説明

二重床構造

【課題】床面全体が適度な剛性と柔軟性を兼ね備え、且つ適度な重量を有する、遮音性に優れた二重床構造を提供する。
【解決手段】コンクリート床スラブ等からなる床基盤10の上に弾性台座21を介して立設された支持脚20群によって、複数の床下地材1が所定高さレベルに支持された二重床構造において、該床下地材1上に接して設けられ、隣り合う床下地材1、1’を緊結する、厚さ4〜6mm且つ比重0.8〜1.2の木質繊維板からなる緊結パネル2と、該緊結パネル2上に接して設けられる、厚さ3〜5mmかつ比重2.0〜2.5の可撓性を有する制振材3と、該制振材3上に、厚さ3〜6mmの床仕上材4が敷設された二重床構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
主に住宅で使用される遮音床構造で、施工性と遮音性に優れた遮音二重床構造を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来の、集合住宅で使用される遮音二重床構造は、床仕上材として12mmの合板基材フロアを使用するのが一般的である。この場合、例えば特許文献1や特許文献2のような方法が提案されている。
【0003】
特許文献1では、コンクリート床スラブ等よりなる床基盤の上に床下空間を介して敷設された床パネル材の上にアスファルトマット等の高比重遮音床用マットを介してこの上に床仕上材を設ける。これにより、優れた遮音性能の床構成を実現できる。アスファルトマットの両面には紙が積層一体化されており、床パネルとアスファルトマットと床仕上材が、酢酸ビニルエマルジョン系の接着剤により貼着一体化されている。
【0004】
しかし、特許文献1の発明の場合は、使用するアスファルトマットが比重2.0〜2.5程度と非常に比重が大きいにもかかわらず、床仕上面上で発生した振動を床下地パネルに伝達しにくくするために8mm程度の厚みのものが最も一般的に使用され、施工時の搬入に重いため、軽量化が望まれていた。しかし、アスファルトマットの比重を単純に軽くすると制振効果が弱くなり、遮音性能の低下を招く。
【0005】
これを解決する方法として、特許文献2にあるように、床仕上材と、該床仕上材の下に接して設けられる平均密度が0.85〜1.05の木質繊維板からなる制振材と、該制振材の下に接して設けられる床下地材と、該床下地材を床基盤から離して支える複数の支持手段とを備えてなる置き床が提案されている。
【特許文献1】特開平10−259658
【特許文献2】特開2005−74694
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2の方法によると、床下地としての剛性は確保できているが、特許文献1のアスファルトマットに相当するものがないため、床仕上材上で発生した音がそのまま床下地材に伝達され、床下地材全体が共振、振動することによって遮音性能が思ったほどあがらないという問題があった。
【0007】
また、従来の12mmの合板基材の床材を特許文献1のような二重床構造の床仕上材として使用した場合は、床仕上材上で発生した音と制振材の距離が12mmも離れているため、遮音性能が思ったほどあがらないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、コンクリート床スラブ等からなる床基盤の上に弾性台座を介して立設された支持脚群によって、複数の床下地材が所定高さレベルに支持された二重床構造において、該床下地材上に接して設けられ、隣り合う床下地材を緊結する、厚さ4〜6mm且つ比重0.8〜1.2の木質繊維板からなる緊結パネルと、該緊結パネル上に接して設けられる、厚さ3〜5mmかつ比重2.0〜2.5の可撓性を有する制振材と、該制振材上に、厚さ3〜6mmの床仕上材が敷設されたことを特徴とする。
【0009】
こうすることにより、床下地材同士が厚さ4〜6mm且つ比重0.8〜1.2の木質繊維板からなる緊結パネルにより緊結一体化されるため、床全体が適度な剛性とたわみ性を有する。
【0010】
また、この緊結パネルの上に厚さ3〜5mmかつ比重2.0〜2.5の制振材が接して設けられるので、二重床構造全体に適度な重量が付与される。
【0011】
さらに、この制振材の上に厚さ3〜6mmの床仕上材が接して設けられる。この場合、薄い厚みの床仕上材を使用することにより、発生音源と遮音材の距離が近くなり、よりすぐれた遮音性能を実現することができる。
【0012】
また、請求項2の発明では、請求項1に記載の二重床構造において、前記緊結パネルに前記制振材が固定されていないことを特徴とする。この場合、制振材が自由に動けるため、制振材の遮音性能を最大限に活かせる、遮音性能に優れた二重床構造を提供することができる。
【0013】
