3弁座に密着又は離反自在な第3弁体を第3シリンダによって制御して第3開口部を開閉するように構成していることから、連結筒の空間部がドレイン管を介して大気開放とならないため、空間部内に外気からの雑菌が侵入せず、空間部内での雑菌の繁殖を防止可能な二重シールバルブを提供することができる。
【0013】
請求項2に記載の二重シールバルブによれば、連結筒の空間部を第1乃至第4弁体により密封状態にすることから、大気からの汚染が防止でき、連結筒の空間部の殺菌保持性が向上する二重シールバルブを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る二重シールバルブについて図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る二重シールバルブ100の概略図である。
【0015】
二重シールバルブ100は、図1に示すように、隣接して配置されている第1パイプ1と第2パイプ2の開口した円周面を連結筒3を介して相互に内部の流体が流出入可能に接続された当該連結筒3の第1開口部4及び第2開口部5にそれぞれ第1弁座6及び第2弁座7を設けると共にこれら第1弁座6及び第2弁座7に密着又は離反自在な第1弁体8及び第2弁体9を前記第1パイプ1及び第2パイプ2を貫通して設けられている第1シリンダ10及び第2シリンダ11によって制御して前記第1開口部4及び第2開口部5を開閉するように構成し、更に、前記連結筒3に形成した第3開口部12に外気に連通しているドレイン管13を接続すると共にこの第3開口部12に設けた第3弁座14に密着又は離反自在な第3弁体15を第3シリンダ16によって制御して前記第3開口部12を開閉するように構成し、加えて、前記連結筒3に形成した第4開口部17に前記第1パイプ1から分岐した分岐パイプ18を接続すると共にこの第4開口部17に設けた第4弁座19に密着又は離反自在な第4弁体20を第4シリンダ21によって制御して前記第4開口部17を開閉するように構成することによって、前記連結筒3内の空間部22を介して、第1パイプ1、第2パイプ2、ドレイン管13、分岐パイプ18がそれぞれ相互に連通又は閉鎖自在となるものである。
【0016】
前記第1パイプ1には第1パイプ1を流れる流体を遮断又は通過させる第1バルブ23が、前記第1弁体8を境として前記分岐パイプ18の分岐点を設けた反対側に設けられている。又、前記第2パイプ2には第2パイプ2を流れる流体を遮断又は通過させる第2バルブ24が、前記第2バルブ24の第2弁体9を境にしてその上流又は下流側に設けられている。
【0017】
前記第1乃至第4シリンダ10、11、16、21は、図外の制御機構からの指令によって電気的に制御されて、第1乃至第4弁体8、9、15、20を連結筒3の第1乃至第4開口部4、5、12、17に密着又は離反させて流体の通過又は遮断をするように構成されている。
【0018】
第1パイプ1を流れる流体を第2パイプ2に送る際には、図2に示すように、第1バルブ23、第2バルブ24、第3弁体15及び第4弁体20を閉状態、第1弁体8、第2弁体9を開状態にしておくことによって、第1パイプ1を流れる流体は連結筒3内の空間部22を経由して第2パイプ2内へと送り込まれることとなる。これらの切り換えは、それぞれのシリンダ10、11、16、21を制御することによって行われる。
【0019】
一連の作業が終了して、別の異なる種類の流体を第1パイプ1、第2パイプ2に流す場合には、それらパイプ内は勿論のこと、連結筒3内の空間部22や分岐パイプ18内をも洗浄や殺菌をしなければならない。
【0020】
まず、パイプ内の洗浄を行う場合、第1パイプ1及び第2パイプ2は別々に洗浄する。第1パイプ1を洗浄する場合、図3の(1)に示すように、第2弁体8を閉状態、第3弁体15及び第1バルブ23を開状態とする。第4弁体20は連結筒3内の空間部22へ洗浄液を供給する際に数秒程度開状態とし、それ以外の時は閉状態とする。第1弁体8は第1パイプ1の洗浄に用いた洗浄液をドレイン管13を通じて大気へ排出する際、第1弁座6と第1弁体8とのシール面及び第1開口部4の周辺部を洗浄する際に数秒程度開状態とし、それ以外の時は閉状態とする。このような状態にすることによって、洗浄液供給部(図示せず)より第1パイプ1を経由して流れ出す洗浄液は、第1パイプ1、第1バルブ23を流れ、第1弁体8を開状態とすることにより、第1開口部4から連結筒3内の空間部22を経由してドレイン管13へ流れる。また、洗浄液供給部(図示せず)より分岐パイプ18を経由して流れ出す洗浄液は、分岐パイプ18、第4開口部17を流れ、連結筒3内の空間部22を経由してドレイン管13へ流れる。これによって、第1パイプ1内は勿論のこと、連結筒3内の空間部22、分岐パイプ18、ドレイン管13、第1弁座6及び第1弁体8のシール面及び第1開口部4の周辺部、第1バルブ23も洗浄される。
【0021】
第2パイプ2を洗浄する場合、図3の(2)に示すように、第1弁体8及び第4弁体20を閉状態、第3弁体15、第2バルブ24を開状態とする。第2弁体9は、第2パイプ2の洗浄に用いた洗浄液をドレイン管13を通じて外気へ排出する際、第2弁座7と第2弁体9とのシール面及び第2開口部5の周辺部を洗浄する際に数秒程度開状態とし、それ以外の時は閉状態とする。このような状態にすることによって、洗浄液供給部(図示せず)より流れ出す洗浄液は、第2バルブ24、第2パイプ2を流れ、第2弁体9を開状態とすることにより、第2パイプ2を流れる一部の洗浄液が、第2開口部5から連結筒3内の空間部22を経由して、ドレイン管13へ流れる。これによって、第2パイプ2内は勿論のこと、連結筒3内の空間部22、ドレイン管13、第2弁座7及び第2弁体9のシール面及び第2開口部5の周辺部、第2バルブ24も洗浄される。
