説明

二重床用パネルおよびその製法

【課題】 軽量で、かつ異常音の発生を抑制することが可能な二重床用パネルを提供する。
【解決手段】 鋼板で構成されて中空で平盤状のパネル本体2と、パネル本体2内に充填された発泡体3とを備え、パネル本体2の厚みを所定の厚みに維持したままで、所定の強度が得られるように鋼板の厚みが設定され、かつ、パネル本体2の下地床側の下部本体22に、鋼板を曲げて形成した補強部22cが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、下地床の上方に配設されて二重床を形成する二重床用パネルおよびその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
事務機器や通信機器などが設置される部屋・フロアには、二重床が広く採用されている。すなわち、コンクリートや鉄鋼材などで形成された下地床(床スラブ)に、支持脚が複数配設され、この支持脚上に床パネルが支持、配設されている。これにより、下地床と床パネルとの間に収容空間が形成され、この収容空間に、各種機器の電線や通信線などが収容、配線できるようになっているものである。
【0003】
このような二重床の床パネルとして、鉄鋼とコンクリートの複合材から構成された床パネルや(例えば、特許文献1参照。)、鋼板製のケースにコンクリートを収容した床パネルが知られている。このような床パネルでは、コンクリートによって、床パネルの圧縮強度や耐衝撃性などの強度を高めるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−330610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、鉄鋼とコンクリートとから構成される床パネルでは、高い圧縮強度や耐衝撃性などが得られるものの、コンクリートが重量物であるため、床パネルの重量も大きくなる。このため、フロア面積が広く、かつ高層階のビルでは、床パネルの総重量が膨大となり、ビル自体も床パネルの総重量に耐えられる構造にしなければならないため、ビル自体の骨材(柱や梁など)やコンクリートも膨大なものになってしまう。
【0006】
また、鋼板製のケースにコンクリートを収容した床パネルでは、床パネルが人や機器などで踏まれることや、重量物の設置、あるいは床パネルの劣化などによって、鋼板・ケースとコンクリートとの密着性が低下し、鋼板とコンクリートとが剥離する場合がある。あるいは、コンクリートをケースに収容・注入した際に、コンクリートが収縮し、鋼板とコンクリートとが密着しない場合がある。そして、このような剥離や非密着が生じると、鋼板とコンクリートとの間に隙間が生じるため、人や機器などが床パネル上を移動した際に、異常音が発生し、歩行性、居住環境が悪化してしまう。
【0007】
そこでこの発明は、軽量で、かつ異常音の発生を抑制することが可能な二重床用パネルおよびその製法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、下地床の上方に配設されて二重床を形成する二重床用パネルであって、鋼板で構成され、中空で平盤状のパネル本体と、前記パネル本体内に充填された発泡体と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の二重床用パネルにおいて、前記パネル本体の厚みを所定の厚みに維持したままで、所定の強度が得られるように前記鋼板の厚みが設定されている、ことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の二重床用パネルにおいて、前記パネル本体の下地床側の板面に、前記鋼板を曲げて形成した補強部が設けられている、ことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、鋼板を加工して、中空で平盤状のパネル本体を形成し、前記パネル本体の外周を型で押さえた状態で、注入後に固化して発泡性を有する発泡流体を、前記パネル本体内に注入、充填する、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の二重床用パネルの製法である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、パネル本体内に多数の気泡を有する発泡体が充填されているため、二重床用パネル全体を軽量化することができる。また、発泡体は膨張性を有し、パネル本体に強く密着するため、発泡体がパネル本体・鋼板から剥離したり、非密着状態になったりすることがなく、鋼板と発泡体との間に隙間が生じて異常音が発生する、ということが抑制される。さらに、パネル本体内に発泡体が充填されているため、二重床用パネルの防音効果が高まり、快適な歩行性、居住環境を提供することが可能となる。