さらに、請求項3の発明では、請求項1又は請求項2に記載の二重床構造において、前記床仕上材として比重0.4〜1.0の木質繊維板の表面に化粧シートが貼着されているので、二重床全体が有する適度な剛性とたわみ性を損なうことなく、凹み傷や引きずり傷がつきにくい美麗な仕上がりの二重床構造を提供することが可能である。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の二重床構造によると、床面全体が適度な剛性と柔軟性を兼ね備え、且つ適度な重量を有するため、施工性、遮音性及び意匠性に優れた二重床構造を提供することができる。
【0015】
また、重さが問題となっていた制振材の一部を剛性を有する軽量な木質繊維板に置き換えることにより、制振材の重さの問題は解決できる。一方、二重床構造の軽量化により遮音性能が落ちた場合も、床仕上材を3〜6mmと薄くすることにより、従来の遮音二重床構成と同等以上の優れた性能を有する二重床構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の最良の実施形態を実施例の図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的な例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0017】
図1は、本発明にかかる二重床構造の実施例を示す一部拡大断面図である。コンクリート床スラブ等からなる床基盤10の上に複数の支持脚20によって、隣り合う床下地材1、1’が所定高さレベルに支持されている。支持脚20は、弾性台座21、鋼製脚22、受け座23からなり、弾性台座21が床基盤10に接するようにして設置される。床下地材1、1’は、木ねじ、釘、両面テープや接着剤等の固着手段で受け座23に固定されている。
【0018】
床下地材1の上には、緊結パネル2が接して設けられ、隣り合う床下地材1、1’が木ねじ、釘、両面テープや接着剤等の固着手段で緊結されている。緊結パネル2としては、JIS−5907に規定されるMDFやハードボード等の木質繊維板がよいが、好適にはハードボードが用いられる。ハードボードは、厚さ4〜6mm且つ比重0.8〜1.2の湿式抄造で製造された木質繊維板からなる。緊結パネル2の厚さが4mmに満たない場合は、二重床構造全体としての強度が不足し、6mmを超えると二重床構造全体の剛性が高くなりすぎるため遮音性能が悪くなり、好ましくない。
【0019】
緊結パネル2の上には、制振材3が接して設けられる。制振材3は、アスファルト系樹脂、塩ビ系樹脂、ポリエチレン又はポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、ゴム又はラテックス系樹脂、シリコン系樹脂又はこれらの混合物からなる樹脂分と、無機粉体、金属粉体等の充填材を、樹脂分が100重量%に対し、充填材が500〜1000重量%混合し、厚さ3〜5mmかつ比重2.0〜2.5に調整したものである。厚さが3mmに満たない場合は全体的な重量が不足し、5mmを超えると、全体の重量が重くなるため、施工性が悪くなり好ましくない。
【0020】
また、制振材3は木ねじ、釘、両面テープや接着剤等の固着手段で緊結パネル2に固定してもよいが、制振効果をより発揮するためには、固定しないのが望ましい。
【0021】
制振材3の上には、床仕上材4が接して設けられる。床仕上材4は、クッションフロアや樹脂タイルといわれる合成樹脂基材や、合板、木質繊維板等の木質基材からなり、3〜6mm程度の厚みを有する。これらの床材が、釘、ビス、接着剤又は両面テープ等により固着されている。制振材3が固定されていない場合は、緊結パネル2に至る長さの釘やビスを使用し、床仕上材4を緊結パネル2に固定する。3mmに満たない場合は、例えば局所加重が作用したときに、直下の制振材3に床仕上材4がめりこんで、床仕上材4が破壊される心配がある。6mmを超えると、表面の発生音源と制振材3との距離が遠くなり、遮音効果が弱くなる。
【0022】
床仕上材4としてもっとも好ましくは、厚さ3〜6mm且つ比重0.4〜1.0の木質繊維板の表面に化粧シートが貼着されている床仕上材4を使用する。比重0.4〜1.0と高比重なので、床上に家具等を設置した場合にも傷つきにくく、長期の耐久性に優れた二重床構造を提供することができる。
【実施例】
【0023】
床基盤10として、一般的なコンクリートスラブ上に施工した場合を想定し、実施例及び比較例を施工した。
(実施例)
【0024】
コンクリートスラブからなる床基盤10上に、ゴム製の弾性台座21、鋼製脚22及び受け座23を有する支持脚20を弾性台座21が床基盤10に接した状態で立設した。立設した支持脚20の受け座23に床下地材1を載置し、受け座23と床下地材1を木ねじで固着した。床下地材1としては、20mmのパーティクルボードを使用した。隣り合った床下地材1、1’をまたぐように、比重1.0、厚さ5.2mmのハードボードからなる緊結パネル2を木ねじで固定し、床下地材同士を緊結した。更に、この緊結パネル2の上に、ブローンアスファルト120重量部、SBR系熱可塑性エラストマー5重量部、珪砂300重量部、鉄粉500重量部、界面活性剤0.5重量部、炭酸カルシウム5重量部を加熱混練成型し、不織布で両面を被覆した比重2.4、厚さ4.0mmの制振材3を載置した。さらに、制振材3の上に床仕上材4を載置し、緊結パネルに至る長さの釘で固定し、二重床構造を得た。床仕上材4としては、厚さ6mm且つ比重0.6の木質繊維板の表面にオレフィン系樹脂化粧シートを貼着した床仕上材4を使用した。制振材3が4mmと薄いため、従来用いられている8mmの制振材3と比べて軽く、施工性に優れるものであった。
