説明

二重管方式の管削進装置

【課題】 掘削カッターやビットの損傷時や磨耗時に容易に補修し交換できるようにした二重管方式の管削進装置を提供する。
【解決手段】 二重管方式の管削進装置において、掘削カッター(20)のカッターヘッド(200)にはローラビット(230)を回転軸(220)の廻りに回転可能に取付け、回転軸はローラビットの平面形状の中心から偏心した位置に設け、ローラビットを掘削時の圧力を受けて回転軸の廻りに回転させ、その径方向外端を推進管(130)の内面よりも内方に位置する内方位置と径方向外端が推進管の外面と等しい位置か又はこれよりも外方に位置する外方位置との間で変位させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二重管方式の管削進装置に関し、特に掘削カッターやビットの損傷時や磨耗時に容易に補修し交換できるようにした装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、地中に上下水道管等の管を敷設する場合、従来の開削工法に代え、地中に管を推進して敷設する管推進工法が採用される傾向にあり、小口径管を敷設する場合には二重管方式の管削進装置が採用されている(特許文献1)。
【0003】
この二重管方式の管削進装置ではスライドベースに推進機本体をスライド自在に搭載するとともに推進ジャッキを設け、推進ジャッキによって推進機本体を前進させ、推進機本体に推進管(鋼管)を取りつけ、推進管内にケーシングロッド(内管)を回転自在に組込み、ケーシングロッド先端に掘削カッターを設け、駆動モータでケーシングロッドを回転させ、掘削カッターによって前方を掘削する一方、推進管の推進が完了すると、ケーシングロッドを抜き取り、塩化ビニル管等を推進管内にセットし、推進管と塩化ビニル管等との間に充填剤等の中込め作業を行ない、こうして二重構造の管を敷設するようになっている。
【0004】
ところで、管削進装置に用いる掘削カッターはカッターヘッドに多数のビット、例えばローラビットを取付けた構造を有するが(特許文献2、特許文献3)、二重管方式の場合には推進管を円滑に推進する上で、推進管よりも大径に掘削できるようにビットを設けるのが望ましい。
【0005】
他方、岩盤等の掘削中に掘削カッターやビットが損傷し磨耗することがある。大口径管の削進装置の場合には推進管内に作業者が入って掘削カッターやビットを交換しあるいは機械によって自動的に交換することができるが(特許文献4、特許文献5)、小口径管を推進する二重管方式の場合には作業者による交換作業や機械による自動交換は難しい。
【0006】
【特許文献1】特開2003−239685号公報
【特許文献2】特開2001−65291号公報
【特許文献3】特開2001−323780号公報
【特許文献3】特開2001−65291号公報
【特許文献4】特開2000−291384号公報
【特許文献5】特開2001−27097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑み、掘削カッターやビットの損傷時や磨耗時に容易に補修し交換できるようにした二重管方式の管削進装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明に係る二重管方式の管削進装置は、先端に掘削カッターを有するケーシングロッドを推進管内に回転自在に組込み、上記ケーシングロッドを回転させ、上記掘削カッターによって前方土砂類を掘削しながら上記推進管を推進するようにした二重管方式の管削進装置において、上記掘削カッターのカッターヘッドにはローラビットが回転軸の廻りに回転可能に取付けられ、該回転軸は上記ローラビットの平面形状の中心から偏心した位置に設けられており、上記ローラビットが掘削時の圧力を受けて上記回転軸の廻りに回転し、その径方向外端が上記推進管の内面よりも内方に位置する内方位置と径方向外端が推進管の外面と等しい位置か又はこれよりも外方に位置する外方位置との間で変位するようになっていることを特徴とする。
【0009】
本発明の特徴の1つは回転軸をローラビットの平面形状の中心から偏心した位置に設けるようにした点にある。
【0010】
これにより、掘削時にはローラビットの径方向外端が推進管の外面と等しい位置か又はこれよりも外方の位置と推進管の内面よりも内方の位置との間で変位するので、推進管よりも大きな径に掘削することができ、推進作業を円滑に行うことができる。
【0011】
また、掘削カッターやローラビットが損傷し磨耗した時にはローラビットの径方向外端を推進管の内面よりも内方に位置させると、ケーシングロッドを推進管から後方に引き抜き、掘削カッターやローラビットを補修し、あるいは交換することができる。
【0012】
本発明に係る二重管方式の管削進装置は上下水道管等を横方向に敷設する場合に適用するとその効果が大きいが、地中に鋼管杭等を上下方向に打ち込む場合にも同様に適用できる。この場合、管は上述のように二重構造の管に構成されることもでき、又鋼管杭のように一重構造のままとすることもできる。また、管の推進方式は前述の特許文献1に記載の方式、つまり推進ジャッキによる推進機本体を推進させる方式に限定されず、他の方式、例えば推進ジャッキで推進管を直接推進させる方式を採用することもできる。
【0013】
ローラビットの回転軸はカッターヘッドの中心軸線に平行に設けてもよいが、カッターヘッドの中心軸線に対して傾斜して設けるようにすると、ケーシングロッドを推進管内に引き込んだ時にローラビットが推進管の先端に当たって径方向外端が推進管の内面よりも内方の位置にするように回転するので、掘削カッターやローラビットの補修や交換をより簡単に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1ないし図4は本発明に係る二重管方式の管削進装置の好ましい実施形態を示す。管削進装置10において、スライドベース100上には推進機本体110が前後方向にスライドし得るように搭載され、該推進機本体110は推進ジャッキ150によってスライドベース100上を前進駆動され後退されるようになっている。
【0015】
また、推進機本体110には駆動モータ111が搭載されるとともに、スピンドルロッド(図示せず)が設けられ、該スピンドルロッドと駆動モータ111との間にはギア伝達機構が設けられ、又スピンドルロッドにはケーシングロッド120の基部が取付けられるようになっている。
【0016】