【0013】
請求項2の発明によれば、所定の強度が得られるように鋼板の厚みのみが調整、設定されているため、二重床用パネルの厚みそのものを変えずに、つまり、下地床との空間である収容空間を変えずに、所望の圧縮強度や耐衝撃性などが得られる。
【0014】
請求項3の発明によれば、パネル本体の下地床側の板面に補強部が設けられているため、パネル本体つまり二重床用パネル全体の強度が高まり、鋼板の厚みを薄くして、二重床用パネル全体をさらに軽量化することが可能となる。しかも、パネル本体の下地床側(下面)に補強部を設けるため、床面・表面となるパネル本体の上面は、平坦のままにすることがきる。
【0015】
請求項4の発明によれば、発泡流体をパネル本体内に注入、充填する際に、発泡流体が固化するとともに膨張するが、パネル本体の外周を型で押さえた状態で注入、充填するため、パネル本体が膨れたり、変形したり、あるいは発泡流体が偏って注入、固化されたりすることがない。この結果、所定の(高い)圧力で発泡流体をパネル本体内に注入、充填することができ、パネル本体内に均一かつ隙間なく、発泡流体・発泡体を注入、充填することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施の形態に係る二重床用パネルを示す平面図(a)と底面図(b)である。
【図2】図1(b)のA−A断面図である。
【図3】図2のB部拡大図である。
【図4】図1の二重床用パネルの被支持キャップ周辺の拡大図である。
【図5】図1の二重床用パネルを支持する支持脚の分解斜視図である。
【図6】図5の支持脚による支持状態を示す側面図である。
【図7】図1の二重床用パネルの製造工程において、金型を開いた状態(a)と、金型を閉じて発泡流体を注入する状態(b)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0018】
図1は、この発明の実施の形態に係る二重床用パネル1を示す平面図(a)と底面図(b)であり、図2は、二重床用パネル1の断面構造を示す図である。この二重床用パネル1は、コンクリートや鉄鋼材などで形成された下地床(床スラブ)の上方に配設されて、下地床とによる二重床を形成する床パネルであり、主として、パネル本体2と発泡体3とから構成されている。
【0019】
パネル本体2は、中空で平盤状の平箱・ケースである。すなわち、上部本体21と下部本体22とから構成され、上部本体21は、略正方形の平板で、二重床の床面・表面に位置する。また、下部本体22は、図3に示すように、底部22aと周壁部22bとを有する平面が略正方形の凹型の箱状で、底部22aが下地床側に位置する。
【0020】
この底部22aの板面には、鋼板を曲げて形成した補強部22cが複数設けられている。すなわち、底部22aを上部本体21側に略半球状に湾曲させた補強部22cが、一定の間隔・ピッチで、底部22aの外周部22d側を除く一面に形成されている。また、この補強部22cの上部本体21側の頂部22c1は、上部本体21と平行な平坦部となっている。
【0021】
底部22aの外周部22dは、底部22aの中央部(補強部22cが形成されている部分)よりも深く形成され、後述する発泡体3が多く充填されて、二重床用パネル1の外周部の強度が高くなるようになっている。また、周壁部22bの端縁には、上部本体21と平行に曲げられた被接合部22eが形成され、上部本体21の端縁である接合部21aが、被接合部22e側にU字状に曲げられることで、上部本体21と下部本体22とが周縁で接合されている。
【0022】
このような上部本体21と下部本体22とは、鋼板製で、例えば、冷間圧延鋼板(SPCC、SPCEなど)で構成され、パネル本体2の厚み(上部本体21と下部本体22との間隔)を所定の厚みに維持したままで、所定の強度が得られるように鋼板の厚みが設定されている。すなわち、二重床用パネル1と下地床との空間である収容空間を所定・所望の大きさに確保するために、パネル本体2の厚みを大きくしないで、二重床用パネル1全体が所定の圧縮強度や耐衝撃性など(静荷重試験や衝撃試験などによる所定の性能)が得られるように、鋼板の厚みが設定されている。ここで、鋼板の厚みを設定する際には、鋼板の引張強さ、耐衝撃値などの強度特性や、後述する発泡体3の強度特性も考慮されている。
【0023】
また、上部本体21と下部本体22との四隅には、図1に示すように、内側に円弧状の切り欠き(内R)2aが形成され、後述する支持脚100との干渉を回避するようになっている。さらに、下部本体22の外周部22dの四隅には、被支持キャップ23が装着されている。すなわち、図4に示すように、下部本体22の外周部22dに注入孔22fが形成され、この注入孔22fを埋めるように、有底で円筒状の被支持キャップ23が挿入、装着されている。