【0025】
また、こうして得られた二重床構造に対し、床衝撃音レベル低減量試験(JIS A 1440)に基づき、試験を行った。床衝撃音レベル低減量試験とは、重量および軽量衝撃源により階上の床表面を加振し、階下で受音する。床仕上げ材仕上の場合は、上階の床版上に床仕上げ材を施工して試験を行い、床版素面加振時と比較して床衝撃音レベル低減量を求める。軽量床衝撃音(JIS A 1440−1)の試験データは図2に、重量床衝撃音(JIS A 1440−2)の試験データは図3に示した。軽量床衝撃音、重量床衝撃音ともに比較例1、比較例2と比べて、改善効果が確認された。
(比較例1)
【0026】
実施例の床仕上材4に替えて、一般的な12mmの突板張り合板基材の床仕上材を施工した以外は、同じ条件で二重床構造を得た。施工性は、実施例とそれほど変わらず、良好であった。
【0027】
また、こうして得られた二重床構造に対し、床衝撃音レベル低減量試験(JIS A 1440)に基づき、試験を行った。軽量床衝撃音の試験データは図2に、重量床衝撃音の試験データは図3に示した。軽量床衝撃音、重量床衝撃音とも、実施例に比べると125〜2000Hzの周波数領域で、劣る遮音性能となった。
(比較例2)
【0028】
コンクリートスラブからなる床基盤10上に、ゴム製の弾性台座21、鋼製脚22及び受け座23を有する支持脚20を弾性台座21が床基盤10に接した状態で立設した。立設した支持脚20の受け座23に床下地材1を載置し、受け座23と床下地材1を木ねじで固着した。床下地材1としては、20mmのパーティクルボードを使用した。隣り合った床下地材1、1’をまたぐように、制振材を木ねじで固定した。制振材としては、実施例と同一組成で、比重2.4、厚さ8.0mmの制振材を使用した。さらに、制振材の上に一般的な12mmの突板張り合板基材の床材を施工した。従来用いられている8mmの制振材のため、施工時の搬入及び施工に際し、重く、作業性が悪かった。
【0029】
また、こうして得られた二重床構造に対し、床衝撃音レベル低減量試験(JIS A 1440)に基づき、試験を行った。軽量床衝撃音の試験データは図2に、重量床衝撃音の試験データは図3に示した。実施例と比較すると、軽量床衝撃音では125〜2000Hzの周波数領域で、重量床衝撃音では125〜1000Hzの周波数域で、劣る遮音性能となった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
主に住宅で使用される遮音床構造で、施工性と遮音性に優れた遮音二重床構造を提供するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係る二重床構造の一部拡大断面図である。
【図2】実施例で測定した軽量床衝撃音の測定結果を示すグラフである。
【図3】実施例で測定した重量床衝撃音の測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0032】
1、1’ 床下地材
2 緊結パネル
3 制振材
4 床仕上材
10 床基盤
20 支持脚
21 弾性台座
22 鋼製脚
23 受け座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート床スラブ等からなる床基盤の上に弾性台座を介して立設された支持脚群によって、複数の床下地材が所定高さレベルに支持された二重床構造において、
該床下地材上に接して設けられ、隣り合う床下地材を緊結する、厚さ4〜6mm且つ比重0.8〜1.2の木質繊維板からなる緊結パネルと、
該緊結パネル上に接して設けられる、厚さ3〜5mmかつ比重2.0〜2.5の可撓性を有する制振材と、
該制振材上に、厚さ3〜6mmの床仕上材が敷設されたことを特徴とする二重床構造
【請求項2】
前記緊結パネルに前記制振材が固定されていないことを特徴とする請求項1に記載の二重床構造
【請求項3】
前記床仕上材が、比重0.4〜1.0の木質繊維板の表面に化粧シートが貼着されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の二重床構造

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−270372(P2009−270372A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−122955(P2008−122955)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】