さらに、推進機本体110には押金112が取付けられ、該押金112には推進管130の基部が嵌め込まれるようになっている。この推進管130内にはケーシングロッド120が組み込まれ、両者の間には周方向の延びるローラベアリング(図示せず)が介設されてケーシングロッド120の円滑な回転及び真直性を保証するようになっている。
【0017】
ケーシングロッド120の先端には掘削カッター20が取付けられている。この掘削カッター20において、カッターヘッド200はリング状をなし、カッターヘッド200には取付けブラケット210が固定され、取付けブラケット210には傾斜した取付け部が設けられ、取付け部には回転軸220がカッターヘッド200の中心軸線に対して傾斜して取付けられ、回転軸220にはローラビット230がベアリング221によって回転自在に取付けられている。
【0018】
このローラビット230はほぼ円錐台形状(楕円球状や球状でもよい)をなすコーン231の外面に多数の切刃232を固定した構造をなし(但し、図4にはコーン231の外形のみを図示している)、回転軸220の中心軸線aはローラビット230を平面形状(平面に静置したときの形状)の中心軸線bから偏心され、ローラビット230の径方向外端が推進管130の内面よりも内方に位置する内方位置と、推進管130の外面と等しい位置(又はこれよりも外方)に位置する外方位置との間で変位するようになっている。
【0019】
例えば、管を敷設する場合、発進立坑と到達立坑とを掘削し、発進立坑内に推進機本体110及びスライドベース100を設置し、推進機本体110の押金に推進管130の基部を取付け、推進管130内にケーシングロッド120を組み込み、ケーシングロッド120の基部をスピンドルロッドに取付け、駆動モータ111を駆動してケーシングロッド120を所定の方向に回転させるとともに、推進ジャッキ150で推進機本体110を前進駆動する。
【0020】
すると、掘削カッター20のローラビット230がカッターヘッド200の中心軸線の廻りに公転しながら回転軸220の廻りに自転し、前方土砂類、例えば土砂や岩盤を掘削する。
【0021】
その際、回転軸220の中心軸線aがローラビット230の中心軸線bに対して偏心されているので、ローラビット230の径方向外端は推進管130の外面に対して外方に突出した外方位置と、推進管130の内面に対して内方の内方位置との間で出たり入ったりし、推進管130の外径よりも大きな径に掘削することができ、推進管130を軽くかつ円滑に推進することができる。
【0022】
ローラビット230の切刃232が損傷し又は磨耗した場合、掘削カッター20を逆回転(又は回転)させながら推進管130内に引き込む。すると、ローラビット230が推進管230の先端縁に当たり、掘削カッター20の逆回転に伴ってローラビット230が推進管230の先端縁を逃げるように、つまり推進管130の内面に対して内方の内方位置に向かって回転軸220の回りに回転し、ローラビット230の径方向外端が推進管130の内面よりも内方に位置した状態を保つので、推進した推進管130からケーシングロッド120を後方に引き抜くと、推進管130を土中に残したままケーシングロッド120を後方に引き抜くことができるので、ローラビット320を補修し交換することができる。
【0023】
掘削カッター20が損傷し又は磨耗した場合も上記と同様にして補修し交換することができる。
【0024】
その後、ケーシングロッド120を推進管130内に戻すと、前述と同様にして推進作業を行うことができる。
【0025】
図5ないし図7は第2の実施形態を示し、図において図1ないし図4と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例は大径の推進管を削進する場合に用いるのに適した掘削カッターの1例であり、掘削カッター20の回転式のローラビット230は径方向外端が推進管130の内面よりも内方に位置する内方位置と、推進管130の外面よりも外方に位置する外方位置Aとの間で変位するように設けられている。
【0026】
また、掘削カッター20の中央には3つの固定式のローラビット240を傾斜して回転軸241の回りに回転するように取付けられ、回転軸241はローラビット240の平面形状(平面に静置したときの形状)の中心軸線に一致されている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る二重管方式の管削進装置の好ましい実施形態を示す全体概略斜視図である。
【図2】上記実施形態を示す概略側面構成図である。
【図3】上記実施形態における掘削カッターの取付け構造を示す構成図である。
【図4】上記実施形態におけるローラビットの動きを説明するための図である。
【図5】第2の実施形態における掘削カッターを示す正面構成図である。
【図6】上記実施形態における掘削カッターの構造を示す側面構成図である。
【図7】上記実施形態における回転式のローラビットを示す図である。
【符号の説明】
【0028】
100 スライドベース
110 推進機本体
120 ケーシングロッド
130 推進管
20 掘削カッター
200 カッターヘッド
220 回転軸
230 ローラビット
231 コーン
232 切刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に掘削カッターを有するケーシングロッドを推進管内に回転自在に組込み、上記ケーシングロッドを回転させ、上記掘削カッターによって前方土砂類を掘削しながら上記推進管を推進するようにした二重管方式の管削進装置において、
上記掘削カッターのカッターヘッドにはローラビットが回転軸の廻りに回転可能に取付けられ、該回転軸は上記ローラビットの平面形状の中心から偏心した位置に設けられており、
上記ローラビットが掘削時に土砂類の圧力を受けて上記回転軸の廻りに回転し、その径方向外端が上記推進管の内面よりも内方に位置する内方位置と径方向外端が推進管の外面と等しい位置か又はこれよりも外方に位置する外方位置との間で変位するようになっていることを特徴とする二重管方式の管削進装置。
【請求項2】
上記回転軸が上記カッターヘッドの中心軸線に対して傾斜して設けられている請求項1記載の二重管方式の管削進装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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