【0024】
ここで、注入孔22fは、後述するように、発泡流体をパネル本体2内に注入するための孔で、注入後に被支持キャップ23が装着されることで、パネル本体2が密閉される。さらに、この被支持キャップ23は、支持脚100に二重床用パネル1を配設する際に、二重床用パネル1を位置決め、固定する役割を有している。
【0025】
具体的には、支持脚100は、図5に示すように、脚本体101とパッキン102と固定ビス103とを備え、脚本体101は、その調整ネジ軸104が垂直に延びるように、下地床に設置される。また、調整ネジ軸104の上部には、台座105が調整ネジ軸104に螺合して配設され、調整ネジ軸104に対して台座105の高さ位置が調整自在となっている。この台座105の四隅には、支持ピン106が形成され、台座105の中央部には、固定雌ネジ105aが形成されている。そして、図6に示すように、二重床用パネル1の被支持キャップ23に支持ピン106を挿入し、パッキン102を台座105の上に配置して、固定ビス103を固定雌ネジ105aに締め付ける。これにより、二重床用パネル1が支持脚100に、所定の位置、姿勢で固定されるものである。
【0026】
このようなパネル本体2内に、隙間なく発泡体3が充填されている。この発泡体3は、ウレタン樹脂に発泡剤を添加して作られた硬質発泡ウレタンで構成され、軽量で、断熱性、防音性が高く、また、鉄鋼材との密着性が高い。さらに、後述するようにしてパネル本体2内に注入する前は、流体・液体(発泡流体)として存在し、注入後に膨張しながら固化する。そして、固化によって、所定の強度、硬度を備えて、発泡性を有するものである。また、パネル本体2が構成されている鋼板との密着性をより高めるために、発泡体3には、接着剤が添加されている。
【0027】
このように、二重床用パネル1は、主として、鋼板製のパネル本体2と硬質発泡ウレタン製の発泡体3とから構成され、全体が不燃性・難燃性となっている。
【0028】
次に、このような構成の二重床用パネル1の製法について説明する。
【0029】
まず、第1のステップとして、鋼板を加工して、上記のようなパネル本体2を形成する。すなわち、上部本体21と下部本体22とを所定の形状に加工、形成し、上部本体21と下部本体22とを上記のようにして接合して、パネル本体2を製作する。このとき、下部本体22の外周部22dに、上記の注入孔22fを形成する。
【0030】
次に、第2のステップとして、図7に示すように、パネル本体2を金型(型)30内にセットする。すなわち、雄型31と雌型32とを開いた状態で(図7(a))、注入孔22fが雌型32の湯道32aと一致・対向するように、パネル本体2を雌型32のキャビティ32b内に配置し、その後、雄型31と雌型32とを閉じる(図7(b))。ここで、雄型31と雌型32の内部・キャビティは、対向するパネル本体2の面と同じ形状に形成され、雄型31と雌型32を閉じた際に、雄型31と雌型32の内部・キャビティが、パネル本体2の全外周面に隙間なく接するようになっている。
【0031】
このようにして、パネル本体2の全外周面を金型30で押さえた状態で、第3のステップとして、発泡流体をパネル本体2内に注入、充填する。すなわち、湯道32aから発泡流体を注入すると、発泡流体が注入孔22fから流入してパネル本体2内に流れていく。そして、注入圧が所定の圧力に達すると、発泡流体がパネル本体2内全体に隙間なく充填され、この時点で注入を停止する。このような注入と同時に、あるいは注入後に、発泡流体が膨張しながら固化し、上記のような発泡体3が、パネル本体2内に隙間なく形成される。
【0032】
次に、第4のステップとして、雄型31と雌型32とを開いてパネル本体2を取り出し、各注入孔22fに被支持キャップ23を挿入して、二重床用パネル1を製造するものである。ここで、第3のステップで発泡流体を注入する際に、パネル本体2の大きさや発泡流体の流動性などに応じて、複数の注入孔22fから同時に発泡流体を注入してもよいし、ひとつの注入孔22fから発泡流体を注入してもよい。また、発泡流体を注入しない注入孔22fは、雌型32で塞ぐ。
【0033】
以上のように、この二重床用パネル1によれば、パネル本体2内に硬質発泡ウレタン製の発泡体3が充填されているため、二重床用パネル1全体が軽量化する。このため、フロア面積が広く、かつ高層階のビルにおいては、二重床用パネル1の総重量が著しく軽減され、これを支えるビル自体の骨材(柱や梁など)やコンクリートも、著しく軽減、軽量化することが可能となる。さらに、軽量化されるため、二重床用パネル1の設置、撤去作業などを容易かつ安全に行うことが可能となる。
【0034】