【0022】
上記のようにして、パイプ等の洗浄が終了すると、次にパイプ等の殺菌を行う。パイプ等の殺菌は温水や蒸気により行う。パイプ等を殺菌する場合、図4の(1)に示すように、第1バルブ23、第2バルブ24を閉状態、第1弁体8、第2弁体9を開状態とする。第4弁体20は連結筒3内の空間部22へ温水や蒸気を供給する際に数秒程度開状態とし、それ以外の時は閉状態とする。第3弁体15は、パイプ等の殺菌に用いた温水や蒸気をドレイン管13を通じて外気へ排出する際に数秒程度開状態とし、それ以外の時は閉状態とする。このような状態にすることによって、第1パイプ1より流れる温水や蒸気は、第1弁体8から第2弁体9を流れ、また分岐パイプ18を経由して流れ出す温水や蒸気は、分岐パイプ18を流れ、第4開口部17から連結筒3の空間部22を経由して第2パイプ2へ流れる。また、第3弁体15を開状態とすることで、パイプ等の殺菌に用いた温水や蒸気がドレイン管13より大気へ排出される。これによって、第1パイプ1、第1乃至第4開口部4、5、12、17の周辺部、連結筒3内の空間部22、第2パイプ、ドレイン管13、第1弁座6及び第1弁体8のシール面、第2弁座7及び第2弁体9のシール面、第3弁座14及び第3弁体15のシール面、第4弁座19及び第4弁体20のシール面が殺菌される。
【0023】
パイプ等の殺菌が終了すると、第1パイプ1から第1開口部4、連結筒3の空間部22、第2開口部5を介して第2パイプ2へ流体を流す前に二重シールバルブ100を一度待機状態にする。二重シールバルブ100を待機状態にする場合、図4の(2)に示すように、第1乃至第4弁体8、9、15、20、第1バルブ23、第2バルブ24を閉状態とする。このような状態にすることによって、第1乃至第4開口部4、5、12、17閉じられて連結筒3内の空間部22が密封状態となり、空間部22の殺菌状態が保持される。さらに、第3弁体15が閉状態にあることから、空間部22がドレイン管13を介して大気開放とならないため、空間部22内に外気からの雑菌が侵入せず、空間部22内での雑菌の繁殖を防止できる。尚、以上の実施形態においては、第1パイプと第2パイプ2のそれぞれに1つの第1バルブ23及び第2バルブ24を設けた例について説明したが、これらバルブ23、24の設置個数や設置位置は第1パイプ1、第2パイプ2による流体の搬送経路によって選択できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る二重シールバルブ100の概略図である。
【図2】製品原液運転時における本発明の実施形態の二重シールバルブ100の状態を示す概略図である。
【図3】機器洗浄時における本発明の実施形態の二重シールバルブ100の状態を示す概略図である。
【図4】機器殺菌時(1)及び機器待機時(2)における本発明の実施形態の二重シールバルブ100の状態を示す概略図である。
【図5】従来の二重シールバルブ200の概略図である。
【符号の説明】
【0025】
1,2,18 パイプ
3 連結筒
4,5,12,17 開口部
6,7,14,19 弁座
8,9,15,20 弁体
10,11,16,21 シリンダ
13 ドレイン管
22 空間部
100 二重シールバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接して配置されている第1パイプと第2パイプの開口した円周面を連結筒を介して相互に内部の流体が流出入可能に接続された当該連結筒の第1開口部及び第2開口部にそれぞれ第1弁座及び第2弁座を設けると共に、
前記第1弁座及び前記第2弁座に密着又は離反自在な第1弁体及び第2弁体を前記第1パイプ及び前記第2パイプを貫通して設けられている第1シリンダ及び第2シリンダによって制御して前記第1開口部及び第2開口部を開閉するように構成し、
前記連結筒に形成した第3開口部に外気に連通しているドレイン管を接続すると共に前記第3開口部に設けた第3弁座に密着又は離反自在な第3弁体を第3シリンダによって制御して前記第3開口部を開閉するように構成し、
前記連結筒に形成した第4開口部に前記第1パイプから分岐した分岐パイプを接続すると共に、
前記第4開口部に設けた第4弁座に密着又は離反自在な第4弁体を第4シリンダによって制御して前記第4開口部を開閉するように構成することによって、前記連結筒内の空間部を介して、前記第1パイプ、前記第2パイプ、前記ドレイン管、及び前記分岐パイプが相互に連通又は閉鎖自在となるものであることを特徴とする二重シールバルブ。
【請求項2】
前記連結筒の空間部を前記第1至第4弁体により密封状態にすることを特徴とする請求項1記載の二重シールバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−95900(P2008−95900A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−280451(P2006−280451)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(501278733)伊藤忠フーデック株式会社 (1)
【出願人】(506345177)タカナシ乳業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】