また、発泡体3が膨張しながら固化し、しかも、発泡体3は鋼板との密着性が高いため、発泡体3がパネル本体2から剥離したり、非密着状態になったりすることがなく、発泡体3と鋼板との間に隙間が生じて異常音が発生する、ということが長期にわたり抑制され、耐久性が向上する。さらに、パネル本体2内に発泡体3が隙間なく充填されているため、二重床用パネル1の防音効果が高まり、快適な歩行性、居住環境を提供することが可能となる。
【0035】
また、所定の強度が得られるように、パネル本体2の鋼板の厚みのみが調整、設定されているため、二重床用パネル1の厚みそのものを変えずに、つまり、所望の収容空間を確保した上で、所望の圧縮強度や耐衝撃性などを得ることができる。さらに、パネル本体1の下部本体22に補強部22cが設けられているため、パネル本体2つまり二重床用パネル1全体の強度が高まり、鋼板の厚みを薄くして、二重床用パネル1全体をさらに軽量化することが可能となる。しかも、パネル本体2の下地床側(下面)に補強部22cを設けるため、床面・表面となるパネル本体2の上部本体21は、平坦のままにすることがきる。また、補強部22cが略半球状で滑らかに湾曲しているため、発泡流体の流れを抑制することがなく、発泡流体がパネル本体2内全体に隙間なく、円滑かつ迅速に注入、充填される。
【0036】
一方、上記のような二重床用パネル1の製法によれば、発泡流体をパネル本体2内に注入、充填する際に、発泡流体が固化するとともに膨張するが、パネル本体2の全外周面を金型30で押さえた状態で注入、充填するため、パネル本2体が膨れたり、変形したり、あるいは発泡流体が偏って注入、固化されたりすることがない。つまり、金型30で押さえられているため、高い圧力で発泡流体をパネル本体2内に注入しても、パネル本体2の一部が変形などして、そこに発泡流体が偏って注入、固化されたりすることがない。この結果、所定の高い圧力で発泡流体をパネル本体2内に注入、充填することができ、パネル本体2内に均一かつ隙間なく、発泡流体・発泡体3を注入、充填することが可能となる。
【0037】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、補強部22cが半球状となっているが、リブ状・細棒状の補強部を形成してもよい。また、下部本体22にのみ注入孔22fを形成しているが、上部本体21と下部本体22とを貫通する注入孔を設け、この注入孔を、上部本体21から下部本体22まで延びるキャップで塞ぐようにしてもよい。さらに、発泡体3が硬質発泡ウレタン製であるが、石膏や、石膏にガラス繊維を加えた材料、木質チップに接着剤を加えた材料、あるいは、フライアッシュ(石炭を燃焼した際に生じる灰)に接着剤を加えた材料などで、発泡体3を構成してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 二重床用パネル
2 パネル本体
21 上部本体
21a 接合部
22 下部本体
22a 底部
22b 周壁部
22c 補強部
22d 外周部
22e 被接合部
22f 注入孔
23 被支持キャップ
3 発泡体
30 金型(型)
31 雄型
32 雌型
100 支持脚


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地床の上方に配設されて二重床を形成する二重床用パネルであって、
鋼板で構成され、中空で平盤状のパネル本体と、
前記パネル本体内に充填された発泡体と、
を備えることを特徴とする二重床用パネル。
【請求項2】
前記パネル本体の厚みを所定の厚みに維持したままで、所定の強度が得られるように前記鋼板の厚みが設定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の二重床用パネル。
【請求項3】
前記パネル本体の下地床側の板面に、前記鋼板を曲げて形成した補強部が設けられている、
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の二重床用パネル。
【請求項4】
鋼板を加工して、中空で平盤状のパネル本体を形成し、
前記パネル本体の外周を型で押さえた状態で、注入後に固化して発泡性を有する発泡流体を、前記パネル本体内に注入、充填する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の二重床用パネルの製法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−149422(P2012−149422A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8058(P2011−8058)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(511016257)
【Fターム(参考)】